JP3824553B2 - 醸造酢の製造方法及び加工食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は醸造酢の製造方法及び加工食品に関する。穀類、果実類、野菜類等を原料とするこれらの調製物をアルコール発酵し、更にそのアルコール発酵液を酢酸発酵した醸造酢が、それ自体として、また飲料や他の調味料等の加工食品の製造原料として広く利用されている。本発明はかかる醸造酢の製造方法及び加工食品の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、醸造酢の製造方法として、穀類、果実類、野菜類等を原料とするこれらの調製物をアルコール発酵し、更にそのアルコール発酵液を酢酸発酵することが行なわれている。しかし、かかる従来法には、得られる醸造酢にアルコール発酵時の副生物等が持ち込まれるため、該醸造酢が色調の比較的濃い、また香味の比較的重たい乃至強いものになるという問題がある。かかる醸造酢を飲料や他の調味料等の加工食品の原料として用いると、得られる加工食品までもが色調の比較的濃い、また香味の比較的重たい乃至強いものになってしまう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、色調の比較的淡い、また香味の比較的軽い乃至弱い醸造酢、したがってそれを使用する場合には使用対象である素材等の特性を損なわない醸造酢を製造する方法、及びかかる方法によって得られる醸造酢を用いた加工食品を提供する処にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決する本発明は、原料の調製物をアルコール発酵し、そのアルコール発酵液を圧力0.02MPa以下及び品温20〜60℃の条件下で減圧蒸留した後、その蒸留液を酢酸発酵することを特徴とする醸造酢の製造方法に係る。また本発明はかかる製造方法によって得られる醸造酢を用いて成る加工食品に係る。
【0005】
本発明に係る醸造酢の製造方法でも、原料の調製物をアルコール発酵する。原料の調製物のアルコール発酵それ自体は従来法と同様に行なうことができる。原料としては、米や麦等の穀類、ブドウやリンゴ等の果実類、ニンジンやイモ等の野菜類が挙げられる。これらの原料の調製物には、用いる原料との関係で各種がある。例えば米の場合には、玄米を精米し、洗浄し、水に浸漬して、水切りした後、蒸して、冷やしたものが挙げられる。また例えば小麦の場合には、小麦を破砕し、加水して、酵素処理、通常はアミラーゼを主体とする酵素で糖化処理したものが挙げられる。更に例えばブドウの濃縮果汁の場合には、これに加水したものが挙げられ、ブドウのストレート果汁の場合には、これに補糖したものが挙げられる。これらの原料の調製物のアルコール発酵としては、予め馴養しておいた通常はサッカロマイセス・セレビジェを主体とする酵母液或は種麹を加えて発酵する方法が挙げられる。
【0006】
本発明に係る醸造酢の製造方法では、従来法のようにアルコール発酵液をそのまま酢酸発酵に供するのではなく、アルコール発酵液を減圧蒸留し、その蒸留液を酢酸発酵に供する。アルコール発酵液の減圧蒸留には回分式蒸留や連続式蒸留が適用できるが、いずれにしても減圧蒸留は圧力0.02MPa以下及び品温20〜60℃の条件下で行なう。減圧蒸留した蒸留液の酢酸発酵それ自体は従来法と同様に行なうことができる。これには、予め馴養しておいた通常はアセトバクター・アセチを主体とする酢酸菌液或は種酢を加えて静置或は通気により発酵する方法が挙げられる。
【0007】
本発明に係る醸造酢の製造方法によると、アルコール発酵液を減圧蒸留し、これによりアルコール発酵時の副生物等を取り除いた蒸留液を酢酸発酵するため、得られる醸造酢は色調の比較的淡い、また香味の比較的軽い乃至弱いものとなる。
【0008】
本発明に係る醸造酢の製造方法において、アルコール発酵は品温10〜25℃の条件下で行ない、酢酸発酵は品温20〜30℃の条件下で行なうのが好ましい。また酢酸発酵は、減圧蒸留によりアルコール発酵液の60容量%以下となる量の蒸留液を得て、この蒸留液を酢酸発酵するのが好ましい。いずれも、同時に生産性及び歩留まりにも配慮して、色調のより淡い、また香味のより軽い乃至弱い、したがってその使用対象の特性を損なわない醸造酢を得るためである。
【0009】
本発明に係る加工食品は、以上説明した本発明に係る製造方法によって得られる醸造酢を用いて成るものである。かかる加工食品としては、飲料や他の調味料等、各種が挙げられるが、なかでもソース、マヨネーズ、ドレッシングが好適である。本発明に係る製造方法によって得られる醸造酢を用いたソース、マヨネーズ、ドレッシングは、それらの素材本来の色調や香味を有する優れたものとなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る醸造酢の製造方法の実施形態としては、次の1)〜3)が挙げられる。
1)玄米を精米し、洗浄し、水に浸漬して、水切りした後、蒸して、冷やす。得られた米の調製物に種麹を加え、製麹する。これに加水し、15℃で1か月、静置によりアルコール発酵する。得られたアルコール発酵液を圧力0.01MPa及び温度55℃の条件下で減圧蒸留し、該アルコール発酵液の55容量%に相当する量の蒸留液を得る。この蒸留液に加水し、種酢を加え、30℃で20日間、通気により酢酸発酵する。酢酸発酵物から濾過により菌体を除去し、醸造酢を得る方法。
【0011】
2)小麦を破砕し、加水して、アミラーゼを主体とする酵素で糖化処理する。得られた小麦の調製物に予め馴養しておいたサッカロマイセス・セイレビジェを主体とする酵母液を加え、20℃で10日間、静置によりアルコール発酵する。得られたアルコール発酵液を圧力0.01MPa及び温度50℃の条件下で減圧蒸留し、該アルコール発酵液の50容量%に相当する量の蒸留液を得る。この蒸留液に加水し、種酢を加え、30℃で20日間、通気により酢酸発酵する。酢酸発酵物から濾過により菌体を除去し、醸造酢を得る方法。
【0012】
3)ブドウのストレート果汁にブドウ糖を補添する。得られたブドウの調製物に予め馴養しておいたサッカロマイセス・セレビジェを主体とする酵母液を加え、17℃で20日間、静置によりアルコール発酵する。得られたアルコール発酵液を圧力0.01MPa及び温度50℃の条件下で減圧蒸留し、該アルコール発酵液の55容量%に相当する量の蒸留液を得る。この蒸留液に加水し、種酢を加え、30℃で20日間、通気により酢酸発酵する。酢酸発酵物から濾過により菌体を除去し、醸造酢を得る方法。
【0013】
また本発明に係る加工食品の実施形態としては、次の4)が挙げられる。
4)前記1)〜3)のいずれかの方法で得た醸造酢30重量部(酢酸濃度5容量%換算)、ライムのストレート果汁5重量部、サラダ油57重量部及び食塩8重量部を混合して成るドレッシング。
【0014】
【実施例】
試験区分1(醸造酢の製造)
実施例1
玄米を精米し、洗浄し、水に浸漬して、水切りした後、蒸して、冷やした。得られた米の調製物に種麹を加え、製麹した。これに加水し、15℃で1か月、静置によりアルコール発酵して、エチルアルコール濃度10容量%強のアルコール発酵液を得た。このアルコール発酵液を圧力0.01MPa及び温度55℃の条件下で減圧蒸留し、該アルコール発酵液の55容量%に相当する量の蒸留液を得た。この蒸留液に加水し、種酢を加え、30℃で20日間、通気により酢酸発酵した。酢酸発酵物から濾過により菌体を除去し、酢酸濃度10容量%の醸造酢を得た。
【0015】
実施例2
小麦を破砕し、加水して、アミラーゼを主体とする酵素で糖化処理した。得られた小麦の調製物に予め馴養しておいたサッカロマイセス・セイレビジェを主体とする酵母液を加え、20℃で10日間、静置によりアルコール発酵して、エチルアルコール濃度10容量%強のアルコール発酵液を得た。このアルコール発酵液を圧力0.01MPa及び温度50℃の条件下で減圧蒸留し、該アルコール発酵液の50容量%に相当する量の蒸留液を得た。この蒸留液に加水し、種酢を加え、30℃で20日間、通気により酢酸発酵した。酢酸発酵物から濾過により菌体を除去し、酢酸濃度10容量%の醸造酢を得た。
【0016】
実施例3
ブドウのストレート果汁にブドウ糖を補添した。得られたブドウの調製物に予め馴養しておいたサッカロマイセス・セレビジェを主体とする酵母液を加え、17℃で20日間、静置によりアルコール発酵して、エチルアルコール濃度10容量%強のアルコール発酵液を得た。このアルコール発酵液を圧力0.01MPa及び温度50℃の条件下で減圧蒸留し、該アルコール発酵液の55容量%に相当する量の蒸留液を得た。この蒸留液に加水し、種酢を加え、30℃で20日間、通気により酢酸発酵した。酢酸発酵物から濾過により菌体を除去し、酢酸濃度10容量%の醸造酢を得た。
【0017】
実施例4
リンゴの濃縮果汁に加水し、得られたリンゴの調製物を、以下実施例3と同様にして、アルコール発酵し、減圧蒸留し、酢酸発酵して、酢酸濃度10容量%の醸造酢を得た。
【0018】
比較例1〜4
減圧蒸留をしないで、アルコール発酵液をそのまま酢酸発酵に供した以外は、実施例1〜4と同様にして、酢酸濃度10容量%の醸造酢を得た。
【0019】
比較例5〜8
減圧蒸留の代わりに、大気圧及び温度85℃の条件下で常圧蒸留した以外は、実施例1〜4と同様にして、酢酸濃度10容量%の醸造酢を得た。
【0020】
試験区分2(製造した醸造酢の評価)
試験区分1で製造した各例の醸造酢について、分光光度計を用い、420nmにおける透過率(%)を測定した。また男性10名及び女性10名の合計20名の検査員により、実施例1〜4の醸造酢をそれぞれ相当する比較例1〜4の醸造酢と比較して官能評価した(評価1)。同様に、比較例5〜8の醸造酢をそれぞれ相当する比較例1〜4の醸造酢と比較して官能評価した(評価2)。更に同様に、実施例1〜4の醸造酢をそれぞれ相当する比較例5〜8の醸造酢と比較して官能評価した(評価3)。官能評価は、色調については淡い方を選択させ、また香味については軽い乃至弱い方を選択させて、選択した人数で示した。以上の結果を、各例の醸造酢の製造内容と共に、表1にまとめて示した。
【0021】
【表1】
【0022】
試験区分3(ドレッシングの製造及び評価)
実施例5〜8及び比較例9〜16
試験区分1で製造した各例の醸造酢を水で2倍希釈し、酢酸濃度5容量%の醸造酢とした。そしてこの醸造酢30重量部、ライムのストレート果汁5重量部、サラダ油57重量部及び食塩8重量部を混合してドレッシングを製造した。男性10名及び女性10名の合計20名の検査員により、実施例5〜8のドレッシングをそれぞれ相当する比較例9〜12のドレッシングと比較して官能評価した(評価4)。同様に、比較例13〜16のドレッシングをそれぞれ相当する比較例9〜12のドレッシングと比較して官能評価した(評価5)。更に同様に、実施例5〜8のドレッシングをそれぞれ相当する比較例13〜16のドレッシングと比較して官能評価した(評価6)。官能評価は、好ましい方を選択させて、選択した人数で示した。以上の結果を、各例で使用した醸造酢と共に、表2にまとめて示した。
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】
既に明らかなように、以上説明した本発明には、色調の比較的淡い、また香味の比較的軽い乃至弱い醸造酢、したがってそれを使用する場合には使用対象である素材等の特性を損なわない醸造酢を製造する方法、及びかかる方法によって得られる醸造酢を用いることにより素材の特性を活した加工食品を提供できるという効果がある。
Claims (4)
- 原料の調製物をアルコール発酵し、そのアルコール発酵液を圧力0.02MPa以下及び品温20〜60℃の条件下で減圧蒸留した後、その蒸留液を酢酸発酵することを特徴とする醸造酢の製造方法。
- 品温10〜25℃の条件下でアルコール発酵し、品温20〜30℃の条件下で酢酸発酵する請求項1記載の醸造酢の製造方法。
- 減圧蒸留によりアルコール発酵液の60容量%以下となる量の蒸留液を得て、この蒸留液を酢酸発酵する請求項1又は2記載の醸造酢の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一つの項記載の製造方法によって得られる醸造酢を用いて成る加工食品。
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