JP3820081B2 - 使い捨て着用物品 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、使い捨ておむつやおむつカバー、トレーニングパンツ、失禁用パンツ等の使い捨て着用物品に関する。
【０００２】
【従来の技術】
後胴周り域の両側縁部から横方向外方へ延びるテープファスナと、前胴周り域の外面に取り付けられたターゲットテープとを有するオープン型の使い捨ておむつは公知である。おむつの一例としては、マジックテープやベルクロテープ等の商品名で知られるフック部材とループ部材とのうちのフック部材を、テープファスナの内面に取り付け、ターゲットテープとなる矩形のループ部材を、前胴周り域の外面の所要部位に取り付けてフック部材に対するランディングゾーンを形成する。おむつでは、テープファスナをターゲットテープに係脱可能に止着し、おむつの前後胴周り域を連結する。
【０００３】
そのようなおむつとしては、特開平９−３８１３９号公報、特開平９−１９１９０８号公報、特開平１０−３０９２９９号公報、特開平１０−３２８２３７号公報に開示されている。それら公報に開示のおむつには、ターゲットテープとして非伸縮性のループ部材が取り付けられている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
弾性的な伸縮性を有するおむつでは、ターゲットテープとなる非伸縮性のループ部材を実質的に非伸長下にある前胴周り域に取り付けると、ターゲットテープを取り付けた前胴周り域の部位の伸縮性がターゲットテープによって拘束されてしまうので、ターゲットテープを取り付けた部位では、おむつの伸縮性が失われることになる。
【０００５】
本発明の課題は、弾性的な伸縮性を有する着用物品であって、実質的に非伸長下にある前胴周り域の外面に非伸縮性のターゲットテープを取り付けた場合でも、ターゲットテープを取り付けた部位の伸縮性が失われることがない使い捨て着用物品を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の前提は、互いに並行して縦方向へ延びる両側縁部と、互いに並行して横方向へ延びる両端縁部とを有し、着用者の腹部の側に位置する前胴周り域と、前記着用者の背部の側に位置する後胴周り域と、それら胴周り域の間に位置する股下域とを備え、前記前後胴周り域を互いに連結するための雄部材からなるテープファスナが、前記後胴周り域の両側縁部に取り付けられ、前記テープファスナを係脱可能に止着するための雌部材からなる非伸縮性のターゲットテープが、前記前胴周り域の外面に取り付けられた使い捨て着用物品である。
【０００７】
かかる前提において、本発明の特徴は、前記前後胴周り域と前記股下域との少なくとも該前胴周り域が、前記縦方向と前記横方向との少なくとも該横方向へ弾性的な伸縮性を有し、前記ターゲットテープが、前記縦方向へ延びる両側縁および前記横方向へ延びる上下端縁を有する可撓性のフィルム層と、前記フィルム層の上下端縁の間を互いに並行して前記縦方向へ延びる多数の長繊維とから形成され、前記フィルム層が、前記横方向へ所要寸法離間して該フィルム層の上端縁近傍と下端縁近傍との間を前記縦方向へ延びる複数条のスリットを有し、前記横方向へ実質的に非伸長下にある前記前胴周り域に、前記フィルム層の両側縁近傍と前記スリット各々の間を前記縦方向へ延びる複数条の接着剤を介して取り付けられ、前記長繊維が、前記フィルム層の上下端縁近傍に固着されていることにある。
【０００８】
ここで、実質的に非伸長下にあるとは、前胴周り域を全く伸長させない状態と、前胴周り域をわずかに伸長させた状態との両者を含むものである。
【０００９】
本発明の実施の態様の一例としては、前記長繊維が、前記フィルム層の上下端縁の間を該フィルム層の外面から外方へ向って***して延びている。
【００１０】
本発明の実施の態様の他の一例として、前記フィルム層には、前記横方向へ所要寸法離間して該フィルム層の上端縁近傍と下端縁近傍との間を前記縦方向へ延びる引き裂き可能な複数条のミシン目が形成され、前記フィルム層が、前記ミシン目で引き裂かれることによって該フィルム層に前記スリットが形成される。
【００１１】
【００１２】
本発明の実施の態様の他の一例としては、前記着用物品が、前記着用者の肌当接側に位置する透液性表面シートと、前記着用者の肌非当接側に位置する不透液性裏面シートと、前記表裏面シートの間に介在する吸液性コアとから構成されている。
【００１３】
【発明の実施の形態】
添付の図面を参照し、本発明にかかる使い捨て着用物品の詳細をオープン型の使い捨ておむつを例として説明すると、以下のとおりである。
【００１４】
図１，２は、おむつ１の部分破断斜視図と、図１のおむつ１のＡ−Ａ線断面図とであり、図３は、図１のＢ−Ｂ線断面図である。おむつ１は、透液性表面シート２と、不透液性裏面シート３と、表面シート２と裏面シート３との間に介在し、表面シート２の内面に接合された吸液性コア４とを基本構成部材とする。
【００１５】
おむつ１は、着用者の腹部の側に位置する前胴周り域２０と、着用者の背部の側に位置する後胴周り域２２と、前後胴周り域２０，２２の間に位置する股下域２１とを備え、互いに並行して縦方向へ延び、股下域２１においておむつ１の横方向内方へ向かって弧を画く両側縁部１ａと、互いに並行して横方向へ延びる両端縁部１ｂとを有する。
【００１６】
おむつ１は、表面シート２と裏面シート３とが縦方向と横方向とへ弾性的な伸縮性を有する不織布で形成されている。表面シート２と裏面シート３とは、コア４の周縁から縦方向外方と横方向外方とへ延びるそれらシート２，３の部分が互いに重なり合った状態で間欠的に固着されている。
【００１７】
後胴周り域２２の両側縁部１ａには、横方向外方へ延びるテープファスナ５が取り付けられている。前胴周り域２０における裏面シート３の外面には、テープファスナ５の止着域となる非伸縮性のターゲットテープ７が取り付けられている。ターゲットテープ７は、前胴周り域２０の中央部１ｃで二つに分断されている。
【００１８】
テープファスナ５は、その基端部５ａが表面シート２と裏面シート３との間に介在し、それらシート２，３の内面に接着剤（図示せず）を介して固着されている。テープファスナ５の自由端部５ｂの内面には、メカニカルファスナのうちのフック部材６が接着剤（図示せず）を介して取り付けられている。
【００１９】
ターゲットテープ７は、互いに並行して縦方向へ延びる両側縁８ａおよび互いに並行して横方向へ延びる上下端縁８ｂ，８ｃを有する横方向へ長い可撓性のプラスチックシート８（フィルム層）と、プラスチックシート８の外面の上下端縁８ｂ，８ｃの間を互いに並行して縦方向へ延びる多数の長繊維９とから形成されている。
【００２０】
プラスチックシート８には、横方向へ所要寸法離間して並び、上端縁８ｂ近傍と下端縁８ｃ近傍との間を縦方向へ延びる複数条のミシン目１１が形成されている。
【００２１】
長繊維９は、プラスチックシート８の上下端縁８ｂ，８ｃに沿って横方向へ延びるシール部１０を介してプラスチックシート８に固着されている。長繊維９は、プラスチックシート８の上端縁８ｂと下端縁８ｃの間をプラスチックシート８の外面から外方へ向って***して延びている。
【００２２】
ターゲットテープ７では、プラスチックシート８が非伸長状態にある裏面シート３の外面に複数条の接着剤１２を介して取り付けられている。接着剤１２は、横方向へ所要寸法離間し、プラスチックシート８の両側縁８ａ近傍とミシン目１１各々の間とを縦方向へ延びている。
【００２３】
おむつ１の非着用時では、テープファスナ５がフック部材６を介して表面シート２の外面に係脱可能に止着される（図示せず）。おむつ１の着用時では、テープファスナ５がフック部材６を介してターゲットテープ７の外面に止着される。テープファスナ５とターゲットテープ７とは、長繊維９の間に進入したフック部材６が長繊維９に引っ掛かることで互いに係合する。
【００２４】
図４，５は、前後胴周り域２０，２２を連結させた着用状態で示すおむつ１の斜視図と、図４のＣ−Ｃ線断面図とであり、図４では、テープファスナ５の内面がターゲットテープ７の外面に係脱可能に止着されて胴周り開口１３と左右一対の脚周り開口１４とが形成されている。おむつ１の着用時では、図５に矢印Ｘで示すように、前後胴周り域２０，２２各々が横方向外方へ伸ばされ、それにともなってターゲットテープ７が横方向外方へ引っ張られる。ターゲットテープ７では、横方向外方への張力によってプラスチックシート８がミシン目１１において引き裂かれ、複数条のスリット１１ａが形成される。
【００２５】
おむつ１では、表面シート２と裏面シート３とが横方向外方へ伸長すると、プラスチックシート８のスリット１１ａが横方向外方へ広がり、縦方向へ長い略楕円形を呈する。表面シート２と裏面シート３とは、スリット１１ａの広がる寸法だけ横方向外方へ伸びることができるので、ターゲットテープ７を取り付けた表面シート２と裏面シート３との部位全域の弾性伸縮性がターゲットテープ７によって拘束されることはなく、部位での弾性伸縮性が完全に失われることはない。
【００２６】
ターゲットテープ７では、スリット１１ａが横方向外方へ広がることにともなって長繊維９が横方向へ散けるが、広がったスリット１１ａ上に散けた長繊維９が残存する。ゆえに、前胴周り域２０を横方向外方へ伸長させたとしても、ターゲットテープ７において長繊維９が途切れることはない。おむつ１では、テープファスナ５とターゲットテープ７との係合を解除すると、表面シート２と裏面シート３とが収縮し、楕円形を呈するスリット１１ａが閉じて直状に戻る。
【００２７】
ターゲットテープ７は、前胴周り域２０の中央部１ｃで二つに分断されているので、前胴周り域２０の中央部１ｃに延びる裏面シート２と表面シート３とは、その弾性伸縮性がターゲットテープ７によって拘束されることはなく、前胴周り域２０の中央部１ｃにおいて横方向外方へ伸びることができる。
【００２８】
図示例のおむつ１は、それを着用したときに、横方向へ所与倍率で伸長することができるもので、非伸長状態にある前後胴周り域２０，２２と股下域２１とを横方向へ伸長させたときの前後胴周り域２０，２２と股下域２１との伸長倍率が３０〜２００％の範囲にあることが好ましい。
【００２９】
ターゲットテープ７は、非伸長下にある前胴周り域２０に取り付けられているが、わずかに伸長させた状態にある前胴周り域２０にターゲットテープ７を取り付けることもできる。ここで、わずかに伸長させるとは、０％を超過しかつ３０％未満の範囲の伸長倍率で前胴周り域を横方向へ伸長させることをいう。
【００３０】
おむつ１では、プラスチックシート８に形成されたミシン目１１の横方向への離間寸法や本数に限定はないが、離間寸法が小さく、本数が多いことが好ましい。ミシン目１１の本数を多くすることで、ターゲットテープ７の横方向外方への伸長寸法が大きくなり、ターゲットテープ７を取り付けた前胴周り域２０の部位の横方向外方への伸長寸法を大きくすることができる。
【００３１】
接着剤１２は、ミシン目１１の間に延びている必要はないが、横方向へ所要寸法離間して延びていることが好ましい。すなわち、プラスチックシート８が横方向へ不連続に延びる接着剤１２を介して取り付けられていればよい。接着剤１２としては、伸縮性または伸長性を有するものを使用することが好ましい。
【００３２】
おむつ１では、裏面シート３が横方向へ弾性的な伸縮性を有する不織布で形成され、表面シート２が非伸縮性の不織布で形成されていてもよい。この場合は、横方向外方へ伸長させた状態にある裏面シート３に表面シート２を重ね合わせ、コア４の周縁から縦方向外方と横方向外方とへ延びるそれらシート２，３の部分を間欠的に固着する。
【００３３】
ターゲットテープ７は、前胴周り域２０の中央部１ｃで二つに分断されることなく、前胴周り域２０の外面を連続して横方向へ延びるものであってもよい。プラスチックシート８には、ミシン目１１ではなく、横方向へ所要寸法離間して並び、プラスチックシート８の上端縁８ｂ近傍と下端縁８ｃ近傍との間を縦方向へ延びる複数条のスリット１１ａが形成されていてもよい。
【００３４】
ターゲットテープとしては、図示はしていないが、長繊維を溶融、固化させて部分的にフィルム化し、フィルム層が長繊維をフィルム化した部分によって形成され、フィルム層と長繊維とが一体的に製造されたものを使用することもできる。ターゲットテープでは、フィルム化した部分の上下端縁に沿って、残余の長繊維がフィルム化した部分に熱融着され、長繊維がフィルム化した部分に連結される。このようなターゲットテープでは、フィルム層に複数条のミシン目またはスリットを形成し、フィルム層を非伸長状態にある裏面シートの外面に、横方向へ所要寸法離間してフィルム層の両側縁近傍とミシン目各々またはスリット各々の間とを縦方向へ延びる複数条の接着剤を介して取り付けることができる。
【００３５】
表面シート２には、非伸縮性または伸縮性の不織布に親水処理を施したものを使用することが好ましい。また、不織布の他に、非伸縮性または伸縮性の開孔プラスチックフィルムを使用することもできる。
【００３６】
裏面シート３には、伸縮性を有する不織布の他に、伸縮性を有するプラスチックフィルムまたはそれぞれ伸縮性を有するプラスチックフィルムと不織布とのラミネートシートを使用することができる。また、裏面シート３としては、非伸縮性のプラスチックフィルムと非伸縮性の不織布との間に弾性伸縮性を有する天然ゴムや合成ゴム等のエラストマーからなるシートや弾性糸が介在する複合シートを使用することもできる。裏面シートに使用する不織布は、疎水性であることが好ましい。
【００３７】
不織布としては、スパンレース、ニードルパンチ、メルトブローン、サーマルボンド、スパンポンド、ケミカルボンド等の不織布を使用することができる。
【００３８】
プラスチックシート８としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の可撓性の熱可塑性合成樹脂を使用することができる。
【００３９】
長繊維９は、多数の連続フィラメントのトウをウェブに開繊して得られるものであり、テープファスナのフック部材との係合が容易になるように捲縮を有していてもよい。フィラメントは、その繊度が０．５〜７０Ｄｔｅｘの範囲、その目付が２０〜１５０ｇ／ｍ２の範囲にあることが好ましい。
【００４０】
フィラメントには、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系の各繊維、ポリエチレン／ポリプロピレンやポリエチレン／ポリエステル、ポリエチレン／ポリエチレンテレフタレートで形成された芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維を使用することができる。
【００４１】
コア４は、木材パルプを粉砕して得られるフラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物であり、所要の厚みに圧縮され、全体が液拡散性ティシュペーパ等の透水性シート（図示せず）によって被覆されている。高吸収性ポリマーとしては、澱粉のグラフト重合体、セルロース変性体、水溶性高分子の架橋物、自己架橋型アクリル酸アルカリ金属塩等を使用することができる。
【００４２】
シート２，３の固着やコア４の接合には、ホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤、または、熱溶着の技術を利用することができる。
【００４３】
この発明は、使い捨ておむつ１の他に、おむつカバーやトレーニングパンツ、失禁用パンツでも実施することができる。
【００４４】
【発明の効果】
本発明にかかる使い捨て着用物品によれば、着用物品が縦方向と横方向との少なくとも横方向へ弾性的な伸縮性を有するものであって、着用物品の前胴周り域の外面に非伸縮性のターゲットテープを、実質的に非伸長下にある前胴周り域に取り付けた場合でも、フィルム層に縦方向へ延びる複数条のスリットが形成されているので、ターゲットテープを取り付けた部位の弾性伸縮性が完全に失われることはない。
【００４５】
着用物品は、前胴周り域が横方向外方へ伸長されたときに、フィルム層のスリット各々が横方向外方へ広がって縦方向へ長い略楕円形を呈する。ゆえに、ターゲットテープが取り付けられた着用物品の部位は、フィルム層のスリットの広がる寸法だけ横方向外方へ延びることができる。
【００４６】
着用物品では、スリットが横方向外方へ広がることにともなって長繊維が横方向へ散けるが、広がったスリット上に散けた長繊維が残存する。ゆえに、前胴周り域を横方向外方へ伸長させたとしても、ターゲットテープにおいて長繊維が途切れることはなく、テープファスナをターゲットテープのいずれの箇所でも満遍なく係合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 おむつの部分破断斜視図。
【図２】 図１のおむつのＡ−Ａ線断面図。
【図３】 図１のおむつのＢ−Ｂ線断面図。
【図４】 前後胴周り域を互いに連結させた着用状態で示す図１のおむつの斜視図。
【図５】 図４のＣ−Ｃ線断面図。
【符号の説明】
１ 使い捨ておむつ（使い捨て着用物品）
１ａ 両側縁部
１ｂ 両端縁部
２ 透液性表面シート
３ 不透液性裏面シート
４ 吸液性コア
５ テープファスナ
６ フック部材（雄部材）
７ ターゲットテープ
８ プラスチックシート（フィルム層）
８ａ 両側縁
８ｂ，８ｃ 上下端縁
９ 長繊維
１１ ミシン目
１１ａ スリット
１２ 接着剤
２０ 前胴周り域
２１ 股下域
２２ 後胴周り域
【発明の属する技術分野】
本発明は、使い捨ておむつやおむつカバー、トレーニングパンツ、失禁用パンツ等の使い捨て着用物品に関する。
【０００２】
【従来の技術】
後胴周り域の両側縁部から横方向外方へ延びるテープファスナと、前胴周り域の外面に取り付けられたターゲットテープとを有するオープン型の使い捨ておむつは公知である。おむつの一例としては、マジックテープやベルクロテープ等の商品名で知られるフック部材とループ部材とのうちのフック部材を、テープファスナの内面に取り付け、ターゲットテープとなる矩形のループ部材を、前胴周り域の外面の所要部位に取り付けてフック部材に対するランディングゾーンを形成する。おむつでは、テープファスナをターゲットテープに係脱可能に止着し、おむつの前後胴周り域を連結する。
【０００３】
そのようなおむつとしては、特開平９−３８１３９号公報、特開平９−１９１９０８号公報、特開平１０−３０９２９９号公報、特開平１０−３２８２３７号公報に開示されている。それら公報に開示のおむつには、ターゲットテープとして非伸縮性のループ部材が取り付けられている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
弾性的な伸縮性を有するおむつでは、ターゲットテープとなる非伸縮性のループ部材を実質的に非伸長下にある前胴周り域に取り付けると、ターゲットテープを取り付けた前胴周り域の部位の伸縮性がターゲットテープによって拘束されてしまうので、ターゲットテープを取り付けた部位では、おむつの伸縮性が失われることになる。
【０００５】
本発明の課題は、弾性的な伸縮性を有する着用物品であって、実質的に非伸長下にある前胴周り域の外面に非伸縮性のターゲットテープを取り付けた場合でも、ターゲットテープを取り付けた部位の伸縮性が失われることがない使い捨て着用物品を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の前提は、互いに並行して縦方向へ延びる両側縁部と、互いに並行して横方向へ延びる両端縁部とを有し、着用者の腹部の側に位置する前胴周り域と、前記着用者の背部の側に位置する後胴周り域と、それら胴周り域の間に位置する股下域とを備え、前記前後胴周り域を互いに連結するための雄部材からなるテープファスナが、前記後胴周り域の両側縁部に取り付けられ、前記テープファスナを係脱可能に止着するための雌部材からなる非伸縮性のターゲットテープが、前記前胴周り域の外面に取り付けられた使い捨て着用物品である。
【０００７】
かかる前提において、本発明の特徴は、前記前後胴周り域と前記股下域との少なくとも該前胴周り域が、前記縦方向と前記横方向との少なくとも該横方向へ弾性的な伸縮性を有し、前記ターゲットテープが、前記縦方向へ延びる両側縁および前記横方向へ延びる上下端縁を有する可撓性のフィルム層と、前記フィルム層の上下端縁の間を互いに並行して前記縦方向へ延びる多数の長繊維とから形成され、前記フィルム層が、前記横方向へ所要寸法離間して該フィルム層の上端縁近傍と下端縁近傍との間を前記縦方向へ延びる複数条のスリットを有し、前記横方向へ実質的に非伸長下にある前記前胴周り域に、前記フィルム層の両側縁近傍と前記スリット各々の間を前記縦方向へ延びる複数条の接着剤を介して取り付けられ、前記長繊維が、前記フィルム層の上下端縁近傍に固着されていることにある。
【０００８】
ここで、実質的に非伸長下にあるとは、前胴周り域を全く伸長させない状態と、前胴周り域をわずかに伸長させた状態との両者を含むものである。
【０００９】
本発明の実施の態様の一例としては、前記長繊維が、前記フィルム層の上下端縁の間を該フィルム層の外面から外方へ向って***して延びている。
【００１０】
本発明の実施の態様の他の一例として、前記フィルム層には、前記横方向へ所要寸法離間して該フィルム層の上端縁近傍と下端縁近傍との間を前記縦方向へ延びる引き裂き可能な複数条のミシン目が形成され、前記フィルム層が、前記ミシン目で引き裂かれることによって該フィルム層に前記スリットが形成される。
【００１１】
【００１２】
本発明の実施の態様の他の一例としては、前記着用物品が、前記着用者の肌当接側に位置する透液性表面シートと、前記着用者の肌非当接側に位置する不透液性裏面シートと、前記表裏面シートの間に介在する吸液性コアとから構成されている。
【００１３】
【発明の実施の形態】
添付の図面を参照し、本発明にかかる使い捨て着用物品の詳細をオープン型の使い捨ておむつを例として説明すると、以下のとおりである。
【００１４】
図１，２は、おむつ１の部分破断斜視図と、図１のおむつ１のＡ−Ａ線断面図とであり、図３は、図１のＢ−Ｂ線断面図である。おむつ１は、透液性表面シート２と、不透液性裏面シート３と、表面シート２と裏面シート３との間に介在し、表面シート２の内面に接合された吸液性コア４とを基本構成部材とする。
【００１５】
おむつ１は、着用者の腹部の側に位置する前胴周り域２０と、着用者の背部の側に位置する後胴周り域２２と、前後胴周り域２０，２２の間に位置する股下域２１とを備え、互いに並行して縦方向へ延び、股下域２１においておむつ１の横方向内方へ向かって弧を画く両側縁部１ａと、互いに並行して横方向へ延びる両端縁部１ｂとを有する。
【００１６】
おむつ１は、表面シート２と裏面シート３とが縦方向と横方向とへ弾性的な伸縮性を有する不織布で形成されている。表面シート２と裏面シート３とは、コア４の周縁から縦方向外方と横方向外方とへ延びるそれらシート２，３の部分が互いに重なり合った状態で間欠的に固着されている。
【００１７】
後胴周り域２２の両側縁部１ａには、横方向外方へ延びるテープファスナ５が取り付けられている。前胴周り域２０における裏面シート３の外面には、テープファスナ５の止着域となる非伸縮性のターゲットテープ７が取り付けられている。ターゲットテープ７は、前胴周り域２０の中央部１ｃで二つに分断されている。
【００１８】
テープファスナ５は、その基端部５ａが表面シート２と裏面シート３との間に介在し、それらシート２，３の内面に接着剤（図示せず）を介して固着されている。テープファスナ５の自由端部５ｂの内面には、メカニカルファスナのうちのフック部材６が接着剤（図示せず）を介して取り付けられている。
【００１９】
ターゲットテープ７は、互いに並行して縦方向へ延びる両側縁８ａおよび互いに並行して横方向へ延びる上下端縁８ｂ，８ｃを有する横方向へ長い可撓性のプラスチックシート８（フィルム層）と、プラスチックシート８の外面の上下端縁８ｂ，８ｃの間を互いに並行して縦方向へ延びる多数の長繊維９とから形成されている。
【００２０】
プラスチックシート８には、横方向へ所要寸法離間して並び、上端縁８ｂ近傍と下端縁８ｃ近傍との間を縦方向へ延びる複数条のミシン目１１が形成されている。
【００２１】
長繊維９は、プラスチックシート８の上下端縁８ｂ，８ｃに沿って横方向へ延びるシール部１０を介してプラスチックシート８に固着されている。長繊維９は、プラスチックシート８の上端縁８ｂと下端縁８ｃの間をプラスチックシート８の外面から外方へ向って***して延びている。
【００２２】
ターゲットテープ７では、プラスチックシート８が非伸長状態にある裏面シート３の外面に複数条の接着剤１２を介して取り付けられている。接着剤１２は、横方向へ所要寸法離間し、プラスチックシート８の両側縁８ａ近傍とミシン目１１各々の間とを縦方向へ延びている。
【００２３】
おむつ１の非着用時では、テープファスナ５がフック部材６を介して表面シート２の外面に係脱可能に止着される（図示せず）。おむつ１の着用時では、テープファスナ５がフック部材６を介してターゲットテープ７の外面に止着される。テープファスナ５とターゲットテープ７とは、長繊維９の間に進入したフック部材６が長繊維９に引っ掛かることで互いに係合する。
【００２４】
図４，５は、前後胴周り域２０，２２を連結させた着用状態で示すおむつ１の斜視図と、図４のＣ−Ｃ線断面図とであり、図４では、テープファスナ５の内面がターゲットテープ７の外面に係脱可能に止着されて胴周り開口１３と左右一対の脚周り開口１４とが形成されている。おむつ１の着用時では、図５に矢印Ｘで示すように、前後胴周り域２０，２２各々が横方向外方へ伸ばされ、それにともなってターゲットテープ７が横方向外方へ引っ張られる。ターゲットテープ７では、横方向外方への張力によってプラスチックシート８がミシン目１１において引き裂かれ、複数条のスリット１１ａが形成される。
【００２５】
おむつ１では、表面シート２と裏面シート３とが横方向外方へ伸長すると、プラスチックシート８のスリット１１ａが横方向外方へ広がり、縦方向へ長い略楕円形を呈する。表面シート２と裏面シート３とは、スリット１１ａの広がる寸法だけ横方向外方へ伸びることができるので、ターゲットテープ７を取り付けた表面シート２と裏面シート３との部位全域の弾性伸縮性がターゲットテープ７によって拘束されることはなく、部位での弾性伸縮性が完全に失われることはない。
【００２６】
ターゲットテープ７では、スリット１１ａが横方向外方へ広がることにともなって長繊維９が横方向へ散けるが、広がったスリット１１ａ上に散けた長繊維９が残存する。ゆえに、前胴周り域２０を横方向外方へ伸長させたとしても、ターゲットテープ７において長繊維９が途切れることはない。おむつ１では、テープファスナ５とターゲットテープ７との係合を解除すると、表面シート２と裏面シート３とが収縮し、楕円形を呈するスリット１１ａが閉じて直状に戻る。
【００２７】
ターゲットテープ７は、前胴周り域２０の中央部１ｃで二つに分断されているので、前胴周り域２０の中央部１ｃに延びる裏面シート２と表面シート３とは、その弾性伸縮性がターゲットテープ７によって拘束されることはなく、前胴周り域２０の中央部１ｃにおいて横方向外方へ伸びることができる。
【００２８】
図示例のおむつ１は、それを着用したときに、横方向へ所与倍率で伸長することができるもので、非伸長状態にある前後胴周り域２０，２２と股下域２１とを横方向へ伸長させたときの前後胴周り域２０，２２と股下域２１との伸長倍率が３０〜２００％の範囲にあることが好ましい。
【００２９】
ターゲットテープ７は、非伸長下にある前胴周り域２０に取り付けられているが、わずかに伸長させた状態にある前胴周り域２０にターゲットテープ７を取り付けることもできる。ここで、わずかに伸長させるとは、０％を超過しかつ３０％未満の範囲の伸長倍率で前胴周り域を横方向へ伸長させることをいう。
【００３０】
おむつ１では、プラスチックシート８に形成されたミシン目１１の横方向への離間寸法や本数に限定はないが、離間寸法が小さく、本数が多いことが好ましい。ミシン目１１の本数を多くすることで、ターゲットテープ７の横方向外方への伸長寸法が大きくなり、ターゲットテープ７を取り付けた前胴周り域２０の部位の横方向外方への伸長寸法を大きくすることができる。
【００３１】
接着剤１２は、ミシン目１１の間に延びている必要はないが、横方向へ所要寸法離間して延びていることが好ましい。すなわち、プラスチックシート８が横方向へ不連続に延びる接着剤１２を介して取り付けられていればよい。接着剤１２としては、伸縮性または伸長性を有するものを使用することが好ましい。
【００３２】
おむつ１では、裏面シート３が横方向へ弾性的な伸縮性を有する不織布で形成され、表面シート２が非伸縮性の不織布で形成されていてもよい。この場合は、横方向外方へ伸長させた状態にある裏面シート３に表面シート２を重ね合わせ、コア４の周縁から縦方向外方と横方向外方とへ延びるそれらシート２，３の部分を間欠的に固着する。
【００３３】
ターゲットテープ７は、前胴周り域２０の中央部１ｃで二つに分断されることなく、前胴周り域２０の外面を連続して横方向へ延びるものであってもよい。プラスチックシート８には、ミシン目１１ではなく、横方向へ所要寸法離間して並び、プラスチックシート８の上端縁８ｂ近傍と下端縁８ｃ近傍との間を縦方向へ延びる複数条のスリット１１ａが形成されていてもよい。
【００３４】
ターゲットテープとしては、図示はしていないが、長繊維を溶融、固化させて部分的にフィルム化し、フィルム層が長繊維をフィルム化した部分によって形成され、フィルム層と長繊維とが一体的に製造されたものを使用することもできる。ターゲットテープでは、フィルム化した部分の上下端縁に沿って、残余の長繊維がフィルム化した部分に熱融着され、長繊維がフィルム化した部分に連結される。このようなターゲットテープでは、フィルム層に複数条のミシン目またはスリットを形成し、フィルム層を非伸長状態にある裏面シートの外面に、横方向へ所要寸法離間してフィルム層の両側縁近傍とミシン目各々またはスリット各々の間とを縦方向へ延びる複数条の接着剤を介して取り付けることができる。
【００３５】
表面シート２には、非伸縮性または伸縮性の不織布に親水処理を施したものを使用することが好ましい。また、不織布の他に、非伸縮性または伸縮性の開孔プラスチックフィルムを使用することもできる。
【００３６】
裏面シート３には、伸縮性を有する不織布の他に、伸縮性を有するプラスチックフィルムまたはそれぞれ伸縮性を有するプラスチックフィルムと不織布とのラミネートシートを使用することができる。また、裏面シート３としては、非伸縮性のプラスチックフィルムと非伸縮性の不織布との間に弾性伸縮性を有する天然ゴムや合成ゴム等のエラストマーからなるシートや弾性糸が介在する複合シートを使用することもできる。裏面シートに使用する不織布は、疎水性であることが好ましい。
【００３７】
不織布としては、スパンレース、ニードルパンチ、メルトブローン、サーマルボンド、スパンポンド、ケミカルボンド等の不織布を使用することができる。
【００３８】
プラスチックシート８としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の可撓性の熱可塑性合成樹脂を使用することができる。
【００３９】
長繊維９は、多数の連続フィラメントのトウをウェブに開繊して得られるものであり、テープファスナのフック部材との係合が容易になるように捲縮を有していてもよい。フィラメントは、その繊度が０．５〜７０Ｄｔｅｘの範囲、その目付が２０〜１５０ｇ／ｍ２の範囲にあることが好ましい。
【００４０】
フィラメントには、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系の各繊維、ポリエチレン／ポリプロピレンやポリエチレン／ポリエステル、ポリエチレン／ポリエチレンテレフタレートで形成された芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維を使用することができる。
【００４１】
コア４は、木材パルプを粉砕して得られるフラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物であり、所要の厚みに圧縮され、全体が液拡散性ティシュペーパ等の透水性シート（図示せず）によって被覆されている。高吸収性ポリマーとしては、澱粉のグラフト重合体、セルロース変性体、水溶性高分子の架橋物、自己架橋型アクリル酸アルカリ金属塩等を使用することができる。
【００４２】
シート２，３の固着やコア４の接合には、ホットメルト接着剤等の接着剤や粘着剤、または、熱溶着の技術を利用することができる。
【００４３】
この発明は、使い捨ておむつ１の他に、おむつカバーやトレーニングパンツ、失禁用パンツでも実施することができる。
【００４４】
【発明の効果】
本発明にかかる使い捨て着用物品によれば、着用物品が縦方向と横方向との少なくとも横方向へ弾性的な伸縮性を有するものであって、着用物品の前胴周り域の外面に非伸縮性のターゲットテープを、実質的に非伸長下にある前胴周り域に取り付けた場合でも、フィルム層に縦方向へ延びる複数条のスリットが形成されているので、ターゲットテープを取り付けた部位の弾性伸縮性が完全に失われることはない。
【００４５】
着用物品は、前胴周り域が横方向外方へ伸長されたときに、フィルム層のスリット各々が横方向外方へ広がって縦方向へ長い略楕円形を呈する。ゆえに、ターゲットテープが取り付けられた着用物品の部位は、フィルム層のスリットの広がる寸法だけ横方向外方へ延びることができる。
【００４６】
着用物品では、スリットが横方向外方へ広がることにともなって長繊維が横方向へ散けるが、広がったスリット上に散けた長繊維が残存する。ゆえに、前胴周り域を横方向外方へ伸長させたとしても、ターゲットテープにおいて長繊維が途切れることはなく、テープファスナをターゲットテープのいずれの箇所でも満遍なく係合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 おむつの部分破断斜視図。
【図２】 図１のおむつのＡ−Ａ線断面図。
【図３】 図１のおむつのＢ−Ｂ線断面図。
【図４】 前後胴周り域を互いに連結させた着用状態で示す図１のおむつの斜視図。
【図５】 図４のＣ−Ｃ線断面図。
【符号の説明】
１ 使い捨ておむつ（使い捨て着用物品）
１ａ 両側縁部
１ｂ 両端縁部
２ 透液性表面シート
３ 不透液性裏面シート
４ 吸液性コア
５ テープファスナ
６ フック部材（雄部材）
７ ターゲットテープ
８ プラスチックシート（フィルム層）
８ａ 両側縁
８ｂ，８ｃ 上下端縁
９ 長繊維
１１ ミシン目
１１ａ スリット
１２ 接着剤
２０ 前胴周り域
２１ 股下域
２２ 後胴周り域
Claims (4)
- 互いに並行して縦方向へ延びる両側縁部と、互いに並行して横方向へ延びる両端縁部とを有し、着用者の腹部の側に位置する前胴周り域と、前記着用者の背部の側に位置する後胴周り域と、それら胴周り域の間に位置する股下域とを備え、前記前後胴周り域を互いに連結するための雄部材からなるテープファスナが、前記後胴周り域の両側縁部に取り付けられ、前記テープファスナを係脱可能に止着するための雌部材からなる非伸縮性のターゲットテープが、前記前胴周り域の外面に取り付けられた使い捨て着用物品において、
前記前後胴周り域と前記股下域との少なくとも該前胴周り域が、前記縦方向と前記横方向との少なくとも該横方向へ弾性的な伸縮性を有し、前記ターゲットテープが、前記縦方向へ延びる両側縁および前記横方向へ延びる上下端縁を有する可撓性のフィルム層と、前記フィルム層の上下端縁の間を互いに並行して前記縦方向へ延びる多数の長繊維とから形成され、前記フィルム層が、前記横方向へ所要寸法離間して該フィルム層の上端縁近傍と下端縁近傍との間を前記縦方向へ延びる複数条のスリットを有し、前記横方向へ実質的に非伸長下にある前記前胴周り域に、前記フィルム層の両側縁近傍と前記スリット各々の間を前記縦方向へ延びる複数条の接着剤を介して取り付けられ、前記長繊維が、前記フィルム層の上下端縁近傍に固着されていることを特徴とする前記着用物品。 - 前記長繊維が、前記フィルム層の上下端縁の間を該フィルム層の外面から外方へ向って***して延びている請求項１記載の着用物品。
- 前記フィルム層には、前記横方向へ所要寸法離間して該フィルム層の上端縁近傍と下端縁近傍との間を前記縦方向へ延びる引き裂き可能な複数条のミシン目が形成され、前記フィルム層が、前記ミシン目で引き裂かれることによって該フィルム層に前記スリットが形成される請求項１または請求項２に記載の着用物品。
- 前記着用物品が、前記着用者の肌当接側に位置する透液性表面シートと、前記着用者の肌非当接側に位置する不透液性裏面シートと、前記表裏面シートの間に介在する吸液性コアとから構成されている請求項１ないし請求項３いずれかに記載の着用物品。
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