JP3808788B2 - 液晶表示方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、液晶表示方法に係わり、特に液晶表示装置に輝度情報、色差情報からなる動画をソフトウェアによるリアルタイム処理が可能となる簡単な処理により高品質に表示する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶ディスプレイは、パソコン用モニタ、ノートパソコン、テレビといった広い分野にわたって普及してきており、それに伴い、液晶ディスプレイで動画を見る機会が非常に増えてきている。しかし、液晶ディスプレイは、液晶の応答速度が十分に速くはないために、動画を表示した際にボケや残像のような画質劣化が生じる。一般に、液晶ディスプレイのリフレッシュレートは、60Hzであるため、動画表示に対応するために16.7ms以下の応答速度が目標とされている。しかし、最近の液晶ディスプレイは、2値(256階調表示の液晶ディスプレイでは、0階調から255階調もしくは、255階調から0階調)の応答速度が16.7ms以下となっているが、中間調間の応答速度が、16.7ms以上である。
【0003】
一般の動画は、中間調間の応答が非常に多く含まれているため、中間調間の応答速度が十分ではないという問題は、動画の画質劣化を招き、更なる応答速度の改善が必要である。
【0004】
この液晶ディスプレイの応答速度を速くするために、応答速度の速い新規の液晶材料の開発、従来の液晶材料を用いた液晶ディスプレイの駆動方法の改良等が行われている。新規の液晶材料としては、スメクチック系の強誘電性液晶、反強誘電性液晶等の開発が行われているが、液晶材料の自発分極の影響による焼き付きの問題、圧力等により液晶の配向状態が破壊されやすい等、解決すべき課題は多い。
【0005】
一方、従来の液晶材料を用いた液晶ディスプレイの駆動方法を改良することにより、液晶ディスプレイの応答速度を改善する手法の開発としては、液晶ディスプレイに表示されている階調が変化する際の書き込み階調に必要に応じて所定の階調を加算した階調を液晶ディスプレイに書き込む方法(2001 SID International Symposium Digest of Technical Papers/Volume XXXII/ISSN−0001−966X P.488を参照)がある。この方法の動作の概略を以下に示す。
【0006】
予め、液晶ディスプレイの階調間の応答を測定し、1フレーム後(一般に16.7ms後)に到達する階調を求める。この結果より、1フレーム後にある階調からある階調に変化させるために必要となる書き込み階調が求まり、これを2次元の配列データとして記憶させておく。すなわち、液晶ディスプレイが256階調である場合、全階調間のデータを記憶するためには、256×256の配列データが必要となる。液晶ディスプレイに入力された映像情報は、各画素の赤、緑、青のサブ画素毎に、どの階調からどの階調に変化するかを調べ、1フレーム後に応答が完了するための書き込み階調を強調映像情報として、上記配列データを参照して決定する。つまり、映像情報がL0からL1に変化する場合、L1階調を液晶ディスプレイに書き込むのではなく、1フレーム後にL1階調に到達できるL1’階調を、配列データから参照し、液晶ディスプレイに書き込む。この方法を用いることにより、全階調から0階調及び、全階調から255階調(256階調の液晶ディスプレイの場合)への応答が1フレーム以内に完了する液晶ディスプレイであれば、ほぼ全階調間の応答を1フレーム以内に完了することが可能となる。
【0007】
上記従来の駆動方法を実現する具体的なシステム構成を図12に示す。入力映像情報は、フレームメモリ部により1フレーム期間遅延された映像情報とともにゲートアレイに入力される。ゲートアレイでは、入力映像情報及び1フレーム期間遅延された映像情報に基づき、上記の配列データを記憶している配列データ保持部のどのデータを参照するかを示すアドレス情報を配列データ保持部に出力する。配列データ保持部は、入力されたアドレス情報に基づき、記憶されている配列データをゲートアレイに出力する。ゲートアレイは、入力された配列データを強調映像情報として液晶表示装置に出力し、液晶表示装置に映像が表示される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような方法の場合、入力映像情報が三原色映像情報であればよいが、入力映像情報が輝度情報及び色差情報よりなる映像情報である場合、処理が複雑になるもしくは、配列データ数を大幅に増やす必要がでてくる。入力映像情報が輝度情報及び色差情報の場合、上記方法では、各画素の書き込み階調を求めるために、一旦、三原色映像情報に変換して、サブ画素毎の階調の変化を調べる必要がある。輝度情報及び色差情報から三原色映像情報への変換処理は、比較的負荷の高い処理であるため、ソフトウェアでリアルタイムに行うのは困難である。また、輝度情報及び色差情報をそのまま用いる場合は、輝度情報及び色差情報の組み合わせに応じた配列データが必要になるため、例えば1つの輝度情報と2つの色差情報により入力映像情報が構成されている場合、2563×2563の2次元の配列データが必要になる。配列データが大きくなれば、それに伴い配列データを保存するメモリも大きくする必要があり、コスト的に問題となる。また、配列データを参照する方式をソフトウェアで処理する場合、配列データはパソコンのメインメモリ等に保持されることになるが、メインメモリへのランダムアクセスは負荷の大きい処理であるため、入力映像情報をリアルタイムに表示することが困難となる。
【0009】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、輝度情報及び色差情報から構成される入力映像情報を、ソフトウェアによるリアルタイム処理が可能なほど、処理数を軽減し、高品質な動画を液晶ディスプレイに表示する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様による液晶表示方法は、輝度情報および色差情報を有する入力映像情報の前記輝度情報から前記入力映像情報を1フレーム遅延させた輝度情報を引いた輝度差分情報と、前記入力映像情報の前記色差情報から前記入力映像情報を1フレーム遅延させた色差情報を引いた色差差分情報とにそれぞれ強調補正係数α(αは1以上)を乗じ、前記輝度差分情報及び前記色差差分情報に前記1フレーム遅延させた輝度情報及び前記1フレーム遅延させた色差情報をそれぞれ加算して強調映像情報とし、この強調映像情報を液晶表示装置に表示することを特徴とする。
【0011】
なお、前記強調補正係数αは、ある初期階調から、ある到達階調へ前記液晶表示装置の階調が変化する場合に、1フレーム期間後に前記到達階調に到達するために必要となる前記液晶表示装置への書き込み階調を強調階調とし、前記到達階調から前記初期階調を引いた少なくとも2つ以上の階調差分と、前記強調階調から前記初期階調を引いた少なくとも2つ以上の強調階調差分情報の関係から求められるように構成しても良い。
【0012】
なお、前記強調補正係数αは、前記輝度差分情報及び前記色差差分情報の絶対値が所定の値より小さい場合に、1以下の正の実数であることが好ましい。
【0013】
なお、前記強調補正係数αは、前記輝度差分情報の絶対値が所定の値より小さい場合に、1以下の正の実数であることが好ましい。
【0014】
なお、前記強調補正係数αは、液晶表示装置の使用者が任意に設定可能であるように構成しても良い。
【0015】
なお、前記強調補正係数αは、前記入力映像情報が撮像された映像情報か、非撮像の映像情報かに基づいて決定されるように構成しても良い。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1に本発明の第1の実施形態による液晶表示方法を実施する実施装置の構成を示す。第1の実施形態の液晶表示方法を実施する実施装置は、1フレームの入力映像情報を保持できるフレームメモリ部2と、強調係数乗算部4と、階調情報変換部6と、液晶表示装置8とを備えている。
【0018】
以下に第1の実施形態による液晶表示方法の具体的な動作を説明する。輝度情報及び色差情報より構成される入力映像信号は、フレームメモリ部2及び強調係数乗算部4に入力される。入力映像情報としては、輝度情報及び色差情報から構成される映像情報であればどのようなものでもよいが、本実施形態では、1つの輝度情報(Y)及び2つを1対とする色差情報(U、V)により構成されるMPEG2(Moving Picture Experts Group2)のデコード結果を入力映像情報とする。
【0019】
MPEG2のデコード結果は、R、G、Bの3つのサブ画素により構成される1画素の情報を1つの輝度情報及び1対の色差情報により表示を行うが、色差情報に関しては、更に隣接する画素の情報を1つにまとめて伝送する方法が取られる。例えば、4画素の輝度情報に対し1対の色差情報を伝送する方式等がある。つまり、輝度情報に対して色差情報の解像度(画素数)が画面の垂直方向及び水平方向それぞれ1/2になっている。これは、人間の色に対する空間周波数特性と輝度に対する空間周波数特性を比較すると、色に対する空間周波数特性の方が、高周波領域における感度低下が大きいため、上記のように色情報の解像度を低下させることが可能となり、伝送する情報量を減らすことが可能となる。ただし、本実施形態では、説明を簡単にするために、R、G、Bの3つのサブ画素から構成される1つの画素は、1つの輝度情報(Y)と2つの色差情報(U、V)により伝送されているものとする。
【0020】
強調係数乗算部4は、入力映像情報とフレームメモリ部2に保持されて1フレーム期間遅延された映像情報から強調映像情報を以下の式により算出する。
【数1】
【0021】
ここで、(Y0、U0、V0)は1フレーム期間遅延された映像情報、(Y1、U1、V1)は入力映像情報、(Yα、Uα、Vα)は強調映像情報、αは強調補正係数を示している。強調補正係数αは、液晶表示装置8の応答速度により決定される値であり、以下の方法により導出される。
【0022】
図2(a)、(b)に初期階調L0の液晶表示装置8のある画素に書き込み階調L1の映像信号が書き込まれた際の、液晶表示装置8の応答の様子を示す。液晶表示装置8のリフレッシュレートを60Hzとすると、液晶表示装置8に動画を表示する際に残像の無い表示を行うためには16.7ms以内に階調L0から階調L1に変化する必要がある。しかし、一般に液晶表示装置の中間調間の応答は非常に遅く、L0及びL1が中間調であった場合、16.7ms後には液晶ディスプレイの応答は図2(a)に示すように完了していない。そこで図2(b)に示すように16.7ms後に階調L0から階調L1に到達するように強調階調Lαを決定する。この操作を全階調間の応答について行うことにより、ある階調からある階調に液晶表示装置が変化する際に、どの階調を書き込むことにより1フレーム後に所望の階調に到達できるかがわかる。ただし、Lαは0から液晶表示装置の最大階調(例えば256階調の液晶表示装置ならば、255)の値の範囲であるため、Lαを書き込んでもL1に到達できない場合があるが、このときLαは、液晶表示装置の最大階調(例えば256階調の液晶表示装置ならば、255)もしくは最小階調(0)とする。つまり、L0が100、L1が220のときに、255を書き込んでも200までしか応答できない場合は、Lαを255とする。逆にL0が200、L1が30で、0を書き込んでも50までしか応答できない場合は、Lαを0とする。
【0023】
L0、L1、Lαの関係を図3に示す。図3は、横軸をL1−L0、縦軸をLα−L0としてプロットした場合の図である。この図3は、L0が0、63、127、191、255の場合について示している。図3より、Lα−L0とL1−L0の関係はほぼ直線で近似できることがわかる。この場合、近似直線の傾きは、約1.4となる。近似直線は、Lα−L0とL1−L0の関係から最小二乗法等を用いることで算出することができる。このときの傾き値を強調補正係数αとする。この関係より、R、G、Bに関する3つのサブ画素の階調情報が(R0、G0、B0)から(R1、G1、B1)に変化する場合に1フレーム後(16.7ms後)に(R1、G1、B1)に到達するために必要となる強調階調(Rα、Gα、Bα)は、(2)式のように求めることができる。
【数2】
【0024】
また、1つの輝度情報及び2つの色差情報から構成される映像情報(Y、U、V)は、R、G、Bの3つのサブ画素から構成される1つの画素の階調情報(R、G、B)をマトリックス変換することにより求めることが可能である。このマトリックス変換を、次の(3)式に示す。
【数3】
【0025】
なお、(3)式のマトリックス変換の成分(係数)は一例であり、その他の異なるマトリックス係数でも構わない。また、同様に、(Y、U、V)から(R、G、B)の変換もマトリックス変換で表すことが可能であり、次の(4)式のように表される。
【数4】
【0026】
(2)、(3)、(4)式より、(Y0、U0、V0)から(Y1、U1、V1)に映像情報が変化する場合の強調映像情報(Yα、Uα、Vα)は、以下の式により求めることができる。
【数5】
【0027】
ここで、(R、G、B)から(Y、U、V)への変換マトリックスと、(Y、U、V)から(R、G、B)への変換マトリックスの積は、単位マトリックスであるため、最終的に(1)式の関係が求められる。
【0028】
(1)式により求められた強調映像情報(Yα、Uα、Vα)は、階調情報変換部6に入力され、強調階調情報(RW、GW、BW)に変換される。上記の操作を入力映像情報の1フレームに表示される画像の各画素について行うことにより、1フレームの強調階調情報が求められる。そして、液晶表示装置8に1フレームの強調階調情報が入力され、画像が表示される。
【0029】
なお、(1)式より(Yα、Uα、Vα)を求めた際に、(Yα、Uα、Vα)が異常値、すなわち、(Rα、Gα、Bα)に変換した際に、いずれかの値が0未満もしくは液晶表示装置8の最大階調を上回る値になる場合があるが、これらは、強調階調情報に変換する際に異常値として正常値の範囲にまるめるか、もしくは予め取り得る(Y、U、V)の範囲を決めておき、その範囲を超える場合に、強調係数乗算部4で正常値の(Y、U、V)のデータに変換すればよい。
【0030】
また、強調係数αの算出方法であるが、前記のように、Lα−L0、L1−L0の関係全てから最小二乗法等により求めてもよいが、前記関係のうち、Lαを書き込んでもL1に到達できない場合(つまり、Lαが255もしくは0でもL1に到達できない場合)を除いて、最小二乗法等により求める方法でもよい。これは、近似直線よりLαの値を求めた際に、前記のような場合は、Lαが256以上、もしくは0未満になり、これらのLαの値は、異常値としてソフトウェアもしくはハードウェア的に正常値に変換されるためである。
【0031】
次に、第1の実施形態の液晶表示方法を実施する実施装置の具体的なシステム構成を図4に示す。この図4に示す実施装置は、液晶ディスプレイを搭載したノートパソコンのMPEG2ビデオソフトウェアデコーダに上記強調係数乗算部4を加えた構成となっている。すなわち、上記実施装置は、MPEG2映像情報を復号化するMPEG2ビデオデコーダ部11と、強調係数乗算部4と、メモリ部21と、階調情報変換部6と、液晶表示装置8とを備えている。そして、MPEG2ビデオデコーダ部11および強調係数乗算部4はソフトウェア10により構成され、メモリ部21、階調情報変換部6、および液晶表示装置8はハードウェア20により構成されている。
【0032】
次に、図4に示す装置の動作を説明する。MPEG2映像情報は、MPEG2ビデオデコーダ部11により輝度情報及び2つの色差情報に復号化され、メモリ部21及び強調係数乗算部4に入力される。メモリ部21では、図1に示すフレームメモリ部2と同様に1フレーム分の映像情報を1フレーム期間保持することにより、1フレーム期間遅延された映像情報を強調係数乗算部4に出力する。メモリ部21は、ノートパソコンに搭載されているメインメモリやビデオ処理部の構成要素であるビデオメモリ等、映像情報を保持できるものであれば何でも良い。
【0033】
強調係数乗算部4は、入力された映像情報及びメモリ部21により1フレーム期間遅延された映像情報に基づき、(1)式に示す処理を行い、1フレームの各画素の映像情報について、強調映像情報として輝度強調情報及び2つの色差強調情報を出力する。なお、強調補正係数αは、搭載される液晶ディスプレイの応答特性に基づき予め決定された値を用いるが、概ね1から2の範囲である。これは、図5に示すように横軸に、液晶ディスプレイの最遅応答速度−16.7(1フレーム期間)、縦軸に強調係数αを取り、横軸が0の場合に強調係数が1を取るように近似直線を求めた場合に、近似直線の関係式が(追加式)のようになることから得られる。
【0034】
α=0.0049×(最遅応答速度[ms]−16.7)+1
横軸が0の場合に強調係数が1になるようにしたのは、横軸が0、すなわち最遅応答速度が16.7msの場合は、強調を行う必要がなくなるためである。現状の液晶ディスプレイの最遅応答速度は、概ね200ms以下であるため、上記の関係式より強調係数αは、最大でも2程度となる。
【0035】
輝度強調情報及び2つの色差強調情報は、ビデオ処理部の構成要素である階調情報変換部6により、R、G、Bの3つの階調情報に変換され、液晶表示装置8に出力され、表示が行われる。
【0036】
強調係数乗算部4で行われる処理は、1つの輝度情報及び2つの色差情報により構成される1画素の映像情報それぞれに対し1回の乗算、1回の減算及び1回の加算のみの処理であり、それほど負担の大きい処理ではない。更に(1)式の輝度情報及び色差情報のそれぞれに対する演算は、各々独立しているため、ノートパソコンに搭載されているCPU(Central Processing Unit)によりそれぞれを同時に、更には複数の画素について同時に処理することが可能であり、動画データをリアルタイムに処理することが十分に可能である。
【0037】
なお、本実施形態ではソフトウェアによる構成例を示したが、処理の一部もしくは全てをハードウェアで構成しても構わない。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の液晶表示方法は、動画データをソフトウェアによりリアルタイムに処理できるほど簡単な処理により、高品質な動画を液晶表示装置に表示することが可能となる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による液晶表示方法を、図6を参照して説明する。本実施形態による液晶表示方法は、基本的に第1の実施形態と同様であるが、入力映像情報の隣接するフレーム間の各画素の輝度情報差分値及び色差情報差分値の絶対値の全てが所定の値より小さい場合にその画素の強調補正係数αを1以下の値にすることを特徴とする。
【0040】
図6に本実施形態による液晶表示方法を実施する実施装置の構成を示す。この実施形態の液晶表示方法を実施する実施装置は、基本的には第1の実施形態を実施する実施装置において、各画素の輝度情報差分値及び色差情報差分値の絶対値の全てが所定の値より小さいかどうかの判断を行い、小さい場合にはその画素の強調補正係数αを1以下の値に変更する強調補正係数変更部3を新たに追加した構成となっている。
【0041】
次に、本実施形態による液晶表示方法の動作を説明する。入力された輝度情報(Y)及び色差情報(U、V)より構成される映像情報は、フレームメモリ部2及び強調補正係数変更部3に入力される。フレームメモリ部2の動作は第1の実施形態と同様であり、入力映像情報を1フレーム期間保持した後、1フレーム期間遅延した映像情報を出力する。
【0042】
強調補正係数変更部3では、入力された各画素についての輝度情報及び色差情報について差分値の絶対値を演算し、その値が所定の値Lthより小さいかどうかの判断を行う。1画素の映像情報を構成する輝度情報差分値及び色差情報差分値の全てが所定の値Lthより小さいと判断された場合には、その画素についての強調係数αを1以下の値として変更し出力し、少なくとも1つが所定の値Lthより大きいと判断された場合には、第1の実施形態と同様の方法により求められた強調補正係数αを出力する。
【0043】
強調補正係数変更部3から出力された強調補正係数αと入力映像情報の輝度情報及び色差情報は、強調係数乗算部4に入力され強調補正係数変更部3により決定された強調補正係数αを用いて(1)式に示す演算により輝度情報及び色差情報について強調映像情報を出力する。出力された強調映像情報は、第1の実施形態と同様に、階調情報変換部6に入力され強調階調情報に変換された後、液晶表示装置8に入力されて表示を行う。
【0044】
上記処理を行うことにより、画素の映像情報の変化が小さい場合の強調量を小さくすることが可能となる。つまり、例えば入力映像情報のノイズが多い場合、全ての階調間について強調が行われた場合、ノイズ成分も強調されてノイズを視認しやすくなり画質劣化につながる。ノイズ成分は、信号振幅としてはそれほど大きくないため、そのノイズ分の増幅を上記処理により増幅しないようにすることが可能となり、ノイズによる画質劣化を防止することができる。上記所定の値Lthは入力映像情報のノイズの大きさ(振幅)により決定することが望ましいが、通常5から10程度の値に設定すればよい。また、映像情報の差分絶対値が所定の値Lthより小さい場合の強調補正係数αは通常1とする、つまり強調を全く行わないという処理でよいが、特にノイズが大きい入力映像情報の場合は、強調補正係数αを1以下の値に設定することで、ノイズを減少させることが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態における液晶表示方法では、第1の実施形態に比べ、論理演算が1画素について、最大で3回増えるだけであり、論理演算に対する処理は通常比較的高速に処理が行えるため、十分に動画をリアルタイムに処理することが可能である。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の液晶表示方法は、第1の実施形態と同様に、動画データをソフトウェアによりリアルタイムに処理できるほど簡単な処理により、高品質な動画を液晶表示装置に表示することが可能となる。
【0047】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態による液晶表示方法を、図7を参照して説明する。この実施形態による液晶表示方法は、基本的に第2の実施形態と同様であるが、入力映像情報の隣接するフレーム間のある画素の輝度情報差分値の絶対値が所定の値より小さい場合にその画素の強調補正係数αを1以下の値にすることを特徴とする。
【0048】
本実施形態の液晶表示方法を実施する実施装置の構成を図7に示す。この第3の実施形態の液晶表示方法を実施する実施装置は、第2の実施形態を実施する実施装置と基本的な構成は同一である。しかし、第2実施形態に係る強調補正係数変更部3においては、輝度差分情報及び色差差分情報の全てが所定の値Lthより小さい場合に強調補正係数αを1以下の値と変更していたが、本実施形態に係る強調補正係数変更部3においては、輝度情報の差分値のみを判断の基準とし、色差情報の差分値は参照しない。これは、入力映像情報のノイズが特に視認されやすいのは、明るさ、すなわち輝度情報のノイズということに基づいており、そのため、輝度情報の差分値の絶対値のみを参照して強調補正係数αの変更を行っている。
【0049】
この方法によれば、1画素について論理演算を1度行うだけの処理となり、第2の実施形態に比べ処理を軽減することが可能である。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の液晶表示方法は、第1の実施形態と同様に、動画データをソフトウェアによりリアルタイムに処理できるほど簡単な処理により、高品質な動画を液晶表示装置に表示することが可能となる。
【0051】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態による液晶表示方法を、図8を参照して説明する。本実施形態による液晶表示方法を実施する実施装置は、基本的に第1の実施形態に係る実施装置において、強調補正係数αをユーザーが任意に設定、変更可能なインターフェースを備えていることを特徴とする。
【0052】
図8は、本実施形態の液晶表示方法を実施するノートパソコンのMPEG2映像の再生ソフトのインターフェースを示す。MPEG2映像の再生ソフトのシステムは、図4に示す第1の実施形態と同様であるが、ユーザーがインターフェースを介して強調補正係数αを変更できる構成となっている。MPEG2のビデオ再生ソフトはノートパソコンのOS(オペレーティングシステム)上で実行されており、本実施形態では、Windows98(米国マイクロソフト社登録商標)上で動作するものとした。OS及びMPEG2のビデオ再生ソフトは、グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)によりユーザーが操作できるように構成されており、例えば、マウス等のポインティングデバイスによりOS上のカーソルをユーザーが操作し、所定の操作を実行することができる。例えば、MPEG2再生ソフトは、再生、停止、早送り等のボタンが表示されており、ユーザーがポインティングデバイスによりOS上のカーソルを操作し、それぞれのボタンを選択することにより、MPEG2の映像情報に対し再生、停止、早送り等の処理を行うことができる。
【0053】
この実施形態におけるMPEG2の映像情報は、図9に示す実施装置によって行われる。この図9に示す実施装置は、図4に示す第1の実施形態において、強調係数乗算部4を強調係数乗算部4aに置き換えた構成となっている。この強調係数乗算部4aは、強調係数乗算部4において、強調補正係数αをユーザーが任意に設定、変更可能な機能を新たに追加した構成となっている。この図9に示す実施装置は、強調補正係数αがユーザーによって設定または変更されたときは、この設定または変更された強調補正係数αを用いて、そうでないときは搭載された液晶ディスプレイの応答特性に基づき予め決定された値を用いて、図4に示す実施装置と同様の処理が行われ、MPEG2ビデオ再生ソフトの映像表示領域に表示される。
【0054】
本実施形態に係るMPEG2ビデオ再生ソフトは、強調補正係数αを変更するための、例えばダイヤル状のGUIが備えられており、ユーザーがカーソルを用いてそのダイヤルを回転させる操作を行うことにより、強調補正係数を変更することができる。なお、ダイヤル状のGUIは一例であり、他には、スライダ状のGUIでも構わないし、またノートパソコンに備えられているインターフェースデバイスであるキーボードにより直接強調補正係数を数値で入力する方法もある。本実施形態により、液晶ディスプレイの応答速度に基づいてあらかじめ決定されている強調補正係数αを調整することが可能となり、ユーザーが好みに応じて、強調補正係数αをより大きい値にすることにより、よりシャープに表示を行う等の調整を行うことが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態ではソフトウェアによる構成例を示したが、処理の一部もしくは全てをハードウェアで構成しても構わない。例えば、ハードウェアで構成した場合は、強調補正係数αをハードウェアで構成されたつまみ等により調整を行える構成とすればよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の液晶表示方法は、ユーザーが好みに応じて動画の表示品質を可変にすることをソフトウェアによりリアルタイムに処理できるほど簡単な処理により行うことが可能となる。
【0057】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態による液晶表示方法を説明する。本実施形態による液晶表示方法は、基本的に第1の実施形態と同様であるが、入力映像情報が撮像されたものか非撮像のものかに応じて強調補正係数αに撮像補正係数βを乗算して表示を行うことを特徴としている。
【0058】
本実施形態による液晶表示方法を実施する実施装置の構成を図10に示す。この実施装置は、基本的な構成は図1に示す第1の実施形態に係る実施装置において、入力映像情報が撮像された映像情報か非撮像の映像情報かを示す撮像・非撮像情報により、撮像補正係数βを出力する撮像補正係数出力部15を新たに設けるとともに、強調係数乗算部4を強調係数乗算部4bに置き換えた構成となっている。
【0059】
ノートパソコン等、液晶ディスプレイを備えているパソコンでは、様々な映像情報が液晶ディスプレイに表示される。それらの映像情報は、大別すると撮像された映像情報(例えば映画)と非撮像の映像情報(例えばゲーム映像、CG映像)とに分けられる。撮像は、通常、ある一定期間(一般に1フレーム期間)にわたり被写体の情報を蓄積し記録するため、被写体が動いている場合、その動きに応じて被写体のエッジ等にボケが発生する。一方、ゲーム映像やCG映像等は、1枚のフレーム画像をコンピュータにより作製しているため、上記のような撮像ボケは含まれない。撮像ボケを含む映像情報を液晶ディスプレイに表示する場合、強調補正係数αにより液晶ディスプレイの応答による動画のボケを改善できても、もともとの画像に撮像ボケが含まれているため、その分動画の画質が劣化する。例えば100階調の背景画像上を200階調の箱画像が横スクロールしている動画を表示した場合の模式図を図11に示す。図11は縦軸が階調、横軸が液晶ディスプレイの水平方向表示位置を示す。図11(a)の状態で表示されている箱画像が右方向に横スクロールした場合、撮像ボケが無い場合には理想的には1フレーム後に図11(b)に示すように、箱画像が表示される。しかし、撮像ボケが含まれている場合には、図11(c)に示すように箱画像のエッジ部分には、背景画像の階調と箱画像の階調が平均化された撮像ボケが現れる。この画像に対し、強調補正係数αにより1フレーム後に液晶ディスプレイの応答が完了するような映像を表示しても、図11(d)に示すように、1フレーム後の表示画像は撮像ボケを含んだ画像となり、動画の画質が劣化する。そこで、図11(e)に示すように、更に強調を行った映像を表示することにより、1フレーム後の表示画像は、図11(d)に比べ撮像ボケを低減することができ、動画の画質を向上させることができる。
【0060】
次に具体的な動作例を説明する。入力映像情報とフレームメモリ部により1フレーム期間遅延された映像情報は、第1の実施形態と同様に、強調係数乗算部4bに入力される。撮像補正係数出力部15は、入力された撮像・非撮像情報に基づき入力映像情報が撮像された映像か、非撮像の映像かを判断し、撮像補正係数βを出力する。撮像補正係数βは、撮像された映像の撮像ボケの程度及び液晶ディスプレイの応答特性により様々な値を用いることができるが、通常1〜2の値をとる。本実施形態では、入力映像情報が撮像された映像情報の場合にβ=1.5、非撮像の映像情報の場合にβ=1とした。また、撮像・非撮像情報は、種々の情報より得ることが可能である。例えば、入力映像情報がDVD(Digital Versatile Disk)に記録されている映像であれば、映画等の撮像された映像情報と判断し、入力映像情報がゲーム映像であれば、非撮像の映像情報であると判断する。出力された撮像補正係数βは、強調係数乗算部4bに入力される。強調係数乗算部4bでは、あらかじめ定められた強調補正係数α及び入力された撮像補正係数βを用いて、(6)式の演算を行い、強調映像情報を出力する。
【数6】
【0061】
出力された強調映像情報は、第1の実施形態と同様に、階調情報変換部6によって強調階調情報に変換された後、液晶表示装置8に送られて液晶表示装置8に表示される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の液晶表示方法は、撮像による撮像ボケを含んだ動画においても、高品質な動画として液晶表示装置に表示することを、ソフトウェアによりリアルタイムに処理できるほど簡単な処理により行うことが可能となる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示された構成要件を適宜組み合わせることによって種々の発明が抽出され得る。例えば、開示された構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、所定の効果が得られるものであれば発明として抽出され得る。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、ソフトウェアでリアルタイムでの処理が可能なほど簡単な処理により、液晶ディスプレイの応答特性によるボケの無い、高品質な動画を液晶ディスプレイの表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による液晶表示方法を実施する実施装置の構成を示す図。
【図2】第1の実施形態における液晶ディスプレイの応答の様子を示す図。
【図3】第1の実施形態におけるL0、L1、Lαの関係を示す図。
【図4】第1の実施形態による液晶表示方法を実施する具体的な一構成を示す図。
【図5】搭載される液晶ディスプレイの応答特性に基づき決定される強調係数αの値が概ね1から2の範囲にあることを説明する図。
【図6】本発明の第2の実施形態による液晶表示方法を実施する実施装置の構成を示す図。
【図7】本発明の第3の実施形態による液晶表示方法を実施する実施装置の構成を示す図。
【図8】本発明の第4の実施形態によるMPEG2ビデオ再生ソフトのGUIを示す図。
【図9】本発明の第4の実施形態による液晶表示方法を実施する実施装置の構成を示す図。
【図10】本発明の第5の実施形態による液晶表示方法を実施する実施装置の構成を示す図。
【図11】第5の実施形態による液晶表示方法の効果を説明する図。
【図12】従来技術の構成を示す図。
【符号の説明】
2 フレームメモリ部
3 強調補正係数変更部
4 強調係数乗算部
4a 強調係数乗算部
4b 強調係数乗算部
6 階調情報変換部
8 液晶表示装置
10 ソフトウェア
11 MPEG2ビデオデコーダ部
20 ハードウェア
21 メモリ部(システムメモリまたはビデオメモリ)
32 フレームメモリ部
34 配列データ保持部
36 ゲートアレイ
38 液晶表示装置
Claims (2)
- 輝度情報(Y)および色差情報(U、V)を有する入力映像情報を入力し、
前記入力映像情報の前記輝度情報から、前記入力映像情報を1フレーム遅延させて得られる遅延輝度情報を引いて輝度差分情報を求め、
前記入力映像情報の前記色差情報から、前記入力映像情報を1フレーム遅延させて得られる遅延色差情報を引いて色差差分情報を求め、
前記輝度差分情報と前記色差差分情報とに強調補正係数を乗じ、
前記強調補正係数を乗じた前記輝度差分情報に前記遅延輝度情報を加算するとともに、前記強調補正係数を乗じた前記色差差分情報に前記遅延色差情報を加算して、強調された映像情報である強調映像情報(Yα、Uα、Vα)を求め、
前記強調映像情報(Yα、Uα、Vα)を、赤(R)、緑(G)、青(B)に関する階調情報である強調階調情報(Rα、Gα、Bα)に変換し、
前記強調階調情報に基づいて液晶表示装置の表示を行い、
前記強調補正係数は、前記入力映像情報に対応する赤(R)、緑(G)、青(B)に関する階調情報の各々から前記入力映像情報を1フレーム遅延させた遅延映像情報の赤(R)、緑(G)、青(B)に関する階調情報の各々を引いた差分階調情報に前記強調補正係数を乗じ、前記強調補正係数が乗じられた前記差分階調情報の各々に前記遅延映像情報の前記赤(R)、緑(G)、青(B)に関する階調情報の各々を加算すると前記強調階調情報(Rα、Gα、Bα)になる性質を有する、
ことを特徴とする液晶表示方法。 - 前記強調補正係数は、
到達階調から初期階調を引いた少なくとも2つ以上の階調差分と、
1フレーム期間後に前記液晶表示装置の階調が前記初期階調から前記到達階調へ到達するために必要となる前記液晶表示装置への書き込み階調である強調階調から、前記初期階調を引いた少なくとも2つ以上の強調階調差分情報との関係から求められる
ことを特徴とする請求項1記載の液晶表示方法。
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