JP3807782B2 - ヒアルロニダーゼ阻害剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、優れたヒアルロニダーゼ阻害活性を有する、極めて安全性の高い海藻抽出物よりなるヒアルロニダーゼ阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸の加水分解酵素であり、皮膚のほか動物組織に広く分布している。本酵素の基質となるヒアルロン酸は、皮膚、靭帯、関節液、眼の硝子体などの組織に多く存在するムコ多糖の一種であり、例えば、皮膚においては、細胞の保護、栄養の運搬、組織水分の保持、柔軟性の維持等に、また関節液として組織構造、機能の維持および潤滑性の保持等に、重要な役割を果たしている。
【0003】
皮膚や関節における生体ヒアルロン酸量は、老化または病的状態により減少することが知られており、その結果、皮膚の乾燥、肌荒れ、ハリ、弾力性の低下、シミ、シワの増加、あるいは関節の湿潤性悪化による関節痛等を引き起こす。
このような状態に対して、ヒアルロニダーゼ阻害剤は、ヒアルロン酸の分解を抑制することにより生体ヒアルロン酸量の維持に寄与すると考えられている。
また、最近では、ヒアルロン酸を配合した化粧料の皮膚への塗布や関節へのヒアルロン酸の注入等の措置がとられているが、ヒアルロニダーゼ阻害剤は、これら外因性ヒアルロン酸の安定化にも利用することができる。
【0004】
さらに、ヒアルロニダーゼは、炎症時に活性化され、結合組織のマトリックスを破壊し、炎症系の細胞の組織への浸潤、血管の透過性を亢進すること、I型アレルギーにおける肥満細胞からのヒスタミン遊離の過程に介在している可能性が高いことなどが知られている。
従って、ヒアルロニダーゼ阻害活性は、生体中のヒアルロン酸レベルの維持に関与するだけでなく、抗炎症、抗アレルギー活性とも高い相関を示す。実際、これまでに開発された抗炎症剤、抗アレルギー剤であるインドメタシン、アスピリン、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラストなど多くにヒアルロニダーゼ阻害活性が認められている。
【0005】
以上のようなことから、優れたヒアルロニダーゼ阻害活性を有し、かつ皮膚等の人体への適用に際し、高い安全性をもったヒアルロニダーゼ阻害剤の開発が期待されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れたヒアルロニダーゼ阻害活性を有し、しかも安全性に優れたヒアルロニダーゼ阻害剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、種々の天然物、特に植物抽出物を対象として検討を行った。
既に陸上植物については、飲用に供されている茶から抽出される茶ポリフェノール類(特開平6−9391号)、生薬又は飲食物として使用されているチンピ、キジツ、羅漢果の抽出物(特開平6−80576号)、ブナ科の植物であるウラジロガシ抽出物(特開平6−239757号)、カシューナッツ殻油(特開平6−329526号)、ウルシ科植物抽出物(特開平7−10765号)等からヒアルロニダーゼ阻害活性等をもつ物質が見い出されているが、本発明者らは、新たなヒアルロニダーゼ阻害剤を開発すべく、鋭意スクリーニングを行った結果、以下に示す海藻類の抽出物に目的のヒアルロニダーゼ阻害活性を見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、緑藻類のハネモ属、イワヅタ属、ミル属、褐藻類のマツモ属、オキナワモズク属、モズク属、レッソニア属、マクロシスティス属、ヒバマタ属、ダービリア属、紅藻類のアマノリ属、ヒラクサ属、オバクサ属、フノリ属、スギノリ属、イリダエ属(Iridaea属)、ツノマタ属、ダルス属、イギス属に属する海藻の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0009】
【作用】
本発明の海藻抽出物が、皮膚等に対して優れた老化防止効果等を発揮する機構については、抽出物中に含まれるヒアルロニダーゼ阻害活性物質が、皮膚細胞におけるヒアルロン酸の分解を抑制、そのレベルを維持することにより、皮膚の保湿性、柔軟性、弾力性の低下を抑え、顕著な皮膚老化防止効果等を示すものと推測される。
また、その優れたヒアルロニダーゼ阻害活性により、ヒアルロニダーゼに起因する炎症やアレルギーの予防、治療に有効となる。
【0010】
以下に、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明に用いられる海藻としては、例えば、緑藻類の、ハネモ属ではハネモ(Bryopsis plumosa)、イワヅタ属では、クビレヅタ(Caulerpa lentillifera)、ミル属ではミル(Codium fragile)、褐藻類の、マツモ属ではマツモ(Analipus japonicus)、オキナワモズク属ではオキナワモズク(Cladosiphon okamuranus)、モズク属ではモズク(Nemacystis decipiens)、レッソニア属ではLessonia nigrescens 、マクロシスティス属ではジャイアントケルプ(Macrocystis pyrifera)、ヒバマタ属ではヒバマタ(Fucus evanescens)、ダービリア属ではDurvillea antarctica、紅藻類の、アマノリ属ではアサクサノリ(Porphyra tenera)、スサビノリ(Porphyra yezoensis)、ヒラクサ属ではヒラクサ(Beckerella subcostata)、オバクサ属ではPterocladia tenuis、フノリ属ではフクロフノリ(Gloiopeltis furcata)、マフノリ(Gloiopeltis tenax)、スギノリ属ではGigartina chamissoi、イリダエ属(Iridaea属)ではIridaea pulchra、エゾツノマタ(別名クロハギンナンソウ)(Iridaea cornucopiae)、ツノマタ属ではトチャカ(Chondrus crispus)ツノマタ(Chondrus occellatus)、ダルス属ではダルス(Rhodymenia palmata)、イギス属ではアミクサ(Ceramium boydenii)などを挙げることができる。
【0011】
本発明物質を抽出する方法は、特に制限はなく、通常の抽出法が採用され、水、親水性有機溶媒、その他の有機溶媒等よりなる群から選ばれる単独あるいは2種以上の任意の混合溶剤を使用して海藻から抽出される。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、n−ヘキサン、ベンゼン等が挙げられる。
これらの中でも、特に、水または水とメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールとの混合物を用いて抽出することが好ましい。この場合の水と低級アルコールの比率は、水/低級アルコールが100/0〜30/70(V/V、体積比)であることが好ましい。
海藻原体と抽出溶媒との比率は、海藻原体(乾燥物)/溶媒比が1/50〜1/2の範囲が好ましい。
その他の抽出条件としては、抽出温度は特に制限はないが、好ましくは5〜80℃の範囲で、1〜24時間、撹拌しながら行うのが好ましい。抽出pHは、極端な酸性、極端なアルカリ性に傾かなければ、特に制限はない。
【0012】
この抽出液は、そのまま用いても、あるいは希釈液としたり、濃縮エキスとしてもよく、また凍結乾燥などにより乾燥粉末物としたり、ペースト状に調製してもよい。
乾燥粉末に調製した場合には、水または水を含むメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールに予め溶解して用いるか、あるいは後述の水を含む外用組成物中で可溶化して用いるのが好ましい。
【0013】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、内服液、細粒剤等の内服剤とすることができ、また、リニメント剤、スプレー剤、ローション剤、軟膏等の外皮用とすることができる。
皮膚外用剤として用いる場合には、必須成分である海藻抽出物を任意の濃度で配合できるが、通常、各種皮膚外用剤中に0.01〜30重量%(以下、単に「%」という。)、好ましくは0.1〜10%配合させるのがよい。
【0014】
本発明の必須成分である海藻抽出物を配合した皮膚外用剤には、上記必須成分の他に、通常外用剤に用いられる原料、例えば、界面活性剤、油分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、水等を配合することができる。
【0015】
具体的には、界面活性剤としては、親油型グリセリンモノステアレート、自己乳化型グリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン化ステロール、ポリオキシエチレン化ラノリン、ポリオキシエチレン化蜜ロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン界面活性剤、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルリン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤、塩酸アルキルアミノエチルグリシン液、レシチン等の両性界面活性剤等を例示することができる。
【0016】
油分としては、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、椿油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油、アボガド油等の植物油脂類、ミンク油、卵黄油等の動物油脂類、蜜ロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等の炭化水素類、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸等の天然および合成脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール等の天然および合成高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、コレステロールオレート等のエステル類等を例示することができる。
【0017】
保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、アミノ酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等のNMF成分、ヒアルロン酸、コラーゲン、ムコ多糖類、コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子物質等を例示することができる。
【0018】
増粘剤としては、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、硅酸アルミニウム、マルメロ種子抽出物、トラガントガム、デンプン等の天然高分子物質、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、可溶性デンプン、カチオン化セルロース等の半合成高分子物質、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子物質等を例示することができる。
【0019】
防腐剤としては、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロカルバニリド、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、レゾルシン、エタノール等を例示することができる。
【0020】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸等を、キレート剤としては、エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等を、pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸水素カリウム等をそれぞれ例示することができる。
【0021】
紫外線吸収・散乱剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート、酸化チタン、カオリン、タルク等を例示することができる。
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP、ビタミンU、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、α−リポ酸、オロット酸およびそれらの誘導体等を例示することができる。
アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジンおよびそれらの誘導体等を例示することができる。
【0022】
なお、任意成分は、これらに限定されるものではない。上記必須成分と任意成分を適当に配合することにより、例えば、本発明の海藻抽出物0.01〜30%、任意成分として油分0〜80%、界面活性剤0〜12%、保湿剤1〜15%、精製水バランス、防腐剤微量を含有する皮膚外用剤を提供することができる。具体的には、クリーム、乳液、化粧水、美容液、パック剤、アンダーメークアップ、ファンデーション、ゼリー剤、軟膏等の製品形態として用いることができる。
【0023】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤を皮膚化粧料として用いる場合の具体例を示すと以下の(1)〜(4)の通りである。
(1) 皮膚用クリームの場合
本発明の海藻抽出物0.1〜10%、油分20〜70%、界面活性剤2〜7%、保湿剤1〜10%、精製水バランス、防腐剤微量、香料微量を含有する皮膚用クリーム。
【0024】
(2) 乳液の場合
本発明の海藻抽出物0.1〜10%、油分10〜40%、アルコール類0〜15%、界面活性剤1〜5%、保湿剤1〜10%、増粘剤0〜2%、精製水バランス、防腐剤微量、香料微量を含有する乳液。
【0025】
(3) 化粧水、美容液の場合
本発明の海藻抽出物0.1〜10%、アルコール類5〜20%、界面活性剤0〜2%、保湿剤2〜8%、増粘剤0〜2%、酸化防止剤0〜0.5%、キレート剤0〜0.1%、pH調整剤0〜0.2%、精製水バランス、防腐剤微量、色素0〜微量、香料微量を含有する化粧水、美容液。
【0026】
(4) パック剤の場合
本発明の海藻抽出物0.1〜10%、アルコール類2〜10%、保湿剤2〜10%、無機粉体0〜20%、造膜剤10〜20%、精製水バランス、防腐剤微量、香料微量を含有するパック剤。
【0027】
【実施例】
次に、実施例、試験例等により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
製造例(海藻抽出物の製造)
マツモの乾燥物100gを20倍量の水にて3時間撹拌し、その上澄みを濃縮および凍結乾燥することにより、マツモ抽出物16gを得た。また、同様にして、マツモ以外の海藻、すなわち、緑藻類のハネモ、クビレヅタ、ミル、ホソジュズモ、褐藻類のオキナワモズク、モズク、Ecklonia maxima、ジャイアントケルプ、Lessonia nigrescens 、ヒバマタ、Durvillea antarctica、シオミドロ、紅藻類のオゴノリ、アサクサノリ、スサビノリ、ヒラクサ、Pterocladia tenuis、フクロフノリ、マフノリ、Gigartina chamissoi、Iridaea pulchra、エゾツノマタ、トチャカ、ツノマタ、ダルス、カギノリ、アミクサについて、夫々の抽出物を得た。
さらに、他の溶媒、すなわち、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、n−ヘキサン、ベンゼンについても、上記水と同様の方法で上記夫々の海藻類から抽出物を得た。
【0029】
試験例1(ヒアルロニダーゼ阻害活性試験)
上記製造例で得た夫々の海藻抽出物(エキス試料)のヒアルロニダーゼ阻害活性の測定は、以下の方法で行った。
酵素(type IV−S from Bovine testis,SIGMA社製)溶液100μl(1,580unit/ml)に上記製造例で得た夫々の海藻抽出エキス試料200μlを加えて、37℃で20分間放置した。次に、酵素活性化剤(Compound 48/80,SIGMA社製)溶液(0.1mg/ml)200μlを加え、37℃で20分間放置した後、基質であるヒアルロン酸カリウム(from rooster comb,和光純薬社製)溶液(0.4mg/ml)500μlを入れ、37℃で40分間放置した。
次いで、0.4N水酸化ナトリウム溶液200μlを加えて反応を停止させた後、Morgan-Elson法の変法(J. Biol. Chem.,217,959(1955))で生成したN−アセチルヘキソサミン量を吸光度OD585nmから求めた。
また、酵素反応には0.1mM 酢酸緩衝液(pH3.5)を用い、ヒアルロニダーゼ阻害活性は次式より求められる阻害率で算出した。
【0030】
【数1】
【0031】
上記製造例で得た夫々の海藻類の水抽出物(エキス試料)について、種々試料濃度での阻害率から50%阻害濃度(IC50)を算出した結果を下記表1に示す。数値が低い程、ヒアルロニダーゼ阻害活性が高いことを示す。
【0032】
【表1】
【0033】
(表1の考察)
上記表1に示した結果から明らかなように、本発明の海藻抽出物、すなわち、緑藻類のハネモ、クビレヅタ、ミル、褐藻類のマツモ、オキナワモズク、モズク、Ecklonia maxima、ジャイアントケルプ、Lessonia nigrescens 、ヒバマタ、Durvillea antarctica、紅藻類のアサクサノリ、スサビノリ、ヒラクサ、Pterocladia tenuis、フクロフノリ、マフノリ、Gigartina chamissoi、Iridaea pulchra、エゾツノマタ、トチャカ、ツノマタ、ダルス、アミクサの各抽出物は、ヒアルロニダーゼ阻害活性が知られているクロモグリク酸ナトリウム(対照)に匹敵する非常に高いヒアルロニダーゼ阻害活性を示すものが多く認められた。また、他の抽出溶媒から得られた抽出物も、水抽出物とほぼ同様の結果を示した。
特に、レッソニア属のLessonia nigrescens 、ダービリア属のDurvillea antarctica、フノリ属のマフノリ、Iridaea属のIridaea pulchra、エゾツノマタは、ヒアルロニダーゼ阻害活性が著しく高いことが判明した。
これに対し、同じ海藻抽出物であっても、本発明の範囲外となる海藻抽出物、すなわち、緑藻類のジュズモ属のホソジュズモ、褐藻類のシオミドロ属のシオミドロ、紅藻類のオゴノリ属のオゴノリ、カギノリ属のカギノリの夫々の抽出物は、ヒアルロニダーゼ阻害活性を示さなかった。
【0034】
実施例1、比較例1(クリームの製造)
下記表2に示す成分1〜7および8〜11を別々に混合溶解した後、成分8〜11の溶液を撹拌しながら、ここに成分1〜7の溶液を添加し乳化させた後、冷却しながら途中で成分12を加えて室温まで冷却し、下記表2に示すクリームを調製した。
なお、表中の数字は、配合量(重量%)を示し、POE(20)は、ポリオキシエチレンとその付加モル数を示す(以下の実施例等においても同様)。また、比較例1は、成分8の本発明の海藻抽出物を配合しないでクリームを調製した場合である(以下の比較例2〜4においても海藻抽出物を配合しないで調製したものである)。
【0035】
【表2】
【0036】
実施例2、比較例2(化粧水の製造)
下記表3に示す成分1〜6を順次成分7に加えて溶解し、さらに成分8を加え下記表3に示す化粧水を調製した。
【0037】
【表3】
【0038】
実施例3、比較例3(美容液の製造)
下記表4に示す成分1〜4と成分5〜9を別々に溶解後、混合して美容液を調製した。
【0039】
【表4】
【0040】
実施例4、比較例4(乳液の製造)
下記表5に示す成分1〜7を70℃で加熱溶解した。一方、成分8〜13を70℃で加熱溶解し、前記油脂溶液(成分1〜7)を添加し、乳化させた後、冷却しながら、途中で成分14を加えて室温まで冷却し、下記表5に示す乳液を調製した。
【0041】
【表5】
【0042】
試験例2(使用テスト評価結果)
上記製造例で得た各海藻の水抽出物を含む上記実施例1〜4及び比較例1〜4のクリーム、化粧水、美容液、乳液の有効性を下記の使用テストにより評価した。
(使用テスト)
女性(30〜50才)5名づつに、1日2回(朝と夜)、連続3カ月間実施例1〜4と比較例1〜4をハーフ・フェイス法で左右顔面に別々に使用させた後、小皺(A)および質〔艶(B)、潤い(C)〕についてアンケート調査を行った。
アンケート調査は、実施例(本発明品)が良い場合には○(改善効果あり)、実施例(本発明品)と比較例が変わらない場合には△、比較例が良い場合には×(改善効果なし)とした。
これらの使用テストの結果を下記表6に示す。
【0043】
【表6】
【0044】
(表6の考察)
上記表6に示す結果から明らかなように、本発明範囲の海藻の抽出物を配合した製剤(実施例)〔クリーム、化粧水、美容液、乳液〕は、小皺(A)、艶(B)、潤い(C)の改善効果が認められた。この効果は、海藻抽出物中に含まれるヒアルロニダーゼ阻害活性物質が、皮膚細胞におけるヒアルロン酸の分解を抑制、そのレベルを維持することにより、皮膚の保湿性、柔軟性、弾力性の低下を抑え、顕著な皮膚細胞の賦活化及び皮膚老化防止効果等を図り、皺や肌荒れの発生を予防し、滑らかでしっとりとした若々しい肌を与えたものと推測される。
一方、同じ海藻抽出物であっても、本発明範囲外となる海藻の抽出物、すなわち、緑藻類のジュズモ属のホソジュズモ、褐藻類のシオミドロ属のシオミドロ、紅藻類のオゴノリ属のオゴノリ、カギノリ属のカギノリの夫々の抽出物を配合した製剤(比較例)〔クリーム、化粧水、美容液、乳液〕は、小皺(A)、艶(B)、潤い(C)とも改善効果は認められなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、ヒアルロン酸分解抑制作用により、皮膚細胞の賦活化、皮膚の老化防止が図られ、皺や肌荒れの発生を予防、滑らかでしっとりとした若々しい肌を与える効果が得られ、これを配合することにより、安全性の高い皮膚外用剤等に好適なヒアルロニダーゼ阻害剤が提供される。
また、本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、関節の湿潤性を保ち、関節の治療剤等としても利用でき、また、抗炎症、抗アレルギー剤としても有用である。
さらに、本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、古くから食用等に用いられる海藻類から抽出されるものであるため、人体への安全性が極めて高く、しかも、優れたヒアルロニダーゼ阻害活性を有することから医薬品、医薬部外品、化粧品等の各種用途に使用することができる。
Claims (1)
- 緑藻類のハネモ属、イワヅタ属、ミル属、褐藻類のマツモ属、オキナワモズク属、モズク属、レッソニア属、マクロシスティス属、ヒバマタ属、ダービリア属、紅藻類のアマノリ属、ヒラクサ属、オバクサ属、フノリ属、スギノリ属、イリダエ属(Iridaea属)、ツノマタ属、ダルス属、イギス属に属する海藻の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするヒアルロニダーゼ阻害剤。
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