JP3792380B2 - 乗降補助構造付きシートおよびその乗降補助具 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車等に装着される車両用等のシート、特に、高齢者、身障者等の乗降の容易化をはかる乗降補助構造付きシートおよびその乗降補助具に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、乗用車等の自動車用のシートのシートクッションにおいては、座面の尻部位置をその前方位置より低く設定した、いわゆる座面後傾型で、その左右の側部を座面より上方に***させた、いわゆるバケット形状のものが一般的となっている。
【0003】
このような形状のシートクッションを備えたシートにおいては、尻部の沈んだ後傾姿勢での着座となるため、着座姿勢の安定化が容易にはかられる。そして、シートに対する着座者の動き、特に左右方向への尻部、下肢部の動きが、***した側部での抱持のもとで抑制されるため、着座者の快適性、ひいては安全性の確保が、優れたホールド性(保持性)、安定性のもとで容易に確保できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
乗用車等(自動車)のシートにおいては、ボディ側面のドアスペースを介して乗降するため、乗用車等の横幅方向におけるアウターサイド(外方サイド)が、そのシートの乗降サイドとなる。そして、下肢部をドアスペースから車外に移動させた後に、シートに対する横向き、かつ前傾姿勢から立ち上がる動作が、乗用車等における一般的な降車動作となっている。
【0005】
ところで、尻部の沈んだ後傾の着座姿勢においては、その姿勢からの立ち上がり動作、つまり降車動作が容易でなくなる。特に、公知のシートにおいては、シートクッションの側部が座面より***したバケット形状となっているため、シートに対する横向きに着座姿勢を変えたとしても、この横向き姿勢が尻部の沈んだ後傾の着座姿勢であることに変わりはない。また、乗車の際においては、着座によって尻部が大きく沈み込むため、乗車動作のバランスを崩しやすい。
【0006】
通常は、身体の柔軟性や腕力でのサポート等によって、降車時の立ち上がり難さや乗車時のバランスの崩れ等を補っているが、身体の柔軟性や腕力に劣る高齢者、あるいは非力な女性等においてはこれが十分に期待できない。つまり、着座姿勢での安定性、快適性に優れた形状のシートであっても、それが高齢者等の円滑、容易な乗降の妨げとなる場合も多分に考えられる。
【0007】
また、下肢部の不自由な身体障害者(身障者)においては、ドアスペースに整列された車椅子の座面とシートの座面との間での尻部の移動が、乗降動作の主動作となる。しかし、側部の***した公知のシート形状では、***した側部の高さがその尻部の移動の妨げとなりやすい。そして、身障者の乗降の際においては、介護者が介護につく場合も多いが、乗用車等のドアスペースは低く狭いため、介護者による介護も容易ではない。
【0008】
この発明は、着座姿勢での快適性、安全性を損なうことなく、乗降性を改善する乗降補助構造付きシートおよびその乗降補助具の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、この発明の乗降補助構造付きシートによれば、シートクッションが、その上面を座面とするクッション本体と、クッション面をクッション本体側に配して、クッション本体の左右の側方に立設された一対のバケット状サイド部とに分離形成され、この左右一対のバケット状サイド部のうち、乗降の際に尻部の通過される側のサイド部が、所定の固定部材に対して固定される取り付けブラケットの上部にベースフレームの下端を、当該取り付けブラケットの下部にリンクアームの下端を、それぞれ回動自在に連結し、このリンクアームの上端を、ベースフレームに摺動自在に連結してなる機構部と、所定の偏倚力によるフックへのロックバーの挿入、係合のもとで、ベースフレームの回動を特定位置で規定可能とするロック手段とを備えて、クッション面をほぼ水平上面とする倒設位置への回動、保持のもとで乗降補助具として機能可能な可倒サイド部として形成されている。
【0010】
そして、クッション本体が、後部の支点を中心とした回動のもとで前端を下降可能に支持され、所定の操作に伴うこの前端の下降により、クッション本体の座面を、倒設位置での可倒サイド部のクッション面に連続するほぼ水平面として設定可能としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1、図2に示すように、この発明に係る乗降補助構造付きシート10においては、座面後傾型としてなるシートクッション12が、その上面を座面12a とするクッション本体12-1と、このクッション本体の左右の側方に立設された一対のバケット状サイド部12-2とに分離形成されている。そして、この左右一対のバケット状サイド部12-2のうち、たとえば、クッション本体12-1に対する着座者の乗降サイド、つまり乗降の際に着座者の尻部の通過されるドアスペースサイド(アウターサイド)のサイド部12-2o が、図1に示す立設位置でシートクッション12のバケット部として機能可能、かつ立設位置から外方に倒した図3に示す倒設位置で乗降補助具として機能可能な、可倒サイド部として形成されている。
【0013】
この発明の実施の形態においては、正面から見た左方を乗用車等の横幅方向に対するアウターサイド、右方を同インナーサイドとするシート(乗降補助構造付きシート)10を例示して、以下説明する。つまり、図1ないし図3を見るとわかるように、このシート10においては、正面から見た左方のバケット状サイド部12-2が、可倒サイド部12-2o として設定されている。
【0014】
なお、図1、図3に示すように、乗降サイドとなるドアスペースサイド(アウターサイド)に対するインナーサイド(乗用車等の中央サイド;正面から見たシート10の右方)のサイド部12-2i は、立設位置で固定された固定サイド部として形成されている。
【0015】
図2に加えて図4を見るとわかるように、シート10は、たとえば、シートスライド装置14を備えている。シートスライド装置14は、たとえば、ガイドレール16に対してスライド可能なスライドレール18を備えて構成され、シートクッション12へのスライドレールの固定、および床面等へのガイドレールの固定のもとでシート10をその前後方向(図中右左方向)にスライド可能に支持するように、シートに対する左右(アウターサイド、インナーサイド)の離間位置にそれぞれ配設されている。
【0016】
なお、このようなシートスライド装置14としては、特開平05−220025号公報等に開示の公知の構成が何ら変更を加えることなく利用可能であり、また、このシートスライド装置の構成自体はこの発明の趣旨でないため、ここでは詳細に説明しない。
【0017】
シートクッション12は、たとえば、シートスライド装置のスライドレール18に一体的に設けられた左右一対のベースプレート20o、20i へのクッション本体12-1、およびバケット状サイド部12-2(可倒サイド部12-2o、固定サイド部12-2i)の組み付けのもとで、対応形状に組み立てられる。
【0018】
たとえば、図2に示すように、固定サイド部12-2i は、クッション面12b をクッション本体12-1側に垂直状態で配した立設位置で、前後一対のステー22を介して、対応サイドのベースプレート20i に連結、固定されている。
【0019】
ここで、図5、図6に示すように、この発明においては、可倒サイド部12-2o が、一対の取り付けブラケット24をベースにユニット化されるとともに、この取り付けブラケットを介して、乗降サイドとなるアウターサイドのベースプレート20o に取り付けられている。そして、この可倒サイド部12-2o は、クッション面12c をクッション本体12-1側に垂直配置した図1に示す立設位置と、クッション面をほぼ水平位置とする図3に示す倒設位置との間を回動可能に構成されている。
【0020】
この可倒サイド部12-2o は、取り付けブラケット24の上端に、支軸26を介して回動自在に下端の連結されたベースフレーム28と、取り付けブラケットの下端に、回動自在にその下端30a の抱持、連結されたリンクアーム30との組み合わせを備えている。そして、このリンクアームの上端30b を、ベースフレーム26に、ガイドプレート31を介して摺動可能に連結することで、可倒サイド部12-2o を立設位置、倒設位置間で回動可能とする機構部が構成されている。
【0021】
このような構成では、支軸28を中心としたベースフレーム26の回動に追従した、下端30a を中心としたリンクアーム30の回動に伴う、ガイドプレート31、ベースフレームに対するリンクアームの上端30b の摺動によって、取り付けブラケット24に対するベースフレームの回動範囲、つまり可倒サイド部12-2o の回動範囲が、図5に実線で示す立設位置と、同図に二点鎖線で示す倒設位置との間に規定される。
【0022】
ここで、図5、図6に示すように、この発明の実施の形態においては、リンクアームの下端30a が、取り付けブラケット24に対して上下方向に摺動可能に抱持、連結されている(図5の実線、および一点鎖線参照)。そして、可倒サイド部12-2o をそのロックのもとで立設位置に保持するロック手段32が、上方へのリンクアーム30の引き上げのもとでロック解除可能に設けられている。
【0023】
ロック手段32として、たとえば、リンクアーム30の左右サイド間に架設、固定されたロックバー34と、このロックバーの挿入、係合可能なフック片36との組み合わせを有する構成が利用できる。なお、ロックバー34には、ベースプレート20o の係止片38との間に張設された引張コイルばねからなるロックばね40の偏倚力が付与され、この偏倚力のもとで、ロックバーは、フック片36への挿入、係合方向に偏倚されている。
【0024】
そして、図6に示すように、リンクアーム30をロック解除方向に引き上げる際のロック解除片となるロックオフベルト42の一端が、リンクアームの左右サイド間に架設、固定された連結ワイヤ44に連結され、その他端は、図1、図4等に示すように、所定の挿通孔46を介して、可倒サイド部12-2o の外部に露出、保持されている。
【0025】
ところで、図1、図4に示すように、このシートのシートクッション12は、座面の後傾された座面後傾型であるため、上面を座面12a とするクッション本体12-1を対応する後傾状態に配設して構成されるが、この発明においては、このクッション本体が、図3、および図7に示す座面のほぼ水平位置まで、前端の下降のもとで回動可能に、ベースプレート20o、20i に対して連結、支持されている。
【0026】
図2、図4に示すように、たとえば、ベースプレート20o、20i の後部間に、支持シャフト48がブラケット50等を介して架設され、この支持シャフトに、クッション本体12-1のフレーム(本体フレーム)52の後部が、抱持部材54による支持シャフトの抱持によって回動自在に連結されている。また、クッション本体12-1の前部は、操作レバー56に連動して上下方向に回動可能なリンクアーム58を有する昇降手段60によって、前端を昇降可能に支持されている。
【0027】
なお、前部の昇降手段60は、操作レバー56に連動したリンクアーム58の回動に伴う前端の昇降によって座面12a の後傾位置、ほぼ水平位置でクッション本体12-1の前部を保持可能とする構造であれば足り、この機構自体はこの発明の趣旨でないため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0028】
たとえば、図1、図4に示す状態、つまり通常の着座状態となる可倒サイド部12-2o の立設状態、および座面12a を後傾させたクッション本体12-1の後傾状態を、このシート10の初期状態と仮定する。このシート10の初期状態からの着座者の降車の際においては、まず、ロックオフベルト(ロック解除部材)42による、ロックばね40の偏倚力に抗したリンクアーム30の引き上げのもとで、ロック手段のロックバー34とフック片36との係合を解除する(図5、図6参照)。そして、このロック手段32のロック解除状態での、外方への可倒サイド部12-2o の回動、つまり倒設によって、図3、図7に示す、クッション面12c をほぼ水平とする可倒サイド部の倒設位置が設定される(図5の二点鎖線参照)。
【0029】
次に、前方への操作レバー56の回動操作によるクッション本体12-1の前端の下降のもとで、クッション本体12-1を回動させて、クッション本体を座面12a のほぼ水平な前端の下降位置に設定、保持する。
【0030】
図3、図7に示す、この可倒サイド部12-2o の倒設位置、およびクッション本体12-1の前端下降位置においては、可倒サイド部のクッション面12c 、およびクッション本体12-1の座面12a が、相互に連続するほぼ水平面として設定され、これが、このシート10における乗降補助状態となる。
【0031】
このようなシート10の乗降補助状態においては、クッション本体の座面12a 、可倒サイド部のクッション面12c の連続する水平面上で尻部をドアサイドに移動させれば足りるため、降車の際の尻部移動が容易に行える。そして、可倒サイド部のクッション面12c 上に尻部を置くことによって、ドアスペースから車外への下肢部の移動、および車外に向いた横向きの前傾着座姿勢が容易に可能となるとともに、この可倒サイド部のクッション面に腰掛けた状態の前傾着座姿勢から立ち上がれば足りるため、非力な高齢者等においても、姿勢を崩すことなく、また腕力に頼ることなく、降車動作が容易に行える。
【0032】
また、下肢部の不自由な身障者等であっても、クッション本体の座面12a 、可倒サイド部のクッション面12c の連続する水平面上で尻部の位置をずらすことは、自己の腕力等のもとでも比較的容易に行える。そして、倒設位置の可倒サイド部12-2o に腰掛け、更には下肢部を車外に移動させた横向きの着座姿勢であれば、介護者が必要な場合であっても、介護者の位置する介護スペースがドアスペース脇に広く確保できるため、降車動作が煩雑化することもない。
【0033】
着座者の降車後においては、可倒サイド部12-2o を倒設位置から立設位置方向に回動させれば、ロック手段32のロックのもとで、可倒サイド部は立設位置に保持される。なお、このとき、可倒サイド部12-1とクッション本体12-2o とは非連動であるため、クッション本体の前端下降状態、つまり座面12a のほぼ水平状態は維持される。
【0034】
着座者の降車後での再乗車の際においては、可倒サイド部12-2o を立設位置から倒設位置に回動、設定すれば、降車の際と同様に、可倒サイド部のクッション面12c 、クッション本体の座面12a の連続したほぼ水平面がシートクッション12に形成される。そして、着座者は、可倒サイド部のクッション面12c 上に一旦腰掛けて下肢部を車内に移動させるとともに、尻部をクッション本体の座面12a 上に滑らせて着座し、その後、可倒サイド部12-2o を立設位置方向に回動させるとともに、後方への操作レバー56の回動操作のもとでの前端の上昇によってクッション本体12-1を後傾方向に回動させば、可倒サイド部、クッション本体は図1、図3に示す初期位置に戻される(図5の実線参照)。
【0035】
上記のように、この発明の乗降補助構造付きシート10においては、乗降サイドとなるアウターサイドの可倒サイド部12-2o が、クッション面12c をほぼ水平とする倒設位置に回動設定可能であるとともに、クッション本体12-1の座面12a が、前端の下降のもとで、このクッション面に連続する水平面として設定され、これが、このシートの乗降補助状態となっている。そのため、この乗降補助状態では、乗降の際におけるシートクッション12上での尻部の移動が、尻部、大腿部等を大きく浮かせることなく容易に可能となる。
【0036】
そして、乗降の際に、倒設位置の可倒サイド部のクッション面12c 上に一旦腰掛けてから、降車動作、乗車動作を行えば足りるため、乗降の際の姿勢の崩れが確実に防止できるとともに、腕力等でのサポートも、特に重要でなくなる。そのため、高齢者、身障者等においても、乗降動作が容易に可能となる。
【0037】
また、通常の着座状態においては、クッション本体の座面12a が後傾状態に設定できるとともに、可倒サイド部12-2o を立設位置に保持することで、この可倒サイド部が他方の固定サイド部12-2i と共にシートクッション12のバケット部として機能するため、着座時でのサポート性を損なうことがない。つまり、この発明のシート10によれば、サポート性を損なうことなく、高齢者等の乗降の容易な乗降補助構造が容易に確保でき、サポート性、乗降性の両立がはかられる。
【0038】
更に、この発明においては、クッション本体12-1の前端の下降のもとで座面12a のほぼ水平状態を設定するため、水平状態での座面の低位置化が可能となる。従って、シート10を比較的高い位置に設定する、いわゆる1ボックス、RV車等のシートとして、この発明は特に有効に利用できる。
【0039】
また、可倒サイド部12-2o は、ガイドプレート31によって上端30b の抱持されたリンクアーム30を備え、このガイドプレートに対するリンクアーム上端の摺動規制によって、取り付けブラケット24に対するベースフレーム28、ひいては可倒サイド部の回動範囲を規定するとともに、このリンクアームによって支持しているため、倒設位置において可倒サイド部のクッション面12c に作用する荷重、つまり着座者の体重は、このリンクアームに逃がされる(図5の二点鎖線参照)。従って、可倒サイド部12-2o における支持力が、構成の複雑化を伴うことなく十分に高く得られ、機能性、安定性、あるいは安全性に優れた可倒サイド部が容易に確保できる。
【0040】
ところで、この発明においては、可倒サイド部12-2o として具体化された乗降補助具が予めユニット化されているため、シート10への組み付け作業が容易化される。そして、単体のユニットとして取り扱えることから、この乗降補助具としてなる可倒サイド部12-oを、他の車種のシートに応用することも十分に可能となる。
【0041】
たとえば、ミニバンタイプの自動車等におけるサードシートのエマージェンシーシートやその他補助シート等として、この可倒サイド部12-2o を応用してもよい。
【0042】
また、この発明においては、ロック手段32を、リンクアーム30の昇降のもとでロック解除する構成として具体化しているが、ロック手段はロック、ロック解除の切り換え可能な構成であれば足りるため、この構成に限定されない。そして、立設位置でのみロックする構成に限定されず、立設位置、倒設位置の双方でロック可能に、ロック手段32を構成してもよい。
【0043】
なお、この発明の乗降補助構造付きシート10における乗降補助構造、つまり倒設可能な可倒サイド部12-2o 、および前端の下降可能なクッション本体12-1を備えた構造は、身障者、高齢者等の乗降に限定されず、他の着座者の乗降の際に使用しても何ら差し支えない。つまり、このシート10の乗降補助構造を利用すれば、可倒サイド部12-2o のクッション面12c 上に一旦腰を掛けることで、足を大きく開くことなく乗降できため、スカートや着物等を着衣した女性等の乗降の際においても、特に有効に利用できる。
【0044】
また、この実施の形態においては、自動車のフロントシートに代表される、シートスライド装置14を有する構成をシート10として例示しているが、ドアスペースに隣接するシートであれば足りるため、これに限定されず、たとえば、4ドアタイプのセダン(サルーンとも称する)やステーションワゴン等のボディタイプの自動車のリヤシート、あるいは1ボックス、RV車等のドアサイドのセカンドシート等に、このシートを配設してもよい。
【0045】
また、このシートは、乗用車等のシートに限定されず、たとえば、電車、船舶、飛行機等の他の車両等のシート、あるいは娯楽施設等の種々のシートとしても、十分に応用できる。
【0046】
上述した発明の実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0047】
【発明の効果】
上記のように、この発明に係る乗降補助構造付きシートによれば、乗降サイドの可倒サイド部のクッション面とクッション本体の座面とをほぼ水平面上で連続させた乗降補助状態が設定できるため、乗降の際におけるシートクッション上での尻部の移動が容易に可能となる。つまり、乗降の際の姿勢の崩れが確実に防止できるとともに、腕力等でのサポートも特に重要でなくなるため、高齢者、身障者等においても、その乗降性が向上する。
【0048】
そして、走行時等においては、後傾の着座姿勢が確保できるとともに、可倒サイド部を立設位置に保持することで、この可倒サイド部が他方の固定サイド部と共にシートクッションのバケット部として機能するため、着座時でのサポート性を損なうことがなく、サポート性、乗降性の両立が可能となる。
【0049】
また、クッション本体が、前端の下降のもとで回動するため、水平状態での座面の低位置化が可能となる。従って、シートを比較的高い位置に設定する車種等のシートとして、この発明は特に有効に利用できる。
【0050】
更に、リンクアームによって倒設位置の可倒サイド部を支持する構成であるため、高い支持力が構成の複雑化を伴うことなく容易に得られる、従って、機能性、安定性、あるいは安全性に優れた可倒サイド部が容易に確保できる。
【0051】
また、乗降補助具として予めユニット化された可倒サイド部によれば、シートへの組み付け作業が容易化される。そして、単体のユニットとして取り扱えることから、この乗降補助具を、他の車種のシートに応用することも十分に可能となる。更には、乗降補助具としてだけでなく、緊急用シートや補助シートとしても、その利用範囲は拡張できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】初期状態における、この発明に係る乗降補助構造付きシートの概略斜視図である。
【図2】一部を分解した、乗降補助構造付きシートの概略斜視図である。
【図3】乗降補助状態における、乗降補助構造付きシートの概略斜視図である。
【図4】初期状態における、乗降補助構造付きシートの概略側面図である。
【図5】可倒サイド部の概略断面図である。
【図6】内部構造を示す、可倒サイド部の概略斜視図である。
【図7】乗降補助状態における、乗降補助構造付きシートの概略側面図である。
【符号の説明】
10 乗降補助構造付きシート
12 シートクッション
12-1 クッション本体
12-2o 可倒サイド部(乗降補助具)
12-2i 固定サイド部
12a クッション本体の座面
12c 可倒サイド部のクッション面
32 ロック手段
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車等に装着される車両用等のシート、特に、高齢者、身障者等の乗降の容易化をはかる乗降補助構造付きシートおよびその乗降補助具に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、乗用車等の自動車用のシートのシートクッションにおいては、座面の尻部位置をその前方位置より低く設定した、いわゆる座面後傾型で、その左右の側部を座面より上方に***させた、いわゆるバケット形状のものが一般的となっている。
【0003】
このような形状のシートクッションを備えたシートにおいては、尻部の沈んだ後傾姿勢での着座となるため、着座姿勢の安定化が容易にはかられる。そして、シートに対する着座者の動き、特に左右方向への尻部、下肢部の動きが、***した側部での抱持のもとで抑制されるため、着座者の快適性、ひいては安全性の確保が、優れたホールド性(保持性)、安定性のもとで容易に確保できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
乗用車等(自動車)のシートにおいては、ボディ側面のドアスペースを介して乗降するため、乗用車等の横幅方向におけるアウターサイド(外方サイド)が、そのシートの乗降サイドとなる。そして、下肢部をドアスペースから車外に移動させた後に、シートに対する横向き、かつ前傾姿勢から立ち上がる動作が、乗用車等における一般的な降車動作となっている。
【0005】
ところで、尻部の沈んだ後傾の着座姿勢においては、その姿勢からの立ち上がり動作、つまり降車動作が容易でなくなる。特に、公知のシートにおいては、シートクッションの側部が座面より***したバケット形状となっているため、シートに対する横向きに着座姿勢を変えたとしても、この横向き姿勢が尻部の沈んだ後傾の着座姿勢であることに変わりはない。また、乗車の際においては、着座によって尻部が大きく沈み込むため、乗車動作のバランスを崩しやすい。
【0006】
通常は、身体の柔軟性や腕力でのサポート等によって、降車時の立ち上がり難さや乗車時のバランスの崩れ等を補っているが、身体の柔軟性や腕力に劣る高齢者、あるいは非力な女性等においてはこれが十分に期待できない。つまり、着座姿勢での安定性、快適性に優れた形状のシートであっても、それが高齢者等の円滑、容易な乗降の妨げとなる場合も多分に考えられる。
【0007】
また、下肢部の不自由な身体障害者(身障者)においては、ドアスペースに整列された車椅子の座面とシートの座面との間での尻部の移動が、乗降動作の主動作となる。しかし、側部の***した公知のシート形状では、***した側部の高さがその尻部の移動の妨げとなりやすい。そして、身障者の乗降の際においては、介護者が介護につく場合も多いが、乗用車等のドアスペースは低く狭いため、介護者による介護も容易ではない。
【0008】
この発明は、着座姿勢での快適性、安全性を損なうことなく、乗降性を改善する乗降補助構造付きシートおよびその乗降補助具の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、この発明の乗降補助構造付きシートによれば、シートクッションが、その上面を座面とするクッション本体と、クッション面をクッション本体側に配して、クッション本体の左右の側方に立設された一対のバケット状サイド部とに分離形成され、この左右一対のバケット状サイド部のうち、乗降の際に尻部の通過される側のサイド部が、所定の固定部材に対して固定される取り付けブラケットの上部にベースフレームの下端を、当該取り付けブラケットの下部にリンクアームの下端を、それぞれ回動自在に連結し、このリンクアームの上端を、ベースフレームに摺動自在に連結してなる機構部と、所定の偏倚力によるフックへのロックバーの挿入、係合のもとで、ベースフレームの回動を特定位置で規定可能とするロック手段とを備えて、クッション面をほぼ水平上面とする倒設位置への回動、保持のもとで乗降補助具として機能可能な可倒サイド部として形成されている。
【0010】
そして、クッション本体が、後部の支点を中心とした回動のもとで前端を下降可能に支持され、所定の操作に伴うこの前端の下降により、クッション本体の座面を、倒設位置での可倒サイド部のクッション面に連続するほぼ水平面として設定可能としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1、図2に示すように、この発明に係る乗降補助構造付きシート10においては、座面後傾型としてなるシートクッション12が、その上面を座面12a とするクッション本体12-1と、このクッション本体の左右の側方に立設された一対のバケット状サイド部12-2とに分離形成されている。そして、この左右一対のバケット状サイド部12-2のうち、たとえば、クッション本体12-1に対する着座者の乗降サイド、つまり乗降の際に着座者の尻部の通過されるドアスペースサイド(アウターサイド)のサイド部12-2o が、図1に示す立設位置でシートクッション12のバケット部として機能可能、かつ立設位置から外方に倒した図3に示す倒設位置で乗降補助具として機能可能な、可倒サイド部として形成されている。
【0013】
この発明の実施の形態においては、正面から見た左方を乗用車等の横幅方向に対するアウターサイド、右方を同インナーサイドとするシート(乗降補助構造付きシート)10を例示して、以下説明する。つまり、図1ないし図3を見るとわかるように、このシート10においては、正面から見た左方のバケット状サイド部12-2が、可倒サイド部12-2o として設定されている。
【0014】
なお、図1、図3に示すように、乗降サイドとなるドアスペースサイド(アウターサイド)に対するインナーサイド(乗用車等の中央サイド;正面から見たシート10の右方)のサイド部12-2i は、立設位置で固定された固定サイド部として形成されている。
【0015】
図2に加えて図4を見るとわかるように、シート10は、たとえば、シートスライド装置14を備えている。シートスライド装置14は、たとえば、ガイドレール16に対してスライド可能なスライドレール18を備えて構成され、シートクッション12へのスライドレールの固定、および床面等へのガイドレールの固定のもとでシート10をその前後方向(図中右左方向)にスライド可能に支持するように、シートに対する左右(アウターサイド、インナーサイド)の離間位置にそれぞれ配設されている。
【0016】
なお、このようなシートスライド装置14としては、特開平05−220025号公報等に開示の公知の構成が何ら変更を加えることなく利用可能であり、また、このシートスライド装置の構成自体はこの発明の趣旨でないため、ここでは詳細に説明しない。
【0017】
シートクッション12は、たとえば、シートスライド装置のスライドレール18に一体的に設けられた左右一対のベースプレート20o、20i へのクッション本体12-1、およびバケット状サイド部12-2(可倒サイド部12-2o、固定サイド部12-2i)の組み付けのもとで、対応形状に組み立てられる。
【0018】
たとえば、図2に示すように、固定サイド部12-2i は、クッション面12b をクッション本体12-1側に垂直状態で配した立設位置で、前後一対のステー22を介して、対応サイドのベースプレート20i に連結、固定されている。
【0019】
ここで、図5、図6に示すように、この発明においては、可倒サイド部12-2o が、一対の取り付けブラケット24をベースにユニット化されるとともに、この取り付けブラケットを介して、乗降サイドとなるアウターサイドのベースプレート20o に取り付けられている。そして、この可倒サイド部12-2o は、クッション面12c をクッション本体12-1側に垂直配置した図1に示す立設位置と、クッション面をほぼ水平位置とする図3に示す倒設位置との間を回動可能に構成されている。
【0020】
この可倒サイド部12-2o は、取り付けブラケット24の上端に、支軸26を介して回動自在に下端の連結されたベースフレーム28と、取り付けブラケットの下端に、回動自在にその下端30a の抱持、連結されたリンクアーム30との組み合わせを備えている。そして、このリンクアームの上端30b を、ベースフレーム26に、ガイドプレート31を介して摺動可能に連結することで、可倒サイド部12-2o を立設位置、倒設位置間で回動可能とする機構部が構成されている。
【0021】
このような構成では、支軸28を中心としたベースフレーム26の回動に追従した、下端30a を中心としたリンクアーム30の回動に伴う、ガイドプレート31、ベースフレームに対するリンクアームの上端30b の摺動によって、取り付けブラケット24に対するベースフレームの回動範囲、つまり可倒サイド部12-2o の回動範囲が、図5に実線で示す立設位置と、同図に二点鎖線で示す倒設位置との間に規定される。
【0022】
ここで、図5、図6に示すように、この発明の実施の形態においては、リンクアームの下端30a が、取り付けブラケット24に対して上下方向に摺動可能に抱持、連結されている(図5の実線、および一点鎖線参照)。そして、可倒サイド部12-2o をそのロックのもとで立設位置に保持するロック手段32が、上方へのリンクアーム30の引き上げのもとでロック解除可能に設けられている。
【0023】
ロック手段32として、たとえば、リンクアーム30の左右サイド間に架設、固定されたロックバー34と、このロックバーの挿入、係合可能なフック片36との組み合わせを有する構成が利用できる。なお、ロックバー34には、ベースプレート20o の係止片38との間に張設された引張コイルばねからなるロックばね40の偏倚力が付与され、この偏倚力のもとで、ロックバーは、フック片36への挿入、係合方向に偏倚されている。
【0024】
そして、図6に示すように、リンクアーム30をロック解除方向に引き上げる際のロック解除片となるロックオフベルト42の一端が、リンクアームの左右サイド間に架設、固定された連結ワイヤ44に連結され、その他端は、図1、図4等に示すように、所定の挿通孔46を介して、可倒サイド部12-2o の外部に露出、保持されている。
【0025】
ところで、図1、図4に示すように、このシートのシートクッション12は、座面の後傾された座面後傾型であるため、上面を座面12a とするクッション本体12-1を対応する後傾状態に配設して構成されるが、この発明においては、このクッション本体が、図3、および図7に示す座面のほぼ水平位置まで、前端の下降のもとで回動可能に、ベースプレート20o、20i に対して連結、支持されている。
【0026】
図2、図4に示すように、たとえば、ベースプレート20o、20i の後部間に、支持シャフト48がブラケット50等を介して架設され、この支持シャフトに、クッション本体12-1のフレーム(本体フレーム)52の後部が、抱持部材54による支持シャフトの抱持によって回動自在に連結されている。また、クッション本体12-1の前部は、操作レバー56に連動して上下方向に回動可能なリンクアーム58を有する昇降手段60によって、前端を昇降可能に支持されている。
【0027】
なお、前部の昇降手段60は、操作レバー56に連動したリンクアーム58の回動に伴う前端の昇降によって座面12a の後傾位置、ほぼ水平位置でクッション本体12-1の前部を保持可能とする構造であれば足り、この機構自体はこの発明の趣旨でないため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0028】
たとえば、図1、図4に示す状態、つまり通常の着座状態となる可倒サイド部12-2o の立設状態、および座面12a を後傾させたクッション本体12-1の後傾状態を、このシート10の初期状態と仮定する。このシート10の初期状態からの着座者の降車の際においては、まず、ロックオフベルト(ロック解除部材)42による、ロックばね40の偏倚力に抗したリンクアーム30の引き上げのもとで、ロック手段のロックバー34とフック片36との係合を解除する(図5、図6参照)。そして、このロック手段32のロック解除状態での、外方への可倒サイド部12-2o の回動、つまり倒設によって、図3、図7に示す、クッション面12c をほぼ水平とする可倒サイド部の倒設位置が設定される(図5の二点鎖線参照)。
【0029】
次に、前方への操作レバー56の回動操作によるクッション本体12-1の前端の下降のもとで、クッション本体12-1を回動させて、クッション本体を座面12a のほぼ水平な前端の下降位置に設定、保持する。
【0030】
図3、図7に示す、この可倒サイド部12-2o の倒設位置、およびクッション本体12-1の前端下降位置においては、可倒サイド部のクッション面12c 、およびクッション本体12-1の座面12a が、相互に連続するほぼ水平面として設定され、これが、このシート10における乗降補助状態となる。
【0031】
このようなシート10の乗降補助状態においては、クッション本体の座面12a 、可倒サイド部のクッション面12c の連続する水平面上で尻部をドアサイドに移動させれば足りるため、降車の際の尻部移動が容易に行える。そして、可倒サイド部のクッション面12c 上に尻部を置くことによって、ドアスペースから車外への下肢部の移動、および車外に向いた横向きの前傾着座姿勢が容易に可能となるとともに、この可倒サイド部のクッション面に腰掛けた状態の前傾着座姿勢から立ち上がれば足りるため、非力な高齢者等においても、姿勢を崩すことなく、また腕力に頼ることなく、降車動作が容易に行える。
【0032】
また、下肢部の不自由な身障者等であっても、クッション本体の座面12a 、可倒サイド部のクッション面12c の連続する水平面上で尻部の位置をずらすことは、自己の腕力等のもとでも比較的容易に行える。そして、倒設位置の可倒サイド部12-2o に腰掛け、更には下肢部を車外に移動させた横向きの着座姿勢であれば、介護者が必要な場合であっても、介護者の位置する介護スペースがドアスペース脇に広く確保できるため、降車動作が煩雑化することもない。
【0033】
着座者の降車後においては、可倒サイド部12-2o を倒設位置から立設位置方向に回動させれば、ロック手段32のロックのもとで、可倒サイド部は立設位置に保持される。なお、このとき、可倒サイド部12-1とクッション本体12-2o とは非連動であるため、クッション本体の前端下降状態、つまり座面12a のほぼ水平状態は維持される。
【0034】
着座者の降車後での再乗車の際においては、可倒サイド部12-2o を立設位置から倒設位置に回動、設定すれば、降車の際と同様に、可倒サイド部のクッション面12c 、クッション本体の座面12a の連続したほぼ水平面がシートクッション12に形成される。そして、着座者は、可倒サイド部のクッション面12c 上に一旦腰掛けて下肢部を車内に移動させるとともに、尻部をクッション本体の座面12a 上に滑らせて着座し、その後、可倒サイド部12-2o を立設位置方向に回動させるとともに、後方への操作レバー56の回動操作のもとでの前端の上昇によってクッション本体12-1を後傾方向に回動させば、可倒サイド部、クッション本体は図1、図3に示す初期位置に戻される(図5の実線参照)。
【0035】
上記のように、この発明の乗降補助構造付きシート10においては、乗降サイドとなるアウターサイドの可倒サイド部12-2o が、クッション面12c をほぼ水平とする倒設位置に回動設定可能であるとともに、クッション本体12-1の座面12a が、前端の下降のもとで、このクッション面に連続する水平面として設定され、これが、このシートの乗降補助状態となっている。そのため、この乗降補助状態では、乗降の際におけるシートクッション12上での尻部の移動が、尻部、大腿部等を大きく浮かせることなく容易に可能となる。
【0036】
そして、乗降の際に、倒設位置の可倒サイド部のクッション面12c 上に一旦腰掛けてから、降車動作、乗車動作を行えば足りるため、乗降の際の姿勢の崩れが確実に防止できるとともに、腕力等でのサポートも、特に重要でなくなる。そのため、高齢者、身障者等においても、乗降動作が容易に可能となる。
【0037】
また、通常の着座状態においては、クッション本体の座面12a が後傾状態に設定できるとともに、可倒サイド部12-2o を立設位置に保持することで、この可倒サイド部が他方の固定サイド部12-2i と共にシートクッション12のバケット部として機能するため、着座時でのサポート性を損なうことがない。つまり、この発明のシート10によれば、サポート性を損なうことなく、高齢者等の乗降の容易な乗降補助構造が容易に確保でき、サポート性、乗降性の両立がはかられる。
【0038】
更に、この発明においては、クッション本体12-1の前端の下降のもとで座面12a のほぼ水平状態を設定するため、水平状態での座面の低位置化が可能となる。従って、シート10を比較的高い位置に設定する、いわゆる1ボックス、RV車等のシートとして、この発明は特に有効に利用できる。
【0039】
また、可倒サイド部12-2o は、ガイドプレート31によって上端30b の抱持されたリンクアーム30を備え、このガイドプレートに対するリンクアーム上端の摺動規制によって、取り付けブラケット24に対するベースフレーム28、ひいては可倒サイド部の回動範囲を規定するとともに、このリンクアームによって支持しているため、倒設位置において可倒サイド部のクッション面12c に作用する荷重、つまり着座者の体重は、このリンクアームに逃がされる(図5の二点鎖線参照)。従って、可倒サイド部12-2o における支持力が、構成の複雑化を伴うことなく十分に高く得られ、機能性、安定性、あるいは安全性に優れた可倒サイド部が容易に確保できる。
【0040】
ところで、この発明においては、可倒サイド部12-2o として具体化された乗降補助具が予めユニット化されているため、シート10への組み付け作業が容易化される。そして、単体のユニットとして取り扱えることから、この乗降補助具としてなる可倒サイド部12-oを、他の車種のシートに応用することも十分に可能となる。
【0041】
たとえば、ミニバンタイプの自動車等におけるサードシートのエマージェンシーシートやその他補助シート等として、この可倒サイド部12-2o を応用してもよい。
【0042】
また、この発明においては、ロック手段32を、リンクアーム30の昇降のもとでロック解除する構成として具体化しているが、ロック手段はロック、ロック解除の切り換え可能な構成であれば足りるため、この構成に限定されない。そして、立設位置でのみロックする構成に限定されず、立設位置、倒設位置の双方でロック可能に、ロック手段32を構成してもよい。
【0043】
なお、この発明の乗降補助構造付きシート10における乗降補助構造、つまり倒設可能な可倒サイド部12-2o 、および前端の下降可能なクッション本体12-1を備えた構造は、身障者、高齢者等の乗降に限定されず、他の着座者の乗降の際に使用しても何ら差し支えない。つまり、このシート10の乗降補助構造を利用すれば、可倒サイド部12-2o のクッション面12c 上に一旦腰を掛けることで、足を大きく開くことなく乗降できため、スカートや着物等を着衣した女性等の乗降の際においても、特に有効に利用できる。
【0044】
また、この実施の形態においては、自動車のフロントシートに代表される、シートスライド装置14を有する構成をシート10として例示しているが、ドアスペースに隣接するシートであれば足りるため、これに限定されず、たとえば、4ドアタイプのセダン(サルーンとも称する)やステーションワゴン等のボディタイプの自動車のリヤシート、あるいは1ボックス、RV車等のドアサイドのセカンドシート等に、このシートを配設してもよい。
【0045】
また、このシートは、乗用車等のシートに限定されず、たとえば、電車、船舶、飛行機等の他の車両等のシート、あるいは娯楽施設等の種々のシートとしても、十分に応用できる。
【0046】
上述した発明の実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0047】
【発明の効果】
上記のように、この発明に係る乗降補助構造付きシートによれば、乗降サイドの可倒サイド部のクッション面とクッション本体の座面とをほぼ水平面上で連続させた乗降補助状態が設定できるため、乗降の際におけるシートクッション上での尻部の移動が容易に可能となる。つまり、乗降の際の姿勢の崩れが確実に防止できるとともに、腕力等でのサポートも特に重要でなくなるため、高齢者、身障者等においても、その乗降性が向上する。
【0048】
そして、走行時等においては、後傾の着座姿勢が確保できるとともに、可倒サイド部を立設位置に保持することで、この可倒サイド部が他方の固定サイド部と共にシートクッションのバケット部として機能するため、着座時でのサポート性を損なうことがなく、サポート性、乗降性の両立が可能となる。
【0049】
また、クッション本体が、前端の下降のもとで回動するため、水平状態での座面の低位置化が可能となる。従って、シートを比較的高い位置に設定する車種等のシートとして、この発明は特に有効に利用できる。
【0050】
更に、リンクアームによって倒設位置の可倒サイド部を支持する構成であるため、高い支持力が構成の複雑化を伴うことなく容易に得られる、従って、機能性、安定性、あるいは安全性に優れた可倒サイド部が容易に確保できる。
【0051】
また、乗降補助具として予めユニット化された可倒サイド部によれば、シートへの組み付け作業が容易化される。そして、単体のユニットとして取り扱えることから、この乗降補助具を、他の車種のシートに応用することも十分に可能となる。更には、乗降補助具としてだけでなく、緊急用シートや補助シートとしても、その利用範囲は拡張できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】初期状態における、この発明に係る乗降補助構造付きシートの概略斜視図である。
【図2】一部を分解した、乗降補助構造付きシートの概略斜視図である。
【図3】乗降補助状態における、乗降補助構造付きシートの概略斜視図である。
【図4】初期状態における、乗降補助構造付きシートの概略側面図である。
【図5】可倒サイド部の概略断面図である。
【図6】内部構造を示す、可倒サイド部の概略斜視図である。
【図7】乗降補助状態における、乗降補助構造付きシートの概略側面図である。
【符号の説明】
10 乗降補助構造付きシート
12 シートクッション
12-1 クッション本体
12-2o 可倒サイド部(乗降補助具)
12-2i 固定サイド部
12a クッション本体の座面
12c 可倒サイド部のクッション面
32 ロック手段
Claims (6)
- 座面の尻部位置をその前方位置より低く設定した座面後傾型のシートクッションを備えたシートにおいて、
上記シートクッションが、その上面を座面とするクッション本体と;クッション面をクッション本体側に配して、クッション本体の左右の側方に立設された一対のバケット状サイド部と;に分離形成され、
この左右一対のバケット状サイド部のうち、乗降の際に尻部の通過される側のサイド部が、
所定の固定部材に対して固定される取り付けブラケットの上部にベースフレームの下端を、当該取り付けブラケットの下部にリンクアームの下端を、それぞれ回動自在に連結し、このリンクアームの上端を、ベースフレームに摺動自在に連結してなる機構部と;所定の偏倚力によるフックへのロックバーの挿入、係合のもとで、ベースフレームの回動を特定位置で規定可能とするロック手段と;
を備えて、クッション面をほぼ水平上面とする倒設位置への回動、保持のもとで乗降補助具として機能可能な可倒サイド部として形成されるとともに、
前記クッション本体が、後部の支点を中心とした回動のもとで前端を下降可能に支持され、所定の操作に伴うこの前端の下降により、当該クッション本体の座面を、倒設位置での可倒サイド部のクッション面に連続するほぼ水平面として設定可能としたことを特徴とする乗降補助構造付きシート。 - リンクアームの下端が、取り付けブラケットの下端に対して上下方向に摺動可能に抱持、連結され、取り付けブラケットに対する、所定の偏倚力に抗した上方へのリンクアームの引き上げ操作によって、ロック手段をロック解除可能とした請求項1記載の乗降補助構造付きシート。
- リンクアーム上端が、その摺動範囲を立設位置、倒設位置間での可倒サイド部の回動に対応する範囲に規定可能なガイドプレートを介してベースフレームに連結され、倒設位置サイドでのリンクアーム上端の摺動規制によって、可倒サイド部を倒設位置に設定、保持可能とした請求項1または2記載の乗降補助構造付きシート。
- 所定の固定部材に対して固定される取り付けブラケットの上部にベースプレートの下端を、当該取り付けブラケットの下部にリンクアームの下端を、それぞれ回動自在に連結し、このリンクアームの上端を、ベースフレームに摺動自在に連結してなる機構部と;
所定の偏倚力によるフックへのロックバーの挿入、係合のもとで、ベースフレームの回動を特定位置で規定可能とするロック手段と;
を備えて、一平面をクッション面とする形態に予めユニット化されるとともに、このクッション面をほぼ垂直面としてロック手段により保持される立設位置と、当該クッション面をほぼ水平上面とする倒設位置との間で回動可能、かつ各位置で保持可能に形成されたシートの乗降補助具。 - リンクアームの下端が、取り付けブラケットの下端に対して上下方向に摺動可能に抱持、連結され、取り付けブラケットに対する、所定の偏倚力に抗した上方へのリンクアームの引き上げ操作によって、ロック手段をロック解除可能とした請求項4記載のシートの乗降補助具。
- リンクアーム上端が、その摺動範囲を立設位置、倒設位置間での回動に対応する範囲に規定可能なガイドプレートを介してベースプレートに連結され、少なくとも、倒設位置サイドでのリンクアーム上端の摺動規制によって倒設位置に設定、保持される請求項4または5記載のシートの乗降補助具。
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