JP3789952B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明はタイヤのサイドウォ−ルに、内圧充填前の状態において軸方向外側に突出した凸区域と、この区域から距離を置いて軸方向内側に窪んだ凹区域を周方向に形成し、このようなサイドウォ−ルの表面に設けた文字、模様などの図形に発生するクラックを防止したタイヤに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
円筒状のクラウン部と左右一対のサイドウォ−ルがトロイド状に連なる空気入りラジアルタイヤについて、タイヤをリム組みし無負荷の自立姿勢を保つ程度に僅かな内圧を加えたときのサイドウォ−ルのカ−カス形状として、カ−カスの軸方向外側に突出した凸区域と、同方向内側に窪んだ凹区域を適宜設け、タイヤに標準内圧を充填することによって全体的に通常の滑らかな形状に上記凸、および凹区域が変形したとき、その変形の仕方、およびその程度によりカ−カスの張力をコントロ−ルするラジアルタイヤが、当出願人によって特開平3-50001 にて提案されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
サイドウォ−ルのカ−カス表面にはほぼ均一な厚みの外被ゴムが被覆され、通常左右サイドウォ−ルの少なくとも一方の外皮ゴムの表面における適宜位置に、商標名、模様などの図形が型付けされている。図形をこのように型付けするに当たりサイドウォ−ルが滑らかに軸方向の一方に湾曲した形状の場合は、サイドウォ−ル上のどの位置に設けようと問題になることはない。しかしサイドウオ−ルが部分的に凸区域、および凹区域を形成している場合、図形を設ける位置如何によっては内圧充填によるこれら両区域の突出、および窪みを解消する方向の変形と、走行に伴い加わる変形によって、設けた図形にクラックが発生し、その結果としてタイヤの外観を損なうばかりではなく、クラックが外被ゴムの内部に侵入し早期故障に発展することがある。
【０００４】
一方このような形状のタイヤを加硫成型するときは、サイドウォ−ルの形状に対応した形状の金型内で常法により高温、高圧の下に行う訳であるが、グリ−ンタイヤを金型内にセットしブラダ−を介して圧を加えたとき、サイドウォ−ルは金型成型面の突出した部分が窪んだ部分に先んじて接し、この窪んだ部分にサイドウォ−ルと金型間の排出しきれずに残ったエアトラップによるベアが、加硫後のサイドウォ−ルにおける凸区域の突端に生じ、その結果としてタイヤの商品価値を損なうこととなる。そして特に、図形上にベアが生じたときは、商品としてその部分の補修による回復が事実上不可能である。本発明はかかる問題点を解決したタイヤを提供することを目的とする。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明は、円筒状のクラウン部とその両端から径方向内側に向かって夫々サイドウォ−ルがトロイド状に連る空気入りタイヤであって、前記サイドウォールのカーカス形状は、内圧充填前の状態において上記サイドウォ−ルに軸方向外側に突出した凸区域と、この凸区域から距離を置いて軸方向内側に窪んだ凹区域を有し、前記凸区域の外表面上に文字、模様などの図形を備えることを特徴とするものである。
【０００６】
本発明については、前記図形を備える凸区域を前記サイドウォールの高さの中央より径方向外側に配置することが好ましい。
【０００７】
【作用】
先ず本発明の空気入りタイヤにつき、前記サイドウォールのカーカス形状は、内圧を充填する前のフリ−な状態で、サイドウォ−ルに軸方向外側に向かって突出した凸区域と、この凸区域から距離を置いて軸方向内側に窪んだ凹区域を形成し、上記凸区域の外表面に文字、模様などの図形を有することを構成上の特徴としている。このようなタイヤはリム組みし内圧を充填しても、図形が施された凸区域は内圧の作用によって殆ど変形しないか、変形してもその方向は軸方向内側であるため、その部分にサイドウォ−ルの変形に基づく初期張力が作用することは殆どなく、そのため有利にクラックを防止することができる。
【０００９】
【実施例】
以下図面に基づき説明する。図１は本発明における一実施例を示すタイヤのリム組み、内圧充填状態における部分側面図、図２は同タイヤの内圧充填前における部分断面輪郭図である。本発明においてタイヤ1 は、円筒状クラウン部2 とその両端から径方向内側に向かって夫々サイドウォ−ル3 がトロイド状に連なり、このサイドウォール 3 のカーカス形状は、タイヤに内圧を充填する前の状態においてサイドウォ−ル3 に軸方向外側に突出した凸区域4 と、この凸区域から距離を置いて軸方向内側に窪んだ凹区域5 とを有している（図２）。そして凸区域の外表面上に文字、模様などの図形6 を備えている。
【００１０】
図２において赤道面O より左側半分を省略しているが、左右は対称であり、また同様に図示を省略しているが、タイヤ1 は常法により両サイドウォ−ル3 間に亙ってラジアルカ−カスで補強し、このカ−カスのクラウン部外周上に非伸長性ベルト層、およびトレッド7 を配置して補強することができる。この場合ラジアルカ−カスは、ポリエステル、レ−ヨンで代表される繊維コ−ドを赤道面O と実質上直交する方向に配列したプライの少なくとも１枚、通常２枚から成る公知の構造であり、またベルト層も、スチ−ルコ−ドなどの非伸長性コ−ドを赤道面O に対し浅い角度（１５〜３５°）で傾斜配列したプライの複数枚、通常２枚を、それらのコ−ドが交差するように重ね合わせ、更にその周囲全体にナイロンなどの熱収縮性コ−ドを複数本並べてゴム引きしたストリップの周方向螺旋巻きによって形成した、キャップ層を含む公知の構造である。
【００１１】
図２に示す実施例においてサイドウォ−ル3 は、その高さH の中央より径方向外側に１個、内側に１個夫々凸区域4 を有し、また両区域の間は凹区域5 をなしている。このようなサイドウォ−ルの形状は、カ−カスに施された凸、凹形状が表面に現れたものである。
図２に示す２つの凸区域4 、4 のうち径方向外側のそれには、くの字の模様8 の上に重ねて表示した文字9 からなる帯び状の図形6 を、凸区域の頂点よりクラウン部2 側へ片寄せて設けている。図形の幅R が占めるこの区域は、サイドウォ−ルのうちでも内圧の作用によっては少なくとも膨出しない、取分け変形の少ない区域であり、複雑な図形の表示に適している。
【００１２】
図３はタイヤサイドウォ−ル上の図形の部分平面図、図４は図３のA-A 位置における加硫金型の部分断面図である。この加硫金型は、サイドウォ−ル3 のカーカス形状に軸方向外側に突出した凸区域4 と、この凸区域から距離を置いて軸方向内側に窪んだ凹区域とを有するタイヤ（図２）を加硫成型する金型21（図４）においてサイドウォ−ル凸区域の実質上頂点に対応する位置にエア抜き手段22を備えたものである。
【００１３】
タイヤサイズ185/70R14 用金型の例により図４に基づき説明すると、金型21はタイヤサイドウォ−ルのカーカス形状の凸区域に対応する窪んだ区域に図形6 の幅R と実質上同じ幅R'（２９mm）、厚みa （０．４mm）の帯状肉盛り部23に、模様8 に相当する高さb のロ−レット加工を幅R'全体にわたって施している。文字9 はその上に重ねて切削加工されている。肉盛り面を示す仮想線j より文字9 の底に対応する位置までの距離c は０．３５mmであり、文字の周囲を囲むリッジ10に対応する溝24の底から仮想線j までの距離d は０．５mm（溝24の深さ、またはリッジ10の高さは０．１５mm）、溝の幅e は０．４mmである。加硫成型されたタイヤは、サイドウォ−ルの凸区域上に上記数値の高さ、または深さで図形が顕出する訳である。
【００１４】
図２に示す実施例では図形6 における模様8 が凸区域の頂点に位置するため、図４に示す金型21における窪みの底のロ−レット加工を施した部分に、エア抜き手段22としてベントホ−ルを周上ほぼ等間隔に１２箇所設けている。
なお模様8 、またはロ−レット位置へ設けるベントホ−ルなどエア抜き手段は最小限にとどめ、図形6 の径方向内側端などタイヤとしてエア抜きの痕跡が目立たない場所に不足の分を設けることもできる。
また図形6 の径方向内側端と凸区域4 の頂点とがほぼ一致するよう、図２上図形6 を上方に移動した位置に設ける場合は、エア抜き手段22（図４）は図形の径方向内側端のみに設けるだけですみ、エア抜き手段の痕跡が目立ちにくく好ましい。
【００１５】
金型に文字など窪みを設ける場合、加硫時にエアトラップが通常その部分に生じ易いが、図４に示すように文字の部分の基準仮想線j からの最大距離であるリッジ10に対応する溝24の底までの距離d が０．５mmと著しく小さく（従来は約１mm）ために、文字位置でのエアトラップは実質上生じることがない。エアトラップ防止のために上記距離d は、０．４５〜０．６mmの範囲が好ましい。距離d を１mm、またはこれに近い値で深く加工するときは、その加工位置にエアトラップが生じやすくなるため、ベントホ−ルなどのエア抜き手段は、金型の窪みの底（タイヤの凸区域4 の頂点に対応する位置）であっても多少多めに設けることが好ましい。
なお図４における距離c を距離d と一致させ、全体を平坦に形成する（平坦な文字）こともできる。
【００１６】
【効果】
本発明に成るタイヤの効果を確かめるべく185/70R14 サイズの乗用車用ラジアル構造タイヤを使用し、図１、２に示す実施例のタイヤと、図形6を凸区域4 の頂点から凹区域にかけて設けた比較例のタイヤとの間で、加硫時のエアトラップによるベアの発生、および実車による３０，０００粁走行によるクラック発生テストを行い評価した。
【００１７】
図形6 の部分の詳細、並びにテスト結果を表１に示す。
【表１】

【００１８】
表１に示すように、タイヤに内圧を充填する前の状態においてサイドウォ−ルのカーカス形状に軸方向外側に突出した凸区域と、同方向に窪んだ凹区域とを有するタイヤにつき、文字、模様などの図形を上記凸区域の外表面に設けることによって、図形に生じがちな外力の作用によるクラックを有利に防止することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図１】実施例のタイヤのリム組み、内圧充填状態における部分側面図。
【図２】同タイヤの内圧充填前における部分断面輪郭図。
【図３】図形の部分平面図。
【図４】実施例の加硫金型部分断面図。
【符号の説明】
1 タイヤ
2 クラウン部
3 サイドウォ−ル
4 凸区域
5 凹区域
6 図形
8 模様
9 文字
21 金型
22 エア抜き手段

Claims (2)

1. 円筒状のクラウン部とその両端から径方向内側に向かって夫々サイドウォ−ルがトロイド状に連る空気入りタイヤであって、
   前記サイドウォールのカーカス形状は、内圧充填前の状態において上記サイドウォ−ルに軸方向外側に突出した凸区域と、この凸区域から距離を置いて軸方向内側に窪んだ凹区域とを有し、前記凸区域の外表面上に文字、模様などの図形を備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
2. 前記図形を備える凸区域を前記サイドウォールの高さの中央より径方向外側に配置したことを特徴とする請求項１に記載の空気入りタイヤ。

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