JP3770315B2 - インクカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、着脱可能なインク容器から記録ヘッドにインクを供給し、記録ヘッドからインク滴を記録媒体に吐出させて記録を行うインクジェット記録装置、及びこれに適したインクカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平9-207349号公報に見られるようにキャリッジに装着したインクカートリッジのインクをインク供給部からインクジェット記録ヘッドに供給する記録装置に使用するインクカートリッジは、大気連通部とインク供給部とがいずれもシール部材で封止されて使用前のインクの脱気度が保証されており、使用にあたっては大気連通部のシール部材をピン等により開封させ、インク供給部をジョイントピン等で記録ヘッドと接続するように構成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、コンピュータの小型化に伴ってインクジェット記録装置の薄型化や、他の装置、例えばスキャナーやコンピュータと積み重ねて設置することが望まれている。
このような要望に対応するには、インクカートリッジを前面から着脱できること、いわゆるフロントローデングできることが望ましい。
前述したインクカートリッジをフロントローデングする場合には、インクカートリッジを90度傾け、インク供給口を水平方向に進退させることにより着脱できるが、背高状態となり、着脱操作が不安定になるという問題がある。そればかりでなく、インク供給口と対向する面、つまり蓋に形成されている大気連通口が内部のインクに晒される結果、温度変化などによりインクが漏れ出す虞がある。このような問題を解消するため、特開平7-68770号公報に見られるようにインク容器の側面にインク供給口を形成して、水平方向への進退により記録装置に着脱可能なインクカートリッジが提案されている。
しかしながら、インク容器と記録ヘッドとを接続するインク流路が長くなり、キャリッジの面積、若しくは容積が大きくなるという問題がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところはキャリッジの大型化を招くことなくフロントローデングが可能なインクカートリッジを提供することである。
本発明の他の目的は、上述のインクカートリッジに適したインクジェット記録装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような課題を達成するために本発明においては、インクを収容する少なくとも1つのインク収容室が形成された容器の底部に、記録装置のインクジェット記録ヘッドと連通してインクを供給するためのインク供給口を備えたインクカートリッジにおいて、前記容器の底部と一定の間隙を設け、かつ前記底部の領域内に位置するように前記底部に平行に延びるインク供給路と、前記インク供給路の先端に、前記記録ヘッドに連通するインク誘導部材に接続可能で、かつ前記底部に対して垂直な開口面を有するインク供給口とを備え、前記底部の下面に位置する前記間隙の領域を記録装置に形成された突起にガイドされて前記インク供給口が前記インク誘導部材に挿入される。
【0005】
【作用】
インクカートリッジのインク供給口を、インク供給路がインクカートリッジの底面と平行になるように形成することで、記録ヘッドまでのインク流路を短縮でき、キャリッジの面積、若しくは容積の増加を抑えることができる。また、インク流路の近傍の間隙が記録装置の突起にガイドされるから、確実にインク誘導部材に接続される。
【0006】
【発明の実施態様】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明のインクカートリッジの一実施例を示すものであって、インクカートリッジ1は、インクを収容する容器本体2と、容器本体の開口を封止する蓋体3とにより構成されている。容器本体2は、異なる種類のインクを収容する関係上、複数の垂直壁により複数のインク収容室4に分割され、各インク収容室に対応する面には略L字状のインク流路5がインク収容室4と同数平行に形成されている。
【0007】
また、容器本体2の挿入方向の先端の側壁には、インク情報を格納した記憶手段6が取付けられている。この記憶手段6は、図2(a)、(b)に示したように基板10の表面側にキャリッジに設けられたコネクタと導電的に接触可能な複数の電極11を、また基板の裏面に電極11と接続され、データを格納する記憶素子12を実装して構成されている。
【0008】
各インク流路の先端には、後述するインク供給針と係合するインク供給口7が底面に垂直で、かつ底部2aから一定の間隔gを有するように間隙Gが形成され、インク供給口7をインク供給針の貫通が可能な遮気性フィルム8により封止されている。
【0009】
上記インクカートリッジを図3に示した断面図に基づいて詳述する。
容器本体2に形成された各インク収容室4には、インクを含浸することができる多孔質材9が収容され、また底面からインク収容室に突出するようにインク流路5に連通するインク流入口13が形成されている。インク流入口13に上端には気泡や異物を濾過するフィルタ14が設けられている。
【0010】
一方、蓋体3は、各インク収容室4に対応するようにインク注入口15、大気開放口16、大気開放口16から連通口を形成する凹部17と、これらを接続し所定の流体抵抗を付与する細溝18が形成されている。凹部17は、若干斜め下方に延びる貫通孔19と垂直に延びる垂直孔20とを介して細溝18の端部に接続されている。
これらインク注入口15、大気開放口16、細溝18、及び垂直孔20は、遮気性を備えたフィルム21により封止され、また、凹部17は、遮気性を備えかつ破断が容易なフィルム22により封止されている。
【0011】
なお、この実施例においては、インク供給口の近傍にはバネ23によりインク供給口の側に付勢され、インク供給針の挿入により開弁される弁24が収容されている。
【0012】
図4は、上述したインクカートリッジ1によりインクの供給を受ける記録装置の一実施例を示すものであって、印刷機構を収容する略箱型のケース30は、その前面の上半部にヒンジにより開放可能にケース蓋31を設けて構成されている。開放領域にはガイド棒32により案内されて水平方向に往復移動するキャリッジ33が配置されている。
【0013】
キャリッジ33は、図5に示したように概略インクカートリッジ1を水平方向から収容できる箱型の本体34と、下方をヒンジ35により支持されたカートリッジレバー36とにより構成され、下面にインクジェット記録ヘッド37が設けられている。
【0014】
また、インクカートリッジが装填されたときインクカートリッジ1のインク供給口7と対向する位置には、記録ヘッド37に連通するインク供給針38が水平方向に突出するように配置され、その上部にはインクカートリッジ1の底部2aとインク流路5との間隙に進入する突起39が配置されている。
【0015】
さらに、本体の上面34aの、インクカートリッジ1がインク供給針38と連通関係を形成するよりも手前側で凹部17のフィルム22を破断する破断具40、この実施例では複数の突起を放射状に配置した突起車が配置されている。
【0016】
この実施例において、インクカートリッジを記録装置に装着する場合、図4に示したようにキャリッジ33をインクカートリッジ1の交換に適した位置、この実施例では右端側に移動させてケース蓋31を開放する。
上述の操作により露出したキャリッジ33のカートリッジレバー36を回動させて箱型に形成された本体34の前面を開放する。
【0017】
この状態で、インク供給口7が奥側となるようにインクカートリッジ1を把持してキャリッジ33に位置決めして水平に押し込むと、その過程で破断具40がフィルム22に弾接してフィルム22を破断し、インク収容室4を大気に開放する(図6(a))。
【0018】
更に水平に奥まで押し込むと、インクカートリッジ1は、底面2aとインク流路5の間隙Gに進入した突起39に案内され、インク供給口7にインク供給針38が貫入する。これにより弁24が後退してインク収容室4と記録ヘッドが連通する。
ところで、インク供給口7の弁24が開弁される以前にインク収容室4が大気に開放されているため、カートリッジ1の装着によって、ヘッド側からインクカートリッジ側へインクが逆流することはない。
【0019】
キャリッジ33にインクカートリッジ1が装着された状態では、記録ヘッド37がインクカートリッジ1の底面直下に位置するから、インクカートリッジの側面にインク供給口が形成されている従来のインクカートリッジよりもキャリッジの面積や容積が小さくなり、記録装置の小型化を図ることが可能となる。
【0020】
インクカートリッジのインクが消費され尽くした場合には、装着時と同様、図4に示したようにキャリッジ33をインクカートリッジ1の交換に適した位置に移動させてケース蓋31を開放してカートリッジレバー36を回動させて箱型の本体34の前面を開放する。
【0021】
この状態で、インクカートリッジ1を水平に引き抜くと、突起39にガイドされてインク供給口7がインク供給針38から後退し、弁24がバネ23に押されてインク供給口7を封止する。さらにインクカートリッジ1を水平方向に移動させるとキャリッジ33から取り出すことができる。
この状態では残存するインクは多孔質材9の毛細管力で保持されており、またインク供給口7が弁24により封止されているから、インク収容室4のインクが外に漏れ出すことはない。
【0022】
図7(a)、(b)は、キャリッジの他の実施例を示すものであって、インクカートリッジ1の挿入方向の先端側、図では左端側が下方となるように付勢されたレバー41を軸42により回動可能に支持し、レバー41の先端側に破断具40を取り付けて構成されている。
【0023】
この実施例においてインクカートリッジ1をキャリッジ33に装填して水平方向に押し込むと、インクカートリッジの上部先端がレバー41の後端に当接する(図7(a))。この状態でインクカートリッジを更に押し込むと、レバー41が時計方向に回動して破断具40がフィルム22を破断し、インク収容室4が大気に開放される。
【0024】
インクカートリッジ1をさらに押し込むと、インク供給口7がインク供給針38に係合するから(図7(b))、インク収容室4のインクを記録ヘッド37に供給することができる。
【0025】
図8(a)、(b)は、キャリッジの他の実施例を示すものであって、この実施例ではインクカートリッジ1の挿入方向の先端側、図では左端側が下方となるように付勢されたレバー41を軸42により回動可能に支持し、レバー41の先端側に鋭部43が形成されている。
【0026】
この実施例においてインクカートリッジ1をキャリッジ33に装填して水平方向に押し込むと、インクカートリッジの上部先端がレバー41の後端に当接する(図8(a))。この状態でインクカートリッジ1を更に押し込むと、レバー41が時計方向に回動して鋭部43がフィルム22を破断し、インク収容室4が大気に開放される。
【0027】
インクカートリッジをさらに押し込むと、インク供給口7がインク供給針38に係合するから(図8(b))、インク収容室4のインクを記録ヘッド37に供給することができる。
【0028】
図9は、本発明のインクカートリッジの他の実施例を示すものであって、この実施例においては、蓋体3の凹部17から離れた位置に、挿入方向の先端側に開口50aを有する溝50が形成され、凹部17及び溝50を封止するように遮気性のフィルム22が貼着されている。
【0029】
図10は、同上インクカートリッジに適したキャリッジの一実施例を示すものであって、キャリッジ33は、前述の実施例と同様に箱型の本体34と、下方をヒンジ35により支持されたカートリッジレバー36とにより構成され、下面にインクジェット記録ヘッド37が設けられている。
【0030】
また、インクカートリッジが装填されたときインクカートリッジ1のインク供給口7と対向する位置には、記録ヘッド37に連通するインク供給針38が水平方向に突出するように配置され、その上部にはインクカートリッジ1の底部2aとインク流路5との間隙に進入する突起39が配置されている。
【0031】
さらに、箱型の本体34の、インクカートリッジ1がインク供給針38と連通関係を形成するよりも手前側で溝50に貫入してフィルム22を捲り上げる突起44が配置されている。
【0032】
この実施例において、カートリッジレバー36を回動させて箱型の本体34の前面を開放し、インク供給口7が奥側となるようにインクカートリッジ1を把持してキャリッジ33に位置決めして水平に押し込むと、その過程で突起44が溝50に進入してフィルム22を蓋体3の凹部17から剥離して、インク収容室4を大気に開放する(図11(a))。
【0033】
更に水平に置くまで押し込むと、インクカートリッジ1は、底面1aとインク流路5の間に進入した突起39に案内され、インク供給口7にインク供給針38が貫入する。これにより弁24が後退してインク収容室4と記録ヘッドが連通する(図11(b))。
【0034】
なお、上述した複数の実施例においては、インク流路5をカートリッジの挿入方向の後端側に若干ずらして設けているが、図12に示したように凸部13がインク収容室4の中心領域で、かつ記録ヘッド37がインクカートリッジ1の底面領域に位置するように壁面からの距離Lを調整して形成すれば、多孔質材9のインクを均一に記録ヘッド37に供給することができ、インクの残量を可及的に少なくすることができる。
【0035】
また上述した複数の実施例においては、インク供給針38を挿通してインクカートリッジと記録ヘッドとを連通させるように構成しているが、図13に示したようにインクを含浸、貯蔵する多孔質材9よりも毛細管力が大きな第2の多孔質材51を、多孔質材9と弾接するようにインク流路5に装填するとともに、記録ヘッド37に連通するインク誘導管52が弾接する開口53を形成しても同様の作用を奏する。なお、この実施例のように第2の多孔質材51を使用する場合には、インク供給路5’を図14に示したように垂直な管として形成し、インク誘導管52と対向する領域に開口54を形成しても同様の作用を奏する。
【0036】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明のインクカートリッジ、及び記録装置によれば、記録ヘッドまでのインク流路を短縮して、キャリッジの面積や容積を抑えて、フロントローデングが可能な小型の記録装置を実現することができる。また、インク流路の近傍を記録装置の突起にガイドして、フロントローデングによりインク供給口を確実にインク誘導部材に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図(a)、(b)は、それぞれ本発明のインクカートリッジの一実施例を示す斜視図である。
【図2】図(a)、(b)は、それぞれ同上インクカートリッジに装着される記憶手段の一実施例を、表裏の構造で示す図である。
【図3】同上インクカートリッジの断面構造を示す図である。
【図4】同上インクカートリッジを使用するのに適したインクジェット記録装置の一実施例を示す図である。
【図5】同上インクジェット記録装置のキャリッジの構造を示す断面図である。
【図6】図(a)、(b)は、それぞれインクカートリッジが装着される過程で大気に連通される状態、及び記録ヘッドにインクの供給が可能となった状態を示す図である。
【図7】図(a)、(b)は、それぞれキャリッジの他の実施例を、インクカートリッジが装着される過程で大気に連通される状態、及び記録ヘッドにインクの供給が可能となった状態を示す図である。
【図8】図(a)、(b)は、それぞれキャリッジの他の実施例を、インクカートリッジが装着される過程で大気に連通される状態、及び記録ヘッドにインクの供給が可能となった状態を示す図である。
【図9】本発明のインクカートリッジの一実施例を示す斜視図である。
【図10】同上インクカートリッジに適したキャリッジの構造を示す図である。
【図11】図(a)、(b)は、それぞれキャリッジの他の実施例を、インクカートリッジが装着される過程で大気に連通される状態、及び記録ヘッドにインクの供給が可能となった状態を示す図である。
【図12】本発明のインクカートリッジ、及びキャリッジの他の実施例を示す図である。
【図13】本発明のインクカートリッジ、及びキャリッジの他の実施例を示す図である。
【図14】本発明のインクカートリッジ、及びキャリッジの他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
1 インクカートリッジ
2 容器本体
2a 底部
3 蓋体
4 インク収容室
5 インク流路
6 記憶手段
7 インク供給口
8 遮気性フィルム
9 多孔質材
17 凹部
18 細溝
21 フィルム
22 フィルム
33 キャリッジ
34 本体
36 カートリッジレバー
37 インクジェット記録ヘッド
38 インク供給針
40 破断具
Claims (6)
- インクを収容する少なくとも1つのインク収容室が形成された容器の底部に、記録装置のインクジェット記録ヘッドと連通してインクを供給するためのインク供給口を備えたインクカートリッジにおいて、
前記容器の底部と一定の間隙を設け、かつ前記底部の領域内に位置するように前記底部に平行に延びるインク供給路と、前記インク供給路の先端に、前記記録ヘッドに連通するインク誘導部材に接続可能で、かつ前記底部に対して垂直な開口面を有するインク供給口とを備え、前記底部の下面に位置する前記間隙の領域を記録装置に形成された突起にガイドされて前記インク供給口が前記インク誘導部材に挿入されるインクカートリッジ。 - 前記インク供給口の近傍に、前記インク誘導部材の進入により開弁する弁手段が設けられている請求項1に記載のインクカートリッジ。
- 前記容器の上面に前記インク収容室に連通する凹部が形成され、前記凹部が破断可能なフィルムにより封止されている請求項1に記載のインクカートリッジ。
- 前記凹部が、前記容器の上面に形成された細溝からなるキャピラリを介して前記インク収容室に連通されている請求項3に記載のインクカートリッジ。
- 前記インク供給路及びインク供給路のインク収容室に連通する位置が、一方に偏して形成されている請求項1に記載のインクカートリッジ。
- 前記フィルムが破断されて前記インク収容室が大気に開放された後に前記インク供給口が前記インクジェット記録ヘッドに連通される請求項1に記載のインクカートリッジ。
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