JP3736664B2 - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物、該組成物を用いてなるフイルムなどの成形品、包材、積層体および容器に関する。より詳細には、本発明は、ヒートシール性、過酸化水素に対する耐性、フレーバーバリヤー性、ガスバリヤー性、伸度や強度などの機械的特性に優れるポリエステル樹脂組成物およびそれよりなるフイルムなどに関するものである。本発明のポリエステル樹脂組成物、それよりなるフイルムなどの成形品は、前記した特性を活かして、果汁飲料などの香気成分を含有する飲料容器用の包材をはじめとして、種々の用途に有効に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
使用済みプラスチック容器の処理が大きな社会問題になっており、かかる点からプラスチック容器に比べて焼却処理や再生処理が比較的簡単に且つ円滑に行える紙容器に対する要望が高まっている。このことはジュース用容器などの飲料用容器の分野でも例外ではなく、例えばジュースなどの容器では樹脂フイルムで内面を被覆した紙容器が一般に広く用いられている。その場合に、紙容器の内面に被覆する樹脂フイルムとしては、オレフィン系樹脂が一般に用いられている。しかしながら、オレフィン系樹脂で内面を被覆した紙容器を果汁飲料などのような香気成分を含有する飲料容器に使用すると、香りが失われたり味の変化が生ずるなどの問題が生ずることがある。
【0003】
そこで、オレフィン系樹脂に代えて、紙容器の内面に、共重合単位を5〜20モル%程度含有する変性ポリエチレンテレフタレート層を有するポリエステル樹脂積層体を被覆することが提案されている(特開平3−133638号公報)。この場合には、ポリエステル樹脂が本来的に有しているガスバリヤー性、フレーバーバリヤー性などの特性によって紙容器に充填された飲料などの香りや味はある程度良好に保たれる。しかしながら、前記した変性ポリエステル樹脂積層体からなる被覆層は、紙容器の製造工程において広く採用されている過酸化水素による殺菌処理を行うと、膨潤したり、該ポリエステル樹脂積層体被覆層中に気泡が生じたり、紙基材との間に剥離が生ずるというトラブルを生じ易く、それに伴って紙容器製造時の加工性、工程通過性などが著しく不良になるという欠点がある。しかも、膨潤したポリエステル樹脂積層体被覆層中に含まれる過酸化水素が紙容器に充填された内容物中に移行し、食品の品質や安全性の低下を招く恐れがあるなどの問題がある。
【0004】
また、ナフタレンジカルボン酸で変性した共重合ポリエチレンテレフタレートに含まれる残存金属量を10ミリモル%以下にし且つリン化合物含量を3〜20ミリモル%にすることにより、該共重合ポリエステルの透明性および色調の向上を図ることが提案されている(特開平10−45883号公報)。しかし、この場合は、ポリエチレンテレフタレートの耐過酸化水素性などの特性が必ずしも十分には改良されない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリエステル樹脂が本来有するガスバリヤー性やフレーバーバリヤー性などの特性を良好に保持しつつ、過酸化水素による殺菌処理を施したときに膨潤、気泡の発生、基材からの剥離などの問題が生じず、しかもヒートシール性に優れていて紙などの基材に強固に且つ円滑に接着積層させることができ、さらに伸度などの機械的特性にも優れていて取り扱い性に優れるポリエステル樹脂組成物を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記したポリエステル樹脂組成物からなるフィルムなどの成形品や包材を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル樹脂としてナフタレンジカルボン酸単位を特定の割合で有する共重合ポリエステル樹脂を用い、該共重合ポリエステル樹脂に、マンガン化合物とコバルト化合物の両方を所定の量で配合すると共にリン化合物の含有量を所定の量以下にすると、過酸化水素に対する耐性に優れ、しかもガスバリヤー性、フレーバーバリヤー性、ヒートシール性、力学的特性などにも優れるポリエステル樹脂組成物が得られることを見い出した。
さらに、本発明者らは、上記したポリエステル樹脂組成物において、有機カルボン酸のアルカリ金属塩を所定の量で配合すると、過酸化水素に対する耐性、耐熱性、耐変色性などが一層向上することを見い出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(i)エチレングリコール単位を主体とするジオール単位とテレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位から主としてなり、且つナフタレンジカルボン酸単位を全構造単位の合計モル数に基づいて5〜40モル%の割合で有するポリエステル樹脂を主要成分とするポリエステル樹脂組成物であって;
( ii )コバルト化合物およびマンガン化合物を下記の数式▲1▼〜▲3▼;
【0008】
【数3】
0.01≦CCo≦0.20 ▲1▼
0.01≦CMn≦0.20 ▲2▼
0.02≦(CCo+CMn)≦0.30 ▲3▼
(式中、CCoおよびCMnは、ポリエステル樹脂におけるジカルボン酸単位の全モル数に対する、コバルト化合物のコバルト原子換算のモル%、およびマンガン化合物のマンガン原子換算のモル%をそれぞれ示す。)
を満足する量で含有し;且つ、
( iii )リン化合物の含有量が、下記の数式▲4▼;
【0009】
【数4】
C P /(C Co +C Mn )≦0.65 ▲4▼
(式中、C P 、C Co およびC Mn は、ポリエステル樹脂におけるジカルボン酸単位の全モル数に対する、リン化合物のリン原子換算のモル%、コバルト化合物のコバルト原子換算のモル%およびマンガン化合物のマンガン原子換算のモル%をそれぞれ示す。)
を満足する;
ことを特徴とするポリエステル樹脂組成物である。
【0010】
そして、本発明は、上記したポリエステル樹脂組成物において、炭素数1〜15の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩を、該組成物中のポリエステル樹脂の重量に基づいて、アルカリ金属原子換算で100〜10000ppmの量でさらに含有するポリエステル樹脂組成物を包含する。
【0011】
そして、本発明は、上記したポリエステル樹脂組成物からなるフィルムやその他の成形品、包材、該ポリエステル樹脂組成物層と紙層を有する積層体、該ポリエステル樹脂組成物で内面を被覆した紙容器を包含する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物の主要成分をなすポリエステル樹脂は、エチレングリコール単位を主体とするジオール単位とテレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位から主としてなり、且つナフタレンジカルボン酸単位を有するポリエステル樹脂である。
【0013】
本発明で用いるポリエステル樹脂では、ポリエステル樹脂組成物のガスバリヤー性およびフレーバーバリヤー性を良好なものとするために、ポリエステル樹脂の全構造単位の合計モル数に基づいて、テレフタル酸単位の割合が10〜45モル%であることが好ましく、15〜42.5モル%であることがより好ましく、またエチレングリコール単位の割合が10〜50モル%であることが好ましく、20〜50モル%であることがより好ましい。
【0014】
本発明で用いるポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の全構造単位の合計モル数に基づいて、ナフタレンジカルボン酸単位を5〜40モル%の割合で有していることが必要であり、7.5〜35モル%の割合で有していることが好ましい。ポリエステル樹脂におけるナフタレンジカルボン酸単位の含有割合が5モル%未満であるとポリエステル樹脂組成物のヒートシール性が不良になり、しかも過酸化水素による殺菌処理時の膨潤が大きくなる。一方、ポリエステル樹脂におけるナフタレンジカルボン酸単位の含有割合が40モル%を超える場合もヒートシール性が低下する。
【0015】
本発明で用いるポリエステル樹脂は、ヒートシール性、ガスバリヤー性、フレーバーバリヤー性などの特性を損なわない範囲で上記した以外の構造単位を有していてもよい。そのような他の構造単位としては、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量400〜30000)、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオールから誘導されるジオール単位;例えばイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体から誘導されるジカルボン酸単位などを挙げることができ、ポリエステル樹脂は前記した他の構造単位の1種または2種以上を有することができる。一般に、ポリエステル樹脂中における上記した他の構造単位の割合は、ポリエステル樹脂の全構造単位の合計モル数に基づいて、約5モル%以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明で用いるポリエステル樹脂の極限粘度(フェノール/テトラクロロエタンの等重量混合溶媒中30℃で測定)は、フィルム形成性とフィルム強度の点から、0.60〜1.50dl/gの範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、コバルト化合物およびマンガン化合物を含有する。
本発明のポリエステル樹脂組成物で用いるコバルト化合物の例としては、ギ酸コバルト、酢酸コバルト、プロピオン酸コバルトなどの脂肪酸のコバルト塩、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、フッ化コバルトなどのコバルトのハロゲン化物、硫酸コバルト、硫化コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルトなどを挙げることができる。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物で用いるマンガン化合物の例としては、ギ酸マンガン、酢酸マンガン、プロピオン酸マンガンなどの脂肪酸のマンガン塩、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、フッ化マンガンなどのマンガンのハロゲン化物、硫酸マンガン、硫化マンガン、酸化マンガン、水酸化マンガンなどを挙げることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上記したコバルト化合物の1種または2種以上とマンガン化合物の1種または2種以上とを組み合わせ含有することができる。
【0018】
そのうちでも、本発明のポリエステル樹脂組成物では、コバルト化合物として酢酸コバルトおよび/または硫酸コバルトが好ましく用いられ、またマンガン化合物として酢酸マンガンおよび/または硫酸マンガンが好ましく用いられる。
【0019】
ポリエステル樹脂組成物は、コバルト化合物およびマンガン化合物を、下記の数式▲1▼〜▲3▼;
【0020】
【数5】
0.01≦CCo≦0.20 ▲1▼
0.01≦CMn≦0.20 ▲2▼
0.02≦(CCo+CMn)≦0.30 ▲3▼
(式中、CCoおよびCMnは、ポリエステル樹脂におけるジカルボン酸単位の全モル数に対する、コバルト化合物のコバルト原子換算のモル%、およびマンガン化合物のマンガン原子換算のモル%をそれぞれ示す。)
を満足する量で含有することが必要である。
【0021】
ポリエステル樹脂組成物において、ポリエステル樹脂のジカルボン酸単位の全モル数に対して、コバルト化合物の含有量がコバルト原子換算で0.01モル%未満であるか、マンガン化合物の含有量がマンガン原子換算で0.01モル%であるか、またはコバルト化合物とマンガン化合物の含有量がコバルト原子およびマンガン原子の合計換算で0.02モル%未満であると、過酸化水素による殺菌処理時の膨潤が大きくなる。一方、ポリエステル樹脂組成物において、ポリエステル樹脂のジカルボン酸単位の全モル数に対して、コバルト化合物の含有量がコバルト原子換算で0.20モル%を超えるか、マンガン化合物の含有量がマンガン原子換算で0.20モル%超えるか、またはコバルト化合物とマンガン化合物の含有量がコバルト原子換算およびマンガン原子換算の合計で0.30モル%を超えると、ポリエステル樹脂組成物を溶融成形する際に、ポリエステル樹脂が分解し、フィルムなどの成形品の強度が低下する。
本発明のポリエステル樹脂組成物では、上記コバルト化合物の含有量(CCo)が0.02〜0.15モル%の範囲で、マンガン化合物の含有量(CMn)が0.02〜0.15モル%の範囲で、且つコバルト化合物とマンガン化合物の合計含有量(CCo+CMn)が0.04〜0.20モル%の範囲であることが、組成物の過酸化水素に対する耐性およびポリエステル樹脂の耐熱分解性が一層良好になる点から好ましい。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂組成物では、ナフタレンジカルボン酸単位を上記所定の割合で有する上記のポリエステル樹脂に対して、コバルト化合物およびマンガン化合物を上記の数式▲1▼〜▲3▼の割合で含有していることにより、ヒートシール性、耐過酸化水素性、フレーバーバリヤー性、ガスバリヤー性、伸度や強度などの機械的特性に優れたものとなる。
【0023】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物において、上記したコバルト化合物およびマンガン化合物と共に、炭素数1〜15の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩を含有させると、その耐過酸化水素性が一層向上し、過酸化水素による殺菌処理時の膨潤をより効果的に抑制することができる。
炭素数1〜15の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩の具体例としては、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、酪酸ナトリウム、酪酸カリウム、吉草酸ナトリウム、吉草酸カリウム、カプロン酸ナトリウム、カプロン酸カリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウムなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
ポリエステル樹脂組成物中に前記した脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩を含有させる場合の含有量は、ポリエステル樹脂組成物中のポリエステル樹脂の重量に基づいてアルカリ金属原子換算で100〜10000ppm(ポリエステル樹脂100重量部に対して0.01〜1重量部)であることが好ましく、1500〜8000ppmであることがより好ましい。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いるポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用のポリエステル樹脂を製造するのに一般的に採用されている方法に準じて製造することができ、特に制限されない。例えば、テレフタル酸を主体とするジカルボン酸またはその低級アルキルエステルからなるジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主体とするジオール成分とからなるポリエステル樹脂形成用原料であって、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成成分を、ナフタレンジカルボン酸単位のポリエステル中での共重合割合が上記した5〜40モル%になるような割合で含有するポリエステル樹脂形成用原料を用いて、エステル化反応またはエステル交換反応させて低重合体を製造した後、この低重合体を溶融重縮合させてポリエステルを製造し、次いでこのポリエステルを任意形状のチップやペレットなどにし、それをさらに所望により固相重合することによって、ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0025】
限定されるものではないが、ポリエステル樹脂を得るための好ましい方法をより具体的に説明すると、上記した低重合体を得るためのエステル化反応によって製造する場合は、上記したポリエステル樹脂用原料を、常圧または絶対圧で3kg/cm2以下の加圧下に約230〜280℃の温度でエステル化反応させるとよい。その場合に、ジカルボン酸成分:ジオール成分の使用割合は、1:1〜1:1.5のモル比とするのが好ましい。
【0026】
また、エステル交換反応によって低重合体を製造する場合は、上記したポリエステル樹脂用原料を常圧またはその付近の圧力条件下に約170〜230℃でエステル交換反応させるとよい。その場合のジカルボン酸成分:ジオール成分の使用割合は、1:1〜1:3のモル比とするのが好ましい。エステル交換反応に用いる触媒としては、本発明のポリエステル樹脂組成物が含有する上記したマンガン化合物やコバルト化合物と同様の金属化合物、或いは従来から汎用されているチタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラステアリルなどのチタン酸エステルなどを挙げることができる。
【0027】
また、低重合体からポリエステル樹脂を得るための上記した溶融重縮合は、通常、二酸化ゲルマニウム、三酸化アンチモンなどの重縮合触媒の存在下に約260〜290℃の温度で行うことができる。その場合に、二酸化ゲルマニウムを得られるポリエステル樹脂に対し50〜300ppmの範囲の量で用いてこの重縮合反応を行うと、過酸化水素で処理したとの膨潤を抑制できるので好ましい。
このような溶融重縮合によって通常、極限粘度0.50〜1.50dl/gのポリエステルが得られる。
【0028】
上記した溶融重縮合反応を、リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェートなどのリン化合物を添加して行うと、得られるポリエステル樹脂の熱分解による着色や溶融成形時の分子量低下を防止することができるので好ましい。しかしながら、ポリエステル樹脂、ひいてはポリエステル樹脂組成物におけるリン化合物の含有量が多くなると、リン化合物がコバルト化合物およびマンガン化合物を失活させるため、ポリエステル樹脂組成物の耐過酸化水素性が低下する。
そのため、本発明のポリエステル樹脂組成物では、そこに含まれるリン化合物の含有量が、下記の数式▲4▼;
【0029】
【数6】
CP/(CCo+CMn)≦0.65 ▲4▼
(式中、CPおよびCCoおよびCMnは、ポリエステル樹脂におけるジカルボン酸単位の全モル数に対する、リン化合物のリン原子換算のモル%、並びにコバルト化合物およびマンガン化合物のコバルト原子換算およびマンガン原子換算の合計モル%を示す。)
を満足する量になるように、上記溶融重縮合反応時におけるリン化合物の添加量を調節する。
【0030】
また、上記したエステル化反応、エステル交換反応、重縮合反応は、必要に応じて、テトラアンモニウムヒドロキシド、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどのジエチレングリコール副生抑制剤を添加して行ってもよい。
【0031】
上記の溶融重縮合反応により得られたポリエステルは、一般にチップやペレットの形状にし、所望により190℃以下の温度で予備結晶化した後、固相重合に付すことができる。固相重合は、好ましくは、通常減圧下または窒素ガスなどの不活性ガスの流通下にチップ(ペレット)同士が融着しないように流動させながら約190〜240℃に加熱して行われる。得られるポリエステル樹脂の機械的特性および溶融成形時の粘度などを考慮すると、最終的に得られるポリエステル樹脂の極限粘度(フェノール/テトラクロロエタン等重合混合溶媒中30℃で測定)が約0.60〜1.50dl/gの範囲になるようにして固相重合を行うのが好ましい。
そして、上記した一連の工程を行うことによって、本発明のポリエステル樹脂組成物に好ましく用いられるポリエステル樹脂が得られる。
【0032】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、発明の目的を損なわない範囲で、その用途などに用じて従来公知の各種添加剤を含有してもよく、例えば、加水分解防止剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤などを挙げることができる。ただし、本発明のポリエステル樹脂組成物を食品用紙容器の内面被覆材におけるように食品と直接接触させて用いる場合は、安全性を十分に考慮して添加剤の種類を選択する必要がある。
【0033】
ポリエステル樹脂組成物におけるコバルト化合物およびマンガン化合物の添加方法は特に制限されず、ポリエステル樹脂の製造時または製造後にコバルト化合物およびマンガン化合物を場合により有機カルボン酸のアルカリ金属塩および/またはリン化合物と共に添加してポリエステル樹脂組成物を調製することができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物の形態は特に制限されないが、ペレットやチップなどの形態にしておくと各種の成形に便利に使用することができる。
【0034】
本発明のポリエステル樹脂組成物は加熱溶融成形して、例えば、フイルム、シート、板状体、管状体、中空成形品、型成形品、積層体などの種々の成形品にすることができる。その際の成形法としては熱可塑性樹脂の成形に用いられる成形法のいずれもが使用でき、例えば押出成形法、流延成形法、押出ブロー成形法、射出成形法、射出ブロー成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、注型法、各種の積層成形法などによって成形することができる。
そのうちでも、本発明のポリエステル樹脂組成物はその良好なガスバリヤー性、フレーバーバリヤー性、ヒートシール性、耐過酸化水素性、機械的特性などを活かして、包装用フイルムやシート、ボトルやその他の形状の包装容器等として特に有効に使用することができ、特に食品包装用のフイルム、シート、容器等として適している。本発明のポリエステル樹脂組成物からフイルムやシートを形成する場合は、その厚さは特に制限されず、用途等に応じて適宜設定できるが、一般に約0.005〜1mm程度の厚さにしておくのがよい。
【0035】
本発明のポリエステル樹脂組成物からフイルムまたはシートを製造する場合は、熱可塑性樹脂を用いる従来既知のフイルムまたはシートの製造法のいずれもが採用でき、例えばTダイによる押出成形法、環状ダイを用いて押し出された筒状体内に流体を導入しながら成形を行うインフレーション押出成形法、流延成形法、カレンダー成形法、プレス成形法などを挙げることができる。そのうちでも、フイルムを工業的に大量に製造するためには、成形が容易であること、製品ロスが少ないこと、製造コストが低いことなどの理由から、押出成形法が好ましく用いられ、特にインフレーション押出成形法が好ましく用いられる。そして、インフレーション押出成形法によってフイルムを製造する場合に、環状ダイから押出された筒状体内に導入する流体の圧力や量、押出されたフイルムの引き取り速度などを調節することによって、必要に応じて、延伸されたフイルムをインフレーション押出成形と同時に得ることができる。
【0036】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物よりなるフイルムやシートは、他の基材と2層または3層以上の積層体の形態にしてもよく、その場合の他の基材としては、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、上記した以外のポリエステル、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのような熱可塑性重合体、紙、布帛、金属箔などを挙げることができ、これらの基材の1種または2種以上を用いることができる。その場合に、積層体の製造法も特に制限されず、例えば、押出ラミネート法、ドライラミネート法、ウエットラミネート法、ホットメルトラミネート法などの従来既知の積層法を採用すればよい。
特に、紙基材上に本発明のポリエステル樹脂組成物よりなるフイルム層を積層してなる積層体は、果汁飲料やその他の飲料用の紙容器材料として有効に使用することができ、本発明のポリエステル樹脂組成物よりなるフイルム層を内面に有する紙容器は、過酸化水素で殺菌処理した場合にも、膨潤せず、ポリエステル樹脂組成物層中での気泡が発生せず、紙基材とポリエステル樹脂組成物との間の剥離が生じず、しかも紙容器内に充填された飲料の香りや味を長期にわたって安全に且つ良好に保つことができる。
【0037】
【実施例】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、ポリエステル樹脂の極限粘度、並びにポリエステル樹脂組成物より得られたフイルムの過酸化水素による膨潤性、ガスバリヤー性、ヒートシール性および伸度は次のようにして測定または評価した。
【0038】
(1)ポリエステル樹脂の極限粘度:
フェノール/テトラクロロエタン等重量混合溶媒中、30℃でウベローデ粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用いて測定した。
【0039】
(2)フイルムの過酸化水素による膨潤性:
以下の実施例または比較例のポリエステル樹脂組成物を用いて、温度280℃、プレス圧力100kg/cm2の条件下にプレス成形して厚さ100μmのフイルムを製造し、そのフイルムから縦×横=100mm×100mmの寸法の試験片を切り取り、それを35%過酸化水素水中に75℃または90℃の温度に60秒間浸漬し、次いでそれを温度25℃の蒸留水400ml中に1時間浸漬して、蒸留水中に溶け出した過酸化水素の濃度を試験紙を用いて測定して、過酸化水素による膨潤性の指標とした。
【0040】
(3)フイルムのフレーバーバリヤー性:
以下の実施例または比較例のポリエステル樹脂組成物を用いて、温度280℃、プレス圧力100kg/cm2の条件下にプレス成形して厚さ500μmのフイルムを製造し、そのフイルムから縦×横=20mm×50mmの寸法の試験片を切り取り、それをオレンジジュース(愛媛みかん「POMストレートジュース」)50ml中に25℃の温度に12日間浸漬した後、オレンジジュースからフイルムを取り出し、オレンジジュース中に残存していたリモネン量を臭素化滴定法により定量してフレーバーバリヤー性の指標とした。
【0041】
(4)フイルムのヒートシール性:
以下の実施例または比較例のポリエステル樹脂組成物を用いて、温度280℃、プレス圧力100kg/cm2の条件下にプレス成形して厚さ100μmのフイルムを製造し、そのフイルムから縦×横=50mm×50mmの寸法の試験片を2枚切り取り、シール圧1.2kg/cm2、シール時間1.4秒の条件下に、ヒートシール装置(安田精機製作所製「YSS式ヒートシーラー」)を用いてヒートシールを行い、ヒートシールが可能な下限温度を求めることによって、ヒートシール性の指標とした。
【0042】
(5)フイルムの伸度:
以下の実施例または比較例のポリエステル樹脂組成物を用いて、温度280℃、プレス圧力100kg/cm2の条件下にプレス成形して厚さ100μmのフイルムを製造し、そのフイルムから縦×横=80mm×15mmの寸法の試験片を切り取り、ASTM D882にしたがってその伸度を測定した。
【0043】
《実施例1》
(1) エチレングリコール62.3重量部、テレフタル酸ジメチルエステル44.3重量部および2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル55.7重量部からなるスラリー(ジオール成分:ジカルボン酸成分のモル比=2.25:1)を用いて、酢酸コバルト4水塩803ppm(コバルト原子換算190ppm)および酢酸マンガン4水塩901ppm(マンガン原子換算202ppm)の存在下に、170℃の温度から220℃の温度にまで2時間30分かけて徐々に昇温してエステル交換反応を行って酢酸コバルト4水塩および酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物を製造した。
(2) 次に、上記(1)で得られた酢酸コバルト4水塩および酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物に触媒として二酸化ゲルマニウム200ppmを加えて、絶対圧1トールの減圧下に280℃の温度で溶融重縮合させて、極限粘度0.68dl/gのポリエステル樹脂を調製し、このポリエステル樹脂をノズルからストランド状に押し出し、切断して円柱状チップを製造した。
(3) 上記(2)で得られたチップを60℃で16時間加熱真空乾燥した後に、それを用いて、上記した各試験法にしたがって、280℃でプレス成形して厚さが100μmおよび500μmのフイルムをそれぞれ製造し、それを用いて上記した方法でフイルムの過酸化水素による膨潤性、フレーバーバリヤー性、ヒートシール性および伸度の測定または評価を行ったところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0044】
《実施例2》
(1) 実施例1の(2)において、酢酸コバルト4水塩および酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物の溶融重縮合を、二酸化ゲルマニウム200ppmおよびトリメチルホスフェート289ppm(リン原子換算64ppm)の存在下に行った以外は、実施例1の(1)および(2)と同様に行って、ポリエステル樹脂のチップを製造した。
(2) 上記(1)で得られたチップを60℃で16時間加熱真空乾燥した後に、それを用いて、実施例1の(3)と同様にしてフィルムを製造し、それを用いて、実施例1の(3)と同様にして試験用のフィルムを製造し、各種物性の測定または評価を行ったところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0045】
《実施例3》
(1) エチレングリコール68.3重量部、テレフタル酸ジメチルエステル71.3重量部および2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル29.8重量部からなるスラリー(ジオール成分:ジカルボン酸成分のモル比=2.25:1)を用いて、酢酸コバルト4水塩486ppm(コバルト原子換算115ppm)および酢酸マンガン4水塩357ppm(マンガン原子換算80ppm)の存在下に、170℃の温度から220℃の温度にまで2時間30分かけて徐々に昇温してエステル交換反応を行って酢酸コバルト4水塩および酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物を製造した。
(2) 次に、触媒として二酸化ゲルマニウム200ppmを加えて、絶対圧1トールの減圧下に280℃の温度で、上記(1)で得られた酢酸コバルト4水塩および酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物を溶融重縮合させて、極限粘度0.78dl/gのポリエステル樹脂を調製し、このポリエステル樹脂をノズルからストランド状に押し出し、切断して円柱状チップを製造した。
(3) 上記(2)で得られたチップを60℃で16時間加熱真空乾燥した後に、それを用いて、実施例1の(3)と同様にしてフィルムを製造し、それを用いて、実施例1の(3)と同様にして試験用のフィルムを製造し、各種物性の測定または評価を行ったところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0046】
《実施例4》
(1) 実施例3の(1)において、低重合体組成物の製造時(エステル交換反応時)に、酢酸ナトリウム2000ppm(ナトリウム原子換算560ppm)を更に用いた以外は、実施例3の(1)と同様に行って、酢酸コバルト4水塩、酢酸マンガン4水塩および酢酸ナトリウムを含有する低重合体組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた低重合体組成物を、実施例3の(2)と同様にして溶融重縮合させて、極限粘度0.78dl/gのポリエステル樹脂を調製し、このポリエステル樹脂をノズルからストランド状に押し出し、切断して円柱状チップを製造した。
(3) 上記(2)で得られたチップを60℃で16時間加熱真空乾燥した後に、それを用いて、実施例1の(3)と同様にしてフィルムを製造し、各種物性の測定または評価を行ったところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0047】
《実施例5》
(1) エチレングリコール62.3重量部、テレフタル酸ジメチルエステル34.6重量部および2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル65.4重量部からなるスラリー(ジオール成分:ジカルボン酸成分のモル比=2.25:1)を用いて、酢酸コバルト4水塩562ppm(コバルト原子換算133ppm)および酢酸マンガン4水塩1102ppm(マンガン原子換算247ppm)の存在下に、170℃の温度から220℃の温度にまで2時間30分かけて徐々に昇温してエステル交換反応を行って酢酸コバルト4水塩および酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物を製造した。
(2) 次に、上記(1)で得られた酢酸コバルト4水塩および酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物に二酸化ゲルマニウム200ppmおよびトリメチルホスフェート190ppm(リン原子換算42ppm)を加えて、絶対圧1トールの減圧下に280℃の温度で溶融重縮合させて、極限粘度0.64dl/gのポリエステル樹脂を調製し、このポリエステル樹脂をノズルからストランド状に押し出し、切断して円柱状チップを製造した。
(3) 上記(2)で得られたチップを60℃で16時間加熱真空乾燥した後に、それを用いて、実施例1の(3)と同様にしてフィルムを製造し、各種物性の測定または評価を行ったところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0048】
《比較例1》
(1) エチレングリコール57.2重量部および2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル100重量部からなるスラリー(ジオール成分:ジカルボン酸成分のモル比=2.25:1)を用いて、酢酸マンガン4水塩250ppm(マンガン原子換算56ppm)の存在下に、170℃の温度から220℃の温度にまで2時間30分かけて徐々に昇温してエステル交換反応を行って酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物を製造した。
(2) 次に、上記(1)で得られた酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物に二酸化ゲルマニウム200ppmを加えて、絶対圧1トールの減圧下に280℃の温度で溶融重縮合させて、極限粘度0.51dl/gのポリエステル樹脂を調製し、このポリエステル樹脂をノズルからストランド状に押し出し、切断して円柱状チップを製造した。
(3) 上記(2)で得られたチップを60℃で16時間加熱真空乾燥した後に、それを用いて、実施例1の(3)と同様にしてフィルムを製造し、各種物性の測定または評価を行ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0049】
《比較例2》
(1) エチレングリコール62.3重量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール22.3重量部およびテレフタル酸ジメチルエステル100重量部からなるスラリー(ジオール成分:ジカルボン酸成分のモル比=2.25:1)を用いて、酢酸コバルト4水塩803ppm(コバルト原子換算190ppm)および酢酸マンガン4水塩901ppm(マンガン原子換算202ppm)の存在下に、170℃の温度から220℃の温度にまで2時間30分かけて徐々に昇温してエステル交換反応を行って酢酸コバルト4水塩および酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物を製造した。
(2) 次に、上記(1)で得られた酢酸コバルト4水塩および酢酸マンガン4水塩を含有する低重合体組成物に、二酸化ゲルマニウム200ppmおよびトリメチルホスフェート50ppm(リン原子換算11ppm)を加えて、絶対圧1トールの減圧下に280℃の温度で溶融重縮合させて、極限粘度0.81dl/gのポリエステル樹脂を調製し、このポリエステル樹脂をノズルからストランド状に押し出し、切断して円柱状チップを製造した。
(3) 上記(2)で得られたチップを60℃で16時間加熱真空乾燥した後に、それを用いて、実施例1の(3)と同様にしてフィルムを製造し、各種物性の測定または評価を行ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
上記の表1および表2の結果から、ナフタレンジカルボン酸単位を5〜40モル%の割合で有する共重合ポリエチレンテレフタレートに対して、コバルト化合物およびマンガン化合物を上記の数式▲1▼〜▲3▼を満足する量で含有すると共にリン化合物の含有量が上記の数式▲4▼を満足している実施例1〜5のポリエステル樹脂組成物では、それから得られたフイルムが、耐過酸化水素性に優れていて、75℃および90℃の過酸化水素水中に浸漬しても膨潤(フイルム中への過酸化水素の取り込み)がないか、極めて小さく、安全性に優れていることがわかる。しかも、実施例1〜5のフイルムでは、オレンジジュースの香気成分の一種であるリモネンがフイルムに吸着または吸収されずにいつまでもオレンジジュース中に残存していて、オレンジジュースの香りが良好に保たれ、フレーバーバリヤー性が良好であること、適度な伸度およびヒートシール温度を有し、取り扱い性およびヒートシール性に優れていることがわかる。
【0053】
さらに、実施例2では、フィルムの伸度がより大きく、力学的特性に一層優れていることがわかる。
また、上記の表1における実施例3と実施例4の結果から、有機カルボン酸のアルカリ金属塩を含有する実施例4では、その耐過酸化水素性が一層優れることがわかる。
【0054】
それに対して、上記表2における比較例1の結果から、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を有する共重合ポリエチレンテレフタレートに対して、マンガン化合物のみを添加して得られたポリエステル樹脂組成物は、耐過酸化水素性に劣っており、75℃および90℃の過酸化水素水中に浸漬したときに膨潤(フイルム中への過酸化水素の取り込み)が大きく、したがって蒸留水中への過酸化水素の溶出が生ずること、しかも伸度が小さいことがわかる。
また、上記表2における比較例2の結果から、ポリエステル樹脂として、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の代わりに1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を有する共重合ポリエチレンテレフタレートを用いた比較例2のポリエステル樹脂組成物は、耐過酸化水素性に大きく劣っており、75℃および90℃の過酸化水素水中に浸漬したときに膨潤(フイルム中への過酸化水素の取り込み)が大きいこと、またフレーバーバリヤー性の点でも劣っていることがわかる。
【0055】
《実施例6》
(1) 実施例1の(3)で得られたポリエステル樹脂組成物のチップを用いて、温度280℃で溶融押出成形を行って、紙容器用の紙基材(厚さ200μm)上に厚さ20μmでフイルム状に押出ラミネートして積層体を製造した。この積層体を用いてポリエステル樹脂組成物フイルム層が内側になるようにして、常法にしたがって容器成形(折り曲げおよびヒートシール;ヒートシール温度190℃)を行って、ジュース用紙容器(内容量200ml)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた紙容器に温度75℃の35%過酸化水素水を充填し、30秒間放置して殺菌処理を行った後、紙容器から過酸化水素水を除去し、精製水で3回洗浄した(1回につき精製水200ml)。
(3) 上記(2)で得られた紙容器内に予め殺菌処理を施しておいたオレンジジュースを充填し(180ml/1紙容器)、口を密封した。
(4) 上記(3)で得られた紙容器入りのオレンジジュースを常温下に1カ月保存した後、開封して試飲したところ、香りおよび味ともに良好であった。
【0056】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂組成物およびそれよりなるフイルムなどの製品は、過酸化水素に対する耐性に優れており、過酸化水素で処理した場合に膨潤、気泡の発生、基材からの剥離などが生じない。そのため、本発明のポリエステル樹脂組成物やそれよりなるフイルムなどを食品に直接接触する包材、包装容器などに用いて過酸化水素で殺菌処理しても、殺菌処理後に過酸化水素が食品中に溶け出すなどの心配がなく、安全性に優れており、食品容器などの製品を製造する際の工程性や操作性などに優れている。
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物およびそれよりなるフイルムなどの製品は、フレーバーバリヤー性やガスバリヤー性に優れているので、食品用包材をはじめとして広範な分野で有効に使用することができる。
そして、本発明のポリエステル樹脂組成物およびそれよりなるフイルムなどはヒートシール性、伸度や強度などの機械的特性に優れているので、取り扱い性、耐久性に優れている。
Claims (8)
- (i)エチレングリコール単位を主体とするジオール単位とテレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位から主としてなり、且つナフタレンジカルボン酸単位を全構造単位の合計モル数に基づいて5〜40モル%の割合で有するポリエステル樹脂を主要成分とするポリエステル樹脂組成物であって;
( ii )コバルト化合物およびマンガン化合物を下記の数式▲1▼〜▲3▼;
を満足する量で含有し;且つ、
( iii )リン化合物の含有量が、下記の数式▲4▼;
を満足する;
ことを特徴とするポリエステル樹脂組成物。 - さらに、炭素数1〜15の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩を、ポリエステル樹脂の重量に基づいて、アルカリ金属原子換算で100〜10000ppmの割合で含有する請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
- フィルムである請求項3に記載の成形品。
- 食品用フィルムである請求項4に記載の成形品。
- 請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物を用いてなる包材。
- 請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物層および紙層を有する積層体。
- 請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物で内面を被覆した紙容器。
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