JP3719321B2 - 自動車天井材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車天井材に関し、更に詳しくは、高温下の使用における変形や自重による垂れ下がりを改善し、耐熱性、軽量性に優れた自動車天井材およびその製造方法、並びにそれらに用いる発泡積層シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車天井材として、熱可塑性樹脂発泡体を主体とする基材にウレタンフォームを積層したものや、スチレン−無水マレイン酸共重合体の発泡層の上下面にスチレン−無水マレイン酸共重合体の非発泡層を積層した積層シートを所望の形状に成形したものが広く用いられている。それらの自動車天井材は、軽量で断熱性が高く、成形加工性が優れているという特徴がある。
【0003】
しかしながら、上記のような従来の自動車天井材は、高温に長時間さらされると、耐熱性が不十分であるため、フロント部が自重で垂れ下がったり(ヒートサグ)、変形を生じるなどの問題を発生することがある。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、無機質のガラス繊維とプラスチックの複合材料をベースとした自動車天井材が使用されている。しかし、この複合材料では、耐熱性という品質は維持できるものの、軽量化が図れない上に、ガラス繊維のためにリサイクル性が悪く、またコスト高になるといった問題があった。
【0005】
そこで、軽量で耐熱性のある変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、「PPE系樹脂」と記す。)発泡層の両面に、変性PPE系樹脂非発泡層を積層した発泡積層シートを用いた自動車天井材用発泡積層シートが提案されている(実開平4−11162号公報)。この変性PPE系樹脂を用いた自動車天井材用発泡積層シートは、耐熱性に優れ、軽量であるため、高温下での変形や自重による垂れ下がりを改善することができるとされている。
【0006】
一方、近年、自動車の耐熱性、軽量性、コストに対する要求は更に厳しくなっているため、この市場要求に対応する更なる改善が必要である。例えば、自動車天井材の場合、フロント部は太陽光が当たるため100℃前後まで温度が上がり、変形量が大きくなるという問題が発生している。一方、上記変性PPE系樹脂発泡積層シートは、好適な条件下で2次成形が行われない場合、成形体に残留応力が発生し、高温(例えば80℃以上)の雰囲気中に長時間さらされると穏やかに残留応力が緩和され、その結果、屈曲形状を有する部分や2次成形時の延伸率が大きい部分(例えばフロント部)が変形し、使用に耐えなくなるという問題を含んでいる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の如き実情に鑑み、軽量性、断熱性、成形加工性、リサイクル性などの特性に加えて、高温下での使用による変形、自重による垂れ下がりを改善してなる優れた耐熱性(耐熱変形性)を有する自動車天井材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は優れた耐熱性、軽量性を有し、安価で、且つ容易に製造可能な自動車天井材を提供するため、自動車天井材の熱可塑性樹脂からなる非発泡層の構成および製造方法について鋭意検討を行った結果、自動車天井材の車内側非発泡層および車外側非発泡層の耐熱試験温度における引張弾性勾配と加熱収縮率を調整することで、軽量で、従来にない耐熱性(耐熱変形性)の高い、良好な寸法安定性、成形性、耐衝撃性、遮音性、断熱性、コスト競争力を有する自動車天井材を得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る自動車天井材は、変性PPE系樹脂発泡層(1)の両面に熱可塑性樹脂からなる非発泡層を形成した発泡積層シートからなり、100℃における引張弾性勾配が車外側非発泡層(3)よりも車内側非発泡層(2)で大きいことを特徴とする自動車天井材(請求項1)、100℃における車内側非発泡層(2)の引張弾性勾配が150MPa・mm以上である請求項1記載の自動車天井材(請求項2)、100℃における車内側非発泡層(2)の引張弾性勾配が200MPa・mm以上である請求項2記載の自動車天井材(請求頃3)、100℃における引張弾性勾配を該温度の加熱収縮率で除した値が、車外側非発泡層(3)よりも車内側非発泡層(2)で大きい請求項1〜3のいずれかに記載の自動車天井材(請求項4)、天井材の発泡層の基材樹脂である変性PPE系樹脂中のフェニレンエーテル成分(以下、「PhE成分」と記す。)の含有量が35重量%〜75重量%で、スチレン系成分(以下、「St系成分」と記す。)の含有量が25重量%〜65重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の自動車天井材(請求項5)、熱可塑性樹脂からなる車内側非発泡層(2)の基材樹脂が変性PPE系樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の自動車天井材(請求項6)、である。
【0010】
また、本発明に係る自動車天井材の製造方法は、変性PPE系樹脂発泡層(1)の両面に熱可塑性樹脂からなる非発泡層を形成した発泡積層シートを成形してなる自動車天井材の製造方法において、100℃における引張弾性勾配が車外側非発泡層(3)よりも車内側非発泡層(2)で大きくすることを特徴とする自動車天井材の製造方法(請求項7)であり、更に、本発明に係る発泡積層シートは、変性PPE系樹脂発泡層(1)の両面に熱可塑性樹脂からなる非発泡層を形成してなり、100℃における引張弾性勾配が大きい側の非発泡層の上面にホットメルト接着剤層を形成してなることを特徴とする発泡積層シート(請求項8)である。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る自動車天井材の構成を示すものであり、変性PPE系樹脂からなる発泡層(1)の両面に熱可塑性樹脂からなる非発泡層(車内側非発泡層(2)、および車外側非発泡層(3))を形成してなり、車内側非発泡層(2)の上面にホットメルト接着剤層(4)を介して表皮材(5)が積層されている。
【0012】
変性PPE系樹脂発泡層(1)は、自動車天井材の基体となる層であり、この層が変性PPE系樹脂から形成されているため、耐熱性および成形性が良好で、耐熱性良好な2次発泡積層シートを容易に成形することができる。また、この層が発泡層であるため、軽量で、遮音性、断熱性に優れ、また密度が低いため使用樹脂量が少量で済みコスト競争力を有するものとなる。
【0013】
前記変性PPE系樹脂発泡層(1)を形成する変性PPE系樹脂としては、PPE系樹脂とポリスチレン系樹脂(以下、「PS系樹脂」と略記する。)との混合樹脂、PPE系樹脂にスチレン系単量体(以下、「St系単量体」と記す。)を重合させたグラフト、ブロックなどの共重合体(以下、「PPE−St共重合体」と記す。)などが挙げられ、下記のような混合形態がある。
(イ)「PPE系樹脂」+「PS系樹脂」
(ロ)「PPE−St共重合体」
(ハ)「PPE−St共重合体」+「PS系樹脂」
(ニ)「PPE系樹脂」+「PPE−St共重合体」
(ホ)「PPE系樹脂」+「PPE−St共重合体」+「PS系樹脂」
これらのうちでは、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂(イ)が、製造が容易であるなどの点から好ましい。
【0014】
発泡層(1)を形成する変性PPE系樹脂中のPhE成分の含有量としては、通常35重量%〜75重量%、好ましくは35重量%〜60重量%、St系成分の含有量が25重量%〜65重量%、好ましくは40重量%〜65重量%である。変性PPE系樹脂中のPhE成分の割合が小さすぎると耐熱性が劣る傾向があり、PhE成分の割合が大きすぎると加熱流動時の粘度が上昇し、発泡成形が困難になる場合がある。
【0015】
前記PPE系樹脂としては例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)が、原料の汎用性、コストの点から好ましい。また、難燃性を付与したい場合はハロゲン系元素が含まれるポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などが好ましい。
【0016】
PPE系樹脂と混合樹脂を形成するPS系樹脂は、スチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどを主成分とする樹脂である。したがって、PS系樹脂はスチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず、他の単量体との共重合体であってもよい。また、例えばハイインパクトポリスチレン(以下、「HIPS」と記す。)のように、スチレンまたはスチレン誘導体を重合させる際に、合成ゴムまたはゴムラテックスを添加して重合させたものであってもよい。
【0017】
前記PPE系樹脂と混合樹脂を形成するPS系樹脂の製造に使用され得るスチレンまたはその誘導体と共重合可能な他の単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、イタコン酸などがあげられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0018】
前記PS系樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレンの共重合体、HIPSで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。このうちでは、ポリスチレンがその汎用性、コストの面から好ましい。
【0019】
また、前記PPE系樹脂に重合、好ましくはグラフト重合させるSt系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらのうちではスチレンが、汎用性、コストの点から好ましい。
【0020】
前記PPE系樹脂にSt系単量体を重合させる際に、St系単量体が主成分(60重量%以上)になる範囲でSt系単量体と共重合可能な単量体、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、イタコン酸などの1種または2種以上を含有させてもよい。
【0021】
前記PPE系樹脂にSt系単量体を重合させたグラフト共重合体は、従来周知の方法、例えば特公昭52−30991号公報、侍公昭52−38596号公報などに開示されている、PPE系樹脂にラジカル開始剤およびSt系単量体を加え、無水の状態で、有機溶媒の存在下または不存在下130〜200℃の温度範囲で攪拌しながらSt系単量体を重合する方法により製造される。
【0022】
前記PPE系樹脂に混合されるPS系樹脂、およびPPE系樹脂に重合させるSt系単量体の割合としては、PPE系樹脂35重量%〜75重量%、更には35重量%〜60重量%、特には38重量%〜58重量%に対して、PS系樹脂またはSt系単量体が25重量%〜65重量%、更には40重量%〜65重量%、特には42重量%〜62%が好ましい。PPE系樹脂の混合割合が小さいと耐熱性が劣る傾向にあり、PPE系樹脂の混合割合が大きいと加熱流動時の粘度が上昇し発泡成形が困難になる場合がある。
【0023】
前記の如き変性PPE系樹脂を基材樹脂とする変性PPE系樹脂発泡層(1)の1次発泡層としては、厚みが1〜5mm、更には1.5〜3.5mm、発泡倍率が3〜20倍、更には5〜15倍、セル径が0.05〜0.9mm、更には0.1〜0.7mm、独立気泡率が70%以上、更には80%以上であるのが好ましい。また、1次発泡層中の残存揮発成分の量は発泡層全重量に対して1〜5重量%、更には2〜4重量%が好ましい。なお、残存揮発成分の量は、ガスクロマトグラフィ−により測定しても良いが、通常、発泡層サンプルを変性PPE系樹脂が軟化しはじめる温度以上で分解温度以下に加熱して揮発成分を充分揮発させて、加熱前後の重量差により測定する。
【0024】
前記1次発泡層の厚さが1mm未満であると、強度および断熱性に劣り自動車天井材用発泡積層シ−トとして適当でない場合がある。一方、5mmを越えると成形加熱時に熱が発泡層の厚み方向の中心部まで伝わり難く、そのため充分な加熱が行なえず、成形性が悪くなることがある。また、充分な加熱を行うべく加熱時間を長くすると、発泡層表面のセルの破泡などが生じ、製品として許容できるものが得られ難くなることがある。また、一次発泡倍率が3倍未満であると、柔軟性に劣り、曲げなどによる破損が生じ易く、また軽量化の効果が少ない。20倍を越えると強度が低下し、中心部まで加熱し難いことにより成形性が低下する傾向がある。更に、セル径が0.05mm未満の場合は充分な強度が得られ難く、0.9mmを越えると断熱性に劣る傾向がある。また、独立気泡率が70%未満の場合は断熱性、剛性に劣るとともに成形加熱によっても目的とする2次発泡倍率が得難くなり、成形性に劣る傾向がある。また、残存揮発成分が1重量%を下回る場合は2次発泡倍率が低くなりすぎ良好に成形できない場合があり、5重量%を越えると非発泡層との間に空気だまりが発生したり、経時による寸法安定性が悪くなる場合がある。
【0025】
本発明において使用される変性PPE系樹脂発泡層(1)の基材樹脂には、必要に応じて気泡調整剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤などを添加してもよい。
【0026】
本発明に係る自動車天井材は、前記のような1次発泡層(1)の両面に熱可塑性樹脂の非発泡層が形成される。この非発泡層は高温下において、車内側非発泡層(2)は、その表面に積層される表皮材の加熱収縮を抑制する働きと、他面にある発泡層(1)の加熱下でセル径が拡大することによる加熱膨張を抑制する働きを有し、また、車外側非発泡層(3)は、発泡層(1)の加熱膨張を抑制する働きを有する。バイメタル的に考えると、高温下において車内側の収縮が大きいほど、また、車外側の膨張が小さいほど高温下でのフロント部の垂れ量は大きくなる。以上の理由から発泡層(1)両面の非発泡層(2)および(3)は、耐熱性が要求される温度領域の80〜110℃から選ばれる任意の温度における引張弾性勾配が、車外側非発泡層(3)よりも車内側非発泡層(2)で大きければフロント部の垂れが抑制され、好ましくは100℃における車内側非発泡層(2)の引張弾性勾配が150MPa・mm以上、更に好ましくは200MPa・mm以上であればフロント部の垂れの抑制効果が大きくなる。また、高温下での引張弾性勾配と加熱収縮率の関係において、80〜110℃から選ばれる任意の温度における引張弾性勾配を該温度の加熱収縮率で除した値が車外側非発泡層(3)よりも車内側非発泡層(2)で大きければフロント部の垂れが抑制される。なお、前記非発泡層の引張弾性勾配は、JISK7127に準じて測定した引張弾性率に非発泡層の厚みを乗して得られる数値であり、また加熱収縮率は天井材のフロント部分について測定した数値である。
【0027】
次に、非発泡層に用いられる熱可塑性樹脂としては、PS系樹脂、耐熱PS系樹脂、変性PPE系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリアミド(ナイロン)系樹脂などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられるが、変性PPE系樹脂発泡層(1)との接着性の観点からPS系樹脂、変性PPE系樹脂が好ましい。
【0028】
非発泡層に用いられるPS系樹脂は、スチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどの誘導体を主成分(60重量%以上、好ましくは70重量%以上)とする樹脂である。したがって、PS系樹脂は、スチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず、他の単量体との共重合体であってもよい。また、例えばHIPSのように、スチレンまたはスチレン誘導体を重合させる際に、合成ゴムまたゴムラテックスを添加して重合させたものであってもよい。HIPSとしては公知のものが使用でき、ゴム成分の含有量は通常1〜15重量%である。
【0029】
前記PS系樹脂の製造に使用され得るスチレンまたはその誘導体と共重合可能な他の単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル化合物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその酸無水物が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。共重合可能なその他の単量体は通常0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%の範囲で用いられる。
【0030】
非発泡層に用いられるPS系樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、HIPSで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。このうちでは、ポリスチレン、HIPSがその汎用性、コストあるいは耐衝撃性の面から好ましい。耐熱のより高いPS系樹脂としては、スチレンとカルボキシル基含有モノマーとの共重合体が挙げられ、例えばスチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体がある。
【0031】
前記PS系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を組合わせてもよい。また、PS系樹脂は、他の熱可塑性樹脂とブレンドして用いてもよく、ブレンド中の他の熱可塑性樹脂の含有量は、30重量%以下が好ましい。ブレンドする熱可塑性樹脂としては、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなどの塩化ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドやそれらの共重合体などが挙げられる。非発泡層の樹脂成分中のPS系樹脂含有量は通常70〜100重量%、好ましくは80〜100重量%である。
【0032】
非発泡層に使用される変性PPE系樹脂としては、前記1次発泡層の場合と同様に、PPE系樹脂をスチレン系化合物を主体とする単量体またはその重合体で重合または混合による変性を行ったものであり、例えば、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂、PPE系樹脂にSt系単量体を重合させたPPE−St共重合体、該共重合体とPS系樹脂またはPPE系樹脂との混合物、該共重合体とPPE系樹脂とPS系樹脂との混合物などが挙げられる。これらのうちでは、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂が、製造が容易であるなどの点から好ましい。
【0033】
前記PPE系樹脂の具体例、好ましいもの、PS系樹脂の具体例、好ましいもの、St系単量体の具体例、好ましいもの、更には、PS系樹脂やSt系単量体と重合可能な単量体の具体例、使用する理由などは、1次発泡層(1)の場合と同様である。ただし、PS系樹脂の好ましい具体例として、HIPSで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体が、非発泡層の耐衝撃性改善効果が大きいという点から追加される。
【0034】
前記変性PPE樹脂におけるPPE系樹脂とPS系樹脂との割合およびPPE−St共重合体におけるPPE系樹脂とSt系単量体成分(St系単量体と共重合可能な他の単量体を0〜40重量%含み得る)との割合としては、PPE系樹脂が0〜75重量%、更には0〜40重量%以下、特には0〜25重量%に対して、PS系樹脂またはPPE系樹脂に重合されたSt系単量体成分が100〜25重量%、更には100〜60重量%、特には100〜75重量%が好ましい。PPE−St共重合体をPPE系樹脂とPS系樹脂の少なくとも1種と混合して変性PPE系樹脂を得る場合も、PPE系樹脂成分の合計量(PhE成分)、および共重合可能な他の単量体0〜40重量%を含むSt系単量体成分の合計量(St成分)は前記と同範囲であり、例えばPPE系樹脂とPPE−St共重合体との混合物、PPE−St共重合体とPS系樹脂の混合物、PPE系樹脂とPPE−St共重合体とPS系樹脂との混合物において、PhE成分は0〜75重量%、更には0〜40重量%以下、特には0〜25重量%に対してPS系樹脂またはPPE系樹脂に重合されたSt系成分が100〜25重量%、更には100〜60重量%、特には100〜75重量%が好ましい。PPE系樹脂の使用割合が小さすぎると耐熱性が劣る傾向にあり、PPE系樹脂の使用割合が大きすぎると加熱流動時の粘度が上昇し、発泡成形が困難になる場合がある。
【0035】
非発泡層の変性PPE系樹脂におけるPhE成分の含有量としては、通常1重量%〜70重量%、好ましくは5重量%〜58重量%、St系成分の含有量が25重量%〜65重量%、好ましくは40重量%〜65重量%である。
【0036】
本発明における発泡積層シートにおいて、発泡層に積層される非発泡層の厚みは50〜300μm、更には75〜200μmが好ましい。該非発泡層の厚さが50μmより薄い場合には、強度、剛性、耐熱性などが劣り、300μmより厚い場合には積層シートの成形性が劣る傾向にある。
【0037】
前記非発泡層を形成する場合、必要に応じて、耐衝撃性改良剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤などを単独、または2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0038】
前記耐衝撃性改良剤は、熱可塑性樹脂非発泡層を変性PPE系樹脂発泡層(1)に積層し、2次発泡させた積層シートを自動車天井材として成形する際のパンチング加工や、積層シートや成形体を輸送する際に、非発泡層の割れなどを防止するのに有効である。
【0039】
耐衝撃性改良剤としては、熱可塑性樹脂に混合することによってその効果を発揮するものであれば特に限定なく使用し得る。耐衝撃性改良剤は、重合による変性で熱可塑性樹脂に導入した耐衝撃性改良効果を発揮し得る成分であってもよく、例えばHIPSなどのように耐衝撃性改良成分を含むものを非発泡層に使用する場合も、非発泡層に耐衝撃性を付与することができる。耐衝撃性改良剤の例としては、天然ゴム、合成ゴムのようなゴムや、ゴム粒子のまわりにスチレン、メチルメタクリレートなどのオレフィン二重結合をもつ単量体をグラフト重合させたものなどが好適に使用される。前記ゴムの具体例としては、例えばスチレン−ブタジエンゴム、水添スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、ポリエーテル系特殊ゴム、フッ素ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、プロピレンオキサイドゴム、エチレン−アクリルゴム、液状ゴム、ノルボルネンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、MBS樹脂、エチレン酢ビコポリマーなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、PS系樹脂や変性PPE樹脂との相溶性の高さ、汎用性などからスチレン−ブタジエンゴム、水添スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
【0040】
耐衝撃性改良剤の使用量は、熱可塑性樹脂に対して2〜25重量%、特に5〜20重量%が好ましい。耐衝撃性改良剤の使用量が2重量%未満では、非発泡層の柔軟性や耐衝撃性の改善効果が充分に発現されなくなったり、曲げや衝撃などによる破損が充分に防止されない場合がある。また、耐衝撃性改良剤の使用量が25重量%を越えると、耐熱性や剛性に劣るようになることがある。
【0041】
非発泡層の熱可塑性樹脂としてHIPSなどの耐衝撃性改良効果をもつゴム分を含有する熱可塑性樹脂を使用する場合は、熱可塑性樹脂のゴム分と耐衝撃性改良剤(ゴム分)の使用量の合計が熱可塑性樹脂に対して2〜25重量%、特に5〜20重量%が好ましい。この量が2重量%未満の場合には、非発泡層の柔軟性や耐衝撃性の改善効果が充分に発現されなくなったり、曲げや衝撃などによる破損が充分に防止されない場合がある。また、耐衝撃性改良剤の使用量が25重量%を越えると、耐熱性や剛性に劣るようになる場合がある。
【0042】
また非発泡層の熱可塑性樹脂は、成形工程におけるパンチング加工や輸送を行う際に発生する非発泡層の割れなどを防止するうえで、アイゾット衝撃強さが80J/m以上、好ましくは120J/m以上、更に好ましくは170J/m以上であるものが好ましい。アイゾット衝撃強さはノッチ付きでASTMD256に準じて測定した値である。
【0043】
前記充填剤は強度、剛性、寸法安定性などの向上のために使用される成分であり、使用される充填剤には特に制限はない。充填剤の具体例としては、タルク、(ケイ酸マグネシウム)、炭酸カルシウム、マイカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、シリカ、クレー、カオリン、ホワイトカーボン、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデンなどが挙げられる。これらのうちでは特にタルク、炭酸カルシウム、マイカが好ましい。
【0044】
充填剤の添加量は非発泡層樹脂100部(重量部、以下同様)に対して1〜50部、好ましくは5〜40部である。この添加量が1部未満の場合、充填剤(無機物)を添加した明確な効果が得られず、50部を越えて添加すると、樹脂組成物の粘度が増加し、押出機に大きな負荷がかかるため好ましくなく、また、非発泡層の衝撃強度の低下が著しくなる。
【0045】
前記1次発泡積層シートの車内側非発泡層(2)の表面にはホットメルト接着剤層が形成される。ホットメルト接着剤は自動車天井材が表皮を有する場合、表皮を成形体に接着するのに用いられる。このホットメルト接着剤層を形成することにより、加熱時のホットメルト接着剤層の収縮によるホットメルト接着剤層の穴あき、非発泡層とホットメルト接着剤層の間の空気だまりなどによる表皮材の接着不良を防止することができる。また、予め1次発泡積層シートにホットメルト接着剤層を形成しておくことにより、成形時におけるホットメルトの仮止め工程が省略され、コストダウンになる。
【0046】
前記の如く、1次発泡シートを加熱2次発泡させる際には、1次発泡シート(発泡倍率:3〜20倍、好ましくは5〜15倍、厚さ:1〜5mm、好ましくは、1.5〜3.5mm)に対して、通常1.2〜4倍に2次発泡させるが、更には1.5〜3倍に2次発泡させるのが好ましい(この結果、2次発泡倍後のシート倍率は、3.6〜80倍、好ましくは7.5〜45倍、特に好ましくは10〜40倍、厚さは、1.2〜20.0mm、好ましくは2.25〜10.5mm、特に好ましくは3.0〜7.0mmとなる)。
【0047】
前記表皮材の具体例としては、従来の自動車内装材として用いられるものが使用できる。例えば織布や不織布を配するが、これらには、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル、モダアクリル(例えば、鐘淵化学工業株式会社製「カネカロン(登録商標)」)などの合成樹脂や羊毛、木綿などの天然素材のものや、それらを適宜組み合わせたものが使われる。このような表皮材に、必要に応じて、更にウレタンフォームやポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフォームからなる発泡層を単層または複層で積層したものが使用できる。
【0048】
次に、本発明の自動車天井材の製造法について説明する。
【0049】
本発明において使用される変性PPE系樹脂発泡層(1)(1次発泡層)は、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂、またはPPE系樹脂にSt系単量体をグラフト共重合させた共重合体などに、要すれば各種の添加剤を加えたものを押出機により150℃〜400℃で溶融・混練し、ついで150〜400℃、3〜50MPaの高温高圧下で樹脂100部に対して発泡剤1〜15部を圧入し発泡最適温度(150〜300℃)に調節して、サーキュラーダイなどを使い低圧帯(通常は大気中)に押出したのち、マンドレルなどに接触させて、例えば0.5〜40m/分の速度で引き取りながらシート状に成形し、カット後、巻き取るなどの方法により製造することができる。
【0050】
前記変性PPE系樹脂発泡層(1)を製造する際に使用される発泡剤としては、ブタン、プロパン、ペンタン、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロフロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロジフロロエタンなどの炭化水素系発泡剤、ハロゲン化炭化水素系発泡剤などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。なかでも炭化水素系発泡剤が汎用性、コストの面から好ましい。
【0051】
前記1次発泡層に熱可塑性樹脂非発泡層を積層する方法としては、予めフィルム状に成形した樹脂を、発泡成形され供給される1次発泡層の上面および下面に熱ロールなどにより接着する方法、多層押出金型を用いて行う共押出積層方法などが挙げられるが、予め発泡成形して、供給される1次発泡層の上面および下面に押出機から供給した非発泡層用樹脂組成物を層状に積層し、可塑状態にある非発泡層を冷却ローラーなどによって固着する方法が好ましい。なかでも、1次発泡層の押出発泡シート成形と非発泡層の押出をインラインで行って積層する方法が製造工程が簡略化でき、コスト的に好ましい。
【0052】
得られた1次発泡積層シートから自動車天井材を成形する方法としては、例えば上下にヒーターを持つ加熱炉の中央に1次発泡積層シートをクランプして導き、成形に適した温度、例えば120〜200℃に加熱して2次発泡させたのち、温度調節した金型にて真空成形、圧空成形などの手段により成形する。加熱時間は通常10〜90秒である。
【0053】
真空成形、圧空成形の例としては、プラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形などの方法が挙げられる。このうち、プラグ成形、マッチド・モールド成形など、自動車内側(凸)金型、自動車外側(凹)金型の両方の金型からなり、それぞれの温調が可能な金型を使用するのが望ましい。
【0054】
前記成形においては、加熱によって発泡積層シートの表面にケロイド状態が発生する前の状態で成形するのが好ましい。本発明者の研究の結果、成形加熱時に表面にケロイド状態が発生した状態で成形を行うと、独立気泡率が低くなり、成形体の剛性が低下することが分かっている。ケロイド状態は発泡層の破泡により生ずるものであり、そのため独立気泡率の低下が生じるためである。
【0055】
また、1次発泡積層シートを、所定のクリアランスを有する金型で成形するに際しては、2次発泡積層シートの厚さTが2次発泡時の発泡積層シートのフリーの厚さtに対して0.5t≦Tを満足するように2次発泡させ、成形するのが望ましい。成形体の発泡層の厚さTが0.5tよりも小さい場合は、成形体の発泡層に大きな残留ひずみが残り耐熱性が劣る。なお、2次発泡時の発泡積層シートのフリーの厚さtとは、金型を用いて成形する場合と同じ条件で加熱して、金型による成形を行わないで、冷却したときの発泡積層シートの厚さをいう。
【0056】
前記自動車天井材が表皮を有する場合の製造方法としては、予め表皮材に接着剤層をつけてあるものを1次発泡積層シートに熱ロールなどを用いて接着する方法、接着剤層を1次発泡積層シートにバインダーラミネーション法で積層したり、予めフィルム状に成形された接着剤層を熱ラミネーシヨン法などにより積層した発泡積層シートに表皮材を熱ロールなどを用いて接着する方法、1次発泡積層シートに表皮材を仮止めし、加熱成型時に成形と接着を同時に行う方法、接着剤層を1次発泡積層シートに積層する際に表皮材を同時に接着する方法などが挙げられる。
【0057】
前記接着剤としては、熱可塑性接着剤、ホットメルト接着剤、ゴム系接着剤、熱硬化性接着剤、モノマー反応型接着剤、無機系接着剤、天然物接着剤などが挙げられるが、接着が容易な点でホットメルト接着剤が好適である。ホットメルト接着剤としては、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系、スチレン−ブタンジエン共重合体系、スチレン−イソプレン共重合体系などの樹脂を成分とするものが挙げられる。
【0058】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0059】
実施例、比較例に用いた樹脂を表1に、また表皮材およびその接着剤を表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
また、実施例および比較例で行った評価方法を以下に示す。
〔発泡層および成形体の厚さ〕
1次発泡シート、成形体の幅方向に20カ所の厚さを測定し、その測定値の平均値を算出した。
〔発泡倍率〕
1次発泡シートの密度dfをJISK7222に準じて測定し、変性PPE系樹脂の密度dpをJISK7112に準じて測定し、次式より求めた。
発泡倍率=dp/df
〔独立気泡率〕
ASTMD−2859に準じて評価して求めた(マルチピクノメーター(ベックマン社製)を使用)。
〔セル径〕
発泡層の断面を光学顕微鏡で観察し、20個のセル径を測定し、その測定値の平均値を算出した。
〔目付〕
1次発泡シートの押し出し方向に5カ所より、10cm×10cmの大きさの試験片を切り出し、それらの重量を測定したのち、平均値を算出した。
【0063】
〔実装耐熱性試験〕
図2に示すような自動車天井材(幅930mm×長さ1424mm)を自動車天井部(カットボディ)に装着し、サンバイザー、ルームミラー、ルームランプ、ガニッシュ、ビラーを介して実車と同等となるように固定した。なお、図中、6はアシストグリップ取付穴、7はサンバイザー取付穴、8はサンバイザー留め取付孔、9はルームミラー取付穴、10は室内灯取付穴である。また、フロント部分に測定点を6点、成形体の中心線と対称に120mm間隔で刻印した(図2中a〜f)。フロント部の測定点付近に標線を設け垂直方向の距離を測定した。次に85±1℃または、100±1℃に設定した恒温室に、天井材を取り付けた自動車天井部を24時間投入した後、成形体フロント部に刻印された測定点の垂直方向の寸法変化量の絶対値を測定し、a〜fの最大値を記録した。なお、表3に記入した最大変位量は、垂直反り上がり方向をプラス(+)、垂直垂れ下がり方向をマイナス(−)として測定した値である。
【0064】
〔引張弾性勾配〕
天井材のフロント部分から非発泡層を引き剥がし、非発泡層の厚みd(mm)、85℃および100℃雰囲気下での引張弾性率Em(Pa)をJISK7127に準じて測定し、次式より求めた。
引張弾性勾配=Em×d
〔加熱収縮率〕
天井材のフロント部分から非発泡層を引き剥がし、天井材の中心線上に200mmの間隔で定点を刻印した。室温の定点間の距離L0 を測定した後、85±1℃および100±1℃に設定した恒温室中に24時間投入した後、室温に戻し再び定点間の距離Lを測定した。測定値L0 、Lを用いて次式より加熱収縮率を求めた。
加熱収縮率=(L0 一L)/L0
【0065】
(実施例1)
PPE樹脂成分40重量%、PS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)72.7部とPS樹脂(B)27.3部とを混合した混合樹脂100部に対してiso−ブタンを主成分とする発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15)3部およびタルク0.32部を押出機により混練し、樹脂温度198℃まで冷却し、サーキュラーダイスにより押出し、8m/分の速さの引き取りロールを介して巻取りロールにロール状に巻き取り、1次厚み2.6mm、一次発泡倍率11倍、独立気泡率85%、セル径0.19mm、目付け240g/m2 の発泡シートを得た。次いで、この発泡シートをロールより5m/分の速さで繰り出しながら、HIPS(C)83.3部と耐衝撃性改良剤(D)16.7部(全ゴム成分15重量%)とを混合した混合樹脂を樹脂温度が245℃となるように押出機で溶融・混練し、Tダイを用いてフィルム状に押し出し、発泡シートの片面に厚さ120μmのPS系樹脂非発泡層を形成した。更に、このPS系樹脂非発泡層を形成したシートをロールから5m/分の速さで繰り出しながら、PPE系樹脂成分30重量%、PS系樹脂成分重量63.1%、ゴム成分6.9重量%になるようにPPE樹脂(A)54.5部、PS樹脂(B)34.0部、耐衝撃性改良剤(C)11.5部を混合した混合樹脂を樹脂温度が275℃となるように押出機で溶融・混練し、Tダイを用いてフィルム状に押し出し、発泡積層シートの他方の片面に厚さ120μmの変性PPE系樹脂非発泡層を形成し、非発泡層を両面に形成した発泡積層シートを得た。この発泡積層シートを繰り出し、同時に変性PPE系樹脂非発泡層側にホットメルトフィルム(E)を繰り出し、10m/分の速さの120℃に調温された熱ロールを介して巻き取り、変性PPE系樹脂非発泡層の面にホットメルト接着剤層を形成した1次発泡積層シートを得た。この1次発泡積層シートのホットメルトフィルム(E)面に表皮材(F)を仮止めした表皮材を有する1次発泡積層シートの四方をクランプしてオーブンに入れ、発泡積層シート表面温度が135℃となるように60秒加熱した後、変性PPE系樹脂非発泡層が車内側になるように配置した金型にて、金型クリアランス4.0mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、良好な自動車天井材を得た。得られた自動車天井材をカットボディに装着し、85℃24時間、100℃24時間の実装耐熱性試験を行った。また、得られた自動車天井材から車内側非発泡層(2)、および車外側非発泡層(3)を引き剥がし、85℃および100℃における引張弾性勾配と加熱収縮率を測定した。
【0066】
(実施例2)
変性PPE系樹脂非発泡層の樹脂を、PPE系樹脂成分30重量%、PS系樹脂成分70重量%になるようにPPE樹脂(A)54.5部、PS樹脂(B)45.5部にする以外は実施例1と同様の方法にて、自動車天井材を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行い、また、同様に車内側非発泡層(2)および車外側非発泡層(3)の85℃および100℃における引張弾性勾配と加熱収縮率を測定した。
【0067】
(実施例3)
変性PPE系樹脂非発泡層の樹脂を、PPE系樹脂成分40重量%、PS系樹脂成分60重量%になるようにPPE樹脂(A)72.7部、PS樹脂(B)27.3部にする以外は実施例1と同様の方法にて、自動車天井材を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行い、また、同様に車内側非発泡層(2)および車外側非発泡層(3)の85℃および100℃における引張弾性勾配と加熱収縮率を測定した。
【0068】
(実施例4)
車内側非発泡層の樹脂を、PPE系樹脂成分40重量%、PS系樹脂成分60重量%になるようにPPE樹脂(A)72.7部、PS樹脂(B)27.3部とし、車外側非発泡層の樹脂をPPE系樹脂成分15重量%、PS系樹脂成分78.1重量%、ゴム成分6.9重量%になるようにPPE樹脂(A)27.3部、PS樹脂(B)61.2部、耐衝撃性改良剤(C)11.5部とした以外は実施例1と同様の方法にて、自動車天井材を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行い、また、同様に車内側非発泡層(2)および車外側非発泡層(3)の85℃および100℃における引張弾性勾配と加熱収縮率を測定した。
【0069】
(比較例1)
実施例1と同様にして発泡シートを得た。得られた発泡シートをロールより5m/分の速さで繰り出しながら、HIPS(C)83.3部と耐衝撃性改良剤(D)16.7部(全ゴム成分15重量%)とを混合した混合樹脂を樹脂温度が245℃となるように押出機で溶融・混練し、Tダイを用いてフィルム状に押出し、発泡シートの片面に厚さ120μmのPS系樹脂非発泡層を形成した。次いで同様にして他の面に厚み120μmのPS系樹脂非発泡層を形成し、両面にPS系樹脂非発泡層を有する発泡積層シートを得た。次に実施例1と同様の方法にてホットメルトフィルム(E)を積層し、プラグ成形を行い、良好な自動車天井材を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行い、また、同様に車内側非発泡層(2)および車外側非発泡層(3)の85℃および100℃における引張弾性勾配と加熱収縮率を測定した。
【0070】
(比較例2)
車内側非発泡層(2)をPS系樹脂非発泡層、車外側非発泡層(3)を変性PPE系樹脂非発泡層、ホットメルトフィルム(E)積層面をPS系樹脂非発泡層とした以外は実施例1と同様にして良好な自動車天井材を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行い、また、同様に車内側非発泡層(2)および車外側非発泡層(3)の85℃および100℃における引張弾性勾配と加熱収縮率を測定した。
【0071】
以上の実施例1〜4、および比較例1〜2の天井材の85℃24時間、100℃24時間実装耐熱試験の結果、および天井材から引き剥がした車内側非発泡層(2)および車外側非発泡層(3)の85℃および100℃の引張弾性勾配、加熱収縮率の測定結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
表3の結果から、比較例に比べて実施例の場合、耐熱性試験によるフロント部の変形が小さく、耐熱性が優れていることがわかる。また、実施例1と比較例5の比較から明らかなように、変性PPE系樹脂からなる非発泡層を車内側に配置することによって、耐熱性の向上が認められる。
【0074】
【発明の効果】
本発明の自動車天井材および発泡積層シートは、耐熱性が改善されており、また成形性、寸法安定性、遮音性、耐衝撃性、断熱性などの特性が良好で、更に軽量であり、しかも安価に、且つ容易に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 自動車天井材の構成を説明するための部分断面図である。
【図2】 自動車天井材の平面説明図である。
【符号の説明】
1 変性PPE系樹脂発泡層、
2 車内側非発泡層、
3 車外側非発泡層、
4 ホットメルト接着剤層、
5 表皮材、
6 アシストグリップ取付穴、
7 サンバイザー取付穴、
8 サンバイザー留め取付穴、
9 ルームミラー取付穴、
10 室内灯取付穴。
Claims (8)
- 変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる発泡層(1)の両面に熱可塑性樹脂からなる非発泡層を形成した発泡積層シートからなり、100℃における引張弾性勾配が車外側非発泡層(3)よりも車内側非発泡層(2)で大きいことを特徴とする自動車天井材。
- 100℃における車内側非発泡層(2)の引張弾性勾配が150MPa・mm以上である請求項1記載の自動車天井材。
- 100℃における車内側非発泡層(2)の引張弾性勾配が200MPa・mm以上である請求項2記載の自動車天井材。
- 100℃における引張弾性勾配を該温度の加熱収縮率で除した値が、車外側非発泡層(3)よりも車内側非発泡層(2)で大きい請求項1〜3のいずれかに記載の自動車天井材。
- 発泡層の基材樹脂である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂中のフェニレンエーテル成分の含有量が35重量%〜75重量%で、スチレン系成分の含有量が25重量%〜65重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の自動車天井材。
- 熱可塑性樹脂からなる車内側非発泡層(2)の基材樹脂が変性ポリフェニレンエーテル系樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の自動車天井材。
- 変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる発泡層(1)の両面に熱可塑性樹脂からなる非発泡層を形成した発泡積層シートを成形してなる自動車天井材の製造方法において、100℃における引張弾性勾配が車外側非発泡層(3)よりも車内側非発泡層(2)で大きくなるようにすることを特徴とする自動車天井材の製造方法。
- 変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡層(1)の両面に熱可塑性樹脂からなる非発泡層を形成してなり、100℃における引張弾性勾配が大きい側の非発泡層の上面にホットメルト接着剤層を形成してなることを特徴とする発泡積層シート。
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