JP2004001347A - 自動車内装材用発泡積層シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性、軽量性を保持させ、且つ非発泡層の積層状態が改善され、成形加工時における加熱破泡等、問題が生じない成形加工性に優れた自動車内装材用発泡積層シートの製造方法、及びそれによって得られる自動車内装材用発泡積層シートを提供する。
【解決手段】耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートの両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層が積層された発泡積層シートにおいて、該発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になるまで冷却した後、該非発泡層を積層する自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートの両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層が積層された発泡積層シートにおいて、該発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になるまで冷却した後、該非発泡層を積層する自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出発泡シートの両面に非発泡層を形成することで得られる自動車内装材用発泡積層シ−トの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、耐熱性、軽量性、成形加工性に優れた、自動車内装材用発泡積層シ−トの製造方法及びそれから得られる自動車内装材用発泡積層シ−トに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車内装材として、熱可塑性樹脂発泡体を主体とする基材にウレタンフォームを積層したものや、スチレン−無水マレイン酸共重合体の発泡層の上下面にスチレン−無水マレイン酸共重合体の非発泡層を積層した積層シートを所望の形状に成形したものが広く用いられている。それらの自動車内装材は、軽量で断熱性が高く、成形加工性がすぐれているという特徴がある。
【0003】
しかしながら、上記のような従来の自動車内装材は、高温に長時間さらされると、耐熱性が不十分であるため、フロント部が自重で垂れ下がったり(ヒートサグ)、変形を生じるなどの問題を発生することがあった。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、無機質のガラス繊維とプラスチックの複合材料をベースとした自動車内装材が使用されるようになってきた。しかし、この複合材料では、耐熱性という品質は維持できるものの、軽量化が図れない上に、ガラス繊維を使用しているため、リサイクル性が悪く、またコスト高になるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、軽量で耐熱性のある変成ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下「変成PPE系樹脂」と記す)発泡コア層の両面に、変成PPE系樹脂非発泡層を積層した発泡積層シートを用いた自動車内装材用発泡積層シートが提案されている(実開平4−11162号公報)。変成PPE系樹脂を用いた自動車内装材用発泡積層シートは、耐熱性に優れ、軽量であるため、高温下での変形や自重による垂れ下がり等を改善するとされているもので、近年、自動車内装材として、その耐熱性および軽量性により市場に出回っている。
【0006】
こうした、自動車内装材用発泡積層シートの成形加工の工程について以下に簡単に説明する。一定寸法に裁断された自動車内装材用発泡積層シートを加熱炉にて定時間経過後圧縮成形される。しかし、加熱炉のヒーター制御はあいまいなものが多く、例えば、季節による周囲の温度変化等が生じた場合であっても、温度補正回路を持つ装置は少なく、しばしば過加熱ぎみになり、発泡層−非発泡層の界面もしくは発泡層内部の発泡セルが破れ、破泡(空洞)が生じる。この破泡が広範囲に至る場合には発泡積層シートの収縮性が失われ、自重による垂れ下がりが生じ、加熱炉内のヒーターに接触する等のトラブルが発生する等の課題があった。
【0007】
また、一部にのみ破泡が生じた場合には、成形はされるものの、不規則に破泡の生じたシートを型押ししても得られた成形体の厚みが乏しくなり易いため、形状が悪く、高温(例えば80℃以上)の雰囲気中に長時間さらされると、屈曲形状を有する部分や成形時の延伸率が大きい部分(例えばフロント部)が変形し易い等の傾向を有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような課題に対して、自動車内装材用発泡積層シートに於ける、発泡層と非発泡層との接着性が良好で、且つ成形後の形状が良く、耐熱剛性がある製品を得るために種々の試みが実施されてきたが、いまだ満足し得る方法が提案されていないのが実状である。
【0009】
本発明は上記如き実状に鑑み、耐熱性、軽量性を保持させ、且つ成形加工性に優れた自動車内装材用発泡積層シート及びその製造方法に関するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、自動車内装材用発泡積層シートについて、発泡層と非発泡層との接着強度に優れ、かつ、成形加工時の加熱破泡を抑えるべく、鋭意研究した結果、押出し発泡シートの形成後に発泡シートを基材樹脂の熱変形温度(HDT)以下にする、又、更には熱変形温度(HDT)になった以後、一定の放置(以下養生と称すことがある)期間が必要であることを突き止めた。すなわち、発泡シートは押し出し直後から発泡剤が大気中へ抜け始め、熱変形温度(HDT)以下まで冷却されること更に、養生期間を与えることにより、発泡シート中での不均一な発泡剤の分散状態が改善されることにより、安定した非発泡層の積層が可能となることを見出した。
【0011】
こうした、非発泡層の積層状態の改善により、接着強度が向上し、成形加工時における加熱破泡等、問題が生じない自動車内装材用発泡積層シートが得られることを見出したことにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は
(1)耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートの両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層が形成された発泡積層シートにおいて、該発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、該非発泡層を積層することを特徴とする自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項1)、
(2)前記発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、更に10時間以上養生した後、非発泡層を積層することを特徴とする(1)記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項2)、
(3)前記発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、更に10時間以上促進養生した後、非発泡層を積層することを特徴とする(1)または(2)記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項3)、
(4)前記発泡シートを大気中で自然放冷し、1週間以上養生した後、非発泡層を積層することを特徴とする(1)または(2)記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項4)、
(5)発泡コア層を構成する基材樹脂が、変成ポリフェニレンエーテル系樹脂である(1)〜(4)記載のいずれか1記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項5)、
(6)熱可塑性樹脂で構成される非発泡層の基材樹脂が、変成ポリフェニレンエーテル系樹脂からなることを特徴とする(1)〜(5)記載のいずれか1記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項6)
(7)非発泡層の車内側の基材樹脂が、変成ポリフェニレンエーテル系樹脂からなり、車外側の基材樹脂が耐熱性の改善されたポリスチレン系樹脂からなることを特徴とする(1)〜(6)記載のいずれか1記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項7)
(8)(1)〜(7)記載のいずれか1記載方法で得られる自動車内装材用発泡積層シート。(請求項8)
に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る自動車内装材用発泡積層シ−トとその製造方法の例を図面に基づいて詳しく説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る自動車内装材用発泡積層シ−ト10の一実施態様の構成を示す模式図であり、発泡コア層として用いる耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シート11を、該発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった(例えば10時間以上促進養生した、もしくは、大気中で自然放冷した)後、該発泡層の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層(車内側非発泡層12および車外側非発泡層13)が積層されており、車外側非発泡層13の上面には異音防止材14が積層されている。車内側非発泡層12の上面にはホットメルト接着剤樹脂層15を介して表皮材16が積層されている。
【0014】
図2は、本発明に係る自動車内装材用発泡積層シ−ト10の他の一実施態様の構成を示す模式図であり、発泡コア層として用いる耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シート11を、該発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、該発泡層の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層(車内側非発泡層12および車外側非発泡層13)が積層されており、車外側非発泡層13の上面には接着剤層17を介して異音防止材14が積層されている。車内側非発泡層12の上面にはホットメルト接着剤樹脂層15を介して表皮材16が積層されている。
【0015】
発泡コア層として用いる発泡シート11は、自動車内装材の基体となる層であり、耐熱性および成形性が良好な樹脂からなるので、耐熱性の高い自動車内装材が容易に成形できる。また、この発泡シート11が発泡層であるため、軽量で断熱性に優れ、また密度が低いため使用樹脂量が少量で済み、コスト競争力を有するものとなる。
【0016】
本発明の発泡シート11の基材樹脂として使用される耐熱性樹脂は、耐熱性を有するとして当業者に知られるいずれの樹脂をも用いることができる。例示すれば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体等の耐熱性ポリスチレン系樹脂(耐熱性PS系樹脂);ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂(PS系樹脂)あるいは耐熱性PS系樹脂とポリフェニレンエーテル(PPE)とのブレンド体、PPEへスチレンをグラフトしたグラフト重合物などのスチレン・フェニレンエーテル共重合体等の変成ポリフェニレンエーテル系樹脂(変成PPE系樹脂);ポリカーボネート樹脂;およびポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートで例示されるポリエステル樹脂などである。
【0017】
これらの樹脂は、室内、室外の温度環境に耐えることができ、また、温度による変形が少ないことより、本発明にかかる自動車内装材に好適である。さらに、これらの樹脂は、2種以上を用いることもできる。また、発泡シートは2種類以上の発泡層を積層してシート状にしたものであってもよい。
【0018】
上記の耐熱性樹脂の中でも、変成PPE系樹脂を発泡シートの基材樹脂として使用すると、耐熱性および剛性等の品質に優れているうえに、加工性および製造が容易である点で好ましい。
【0019】
変成PPE系樹脂に使われるPPEとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレンー1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0020】
変成PPE系樹脂中、PPE系樹脂と混合樹脂を形成するPS系樹脂はスチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン等を主成分とする樹脂である。したがって、PS系樹脂はスチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず他の単量体と共重合することによって作られた共重合体であってもよい。
【0021】
また、PPE系樹脂に重合、好ましくはグラフト重合させるスチレン系単量体の具体例としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどがあげられる。これらは単独でも、2種以上組み合わせでも用い得る。これらのうちではスチレンが、汎用性、コストの点から好ましい。
【0022】
耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シート11の製造方法としては、2種以上の混合樹脂、及び各種の添加剤を加えた樹脂を押出機により溶融・混練、高温高圧下で発泡剤を圧入、発泡最適温度に調節して低圧帯(通常大気中)に押出した後、マンドレル等によって目的に応じて延伸する事により、シート状に成形する方法が好適であるが、これに限定されず、当業者に知られているいずれの方法をも採用し得る。
【0023】
本発明の発泡シート11の製造において使用される発泡剤としてはブタン、プロパン、ペンタン、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロフロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロジフロロエタン等の炭化水素、ハロゲン化炭化水素等が挙げられ、またそれらを組み合わせて使用しても良い。本発明において使用される発泡シート11の基材樹脂には、必要に応じて気泡調整剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料等を添加し得る。
【0024】
本発明の発泡シート11に使用される基材樹脂として、変成PPE系樹脂を使用する場合は、フェニレンエーテル成分として35〜75重量部、スチレン成分として65〜25重量部が好ましく、更に好ましくは、フェニレンエーテル成分として35〜60重量部、スチレン成分として65〜40重量部、特に好ましくは、フェニレンエーテル成分として38〜58重量部、スチレン成分として62〜42重量部がよい。PPE系樹脂の混合割合が少ないと、耐熱性が劣る傾向にあり、PPE系樹脂の混合割合が多いと、加熱流動時の粘度が上昇し発泡成形が困難になる傾向がある。
【0025】
発泡シート11の厚みが1〜5mm、更には1.5〜3.5mm、発泡倍率が3〜20倍、更には5〜15倍、セル径が0. 05〜0. 9mm、更には0.1〜0.7mm、独立気泡率が70%以上、更には80%以上であるのが好ましい。発泡シート11の厚さが1mm未満であると、強度および断熱性に劣り自動車内装材用発泡積層シートとして適当でない場合がある。一方、5mmを超える場合、成形加工時に於ける加熱が発泡シート11の厚み方向の中心部まで伝わり難く、そのため充分な加熱が行えないため、成形形状が悪くなる場合がある。
【0026】
また、充分な加熱を行うべく加熱時間を長くすると、発泡シート11の界面もしくは内部の発泡セルに破泡等が生じ、製品として許容できるものが得られ難くなる場合がある。また、発泡倍率が3倍未満の場合、柔軟性に劣り、曲げなどによる破損が生じ易く、また軽量化の効果が少ない。発泡倍率が20倍を越える場合、強度が低下し、中心部まで加熱しにくいことにより成形性が低下する傾向がある。更に、セル径が0.05mm以下の場合、充分な強度が得られ難く、0.9mm以上の場合、断熱性に劣る傾向がある。また、独立気泡率が70%以下の場合、断熱性、剛性に劣るとともに、成形加工時の加熱によって目的とする2次発泡倍率を得ることが困難となり、成形性に劣る傾向がある。
【0027】
また、発泡シート11を形成する残存揮発成分の量は、発泡層全重量に対して、1〜5重量%、更には2〜4重量%が好ましい。残存揮発成分が、1重量%を下回る場合は、2次発泡倍率が低くなりすぎ、良好に成形できない場合がある。また、残存揮発成分が5重量%を越える場合は非発泡層との間に空気だまりが発生したり、経時による寸法安定性が悪くなる場合がある。なお、残存揮発成分の量は、ガスクロマトグラフィーにより測定しても良いが、通常、発泡層サンプルを変成PPE系樹脂が軟化しはじめる温度以上で分解温度以下の温度範囲で加熱して揮発成分を充分に揮発させ、加熱前後の重量差により測定する。
【0028】
本発明における発泡積層シ−トを製造する方法は、発泡シ−トを押出し、大気中又は他の気体の雰囲気中等で熱変形温度以下となるまで冷却又は放置した後、発泡シ−トの両面に非発泡層を積層する方法である。この内、常圧下、減圧下、加圧下で冷却又は放置が可能であるが、常圧の大気中での冷却又は放置が最も容易で安価であるので好ましい。発泡シ−ト成形した後、非発泡層を積層するまでの時間は、該発泡シ−トが基材樹脂の熱変形温度(HDT)以下になる時間が経過すれば良いのであるが、該発泡シ−トが基材樹脂の熱変形温度(HDT)以下になった後、10時間以上放置(本発明では、一定時間放置することを養生と呼ぶことがある)することが好ましい。更に、安定した発泡シ−トを得るための養生時間として1週間以上設けることはより好ましい。例えば、2週間程度が好ましく、2週間以上、例えば3週間程度が最も好ましい。
【0029】
発泡シートの養生時間を短くするためには、常温以上で、熱変形温度以下、好ましくは熱変形温度に近い温度での促進養生が好ましい。こうした、促進養生を行えば、2週間程度もしくは2週間以上の養生時間で得られる発泡シ−トの安定性に匹敵する安定性を数時間程度、例えば10時間程度に短縮することも可能である。なお、本発明では、常温、常圧下の大気中での養生以外の養生、常温及び/又は常圧以外での養生を促進養生と呼ぶ。
【0030】
これに対し、発泡シ−トの押出し直後等、すなわち、基材樹脂の熱変形温度(HDT)以下になる前に非発泡層を形成すると、発泡シートと非発泡層の間に存在する不均一分散した発泡剤が接着性を損なうことになり、発泡層と非発泡層との接着強度が低下すると共に、成形加工時の加熱工程で接着界面の剥離や発泡セルの破壊が発生し、良好な成形体を得ることができなくなる。
【0031】
次に、本発明に係る自動車内装材用発泡積層シート10は、前記いずれかの養生方法を取った後、発泡シート11と熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層(車内側非発泡層12および車外側非発泡層13)との積層方法としては、熱ロールを用いて発泡シート11表面にフィルムを熱融着させる熱ラミネート法、発泡シート11の表面にTダイにより溶融した樹脂を直接押出し、発泡シート11表面にフィルムを成形する押出ラミネート法等がある。
【0032】
また、発泡シート表面に二層以上を積層する場合には、発泡シート11の両表面に例えば押出ラミネート法を用いて、Tダイから押し出された非発泡層(車内側非発泡層12および車外側非発泡層13)を積層させると同時に、車外側非発泡層13の表面に、第二層目として、異音防止材14、あるいは、車内側非発泡層12の表面に、第二層目として、ホットメルト接着剤層15を圧着し、第三層目として、表皮材16を積層する方法が好適であるが、これに限定されず、当業者に知られているいずれの方法をも採用し得る。
【0033】
次に、本発明では自動車室内の温度が変化した時の変形をコントロールし、成形時の成形体形状の安定化を図る目的で、発泡層の動きを車内外側非発泡層を選択することにより、制御するのが好ましい。
【0034】
非発泡層12、13の基材樹脂としては、発泡シート11の基材樹脂よりも軟化温度が低いことが好ましい。さらに、熱変形温度が発泡シート11の基材樹脂よりも10℃以上低いことがより好ましい。即ち、発泡シート11の基材樹脂の軟化温度より非発泡層12,13の基材樹脂の軟化温度が高いか、または同一の場合、非発泡層12、13の基材樹脂が溶融軟化し表皮材として用いる不織布層に浸透する程度まで高温に加熱すると、発泡シート11を形成しているセルが破壊してしまうということが発生し易いという傾向がある。これに対して、非発泡層12、13の基材樹脂の軟化温度が、発泡シート11を構成する基材樹脂よりも軟化温度が例えば10℃以上低い場合等には、発泡シート11に不要な影響を与えることなく、非発泡層と不織布層との安定した接着性を得ることが可能となり好ましい。
【0035】
さらに、発泡シート11表面にダメージを与えないため発泡層と非発泡層との接着性も向上する。このようにすれば、例えば、発泡層と非発泡層および不織布層を積層する方法として、基材樹脂を溶融した状態の非発泡層を発泡層および不織布層で挟み込んだ状態にて圧着する場合、非常に良好な接着性を有する発泡積層シートが得られる。
【0036】
非発泡層12,13に用いられる熱可塑性樹脂としては、耐熱性PS系樹脂、変性PPE系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリアミド(ナイロン)系樹脂などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いられるが、発泡シート11として変性PPE系樹脂を使用する場合は、該樹脂層との接着性の観点から、変性PPE系樹脂、耐熱性PS系樹脂が好ましく使用される。
【0037】
車内側非発泡層12としては、変性PPE系樹脂が好ましく用いられる。 変性PPE系樹脂としては、上述の発泡シート11の場合と同様に、PPE系樹脂は、スチレン系化合物を主体とする単量体またはその重合体で重合または混合による変性を行ったものであり、例えば、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂、PPE系樹脂にスチレン系単量体を重合させたPPE−スチレン共重合体、この共重合体とPS系樹脂またはPPE系樹脂との混合物、その共重合体とPPE系樹脂とPS系樹脂との混合物などが挙げられる。これらのうちでは、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂が、製造が容易であるなどの点から好ましい。
【0038】
これらPPE系樹脂、PS系樹脂またはスチレン系単量体の具体例や好ましいものの例示や、PS系樹脂やスチレン単量体と重合可能な単量体の具体例、それを使用する理由などは、発泡シート11において説明した場合と同様である。ただし、PS系樹脂の好ましい具体例として、HIPSで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体等の耐衝撃PS系樹脂が、非発泡層12,13 の耐衝撃性改善効果が大きいという点から追加される。
【0039】
車内側非発泡層12に使用される基材樹脂として、変性PPE系樹脂を使用する場合は、自動車室内の温度上昇を配慮した耐熱評価温度以上の軟化温度を有するものが好ましい。その理由としては、車内側非発泡層12が耐熱評価温度において軟化してしまうと発泡シート11のセルの動きを制御する働きを担えなくなることによる。
【0040】
車外側非発泡層13の基材樹脂として、耐熱性の改善されたポリスチレン系樹脂(耐熱PS系樹脂)を使用する場合は、車内側非発泡層12の場合と同様に、耐熱評価温度以上の軟化温度を有し、発泡シート11の基材樹脂よりも軟化温度が10℃以上低いものが好ましい。
【0041】
使用される耐熱PS系樹脂としては、スチレンまたはその誘導体と他の単量体との共重合体である。耐熱性の改善効果を有し、スチレンまたはその誘導体と重合可能な単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物またはその誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。耐熱性の改善効果を有するスチレンまたはその誘導体と共重合可能な単量体は通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下の範囲で用いられる。
【0042】
また、スチレンまたはスチレン誘導体を重合させる際に、合成ゴムまたは合成ゴムラテックスを添加して重合させたもの、例えば、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)で代表されるスチレン−ブタジエン共重合体の存在下等に、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物等から選ばれる1以上の単量体との共重合体であってもよい。このうちでは、スチレン−無水マレイン酸系共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−メタアクリル酸系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体がその耐熱性改善効果、汎用性、コストの面から好ましい。
【0043】
耐熱性PS系樹脂は単独で用いても良く、あるいは2種類以上組み合わせても良い。また、耐熱性PS系樹脂は他の熱可塑性樹脂とブレンドして用いてもよく、ブレンドする熱可塑性樹脂としては例えば、ポリスチレン、HIPS、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなどの塩化ビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドやそれらの共重合体などがあげられる。このうちでは汎用性、均一分散が可能であること、非発泡層の耐衝撃性改善効果が大きいこと、コストの面等からHIPSが好ましい。HIPSとしては公知のものが使用でき、ゴム成分の含有量は通常1〜15重量%である。
【0044】
次に、本発明における自動車内装材において、発泡シート11に積層される非発泡層12、13の厚みは50〜300μmさらには75〜200μmが好ましい。非発泡層12、13の厚さが50μmより薄い場合には、強度、剛性、耐熱性などが劣り、300μmより厚い場合には、積層シートの成形性が劣る傾向にある。
【0045】
非発泡層12、13を形成する場合、必要に応じて、耐衝撃性改良剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤等を単独又は2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0046】
また、非発泡層12、13を形成する場合、カーボンブラック等の顔料などの着色剤で着色することにより、耐光性を増すことが可能となるので、サンルーフを有する車等には好ましい。
【0047】
非発泡層12、13を構成する基材樹脂に耐衝撃性改良剤を添加することは、非発泡層12、13を発泡シート11に積層して得られた発泡積層シートを加熱し、2次発泡させ、自動車内装材として成形する際のパンチング加工時、及び、積層シートや成形体を輸送する際等において、非発泡層12、13の割れなどを防止するのに有効である。耐衝撃性改良剤としては、基材樹脂に混合することによってその効果を発揮するものであれば特に限定なく使用し得る。耐衝撃性改良剤は、重合による変性でもって熱可塑性樹脂に導入することにより耐衝撃性改良効果を発揮し得る成分であってもよい。例えばHIPSなどのように耐衝撃性改良成分を含むものをPS系樹脂に混合した基材樹脂を非発泡層に使用することにより、非発泡層12、13に耐衝撃性を付与することができる。
【0048】
本発明に係る自動車内装材は、図1、2に例示するように、車外側非発泡層13の表面に接着剤層17を介さずに(図1)、または、接着剤層17を介して(図2)異音防止材14が設けられている。この異音防止材14は、基材樹脂がポリオレフィン系樹脂であってフィルム状物である場合には、異音防止効果を有するので、以下異音防止フィルムと表現することがある。すなわち、この異音防止フィルムは、自動車に装着した場合、車内をクーラー等で急冷した際、また、凹凸のある路面での走行中や急カ−ブでの走行中に発生する異音を防止するのに効果を発揮する。
【0049】
尚、後に説明するように、異音防止材14は、異音防止フィルムを使用する場合の他、不織布を使用する場合があるが、本発明では、いずれの場合も14の番号を付して説明することがある。
異音防止フィルム14の基材樹脂としては、摺動性に優れる結晶性樹脂であるポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂が好ましい。更に好ましくは、コスト、汎用性、フィルム加工の容易さからポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0050】
異音防止フィルム14の基材樹脂として使用されるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン等の単独重合体、エチレンープロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンとメタアクリレート、アクリレート、ブテン等のオレフィンと共重合できる単量体との共重合体、またこれらの混合物等からなるポリエチレン系樹脂、プロピレンの単独重合体、プロピレン酢酸ビニル共重合体、プロピレンとメタアクリレート、アクリレート、ブテン等のオレフィンと共重合できる単量体との共重合体、またはこれらの混合物等からなるポリプロピレン系樹脂が好ましく。これらの中では、摺動性が良好で、しかも材料費が安価である低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン、ホモポリプロピレン、或いはエチレン−プロピレン共重合がさらに好ましい。
【0051】
また、異音防止フィルム14をカーボンブラック等の顔料などの着色剤で着色することにより、耐光性を増すことが可能となるので、サンルーフを有する車等には好ましい。
【0052】
異音防止フィルム14を非発泡層13に積層する方法としては、接着剤層17を介さずに積層する方法(図1)、接着剤層17を介して積層する方法(図2)があげられる。
【0053】
接着剤層17を介して積層する際に、使用される接着剤層としては、少なくとも分子間力、水素結合、共有結合等の化学的な結合で非発泡層13と異音防止フィルムを接着させる働きを有するものが用いられる。
【0054】
接着剤層17の具体例としては、酢酸ビニル系、セルロース系、アクリル系、ポリアミド系、ポリビニルアセテート系等の熱可塑性接着剤、ウレタン系、メラミン系、フェノール系、エポキシ系、アクリル系等の熱硬化性接着剤、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、シリコーンゴム系等のゴム系接着剤、でんぷん、たん白質、天然ゴム等の天然物系接着剤、ホットメルト接着剤があげられる。また、ホットメルト接着剤の具体例としては、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系、スチレン−ブタジエン共重合体系、スチレン−イソプレン共重合体系等などの樹脂を成分とする物があげられる。
【0055】
異音防止フィルム14を非発泡層13に接着剤層17を介さずに積層するには、例えば、次に示すごとき積層フィルムからなる異音防止フィルムを使用するのが好ましい。すなわち、耐熱PS系樹脂を基材とした非発泡層13を用いる場合においては、ポリオレフィン系樹脂フィルム−ポリスチレン系樹脂フィルムからなる2層の積層フィルムを用い、該耐熱PS系樹脂を基材とする非発泡層13に対し、当該2層の積層フィルムにつき、効果的な熱接着が可能なポリスチレン系樹脂フィルム面を車内側に配し、車外側には摺動性に優れるポリオレフィン系樹脂フィルム面を配することにより、耐熱PS系樹脂からなる非発泡層13に該2層の積層フィルムを熱接着するのが好ましい。
【0056】
ポリオレフィン系樹脂フィルムを使用する場合の厚みは10〜100μm、更には20〜50μmであることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みが10μmより薄い場合、異音防止効果が得られないことがある。一方100μmより厚い場合、ポリオレフィン系樹脂フィルムの成形時の歪みによって、内装材に耐熱変形が生じたり、コストが無駄に増加したりすることがある。
【0057】
ポリスチレン系樹脂フィルムを使用する場合の厚みは10〜100μm、更には20〜50μmであることが好ましい。ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みが10μmより薄い場合、非発泡層14との安定した接着性が得られない場合がある。一方、100μmより厚い場合、大量の熱量を与えれば非発泡層13との安定した接着性を得ることが出来るが、大幅な生産性の低下を引き起こしたり、ポリスチレン系樹脂フィルム層の成形時の歪みによって、内装材に耐熱変形が生じる可能性がある。
【0058】
さらに、異音防止材14として、不織布を用いることもできる。この異音防止用として用いる不織布(以下、異音防止用不織布)14は、自動車に装着した場合、車内をクーラー等で急冷した際、また、凹凸のある路面での走行中や急カ−ブでの走行中に発生する異音を防止するのに効果を発揮する。
【0059】
異音防止用不織布14は、原料繊維を、接着剤、溶融繊維、あるいは機械的方法により接合させた布状物であればいずれの種類でも用いられ得る。原料繊維の種類も特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれをも用いることができる。具体的には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル等の合成繊維や、羊毛、木綿等の天然繊維、更には、セルロース等の天然繊維に由来する再生繊維等も使用することができる。これらの中でも合成繊維としてはポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。またこれらの繊維を単独で使用することも、2種以上を組み合わせ使用することもできる。不織布の種類は、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンボンド布、スプレファイバー布、あるいはステッチボンド布等が挙げられ、いずれの不織布も用いることができる。このうち、長繊維フィラメントからなるスパンボンド布、ウォーターパンチ布が好ましい。フィラメントがけん縮性があり、強度が高く、柔らかな風合いを有し、音を吸収するのに都合がよい。
【0060】
異音防止用不織布14は、品質及びコストを考慮すると、10〜50g/m2の目付を有していることが好ましく、更には20〜40g/m2の目付を有していることが好ましい。10g/m2以下の目付けでは、異音防止用不織布14を設けた箇所において、車外側非発泡層13の表面が部分的に露出し有効な異音防止効果が示されないことがある。一方、50g/m2以上の目付けでは、異音防止材14の成形歪みによって、内装材に耐熱変形が生じたり、コストが無駄に増加したりすることがある。
【0061】
異音防止用不織布14を車外側非発泡層13に積層する方法としては車外側非発泡層13の基材樹脂を溶融させ、溶融した車外側非発泡層13を発泡シート11と異音防止用不織布14で圧着し、実質的に接着剤層を使用しないで積層する方法が好ましい。その理由としては、車外側非発泡層13を構成する基材樹脂が適度に異音防止用不織布14に染み込み、アンカー効果によって良好な接着性が得られ、自動車に装着した際、長期間の使用、過酷な環境下での使用においても脱落のない安定な接着性が得られること、一工程で発泡コア層、非発泡層、不織布層が同時に積層されるため、作業の煩雑さが解消されること、また、実質的に接着剤層を用いないため製造コストの増加を抑えることが可能であること、などが挙げられる。
【0062】
さらに、発泡シート11の車外側非発泡層13との接着面が、溶融した車外側非発泡層13の基材樹脂によってダメージを受けにくいこと、車外側非発泡層13と異音防止用不織布14のより強固な接着性が得られるという理由から、溶融した車外側非発泡層13を構成する基材樹脂を異音防止用不織布14に接触させた後、異音防止用不織布14とは反対面を発泡シート11へ圧着一体化する方法が更に好ましい。
【0063】
異音防止用不織布14を自動車内装材用基材に設ける方法として、ホットメルト接着剤層15を介して積層することも可能であるが、過酷な環境下、特に高温下での使用において安定な接着性を得るためには、ホットメルト接着剤層15の接着性および耐熱性の改善が必要であり、製造コストが増加すること、扱いが難しい接着剤層を積層する工程が増えることで作業が煩雑になるなどが考えられる。
【0064】
表皮材16としては、原料繊維を、接着剤、溶融繊維、あるいは機械的方法により接合させた不織布、織布等の布状物であればいずれの種類でも用いられ得る。この内、通常では不織布が良く用いられる。原料繊維の種類も特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれをも用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル等の合成繊維や、羊毛、木綿等の天然繊維、レーヨン等のセルロース等の天然繊維由来の再生繊維等を使用することができる。また、これらを組み合わせて使用することもできる。これら原料繊維の中でも合成繊維としてはポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
【0065】
更に、表皮材としては、上記したごとく織布、不織布、等が挙げられるが成形加工性より不織布が好ましい。不織布の種類として、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンボンド布、スプレファイバー布、あるいはステッチボンド布等が挙げられ、いずれの不織布も用いることができる。
【0066】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。実施例・比較例に用いた樹脂を表1に、異音防止材、表皮材、ホットメルト接着剤層等として使用した物を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
なお、表1に示した樹脂に関する各符号は次の通りである。
変性PPE :変性ポリフェニレンエ−テル樹脂
PS :ポリスチレン樹脂
SMAA共重合体 :メタクリル酸変性ポリスチレン樹脂
HIPS :ハイインパクトポリスチレン樹脂
実施例および比較例で行った評価方法を以下に示す。
(コア層および成形体の厚さ)
1次発泡シート、成形体の幅方向に20ヶ所の厚さを測定し、その測定値の平均値を算出した。
(発泡倍率)
1次発泡シートの密度dfをJIS K 7222に準じて測定し、変性PPE系樹脂の密度dpを JIS K 7112に準じて測定し、次式より求めた。
発泡倍率=dp/df
(独立気泡率)
ASTMD−2859に準じて測定した。(マルチピクノメーター(ベックマン社製)を使用)
(セル径)
一次発泡シートの断面を光学顕微鏡で観察し、20個のセル径を測定し、その測定値の平均値を算出した。
(目付)
1次発泡シートの押し出し方向の5ヶ所より、10cm×10cmの大きさの試験片を切り出し、それらの重量を測定したのち、平均値を算出した。
(接着性引張り剪断試験)
150mm×25mmの試験片を採取し、20℃、60%RHの恒温恒湿状態で48時間養生させた後、引張試験機(島津社製 オートグラフDSS−2000)の掴みに取り付け、23℃恒温槽中、引張速度200mm/minで剪断強さを測定した。(N=5で平均値を算出)
判定の基準としては自動車内装材としての実用性を考慮して、以下の基準を用いた。
◎・・接着性が非常に強固であるため、発泡コア層の材料破壊が生じず、非発泡層が破断するので測定できなかったもの。
○・・10N/25mm以上で且つ、発泡コア層の材料破壊が観察されたもの。
△・・10N/25mm以下で且つ、発泡コア層の材料破壊が観察されたもの。
×・・10N/25mm以下または、発泡コア層の材料破壊が観察されなかったもの。
(成形加熱工程後の発泡積層シート外観目視評価)
○・・発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の発泡セルの破泡(空洞)が認められない。
△・・発泡コア層の発泡セルの破泡(空洞)は認められないが、非発泡層面にφ0.2〜φ2mm程度の小さな気泡が認められる。
×・・発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の発泡セルの破泡(空洞)が認められる。
(耐熱試験)
発泡シートから150mm×25mmの試験片を採取し、室外側を上にして片側短辺端部を固定した状態で、固定した短辺と反対側端部の高さ(h0)を測定した。この状態で100℃±2℃に設定した恒温槽中に24時間保持し、常温に戻した後再度端部の高さ(h1)を測定した。初期の高さと耐熱後の高さの差(h0−h1)より耐熱変形量を求めた。
判定の基準としては自動車内装材としての実用性を配慮して、以下の基準を用いた。
○・・耐熱変形量 ±3.0mm以内
△・・耐熱変形量 −10.0〜−3.0mm、及び3.0〜10.0mm
×・・±10.0mm以上
(実施例1)
PPE樹脂成分40重量%,PS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1部とPS樹脂(B)42.9部とを混合した混合樹脂100重量部に対してiso−ブタンを主成分とする発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15)3.4重量部及びタルク0.32重量部を押出機により混練し、サーキュラーダイスにより押出し、引き取りロールを介して、発泡シートを得た。
【0069】
得られた発泡シートを熱変形温度(125℃)以下である室温(23℃)まで冷却させ、均熱乾燥器(ヤマト製DH62)庫内温度80℃±10℃にて10時間、促進養生させた後、室外側非発泡層をSMAA共重合体樹脂(C)50部とHIPS樹脂(D)50部の混合樹脂を樹脂温度が245℃となるように押出機で溶融・混錬を行い、Tダイを用いてフィルム状に押出しながら、一方より第二層目の異音防止材(E)を繰出し、これら同時に、発泡シート、押出しフィルム及び異音防止材(E)を挟み込む形で圧着・積層し、厚み150μmの室外側非発泡層及び異音防止材を形成した。
【0070】
次に、発泡シート反転させ、室内側非発泡層をPPE系樹脂成分20重量%、PS系樹脂成分80重量%になるようにPPE系樹脂(A)28.6部、PS系樹脂(B)71.4部を混合した混合樹脂を樹脂温度が265℃となるように押出機で溶融・混錬を行い、Tダイを用いてフィルム状に押し出しながら、一方より第二層目のホットメルト接着剤層(G)を繰出し、これら同時に、発泡シート、非発泡層の未積層面に、押出しフィルム及びホットメルト接着剤層を挟み込む形で圧着・積層し、厚さ120μmの室内側非発泡層を形成した。さらに、熱ロールを介して、第三層目である、表皮材(F)を圧着・仮止めを行い、自動車内装材用発泡積層シートを得た。
【0071】
得られた自動車内装材用発泡積層シートから150mm×25mmのサンプルを切り出し、両面非発泡層と発泡コア層との接着性引張り剪断試験、耐熱試験を行った。
【0072】
次に、得られた自動車内装材用発泡積層シートを成形加工時の加熱工程で表面温度155℃まで加熱、その後外観目視した結果、発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の内部に、発泡セルの破泡(空洞)はなく、良好な自動車内装材用発泡積層シートであった。
(実施例2)
実施例1と同じ組成の混合樹脂を用いて、発泡シート形成後、大気中で自然放冷し2週間養生させた後、室外側非発泡層をPPE系樹脂成分20重量%、PS系樹脂成分80重量%になるようにPPE系樹脂(A)28.6部、PS系樹脂(B)71.4部を混合した混合樹脂を樹脂温度が265℃となるように押出機で溶融・混錬を行い、Tダイを用いてフィルム状に押し出しながら、厚み150μmを形成した。上記以外は、実施例1記載の方法により自動車内装材用発泡積層シートを得た。
【0073】
得られた自動車内装材用発泡積層シートから150mm×25mmのサンプルを切り出し、両面非発泡層と発泡コア層との接着性引張り剪断試験、耐熱試験を行った。
【0074】
次に、得られた発泡積層シートを成形加工時の加熱工程で表面温度155℃まで加熱、その後外観目視した結果、発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の内部に、発泡セルの破泡(空洞)はなく、良好な自動車内装材用発泡積層シートであった。
(実施例3)
実施例1と同じ組成の混合樹脂を用いて、発泡シート形成後、大気中で自然放冷し5日間養生させた後、上記以外は、実施例1記載の方法により自動車内装材用発泡積層シートを得た。
【0075】
得られた自動車内装材用発泡積層シートから150mm×25mmのサンプルを切り出し、両面非発泡層と発泡コア層との接着性引張り剪断試験、耐熱試験を行った。
【0076】
次に、得られた発泡積層シートを成形加工時の加熱工程で表面温度155℃まで加熱、その後外観目視した結果、発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の内部に、発泡セルの破泡(空洞)はなく、良好な自動車内装材用発泡積層シートであった。
(実施例4)
実施例1と同じ組成の混合樹脂を用いて、発泡シート形成後、大気中で自然放冷し8時間養生させた後、室外側非発泡層をPPE系樹脂成分20重量%、PS系樹脂成分80重量%になるようにPPE系樹脂(A)28.6部、PS系樹脂(B)71.4部を混合した混合樹脂を樹脂温度が265℃となるように押出機で溶融・混錬を行い、Tダイを用いてフィルム状に押し出しながら、厚み150μmを形成した。上記以外は、実施例1記載の方法により自動車内装材用発泡積層シートを得た。
【0077】
得られた自動車内装材用発泡積層シートから150mm×25mmのサンプルを切り出し、両面非発泡層と発泡コア層との接着性引張り剪断試験、耐熱試験を行った。
【0078】
次に、得られた発泡積層シートを成形加工時の加熱工程で表面温度155℃まで加熱、その後外観目視した結果、発泡コア層の内部に発泡セルの破泡(空洞)は認められなかったが非発泡層面にφ0.2〜φ2mm程度の小さな気泡が認められる自動車内装材用発泡積層シートを得た。
(比較例1)
PPE樹脂成分40重量%,PS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1部とPS樹脂(B)42.9部とを混合した混合樹脂100重量部に対してiso−ブタンを主成分とする発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15)3.4重量部及びタルク0.32重量部を混練し、押出して得られた直後、発泡コア層温度は熱変形温度125℃以上の130℃の状態で、両面に、PPE系樹脂成分20重量%、PS系樹脂成分80重量%になるようにPPE系樹脂(A)28.6部、PS系樹脂(B)71.4部を混合した混合樹脂で構成される非発泡層を形成するに当たり3層の共押出し多層ダイスを用いて発泡積層シートを形成した。
【0079】
次に、発泡積層シートのいずれか一方面にホットメルト接着剤層(G)及び、表皮材(F)を繰出し、表面温度120℃、10m/分の速さに調節された熱ロールを介して圧着、仮貼りを行い、自動車内装材用発泡積層シートを得た。
【0080】
得られた発泡積層シートから150mm×25mmのサンプルを切り出し、両面非発泡層と発泡コア層との接着性引張り剪断試験、耐熱試験を行った。
【0081】
次に、得られた発泡積層シートを成形加工時の加熱工程で表面温度155℃まで加熱、その後外観目視した結果、発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の内部に、発泡セルの破泡(空洞)が認められ、良好な自動車内装材用発泡積層シートを得ることが出来なかった。さらに、検証した結果、非破泡限界として、発泡積層シートの表面温度が140℃だと解り、季節による気温変動程度の差が発泡積層シートの製造方法によって変わることを発見した。
【0082】
表3に実施例1〜4および比較例1で得られた自動車内装材の評価結果を示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【発明の効果】
本発明の自動車内装材用発泡積層シート及びその製造方法は、押出し発泡シートを形成した後、発泡シートが熱変形温度(HDT)以下まで冷却されたのち、更に好ましくは、一定の時間冷却養生した後、該非発泡層を積層されることで、非発泡層の積層状態が改善され、成形加工時における加熱破泡等の問題が生じない自動車内装材用発泡積層シートが得られ、且つ、耐熱性、軽量性の優れたコスト競争力の高い自動車内装材用発泡積層シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明にかかる自動車内装材の一実施態様を示す要部拡大断面模式説明図である。
【図2】図2は、本発明にかかる自動車内装材の他の一実施態様を示す要部拡大断面模式説明図である。
【符号の説明】
10:自動車内装材用発泡積層シ−ト
11:発泡シート
12:車内側非発泡層
13:車外側非発泡層
14:異音防止材
15:ホットメルト接着剤層
16:表皮材
17:接着剤層
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出発泡シートの両面に非発泡層を形成することで得られる自動車内装材用発泡積層シ−トの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、耐熱性、軽量性、成形加工性に優れた、自動車内装材用発泡積層シ−トの製造方法及びそれから得られる自動車内装材用発泡積層シ−トに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車内装材として、熱可塑性樹脂発泡体を主体とする基材にウレタンフォームを積層したものや、スチレン−無水マレイン酸共重合体の発泡層の上下面にスチレン−無水マレイン酸共重合体の非発泡層を積層した積層シートを所望の形状に成形したものが広く用いられている。それらの自動車内装材は、軽量で断熱性が高く、成形加工性がすぐれているという特徴がある。
【0003】
しかしながら、上記のような従来の自動車内装材は、高温に長時間さらされると、耐熱性が不十分であるため、フロント部が自重で垂れ下がったり(ヒートサグ)、変形を生じるなどの問題を発生することがあった。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、無機質のガラス繊維とプラスチックの複合材料をベースとした自動車内装材が使用されるようになってきた。しかし、この複合材料では、耐熱性という品質は維持できるものの、軽量化が図れない上に、ガラス繊維を使用しているため、リサイクル性が悪く、またコスト高になるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、軽量で耐熱性のある変成ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下「変成PPE系樹脂」と記す)発泡コア層の両面に、変成PPE系樹脂非発泡層を積層した発泡積層シートを用いた自動車内装材用発泡積層シートが提案されている(実開平4−11162号公報)。変成PPE系樹脂を用いた自動車内装材用発泡積層シートは、耐熱性に優れ、軽量であるため、高温下での変形や自重による垂れ下がり等を改善するとされているもので、近年、自動車内装材として、その耐熱性および軽量性により市場に出回っている。
【0006】
こうした、自動車内装材用発泡積層シートの成形加工の工程について以下に簡単に説明する。一定寸法に裁断された自動車内装材用発泡積層シートを加熱炉にて定時間経過後圧縮成形される。しかし、加熱炉のヒーター制御はあいまいなものが多く、例えば、季節による周囲の温度変化等が生じた場合であっても、温度補正回路を持つ装置は少なく、しばしば過加熱ぎみになり、発泡層−非発泡層の界面もしくは発泡層内部の発泡セルが破れ、破泡(空洞)が生じる。この破泡が広範囲に至る場合には発泡積層シートの収縮性が失われ、自重による垂れ下がりが生じ、加熱炉内のヒーターに接触する等のトラブルが発生する等の課題があった。
【0007】
また、一部にのみ破泡が生じた場合には、成形はされるものの、不規則に破泡の生じたシートを型押ししても得られた成形体の厚みが乏しくなり易いため、形状が悪く、高温(例えば80℃以上)の雰囲気中に長時間さらされると、屈曲形状を有する部分や成形時の延伸率が大きい部分(例えばフロント部)が変形し易い等の傾向を有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような課題に対して、自動車内装材用発泡積層シートに於ける、発泡層と非発泡層との接着性が良好で、且つ成形後の形状が良く、耐熱剛性がある製品を得るために種々の試みが実施されてきたが、いまだ満足し得る方法が提案されていないのが実状である。
【0009】
本発明は上記如き実状に鑑み、耐熱性、軽量性を保持させ、且つ成形加工性に優れた自動車内装材用発泡積層シート及びその製造方法に関するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、自動車内装材用発泡積層シートについて、発泡層と非発泡層との接着強度に優れ、かつ、成形加工時の加熱破泡を抑えるべく、鋭意研究した結果、押出し発泡シートの形成後に発泡シートを基材樹脂の熱変形温度(HDT)以下にする、又、更には熱変形温度(HDT)になった以後、一定の放置(以下養生と称すことがある)期間が必要であることを突き止めた。すなわち、発泡シートは押し出し直後から発泡剤が大気中へ抜け始め、熱変形温度(HDT)以下まで冷却されること更に、養生期間を与えることにより、発泡シート中での不均一な発泡剤の分散状態が改善されることにより、安定した非発泡層の積層が可能となることを見出した。
【0011】
こうした、非発泡層の積層状態の改善により、接着強度が向上し、成形加工時における加熱破泡等、問題が生じない自動車内装材用発泡積層シートが得られることを見出したことにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は
(1)耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートの両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層が形成された発泡積層シートにおいて、該発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、該非発泡層を積層することを特徴とする自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項1)、
(2)前記発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、更に10時間以上養生した後、非発泡層を積層することを特徴とする(1)記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項2)、
(3)前記発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、更に10時間以上促進養生した後、非発泡層を積層することを特徴とする(1)または(2)記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項3)、
(4)前記発泡シートを大気中で自然放冷し、1週間以上養生した後、非発泡層を積層することを特徴とする(1)または(2)記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項4)、
(5)発泡コア層を構成する基材樹脂が、変成ポリフェニレンエーテル系樹脂である(1)〜(4)記載のいずれか1記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項5)、
(6)熱可塑性樹脂で構成される非発泡層の基材樹脂が、変成ポリフェニレンエーテル系樹脂からなることを特徴とする(1)〜(5)記載のいずれか1記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項6)
(7)非発泡層の車内側の基材樹脂が、変成ポリフェニレンエーテル系樹脂からなり、車外側の基材樹脂が耐熱性の改善されたポリスチレン系樹脂からなることを特徴とする(1)〜(6)記載のいずれか1記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。(請求項7)
(8)(1)〜(7)記載のいずれか1記載方法で得られる自動車内装材用発泡積層シート。(請求項8)
に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る自動車内装材用発泡積層シ−トとその製造方法の例を図面に基づいて詳しく説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る自動車内装材用発泡積層シ−ト10の一実施態様の構成を示す模式図であり、発泡コア層として用いる耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シート11を、該発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった(例えば10時間以上促進養生した、もしくは、大気中で自然放冷した)後、該発泡層の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層(車内側非発泡層12および車外側非発泡層13)が積層されており、車外側非発泡層13の上面には異音防止材14が積層されている。車内側非発泡層12の上面にはホットメルト接着剤樹脂層15を介して表皮材16が積層されている。
【0014】
図2は、本発明に係る自動車内装材用発泡積層シ−ト10の他の一実施態様の構成を示す模式図であり、発泡コア層として用いる耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シート11を、該発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、該発泡層の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層(車内側非発泡層12および車外側非発泡層13)が積層されており、車外側非発泡層13の上面には接着剤層17を介して異音防止材14が積層されている。車内側非発泡層12の上面にはホットメルト接着剤樹脂層15を介して表皮材16が積層されている。
【0015】
発泡コア層として用いる発泡シート11は、自動車内装材の基体となる層であり、耐熱性および成形性が良好な樹脂からなるので、耐熱性の高い自動車内装材が容易に成形できる。また、この発泡シート11が発泡層であるため、軽量で断熱性に優れ、また密度が低いため使用樹脂量が少量で済み、コスト競争力を有するものとなる。
【0016】
本発明の発泡シート11の基材樹脂として使用される耐熱性樹脂は、耐熱性を有するとして当業者に知られるいずれの樹脂をも用いることができる。例示すれば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体等の耐熱性ポリスチレン系樹脂(耐熱性PS系樹脂);ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂(PS系樹脂)あるいは耐熱性PS系樹脂とポリフェニレンエーテル(PPE)とのブレンド体、PPEへスチレンをグラフトしたグラフト重合物などのスチレン・フェニレンエーテル共重合体等の変成ポリフェニレンエーテル系樹脂(変成PPE系樹脂);ポリカーボネート樹脂;およびポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートで例示されるポリエステル樹脂などである。
【0017】
これらの樹脂は、室内、室外の温度環境に耐えることができ、また、温度による変形が少ないことより、本発明にかかる自動車内装材に好適である。さらに、これらの樹脂は、2種以上を用いることもできる。また、発泡シートは2種類以上の発泡層を積層してシート状にしたものであってもよい。
【0018】
上記の耐熱性樹脂の中でも、変成PPE系樹脂を発泡シートの基材樹脂として使用すると、耐熱性および剛性等の品質に優れているうえに、加工性および製造が容易である点で好ましい。
【0019】
変成PPE系樹脂に使われるPPEとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレンー1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0020】
変成PPE系樹脂中、PPE系樹脂と混合樹脂を形成するPS系樹脂はスチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン等を主成分とする樹脂である。したがって、PS系樹脂はスチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず他の単量体と共重合することによって作られた共重合体であってもよい。
【0021】
また、PPE系樹脂に重合、好ましくはグラフト重合させるスチレン系単量体の具体例としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどがあげられる。これらは単独でも、2種以上組み合わせでも用い得る。これらのうちではスチレンが、汎用性、コストの点から好ましい。
【0022】
耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シート11の製造方法としては、2種以上の混合樹脂、及び各種の添加剤を加えた樹脂を押出機により溶融・混練、高温高圧下で発泡剤を圧入、発泡最適温度に調節して低圧帯(通常大気中)に押出した後、マンドレル等によって目的に応じて延伸する事により、シート状に成形する方法が好適であるが、これに限定されず、当業者に知られているいずれの方法をも採用し得る。
【0023】
本発明の発泡シート11の製造において使用される発泡剤としてはブタン、プロパン、ペンタン、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロフロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロジフロロエタン等の炭化水素、ハロゲン化炭化水素等が挙げられ、またそれらを組み合わせて使用しても良い。本発明において使用される発泡シート11の基材樹脂には、必要に応じて気泡調整剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料等を添加し得る。
【0024】
本発明の発泡シート11に使用される基材樹脂として、変成PPE系樹脂を使用する場合は、フェニレンエーテル成分として35〜75重量部、スチレン成分として65〜25重量部が好ましく、更に好ましくは、フェニレンエーテル成分として35〜60重量部、スチレン成分として65〜40重量部、特に好ましくは、フェニレンエーテル成分として38〜58重量部、スチレン成分として62〜42重量部がよい。PPE系樹脂の混合割合が少ないと、耐熱性が劣る傾向にあり、PPE系樹脂の混合割合が多いと、加熱流動時の粘度が上昇し発泡成形が困難になる傾向がある。
【0025】
発泡シート11の厚みが1〜5mm、更には1.5〜3.5mm、発泡倍率が3〜20倍、更には5〜15倍、セル径が0. 05〜0. 9mm、更には0.1〜0.7mm、独立気泡率が70%以上、更には80%以上であるのが好ましい。発泡シート11の厚さが1mm未満であると、強度および断熱性に劣り自動車内装材用発泡積層シートとして適当でない場合がある。一方、5mmを超える場合、成形加工時に於ける加熱が発泡シート11の厚み方向の中心部まで伝わり難く、そのため充分な加熱が行えないため、成形形状が悪くなる場合がある。
【0026】
また、充分な加熱を行うべく加熱時間を長くすると、発泡シート11の界面もしくは内部の発泡セルに破泡等が生じ、製品として許容できるものが得られ難くなる場合がある。また、発泡倍率が3倍未満の場合、柔軟性に劣り、曲げなどによる破損が生じ易く、また軽量化の効果が少ない。発泡倍率が20倍を越える場合、強度が低下し、中心部まで加熱しにくいことにより成形性が低下する傾向がある。更に、セル径が0.05mm以下の場合、充分な強度が得られ難く、0.9mm以上の場合、断熱性に劣る傾向がある。また、独立気泡率が70%以下の場合、断熱性、剛性に劣るとともに、成形加工時の加熱によって目的とする2次発泡倍率を得ることが困難となり、成形性に劣る傾向がある。
【0027】
また、発泡シート11を形成する残存揮発成分の量は、発泡層全重量に対して、1〜5重量%、更には2〜4重量%が好ましい。残存揮発成分が、1重量%を下回る場合は、2次発泡倍率が低くなりすぎ、良好に成形できない場合がある。また、残存揮発成分が5重量%を越える場合は非発泡層との間に空気だまりが発生したり、経時による寸法安定性が悪くなる場合がある。なお、残存揮発成分の量は、ガスクロマトグラフィーにより測定しても良いが、通常、発泡層サンプルを変成PPE系樹脂が軟化しはじめる温度以上で分解温度以下の温度範囲で加熱して揮発成分を充分に揮発させ、加熱前後の重量差により測定する。
【0028】
本発明における発泡積層シ−トを製造する方法は、発泡シ−トを押出し、大気中又は他の気体の雰囲気中等で熱変形温度以下となるまで冷却又は放置した後、発泡シ−トの両面に非発泡層を積層する方法である。この内、常圧下、減圧下、加圧下で冷却又は放置が可能であるが、常圧の大気中での冷却又は放置が最も容易で安価であるので好ましい。発泡シ−ト成形した後、非発泡層を積層するまでの時間は、該発泡シ−トが基材樹脂の熱変形温度(HDT)以下になる時間が経過すれば良いのであるが、該発泡シ−トが基材樹脂の熱変形温度(HDT)以下になった後、10時間以上放置(本発明では、一定時間放置することを養生と呼ぶことがある)することが好ましい。更に、安定した発泡シ−トを得るための養生時間として1週間以上設けることはより好ましい。例えば、2週間程度が好ましく、2週間以上、例えば3週間程度が最も好ましい。
【0029】
発泡シートの養生時間を短くするためには、常温以上で、熱変形温度以下、好ましくは熱変形温度に近い温度での促進養生が好ましい。こうした、促進養生を行えば、2週間程度もしくは2週間以上の養生時間で得られる発泡シ−トの安定性に匹敵する安定性を数時間程度、例えば10時間程度に短縮することも可能である。なお、本発明では、常温、常圧下の大気中での養生以外の養生、常温及び/又は常圧以外での養生を促進養生と呼ぶ。
【0030】
これに対し、発泡シ−トの押出し直後等、すなわち、基材樹脂の熱変形温度(HDT)以下になる前に非発泡層を形成すると、発泡シートと非発泡層の間に存在する不均一分散した発泡剤が接着性を損なうことになり、発泡層と非発泡層との接着強度が低下すると共に、成形加工時の加熱工程で接着界面の剥離や発泡セルの破壊が発生し、良好な成形体を得ることができなくなる。
【0031】
次に、本発明に係る自動車内装材用発泡積層シート10は、前記いずれかの養生方法を取った後、発泡シート11と熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層(車内側非発泡層12および車外側非発泡層13)との積層方法としては、熱ロールを用いて発泡シート11表面にフィルムを熱融着させる熱ラミネート法、発泡シート11の表面にTダイにより溶融した樹脂を直接押出し、発泡シート11表面にフィルムを成形する押出ラミネート法等がある。
【0032】
また、発泡シート表面に二層以上を積層する場合には、発泡シート11の両表面に例えば押出ラミネート法を用いて、Tダイから押し出された非発泡層(車内側非発泡層12および車外側非発泡層13)を積層させると同時に、車外側非発泡層13の表面に、第二層目として、異音防止材14、あるいは、車内側非発泡層12の表面に、第二層目として、ホットメルト接着剤層15を圧着し、第三層目として、表皮材16を積層する方法が好適であるが、これに限定されず、当業者に知られているいずれの方法をも採用し得る。
【0033】
次に、本発明では自動車室内の温度が変化した時の変形をコントロールし、成形時の成形体形状の安定化を図る目的で、発泡層の動きを車内外側非発泡層を選択することにより、制御するのが好ましい。
【0034】
非発泡層12、13の基材樹脂としては、発泡シート11の基材樹脂よりも軟化温度が低いことが好ましい。さらに、熱変形温度が発泡シート11の基材樹脂よりも10℃以上低いことがより好ましい。即ち、発泡シート11の基材樹脂の軟化温度より非発泡層12,13の基材樹脂の軟化温度が高いか、または同一の場合、非発泡層12、13の基材樹脂が溶融軟化し表皮材として用いる不織布層に浸透する程度まで高温に加熱すると、発泡シート11を形成しているセルが破壊してしまうということが発生し易いという傾向がある。これに対して、非発泡層12、13の基材樹脂の軟化温度が、発泡シート11を構成する基材樹脂よりも軟化温度が例えば10℃以上低い場合等には、発泡シート11に不要な影響を与えることなく、非発泡層と不織布層との安定した接着性を得ることが可能となり好ましい。
【0035】
さらに、発泡シート11表面にダメージを与えないため発泡層と非発泡層との接着性も向上する。このようにすれば、例えば、発泡層と非発泡層および不織布層を積層する方法として、基材樹脂を溶融した状態の非発泡層を発泡層および不織布層で挟み込んだ状態にて圧着する場合、非常に良好な接着性を有する発泡積層シートが得られる。
【0036】
非発泡層12,13に用いられる熱可塑性樹脂としては、耐熱性PS系樹脂、変性PPE系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリアミド(ナイロン)系樹脂などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いられるが、発泡シート11として変性PPE系樹脂を使用する場合は、該樹脂層との接着性の観点から、変性PPE系樹脂、耐熱性PS系樹脂が好ましく使用される。
【0037】
車内側非発泡層12としては、変性PPE系樹脂が好ましく用いられる。 変性PPE系樹脂としては、上述の発泡シート11の場合と同様に、PPE系樹脂は、スチレン系化合物を主体とする単量体またはその重合体で重合または混合による変性を行ったものであり、例えば、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂、PPE系樹脂にスチレン系単量体を重合させたPPE−スチレン共重合体、この共重合体とPS系樹脂またはPPE系樹脂との混合物、その共重合体とPPE系樹脂とPS系樹脂との混合物などが挙げられる。これらのうちでは、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂が、製造が容易であるなどの点から好ましい。
【0038】
これらPPE系樹脂、PS系樹脂またはスチレン系単量体の具体例や好ましいものの例示や、PS系樹脂やスチレン単量体と重合可能な単量体の具体例、それを使用する理由などは、発泡シート11において説明した場合と同様である。ただし、PS系樹脂の好ましい具体例として、HIPSで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体等の耐衝撃PS系樹脂が、非発泡層12,13 の耐衝撃性改善効果が大きいという点から追加される。
【0039】
車内側非発泡層12に使用される基材樹脂として、変性PPE系樹脂を使用する場合は、自動車室内の温度上昇を配慮した耐熱評価温度以上の軟化温度を有するものが好ましい。その理由としては、車内側非発泡層12が耐熱評価温度において軟化してしまうと発泡シート11のセルの動きを制御する働きを担えなくなることによる。
【0040】
車外側非発泡層13の基材樹脂として、耐熱性の改善されたポリスチレン系樹脂(耐熱PS系樹脂)を使用する場合は、車内側非発泡層12の場合と同様に、耐熱評価温度以上の軟化温度を有し、発泡シート11の基材樹脂よりも軟化温度が10℃以上低いものが好ましい。
【0041】
使用される耐熱PS系樹脂としては、スチレンまたはその誘導体と他の単量体との共重合体である。耐熱性の改善効果を有し、スチレンまたはその誘導体と重合可能な単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物またはその誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。耐熱性の改善効果を有するスチレンまたはその誘導体と共重合可能な単量体は通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下の範囲で用いられる。
【0042】
また、スチレンまたはスチレン誘導体を重合させる際に、合成ゴムまたは合成ゴムラテックスを添加して重合させたもの、例えば、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)で代表されるスチレン−ブタジエン共重合体の存在下等に、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物等から選ばれる1以上の単量体との共重合体であってもよい。このうちでは、スチレン−無水マレイン酸系共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−メタアクリル酸系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体がその耐熱性改善効果、汎用性、コストの面から好ましい。
【0043】
耐熱性PS系樹脂は単独で用いても良く、あるいは2種類以上組み合わせても良い。また、耐熱性PS系樹脂は他の熱可塑性樹脂とブレンドして用いてもよく、ブレンドする熱可塑性樹脂としては例えば、ポリスチレン、HIPS、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなどの塩化ビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドやそれらの共重合体などがあげられる。このうちでは汎用性、均一分散が可能であること、非発泡層の耐衝撃性改善効果が大きいこと、コストの面等からHIPSが好ましい。HIPSとしては公知のものが使用でき、ゴム成分の含有量は通常1〜15重量%である。
【0044】
次に、本発明における自動車内装材において、発泡シート11に積層される非発泡層12、13の厚みは50〜300μmさらには75〜200μmが好ましい。非発泡層12、13の厚さが50μmより薄い場合には、強度、剛性、耐熱性などが劣り、300μmより厚い場合には、積層シートの成形性が劣る傾向にある。
【0045】
非発泡層12、13を形成する場合、必要に応じて、耐衝撃性改良剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤等を単独又は2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0046】
また、非発泡層12、13を形成する場合、カーボンブラック等の顔料などの着色剤で着色することにより、耐光性を増すことが可能となるので、サンルーフを有する車等には好ましい。
【0047】
非発泡層12、13を構成する基材樹脂に耐衝撃性改良剤を添加することは、非発泡層12、13を発泡シート11に積層して得られた発泡積層シートを加熱し、2次発泡させ、自動車内装材として成形する際のパンチング加工時、及び、積層シートや成形体を輸送する際等において、非発泡層12、13の割れなどを防止するのに有効である。耐衝撃性改良剤としては、基材樹脂に混合することによってその効果を発揮するものであれば特に限定なく使用し得る。耐衝撃性改良剤は、重合による変性でもって熱可塑性樹脂に導入することにより耐衝撃性改良効果を発揮し得る成分であってもよい。例えばHIPSなどのように耐衝撃性改良成分を含むものをPS系樹脂に混合した基材樹脂を非発泡層に使用することにより、非発泡層12、13に耐衝撃性を付与することができる。
【0048】
本発明に係る自動車内装材は、図1、2に例示するように、車外側非発泡層13の表面に接着剤層17を介さずに(図1)、または、接着剤層17を介して(図2)異音防止材14が設けられている。この異音防止材14は、基材樹脂がポリオレフィン系樹脂であってフィルム状物である場合には、異音防止効果を有するので、以下異音防止フィルムと表現することがある。すなわち、この異音防止フィルムは、自動車に装着した場合、車内をクーラー等で急冷した際、また、凹凸のある路面での走行中や急カ−ブでの走行中に発生する異音を防止するのに効果を発揮する。
【0049】
尚、後に説明するように、異音防止材14は、異音防止フィルムを使用する場合の他、不織布を使用する場合があるが、本発明では、いずれの場合も14の番号を付して説明することがある。
異音防止フィルム14の基材樹脂としては、摺動性に優れる結晶性樹脂であるポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂が好ましい。更に好ましくは、コスト、汎用性、フィルム加工の容易さからポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0050】
異音防止フィルム14の基材樹脂として使用されるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン等の単独重合体、エチレンープロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンとメタアクリレート、アクリレート、ブテン等のオレフィンと共重合できる単量体との共重合体、またこれらの混合物等からなるポリエチレン系樹脂、プロピレンの単独重合体、プロピレン酢酸ビニル共重合体、プロピレンとメタアクリレート、アクリレート、ブテン等のオレフィンと共重合できる単量体との共重合体、またはこれらの混合物等からなるポリプロピレン系樹脂が好ましく。これらの中では、摺動性が良好で、しかも材料費が安価である低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン、ホモポリプロピレン、或いはエチレン−プロピレン共重合がさらに好ましい。
【0051】
また、異音防止フィルム14をカーボンブラック等の顔料などの着色剤で着色することにより、耐光性を増すことが可能となるので、サンルーフを有する車等には好ましい。
【0052】
異音防止フィルム14を非発泡層13に積層する方法としては、接着剤層17を介さずに積層する方法(図1)、接着剤層17を介して積層する方法(図2)があげられる。
【0053】
接着剤層17を介して積層する際に、使用される接着剤層としては、少なくとも分子間力、水素結合、共有結合等の化学的な結合で非発泡層13と異音防止フィルムを接着させる働きを有するものが用いられる。
【0054】
接着剤層17の具体例としては、酢酸ビニル系、セルロース系、アクリル系、ポリアミド系、ポリビニルアセテート系等の熱可塑性接着剤、ウレタン系、メラミン系、フェノール系、エポキシ系、アクリル系等の熱硬化性接着剤、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、シリコーンゴム系等のゴム系接着剤、でんぷん、たん白質、天然ゴム等の天然物系接着剤、ホットメルト接着剤があげられる。また、ホットメルト接着剤の具体例としては、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系、スチレン−ブタジエン共重合体系、スチレン−イソプレン共重合体系等などの樹脂を成分とする物があげられる。
【0055】
異音防止フィルム14を非発泡層13に接着剤層17を介さずに積層するには、例えば、次に示すごとき積層フィルムからなる異音防止フィルムを使用するのが好ましい。すなわち、耐熱PS系樹脂を基材とした非発泡層13を用いる場合においては、ポリオレフィン系樹脂フィルム−ポリスチレン系樹脂フィルムからなる2層の積層フィルムを用い、該耐熱PS系樹脂を基材とする非発泡層13に対し、当該2層の積層フィルムにつき、効果的な熱接着が可能なポリスチレン系樹脂フィルム面を車内側に配し、車外側には摺動性に優れるポリオレフィン系樹脂フィルム面を配することにより、耐熱PS系樹脂からなる非発泡層13に該2層の積層フィルムを熱接着するのが好ましい。
【0056】
ポリオレフィン系樹脂フィルムを使用する場合の厚みは10〜100μm、更には20〜50μmであることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みが10μmより薄い場合、異音防止効果が得られないことがある。一方100μmより厚い場合、ポリオレフィン系樹脂フィルムの成形時の歪みによって、内装材に耐熱変形が生じたり、コストが無駄に増加したりすることがある。
【0057】
ポリスチレン系樹脂フィルムを使用する場合の厚みは10〜100μm、更には20〜50μmであることが好ましい。ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みが10μmより薄い場合、非発泡層14との安定した接着性が得られない場合がある。一方、100μmより厚い場合、大量の熱量を与えれば非発泡層13との安定した接着性を得ることが出来るが、大幅な生産性の低下を引き起こしたり、ポリスチレン系樹脂フィルム層の成形時の歪みによって、内装材に耐熱変形が生じる可能性がある。
【0058】
さらに、異音防止材14として、不織布を用いることもできる。この異音防止用として用いる不織布(以下、異音防止用不織布)14は、自動車に装着した場合、車内をクーラー等で急冷した際、また、凹凸のある路面での走行中や急カ−ブでの走行中に発生する異音を防止するのに効果を発揮する。
【0059】
異音防止用不織布14は、原料繊維を、接着剤、溶融繊維、あるいは機械的方法により接合させた布状物であればいずれの種類でも用いられ得る。原料繊維の種類も特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれをも用いることができる。具体的には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル等の合成繊維や、羊毛、木綿等の天然繊維、更には、セルロース等の天然繊維に由来する再生繊維等も使用することができる。これらの中でも合成繊維としてはポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。またこれらの繊維を単独で使用することも、2種以上を組み合わせ使用することもできる。不織布の種類は、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンボンド布、スプレファイバー布、あるいはステッチボンド布等が挙げられ、いずれの不織布も用いることができる。このうち、長繊維フィラメントからなるスパンボンド布、ウォーターパンチ布が好ましい。フィラメントがけん縮性があり、強度が高く、柔らかな風合いを有し、音を吸収するのに都合がよい。
【0060】
異音防止用不織布14は、品質及びコストを考慮すると、10〜50g/m2の目付を有していることが好ましく、更には20〜40g/m2の目付を有していることが好ましい。10g/m2以下の目付けでは、異音防止用不織布14を設けた箇所において、車外側非発泡層13の表面が部分的に露出し有効な異音防止効果が示されないことがある。一方、50g/m2以上の目付けでは、異音防止材14の成形歪みによって、内装材に耐熱変形が生じたり、コストが無駄に増加したりすることがある。
【0061】
異音防止用不織布14を車外側非発泡層13に積層する方法としては車外側非発泡層13の基材樹脂を溶融させ、溶融した車外側非発泡層13を発泡シート11と異音防止用不織布14で圧着し、実質的に接着剤層を使用しないで積層する方法が好ましい。その理由としては、車外側非発泡層13を構成する基材樹脂が適度に異音防止用不織布14に染み込み、アンカー効果によって良好な接着性が得られ、自動車に装着した際、長期間の使用、過酷な環境下での使用においても脱落のない安定な接着性が得られること、一工程で発泡コア層、非発泡層、不織布層が同時に積層されるため、作業の煩雑さが解消されること、また、実質的に接着剤層を用いないため製造コストの増加を抑えることが可能であること、などが挙げられる。
【0062】
さらに、発泡シート11の車外側非発泡層13との接着面が、溶融した車外側非発泡層13の基材樹脂によってダメージを受けにくいこと、車外側非発泡層13と異音防止用不織布14のより強固な接着性が得られるという理由から、溶融した車外側非発泡層13を構成する基材樹脂を異音防止用不織布14に接触させた後、異音防止用不織布14とは反対面を発泡シート11へ圧着一体化する方法が更に好ましい。
【0063】
異音防止用不織布14を自動車内装材用基材に設ける方法として、ホットメルト接着剤層15を介して積層することも可能であるが、過酷な環境下、特に高温下での使用において安定な接着性を得るためには、ホットメルト接着剤層15の接着性および耐熱性の改善が必要であり、製造コストが増加すること、扱いが難しい接着剤層を積層する工程が増えることで作業が煩雑になるなどが考えられる。
【0064】
表皮材16としては、原料繊維を、接着剤、溶融繊維、あるいは機械的方法により接合させた不織布、織布等の布状物であればいずれの種類でも用いられ得る。この内、通常では不織布が良く用いられる。原料繊維の種類も特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれをも用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル等の合成繊維や、羊毛、木綿等の天然繊維、レーヨン等のセルロース等の天然繊維由来の再生繊維等を使用することができる。また、これらを組み合わせて使用することもできる。これら原料繊維の中でも合成繊維としてはポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
【0065】
更に、表皮材としては、上記したごとく織布、不織布、等が挙げられるが成形加工性より不織布が好ましい。不織布の種類として、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンボンド布、スプレファイバー布、あるいはステッチボンド布等が挙げられ、いずれの不織布も用いることができる。
【0066】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。実施例・比較例に用いた樹脂を表1に、異音防止材、表皮材、ホットメルト接着剤層等として使用した物を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
なお、表1に示した樹脂に関する各符号は次の通りである。
変性PPE :変性ポリフェニレンエ−テル樹脂
PS :ポリスチレン樹脂
SMAA共重合体 :メタクリル酸変性ポリスチレン樹脂
HIPS :ハイインパクトポリスチレン樹脂
実施例および比較例で行った評価方法を以下に示す。
(コア層および成形体の厚さ)
1次発泡シート、成形体の幅方向に20ヶ所の厚さを測定し、その測定値の平均値を算出した。
(発泡倍率)
1次発泡シートの密度dfをJIS K 7222に準じて測定し、変性PPE系樹脂の密度dpを JIS K 7112に準じて測定し、次式より求めた。
発泡倍率=dp/df
(独立気泡率)
ASTMD−2859に準じて測定した。(マルチピクノメーター(ベックマン社製)を使用)
(セル径)
一次発泡シートの断面を光学顕微鏡で観察し、20個のセル径を測定し、その測定値の平均値を算出した。
(目付)
1次発泡シートの押し出し方向の5ヶ所より、10cm×10cmの大きさの試験片を切り出し、それらの重量を測定したのち、平均値を算出した。
(接着性引張り剪断試験)
150mm×25mmの試験片を採取し、20℃、60%RHの恒温恒湿状態で48時間養生させた後、引張試験機(島津社製 オートグラフDSS−2000)の掴みに取り付け、23℃恒温槽中、引張速度200mm/minで剪断強さを測定した。(N=5で平均値を算出)
判定の基準としては自動車内装材としての実用性を考慮して、以下の基準を用いた。
◎・・接着性が非常に強固であるため、発泡コア層の材料破壊が生じず、非発泡層が破断するので測定できなかったもの。
○・・10N/25mm以上で且つ、発泡コア層の材料破壊が観察されたもの。
△・・10N/25mm以下で且つ、発泡コア層の材料破壊が観察されたもの。
×・・10N/25mm以下または、発泡コア層の材料破壊が観察されなかったもの。
(成形加熱工程後の発泡積層シート外観目視評価)
○・・発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の発泡セルの破泡(空洞)が認められない。
△・・発泡コア層の発泡セルの破泡(空洞)は認められないが、非発泡層面にφ0.2〜φ2mm程度の小さな気泡が認められる。
×・・発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の発泡セルの破泡(空洞)が認められる。
(耐熱試験)
発泡シートから150mm×25mmの試験片を採取し、室外側を上にして片側短辺端部を固定した状態で、固定した短辺と反対側端部の高さ(h0)を測定した。この状態で100℃±2℃に設定した恒温槽中に24時間保持し、常温に戻した後再度端部の高さ(h1)を測定した。初期の高さと耐熱後の高さの差(h0−h1)より耐熱変形量を求めた。
判定の基準としては自動車内装材としての実用性を配慮して、以下の基準を用いた。
○・・耐熱変形量 ±3.0mm以内
△・・耐熱変形量 −10.0〜−3.0mm、及び3.0〜10.0mm
×・・±10.0mm以上
(実施例1)
PPE樹脂成分40重量%,PS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1部とPS樹脂(B)42.9部とを混合した混合樹脂100重量部に対してiso−ブタンを主成分とする発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15)3.4重量部及びタルク0.32重量部を押出機により混練し、サーキュラーダイスにより押出し、引き取りロールを介して、発泡シートを得た。
【0069】
得られた発泡シートを熱変形温度(125℃)以下である室温(23℃)まで冷却させ、均熱乾燥器(ヤマト製DH62)庫内温度80℃±10℃にて10時間、促進養生させた後、室外側非発泡層をSMAA共重合体樹脂(C)50部とHIPS樹脂(D)50部の混合樹脂を樹脂温度が245℃となるように押出機で溶融・混錬を行い、Tダイを用いてフィルム状に押出しながら、一方より第二層目の異音防止材(E)を繰出し、これら同時に、発泡シート、押出しフィルム及び異音防止材(E)を挟み込む形で圧着・積層し、厚み150μmの室外側非発泡層及び異音防止材を形成した。
【0070】
次に、発泡シート反転させ、室内側非発泡層をPPE系樹脂成分20重量%、PS系樹脂成分80重量%になるようにPPE系樹脂(A)28.6部、PS系樹脂(B)71.4部を混合した混合樹脂を樹脂温度が265℃となるように押出機で溶融・混錬を行い、Tダイを用いてフィルム状に押し出しながら、一方より第二層目のホットメルト接着剤層(G)を繰出し、これら同時に、発泡シート、非発泡層の未積層面に、押出しフィルム及びホットメルト接着剤層を挟み込む形で圧着・積層し、厚さ120μmの室内側非発泡層を形成した。さらに、熱ロールを介して、第三層目である、表皮材(F)を圧着・仮止めを行い、自動車内装材用発泡積層シートを得た。
【0071】
得られた自動車内装材用発泡積層シートから150mm×25mmのサンプルを切り出し、両面非発泡層と発泡コア層との接着性引張り剪断試験、耐熱試験を行った。
【0072】
次に、得られた自動車内装材用発泡積層シートを成形加工時の加熱工程で表面温度155℃まで加熱、その後外観目視した結果、発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の内部に、発泡セルの破泡(空洞)はなく、良好な自動車内装材用発泡積層シートであった。
(実施例2)
実施例1と同じ組成の混合樹脂を用いて、発泡シート形成後、大気中で自然放冷し2週間養生させた後、室外側非発泡層をPPE系樹脂成分20重量%、PS系樹脂成分80重量%になるようにPPE系樹脂(A)28.6部、PS系樹脂(B)71.4部を混合した混合樹脂を樹脂温度が265℃となるように押出機で溶融・混錬を行い、Tダイを用いてフィルム状に押し出しながら、厚み150μmを形成した。上記以外は、実施例1記載の方法により自動車内装材用発泡積層シートを得た。
【0073】
得られた自動車内装材用発泡積層シートから150mm×25mmのサンプルを切り出し、両面非発泡層と発泡コア層との接着性引張り剪断試験、耐熱試験を行った。
【0074】
次に、得られた発泡積層シートを成形加工時の加熱工程で表面温度155℃まで加熱、その後外観目視した結果、発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の内部に、発泡セルの破泡(空洞)はなく、良好な自動車内装材用発泡積層シートであった。
(実施例3)
実施例1と同じ組成の混合樹脂を用いて、発泡シート形成後、大気中で自然放冷し5日間養生させた後、上記以外は、実施例1記載の方法により自動車内装材用発泡積層シートを得た。
【0075】
得られた自動車内装材用発泡積層シートから150mm×25mmのサンプルを切り出し、両面非発泡層と発泡コア層との接着性引張り剪断試験、耐熱試験を行った。
【0076】
次に、得られた発泡積層シートを成形加工時の加熱工程で表面温度155℃まで加熱、その後外観目視した結果、発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の内部に、発泡セルの破泡(空洞)はなく、良好な自動車内装材用発泡積層シートであった。
(実施例4)
実施例1と同じ組成の混合樹脂を用いて、発泡シート形成後、大気中で自然放冷し8時間養生させた後、室外側非発泡層をPPE系樹脂成分20重量%、PS系樹脂成分80重量%になるようにPPE系樹脂(A)28.6部、PS系樹脂(B)71.4部を混合した混合樹脂を樹脂温度が265℃となるように押出機で溶融・混錬を行い、Tダイを用いてフィルム状に押し出しながら、厚み150μmを形成した。上記以外は、実施例1記載の方法により自動車内装材用発泡積層シートを得た。
【0077】
得られた自動車内装材用発泡積層シートから150mm×25mmのサンプルを切り出し、両面非発泡層と発泡コア層との接着性引張り剪断試験、耐熱試験を行った。
【0078】
次に、得られた発泡積層シートを成形加工時の加熱工程で表面温度155℃まで加熱、その後外観目視した結果、発泡コア層の内部に発泡セルの破泡(空洞)は認められなかったが非発泡層面にφ0.2〜φ2mm程度の小さな気泡が認められる自動車内装材用発泡積層シートを得た。
(比較例1)
PPE樹脂成分40重量%,PS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1部とPS樹脂(B)42.9部とを混合した混合樹脂100重量部に対してiso−ブタンを主成分とする発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15)3.4重量部及びタルク0.32重量部を混練し、押出して得られた直後、発泡コア層温度は熱変形温度125℃以上の130℃の状態で、両面に、PPE系樹脂成分20重量%、PS系樹脂成分80重量%になるようにPPE系樹脂(A)28.6部、PS系樹脂(B)71.4部を混合した混合樹脂で構成される非発泡層を形成するに当たり3層の共押出し多層ダイスを用いて発泡積層シートを形成した。
【0079】
次に、発泡積層シートのいずれか一方面にホットメルト接着剤層(G)及び、表皮材(F)を繰出し、表面温度120℃、10m/分の速さに調節された熱ロールを介して圧着、仮貼りを行い、自動車内装材用発泡積層シートを得た。
【0080】
得られた発泡積層シートから150mm×25mmのサンプルを切り出し、両面非発泡層と発泡コア層との接着性引張り剪断試験、耐熱試験を行った。
【0081】
次に、得られた発泡積層シートを成形加工時の加熱工程で表面温度155℃まで加熱、その後外観目視した結果、発泡コア層−非発泡層の界面、及び発泡コア層の内部に、発泡セルの破泡(空洞)が認められ、良好な自動車内装材用発泡積層シートを得ることが出来なかった。さらに、検証した結果、非破泡限界として、発泡積層シートの表面温度が140℃だと解り、季節による気温変動程度の差が発泡積層シートの製造方法によって変わることを発見した。
【0082】
表3に実施例1〜4および比較例1で得られた自動車内装材の評価結果を示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【発明の効果】
本発明の自動車内装材用発泡積層シート及びその製造方法は、押出し発泡シートを形成した後、発泡シートが熱変形温度(HDT)以下まで冷却されたのち、更に好ましくは、一定の時間冷却養生した後、該非発泡層を積層されることで、非発泡層の積層状態が改善され、成形加工時における加熱破泡等の問題が生じない自動車内装材用発泡積層シートが得られ、且つ、耐熱性、軽量性の優れたコスト競争力の高い自動車内装材用発泡積層シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明にかかる自動車内装材の一実施態様を示す要部拡大断面模式説明図である。
【図2】図2は、本発明にかかる自動車内装材の他の一実施態様を示す要部拡大断面模式説明図である。
【符号の説明】
10:自動車内装材用発泡積層シ−ト
11:発泡シート
12:車内側非発泡層
13:車外側非発泡層
14:異音防止材
15:ホットメルト接着剤層
16:表皮材
17:接着剤層
Claims (8)
- 耐熱性樹脂を基材樹脂とする発泡シートの両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層が形成された発泡積層シートにおいて、該発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、該非発泡層を積層することを特徴とする自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。
- 前記発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、更に10時間以上養生した後、非発泡層を積層することを特徴とする請求項1記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。
- 前記発泡シートが熱変形温度(HDT)以下になった後、更に10時間以上促進養生した後、非発泡層を積層することを特徴とする請求項1または2記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。
- 前記発泡シートを大気中で自然放冷し、1週間以上養生した後、非発泡層を積層することを特徴とする請求項1または2記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。
- 発泡コア層を構成する基材樹脂が、変成ポリフェニレンエーテル系樹脂である請求項1〜4記載のいずれか1項記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂で構成される非発泡層の基材樹脂が、変成ポリフェニレンエーテル系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5記載のいずれか1項記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。
- 非発泡層の車内側の基材樹脂が、変成ポリフェニレンエーテル系樹脂からなり、車外側の基材樹脂が耐熱性の改善されたポリスチレン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜6記載のいずれか1項記載の自動車内装材用発泡積層シートの製造方法。
- 請求項1〜7記載のいずれか1項記載方法で得られる自動車内装材用発泡積層シート。
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US7445839B2 (en) | 2003-08-08 | 2008-11-04 | Sekisui Plastics Co., Ltd. | Foam sheet for car interior member, and car interior member |
JP2017178095A (ja) * | 2016-03-30 | 2017-10-05 | 積水化成品工業株式会社 | 内装材 |
-
2002
- 2002-08-12 JP JP2002235137A patent/JP2004001347A/ja active Pending
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