JP3718752B2 - 熱変色性水性ボールペンインキ及びそれを用いたボールペン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱変色性水性ボールペンインキ及びそれを用いたボールペンに関する。
【0002】
【従来の技術】
筆記時のボールの回転により生じる剪断作用で粘性を低下させ、筆記可能に構成する水性ボールペンインキに関しては幾つかの提案が開示されている(特公昭64−8673号公報、特公平7−17872号公報等)。
しかしながら、熱変色性筆跡を与える水性ボールペンについては未だ有効な提案は開示されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、熱変色性マイクロカプセル顔料を含むボールペンインキと、該ボールペンインキを有効に導出させるボールペン機構に関し鋭意追求し、スムーズな筆記感を満足させると共に均質で安定な熱変色性筆跡を持続して形成できる熱変色性ボールペンインキ及びそれを用いたボールペンを提供しようとするものである。
【0004】
従来より、熱変色性マイクロカプセル顔料をワックス等の賦形剤に分散させた固形筆記材は特公昭51−48085号公報等に開示されているが、インキ化してボールペンとして供するには、幾つかの問題を抱えていた。
第1に、主な理由として、筆記時における筆圧によるマイクロカプセルの破壊の問題があった。即ち、高粘性の油性インキとなして油性ボールペン機構より導出させる系において、熱変色性マイクロカプセル顔料の分散インキを適用すると、筆跡濃度は不充分である上、マイクロカプセル顔料自体が筆記時における筆圧で破壊されがちであり、適正な熱変色性筆跡を持続して形成できないことである。
かかる現象は、感圧複写紙、いわゆるノーカーボン紙をボールペンで筆記して破壊することによりボトムシート側に複写できることを考慮すれば容易に理解できることである。
【0005】
近年、揺変性を付与した水性媒体のインキを用いた水性ボールペンが実用化されている。この種のインキは静置時には高粘度であり、かつ筆記時の高剪断時には低粘度になる特徴を有しており、チップ部でのインキ吐出機構は、非剪断減粘性の油性ボールペンインキの系に較べて大きく異なっている。即ち、ボール収容部の内径とボール外径との差が大、即ち間隙が大きく、剪断作用によって粘度低下したインキが毛細管力的な作用によってその間隙を通過し、紙面に転移される。
本発明者は、マイクロカプセル顔料粒子の大きさを前記間隙を通るに十分な所定の粒子範囲に調製することにより、まず間隙の通過を確保し、さらに、前述したマイクロカプセルの破壊劣化の問題に対しては、インキの筆記時の粘度が概略160m.Pa.s以下であれば、該カプセル顔料粒子は筆圧から滑り抜けるように移動して圧力緩和性を有する事を見い出した。インキがより高粘度になるにつれて、インキの吐出性も劣ると同時に、カプセル顔料自体の筆圧からの逃げの程度が減少するため、それに応じてカプセル顔料粒子の破壊が生じる傾向にあることも分かった。
【0006】
更に、鋭意研究の結果、マイクロカプセル顔料の形状として、真円断面の球状体(図1参照)に較べ、表面に窪み(凹部)を有する形状のもの(図2〜5参照)は、同一粘度のインキであっても、カプセル自体の破壊の程度はさらに緩和されるという知見を得た。窪み(凹部)を有するマイクロカプセル顔料は、外力(筆記時に生ずる圧力等)を受けたとしても、その応力を自らの弾性変形により、圧力緩和されることに起因するものと考えられる。事実、この種の熱変色性マイクロカプセル顔料にあっては、温度の変化によって内包物である熱変色性組成物(均質相溶体)の相変化、即ち、液相(発色)と固相(消色)間の可逆的な変化時に、それに応じて内包物の体積膨張率が変化し、同時にカプセル膜が内圧によって変形して追従する現象がみられる。
本発明者は前述した知見をもとに、従来困難とされていた熱変色性マイクロカプセル顔料を着色剤とする水性媒体のボールペンインキを構成し、特定のボールペン機構と組み合わせ適用することにより、熱変色性機能の劣化を全く起こさない均質な筆跡を持続して形成できることに成功した。
【0007】
第2の熱変色性マイクロカプセル顔料に伴う問題は、筆跡濃度である。近時、水性ボールペンにおいて、着色剤として、一般の染、顔料を用いたものに加えて、蛍光顔料や金、銀顔料を用いた水性のボールペンも市販されている。
前記した如き染、顔料系によるものとマイクロカプセル化された熱変色性顔料系を比較した場合の最大の相違点は、顔料粒子自体の呈色濃度に関する。
【0008】
前記熱変色性マイクロカプセル顔料は、内包物としてロイコ染料等の電子供与性呈色性有機化合物と、フェノール性化合物等の電子受容性化合物に加えて、変色温度を調節するために、前記2種の化合物の概略20〜50重量倍程度の極性を有する各種有機媒体化合物が配合される。その結果、本来の濃度を決定するロイコ染料は、既に内包組成物の状態において、概ね20〜50倍程度に希釈されている。
【0009】
マイクロカプセル顔料自体の濃度を高める試みとして、ロイコ染料とそれに対応したフェノール性化合物の比率を増加することもできる。しかしながら、かかる手法による顔料粒子自体の濃度アップは熱変色性機能に関して、消色時の残色を起こすことになり、結果として筆跡のマジック性の欠如等、変色時におけるコントラストの低下をもたらす。
本発明者は、熱変色性マイクロカプセル顔料の固形分濃度と筆跡濃度の関係を鋭意検討した結果、インキ組成物中、マイクロカプセル顔料が5重量%以上、45重量%以下の範囲にあっては、ボールペンとしての筆跡を形成できる。しかしながら、5〜15重量%の系では、インキの吐出性は全く問題ないが、筆跡濃度(筆跡の熱変色性効果を鮮明に視覚させる濃度)が不充分であり、実質的には、15重量%以上を配合しなければ筆跡の濃度を満足させ難く、配合量が多くなるにつれ、高濃度の筆跡を形成できる傾向にあるが、筆記時の剪断減粘性作用が付加されるとしても40重量%を超えるとインキの吐出性は低下する傾向がある。前記したインキの吐出性、筆跡濃度、インキへの剪断減粘性付与等を勘案すると最も好ましい熱変色性マイクロカプセル顔料の固形分濃度は、20重量%以上、40重量%以下であることが分かった。
前記した知見を基に更に検討を進め、これと適正なボールペン機構の組み合わせによって、本発明を完成するに到った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明である熱変色性ボールペンインキについて説明する。
本発明インキは、必須成分として、(イ)電子供与性有機化合物、電子受容性化合物及び変色温度を調節する反応媒体を必須成分とする均質相溶体を外面の少なくとも一部に窪みを有する壁膜で被覆してなり、粒子分布が0.5μm〜20μmの範囲に95体積%以上を占める熱変色性マイクロカプセル顔料、(ロ)剪断減粘性物質、水及び水溶性有機溶剤を含む水性媒体からなり、前記マイクロカプセル顔料が前記水性媒体に分散状態にあることを要件とする。
更には、熱変色性マイクロカプセル顔料の壁膜は、界面重合または界面重縮合法により形成されてなること、熱変色性マイクロカプセル顔料15〜45重量%(固形分)、剪断減粘性樹脂0.1〜0.5重量%、水溶性有機溶剤5〜35重量%を含み、残部が水からなる、粘度が40〜160m.Pa.s(EM型回転粘度計における回転数100rpmでの値)の範囲にあり、剪断減粘性指数0.1〜0.6を満たすこと、等を要件とする。
【0011】
前記におけるインキの剪断減粘性は、剪断応力値(T)及び剪断速度(j)値の如き粘度計による流動学測定から得られる実験的指数方測式(T=Kjn :K及びnは計算された定数である)にあてはめることによって計算されるn値である。n値として、0.1〜0.6好ましくは、0.20〜0.60が有効である。前記範囲外では剪断減粘性による効果が適正でなく、インキ吐出性及び筆跡性能に支障を来す。これと関連して、インキの粘度は、筆記時のボール回転により生成される高剪断速度(具体的には100rpm、25℃)で40〜160m.Pa.S、好ましくは60〜140mPa.Sの範囲であり、160mPa.Sを越えるとインキ吐出性不良を発生する。筆跡のカスレや線割れ、インキのボタ落ち等を発生させない適正範囲は前記した範囲である。
前記物性値のインキを構成することにより、インキ収容管内においては、チキソトロピー性のため、流動し難いが、インキが使用されるに従い、インキの粘度により移動し、ボール収容部内ではインキが高速攪拌されるため、低粘度となり、適正に吐出される。
【0012】
尚、内包物である、前記電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び変色温度調節剤の均質相溶体からなる熱変色性材料は、電子の授受反応により所定温度で発消色するタイプの従来より公知のもの、例えば、特公昭51−44706号、特公昭51−44708号、特公昭52−7764号、特公昭51−35414号、特公平1−29398号公報、特開平7−186546号公報、等に記載のもの、又、本出願人が先に提案した特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報等に記載されている、大きなヒステリシス特性を示して変色する色彩記憶性感温色素を含む熱変色性材料(すなわち、温度変化による着色濃度をプロットした曲線の形状が温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と、逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色するタイプ:低温側変色点と高温側変色点の間の常温域において、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の温度で変化させた様相を記憶保持できる)が有効である。
【0013】
マイクロカプセル化は、従来より公知の界面重合法、界面重縮合法、インサイチュウ重合法、液中硬化被覆法、コアセルベート法等の水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融 解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。本発明で有効なマイクロカプセル顔料5は、内包物を壁膜51で被覆したものが挙げられ、図1〜5に例示するとおりであり、窪み52を有するものであって、これらの形状のものの単一系、又は混在系が有効である。これとは別に、固溶体化した粒状のものであってもよい。尚、マイクロカプセルの表面は、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
水性ボールペン用インキとして、ボールとボール収容部との比較的狭い間隙をインキが円滑に移動するためには、熱変色性マイクロカプセル顔料は、基本的に単核が好ましく、かつ、微小サイズ化が容易で、より粒子サイズが揃ったカプセル化方法が好ましい。
【0014】
かかる点において各種マイクロカプセル化法を検討した結果、コアセルベート法のような水溶液からの相分離法によって得られるマイクロカプセルは、カプセル化材として親水性樹脂を用いる関係上、水媒体中においては、架橋処理をした膜自体でも水膨潤性を持つため、粒子径に占める膜の厚みが大きく効果的な筆跡濃度を出すには不利である。また、水相からのインサイチュー法によるカプセル化としては例えば、尿素−ホルマリン初期縮合物を触媒と共に反応させ、内包物の外側から膜を形成する方法があげられるが、かかるカプセル化方法の欠点は確率的に凝集粒子が発生し易い点にある。反応中に形成された凝集体は再解離することなくインキ中に混入し、最終的にはボールとボール収容部とのスペースに蓄積的にトラップされる結果、筆記不良を招きやすい。スプレードライ法、或いはその他のカプセル化法も同様の問題を起こす傾向が強い。
【0015】
本発明者は、前述した性能を満たす最も好ましいカプセル化方法を検討した結果、基本的に水相と油相の界面で反応し膜壁を構成する界面重合法、界面重縮合法によるカプセル化方法が、粒子の分布が狭く、凝集を起こさないため乳化で設定した粒度をカプセル終了後においても維持しやすい利点がある。
さらには、当該方法によって得られたカプセルの外観形状は少なくとも1以上の窪み(凹部)を有し、全体的に半球状の偏平性外観を備えている。
【0016】
かかる特殊な形状は水性ボールペン用インキとして用いた場合、次の如き有利な点が発揮される。1つには筆記時の圧力を自ら変形することにより圧力緩和し、カプセルの破壊・劣化を著しく低減できること、もう一つの利点は半球的偏平形状のマイクロカプセル顔料は、ボール収容部内径とボール外径との差が、20μmの場合、即ち、片側が10μmの間隙を通過する際、真球状のマイクロカプセル顔料は、その直径が10μmを越えると吐出し難くなる。
本発明において好ましく用いられる半球的偏平形状のマイクロカプセル顔料は、短径方向が5μmであれば長径方向が概略15μmであっても前記間隙からの吐出性は良好である。インキの流れ方向の流線方向に沿ってカプセル顔料が配向しつつ吐出していくものと考えられる。実際には、平均的な粒度を細かくしてボールとボール収容部間の最も狭い間隙をより容易に通過できるような粒子径設定とするが、かかる場合においても偏平形状を有するカプセルは一連の粒子分布を有するカプセル含有インキの吐出に関して、大いに有利に働く。
【0017】
本発明インキ中には、単一の熱変色点を有するマイクロカプセル顔料に限らず、変化を多様化させるため、複数の変色点をもつ顔料や、非熱変色性の一般の染料、顔料等を併用できる。
【0018】
剪断減粘性物質としては、実質的に水に可溶性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウエランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グリコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、、架橋性アクリル酸重合体等を例示でき、単独或いは混合して使用することができる。特にキサンタンガムやサクシノグリカンは、長期間、保存しても物性値が安定しているので好ましい。
【0019】
本発明の熱変色性マイクロカプセル顔料を含む水性ボールインキは、着色剤としての前記顔料の含有量が高いためマイクロカプセル顔料と剪断減粘性樹脂を含まないビヒクル成分のみの状態において、既に粘度が相当高い。このため、剪断減粘性樹脂の配合量は、一般の染料・顔料を用いたインキと異なり当該樹脂の配合量は多くすることができない。即ち、インキ組成物中、0.1〜0.5重量%の範囲が好ましい。最も好ましい範囲は0.10〜0.30重量%である。
【0020】
水溶性有機溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジエチレングリコール、ソルビトール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、等や、トリエタノールアミン、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、尿素、エチレン尿素、チオ尿素等の湿潤剤、その他の保水剤等を単独或いは混合して使用することができる。これらは筆記先端でのインキの乾燥抑制、筆跡の耐水性の付与又は染料の溶解助剤等の目的に応じて選択され、インキ組成中、5乃至35重量%の範囲で用いられる。水は主溶剤として使用する。
【0021】
その他、水性媒体にはインキの流動性の向上や分散安定化のための各種界面活性剤、筆跡の滲み防止や顔料の保護コロイドとしての目的でポリビニルピロリドン、ボリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂、アラビヤゴム等の水溶性樹脂、潤滑剤、保湿剤、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム等の防腐剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、消泡剤等を必要に応じて配合できる。
【0022】
尚、マイクロカプセル顔料の比重は、25℃において一般的に0.95〜1.05の範囲にあるが、ビヒクルとの組み合わせにおいて比重を適宜調整して、保存安定性を高めることができる。通常、マイクロカプセル顔料とビヒクルの比重差が0.05範囲内に調整することが好ましい。
比重を調整する方法には二方法があり、一つは熱変色性機能に影響を及ぼさず、且つ比重の大きい化合物を変色機能を低下させない範囲で添加する方法であり、もう一つの方法は微小カプセルを形成する際の膜剤として比重が1より大きいものを適用する。
【0023】
これらの方法は、微粒子の比重が1より小で水性ビヒクルとの比重差が0.1以上の場合にその差を0.05以下にまで縮小するのに有効である。前記比重差が0.05より大きく0.1未満の程度の場合には、通常の膜剤での微小カプセル化によっても調整可能である。
【0024】
前記比重の大きい化合物としてハロゲン化物、例えば、ハロゲン原子として塩素、臭素、沃素が挙げられるが、好ましくは比重増大効果が大きく、且つ多種類の化合物が存在する臭素が挙げられる。具体的には、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、臭素化フェニルメタクリル酸エステル、臭素化フェニルアクリル酸エステル、テトラクロロビスフェノールA、デカブロモビフェノールエーテル、ジブロモステアリン酸エステル、塩化パラフィン、トリス(2、3−ジブロモプロピル)ホスフェート、ジブロムフェノール、2、3−ジブロモプロパノール、テトラクロロ無水フタル酸、パークロルペンタシクロデカン、テトラブロムブタン、塩素化ポリフェニル等の比重1.2以上のハロゲン置換された芳香族及び脂肪族化合物があげられる。
【0025】
比重調節に用いられる膜剤は内包物の変色機能を阻害することなく膜剤を形成し、且つ比重増大効果を有する主剤及び硬化剤または触媒が用いられる。
【0026】
熱変色性組成物と内包物との比重差が比較的大きく(比重差>0.1)、通常の膜剤では比重調整が困難な場合は、ハロゲン置換された樹脂が好ましく、例えば、臭素化エポキシ樹脂、塩素化エポキシ樹脂、臭素化不飽和ポリエステル樹脂、臭素化アクリル樹脂、臭素化ウレタン樹脂、臭素化スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲン樹脂で通常難燃性樹脂として用いられるものが挙げられる。これらの樹脂の一種又は二種以上が適宜、硬化剤又は触媒と組み合わせて微小カプセルの膜剤として使用される。
【0027】
熱変色性組成物の比重が略1で水性ビヒクルの比重に近似している場合は、前記の含ハロゲン化物又含ハロゲン樹脂の添加は必ずしも必要でなく、通常の膜剤による微調整でよい。
【0028】
次に第2の発明であるボールペンに関して図面について説明する(図6〜11参照)。本発明に適用されるボールペン1は、ボール2を回転自在に抱持したチップを備え、インキ収容部4に収容したインキを導出させて筆記可能に構成されたボールペン1であって、前記インキ収容部に(イ)電子供与性有機化合物、電子受容性化合物及び変色温度を調節する反応媒体を必須成分とする均質相溶体を外面の少なくとも一部に窪みを有する壁膜で被覆してなり、粒子分布が0.5μm〜20μmの範囲に95体積%以上を占める熱変色性マイクロカプセル顔料、(ロ)剪断減粘性物質、水及び水溶性有機溶剤を含む水性媒体からなり、前記マイクロカプセル顔料が前記水性媒体に分散状態にある熱変色性水性ボールペンインキ6が充填されてなる。
更には、インキ収容部4に収容状態にある熱変色性ボールペンインキ6の後端部に接触して、インキ追従体が配されてなること、ボール2を回転自在に抱持するボール収容部3の内径Aとボール2の外径Bとの差が10〜60μmであること、ボール2を回転自在に抱持するボール収容部3の内径Aとボール外径Bとの差が10〜60μmであり、且つボール1が軸方向に20〜100μm移動可能なスペースCを備えてなること、熱変色性水性ボールペンインキ6は、熱変色性マイクロカプセル顔料15〜45重量%(固形分)、剪断減粘性樹脂0.1〜0.5重量%、水溶性有機溶剤5〜35重量%を含み、残部が水で構成されてなり、粘度が40〜160m.Pa.s(EM型回転粘度計における回転数100rpmでの値)の範囲にあり、剪断減粘性指数0.1〜0.6を満たすものである。
前記において、インキ収容部3の内径Aとボールの外径Bとの差が10〜60μm、より好ましくは15〜40μmに設定することにより、スムーズな筆記感を満たすと共に適正濃度の筆跡を与える。又、ボール2の軸方向の移動可能な長さを20〜100μm、好ましくは40〜80μmに設定することにより、適正な筆跡濃度を満足させるための吐出性を満たす。
【0029】
前記したような筆記先端部の構造は、従来より汎用の機構が有効であり、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて、前記インキ収容部4を一体形成させた機構(図6〜図7参照)、或いは、金属材料のドリル等による切削加工により、インキ収容部4を形成し、ボール受け座33と中心孔31と放射状の導出溝32を配する機構(図8〜図9参照)、或いは、バネ体によりボールを前方に付勢させた機構(図10)等を適用できる。
【0030】
インキ追従体7は、ボールペン1を上向き又は横向きにした場合のインキ漏れ等を防ぐためのものであり、前記インキとは不混和性及び不溶性であり、従来より公知のポリブテン等の粘弾性体、シリコーンオイル等をベースとするゲル状の逆流防止体が特に有効であるが、従来より公知の固体栓等であってもよい。
【0031】
ボール2は、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の0.3〜1.2mm径のものが適用できる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例について以下に記載する。尚、実施例の配合中における部とあるは、重量部である。
実施例1
本実施例で使用する熱変色性マイクロカプセル顔料の調製方法を説明する。
6−(エチルイソブチルアミノ)ベンゾフルオラン2部、ビスフェノールA6部、セチルアルコール30部、カプリン酸ステアリル20部からなる熱変色性組成物と耐光性付与剤としてチヌビン326を1部、ついで膜材としてビスフエノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ等量190のエポキシ樹脂15部を均一に加熱溶解し、あらかじめ70℃加温しておいた水性保護コロイド媒体100部中に平均粒径が5μmになるようにホモミキサーで乳化した。ついで、脂肪族変性ポリアミン硬化剤5部を添加し90℃で5時間攪拌を続け、界面重合法によるマイクロカプセル分散液を得た。マイクロカプセルを濃縮化する目的で遠心分離処理を行い、スラリー状の含水ケーキ100部を得た。当該カプセルスラリーの含水率を測定した所38%であった。
【0033】
さらに粒度分布を測定するため遠心沈降式自動粒度分布測定装置(堀場製作所製、CAPA−300)を用いた。粒子径をDとする時、粒子径と占有体積%〔( )内に示す〕の関係は下記の通りであった。
Figure 0003718752
上記において、0.5μm≦D≦20μmの累計98%、平均粒子径4.2μm である。
【0034】
得られたマイクロカプセルを顕微鏡で観察した所、 凹部を有する半球偏平状のカプセルであることを確認した。粒子径が大きくなるにつれて偏平性は大きくなっていた。熱色性マイクロカプセル顔料の熱変色性は、27℃以下でマゼンタ色、32℃以上で無色、両温度間では変色の過渡域であった。
【0035】
前記得られたマイクロカプセルスラリーを着色剤として水性ボールペン用インキを調製した。以下にその配合例を示す。
Figure 0003718752
【0036】
前記インキの粘度をEMD型粘度計にて25℃で測定した結果、1rpmで、1020m.Pa.s、100rpmで84m.Pa.s、の値を示し、剪断減粘指数n0.48であった。
尚、ノプコSW−WET−366は、サンノプコ社製ノニオン系浸透性付与剤、ノプコ8034は、同社の変性シリコーン系消泡剤であり、プロキセルXL−2はI.C.I社製ベンゾチアゾリン系防腐剤である。
【0037】
ボールペンの作製
0.8mmのステンレス鋼ボールを用い、ボール収容部の内径とボール外径との差S(A−B)=20μm、軸方向の移動可能なスペースC=70μmのスペースを配してなる切削型ボールペンチップを用いた。前記熱変色性インキを内径3.3mmのポリプロピレン製パイプに0.8g吸引充填し、樹脂製ホルダーを介して前記ボールペンチップと連結させた。
ついで前記ポリプロピレン製パイプの尾部より、ポリブテンベースの粘弾性を有するインキ追従体(液栓)を充填し、外装ペン軸、キャップ、口金、尾栓を組み込んだ後、遠心処理を行い脱エアー処理をし、熱変色性水性ボールペンを得た。
前記熱変色性水性ボールペンでレポート用紙に筆記したところ、、書き出しから良好なピンク濃度と筆跡が得られた。ついで、連続して筆記を続けたが、インキのぼた落ち、著しい線割れ、かすれ、筆跡のスキップ等の好ましくない現象もなくインキをすべて消費することができた。さらに、筆記時における筆圧によるマイクロカプセルの破壊・劣化を確認するため、前記筆記した紙面上のインキを回収し、顕微鏡にてカプセルの外観を調べた所、カプセルの破壊は全く観察されなかった。
【0038】
筆跡の熱変色性を試験した結果、27℃以下でマゼンタ色、32℃以上で無色の熱変色性を示した。インキ化の原料として用いたマイクロカプセルスラリーと同一の熱変色性を示し、熱変色性の機能が筆記後も維持されていることが確認できた。
尚、別途同一仕様のボールペンを調製し、50℃恒温室にて30日間、正立、倒置、横置き状態で放置した後、筆記テストを行った結果、前記初期テストと同様、良好な結果を得た。
【0039】
実施例2
2−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.5部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部、ステアリン酸ネオペンチル50部からなる熱変色性組成物と耐光性付与剤としてチヌビン326を1部、ついで膜材として芳香族ジイソシアネートとグリーコールと反応して得られたオリゴマー15部を助溶剤30部と共に加温溶解し、あらかじめ70℃加温しておいた水性保護コロイド媒体100部中に平均粒径が2.5μmになるようにホモミキサーで乳化した。
ついで、脂肪族変性ポリアミン硬化剤5部を添加し90℃で5時間攪拌を続け、助溶剤を蒸発除去させて界面重合法によるマイクロカプセル分散液を得た。マイクロカプセルを濃縮化する目的で遠心分離処理を行い、スラリー状の含水ケーキ98部を得た。当該カプセルスラリーの含水率を測定した所32%であった。
【0040】
さらに粒度分布を測定するため遠心沈降式自動粒度分布測定装置(堀場製作所製、CAPA−300)を用いた。粒子径をDとする時、粒子径と占有体積%〔( )内に示す〕の関係は下記の通りであった。
Figure 0003718752
上記0.5μm≦D≦20μmの累計97%、平均粒子径2.7μmであった。
【0041】
得られたマイクロカプセルを顕微鏡で観察したところ、凹部を有する半球偏平状のカプセル(図2〜5参照)であることを確認した。粒子径が大きくなるにつれて偏平性は大きくなっていた。熱色性マイクロカプセル顔料の熱変色性は、14℃以下でブルー色、32℃以上で無色で、両温度間では広いヒステリシス特性を持ち、前記2状態の色が可能であった。前記得られたマイクロカプセルスラリーを着色剤として水性ボールペン用インキを調製した。以下にその配合例を示す。
Figure 0003718752
【0042】
前記インキの粘度をEMD型粘度計にて25℃で測定した結果、1rpmで、1306m.Pa.s、100rpmで122m.Pa.s、剪断減粘指数n0.49であった。
【0043】
ボールペンの作製
0.5mmのステンレス鋼ボールを用い、ボール収容部の内径とボール外径との差S(A−B)=20μm、軸方向の移動可能なスペースC=40μmのスペースを配してなる切削型ボールペンチップを用いた。前記熱変色性インキを内径3.3mmのポリプロピレン製パイプに0.8g吸引充填し、樹脂製ホルダーを介して前記ボールペンチップと連結させた。ついで前記ポリプロピレン製パイプの尾部より、ポリブテンベースの粘弾性を有するインキ追従体(液栓)を充填し、外装ペン軸、キャップ、口金、尾栓を組み込んだ後、遠心処理を行い脱エアー処理をし、熱変色性水性ボールペンを得た。
前記熱変色性水性ボールペンを用いてレポート用紙に筆記したところ、、書き出しから良好なピンク濃度と筆跡が得られた。ついで、連続して筆記を続けたが、インキのぼた落ち、著しい線割れ、かすれ、筆跡のスキップ等の好ましくない現象もなくインキをすべて消費することができた。
【0044】
さらに、筆記時における筆圧によるマイクロカプセルの破壊・劣化を確認するため、前記筆記した紙面上のインキを回収し、顕微鏡にてカプセルの外観を調べた所、カプセルの破壊は全く観察されなかった。
筆跡を熱変色性を試験した結果、14℃以下でブルー色、32℃以上で無色であり、両温度間でのヒステリシス特性についてもインキ化の原料として用いたカプセルスラリーの変色性と同一の変色性を示した。
【0045】
実施例3
実施例1と同一のカプセルスラリー(含水率38%)を用い、インキ化配合における剪断減粘性樹脂の種類をサクシノグルカンに変え、かつ添加量も適切な粘度となるよう変更した。
【0046】
ボールペンの仕様は実施例1と同様の方法に従った。以下にインキの配合例を示す。
Figure 0003718752
【0047】
実施例4
実施例1と同一のカプセルスラリー(含水率38%)を用い、インキ化配合における剪断減粘性樹脂の種類を架橋型アクリル系水溶性樹脂(住友精化製、アクペックHV501〕に変えると共にその重量も変えた。
【0053】
ボールペンの仕様は実施例1と同様の方法に従った。尚以下にインキの配合例を示す。
Figure 0003718752
【0048】
実施例5
実施例2と同一のインキを用い、ボールペンチップ部を切削タイプからパイプの押圧変形タイプ(図6〜図7)方式へ変更してボールペンを作製した。即ち、0.7mmのステンレス鋼ボールを用い、ボール収容部は、パイプ内径とボール外径との差S(A−B)=30μm、軸方向の移動可能なスペースC=25μmのスペースを有するボールペンチップを用いた。
前記熱変色性ボールペンインキを内径3.3mmのポリプロピレン製チューブに0.8g吸引充填し、樹脂製ホルダーを介して前記ボールペチップと連結させた。ついで前記ポリプロピレン製チューブの尾部より、ポリブテンベースの粘弾性を有するインキ追従体(液栓)を充填し、外装ペン軸、キャップ、口金、尾栓を組み込んだ後、遠心処理を行い脱エアー処理をし、熱変色性水性ボールペンを得た。
【0049】
前記熱変色性水性ボールペンを用いてレポート用紙に筆記したところ、書き出しから良好なピンク濃度と筆跡が得られた。ついで、連続して筆記を続けたが、インキのぼた落ち、著しい線割れ、かすれ、筆跡のスキップ等の好ましくない現象もなくインキをすべて消費することができた。さらに、筆記時における筆圧によるマイクロカプセルの破壊・劣化を確認するため、前記筆記した紙面上のインキを回収し、顕微鏡にてカプセルの外観を調べた所、カプセルの破壊は全く観察されなかった。
筆跡を熱変色性を試験した結果、14℃以下でブルー色、32℃以上で無色であり、両温度間でのヒステリシス特性についてもインキ化の原料として用いたカプセルスラリーの変色性と同一の変色性を示した。
【0050】
実施例6
実施例2のマイクロカプセルスラリーを用いて、インキ配合中に一般の蛍光顔料(ピンク色)を配合しカラーからカラーへの変色性を有するインキを調製した。尚、蛍光顔料SW−27は、シンロイヒ社製ピンク色蛍光顔料である。
以下にインキの配合例を示す。
Figure 0003718752
【0051】
上記インキを0.5mmのステンレス鋼ボールを用い、ボール収容部の内径とボールとの差S(A−B)=20μm、軸方向の移動可能なスペースC=40μmのスペースを有する切削型ボールペンチップを先端部に有するボールペンを用いた。
前記熱変色性ボールペンインキを内径3.3mmのポリプロピレン製チューブに0.8g吸引充填し、樹脂製ホルダーを介して前記ボールペチップと連結させた。ついで前記ポリプロピレン製チューブの尾部より、ポリブテンベースの粘弾性を有するインキ追従体(液栓)を充填し、外装ペン軸、キャップ、口金、尾栓を組み込んだ後、遠心処理を行い脱エアー処理をし、熱変色性水性ボールペンを得た。
【0052】
レポート用紙に筆記した所、書き出しから良好なパープル色の筆跡が得られた。ついで、連続して筆記を続けたが、インキのぼた落ち、著しい線割れ、かすれ、筆跡のスキップ等の好ましくない現象もなくインキをすべて消費することができた。さらに、筆記時における筆圧によるマイクロカプセルの破壊・劣化を確認するため、前記筆記した紙面上のインキを回収し、顕微鏡にてカプセルの外観を調べた所、カプセルの破壊は全く観察されなかった。
筆跡を熱変色性を試験した結果、14℃以下でパープル色、32℃以上で蛍光ピンクであり、両温度間でのヒステリシス特性についてもインキ化の原料として用いたカプセルスラリーの変色性と同一の変色性を示した。
【0053】
実施例7
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルフルオラン3部、1,1−ヘキシリデンビスフェノール8部、ステアリン酸n−ブチル30部、パルミチン酸n−ブチル20部、チヌビン328(チバガイギー製、紫外線吸収剤)2部からなる熱変色性組成物とフェノールノボラック系エポキシ樹脂20部、助溶剤50部を加え、70℃にて加温溶解した内包物溶液を水性保護コロイド樹脂媒体中にホモミキサーにて乳化分散した。乳化時の粒径の設定は平均10μmになるようホモミキサーの回転数を調整しながら行った。ついで、水溶性のジアミン化合物を硬化剤として加え、90℃にて8時間攪拌続けカプセル化を完了した。
反応後のカプセル分散液を2倍量の水で希釈し、ついで625メッシュのステンレスメッシュで濾過処理を行った後、遠心分離法にてマイクロカプセルを含水ケーキとして105g単離した。当該ケーキは含水率38%であった。
【0054】
実施例1と同様の方法にてマイクロカプセルの粒度分布を測定した。
Figure 0003718752
上記は0.5μm≦D≦20μmにおいて、累計 97%、平均体積平均粒径12μmであった。
【0055】
得られたマイクロカプセルを顕微鏡で観察した所、凹部を有する半球偏平状のカプセルであることを確認した。
【0056】
熱変色性マイクロカプセル顔料の熱変色性は12℃以下で黒色、17℃以上で無色であった。両温度間では変色の過渡域を示した。得られたマイクロカプセル顔料を用いて、実施例1と同様のインキ配合、及びボールペンの仕様でボールペンを作製した。レポート用紙に筆記した所、書き出しから良好なインキ吐出が観察され、筆跡濃度もまずまずの濃度であった。連続的に丸ループを書き続けた結果、すべて充填したインキを消費することができた。筆跡を50℃の恒温槽に10日放置した後、その変色性を調べた。その結果、熱変色性は12℃以下で黒色、17℃で無色であり、変色過渡域も含め、筆跡の変色機能における劣化は全くなかった。
【0057】
比較例1
実施例1の粒子分布のみを変えるため、乳化時の平均粒径を15μmと設定してマイクロカプセル化した点を除いて、全く実施例1と同様の手順でボールペンを作製した。得られたマイクロカプセルスラリーの粒度分布は下記の通りであった。
Figure 0003718752
上記は0.5μm≦D≦20μmにおいて、累計 81%、平均粒子径16μmであった。
【0058】
筆記試験をした所、書き出しからインキはかすれ気味で、暫く後インキは吐出し始めたが、濃度はきわめて薄く筆跡濃度としては、やや不満足なものであった。インキ0.1gが消費された所でかすれ気味になったため、ボールペンを解体しボール収容部内のインキ、とくにボール近傍のインキを顕微鏡で観察したところ、25〜30μmの単核だが大きい粒子が密集していた。
【0059】
比較例2
実施例1と同一のマイクロカプセルスラリーを使用し、インキ配合における剪断減粘性樹脂の配合量を増加させた。ボールペン仕様は実施例1と同様の方法で作製した。以下にインキの配合例を示す。
Figure 0003718752
【0060】
前記の如くして得た熱変色性水性ボールペンを用いて筆記試験をしたところ、書き出しからインキは全く吐出せず、暫く筆記をつづけても変化はなかった。インキ粘度を測定したところ下記の表に示す通り高粘度になっており、水性ボールに特有の剪断時における低粘度化が不十分なためと考えられる。
【0061】
実施例1〜6、比較例1、2における熱変色性顔料の固形分含有率、平均粒子径、インキ粘度、剪断減粘性、ボール径、クリアランス、筆記試験における評価を表に示す。
【表1】
Figure 0003718752
【0062】
【発明の効果】
本発明は、熱変色性マイクロカプセル顔料を分散させた剪断減粘性の熱変色性インキ及びそれを用いたボールペンであり、スムーズな筆記感を満たし、均質で安定な熱変色性筆跡を持続して与えることができ、新たな軽便な筆記材を提供するものである。熱変色性材料の筆記材への適用として、熱変色性マイクロカプセル顔料をワックス等の賦形剤に分散させた固形筆記材が従来より開示されているが、筆記時の筆圧や磨耗により細幅の筆跡を持続して形成できないし、筆記感もスムーズでなく、画材分野への適用性を備えているとしても筆記具としての実用性は満たしていない。
【0063】
本発明のボールペンは多方面に実用性を有している。
具体的に、本発明の水性による熱変色性ボールペンの応用用途を例示する。
(1)年賀状、クリスマスカード、グリーティングカードなどに熱変色性ボールペンで秘密のメッセージや絵柄を記入したり、又は図柄が変化するように一般のボールペンや印刷絵柄と組み合わせて変化に富んだカード類を作成することができる。
(2)同様に、秘密を要するメモを作成する時に、本発明のボールペンで記入することができる。変色点10℃のような冷却時のみ発色する熱変色性材料を適用すれば、常温では消色状態となっているため、万一の紛失時にも第3者には記載内容を読まれずにすむ利点がある。
(3)本発明の熱変色性水性ボールペンは学習用に用いると特段の効果を示す。即ち、例えば、変色に関し大きなヒステリシス特性を有するものを適用したボールペンで問題集、テスト、ドリル、英単語和訳用に用いれば、一旦、解答や補足事項を熱変色性インキの着色状態で記入して学習したあと、再び復習をしたい場合や記憶を確認したい場合には、一旦、すべての記入事項を熱の印加により消去したうえで、完全にリセットされた状態で、再度問題に取りかかることができる。この操作は繰り返し何回でも行うことができるので、これまでにない有用な材料として学習分野向けの筆記具として利点がある。
(4)通常の筆記具的な使い方で用いることもできる。即ち常温では着色状態を維持しているような変色温度をもつ熱変色性インキ、例えば33℃変色インキを用いれば一般の筆記具のように筆記したあと、その筆跡のカラフルな色変化を楽しむことがこともできる。かかる場合にはカラーから無色に変化するものに加え、カラーからカラーへ変色する2色性変化、或いは異なる変色温度と異なる色の熱変色性カプセルを用いることにより、息を吹きかけたり、手で温めたりして、温度変化に応じた多彩な色変化を楽しむことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロカプセル顔料の一例の外形の模式説明図である。(A)は外観を、(B)は、断面状態を示す。
【図2】マイクロカプセル顔料の他の例の外形の模式説明図である。(A)は外観を、(B)は断面状態を示す。
【図3】マイクロカプセル顔料の他の例の外形の模式説明図である。(A)は外観を、(B)は断面状態を示す。
【図4】マイクロカプセル顔料の他の例の外形の模式説明図である。(A)は外観を、(B)は断面状態を示す。
【図5】マイクロカプセル顔料の他の例の外形の模式説明図である。(A)は外観を、(B)は断面状態を示す。
【図6】本発明ボールペンのチップ部の一実施例の縦断面説明図である。
【図7】図6のX−X線断面図である。
【図8】本発明ボールペンのチップ部の他の例の縦断面説明図である。
【図9】図9のX−X線断面図である。
【図10】本発明ボールペンのチップ部の他の例の縦断面説明図である。
【図11】本発明ボールペンの一実施例の縦断面説明図である。
【符号の説明】
1 ボールペン
2 ボール
3 ボール収容部
31 中心孔
32 導出溝
33 ボール受け座
4 インキ収容部
5 マイクロカプセル顔料
51 壁膜
52 窪み
53 熱変色性組成物
6 熱変色性水性ボールペンインキ
7 インキ追従体
A 内径
B 外径
C スペース

Claims (8)

  1. 必須成分として、(イ)電子供与性有機化合物、電子受容性化合物及び変色温度を調節する反応媒体を必須成分とする均質相溶体を外面の少なくとも一部に窪みを有する壁膜で被覆してなり、粒子分布が0.5μm〜20μmの範囲に95体積%以上を占める熱変色性マイクロカプセル顔料、(ロ)剪断減粘性物質、水及び水溶性有機溶剤を含む水性媒体からなり、前記マイクロカプセル顔料が前記水性媒体に分散状態にある熱変色性水性ボールペンインキ。
  2. 熱変色性マイクロカプセル顔料の壁膜は、界面重合または界面重縮合法により形成されてなる請求項1の熱変色性水性ボールペンインキ。
  3. 熱変色性マイクロカプセル顔料15〜45重量%(固形分)、剪断減粘性樹脂0.1〜0.5重量%、水溶性有機溶剤5〜35重量%を含み、残部が水からなる、粘度が40〜160m.Pa.s(EM型回転粘度計における回転数100rpmでの値)の範囲にあり、剪断減粘性指数0.1〜0.6を満たす、請求項1又は2の熱変色性水性ボールペンインキ。
  4. ボールを回転自在に抱持したチップを備え、インキ収容部に収容したインキを導出させて筆記可能に構成されたボールペンにおいて、前記インキ収容部に(イ)電子供与性有機化合物、電子受容性化合物及び変色温度を調節する反応媒体を必須成分とする均質相溶体を外面の少なくとも一部に窪みを有する壁膜で被覆してなり、粒子分布が0.5μm〜20μmの範囲に95体積%以上を占める熱変色性マイクロカプセル顔料、(ロ)剪断減粘性物質、水及び水溶性有機溶剤を含む水性媒体からなり、前記マイクロカプセル顔料が前記水性媒体に分散状態にある熱変色性水性ボールペンインキが充填されてなることを特徴とするボールペン。
  5. インキ収容部に収容状態にある熱変色性ボールペンインキの後端部に接触して、インキ追従体が配されてなる請求項4のボールペン。
  6. ボールを回転自在に抱持するボール収容部の内径とボール外径との差が10〜60μmである請求項4又は5のボールペン。
  7. ボールを回転自在に抱持するボール収容部の内径とボール外径との差が10〜60μmであり、且つボールが軸方向に20〜100μm移動可能なスペースを備えてなる請求項6のボールペン。
  8. 熱変色性水性ボールペンインキは、熱変色性マイクロカプセル顔料15〜45重量%(固形分)、剪断減粘性樹脂0.1〜0.5重量%、水溶性有機溶剤5〜35重量%を含み、残部が水で構成されてなり、粘度が40〜160m.Pa.s(EM型回転粘度計における回転数100rpmでの値)の範囲にあり、剪断減粘性指数0.1〜0.6を満たす、請求項4のボールペン。
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