JP2017095582A - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン - Google Patents
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Abstract
Description
特に、キャップを有しない出没式ボールペンにおいては、ペン先下向き状態で保管した際にインキ滴がペン先先端に溜まる、所謂、垂れ下がりを生じ易いため、収容するインキの粘度を調整することで抑制している。収容されるインキが比較的高粘度である場合、ペン先からのインキの垂れ下がりをある程度抑制できるものの、ドライアップ性能の悪化や、筆跡に線割れを生じる等、筆記性能を悪化する虞がある。
これに対して、前記筆記性能を満足するために低粘度のインキを用いた場合、筆記時に紙繊維等がボールと小口の間に挟みこんだりボール押圧状態で陳列した際や、落下等によりチップ先端が傷付いたり変形することでインキ流通路が広がってしまった際に、インキの垂れ下がりやボタ落ちを生じることがある(例えば、特許文献1乃至2参照)。
そこでインキ中に樹脂エマルジョンを添加することで、筆記性能を維持したままインキの垂れ下がりやボタ落ちを抑制する技術が見出され開示されている(特許文献3参照)。
しかしながら、ボール径が小さいボールペンにおいては、ペン先の露出面積が小さく、インキ流通路が狭いため、強固な塗膜が形成されることで、インキ吐出が阻害されて筆跡にカスレを生じ易いものであった。
更に、前記樹脂粒子がアクリル系樹脂粒子であること、前記樹脂粒子がインキ組成物全量中0.1〜5重量%の範囲で添加されることを要件とする。
更には、前記いずれかのボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンを要件とし、そのペン先のボール径が0.28〜0.7mmであること、前記ボールペンが出没式形態であることを要件とする。
そのため、水媒体中で溶解することなく二次粒子として分散され、前記平均径にある略球状の樹脂粒子であればよく、材質としては例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等、汎用のものが適用できる。特にアクリル樹脂においては比重が低いため、二次粒子としてもインキ中での分散安定性に優れている。
これにより、インキ粘度に左右されることなくインキの垂れ下がりが抑制でき、特に、予期せずインキ流通路が広がった場合であっても、前記二次粒子状の球状樹脂がインキ流通路を塞いでインキの垂れ下がりやボタ落ちを抑制することが可能となる。また、ペン先で塗膜を形成することがないため、筆記時には、インキ流通路を塞いでいる二次粒子が凝集状態から容易に分離して一次粒子となるため、筆記初期から筆跡カスレ等を生じることなく確実に筆記できるものとなる。
また、二次粒子の粒径が一次粒子の粒径の1.2倍より小さい場合、単粒子として得られる効果とほぼ同等であり、2.5倍より大きいと凝集数が多いため筆記時にスムーズな分離ができず、小径ボールでのインキ吐出を阻害する虞がある。
尚、一次粒子及び二次粒子の平均粒子径は、市販の粒子径測定装置を用いて測定され、体積基準粒径分布におけるメジアン径で表される。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、更には熱変色性組成物、光変色性組成物、香料等を直接又はマイクロカプセル化したカプセル顔料等を例示できる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
更に、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている比較的大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示すものや、特開2006−137886号公報、特開2006−188660号公報、特開2008−45062号公報、特開2008−280523号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度以上の高温域での消色状態が、特定温度域で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させ加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
更に、アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、α−トコフェロール、カテキン類、合成ポリフェノール、コウジ酸、アルキルヒドロキシルアミン、オキシム誘導体、α−グルコシルルチン、α−リポ酸、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜硫酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素等を添加して化学的に気泡を除去することもできる。
また、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピペリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
更に、潤滑剤を添加することができ、例えば、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、β−アラニン型界面活性剤、N−アシルアミノ酸、N−アシルメチルタウリン、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、α−リポ酸、N−アシル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
更に、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を用いることもできる。
インキの剪断減粘性とは静止状態あるいは応力の低い時は高粘度で流動し難い性質を有し、応力が増大すると低粘度化して良流動性を示すレオロジー特性を言うものであり、チクソトロピー性あるいは擬似可塑性とも呼ばれる液性を意味している。
筆記先端部となるボールペンチップは、例えば、金属を切削加工して内部にボール受け座とインキ導出部を形成したもの、金属製パイプの先端近傍の内面に複数の内方突出部を外面からの押圧変形により設け、前記内方突出部の相互間に、中心部から径方向外方に放射状に延びるインキ流出間隙を形成したもの等を適用でき、特に押圧変形によるチップは、ボール後端との接触面積が比較的小であり、低筆記圧でのスムーズな筆記感を与えることができる。
前記ボールペンチップに抱持されるボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の外径0.1〜2.0mm、好ましくは0.2〜1.2mm、より好ましくは0.28〜0.7mmのボールが有効である。
尚、前記ボールペンチップには、チップ内にボールの後端を前方に弾発する弾発部材を配して、非筆記時にはチップ先端の内縁にボールを押圧させて密接状態とし、筆記時には筆圧によりボールを後退させてインキを流出可能に構成することもでき、不使用時のインキ漏れを抑制できる。
前記弾発部材は、金属細線のスプリング、前記スプリングの一端にストレート部(ロッド部)を備えたもの、線状プラスチック加工体等を例示でき、5〜40gの弾発力により、押圧可能に構成して適用される。
前記軸筒にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記軸筒とチップを連結してもよい。
前記軸筒内に収容されるインキ組成物は、インキ組成物が低粘度である場合は軸筒前部にインキ保留部材を装着し、軸筒内に直接インキ組成物を収容する方法と、多孔質体或いは繊維加工体に前記インキ組成物を含浸させて収容する方法が挙げられる。
尚、前記軸筒は、ボールペン用レフィルの形態として、前記レフィルを外軸内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、外軸後端部や外軸側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、外軸に回転部(後軸等)を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
尚、前記出没式ボールペンは、外軸内に一本のボールペンレフィルを収容したもの以外に、複数のボールペンレフィルを収容してなる複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。また、前記ボールペンレフィルを構成するインキ収容管は樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
以下の表に実施例及び比較例のボールペン用水性インキの組成と粘度を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
各実施例、比較例に用いた樹脂粒子(一次粒子及び二次粒子)の平均粒子径は、動的光散乱法を用いる粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、ナノフレックス)を用いて測定し、体積基準によるメジアン径を求めることで得られた値である。また、インキ粘度は、20℃でELD型又はEMD型回転粘度計〔東京計器(株)製〕を用いて、1rpmで測定した。
(1)住友化学工業(株)製、商品名:アシッドブルーPG
(2)アイゼン保土谷(株)製、商品名:フロキシン
(3)冨士色素(株)製、商品名:フジSPブラック8922(固形分:20%)
(4)(イ)成分として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン8.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T1:−14℃、T2:−6℃、T3:48℃、T4:60℃、ΔH:64℃、平均粒子径:2.3μm、青色から無色に色変化する)
(5)綜研化学(株)製、商品名:MP−1000
(6)積水化成品工業(株)製、商品名:テクポリマーSSX−101
(7)東芝シリコーン(株)製、商品名:トスパール120
(8)三井化学(株)製、商品名:ケミパールW401
(9)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(10)アルカリ増粘型アクリルエマルション、ローム&ハースジャパン社製、商品名:プライマルASE−60
各実施例及び比較例の配合量で増粘剤を除く各原料を混合し、20℃でディスパーにて400rpm、1時間攪拌した後、増粘剤を含むものはそれを加えて更に1時間攪拌することでボールペンインキ組成物を得た。
尚、各樹脂粒子において、表1における一次粒子は直接測定装置により計測した測定値であり、二次粒子(一次粒子より大きいもの)は、水媒体中で所望の粒子径になるようにディスパーにて撹拌調整させた後に計測した測定値である。
ボールペンレフィルは、先端部にボールを回転可能に抱持したパイプ式ボールペンチップ(ボールを前方に弾発するボール押しバネを収容する)と、該ボールペンチップが前部に固着された接続部材と、該接続部材が先端開口部に固着され、且つ、内部にインキ及びインキ逆流防止体が収容されたインキ収容管と、該インキ収容管の後端開口部に固着された尾栓からなる。尚、前記インキ逆流防止体は、基油としてポリブテン、増粘剤として脂肪酸アマイドを用いて混練したインキ逆流防止体である。
尚、前記ボールペンレフィルには、直径0.3mmと0.7mmの二種類の外径のボールを用いた。
後方外面にクリップを備えた軸筒の内部に、前記各ボールペンレフィルをバネ(コイルスプリング)により後方付勢状態で収容することで各二種類の試料ボールペンを得た。前記ボールペンは、軸筒の後端部(ノック操作部)を前方へノック操作することにより、軸筒の先端孔よりボールペンチップが外部に突出する出没式形態である。
垂れ下がり試験A
各ボールペンを用いて、ボールペンチップを軸筒から露出させてチップを下向きで保持し、温度20℃、相対湿度90%の雰囲気下に20時間放置した後、チップ先端の外観を目視で観察した。
垂れ下がり試験B
各ボールペンのボールペンチップ先端に小傷を付けた後、温度20℃、相対湿度60%の雰囲気下に20時間放置し、チップ先端の外観を目視で観察した。
筆記試験
筆記可能であることを確認した各ボールペンを、2000rpmで10分間、遠心処理した後、JIS P3201筆記用紙Aに手書きで直線を筆記して筆跡の状態を目視により観察した。
インキ安定性試験
調製した各インキ5gをサンプル瓶に移し取り蓋をした後、20℃で30日間放置した。その後、インキの状態を目視により確認した。
垂れ下がり試験A、B
○:インキの垂れ下がりは認められない。
△:チップ先端にインキがにじみ出る。
×:チップ先端にインキ滴が認められる。
筆記試験
○:一定の濃度及び線幅の筆跡が得られる。
△:筆跡にカスレが生じる。
×:筆記不能。
インキ安定性試験
○:均一な状態のままで変化なし。
△:沈殿物が見られる。
×:二層に分離する。
Claims (6)
- 水と、着色剤と、樹脂粒子とから少なくともなる水性インキ組成物であって、
前記樹脂粒子が略均一粒径を有する球状粒子群であり、その一次粒子の平均径が0.1〜2μmの範囲にあり、インキ中での平均径が前記一次粒子の平均径の1.2〜2.5倍の範囲に分散された二次粒子状態であるボールペン用水性インキ組成物。 - 前記樹脂粒子がアクリル系樹脂粒子である請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記樹脂粒子がインキ組成物全量中0.1〜5重量%の範囲で添加される請求項1又は2に記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記請求項1乃至3のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
- ペン先のボール径が0.28〜0.7mmである請求項4記載のボールペン。
- 出没式形態である請求項4又は5に記載のボールペン。
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