JP3713619B2 - 光情報記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にDVD−R等の短波長領域のレーザー光により記録及び再生が可能なヒートモードによる追記型の光情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
文字、図形等の画像や映像あるいは音声等のデータを記録し、再生する手段としては、波長770〜830nmのレーザー光に対応した記録及び再生が可能な記録材料として例えばペンタメチン系シアニン色素を含有する記録層を有する光ディスクがCD−Rとして知られているが、このレーザー光より短波長の例えば620〜690nmの赤色レーザー光により高密度記録及び再生が可能なDVD−R(デジタル・ビデオ・ディスク−レコーダブル又はデジタルバーサタイル・ディスク−レコーダブル)等がCD−Rに代わるこれからの時代を担うメディア(光情報記録媒体)として用いられるようになってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
DVD−Rにおいては、半導体レーザーの発振波長がそのレーザーの温度により変化する、いわゆる温度依存性があるため、高速記録をするために高出力の発振を行なったり、そのレーザーの駆動源(ドライブ)の装置をコンパクト化することにより熱が逃げにくい構造にすると、レーザーの温度が上昇することによりその発振波長が長波長化してしまうということが起こる。
有機色素材料を用いた記録層を使用しているDVD−Rメディアの場合には、その記録層はその有機色素材料の特性から発振波長の変化の影響を受け易く、特に上記のような半導体レーザーの長波長化に対しては、光吸収量の減少のため感度が悪くなってしまうという問題がある。
実際には、現状規格では半導体レーザーの発振波長は635〜650nmであるが、上記の理由による半導体レーザーの長波長化のため、660nm以上になることがある。
ところが、DVD−Rメディアの記録層の有機色素材料として従来よく使用されているシアニン色素材料は、半導体レーザーの635〜650nmの波長領域に適度な吸収を持っており、その中でも下記一般式〔化2〕で表されるトリメチン系シアニン色素が好ましいことは本件出願人の出願(特願平11−341611号公報)で明らかにし、その合成法も比較的容易であってその色素の製品も得られ易いが、半導体レーザーの660nm以上の波長領域に適度な吸収を持つものとしてのトリメチン系シアニン色素は知られていない。
【0004】
【化2】
〔ただし、R1 、R2 、X- は後述の一般式〔化1〕におけるものと同じものを表す。〕
【0005】
この問題を解決するために、従来の635〜650nmの半導体レーザーの波長領域に適度な吸収を持つシアニン色素をより長波長側に吸収を持つように改質しようとして、例えば上記の一般式〔化2〕で表されるトリメチン系シアニン色素のベンゾインドレニン骨格やメチン鎖にその長波長化のための置換基を導入することは、その置換基の種類の選定や長波長化の程度、さらにはその合成方法の点で極めて難しい。また、メチン基を長くするという方法では、例えば上記一般式〔化2〕のnを1から2に変えるだけで、約100nmも長波長側に適度な吸収がシフトしてしまい、700nm以上に適度な吸収を有するものは得られるが、これではDVD−Rの記録層用色素としては適さなくなってしまうという問題がある。
これらのことから、半導体レーザーの660nm以上の波長領域に適度な吸収を持った従来容易には得られなかったトリメチン系シアニン色素材料の出現が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、特にDVDの記録用の660nm以上の短波長レーザー光に対して適度な吸収が得られることにより十分な光吸収及び発熱分解を起こすことができる、すなわち感度が良好であるトリメチン系シアニン色素を含有する光干渉層を有する光情報記録媒体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特にDVDの記録用の660nm以上の短波長レーザー光に対しては、特殊なトリメチン系シアニン色素を色素層に有する光干渉層を備えた光情報記録媒体が上記の目的を達成することを見い出し、本発明をするに至った。
したがって、本発明は、(1)、基板上に色素層を含む光干渉層を有する光情報記録媒体において、該色素層が下記一般式〔化1〕で表わされるトリメチン系シアニン色素を含有し、該光干渉層が660nm〜680nmに適度の吸収を有することにより660nm〜680nmの波長のレーザー光による記録に適しかつ波長620nm〜690nm波長領域から選ばれたレーザー光により再生が可能である光情報記録媒体を提供するものである。
【化1】
〔ただし、R1 、R2 は置換又は非置換のアルキル基、アルコキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボキシル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルヒドロキシル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキルアミド基、アルキルアミノ基、アルキルスルホンアミド基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、水酸基、ハロゲン原子、アルキルアルコキシル基、アルキルスルホニル基、金属イオン若しくはアルキル基と結合したアルキルカルボキシル基若しくはアルキルスルホニル基、フェニル基、ベンジル基、アルキルフェニル基及びフェノキシアルキル基(ベンゼン環部分及び/又はアルキル部分の水素原子をアルキル基、カルボキシル基水酸基、ハロゲン原子等の金属イオン以外の置換基で置換してもよく、前記フェニル基、ベンジル基、アルキルフェニル基の該当部分についても同様である。)の群から選択される置換基を表わし、同種でも異種でもよく、X- はハロゲン原子、PF6 - 、過塩素酸、ホウフッ化水素酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、SbF6 - 、トルエンスルホン酸、アルキルスルホン酸、ベンゼンカルボン酸、アルキルカルボン酸、トリフルオロメチルカルボン酸、過ヨウ素酸、SCN- 、テトラフェニルホウ酸及びタングステン酸の陰イオンの群のなかから選択される陰イオンを表わす。〕
また、本発明は、(2)、R 1 、R 2 が同種かつ炭素数5以下の低級アルキル基である上記(1)の光情報記録媒体、(3)、低級アルキル基がノルマル低級アルキル基である請求項2に記載の光情報記録媒体、(4)、X - が過塩素酸の陰イオンである上記(1)ないし(3)のいずれかの光情報記録媒体、(5)、色素層は上記一般式〔化1〕のトリメチン系シアニン色素のほかにその他の色素を含有し、かつ全色素中該一般式〔化1〕のトリメチン系シアニン色素を少なくとも50重量%含有する上記(1)ないし(4)のいずれかの光情報記録媒体、(6)、光干渉層は光安定化剤を含有する上記(1)ないし(5)のいずれかの光情報記録媒体を提供するものである。
【0008】
本発明において、光干渉層は660nmよりは短くない波長(660nm以上)、好ましくは660nm〜680nmの波長領域のレーザー光により記録が可能であり、620nm〜690nmの波長領域のレーザー光により再生が可能になるように形成されるが、これはこの光干渉層をDVD−R用に使用可能にすることにある。
上記光干渉層とは、有機色素材料からなる色素層その他の有機材料あるいは無機材料からなる層から構成され、レーザー照射でピット形成可能な単一層又は複数層の色素層を含む記録層や、この記録層以外に光情報記録媒体の光学的物性を調整する目的で屈折率、膜厚を調整した例えば樹脂材料からなるエンハンス層、さらには基板と色素層、色素層が複数の場合にはその間に設ける中間層等も含まれ、これらを総称したものである。
【0009】
上記の色素層には上記一般式〔化1〕で表わされるトリメチン系シアニン色素を含有させる。このトリメチン系シアニン色素は上記一般式〔化2〕で表されるトリメチン系シアニン色素とはそれぞれの化合物の分子構造においてベンゼン環のインドレニンへの縮合位置が異なるだけであって、類似した構造でありながら、吸収を長波長側にシフトすることができる。その原因については、上記一般式〔化1〕で表わされるトリメチン系シアニン色素の方が上記一般式〔化2〕で表されるトリメチン系シアニン色素に比べて、ベンゼン環のインドレニンへの縮合位置の相違により分子内電子の分布が広がり易く、すなわち低エネルギー化し易く、より長波長側のレーザー光を吸収し易くなるようなシフトが起こるものと考えられる。
ベンゼンのインドレニンへの縮合位置が上記一般式〔化1〕で表わされるトリメチン系シアニン色素と同じであるペンタメチン系シアニン色素はCD−Rの記録層に用いる色素として知られており(特願平4−201482号公報)、また、上記一般式〔化1〕で表わされるトリメチン系シアニン色素であって、R1 、R2 がC2 H5 (エチル基)、X- がClO4 - である化合物も多数のペンタメチン系シアニン色素やその他のトリメチン系シアニン色素とともに例示され、それぞれのシアニン色素カチオンとビスファニレンジチオールの銅錯体のアニオンとにより形成されたイオン結合体を含有する記録層を設けてその耐光性を向上させた光記録媒体も知られている(特開平4−25493号公報)が、前者についてはいうまでもなく、後者においても上記の一般式〔化1〕で表わされるトリメチン系シアニン色素をイオン結合体としてではなく、単独で使用することは示されていないのみか、660nm以上の波長領域のレーザー光に対する吸収性のことは全く触れられておらず、その実施例もない。
このように、本発明は、660nm以上の波長領域のレーザー光に対する吸収性の特に優れる上記一般式〔化1〕で表される化合物をDVDの干渉層の色素層の色素材料に用いた点、すなわちレーザー光の波長、色素の構造及び用途を選択して組み合わせた点に特徴がある。
【0010】
本発明における光干渉層には、上記一般式〔化1〕のトリメチン系シアニン色素を除くその他の色素の1種又は複数種を同一の色素層あるいは他の色素層を設けて併用してもよく、全色素中上記一般式〔化1〕のトリメチン系シアニン色素を少なくとも50重量%、すなわち50重量%以上使用すると、記録の感度が向上する。
上記のその他の色素としては、例えば下記一般式〔化3〕で示されるトリメチン系シアニン色素を挙げることができる。
【化3】
〔ただし、Aは下記一般式〔化4〕ないし〔化6〕のいずれかを表わし、
【化4】
、
【化5】
、
【化6】
、
A’は下記一般式〔化7〕ないし〔化9〕のいずれかを表わし、
【化7】
、
【化8】
、
【化9】
、
AとA’は同種であっても異種であってもよく(ただし、D1 、D2 はそれぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシル基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボキシル基、アルキルヒドロキシル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキルアミド基、アルキルアミノ基、アルキルスルホンアミド基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルスルホニル基、フェニル基、シアノ基、エステル基、ニトロ基、アシル基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、フェニルアゾ基、ピリジノアゾ基、アルキルカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アミノ基、アルキルスルホン基、チオシアノ基、メルカプト基、クロロスルホン基、アルキルアゾメチン基、アルキルアミノスルホン基、ビニル基及びスルホン基の群のなかから選択される置換基を表わし、同種であっても異種であってもよく、p、qは置換基の数であってそれぞれ1又は複数の整数を表わす。)、R3 、R4 は置換又は非置換のアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボキシル基、アルコキシル基、アルキルヒドロキシル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキルアミド基、アルキルアミノ基、アルキルスルホンアミド基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、水酸基、ハロゲン原子、アルキルアルコキシル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルスルホニル基、金属イオン若しくはアルキル基と結合したアルキルカルボキシル基若しくはアルキルスルホリニル基、フェニル基、ベンジル基、アルキルフェニル基及びフェノキシアルキル基(ベンゼン環部分及び/又はアルキル部分の水素原子をアルキル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン原子等の金属イオン以外の置換基で置換してもよく、前記フェニル基、ベンジル基、アルキルフェニル基の該当部分についても同様である。)の群から選択される置換基を表わし、同種でも異種でもよく、X- は上記一般式〔化1〕のものと同じものを表わす。〕
この一般式〔化3〕においてAが上記一般式〔化4〕〜〔化6〕の一般式から任意に選択され、A’が上記一般式〔化7〕〜〔化9〕の一般式から任意に選択され、両者のその選択したそれぞれの個々の全ての組み合わせの化合物が挙げられる。例えば一般式〔化4〕と一般式〔化7〕〜〔化9〕のそれぞれとの組み合わせが挙げられるが、その他の一般式〔化5〕、〔化6〕のそれぞれについても同様である。A、A’の置換基(D1 )p、(D2 )qのp、qは少なくとも1であるが、複数の整数、すなわち2以上の整数である。
なお、色素の合成法としては、The Chemistry of Synthetic Dyes Vol14に記載されている方法を利用できる。
【0011】
上記一般式〔化1〕のトリメチン系シアニン色素あるいはこれと他の色素は、これらの色素のみで用いてもよいが、耐光性を向上させるために、光安定化剤を色素層に含有させ、あるいは他の層に含有させて用いてもよい。
このような光安定化剤としては金属錯体が挙げられ、この金属錯体としては、下記一般式〔化10〕で表わされる化合物を挙げることができる。
【0012】
【化10】
〔ただし、R1 、R2 はそれぞれハロゲン原子、フェニル基、アルキル基、シアノ基、チオアルキル基、アルキルスルホニル基、r、sは1〜4の整数を表わし、R4 はアルキル基、YはN又はP、MはCu、Co又はNi等の金属を表わす。〕
【0013】
上記一般式〔化10〕に属する具体的化合物としては、下記〔化11〕、〔化12〕の化合物を挙げることができる。
【0014】
【化11】
【0015】
【化12】
【0016】
また、光安定化剤としてはアミニウム系及びジイモニウム系安定化剤を挙げることができる。具体的化合物としては、下記〔化13〕、〔化14〕で表される化合物を挙げることができる。
これらの光安定化剤は少なくとも1種、すなわち単独又は複数併用することができる。
【0017】
【化13】
【0018】
【化14】
【0019】
本発明の光情報記録媒体を製造するには、上記一般式〔化1〕で示されるシアニン色素、あるいはこれと上記一般式〔化3〕で示されるシアニン色素その他の色素を溶解した混合色素(前者を50重量%以上混合することが好ましい)、あるいはこれらのそれぞれに上記一般式〔化12〕で示される金属錯体その他の光安定化剤を溶解した溶液を調製し、透光性の基板に塗布する。これらの色素溶液にはクロロホルム、ジクロロエタン、フッ素化アルコール等のフッ素系溶剤、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メタノール、トルエン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、ジオキサン等を用いることができる。この場合のシアニン色素の混合割合は1重量%〜10重量%が好ましい。
また、本発明に用いられる基板には、ガラスや、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂等のプラスチックスが例示される。この基板にはトラック溝あるいはピットが形成されていてもよく、また、アドレス信号に必要な信号を有するものでもよい。
また、上記シアニン色素溶液を基板に塗布するにはスピンコート法を用いることが好ましい。
また、本発明における光干渉層には上記の金属錯体以外の一重項酸素クエンチャー、光吸収剤、ラジカルスカベンジャー(捕捉剤)等の他の化合物を含んでもよい。
【0020】
上記の光干渉層のほかに反射層を設けてもよく、また、その反射層の上に保護層、さらには基板面(レーザー光の入射側)に保護層を有する場合でよい。
反射層としては、蒸着、スパッタリング等により形成したAu、Al、Ag、Cu、Pt、これらの各々その他の合金、さらにはこれら以外の微量成分が添加された合金等の金属膜等の高反射率材料膜が挙げられ、保護層としては光情報記録媒体の保護と耐候性の向上等の目的で紫外線硬化型樹脂等の放射線硬化型樹脂の溶液をスピンコート法等により塗布し、放射線硬化させた塗布層が挙げられる。
【0021】
このようにして基板の上に色素層を含む光干渉層、反射層を設け、さらには保護層などが設けられた光ディスクが得られる。その光干渉層を少なくとも有した他の同様な構成あるいは別の構成の光ディスクを貼り合わせたり、あるいは基板そのものを対向させて貼り合わせたりしてもよい。
この貼り合わせのための材料、方法としては、紫外線硬化樹脂、カチオン性硬化樹脂、両面粘着シート、ホットメルト法、スピンコート法、ディスペンス法(押し出し法)、スクリーン印刷法、ロールコート方式等が用いられる。
【0022】
【発明の実施の形態】
詳細は以下の実施例により説明するが、トラックピッチ長が0.74μm(0.80μmでもよい)で、wobble信号のみを持つ(プレピット信号も併せ持ってもよい)ポリカーボネート基板を用い、光干渉層の色素層を、上記一般式〔化1〕に属する化合物であって、▲1▼ R1 、R2 が同種かつ炭素数5以下(少なくとも炭素数5)の低級アルキル基、好ましくはノルマル低級アルキル基の色素、その中で、▲2▼ 特にX- が過塩素酸(ClO4 - )の陰イオンである色素のそれぞれのインドレニン系のトリメチン系シアニン色素(1,1’−ジアルキル−3,3,3’,3’−テトラメチル−6,7,6’,7’−ジベンゾインドカーボシアニンパークロレートのようなインドレニン骨格の6,7,6’,7’にベンゼン環を縮合したインドレニン系のトリメチン系シアニン色素)について、それぞれの色素の溶液、その各色素と金属錯体系、ジイモニウム系光安定化剤を加えた溶液、また、これらにさらに、▲3▼ 上記一般式〔化4〕と一般式〔化8〕の組み合わせからなる上記一般式〔化3〕の色素、その中で、▲4▼ 特にD1 、D2 が共に水素である色素、▲5▼ R3 、R4 が異種であって、炭素数3、4等の低級アルキル基である色素、さらにその中でも▲6▼ 特にX- がヨウ素の陰イオンである色素のそれぞれのインドレニン系のトリメチン系シアニン色素について、これらの▲3▼〜▲6▼の各々に属する色素を加え、上記の▲1▼、▲2▼の各々に属する色素を色素全体の50〜100重量%比率を占める色素溶液を調製し、これらの各々の溶液を用いてスピンコート法により乾燥膜厚が50〜150nmとなるように形成する。
その後、スパッタリングによるAu又はAlの反射層を設け、その上に紫外線硬化樹脂からなる保護層をスピンコート法により形成し、さらにポリカーボネート基板をスピンコート法による紫外線硬化樹脂からなる接着剤層により貼り合わせ、貼り合わせ型光ディスクを得る。
このようにして得られる光ディスクに660nm〜680nmのレーザー光を照射して記録を行うと、上記一般式〔化1〕のトリメチン系シアニン色素を使用したことから、感度、変調度、ジッター等の特性を向上し、上記一般式〔化1〕に属する色素を使用せず、その代わりに上記の一般式〔化2〕で表される色素を使用した場合以外は同様にして得られた光ディスクに比べて、記録パワーをより小さくすることができる。
【0023】
【実施例】
次に本発明の実施例を説明する。
実施例1
表面に幅0.32μm、深さ100nm、ピッチ0.74μmのスパイラル状のグルーブが形成された厚さ0.6mm、外径(直径)120mmφのポリカーボネートからなる透明な基板を射出成形法により成形した。
次に、上記一般式〔化1〕においてR1 、R2 が共にn−C5 H11、X- がClO4 - であるインドレニン系のトリメチン系シアニン色素と、光安定化剤として上記〔化14〕で表されるジイモニウム系安定剤を重量比95:5で混合し、この混合物をフッ素化アルコール、例えば2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(東京化成社製、以下TFPと略記する)に3重量%になるように溶解し、その溶液を上記の基板の表面にスピンコート法で塗布し、膜厚100nmの感光色素膜からなる光干渉層を形成した。
【0024】
この光干渉層について可視紫外分光光度計/U−4000((株)日立製作所製)による吸収スペクトル〔吸光度(Abs)の波長400〜800nm範囲の波長依存性〕を測定したところ、図1に示す吸収スペクトル(吸光度(Absorbance)の波長(Wavelength)(nm)の変化による変化)が得られた。
この光干渉層上にスパッタリング法により膜厚80nmのAu膜を成膜し、反射層を形成した。
また、この反射層の上に紫外線硬化樹脂SD−211(大日本インキ化学工業社製)をスピンコートし、その塗膜に紫外線を照射して硬化させ、膜厚5μmの保護膜を形成した。
さらに、この基板の保護膜及びその保護膜が形成されていない光干渉層の上に紫外線硬化樹脂SD−318(大日本インキ化学工業社製)を滴下した後、上記と同様に成形した他の基板をその上に置き、その間隙にスピンコート法により樹脂を均一に拡散させた後、再度紫外線を重ねた基板側から照射して硬化させ、当初からの基板の32mmφから120mmφの領域に樹脂からなる厚さ25μmの接着層を形成することにより重ねた基板を貼り合わせ、貼り合わせ型の光ディスクを作製した。
【0025】
このようにして作製された光ディスクに、NA(開口率(numericalaperture))=0.65、レーザー波長=662nmのDDU−1000(パルステック社の記録機)により、線速3.5m/秒で記録したところ9.3mW(記録感度)であった。その後、横河電機社製タイムインターバルアナライザー/TA−320でジッターを測定したところ、8.5%であった。DVDSpecification for Read−Only DISCの規格によれば、Data to Clock Jitter(ジッター)とは、チャンネルビットレート=26.6Mbps(38.23nsec)を基準クロックとしてバイナライズ・データ・エッジ信号の偏差値σを規格化したものである。また、記録後の変調度I14/Itop を波長650nmのレーザー光を用いて測定した。ここで、Itop はHF(EFM)信号における最大反射光量、I14の最大反射光量とほぼ一致する。I14は記録されるグルーブ内における記録される最大ピットにおいて回折され、対物レンズに返ってくる光量と非ピット部で反射され、レンズに返ってくる光量の差からなる光学的変調成分の信号である。
この実施例は、上記一般式〔化1〕において、R1 、R2 が共に同種の炭素数5のn−アルキル基(n−ペンチル基)であるトリメチン系シアニン色素を使用した例であり、波長662nm(波長660nm以上)のレーザー光による記録及び波長650nmのレーザー光による再生に適し、感度が良好で、変調度が高く、また、ジッターも高くないことが分かる。
【0026】
実施例2
実施例1において、上記のトリメチン系シアニン色素の代わりに、上記一般式〔化1〕においてR1 、R2 が共にn−C4 H9 、X- がClO4 - であるインドレニン系のトリメチン系シアニン色素を用いたこと以外は同様にして色素層からなる光干渉層及びその後の工程を行って光ディスクを作製し、光干渉層については実施例1と同様に吸収スペクトルを測定した結果を図2に示し、光ディスクについては実施例1と同様に記録を行い、測定した結果を表1に示す。
この実施例の光ディスクは、実施例1で使用した色素とは、上記一般式〔化1〕において、R1 、R2 が同種の炭素数4のn−アルキル基(n−ブチル基)である点で異なるが、波長662nm(波長660nm以上)のレーザー光による記録及び波長650nmのレーザー光による再生に適し、感度が良好で、ジッターは高くなく、変調度も実施例1よりは若干優れることがわかる。
【0027】
実施例3
実施例1において、上記のトリメチン系シアニン色素とともに、下記〔化15〕で表わされるトリメチン系シアニン色素を、上記〔化14〕で表されるジイモニウム系安定化剤を含めた重量比で順に60:35:5で用いたこと以外は同様にして色素層からなる光干渉層及びその後の工程を行って光ディスクを作製し、光干渉層については実施例1と同様に吸収スペクトルを測定した結果を図3に示し、光ディスクについては実施例1と同様に記録を行い、測定した結果を表1に示す。
【0028】
【化15】
【0029】
この実施例の光ディスクは、上記一般式〔化1〕に属するトリメチン系シアニン色素と、上記一般式〔化3〕に属する上記トリメチン系シアニン色素を混合(重量比で60:35)して使用した例であるが、波長662nm(波長660nm以上)のレーザー光による記録及び波長650nmのレーザー光による再生に適し、感度は良好で、ジッターは高くなく、変調度も比較的高かった。
なお、上記実施例1〜3において、上記ジイモニウム系光安定化剤の代わりに上記〔化11〕の金属錯体を用いたこと以外は同様にしても、ほぼ同様の結果が得られた。
【0030】
比較例1
実施例1において、上記のトリメチン系シアニン色素の代わりに、上記〔化15〕で表されるトリメチン系シアニン色素を用いたこと以外は同様にして色素層からなる光干渉層及びその後の工程を行って光ディスクを作製し、光干渉層については実施例1と同様に吸収スペクトルを測定した結果を図4に示し、光ディスクについては実施例1と同様に記録を行い、測定した結果を表1に示す。
この比較例の光ディスクは、上記一般式〔化1〕には属さない色素を用いた例であるが、実施例1と同様の評価を行った結果、感度不足のため記録することができなかった。
【0031】
以上の結果から、実施例のものと比較例ものでは、記録感度には顕著な差があった。なお、上記において、「重量」は「質量」としてもよい。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、上記一般式〔化1〕で表されるトリメチン系シアニン色素を用いたことにより、特にDVDの記録用の660nm〜680nmの短波長レーザー光に対して適度な吸収が得られることにより十分な光吸収及び発熱分解を起こすことができ、記録感度を良くすることができる。また、変調度や、ジッター等の電気特性が優れ、記録パワーが小さい光情報記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる上記一般式〔化1〕に属する1例の色素を含有する色素層からなる光干渉層の吸収スペクトルを示す図である。
【図2】本発明に係わる上記一般式〔化1〕に属する他の1例の色素を含有する色素層からなる光干渉層の吸収スペクトルを示す図である。
【図3】本発明に係わる上記一般式〔化1〕に属する色素(図1の場合と同様の色素)と上記一般式〔化3〕に属する色素を併用した色素層からなる光干渉層の吸収スペクトルを示す図である。
【図4】比較例1で使用した上記〔化15〕で表される色素を含有する色素層からなる光干渉層の吸収スペクトルを示す図である。
Claims (6)
- 基板上に色素層を含む光干渉層を有する光情報記録媒体において、該色素層が下記一般式〔化1〕で表わされるトリメチン系シアニン色素を含有し、該光干渉層が660nm〜680nmに適度の吸収を有することにより660nm〜680nmの波長のレーザー光による記録に適しかつ波長620nm〜690nm波長領域から選ばれたレーザー光により再生が可能である光情報記録媒体。
- R 1 、R 2 が同種かつ炭素数5以下の低級アルキル基である請求項1に記載の光情報記録媒体。
- 低級アルキル基がノルマル低級アルキル基である請求項2に記載の光情報記録媒体。
- X - が過塩素酸の陰イオンである請求項1ないし3のいずれかに記載の光情報記録媒体。
- 色素層は上記一般式〔化1〕のトリメチン系シアニン色素のほかにその他の色素を含有し、かつ全色素中該一般式〔化1〕のトリメチン系シアニン色素を少なくとも50重量%含有する請求項1ないし4のいずれかに記載の光情報記録媒体。
- 光干渉層は光安定化剤を含有する請求項1ないし5のいずれかに記載の光情報記録媒体。
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