JP3713190B2 - 円テーブル装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、割り出し装置等各種円テーブル装置に関し、特に、回転軸を所定の回転角度で正確に停止保持するためのクランプ機構を有する円テーブル装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、この種クランプ機構は、回転軸に一体的に設けられたブレーキディスクと、このブレーキディスクを挟圧するクランプ部材とを備えると共に、該クランプ部材を加圧するために油圧ピストンを備えており、油圧ピストンで直接クランプ部材を加圧することにより、クランプ部材間でブレーキディスクを挟圧し、回転軸を所定の回転角度で停止保持するようになっている。
【０００３】
円テーブル装置に保持されるワークは、周知のようにフライス盤、マシニングセンター等各種工作機械による切削又は研削作業に供されるため、工具からの加圧または振動等に耐えられるようにワークをテーブル面に固定することが要求されると同時に、回転軸を停止保持するクランプ機構についても、上記作業時の加圧あるいは振動に対して、確実に所定回転角度位置を保てるクランプ力が要求される。
【０００４】
このため、クランプ部材を加圧するためのピストンとしては、上記のように通常、油圧ピストンを使用し、高い作動圧（油圧）で作動させている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記のように高い作動圧の油圧ピストンを備えた構造では、油漏れ対策のため、高圧用のシール機構及びシール部材が必要となり、部品コストがかかると共に、メンテナンスにも手間がかかる。
【０００６】
【発明の目的】
本願発明は、円テーブル装置において、空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも、充分に回転軸をクランプできると共に、部品コスト及びメンテナンスコストが節約できるクランプ機構を提供することを目的としている。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本願請求項１記載の発明は、回転軸(5)の軸方向一端にワーク取付部を備え、駆動機構により回転軸(5)を回転させ、クランプ機構により所定回転角度で回転軸を固定する円テーブル装置において、前記駆動機構は、回転軸(5)に設けたウォームホイール(11)と該ウォームホイール(11)に噛み合うウォーム軸(12)により構成されると共に、ウォーム軸(12)とウォームホイール(11)はオイルバス内に収納され、前記クランプ機構は、前記ウォームホイール (11) に固着されたブレーキディスク(15)と、該ブレーキディスク(15)を軸方向の両側から解除可能に挟圧する固定側クランプ部材（ 20) 及び可動側クランプ部材 (21) と、可動側クランプ部材 (21) を軸方向の固定側クランプ部材 (20) 側に加圧する流体圧ピストン(25)と、該流体圧ピストン (25) と前記可動側クランプ部材 (21) との間に介在すると共に軸方向及び径方向に移動可能なボール (26) とカム面 (28,29) よりなる増力機構とを、備え、前記可動側クランプ部材 (21) は、リターンばね (30) により、軸方向のアンクランプ側に付勢され、前記増力機構は、流体圧ピストン(25)に形成した第１段用のテーパーカム面(28)とボール(26)との当接による第１段増力部と、可動側クランプ部材(21)に形成した第２段用のテーパーカム面(29)とボール(26)との当接による第２段増力部を有することを特徴としている。
【０００８】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の円テーブル装置において、前記流体圧ピストンは、回転軸を取り囲む環状に形成されている。
【００１１】
【発明の実施の形態】
図１は本願発明を適用した円テーブル装置の縦断面図であり、装置本体１内には、クロスローラ軸受２及びニードル軸受４を介して回転軸５が回転自在に支持されており、回転軸５の軸方向の一端は装置から外方へ突出し、その突出端にはワーク取付部としてテーブル面７が形成されている。
【００１２】
回転軸５の軸受２，４間部分には、ボルト１０によりウォームホイール１１が固着されており、該ウォームホイール１１は駆動用ウォーム軸１２に噛み合い、駆動用ウォーム軸１２は、図示しないが電動式回転アクチュエータあるいは手動ハンドル式等に連結している。ウォーム軸１２及びウォームホイール１１を収納する空間はオイルバスとなっており、ウォーム軸１２及びウォームホイール１１はオイルバス内で駆動するようになっている。上記ウォーム軸１２は越硬等硬い材質で形成され、ウォームホイール１１は焼き入れされた硬い材質で形成されている。
【００１３】
回転軸５を所定回転位置で停止保持するクランプ機構は、回転軸５と一体に回転するブレーキディスク１５と、該ブレーキディスク１５を軸方向両側から挟圧する１対のクランプ部材２０，２１と、一方のクランプ部材２１を軸方向に加圧（押圧）する空圧ピストン２５と、ボール２６及びカム面２８，２９を利用した増力機構等から構成されている。
【００１４】
ブレーキディスク１５は１対の取付リング１６間に挟持され、ボルト２７によりウォームホイール１１に固着されている。上記１対のクランプ部材２０，２１のうち、一方のクランプ部材２０は装置本体１と一体に形成され、軸方向移動不能となっており、他方のクランプ部材２１は、装置本体１の内周面に軸方向移動可能に嵌合し、可動側クランプ部材となっている。両クランプ部材２０，２１間にはリターンばね３０が縮設され、可動側クランプ部材２１をアンクランプ側（矢印Ａ２側）に付勢している。
【００１５】
可動側クランプ部材２１よりも矢印Ａ２側には、シリンダ形成部材３１により断面形状Ｌ字形の環状ピストン室（シリンダ）が形成され、該ピストン室内に、複数のＯリング３８ａ，３８ｂ，３８ｃを介して断面形状Ｌ字形の上記空圧ピストン２５が軸方向移動可能に嵌合している。ピストン室内には、ピストン２５をクランプ側（矢印Ａ１側）に移動させるためのクランプ用空気室３２と、ピストン２５をアンクランプ側（矢印Ａ２側）に移動させるためのアンクランプ用空気室３３が形成されており、両空気室３２，３３は、それぞれエア通路３５，３６及び図示しないエア切換弁等を介してエア供給源とエア排出部に切換自在に連通している。
【００１６】
増力機構は、ピストン先端部に形成された第１段用テーパーカム面２８とボール２６よりなる第１段増力部と、可動側クランプ部材２１に形成された第２段用テーパーカム面２９とボールより２６なる第２段増力部とを有しており、２段構えで増力するようになっている。
【００１７】
図２は、上記２段構えの増力機構の拡大図であり、シリンダ形成部材３１の矢印Ａ１側の端面には、径方向の外方に行くにしたがい矢印Ａ１側にくるテーパー面４０が形成されており、複数の前記ボール２６が上記テーパー面４０の全周に亘って配置されている。ボール２６の回転軸芯側の部分Ｐ１にはピストン２５のテーパーカム面２８が当接し、ボール２６の矢印Ａ１側の部分Ｐ２には可動側クランプ部材２１のテーパーカム面２９が当接している。
【００１８】
シリンダ形成部材３１のテーパー面４０及び可動側クランプ部材２１のテーパーカム面２９は、回転軸芯と直角な面に対して、３０°以下の緩やかな傾斜角度α２，α３となっており、また、ピストン２５のテーパーカム面２８のテーパー角α１も、３０°以下の緩やかな傾斜角となっている。
【００１９】
【作用】
（１）図１は、アンクランプ状態であり、ブレーキディスク１５に対するクランプ部材２０，２１の挟圧は解除されている。この状態で駆動用ウォーム軸１２を回転することにより、ウォームホイール１１を介して回転軸５は回転し、これによりテーブル面７上のワークの回転角度が変更される。
【００２０】
（２）所定角度回転後、回転軸５をクランプする場合には、クランプ用空気室３２に空気を圧入すると同時にアンクランプ用空気室３３から空気を排出することにより、ピストン２５をクランプ側（矢印Ａ１方向）に移動させる。
【００２１】
図２において、ピストン２５の矢印Ａ１方向への移動により、ボール２６は第１段用テーパーカム面２８に押され、シリンダ形成部材３１のテーパー面４０に沿って、径方向の外方及び矢印Ａ１方向に移動する。これに伴い可動側クランプ部材２１は矢印Ａ１方向に移動し、ブレーキディスク１５を固定側クランプ部材２０との間で挟圧する。
【００２２】
上記のようにピストン２５から可動側クランプ部材２１へ動力伝達する過程において、ピストン２５の矢印Ａ１方向の押圧力をＦ１と仮定すると、まず、第１段用テーパーカム面２８とボール２６との当接部Ｐ１において、上記押圧力Ｆ１は、第１段用テーパーカム面２８のカム作用により、径方向の外方に向く力Ｆ２に増力されてボール２６に伝達される。すなわち、第１段増力部において、Ｆ１→Ｆ２に増力される。
【００２３】
次に、ボール２６と可動側クランプ部材２１との当接部Ｐ２において、上記力Ｆ２は、第２段用テーパーカム面２９のカム作用により、矢印Ａ１方向の押圧力Ｆ３に増力されて可動側クランプ部材２１に伝達される。
【００２４】
そして、可動側クランプ部材２１の押圧力Ｆ３により、ブレーキディスク１５を固定側クランプ部材２０との間で挟圧し、保持する。
【００２５】
アンクランプする場合は、図１のアンクランプ用空気室３３に空気を圧入すると共に、クランプ用空気室３２から排出することにとより、ピストン２５を矢印Ａ２方向に移動し、クランプ部材２１，２０によるクランプを解除する。その時、可動側クランプ部材２１はばね３０により矢印Ａ２方向に押され、ボール２５は回転軸芯側へ戻り、第１段用テーパーカム面２８に当接した状態を保つ。
【００２６】
【その他の実施の形態】
（１）流体圧ピストンとして、油圧ピストンを使用することも可能であるが、その場合でも作動油圧を高くすることなく利用することができる。
【００２７】
【発明の効果】
以上説明したように本願発明によると、
（１）円テーブル装置において、クランプ機構として、回転軸に一体的に設けられたブレーキディスクと、該ブレーキディスクを挟圧するクランプ部材と、該クランプ部材を加圧する流体圧ピストンを備えると共に、流体圧ピストンとクランプ部材の間に、軸方向及び径方向に移動可能なボールとカム面よりなる増力機構を介在させているので、低い作動圧でも、強固にかつ確実に、回転軸を所定回転角度で固定することができ、ワーク等の保持機能が向上すると共に、高圧用のシール機構及びシール部材が必要なくなることにより、部品コストの低減及びメンテナンスの容易化も達成できる。
【００２８】
（２）作動圧の低い空圧ピストンを利用することが可能になり、それによる部品コストの低減及びメンテナンスの容易化も達成することができる。
【００２９】
（３）増力機構として、ピストンに形成した第１のテーパーカム面とボールとの当接による第１段増力部と、クランプ部材に形成した第２のテーパーカム面とボールとの当接による第２段増力部を有していると、増力機構のコンパクト性を維持しながらも、回転軸の保持力が一層向上する。
【００３０】
（４）駆動機構を、回転軸に設けたウォームホイールと該ウォームホイールに噛み合うウォーム軸により構成すると共に、ウォーム軸とウォームホイールを、オイルバス内に収納していると、駆動機構のコンパクト性を保ちながら、回転位置決め精度及び耐久性が向上する。
【００３１】
なお、ウォーム軸を超硬等硬い材質で形成し、ウォームホイールを焼き入れされた硬い材質で形成すると、耐久性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本願発明を適用した円テーブル装置の縦断面図である。
【図２】 図１の増力機構の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
１ 装置本体
５ 回転軸
７ テーブル面（ワーク取付部）
１５ ブレーキディスク
２０ 固定側のクランプ部材
２１ 可動側のクランプ部材
２５ 空圧ピストン
２６ ボール
２８ 第１段用テーパーカム面
２９ 第２段用テーパーカム面
３２，３３ 空気室

Claims (2)

1. 回転軸(5)の軸方向一端にワーク取付部を備え、駆動機構により回転軸(5)を回転させ、クランプ機構により所定回転角度で回転軸を固定する円テーブル装置において、
   前記駆動機構は、回転軸(5)に設けたウォームホイール(11)と該ウォームホイール(11)に噛み合うウォーム軸(12)により構成されると共に、ウォーム軸(12)とウォームホイール(11)はオイルバス内に収納され、
   前記クランプ機構は、前記ウォームホイール (11) に固着されたブレーキディスク(15)と、該ブレーキディスク(15)を軸方向の両側から解除可能に挟圧する固定側クランプ部材（ 20) 及び可動側クランプ部材 (21) と、可動側クランプ部材 (21) を軸方向の固定側クランプ部材 (20) 側に加圧する流体圧ピストン(25)と、該流体圧ピストン (25) と前記可動側クランプ部材 (21) との間に介在すると共に軸方向及び径方向に移動可能なボール (26) とカム面 (28,29) よりなる増力機構とを、備え、
   前記可動側クランプ部材 (21) は、リターンばね (30) により、軸方向のアンクランプ側に付勢され、
   前記増力機構は、流体圧ピストン(25)に形成した第１段用のテーパーカム面(28)とボール(26)との当接による第１段増力部と、可動側クランプ部材(21)に形成した第２段用のテーパーカム面(29)とボール(26)との当接による第２段増力部を有することを特徴とする円テーブル装置。
2. 前記流体圧ピストンは、回転軸を取り囲む環状に形成されている請求項１記載の円テーブル装置。

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