JP3712795B2 - ノートブック型パソコンの冷却構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、作動流体の潜熱として熱輸送するヒートパイプを利用して、パソコンに備えられる電子素子などの発熱部材を冷却するノートブック型パソコンの冷却構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
昨今、ノートブックタイプやサブノートブックタイプのいわゆる携帯型パソコンの普及が著しい。また一方で、多機能化や処理速度の向上に伴って演算処理装置など素子の出力増加が年々進められている。そのため、これらの発熱素子に対する冷却装置の能力の向上が要望されている。そこで従来では、一例として熱輸送力に優れるヒートパイプが採用されている。より具体的には、発熱源となる演算処理装置などの素子にヒートパイプの一端部を配設させ、その他端部をディスプレイに内設されたノイズ遮蔽用のアルミ薄板に熱伝達可能に配設する。
【0003】
したがって、パソコンの使用に伴って演算処理装置などの素子から熱が生じると、ヒートパイプのコンテナ内部に封入された液相の作動流体が加熱されて蒸発する。その作動流体蒸気は、内部圧力の低い他端部、すなわちアルミ薄板に配設した端部に向けて流動するとともに、そこで熱を奪われて凝縮する。この熱は、アルミ薄板からディスプレイに伝達され、そこから外部に放散される。なお、液相に戻った作動流体は、重力やウィックによってコンテナのうちの演算処理装置などの素子に配設された端部に向けて還流し、再度、加熱されて蒸気となる。その結果、演算処理装置などの素子が冷却され、その過熱が防止される。
【0004】
ところで、ノートブック型パソコンでは、携帯性を主要目的とするものであるから、小型化・軽量化が強く望まれている。したがって、パソコンケースの内部空間においてヒートパイプが占有し得るスペースも極めて限定されており、また、ヒートパイプの凝縮部の配設箇所に関しても前述したアルミ薄板などの数箇所に制約されている。また、通常では、そのアルミ薄板を備えたディスプレイは、自在に開閉(起立・傾倒)するようにヒンジ等を介してパソコンケースに取り付けられているなどの理由から、上記従来の冷却装置では、1本の長尺なヒートパイプによって演算処理装置とアルミ薄板とを連結することは困難であり、複数本のヒートパイプを接続させた構成とする必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
その一例として、演算処理装置に配設させたヒートパイプの凝縮部と、アルミ薄板に配設させたヒートパイプの蒸発部とを沿い合わせた状態で、これらの連結箇所の外周部を銅やアルミ合金等の金属ブロックで保持した構成のコネクタが知られている。この種のコネクタでは、アルミ薄板に配設させたヒートパイプをその中心軸線に沿って回動可能な構成とする必要があり、通常では、少なくとも金属ブロック内に挿入される部分のコンテナ形状を円形断面としている。これは、ディスプレイの開閉動作を阻害させないためである。
【0006】
しかしながら、コンテナ形状が円形断面のヒートパイプを使用することによって、ヒートパイプ同士の連結箇所が不可避的に線接触となり、そのため、熱抵抗が大きい。その結果、従来では充分な冷却能力を得ることができないおそれが多分にあった。
【0007】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、ヒートパイプ同士の連結箇所における熱抵抗が小さく、冷却能力の優れたノートブック型パソコンの冷却構造を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、この発明は、パソコン本体の内部に発熱部材が設けられるとともに、前記パソコン本体に回動機構を介して開閉自在な開閉部材が備えられたノートブック型パソコンの冷却構造において、前記発熱部材と開閉部材とのいずれか一方に、第一ヒートパイプの一端部が熱授受可能に配設されるとともに、その第一ヒートパイプの他端部が、前記回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設され、かつ発熱部材と開閉部材とのうちの他方に、第二ヒートパイプの一端部が熱授受可能に配設されるとともに、その第二ヒートパイプの他端部に、第一ヒートパイプのうちの回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設した端部を沿わせて嵌合する凹部が設けられ、さらに、その凹部と第一ヒートパイプとの連結箇所の外周部が、剛体からなる保持体によって、第一ヒートパイプの中心軸線を中心とした相対回動可能な状態に覆われて保持されていることを特徴とするものである。
【0009】
したがって、請求項1に記載の発明によれば、発熱部材から発熱すると、その熱はいずれか一方のヒートパイプの一端部に伝達される。この熱によってコンテナに封入された液相作動流体が蒸発して作動流体蒸気となり、温度と内部圧力が共に低い他端部に向けて流動し、そこで熱を奪われて凝縮する。凝縮部となるその端部は、他方のヒートパイプの一端部と連結されているから、第一ヒートパイプと第二ヒートパイプとの間で発熱部材の熱が授受される。その場合、第一ヒートパイプの端部が凹部に沿って嵌合していて、両者が直接接触する面積が広いため、連結箇所における熱抵抗が小さい。
【0010】
他方、凹部から伝達される演算処理装置の熱によって、一端部を開閉部材に配設した方のヒートパイプが動作を開始する。そのヒートパイプの内部で生じた作動流体蒸気は、コンテナのうち開閉部材に配設された端部に向けて流動し、そこで熱を奪われて凝縮する。そして、その熱は開閉部材からパソコン本体の外部に放出され、その結果、演算処理装置が冷却される。
【0011】
また、この発明では、例えばディスプレイあるいはキーボード等の開閉部材の中心軸線と同一軸線上に配設された第一ヒートパイプの端部が凹部に嵌合される端部であり、その端部の中心軸線を中心とした相対回動が可能な状態に、連結箇所が保持体によって保持されているから、開閉部材を回動(開閉)させた場合、その開閉動作に伴って第一ヒートパイプのコンテナと凹部の表面とが互いに密着した状態を保ちつつ良好に摺動する。したがって、開閉部材の開閉動作が何等阻害されることがなく、また開閉部材の姿勢に拘らず上記の冷却効果を得ることができる。
【0012】
また、請求項2に記載した発明は、前記凹部が、第二ヒートパイプの軸線方向に沿って形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
したがって、請求項2に記載した発明によれば、第二ヒートパイプの凹部を備えた端部と第一ヒートパイプのうちの回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設した端部とが、軸線を互いに同じ方向に揃えた状態で接触するようになり、例えば両者が交差状態となる場合に比べて、凹部と第一ヒートパイプとの直接接触する面積が広いから、連結箇所での熱抵抗が低減する。その結果、冷却能力が更に向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体例を参照して説明する。図1はノートブック型パソコンの冷却構造を示す概略図であり、図2および図3は、ヒートパイプ用のコネクタを示す概略図である。
【0015】
符号1はパソコン本体を示している。このパソコン本体1は、従来知られたものとほぼ同様にプラスチックパネルあるいはマグネシウム合金等の金属パネルによって形成された比較的厚さの薄い矩形容器からなり、JIS(日本工業規格)でのA5〜A4サイズ程度の大きさを成している。パソコン本体1の上面部には、回動軸(図示せず)を中心とした所定範囲内で自在に開閉するディスプレイ部2が備えられている。このディスプレイ部2の内部には、アルミ薄板製の電磁シールド板3が一体に取り付けられている。
【0016】
また、パソコン本体1の底部には、この発明の電子素子に相当するCPU4(中央演算処理装置)が設置されている。そして、CPU4の図1での上面には、伝熱部材としてのアルミ板5が設けられている。さらに、パソコン本体1の内部のうちディスプレイ部2の近傍には、コネクタ6が設けられるとともに、適宜手段によってパソコン本体1に取り付けられている。
【0017】
このコネクタ6は、2本のヒートパイプと、これらのヒートパイプを一体に保持する保持ブロック7とから構成されている。より詳細には、保持体に相当する保持ブロック7は、例えば熱伝導性に優れる銅やアルミ合金等の金属ブロックである。この保持ブロック7には、径の等しい2個の円孔を上下方向に連通状態に並列させてなる孔8、すなわち断面8字状の孔8が図2での両側面にまで貫通するように形成されている。なお、この孔8は直線状を成している。
【0018】
孔8のうち図3での上側の空間には、第一ヒートパイプ9の一端部が右側から挿入されている。ここで、この具体例では、第一ヒートパイプ9のうち保持ブロック7によって保持された端部が、回動軸と同一軸線上に配置されている。なお、第一ヒートパイプ9としては、例えば円形断面の銅製のコンテナに純水を作動流体Wとして封入したものが採用されている。したがって、第一ヒートパイプ9は、その中心軸線に沿って保持ブロック7の内部で良好に回動し得るようになっている。
【0019】
これに対して、第一ヒートパイプ9の他端部は、ほぼ直角に折り曲げれるとともに、電磁シールド板3に沿わされて熱授受可能に取り付けられている。
【0020】
他方、保持ブロック7に設けられた孔8の下側の空間には、第二ヒートパイプ10が左側から挿入されるとともに、例えば接着剤の手段によって固着されている。この第二ヒートパイプ10のうち保持ブロック7の内部に配設された部分の上面には、コンテナの軸線方向に沿って延びた窪み部10が形成されている。この窪み部11は、第一ヒートパイプ9のコンテナの断面形状に合わせて湾曲した円弧状を成している。つまり、窪み部11の曲率半径は、第一ヒートパイプ9の下側箇所の曲率半径とほぼ等しく設定されている。この具体例では窪み部11がこの発明の凹部に相当する。
【0021】
したがって、第一ヒートパイプ9のコンテナの下側部分が、保持ブロック7の内部で窪み部11に沿って嵌合した構成となっている。この第一ヒートパイプ9と第二ヒートパイプ10とが直接接触する部分が、この発明の連結箇所に相当する連結部12となっている。また、第一ヒートパイプ9は、第二ヒートパイプ10および孔8に対して固着されておらず、第一ヒートパイプ9と保持ブロック7とは、第一ヒートパイプ9の中心軸線を中心として自在に相対回動し得る構成となっている。
【0022】
したがって、ディスプレイ部2の起立・傾倒動作に伴って、第一ヒートパイプ9が窪み部11に密着しつつ中心軸線に沿って回動する構成となっている。換言すれば、ディスプレイ部2の姿勢に拘らず窪み部11と第一ヒートパイプ9とが密着状態を保持する。
【0023】
これに対して、第二ヒートパイプ10の他端部、すなわち保持ブロック7に保持されていない側の端部は、数箇所が適宜折り曲げられた状態でアルミ板5の上面に熱伝達可能に沿わされており、図示しない適宜の手段によって固着されている。したがって、CPU4と第二ヒートパイプ10とは、熱伝達可能に連結されている。なお、各ヒートパイプ9,10の先端部は、保持ブロック7から突出しないようにその縁部よりも内側に配設されている。
【0024】
つぎに、上記のように構成されたノートブック型パソコン冷却構造の作用について説明する。上記のノートブック型パソコンにおいても使用に伴ってCPU4から熱が生じる。なお、その際にはディスプレイ部2は、通常、パソコン本体1から起立した状態になっている。CPU4から放出された熱は、アルミ板5を介して第二ヒートパイプ10の一端部に伝達される。
【0025】
この時点で第二ヒートパイプ10の両端部において温度差が生じるため、自動的に動作が開始される。すなわち、コンテナ内部に封入された液相作動流体が加熱されて蒸発し、その蒸気はコンテナのうちの内部圧力の低い他端部、コネクタ6に保持された端部に向けて流動し、そこで第一ヒートパイプ9のコンテナに熱を奪われて凝縮する。
【0026】
すなわち、第二ヒートパイプ10から、第一ヒートパイプ9に熱が伝達される。その場合、第一ヒートパイプ9のコンテナの曲率半径と窪み部11の曲率半径とがほぼ等しく設定されているうえに、窪み部11が第二ヒートパイプの軸線方向に延ばされた形状であるため、連結部12が従来のような線接触とはならず、各ヒートパイプ9,10の軸線方向にある程度の長さを有した面接触となり、熱抵抗が小さい。また、受熱側の第一ヒートパイプ9が放熱側の第二ヒートパイプ10よりも上方に配置されていることや、連結部の外周が銅製の保持ブロック7によってカバーされていることによっても、連結部12における熱伝達が良好に行われる。
【0027】
なお、放熱して液化した第二ヒートパイプ10の作動流体は、重力などによってCPU4側に配設された端部に向けて還流し、アルミ板11を介して伝達されるCPU4の熱によって再度加熱される。
【0028】
他方、第二ヒートパイプ10から熱が伝達されると、第一ヒートパイプ9が動作を開始する。その場合、電磁シールド板3が起立状態にあるから、第一ヒートパイプ9としては凝縮部に対して蒸発部が下方に位置したボトムヒートモードで動作する。より具体的には、コンテナのうち保持ブロック7に保持された端部の内面において作動流体Wの蒸気が発生し、その蒸気は内部圧力が低く、しかも高い位置にある他端部、すなわちディスプレイ部2の電磁シールド板3側に配設された端部に向けて流動する。
【0029】
そして、その作動流体Wの蒸気は、電磁シールド板3に熱を奪われて凝縮する。その熱は、電磁シールド板3からディスプレイ部2に伝達され、そこから外部に放散される。なお、放熱して液相に戻った作動流体Wは、コンテナの内壁面を伝わって速やかに流下し、コンテナのうち保持ブロック7の孔8に挿入されている箇所の内面において、保持ブロック7および第二ヒートパイプ10を介して伝達されるCPU4の熱によって再度蒸発する。以降同様のサイクルが継続され、その結果、CPU4が適度に冷却される。
【0030】
このように、第二ヒートパイプ10の凝縮部と第一ヒートパイプ9の蒸発部との直接接触面積が広いうえに、第一ヒートパイプ9の蒸発部が第二ヒートパイプ10の凝縮部に対して上側に配置され、しかも連結部12が銅製の保持ブロック7によってカバーされているから、第一ヒートパイプ9と第二ヒートパイプ10との熱伝達が従来より効率よく行われるようになり、その結果、CPU4に対する冷却能力を大幅に向上させることができる。
【0031】
なお、上記の具体例では、ディスプレイ部2の電磁シールド板3に一端部を配設させたヒートパイプ(第一ヒートパイプ9)の他端部を回動軸の中心軸線と同一軸線上に配設させる構成を例示したが、この発明は上記具体例に限定されるものではなく、CPU4に一端部を配設させたヒートパイプ(第二ヒートパイプ10)の他端部を回動軸の中心軸線と同一軸線上に配設させる構成でもよい。また、放熱箇所の他の例としては、例えばキーボード部に備えられる電磁シールド板が挙げられる。さらに、使用するヒートパイプの本数は2本に限定されず、適当な本数を用いることができる。
【0032】
また必要に応じて、第一ヒートパイプ9と第二ヒートパイプ10との間、および第一ヒートパイプ9と孔8との隙間にサーマルグリスを塗布したり、各ヒートパイプ9,10のコンテナの表面に潤滑性コーティングを施したりしてもよい。このようにすれば、上記箇所での摺動抵抗が低減されるため、ディスプレイ部2の開閉操作がより滑らかに行われる。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、この発明によれば、一端部が発熱部材と開閉部材とのいずれか一方に配設された第一ヒートパイプの他端部が回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設されるとともに、発熱部材と開閉部材とのうちの他方に、第二ヒートパイプの一端部が熱授受可能に配設されるとともに、その第二ヒートパイプの他端部に、第一ヒートパイプのうちの回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設した端部を沿わせて嵌合する凹部が設けられ、それらの連結箇所の外周部が、剛体からなる保持体によって第一ヒートパイプの中心軸線を中心とした相対回動可能な状態に覆われて保持されているから、連結箇所における熱抵抗が従来になく低減され、その結果、演算処理装置に対する冷却能力の向上を図ることができる。
【0034】
また、請求項2に記載したように、凹部を第二ヒートパイプの軸線方向に沿って形成すれば、連結箇所における凹部と第一ヒートパイプとの直接接触面積が広くなるから、冷却能力を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コネクタをパソコン本体に設置した状態を示す概略図である。
【図2】第一ヒートパイプと第二ヒートパイプと保持ブロックとを一部切り欠いて示す概略図である。
【図3】図3は図2のIII−III線に沿う断面図である。
【符号の説明】
4…CPU、 6…コネクタ、 7…保持ブロック、 9…第一ヒートパイプ、 10…第二ヒートパイプ、 11…窪み部、 12…連結部。
Claims (2)
- パソコン本体の内部に発熱部材が設けられるとともに、前記パソコン本体に回動機構を介して開閉自在な開閉部材が備えられたノートブック型パソコンの冷却構造において、
前記発熱部材と開閉部材とのいずれか一方に、第一ヒートパイプの一端部が熱授受可能に配設されるとともに、その第一ヒートパイプの他端部が、前記回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設され、かつ発熱部材と開閉部材とのうちの他方に、第二ヒートパイプの一端部が熱授受可能に配設されるとともに、その第二ヒートパイプの他端部に、第一ヒートパイプのうちの回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設した端部を沿わせて嵌合する凹部が設けられ、さらに、その凹部と第一ヒートパイプとの連結箇所の外周部が、剛体からなる保持体によって、第一ヒートパイプの中心軸線を中心とした相対回動可能な状態に覆われて保持されていることを特徴とするノートブック型パソコンの冷却構造。 - 前記凹部が、第二ヒートパイプの軸線方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載のノートブック型パソコンの冷却構造。
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