JP3708255B2 - 高周波曲げ加工利用無溶接架構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、店舗,工場,倉庫等の各種建物の鉄骨架構に応用可能な高周波曲げ加工無溶接架構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図7のように柱31,31間に、傾斜した梁32を山形に架け渡した形状の鉄骨架構を構築する場合、各曲がり部分は溶接によって接合していた。すなわち、柱31に梁32の一部となるブラケット32Cを溶接しておき、このブラケット32Cに梁本体32A,32Bを添え板33と共にボルト接合していた。両側の梁32,32を互いに接合する箇所では、片方の梁32の梁本体32Aに、もう片方の梁32の一部となる短尺梁材32Dを溶接しておき、この短尺梁材32Dに梁本体32Bを添え板33と共にボルト接合していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このように溶接で接合する構成では、溶接品質の厳しい管理が必要で、手間が掛かり、また溶接治具も必要となり、コスト高になる。しかも、製作時間も長く掛かる。
【0004】
この発明は、このような課題を解消し、溶接作業が要らず低コストで簡単に製作でき、十分な耐力を有する高周波曲げ加工利用無溶接架構を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1記載の高周波曲げ加工利用無溶接架構は、湾曲形状の形鋼製の曲げ材の両端に、添え板を介して形鋼製の直線材をボルト接合し、前記曲げ材は、高周波誘導加熱による増肉加工により、長さ方向の中間部分が両端部分よりも増肉されたものとしている。
この構成によると、前記曲げ材を介して直線材をボルト接合するため、柱と梁との接合部など、互いに曲げて接合する直線材同志を、添え板と共にボルト接合するだけで、無溶接で接合できる。曲げ材は増肉加工したものであるため、架構の曲がり部の耐力低下が防げる。曲げ材は、一般に曲げ加工に伴い外周側フランジ等の壁部が薄肉になるが、このように薄肉部分が生じることが、増肉加工で補え、元の肉厚を下回ることなく、曲げ部の外周部の肉厚を確保することができる。また、そのため、増肉率を大きくすれば、肉厚低下の問題を生じることなく、曲げ部の曲率半径を小さくすることができ、架構の設計の自由度が高められる。また、曲げ材は、中間部分を増肉したものであるため、全体が厚肉となったものを用いる場合と異なり、両端の厚みを直線材と同じ厚みとすることができる。そのため、添え板を重ねて直線材と曲げ材とを接合する箇所で段差が生じず、ライナ等の介在部材を必要とせずに、添え材のみを用いてボルト接合できる。さらに、湾曲形状の曲げ材を使用するため、従来の折曲形状に直線材を接合する場合と異なり、両直線材の間に力が連続的に変化して無理なく円滑に伝達ができ、一部に応力集中することがない。このことからも強度的に優れた架構となる。増肉加工や曲げ加工については、高周波誘導加熱を利用した加工技術が実用化されており、増肉率の調整も簡単に行え、必要耐力に応じた肉厚のものとして、耐力と経済性のバランスのとれたものとできる。このように、鉄骨架構を、無溶接で、簡単かつ低コストに製作でき、耐力にも優れたものとできる。
【0006】
前記構成の無溶接架構において、前記曲げ材および直線材をH形鋼製とし、前記曲げ材を両フランジが内径側および外径側に位置する方向に湾曲させてもよい。
また、これらの構成の無溶接架構において、曲げ材の一端に接合された直線材が柱であり、他端に接合された直線材が梁であってもよい。この構成の場合、柱と屋根梁等となる梁との接合を、曲げ材を介して簡単にボルト接合できる。
さらに、これらの構成の架構において、前記曲げ材の両端に接合される直線材が、各々傾斜梁であってもよい。前記各傾斜梁は、例えば、屋根の棟部の両側の梁とされる。
【0007】
また、この発明における請求項5記載の無溶接架構は、形鋼製の直線材の一端近傍に湾曲部を設け、前記直線材の前記一端に添え板を介して他の形鋼製の直線材をボルト接合したものである。前記湾曲部は、高周波誘導加熱による増肉加工により、この湾曲部の両側部分よりも増肉されたものとする。
この構成の場合も、前記の増肉加工された曲げ材を用いた無溶接加工と同様に、鉄骨架構を、無溶接で、簡単かつ低コストに製作でき、耐力にも優れたものとできる。また、直線材間のボルト接合箇所が少なくて済み、現場の工数が少なくなる。
【0008】
この直線材の一端に湾曲部を設けた加工において、前記各直線材をH形鋼製とし、前記湾曲部を両フランジが内径側および外形側に位置する方向に湾曲させるようにしてもよい。
また、前記湾曲部を設けた直線材が柱であり、前記他の直線材が梁であってもよい。さらに、湾曲部を設けた直線材および前記他の直線材が、共に各々傾斜梁であってもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1および図2と共に説明する。
図1はこの実施形態に係る高周波曲げ加工利用無溶接架構の正面図を示し、図2は同架構の要部拡大図を示す。この架構は、2本の柱1,1間に、中間部から両側に向けて下降傾斜する傾斜梁2を架け渡したものである。柱1はH形鋼製の直線材からなる。傾斜梁2は、その中間部を構成するH形鋼製の曲げ材2Aと、両傾斜部を構成する同じくH形鋼製の直線材2B,2Bとに分離して形成されている。柱1の上端部と、傾斜梁2の直線材2Bの端部とは、H形鋼製の湾曲形状の曲げ材3を介して接合される。すなわち、曲げ材3の一端と、柱1の上端とは、図2のように互いのフランジ3a,1aおよびウェブ3b,1bを略突き合わせた状態で、フランジ3a,1a間、およびウェブ3b,1b間に添え板4を架けわたして重ね、添え板4からフランジ3a,1aおよびウェブ3b,1bに貫通させた高力ボルト等のボルト5で締め付けることにより接合される。曲げ材3の他の一端と、傾斜梁2の直線材2Bの一端も、同様に添え板4を介してボルト接合される。図示の例では、添え板4は、各フランジおよびウェブの片面のみに設けた例を示したが、各フランジの両面およびウェブの両面に添え板を設け、2面剪断の摩擦ボルト接合構造としても良い。
【0010】
曲げ材3は、H形鋼製の鉄骨素材を用い、高周波誘導加熱により、その長さ方向の中間部分が両端部分よりも増肉された増肉部分3cとなるように加工する。この増肉加工の後に、両フランジ3a,3aが内径側および外径側に位置する方向に湾曲加工する。傾斜梁2の中間部を構成する曲げ材2Aも同様に加工する。
このように湾曲部を増肉加工することにより、曲げ加工による減肉を補って湾曲部の耐力低下を防止し、かつ応力集中の生じ易い曲げ部を耐力に優れたものとできる。また、ラーメン構造の架構とできる。このような増肉加工および曲げ加工は精度よく行うことができるので、曲げ材2A,3の増肉加工されない両側部分へのボルト挿通孔の孔明け加工は、曲げ加工前の直線材の状態で行う。これにより加工作業の作業性を向上させることができる。なお、高周波加熱による増肉の度合いは、曲げ材2A,3の曲げ角度の度合いに応じて決められる。これにより、増肉加工に要する経費と、曲げ材2A,3に要求される耐力確保とのバランスを図ることができる。
【0011】
傾斜梁2を構成する両直線材2B,2Bの他の端部と、中間部の曲げ材2Aの両端部との接合も、柱1と曲げ材3との接合と同様に、添え板4を介して高力ボルト5で締め付けることにより行われる。このようにして、柱1と傾斜梁2とを組み合わせた形状の架構を、溶接作業によらずに簡単かつ低コストに構築でき、十分な耐力も持たせることができる。
【0012】
図3および図4は、高周波曲げ加工利用無溶接架構の他の実施形態を示す。この実施形態は、図1および図2に示す実施形態における柱1、傾斜梁2を構成する各部材2A,2B、および曲げ材3を角形鋼管としたものである。図3では、傾斜梁2の端部と柱1の上端部とを曲げ材3を介して接合した部分を破断して示している。この場合、柱1および曲げ材3の各端部を、添え板4と共に締め付け固定するボルトとしてワンサイドボルト6が使用される。このワンサイドボルト6は、図4のように添え板4のボルト挿通孔7から、柱1、傾斜梁2の各部材2A,2B、曲げ材3のボルト挿通孔8に挿通し、一端側からの操作により他端で頭部6aを拡径状態に塑性変形させて、拡径頭部6aとナット9とで柱1、傾斜梁2の各部材2A,2B、曲げ材3と添え板4とを締め付けるものである。曲げ材2A,3の湾曲部を増肉加工することは、先の実施形態の場合と同様である。ここでは、角形鋼管を使用した場合を示したが、丸形鋼管を使用してもよい。
【0013】
図5は、高周波曲げ加工利用無溶接架構のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、図1における柱1の上端部に、曲げ材3と同じ湾曲部1cを一体に形成すると共に、図1における傾斜梁2の一方の直線材2Bの一端部に曲げ材2Aと同じ湾曲部2cを一体に形成し、この湾曲部2cを有する直線材2B1と他の直線材2Bとで山形の傾斜梁2を構成したものである。柱1の湾曲部1cや直線材2B1の湾曲部2cは、図1における曲げ材2A,3と同様にして増肉加工および曲げ加工される。柱1および傾斜梁2を構成する各部材2B,2B1がH形鋼製であることや、湾曲部1c,2cにおける曲げ加工で、両フランジ1a,2aが内径側および外径側に位置する方向に湾曲させることなどは、図1の実施形態と同様である。この実施形態の場合、柱1や直線材2B1に湾曲部1c,2cを一体に形成したため、ボルト接合する箇所がそれだけ少なくなり、架構の構築作業が一層簡単になる。なお、この架構において、柱1や、傾斜梁2の直線材2B,2B1に、図3のように角形鋼管を使用したり、さらに丸形鋼管や溝形鋼を使用してもよい。
【0014】
なお、前記各実施形態は、各々梁2が山形に傾斜したものである場合につき説明したが、図1(A)の例のように増肉加工の曲げ材3を用いる架構において、図6(A)に示すように、梁2を両側の柱1,1間に水平に設け、あるいは図6(B)のように梁2を片方にのみ傾斜したものとしても良い。また、図5(A)のように柱1の上端部に増肉加工の湾曲部1cを一体に形成した架構においても、図6(C)のように、梁2を両側の柱1,1間に水平に設け、あるいは図6(D)のように梁2を片方にのみ傾斜したものとしても良い。
これら図6(A)〜(D)の構成の場合、曲げ材3や湾曲部1cの曲率半径を小さくすることが必要な場合があるが、曲げ加工に伴う曲げ材3や湾曲部1cの外周側フランジ等の部分の肉厚低下は増肉率の増加により補え、元の肉厚を下回ることなく、必要な肉厚が確保できる。このような増肉率の調整は、高周波誘導加熱による増肉方法によると、簡単に行える。
【0015】
【発明の効果】
この発明の高周波曲げ加工利用無溶接架構は、湾曲形状の形鋼製の曲げ材の両端に、添え板を介して形鋼製の直線材をボルト接合し、前記曲げ材は、高周波誘導加熱による増肉加工により、長さ方向の中間部分が両端部分よりも増肉されたものとしたため、直線材間が屈曲した形状の架構を、無溶接で、簡単に、かつ低コストで製作でき、十分な耐力も持たせることができる。
この構成において、曲げ材の一端に接合された直線材を柱とし、他端に接合された直線材を梁とした場合は、柱と梁の接合を、曲げ材を介して簡単にボルト接合で行える。また、湾曲形状の曲げ材を介して接合されることから、梁から柱へと力が連続的に変化して無理なくスムースな伝達ができ、一部に応力が集中せず、このことからも強度的に優れた架構となる。
また、この構成において、前記曲げ材の両端に接合される直線材を、各々傾斜梁とした場合は、両柱間に傾斜梁を架け渡した形状の架構などを、ボルト接合により簡単に構築できる。
また、形鋼製の直線材の一端近傍に湾曲部を設け、前記直線材の前記一端に添え板を介して他の形鋼製の直線材をボルト接合し、前記湾曲部を高周波誘導加熱による増肉加工によりこの湾曲部の両側部分よりも増肉された架構とした場合は、屈曲形状の架構を、無溶接で、簡単に、かつ低コストで製作でき、十分な耐力も持たせることができるうえ、ボルト接合箇所も少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る高周波曲げ加工利用無溶接架構の概略構成を示す正面図である。
【図2】(A)は同架構の要部拡大図、(B)は同架構の横断面図である。
【図3】(A)はこの発明の他の実施形態に係る高周波曲げ加工利用無溶接架構の要部を拡大して示す破断正面図、(B)は同架構の横断面図である。
【図4】同架構におけるワンサイドボルトによる締付部の断面図である。
【図5】この発明のさらに他の実施形態に係る高周波曲げ加工利用無溶接架構の概略構成を示す正面図である。
【図6】(A)〜(D)は、各々この発明のさらに他の実施形態にかかる架構の正面図である。
【図7】従来例の正面図である。
【符号の説明】
1…柱(直線材)、1a…湾曲部、2…傾斜梁、2B,2B1…直線材、2c…湾曲部、2A,3…曲げ材、3c…増肉部分、4…添え板、5…高力ボルト、6…ワンサイドボルト
Claims (8)
- 湾曲形状の形鋼製の曲げ材の両端に、添え板を介して形鋼製の直線材をボルト接合し、前記曲げ材は、高周波誘導加熱による増肉加工により、長さ方向の中間部分が両端部分よりも増肉されたものとした高周波曲げ加工利用無溶接架構。
- 前記曲げ材および直線材がH形鋼製のものであり、前記曲げ材は両フランジが内径側および外径側に位置する方向に湾曲させた請求項1記載の高周波曲げ加工利用無溶接架構。
- 曲げ材の一端に接合された直線材が柱であり、他端に接合された直線材が梁である請求項1または請求項2記載の高周波曲げ加工利用無溶接架構。
- 前記曲げ材の両端に接合される直線材が、各々傾斜梁である請求項1または請求項2記載の高周波曲げ加工利用無溶接架構。
- 形鋼製の直線材の一端近傍に湾曲部を設け、前記直線材の前記一端に添え板を介して他の形鋼製の直線材をボルト接合し、前記湾曲部は高周波誘導加熱による増肉加工によりこの湾曲部の両側部分よりも増肉されたものとした高周波曲げ加工利用無溶接架構。
- 前記各直線材がH形鋼製のものであり、前記湾曲部は両フランジが内径側および外形側に位置する方向に湾曲させた請求項5記載の高周波曲げ加工利用無溶接架構。
- 前記湾曲部を設けた直線材が柱であり、前記他の直線材が梁である請求項5または請求項6記載の高周波曲げ加工利用無溶接架構。
- 前記湾曲部を設けた直線材および前記他の直線材が各々傾斜梁である請求項5または請求項6記載の高周波曲げ加工利用無溶接架構。
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