JP3702674B2 - 電子写真用塗工紙及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルカラー又はモノクロームの電子写真複写機、ファクシミリ、プリンター等のハードコピー機器や電子写真方式のデジタル印刷機などに適用する電子写真用塗工紙及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機、プリンターのカラー化、高速化及び高画質化が進んでいる。特に、オンデマンドの出版物の分野では、より手軽に、且つ小部数への対応が可能なことから、これまで印刷により得ていた出版物をカラー複写機、カラープリンターにより得ようという動きが注目されている。
【0003】
通常、複写機及びプリンターは記録用紙を機械本体内部のトレイ又は本体外部に設置した手差しトレイから印字部に供給するが、印刷用塗工紙をPPC用紙やプリンター用紙として使用した場合、こわさが低いことにより走行トラブルが発生する。
【0004】
また、トナー画像が熱定着される時、ブリスターと呼ばれるトラブルが発生する。ブリスターの発生メカニズムは以下のように説明される。熱定着される時、用紙内部の水分が熱により蒸発し、用紙内部に水蒸気圧が生じる。水蒸気を用紙の外に排出しようとするときに、その排出が阻害されるため水蒸気圧が異常に上昇して紙層内部が破裂する。
【0005】
上記ブリスターと走行トラブルを改善する技術がいくつか報告されている。例えば、特開昭62−198875号公報や特開昭62−198876号公報には、塗工層表面の中心線平均粗さが2.0μm以下で、透気度が4000秒以下に調整された電子写真用転写紙が提案されている。
【0006】
また、特開平3−294600号公報には、塗料に対して内部に空隙を有する非造膜性樹脂を顔料重量の5〜25重量%含有させ、塗工紙水分を4〜6%とし、塗工紙密度を1.10g/cm3 以下とし、透気度を4000秒以下にし、塗工紙の塗工量を片面当たり8〜20g/m2 の範囲に調整した電子写真用転写紙が提案されている。
【0007】
さらに、特開平5−241366号公報には、平滑度及び透気度が特定の範囲にある原紙に、顔料100重量部中に有機顔料を3〜80重量部含有する顔料と結着剤を配合した塗液を塗工量3〜7g/m2 で塗工して電子写真用塗工紙が開示されている。
【0008】
しかし、これらの塗工紙は、塗工材料中に中空顔料を含有させたり、塗工量を軽減させて塗工層の通気性を改善してブリスターや走行トラブルを改善する技術であるため、坪量が特定範囲に限定され、かつ片面プリントに用途が限定される。即ち、坪量が低い場合や両面プリントに適用する場合は、ブリスターや走行トラブルを改善することが困難となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解消し、電子写真方式の複写機やプリンターなどにおいて、熱定着ロール部への巻付きやブリスターを発生しない電子写真用塗工紙、及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、上記課題を解決するために、原紙特性に着目して鋭意検討を重ねた結果、原紙のこわさ向上による熱定着ロール巻付きトラブルの改善と、原紙の紙間結合強度向上によるブリスターの改善ができることを見出した。即ち、原紙の製造段階において、キトサンを添加することによって、キトサンの有する高分子凝集性、及び繊維との吸着性を効果的に導出し、こわさ及び結合強度を向上させることに成功し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の構成は以下の通りである。
【0011】
(1)原紙の両面又は片面に顔料と接着剤を主成分とする塗工層を備えた電子写真用塗工紙において、前記原紙がキチンを脱アセチル化処理することにより得られるキトサンを含有することを特徴とする電子写真用塗工紙。
(2)原紙の両面又は片面に顔料と接着剤を主成分とする塗工層を備えた電子写真用塗工紙において、前記原紙がキチンを脱アセチル化処理することにより得られるキトサンを含有することを特徴とする加熱定着方式を採用した電子写真用塗工紙。
(3)前記キトサンの分子量が5万〜200万の範囲にあることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の電子写真用塗工紙。
【0012】
(4)原紙の両面又は片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けて電子写真用塗工紙を製造する方法において、前記原紙の製造用紙料にキチンを脱アセチル化処理することにより得られるキトサン及び有機酸を含有する高分子カチオン性コロイド状溶液を添加することを特徴とする電子写真用塗工紙の製造方法。
(5)原紙の両面又は片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けて電子写真用塗工紙を製造する方法において、前記原紙の製造用紙料にキチンを脱アセチル化処理することにより得られるキトサン及び有機酸を含有する高分子カチオン性コロイド状溶液を添加することを特徴とする加熱定着方式を採用した電子写真用塗工紙の製造方法。
(6)前記キトサンは分子量が5万〜200万の範囲にあることを特徴とする前記(4)又は(5)記載の電子写真用塗工紙の製造方法。
【0013】
(7) 前記原紙紙料中に溶解しているキトサン濃度を、パルプ100重量部に対してキトサンを固形分で0.3〜3.0重量部の範囲に調整することを特徴とする前記(4) 〜(6) のいずれか1つに記載の電子写真用塗工紙の製造方法。
(8) 前記キトサンは、分子量が50〜300の範囲の有機酸に溶解して添加することを特徴とする前記(4) 〜(7) のいずれか1つに記載の電子写真用塗工紙の製造方法。
【0014】
(9) 前記原紙の製造用紙料を用いて坪量45〜125g/m2 の原紙を製造し、片面当り2〜25g/m2 の塗工量で前記原紙の両面又は片面を塗工した後、平滑処理を施すことを特徴とする前記(4) 〜(8) のいずれか1つに記載の電子写真用塗工紙の製造方法。
(10)前記塗工に、顔料100重量部当たり接着剤を5〜50重量部配合した塗工組成物を用いることを特徴とする前記(4) 〜(9) のいずれか1つに記載の電子写真用塗工紙の製造方法。
(11)前記平滑処理は、仕上がり密度が1.30g/m3 以下になるように仕上げることを特徴とする前記(4) 〜(10)のいずれか1つに記載の電子写真用塗工紙の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴は電子写真用塗工紙の原紙の製造工程において、有機酸により溶解したキトサンの水溶液を添加してパルプの繊維間結合強度を改善することにより、熱定着ロールへの巻付きやブリスターを防止できる程度の原紙のこわさ及び紙間結合強度を確保することにある。
【0016】
なお、キトサンを種々の記録用シートに用いることが提案されているが、いずれも本発明とは使用目的及び使用態様が相違し、本発明とは全く関係のないものである。即ち、特開平5−303229号公報には、バックグランドの染みなどのない高品質の画像形成を可能にする記録シートが提案されており、原紙を被覆する帯電防止層に親水性多糖類の1つとしてキトサンを配合することが例示されている。また、特開平6−8618号公報には、カラー間ブリードが少なく耐熱・耐湿性を備えた記録シートが提案されており、原紙を被覆する受像層が、ラテックスを形成する重合体及びオキシアルキレンモノマーを含有する重合体に多糖類を配合して構成することが記載され、前記多糖類としてキトサンが例示されている。さらに、特開平6−40146号公報には、水性インクの混色ブリージングを抑制した記録用コートシートが提案されており、原紙上の2つのコーティング層のうち、第1のコーティング中に配合する親水性物質の1つとしてキトサンが例示されている。しかし、上記の記録シートはいずれも被覆層にキトサンを配合するものであって、本発明のように原紙にキトサンを配合するものでないところから、本発明とは関係のないものである。
【0017】
また、特開平8−314178号公報には、サイズ剤をパルプ内部に添加した後、サイズプレスにより耐水化剤、水溶性高分子及びサイズ剤を含浸させることにより、サイズプレス後のドライヤーやカンバス汚れの発生を防止し、サイズプレスムラの発生を防止することが提案されているが、本発明のように原紙にキトサンを配合するものでないところから、本発明とは関係のないものである。
さらに、特開平6−250439号公報には、インクジェット記録紙のカール(紙が丸まる)やコックリング(紙が波打つ)を防止するために、耐水化剤、水溶性高分子及びサイズ剤をパルプに加えて抄造した記録紙が提案されており、前記水溶性高分子の1つとしてキトサンが例示されているが、本発明のように、熱定着方式を採用する電子写真用の塗工紙における熱定着ロールへの巻付きやブリスターを防止するために、原紙にキトサンを含有させることについて示唆する記載がないので、本発明とは関係のないものである。
【0018】
本発明で使用するキトサンは塩基性ホモ多糖類の天然高分子であり、蟹・エビなの甲殻類の外殻、イカの背骨や蛸の嘴などに含まれるキチン、カルシウムや蛋白質などの複合体を酸及び/又はアルカリで処理してキチン質を抽出し、強アルカリで脱アセチル化処理することにより得られる。キトサンは、生物により合成され、また、自然に分解されるため環境汚染など懸念のないことなどから、その特性を活かし食品や医用などの分野で研究・開発に利用されているものである。具体的には、(株)共和テクノスからはフローナック(FLONAC)の商品名で、(株)加ト吉バイオからはキトサン7B/8B/9B/10B/70H/70M/80H/80M/90M/90L/100Lなどの商品名で市販されている。
【0019】
キトサンは通常のアルカリや有機溶媒には溶解しないが、希酸には溶解し、高分子カチオン性コロイド状の物質を形成し、非常に優れた凝集性を示す。本発明者はこの高分子凝集性に着目し、キトサンの適応によりパルプの繊維間結合を補強し、原紙のこわさや強度を向上させることについて鋭意検討した。即ち、こわさや強度を上げるには繊維のセルロース分子間で形成される水素結合が重要であり、水素結合の数を増すことにより強度が向上する。そこで、キトサンの凝集力を利用して、セルロース分子の水素基同士、そして、カチオン化澱粉等を添加する場合はその水酸基との水素結合を増加させ、さらにキトサンの水酸基(−OH)及び/又はアミド基(−CONH2 )との水素結合により強度が向上すると考えらさる。
【0020】
そこで、紙原料調成工程において、叩解した木材パルプLBKPに填料、内添サイズ剤、キトサン溶解水溶液を順次加えて、原紙を抄造した。キトサンの用紙のこわさや紙間結合強度への効果について鋭意検討した。得られた用紙の特性・性能の評価結果から、本発明で使用するキトサンは、5万〜200万、好ましくは20万〜200万の範囲にあるものが最適であることを確認した。5万より低いと、キトサンの添加効果が著しく低下する。また、200万を超えると、著しく凝集性が高くなり、上記調製作業やパルプへの添加作業が困難であり、添加してもフロックが発生し易いなどの問題がある。
【0021】
また、キトサンを溶解するための希酸の種類について検討した。キトサンは希塩酸や希硝酸などの無機酸にも溶解するが、有機酸の方が溶解性が良く、パルプ原料への添加作業にも適することが判った。特にキトサンは0.1〜2.0重量%程度の希薄な有機酸に良く溶解する。また、有機酸は分子量が50〜300、好ましくは90〜300の範囲にある酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、乳酸、アジピン酸、スルファミン酸、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸などが最も好ましいものであることを確認した。
【0022】
原紙紙料中に溶解しているキトサン濃度は、パルプ100重量部に対してキトサンを固形分で0.3〜3.0重量部の範囲、好ましくは0.5〜2.0重量部の範囲に調整することが望ましい。キトサン固形分が0.3重量部未満では凝集効果が充分得られず、必要なこわさ及び強度を確保できず、3.0重量部を超えると凝集効果が極度に高くなり過ぎて、分散性が低下するため、必要なこわさを得ることができず地合いも悪化する。
【0023】
キトサン添加剤は次のように調製した。溶液槽に張った一定量の水に対して、0.5〜3.0%、好ましくは0.5〜2.5%、より好ましくは0.5〜2.0%のキトサン濃度となるように秤量し、キトサンを上記の水に少量ずつ投入しながら攪拌・分散させ、充分に水に馴染ませてキトサンを膨潤させる。膨潤したことを確認した後、キトサンと同量(重量比)の有機酸を添加して充分に攪拌・溶解することにより高分子カチオン性コロイド状キトサン溶液を調製する。キトサン濃度が上記範囲の上限値を超えると、粘度が高すぎて調製液を溶解槽から他に移すことができない。また、下限値を下回ると、低粘度となり取扱性は向上するが、キトサンの凝集性が発現しにくくなる。
【0024】
本発明の塗工紙は、原紙坪量が45〜125g/m2 、好ましくは50〜125g/m2 の原紙に対し、片面当り2〜25g/m2 、好ましくは5〜25g/m2 の範囲の塗工量で両面又は片面に塗工層を設けた後、スーパーキャレンダーなどによる平滑処理を施して得られる。本発明では、上記の原紙の製造工程において、上記キトサンの添加により、こわさ及び繊維間の結合強度を大幅に向上させることができ、ハードコピー機器や従来の印刷機器などにも充分に適応し得る電子写真用塗工紙を完成するに至った。
【0025】
本発明の塗工紙は、電子写真方式の複写機やプリンターなどのハードコピー機器に使用することを目的としているために、目標とする坪量、密度、紙厚、こわさ、白色度及び表面平滑性など電子写真用紙に必要な基本特性を満足する必要がある。そのためにはパルプの濾水度を叩解調整したパルプ・スラリーに対し、填料、内添サイズ剤、定着剤を内添し、乾燥工程のサイズプレスで澱粉などの表面サイズ剤を塗布又は含浸して抄造する。また、PPC用紙等のハードコピー機器に使用する場合はサイズプレスで澱粉などと共に無機塩等などの導電剤を加えて電気抵抗を調整する必要がある。
【0026】
本発明で使用するパルプの種類は特に限定されるものではないが、木材化学パルプ、特に広葉樹晒クラフトパルプL・BKPが望ましい。印刷古紙、オフィス古紙、新聞古紙などの古紙パルプ、CMP、CTMP、TMP等の木材機械パルプ、わら、バガス、ケナフ等の非木材パルプなど公知のパルプ単独又はそれらを組合せて使用することを妨げるものではない。
【0027】
本発明で使用する填料は、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、焼成クレー、タルク、カオリンなどの無機顔料、及びメラミン樹脂、尿素樹脂などの有機顔料を挙げることができるが、特に限定されるものではない。これらの填料の配合量は特に限定されないが、3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の範囲で使用するのが適当である。
【0028】
また、本発明で使用するサイズ剤は、アルケニル無水コハク酸系、アルキルケテンダイマー系、アルケニルケテンダイマー系、中性ロジン系、オレフィン系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂等の中性サイズ剤、カチオン化澱粉、ロジン系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤などを挙げることができ、これらは内添及び/又は外添される。これらも填料と同様に限定されるものではなく、必要に応じてサイズ性や填料定着性などの調整のために適宜使用される。
【0029】
本発明のキトサン溶液は、紙料調成工程で填料、内添サイズ剤等を添加した後に加えるのが最も効果的であるが、抄紙機のワイヤーパートにおけるスプレーや乾燥工程におけるサイズプレスで添加してもその効果を得ることができる。
【0030】
本発明の塗工紙をPPC用紙やプリンター用紙などに適用するには表面電気抵抗の調整が必要である。表面電気抵抗値を調整する導電剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機物や、アルキルリン酸エステル酸、アルキル硫酸エステル酸、スルホン酸ナトリウム塩、第4級アンモニウム塩等の有機系の材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、単独又は混合して使用することができる。この他に、染料、pH調整剤等、通常の転写紙に配合される各種助剤を適宜使用することが可能である。
【0031】
本発明の塗工紙の塗工層に用いられる顔料としては、通常の塗工紙に用いられる顔料、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネーテッドクレー、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン樹脂微粒子、尿素ホルムアルデヒド樹脂微粒子、微小中空粒子、その他の有機系顔料等を単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明に用いられる接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤や、酸化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン、カゼイン、大豆たんぱく等の天然系接着剤として一般に知られた接着剤が挙げられる。これら接着剤は顔料100重量部当り5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部の範囲で使用される。また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤が適宜使用される。
【0033】
調製された塗工組成物は、通常の一般塗工紙製造に使用される塗工装置、例えばブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータ、グラビアコータ等を用いオンマシン又はオフマシンにより、上記で得られた原紙上に一層又は多層に分けて乾燥重量で片面当り2〜25g/cm2 、好ましくは5〜25g/m2 の範囲で塗工される。
【0034】
塗工後の平滑化処理は、通常使用される平滑化装置、例えば、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトニップキャレンダー等が用いられ、仕上がり密度が1.30g/m3 以下になるように仕上げられる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお本実施例において「部」、「%」は全て「重量部」、「重量%」を意味し、重量値は全て「有効成分(固形分)」を表す。
【0036】
〔実施例1〕
(キトサン添加剤の調製)
溶液槽に張った一定量の水に対し、高分子量キトサン(フローナックN、分子量20万〜50万:共和テクノス(株)社製)を秤量し、キトサンを少量ずつ投入しながら攪拌・分散させ、充分に水に馴染ませてキトサンを膨潤させた。膨潤を確認した後、キトサンを溶解するために、キトサンと同量のアスコルビン酸 (分子量:176)を加えて充分に攪拌・溶解することにより高分子カチオン性コロイド状のキトサン溶液を調製した。
【0037】
(塗工顔料の処方)
塗工組成物の顔料成分100重量部のうち、軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−222H:奥多摩工業(株)製)を40部、カオリン(ウルトラホワイト90:エンゲルハート(株)製)を60部、また接着剤として酸化デンプン(王子エースB:王子コーンスターチ(株)製)を3.5部、合成接着剤(JSRO668:日本合成ゴム(株)製)を11.0部、分散剤(アロンT−40:東亜合成(株)製)を0.3部、及び導電剤として塩化ナトリウムを0.06部配合して塗工組成物を調製した。
【0038】
(塗工紙の製造)
広葉樹晒パルプ(L・BKP)100部を用い、その濾水度を450ml−csfに叩解調製し、パルプ100部に対して固形分の高分子量キトサン(フローナックN,分子量20万〜50万:共和テクノス(株)製)0.5部を含有する上記キトサン添加剤と、その他填料として軽質炭酸カルシウムを5部、内添サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸を0.2部、定着剤としてカチオン化澱粉を0.5部を添加して紙料調製した。この調製紙料をオリエンテッドシートフォーマー(熊谷理機工業(株)製)に適用し、ロータリードライヤー(熊谷理機工業(株)製)で乾燥した後、坪量75g/m2 なる原紙を得た。この原紙に対して、上記の塗工顔料をバーコーターにより、片面当り15g/m2 で原紙の両面に塗工した後、スーパーキャレンダー処理を行って、坪量105g/m2 、仕上密度1.21g/cm3 の電子写真用塗工紙を得た。
【0039】
〔実施例2〕
実施例1において、キトサン溶液をアスコルビン酸で調製する代わりに乳酸 (分子量:90)を用い、キトサンの添加量を0.5部から1部に変更した以外は実施例1と全く同一処方条件・方法で、坪量105g/m2 、仕上密度1.21g/cm3 (原紙坪量:75g/m2 )の電子写真用塗工紙を得た。
【0040】
〔実施例3〕
実施例2において、キトサン溶液を乳酸で調製する代わりに酢酸(分子量:60)を用いた以外は実施例2と全く同一処方条件・方法で、坪量105g/m2 、仕上密度1.22g/cm3 (原紙坪量:75g/m2 )の電子写真用塗工紙を得た。
【0041】
〔実施例4〕
実施例1において、キトサンの添加量を0.5部から2部とした以外は実施例1と全く同一処方条件・方法で、坪量105g/m2 、仕上密度1.23g/cm3 (原紙坪量:75g/m2 )の電子写真用塗工紙を得た。
【0042】
〔実施例5〕
実施例1において、キトサンの種類を高分子量キトサン(フローナックN(共和テクノス(株)製)から低分子量キトサンSK−10(分子量:約5万;三栄工業(株)製)に、キトサンの添加量を0.5部から1部に変更した以外は実施例1と全く同一処方条件方法で、坪量105g/m2 、仕上密度1.22g/cm3 (原紙坪量:75g/m2 )の電子写真用塗工紙を得た。
【0043】
〔実施例6〕
実施例5において、キトサンの添加量を1部から2部に変更した以外は実施例5と全く同一処方条件方法で、坪量105g/m2 、仕上密度1.21g/cm3 (原紙坪量:75g/m2 )の電子写真用塗工紙を得た。
【0044】
〔実施例7〕
実施例6において、キトサン溶液をアスコルビン酸で調製する代わりに乳酸 (分子量:90)を用い、キトサンの添加量を2部とした以外は、実施例6と全く同一処方条件方法で、坪量105g/m2 、仕上密度1.21g/cm3 (原紙坪量:75g/m2 )の電子写真用塗工紙を得た。
【0045】
〔実施例8〕
実施例6において、キトサン溶液をアスコルビン酸で調製する代わりに酢酸 (分子量:60)を用い、キトサンの添加量を2部とした以外は実施例6と全く同一処方条件・方法で、坪量105g/m2 、仕上密度1.22g/cm3 (原紙坪量:75g/m2 )の電子写真用塗工紙を得た。
【0046】
〔実施例9〕
実施例4において、抄紙機の設定条件を変更し、坪量55g/m2 の原紙を得て、片面当り10g/m2 なる塗工量で両面塗工とした以外は実施例4と全く同一処方条件・方法で、坪量75g/m2 、仕上密度1.19g/cm3 なる電子写真用塗工紙を得た。
【0047】
〔実施例10〕
実施例1において、キトサンの添加量を1部とし、抄紙機の設定条件を変更して坪量85g/m2 の原紙を得た。そして、片面当り20g/m2 なる塗工量で両面塗工とした条件変更以外は全く同一処方条件・方法で、坪量125g/m2 、仕上密度1.23g/cm3 なる電子写真用塗工紙を得た。
【0048】
〔比較例1〕
実施例9において、キトサンの添加を省略した以外は実施例9と全く同一処方条件・方法で、坪量75g/m2 、仕上密度1.19g/cm3 なる電子写真用塗工紙を得た。
【0049】
〔比較例2〕
実施例1において、キトサンの添加を省略した以外は全く同一処方条件・方法で、坪量105g/m2 、仕上密度1.21g/cm3 なる電子写真用塗工紙を得た。
【0050】
〔比較例3〕
実施例10において、キトサンの添加を省略した以外は実施例10と全く同一処方条件・方法で、坪量125g/m2 、仕上密度1.22g/cm3 なる電子写真用塗工紙を得た。
【0051】
〔比較例4〕
実施例3において、キトサン溶液を酢酸で調製する代わりに蟻酸(分子量:46)を用いた以外は実施例3と全く同一処方条件・方法で、坪量105g/m2 、仕上密度1.21g/cm3 なる電子写真用塗工紙を得た。
【0052】
〔評価方法〕
上記の実施例1〜10及び比較例1〜4で得た電子写真用塗工紙を使い、JIS−P−8110(試験用紙採取方法),及びJIS−P−8111(試験用紙の前処置)に準拠して前処理・採取した評価用試料を作製し、以下の通り、評価を実施した。
なお、評価結果は表1〜3に示した。
【0053】
▲1▼「坪量」測定 :JIS−P−8124(紙のメートル坪量測定方法)に準拠
▲2▼「こわさ」評価 :JIS−P−8143(紙の自重曲げ法によるこわさ試験方法:クラーク法)に従い、クラーク式柔軟度紙試験器(東西精器(株)製)を使用し、測定した。
▲3▼「内部結合強度」評価 :Tappi Testing-Method T 541 om-89(Internal bond strength of paperboard (Z−direction tensil))に従い、インターナルボンドテスター(熊谷理機工業(株)製)を使用し、測定した。
【0054】
▲4▼「定着ロール巻付き」評価 :20℃/55%RHの環境で以下の手順で実施した。予め60,000枚走行させた定着機構を装備した電子写真複写機Acolor620(富士ゼロックス(株)製)を使用し、コピー原稿としてカラー写真原稿(画像密度45%)を使用した。評価に使用した用紙サイズはA4横送りで、走行枚数は50枚連続コピーを1回の評価とし、計10回実施、定着ロール巻付き回数を測定した。発生レベルは以下に示すとおりである。
○:発生なし、△:1回発生、×:2回以上発生
【0055】
▲5▼「ブリスター」評価 :上記の電子写真複写機Acolor620(富士ゼロックス(株)製)を使用し、そのブリスター性を評価し、その結果を表−1〜3に示した。以下に発生レベルを示す。
○:発生なし、△:僅かに発生するが実用上問題なし、×:かなり発生し、
実用に耐えない。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
実施例1〜4及び実施例9〜10のように、分子量が50以上の有機酸に高分子量キトサン(分子量:20〜50万)を溶解してパルプに混抄することにより、キトサンを省略した比較例1〜3(従来処方)に比べて、大幅な紙力強度を改善することができた。また、実施例5〜8のように、上記の実施例の高分子キトサンの代わりに低分子量キトサン(分子量:約5万)を用いるときにも、上記実施例と同様の効果を確認することができた。他方、比較例4のように、分子量が46の蟻酸に高分子量キトサンを溶解してパルプに混抄すると、紙力強度は僅かに上昇するが、ブリスターを防止できるほどのものではなかった。また、比較例1と比較3を対比すると明らかなように、塗工量を増加させると、こわさがある程度改善され、熱定着ロール巻き付けは防止できるものの、紙力強度を改善することはできず、ブリスターを防止することはできなかった。
【0060】
【発明の効果】
本発明は、上記の構成を採用することにより、画質品位及び走行性能に優れ、カラー複写機適性及びカラープリンタ適性に優れた電子写真用塗工紙の提供が可能になった。また、本発明は廃棄処理などにおいて懸念のない生物資源を原料とした天然高分子を添加剤として使用するために、環境を汚すこともなく環境に優しい改善技術の確立を可能にした。
Claims (7)
- 原紙の両面又は片面に顔料と接着剤を主成分とする塗工層を備えた電子写真用塗工紙において、前記原紙がキチンを脱アセチル化処理することにより得られるキトサンを含有することを特徴とする電子写真用塗工紙。
- 前記キトサンの分子量が5万〜200万の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の電子写真用塗工紙。
- 原紙の両面又は片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けて電子写真用塗工紙を製造する方法において、前記原紙の製造用紙料にキチンを脱アセチル化処理することにより得られるキトサン及び有機酸を含有する高分子カチオン性コロイド状溶液を添加することを特徴とする電子写真用塗工紙の製造方法。
- 前記キトサンは分子量が5万〜200万の範囲にあることを特徴とする請求項3記載の電子写真用塗工紙の製造方法。
- 前記原紙紙料中に溶解しているキトサン濃度を、パルプ100重量部に対してキトサンを固形分で0.3〜3.0重量部の範囲に調整することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の電子写真用塗工紙の製造方法。
- 前記キトサンは、分子量が50〜300の範囲の有機酸に溶解して添加することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の電子写真用塗工紙の製造方法。
- 前記原紙の製造用紙料を用いて坪量45〜125g/m2の原紙を製造し、片面当り2〜25g/m2の塗工量で前記原紙の両面又は片面を塗工した後、平滑処理を施すことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の電子写真用塗工紙の製造方法。
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