JP3690933B2 - 炭素繊維用サイズ剤、炭素繊維のサイジング方法、サイジング処理された炭素繊維、該炭素繊維によるシート状物、及び繊維強化複合材料 - Google Patents
炭素繊維用サイズ剤、炭素繊維のサイジング方法、サイジング処理された炭素繊維、該炭素繊維によるシート状物、及び繊維強化複合材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維用サイズ剤、炭素繊維のサイジング方法、サイジング処理された炭素繊維、該炭素繊維によるシート状物、及びサイジング処理された炭素繊維を使用した繊維強化複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化複合材料の一つに、炭素繊維からなる強化材とマトリックス樹脂とによる樹脂組成物を成形してなる成形品があり、この繊維強化複合材料を得るときのマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂が広く使用されている。
【0003】
この繊維強化複合材料をなす成形品の強化材として使用されている炭素繊維は、その化学組成の約90重量%以上が炭素からなる繊維であり、再生セルロース、ポリアクリロニトリル(PAN)、ピッチ等を出発原料として得られるものであって、例えば高強度炭素繊維や高弾性炭素繊維等に区分されている。
【0004】
上記の炭素繊維は軽量であり、しかも比強度及び比弾性率において特に優れた性質を有しており、更に耐熱性や耐薬品性にも優れていることから、繊維強化複合材料の強化材として極めて有効であり、広範囲に亙る用途の繊維強化複合材料に使用されている。
【0005】
強化材としての炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化樹脂組成物を得るときの炭素繊維にマトリックス樹脂を含浸させる方法としては、離型紙上に薄くマトリックス樹脂を塗布した上に炭素繊維を一方向に並べるプリプレグ法や、樹脂浴中に炭素繊維を通過させるディッピング法等があり、品質の高い繊維強化複合材料を成形し得るようにするためには、炭素繊維にマトリックス樹脂を含浸させる含浸工程において、数千本のフィラメントからなる炭素繊維束を均一に開繊させることにより、マトリックス樹脂の含浸が容易に行なえるようにすることが必要である。
【0006】
しかしながら、炭素繊維は伸度が小さくかつ脆い性質であるために、機械的摩擦等によって毛羽が発生し易く、しかもマトリックス樹脂に対する濡れ性が乏しい。このために、強化材として使用する炭素繊維に上記の優れた性質を十分に発揮させることができなく、これを改善するために、繊維強化複合材料の強化材に使用する炭素繊維に対しては、従来からサイズ剤による処理が施されている。
【0007】
すなわち、炭素繊維にサイズ剤による処理を施すことにより炭素繊維の取扱い性を向上させると共に、マトリックス樹脂に対する濡れ性を向上させ、これによって炭素繊維を強化材とする繊維強化複合材料からなる成形品の品質の向上が図られており、例えばビスフェノール型ポリアルキレンエーテルエポキシ化合物類からなるサイズ剤(特開昭61−28074号公報等)や、ビスフェノールAにアルキレンオキシド基の数十分子を付加させてなる化合物からなるサイズ剤(特開平1−272867号公報、特開平7−9444号公報、特開平6−212565等号公報)等が提案されている。
【0008】
特開昭61−28074号公報に記載されているビスフェノール型ポリアルキレンエーテルエポキシ化合物類からなるサイズ剤は、該サイズ剤をなす化合物中にグリシジル基を有しているために、含浸性や界面接着力の発現等において優れた性質を有している。
【0009】
又、特開平1−272867号公報や特開平7−9444号公報に記載されているサイズ剤、つまりビスフェノールAにアルキレンオキシド基の数十分子を付加させてなる化合物からなるサイズ剤は、金属との間の摩擦係数が小さく、糸切れや毛羽立ちの度合いが低減した炭素繊維にすることが可能であり、優れた工程通過性を有する炭素繊維にすることができる。又、その付着量や、サイズ剤として使用する化合物の分子量の適正化を図ることにより、優れた界面接着性を有するものにすることが可能である。
【0010】
更に、特開平6−212565等号公報に記載されているサイズ剤、つまりビスフェノールAにアルキレンオキシド基の数十分子を付加させてなる化合物からなるサイズ剤は、プリホームの製造工程での炭素繊維の取り扱い性を向上させると共に、その後のサイズ剤の除去が容易である等の特性を備えている。
【0011】
しかしながら、上記の上記の特開昭61−28074号公報に記載されているビスフェノール型ポリアルキレンエーテルエポキシ化合物類からなるサイズ剤は、化合物中に存在しているグリシジル基のために粘着性を具備しており、しかも金属との間の摩擦係数が高く、これらの性質がサイズ剤としての欠点になっている。
【0012】
又、特開平1−272867号公報や特開平7−9444号公報に記載されているサイズ剤、特にエチレンオキサイドを付加させた反応生成物からなるサイズ剤は、分子中の(CH2 −CH2 −O)基等の親水基の存在によって空気中の水分を吸着し易く、粘着性が増加していわゆるべとつきを生じる。この粘着性の増加は、加工の各工程中においてローラー等との抵抗を増加させることになり、又毛羽等が付着して堆積する原因になり、更には炭素繊維束の開繊性を低下させる要因ともなる。
【0013】
従って、このサイズ剤を使用する場合には、炭素繊維束に良好な工程通過性と開繊性とを備えさせるためにサイズ剤の付着量を最小限に抑えなければならなく、このことがサイズ剤の付着量斑による物性斑に繋がるために、その付着量の厳密な制御を行なわなければならないという煩雑性を伴う。又、樹脂の含浸時の作業条件に制約を有するために工程の作業可能な許容範囲が狭められ、該サイズ剤による含浸方法が特定の方法に制限されるという欠点をも有する。
【0014】
更に特開平6−212565等号公報に記載されているサイズ剤は、水洗いによる除去が可能であることが最も重要な性能であるために、サイズ剤をなす化合物が低分子量である方がよく、従って低エチレンオキサイド付加物が選択されるるが、これらの化合物は室温で液状であってその粘度が小さいために、炭素繊維に十分な集束性を付与することができない。
【0015】
以上のように従来のサイズ剤には、炭素繊維に対して安定した擦過性と開繊性とを備えさせ、良好な樹脂含浸性を具備させ得るようなものが存在していない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明が解決しようとする課題は、炭素繊維に対して安定した擦過性と開繊性とを備えさせ、良好な樹脂含浸性を具備させ得るサイズ剤を提供することにある。
【0017】
又本発明が解決しようとするもう一つの課題は、上記のサイズ剤を用いて的確なサイジングを行なう炭素繊維のサイジング方法、該サイズ剤によってサイジング処理された炭素繊維、該サイジング処理された炭素繊維を使用してあるシート状物、及びこのサイジング処理された炭素繊維又は該炭素繊維を使用してあるシート状物を強化材とする繊維強化複合材料を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、以下に記載する構成を備えてなる本発明の炭素繊維用サイズ剤、炭素繊維のサイジング方法、サイジング処理された炭素繊維、該サイジング処理された炭素繊維を使用してあるシート状物、及びサイジング処理された炭素繊維又は該炭素繊維を使用してあるシート状物を強化材とする繊維強化複合材料によって解決することができる。
【0019】
すなわち本発明の炭素繊維用サイズ剤は、下記式(1)で表わされる化合物(A)と下記式(2)で表わされる化合物(B)とからなり、その重量比(A)/(B)が2/1〜1/2の範囲内にある混合物からなるものである。
【0020】
【化3】
[式中、R1 、R2 は水素又はアルキル基であって、R1 、R2 は同一であってもよく、又j、kは、それぞれ1以上の整数であり、j+kが14〜40である。]
【0021】
【化4】
[式中、R3 、R4 は水素又はアルキル基であって、R3 、R4 は同一であってもよく、又m、nは、それぞれ1以上の整数であり、m+nが54〜100である。]
【0022】
又本発明の炭素繊維のサイジング方法は、上記の式(1)で表わされる化合物(A)と式(2)で表わされる化合物(B)とからなり、その重量比(A)/(B)が2/1〜1/2の範囲内にある混合物の水溶液によって炭素繊維を処理する工程からなる。
【0023】
更に本発明のサイジング処理された炭素繊維は、上記の式(1)で表わされる化合物(A)と式(2)で表わされる化合物(B)とからなり、その重量比(A)/(B)が2/1〜1/2の範囲内にある混合物がその表面に付着している炭素繊維からなる。
【0024】
又本発明のサイジング処理された炭素繊維によるシート状物は、上記の式(1)で表わされる化合物(A)と式(2)で表わされる化合物(B)とからなり、その重量比(A)/(B)が2/1〜1/2の範囲内にある混合物がその表面に付着している炭素繊維を使用してあるシート状物である。
【0025】
更に又本発明の繊維強化複合材料は、上記の式(1)で表わされる化合物(A)と式(2)で表わされる化合物(B)との重量比(A)/(B)2/1〜1/2の混合物が付着されている炭素繊維、又は該炭素繊維を使用してあるシート状物を強化材とする炭素繊維強化樹脂組成物を成形してなる成形体である。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の炭素繊維用サイズ剤を構成する化合物(A)及び化合物(B)は、いずれもビスフェノール型骨格からなる中心部の両端にエチレンオキサイドが付加した構造をなすものであり、化合物(A)と化合物(B)との相違は、ビスフェノール型骨格からなる中心部に対するエチレンオキサイドの付加量である。
【0027】
上記の式(1)及び式(2)で表示される化合物(A)と化合物(B)において、R1 、R2 、R3 、R4 は、マトリックス樹脂として使用する樹脂の種類等に合わせて選択されるが、一般的には水素又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。又、化合物(A)や化合物(B)は、それぞれが混合物であってもよい。
【0028】
上記の式(1)及び式(2)で表示される化合物(A)と化合物(B)において、特にビスフェノールA型或いはビスフェノールF型からなる中心部を有する化合物は、その構造が比較的剛直であるために、炭素繊維に対して良好な力学的特性を付与することができる。又、このビスフェノールA型或いはビスフェノールF型からなる中心部を有する化合物は、π共役系を有しているために、微小なグラファイト結晶で構成されている炭素繊維に対して良好な親和性を有している。これによって、化合物(A)及び化合物(B)としては、特にビスフェノールA型或いはビスフェノールF型からなる中心部を有する化合物であることが好ましい。
【0029】
化合物(A)或いは化合物(B)におけるビスフェノール型骨格からなる中心部の両端に付加しているエチレンオキサイドの付加量は、中心部の左,右で一致している必要はないが、上記の化合物(A)や化合物(B)が、一般的にビスフェノール化合物にエチレンオキサイドを付加して得られるものであるために、ビスフェノール型骨格からなる中心部の両端に付加しているエチレンオキサイドの付加量は、中心部の左,右での付加量があまり相違するものではなくなることが多い。
【0030】
上記の式(1)で表わされる化合物(A)は、j+kが14〜40であることが必要である。ここで、j+kが41〜53の化合物は、室温(23℃)〜30℃付近の融点を有しており、炭素繊維を取り扱う際の雰囲気温度によって液体から固体に変化する。このために、サイズ剤としての特性の発現が不安定になる。又、j+kが13以下の化合物は、室温で安定な液状を呈するものの、粘度が小さくなりすぎるためにサイズ剤に必要な特性を発現し得なく、しかも空気中の水分の吸着によって著しく粘着性が増加するために、その性状が不安定であり、さらに水溶性が不足するためにこれを水に溶解させた水溶液の安定性が悪い。
【0031】
以上の理由により、上記の式(1)で表わされる化合物(A)としては、j+kが20〜35であるものがより好ましい。
【0032】
上記の式(2)で表わされる化合物(B)は、m+nが54〜100であることが必要である。ここで、m+nが41〜53の化合物は、先に説明した通り室温(23℃)〜30℃付近の融点を有しており、炭素繊維を取り扱う際の雰囲気温度によって液体から固体に変化するために、サイズ剤としての特性の発現に対しての安定性に欠ける。
【0033】
又m+nが100を超える化合物は、分子量の増加によって固着性が増す。このために、炭素繊維フィラメントの収束性が強くなり、炭素繊維束の柔軟性と樹脂の含浸工程での炭素繊維束の開繊性とを著しく阻害するようになる。更に、分子中の親水基が大きくなりすぎて、マトリックス樹脂との相溶性が悪くなる。特に樹脂の含浸工程において、炭素繊維の表面から含浸用樹脂中に溶解して拡散するときの溶解性が、分子中の親水基の存在によって低下し、又大きな分子量のためにその拡散速度が低下する。従って、この化合物が炭素繊維とマトリックス樹脂との界面及びその近傍に偏在してしまい、複合材料の機械的物性、特に炭素繊維と樹脂との界面強度を低下させる要因になる。
【0034】
以上の理由により、上記の式(2)で表わされる化合物(B)としては、m+nが60〜90であるものがより好ましい。
【0035】
上記したように、式(1)で表わされる化合物(A)は、多くの場合室温(23℃)において粘調な液状を呈する。又、式(2)で表わされる化合物(B)は、室温(23℃)において多少粘着性を有するものもあるが、多くの場合固形状を呈する。つまり、本発明の炭素繊維用サイズ剤は、多くの場合室温において液状を呈する化合物(A)と固形状をなす化合物(B)との混合物からなり、その重量比(A)/(B)が2/1〜1/2の範囲内にあるものであり、このサイズ剤で炭素繊維を処理することにより、安定した擦過性と開繊性とを有し、良好な樹脂含浸性を具備する炭素繊維になし得る。
【0036】
なお、特開平1−272867号公報、特開平7−9444号公報、及び特開平6−212565号公報等に説明されている炭素繊維用サイズ剤は、ビスフェノール類にエチレンオキシド基の数十分子を付加させてなる化合物からなり、エチレンオキシド基の付加モル数が50以下の化合物である。ここではエチレンオキシド基の付加モル数が51以上になると、マトリックス樹脂として適用するエポキシ樹脂との相溶性が悪くなることから樹脂と炭素繊維との接着性が低下するために、十分な機械的強度を有する複合材料にはならないとして説明されている。
【0037】
しかしながら、エチレンオキシド基の付加モル数が51以上の化合物であっても、本発明のサイズ剤のように、付加モル数の小さい化合物と所定の割合で混合した混合物にすることにより、マトリックス樹脂と炭素繊維との間の接着性の低下の問題は解決される。
【0038】
このメカニズムは、以下に説明するようなことに起因するものであると考えられる。つまり、ビスフェノール類にアルキレンオキシド基を付加した化合物において、アルキレンオキシド基の付加モル数の少ないものと多いものとの混合物は、アルキレンオキシド基の付加モル数の少ないものと多いものとの両者の構造が非常に似ているために完全にランダムに混合される。この様に完全に混合している混合物を付着させてある炭素繊維にマトリックス樹脂をなすエポキシ樹脂等を含浸させると、この含浸過程において先ずアルキレンオキシド基の付加モル数の小さい化合物の方がマトリックス樹脂中に溶出し始める。
【0039】
このために、残りのアルキレンオキシド基の付加モル数の多い方の化合物は、比較的疎な状態の付着体として炭素繊維の表面に存在して、マトリックス樹脂に曝されるようになる。その結果、アルキレンオキシド基の付加モル数の多い方の化合物のマトリックス樹脂中への溶出が容易になり、マトリックス樹脂と炭素繊維との間の接着性に問題のない複合材料が得られるようになる。
【0040】
更に、上記のアルキレンオキシド基の付加モル数の多い方の化合物は、室温付近で固形状であるために、分子中のエーテル結合に由来する水分の吸着量が室温付近で液状をなすアルキレンオキシド基の付加モル数の小さい化合物に比較して格段に小さく、吸水による粘着性の発現作用が殆ど無く、しかもその作用はアルキレンオキシド基の付加モル数の小さい化合物との混合物によっても維持される。
【0041】
又、アルキレンオキシド基の付加モル数の多い方の化合物は、炭素繊維の擦過性を非常に良好なものになす作用を有しており、しかもその作用がアルキレンオキシド基の付加モル数の小さい化合物との混合物によっても維持される。
【0042】
以上の通りのメカニズムにより、アルキレンオキシド基の付加モル数の小さい化合物とアルキレンオキシド基の付加モル数の多い化合物との混合物からなる炭素繊維用サイズ剤にすることにより、マトリックス樹脂と炭素繊維との間の接着性を低下させることなく、しかもマトリックス樹脂の含浸時の工程通過性及び工程安定性において優れた作用を呈する炭素繊維になし得るものと推定される。
【0043】
アルキレンオキシド基の付加モル数の小さい化合物(A)とアルキレンオキシド基の付加モル数の多い化合物(B)との混合物において、これらの両者の重量比(A)/(B)が2/1よりも大きくなると、空気中の水分の吸着によって炭素繊維に付着しているサイズ剤に粘着性が生じるようになり、この水分の吸着は炭素繊維の製造後の保管時や移送中にあっても生じる。
【0044】
一般に炭素繊維はボビンに巻かれた状態で保管或いは移送され、利用時にこのボビンから巻き出されて供給される。このときに炭素繊維に付着しているサイズ剤が水分を吸着して粘着性を生ずると、炭素繊維束同士の強い粘着のためにスムーズな巻き出しが困難になり、毛羽や糸切れの発生に繋がる。又、巻き出された炭素繊維束は、サイズ剤による粘着性のために金属との摩擦係数が増加し、又この金属の表面にサイズ剤が付着することになり、炭素繊維束の工程通過性を著しく損ねるだけでなく、炭素繊維束の開繊性を低下させることにもなる。このために、安定な工程通過性と良好な開繊性とを備えた炭素繊維束にすることができなくなる。
【0045】
又、アルキレンオキシド基の付加モル数の小さい化合物(A)とアルキレンオキシド基の付加モル数の多い化合物(B)との混合物において、これらの両者の重量比(A)/(B)が1/2よりも小さくなると、金属に対する摩擦係数が小さくなり過ぎて炭素繊維束に十分な張力を掛け難くなり、均一な開繊性を備えさせることができなくなる。なお、十分に開繊されていない炭素繊維束は、該炭素繊維束内部への樹脂の含浸が不十分になるために、炭素繊維に対する樹脂の未含浸部が生じ易く、得られる複合材料の機械的物性を低下させる原因になる。
【0046】
更に、アルキレンオキシド基の付加モル数の小さい化合物(A)とアルキレンオキシド基の付加モル数の多い化合物(B)との混合物において、これらの両者の重量比(A)/(B)が1/2よりも小さい混合物は、アルキレンオキシド基の付加モル数の小さい化合物(A)、つまり分子量の低い化合物の割合が少ないために、炭素繊維束の柔軟性を低下させることにもなる。
【0047】
化合物(A)や化合物(B)は、エポキシ樹脂からなる従来の炭素繊維用のサイズ剤に比較して、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として使用されるエポキシ樹脂等に対する濡れ性が特に優れているとは言えないが、上記の式(1)で表わされる化合物(A)と式(2)で表わされる化合物(B)との混合物からなり、その重量比(A)/(B)が2/1〜1/2の範囲内にある本発明の炭素繊維用のサイズ剤は、炭素繊維に優れた樹脂含浸性を備えさせ得る。
【0048】
この理由は、本発明のサイズ剤によって、炭素繊維に対して優れた開繊性と収束力の低さとを付与し得るためであると思料される。つまり、炭素繊維に優れた樹脂含浸性を付与するためには、樹脂含浸工程時において炭素繊維が均一に開繊し、かつフィラメント間の拘束力が小さくなっていることが必要であるが、上記の式(1)で表わされる化合物(A)と式(2)で表わされる化合物(B)との混合物からなり、その重量比(A)/(B)が2/1〜1/2の範囲内にある本発明の炭素繊維用サイズ剤によって、均一に開繊し、かつフィラメント間の拘束力が小さくなるような性質を炭素繊維に付与することができる。
【0049】
本発明の炭素繊維用サイズ剤を形成する化合物(A)及び化合物(B)は、そのいずれも水に可溶である。従って、本発明の炭素繊維用サイズ剤によるサイジング方法としては、化合物(A)と化合物(B)との混合物の水溶液を使用することにより、例えばアセトン等の有機溶剤溶液によるサイジングを行なう場合に比較して、サイズ剤液が安定で、しかもその取扱いが容易であり、かつ作業雰囲気の衛生面及び安全面での優位性も得られる。
【0050】
又、上記の水溶液中に更に脂肪酸エチレンオキシド付加物等の柔軟剤を配合することにより、擦過性の点でより優れた炭素繊維にすることができる。なお、このときに添加する柔軟剤としては、水溶性タイプのものを選択することが好ましい。
【0051】
化合物(A)と化合物(B)との混合物の水溶液を使用する本発明の炭素繊維のサイジング方法は、例えばローラー浸漬法やローラー接触法等を適用して実施することができる。なお、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量は、サイズ剤水溶液の濃度調整や、絞りコントローラー等の通過工程の調整等によって調節し得る。
【0052】
サイズ剤水溶液を炭素繊維の表面に付着させた後、続く乾燥処理によって水分を除去し、目的のサイジング処理された炭素繊維にする。なお、このときの乾燥処理には、例えば熱風、熱板、ローラー、赤外線ヒーター等の熱媒を利用する方法を適用できる。
【0053】
本発明のサイジング処理された炭素繊維は、炭素繊維の表面に上記の式(1)で表わされる化合物(A)と式(2)で表わされる化合物(B)とからなり、その重量比(A)/(B)が2/1〜1/2の範囲内にある混合物を付着させてなるものであり、本発明のサイジング方法によって得られることは勿論であるが、その製造方法はこれに限定されない。
【0054】
上記の式(1)で表わされる化合物(A)と式(2)で表わされる化合物(B)とからなり、その重量比(A)/(B)が2/1〜1/2の範囲内にある混合物をその表面に付着させるための炭素繊維は、ピッチ系、或いはレーヨン又はポリアクリロニトリル等の原料物質から得られるもののいずれでもよく、又例えば高強度タイプ(低弾性率炭素繊維)、或いは中高弾性炭素繊維及び超高弾性炭素繊維等のいずれでもよい。その形態としては、長繊維、短繊維、或いは織物、編み物、不繊布等のシート状の形態を有するもの等のいずれでもよい。
【0055】
炭素繊維の表面に付着したサイズ剤の効果が十分に奏されるようにするには、炭素繊維に対して該炭素繊維の0.2〜4.0重量%のサイズ剤が付着されていることが好ましく、更には0.3〜3.0重量%の範囲内で付着されていることがより好ましい。つまり、サイズ剤の付着量が炭素繊維の0.2重量%未満の場合には、収束性、及び擦過性が不十分になり易く、機械的な摩擦等によって毛羽が発生し易くなる。又4.0重量%を越えると、金属に対する摩擦係数が低下し、しかも収束性が強くなる為に炭素繊維束の開繊性が悪くなり、マトリックス樹脂を含浸させる際に炭素繊維束の内部へのマトリックス樹脂の含浸性が悪くなる。
【0056】
本発明のサイジング処理された炭素繊維を使用してあるシート状物は、サイズ剤を付着させてなる上記の炭素繊維を用いて織成した織布、一方向配列シート、不織布、マット、更にはこれらの組み合わせ等である。
【0057】
炭素繊維を使用してある織布からなるシート状物は、サイズ剤を付着させてなる上記の炭素繊維による平織布、綾織布、朱子織り布等を初め、これらの原組織を変化させたもの等である。又、緯、経糸の両方に上記の炭素繊維を使用したものであっても、或いは他の炭素繊維や炭素繊維以外の繊維との混織布であってもよい。このときの炭素繊維以外の繊維としては、例えば硝子繊維、チラノ繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維、アラミド、ポリエステル、PP、ナイロン、ポリイミド、ビニロン等の有機繊維等を挙げることができる。
【0058】
本発明のサイジング処理された炭素繊維を使用してあるシート状物は、例えば橋梁、橋脚、建造物の柱等に対する補強用シート材としての用途にも供し得る。従ってこの用途のものにする場合には、上記のサイズ剤を付着させてなる炭素繊維を経糸として使用し、該経糸よりも低い引張弾性率の繊維を緯糸として使用した織布からなるシート状物にすることにより、その取り扱い性、及び樹脂含浸性の良好なものにすることができる。つまり、緯糸として用いる繊維の引張弾性率が高いと経糸が長手方向に蛇行し易くなるために、補強用シート材としての十分な強度を発現しなくなる。緯糸としての好適な繊維は、例えば先に挙げたガラス繊維、チラノ繊維、SiC繊維等の無機繊維、アラミド、ポリエステル、PP、ナイロン、アクリル、ポリイミド、ビニロン等の有機繊維等であり、又これらの2種以上の複合繊維でもよい。
【0059】
炭素繊維を使用したシート状物としての一方向配列シートは、例えば一方向に上記のサイズ剤を付着させてなる炭素繊維を引き揃えたもの、或いはこれに更に幅方向に緯糸を配したもの、又はこれに緯糸として熱融着性繊維を配した後に該熱融着性繊維を熱融着して固定したもの、更には一方向に上記の炭素繊維を一定間隔で引き揃えた後にその表面に熱融着性のウエッブやネットを配してシート状にしたもの等である。なかでも、(a)サイズ剤を付着させてなる炭素繊維を一方向に引き揃えた後、少なくとも一方の面に該炭素繊維と直交する方向に熱融着性繊維を等間隔で配置し、これを熱融着させて固定してなるシート状物と、(b)サイズ剤を付着させてなる炭素繊維を一方向に引き揃えた後、少なくとも一方の面に熱可塑性樹脂製のネット状支持体、熱可塑性樹脂で被覆されたネット状支持体、或いは熱可塑性樹脂製のウエッブ状支持体等の融着性支持体を熱融着して固定したシート状物が、好適である。
【0060】
本発明の繊維強化複合材料は、上記の式(1)で表わされる化合物(A)と式(2)で表わされる化合物(B)とからなり、その重量比(A)/(B)が2/1〜1/2の範囲内にある混合物によるサイズ剤を表面に付着させてなる炭素繊維、又は該炭素繊維を使用してあるシート状物を強化材とする炭素繊維強化樹脂組成物を成形した成形体からなる。
【0061】
繊維強化複合材料の成形素材となる炭素繊維強化樹脂組成物は、サイズ剤を表面に付着させてなる炭素繊維、又は該炭素繊維を使用してあるシート状物からなる強化材にマトリックス樹脂を含浸させることによって得られる一方向プリプレグ、クロスプリプレグ、トウプレグ、短繊維強化樹脂含浸シート、短繊維マット強化樹脂含浸シート等からなる。
【0062】
ここで使用されるマトリックス樹脂は特に限定されるものではないが、例えば一般に用いられているエポキシ樹脂が好ましく、又ラジカル重合系樹脂であるアクリル樹脂、ビニルポリエステル樹脂、及び不飽和ポリエステル樹脂等も使用し得る。
【0063】
強化材にマトリックス樹脂を含浸させた炭素繊維強化樹脂組成物を得る方法としては、例えばホットメルト法、溶剤法、シラップ法、或いはSMC等に用いられる増粘樹脂法等が挙げられる。
【0064】
本発明の繊維強化複合材料は、上記のサイズ剤を表面に付着させてなる炭素繊維、又は該炭素繊維を使用してあるシート状物からなる強化材を使用した炭素繊維強化樹脂組成物を成形したものであり、成形素材である炭素繊維強化樹脂組成物中での炭素繊維の開繊性及び樹脂含浸性が優れているために、その製造工程が安定であり、しかも均質な複合化が達成できることから、良好な力学的特性を具備する繊維強化複合材料になる。
【0065】
【実施例】
以下本発明の炭素繊維用サイズ剤、炭素繊維のサイジング方法、サイジング処理された炭素繊維、該炭素繊維によるシート状物、及びサイジング処理された炭素繊維又は該炭素繊維によるシート状物を強化材とする繊維強化複合材料についてのより具体的な構成を、実施例に基づいて説明する。
【0066】
実施例1
アクリロニトリル97重量%とメタクリル酸3重量%とからなるアクリロニトリル共重合体をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた紡糸液を、紡糸ノズルを通して凝固浴中に吐出して紡糸した後、洗浄、及び沸水延伸に付し、更に沸水による洗浄、及び乾燥を施すことにより、単糸デニール1.2の炭素繊維用の前駆体繊維としてのアクリル系繊維を得た。
【0067】
次いでこの前駆体繊維を、空気中にて200℃〜300℃に加熱して耐炎化繊維にした後、続いて窒素ガス中にて最高温度1400℃に加熱して炭素化することによって炭素繊維にし、更にこの炭素繊維に電気化学的な表面酸化処理を施こすことにより、フィラメント数12,000本の炭素繊維束を得た。
【0068】
しかる後に上記の炭素繊維束を、上記の式(1)において、j+k=30、j>1、k>1、R1 =メチル基、R2 =メチル基からなる化合物(A−1)と、上記の式(2)において、m+n=60、m>1、n>1、R3 =メチル基、R4 =メチル基からなる化合物(B−1)との混合物(重量比1/1)の4重量%水溶液中にローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量2.5重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。
【0069】
続いて、上記のサイジング処理された炭素繊維束をボビンから巻き出して、5本の金属製バーを配置させてなる開繊部を通過させた後、ドラムコーターにてマトリックス樹脂を付着、含浸させ、次いでマンドレル上に巻き付け速度10m/min、巻き付け張力4Kgfで巻き付けた。なおマトリックス樹脂には、ビスフェノールA型と酸無物系のエポキシ樹脂を用いた。
【0070】
続いて、上記のマンドレルの巻き付け品を加熱してマトリックス樹脂を効果させることにより、内径17mm、外径23mm、長さ300mmのパイプを成形した。
【0071】
上記のパイプの成形工程中においては、炭素繊維束には毛羽の発生や張力の変動が全く無く、該炭素繊維束は優れた工程通過性を示した。又、ボビンからの炭素繊維束の巻き出しもスムーズで安定していた。更に成形したパイプを90°曲げ試験に付したところ、80MPaの強度が得られた。又パイプの断面を観察したところ、ボイドの発生は殆ど無かった。
【0072】
実施例2
上記の実施例1で使用したものを同じ表面酸化処理を施してあるフィラメント数12,000本の炭素繊維束に、実施例1にて使用したサイズ剤と同じ混合物の1重量%水溶液中にローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量0.4重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。
【0073】
次いで離型紙上にBステージ化したエポキシ樹脂を塗布してあるホットメルトシートの上に、上記のボビンから巻き出した炭素繊維束の63本を並列、配置してエポキシ樹脂を含浸させると共に、その上に保護フィルムを積層することにより、樹脂含有量約30重量%、炭素繊維目付100g/m2 、幅500mmのUDプリプレグを作製した。
【0074】
上記のUDプリプレグの製造工程中でのボビンからの炭素繊維束の巻き出しは非常に安定しており、糸切れや毛羽の発生等は全くなかった。又各炭素繊維束は、擦過バーを通過して均一に開繊しており、その表面には樹脂の未含浸部に起因する色斑等が無く、非常にフラットな外観のUDプリプレグが得られた。又、このUDプリプレグから保護フィルムを剥がすと急速に樹脂の吸い込みが生じ、これによって炭素繊維の優れた樹脂含浸性を確認することができた。
【0075】
更にこのUDプリプレグを使用して厚み2mmのUD積層板を成形した後、該積層板を90°曲げ試験に付したところ、120MPaの強度、及びILSSでの90MPaの強度が得られ、優れた機械特性を具備することが確認された。
【0076】
実施例3
上記の実施例1と同様にして、表面酸化処理を施してあるフィラメント数3,000本の炭素繊維束を製造した後、この炭素繊維束を上記の実施例1で使用した化合物(A−1)と化合物(B−1)との混合物(重量比1.5/1)の1.5重量%水溶液中にローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量0.6重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。
【0077】
次いで離型紙上にBステージ化したエポキシ樹脂を塗布してあるホットメルトシートの上に、上記の炭素繊維束の141本を並列、配置させてエポキシ樹脂を含浸させると共に、その上に保護フィルムを積層することにより、樹脂含有量約30重量%、炭素繊維目付75g/m2 、幅500mmのUDプリプレグを作製した。
【0078】
上記のUDプリプレグの製造工程中においては、ボビンからの炭素繊維束の巻き出しが非常に安定しており、糸切れや毛羽の発生等は全くなかった。又各炭素繊維束は、擦過バーを通過して均一に開繊しており、その表面には樹脂の未含浸部に起因する色斑が無く、非常にフラットな外観のUDプリプレグが得られた。
【0079】
又、このUDプリプレグから保護フィルムを剥がすと急速に樹脂の吸い込みが生じ、これによって炭素繊維の優れた樹脂含浸性を確認することができた。
【0080】
実施例4
上記の実施例1と同様にして、表面酸化処理を施してあるフィラメント数3,000本の炭素繊維束を製造した後、この炭素繊維束を上記の実施例1で使用した化合物(A−1)と化合物(B−1)との混合物(重量比1/1.5)の3重量%水溶液中にローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量1.5重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。
【0081】
次いで上記の炭素繊維束を使用した緯糸12.5本/インチと経糸12.5本/インチとによる炭素繊維目付200g/m2 の平織りクロスを、20mm/分の速度で織成したところ、この製織工程中においては、ボビンからの炭素繊維束の巻き出し及び他の擦過部での糸切れや毛羽の発生が無かった。
【0082】
実施例5
上記の実施例1と同様にして、表面酸化処理を施してあるフィラメント数12,000本の炭素繊維束を製造した。
【0083】
次いで上記の式(1)において、j+k=25、j>1、k>1、R1 =メチル基、R2 =メチル基からなる化合物(A−2)と、上記の式(2)において、m+n=90、m>1、n>1、R3 =メチル基、R4 =メチル基からなる化合物(B−2)との混合物(重量比2/1)の5重量%水溶液中に、上記の炭素繊維束をローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量3.5重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。なお、得られた炭素繊維束の引張強度は4.9GPaであり、引張弾性率235GPaである。
【0084】
続いて上記の炭素繊維束による経糸10本/インチと、ガラス繊維(引張弾性率72.5GPa、融点840℃)と低融点ナイロン繊維(マルチフィラメント、融点125℃)との交絡糸(0.03g/m)による緯糸6本/インチとの織布を織成した後、更に180℃の熱処理に付すことにより、簾状の炭素繊維織布を得た。
【0085】
上記の製織工程中の炭素繊維束においては、糸切れ、毛羽等の発生がなく、非常に安定していた。又得られた織物はしなやかであり、多少乱暴に扱っても繊維の乱れや目崩れの発生が無く、取り扱いが極めて容易であった。
【0086】
次いでポリプロピレンフィルム上に室温硬化型エポキシ樹脂を塗布してあるシートの上に、上記の簾状の炭素繊維織布を配置して放置したところ、20分間の放置で樹脂の十分なしみこみが確認できた。
【0087】
更に、室温にて1週間放置して樹脂を硬化させることにより、コンポジットを成形した。このコンポジットから採取した引張試験片の室温での引張強度は、繊維含有率100%換算(織物の理論厚みで割り返した)で、4300MPaであった。
【0088】
実施例6
上記の実施例1と同様にして、表面酸化処理を施してあるフィラメント数12,000本の炭素繊維束を製造した。
【0089】
次いで上記の式(1)において、j+k=35、j>1、k>1、R1 =メチル基、R2 =メチル基からなる化合物(A−3)と、上記の式(2)において、m+n=60、m>1、n>1、R3 =メチル基、R4 =メチル基からなる化合物(B−1)との混合物(重量比1/1)の1.2重量%水溶液中に、上記の炭素繊維束をローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量0.5重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。
【0090】
次いで離型紙上にBステージ化したエポキシ樹脂を塗布してあるホットメルトシートの上に、上記のボビンから巻き出した炭素繊維束の63本を並列、配置してエポキシ樹脂を含浸させると共に、その上に保護フィルムを積層することにより、樹脂含有量約30重量%、炭素繊維目付100g/m2 、幅500mmのUDプリプレグを作製した。
【0091】
このUDプリプレグの製造工程中でのボビンからの炭素繊維束の巻き出しは非常に安定しており、糸切れや毛羽の発生等は全く無かった。又各炭素繊維束は、擦過バーを通過して均一に開繊しており、その表面には樹脂の未含浸部に起因する色斑等が無く、非常にフラットな外観のUDプリプレグが得られた。又、このUDプリプレグから保護フィルムを剥がすと急速に樹脂の吸い込みが生じ、これによって炭素繊維の優れた樹脂含浸性を確認することができた。
【0092】
比較例1
上記の実施例1と同様にして、表面酸化処理を施してあるフィラメント数12,000本の炭素繊維束を製造した。
【0093】
次いで上記の式(1)において、j+k=10、j>1、k>1、R1 =メチル基、R2 =メチル基からなる化合物(A−4)と、上記の式(2)において、m+n=60、m>1、n>1、R3 =メチル基、R4 =メチル基からなる化合物(B−1)との混合物(重量比1/1)の1.2重量%水溶液中に、上記の炭素繊維束をローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量0.5重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。
【0094】
次いで離型紙上にBステージ化したエポキシ樹脂を塗布してあるホットメルトシートの上に、上記のボビンから巻き出した炭素繊維束の63本を並列、配置してエポキシ樹脂を含浸させると共に、その上に保護フィルムを積層することにより、幅500mmのUDプリプレグを作製した。
【0095】
このUDプリプレグの製造工程中においては、ボビンからの炭素繊維束の巻き出しは非常に不安定であり、63本の炭素繊維束のうちの10本に糸切れが発生し、又擦過ローラーに付着した毛羽の量も多かった。更に得られたUDプリプレグの表面には毛羽が散在していた。
【0096】
比較例2
上記の実施例1と同様にして、表面酸化処理を施してあるフィラメント数12,000本の炭素繊維束を製造した。
【0097】
次いで上記の式(1)において、j+k=30、j>1、k>1、R1 =メチル基、R2 =メチル基からなる化合物(A−1)と、上記の式(2)において、m+n=120、m>1、n>1、R3 =メチル基、R4 =メチル基からなる化合物(B−3)との混合物(重量比1/1)の1.2重量%水溶液中に、上記の炭素繊維束をローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量0.5重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。
【0098】
次いで離型紙上にBステージ化したエポキシ樹脂を塗布してあるホットメルトシートの上に、上記のボビンから巻き出した炭素繊維束の63本を並列、配置してエポキシ樹脂を含浸させると共に、その上に保護フィルムを積層することにより、幅500mmのUDプリプレグを作製した。
【0099】
このUDプリプレグの製造工程中でのボビンからの炭素繊維束の巻き出しは非常に安定していたが、擦過ローラーとの摩擦係数が非常に小さく炭素繊維束に十分な張力を掛けることができなかった。そのために炭素繊維束を均一に開繊することが出来なかった。又得られたUDプリプレグの表面には凹凸があり、更にスプレットと呼ばれる炭素繊維のない部分も点在していた。
【0100】
比較例3
上記の実施例1と同様にして、表面酸化処理を施してあるフィラメント数12,000本の炭素繊維束を製造した。
【0101】
次いで上記の式(1)において、j+k=45、j>1、k>1、R1 =メチル基、R2 =メチル基からなる化合物(A−5)の3重量%水溶液中に、上記の炭素繊維束をローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量1.5重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。
【0102】
続いて、上記のサイジング処理された炭素繊維束をボビンから巻き出して、5本の金属製バーを配置させてなる開繊部を通過させた後、ドラムコーターにてマトリックス樹脂を付着、含浸させ、次いでマンドレル上に巻き付け速度10m/min、巻き付け張力4Kgfで巻き付けた。なおマトリックス樹脂には、ビスフェノールA型と酸無物系のエポキシ樹脂を用いた。
【0103】
続いて、上記のマンドレルの巻き付け品を加熱してマトリックス樹脂を効果させることにより、内径17mm、外径23mm、長さ300mmのパイプを成形した。
【0104】
上記のパイプの成形工程中において、ボビンからの炭素繊維束の巻き出しは当初安定していた。しかしながら、擦過ローラーとの摩擦係数が若干小さく、炭素繊維束に十分な張力を掛けるために、糸道を調整して擦過ローラーとの接触が大きくなるようにしなけばならなかった。更に時間の経過に伴なって、室温と各擦過ローラーの表面温度とが共に上昇し、炭素繊維束の張力が大きくなった。それに従って各擦過ローラー表面に汚れが発生し、又毛羽が堆積した。
【0105】
比較例4
上記の実施例1と同様にして、表面酸化処理を施してあるフィラメント数3,000本の炭素繊維束を製造した。
【0106】
次いでこの炭素繊維束を、上記の式(1)において、j+k=30、j>1、k>1、R1 =メチル基、R2 =メチル基からなる化合物(A−1)と、上記の式(2)において、m+n=60、m>1、n>1、R3 =メチル基、R4 =メチル基からなる化合物(B−1)との混合物(重量比3/1)の3.5重量%水溶液中にローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量2重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。
【0107】
次いで、上記の炭素繊維束からなる緯糸12.5本/インチと経糸12.5本/インチとによる炭素繊維目付200g/m2 の平織りクロスを、20mm/分の速度で織成したところ、この製織工程中においては、ボビンからの炭素繊維束の巻き出し及び他の擦過部での糸切れが発生した。又ボビンから巻き出されてくる炭素繊維束には多少のぬめり感があり、実際の巻き出だし部位では束間の粘着があった。更に、製織量の増加に従って擦過部に毛羽が堆積してしまうために、定期的な洗浄を必要とした。
【0108】
比較例5
上記の実施例1と同様にして、表面酸化処理を施してあるフィラメント数3,000本の炭素繊維束を製造した。
【0109】
次いでこの炭素繊維束を、上記の式(1)において、j+k=30、j>1、k>1、R1 =メチル基、R2 =メチル基からなる化合物(A−1)と、上記の式(2)において、m+n=60、m>1、n>1、R3 =メチル基、R4 =メチル基からなる化合物(B−1)との混合物(重量比1/3)の1.5重量%水溶液中にローラー浸漬した後、更に熱風乾燥してからボビンに巻き取ることにより、炭素繊維に対するサイズ剤の付着量0.6重量%のサイジング処理された炭素繊維束のボビン巻きを得た。
【0110】
次いで、離型紙上にBステージ化したエポキシ樹脂を塗布してあるホットメルトシートの上に、上記のボビンから巻き出した炭素繊維束の141本を並列、配置してエポキシ樹脂を含浸させると共に、その上に保護フィルムを積層することにより、樹脂含有量約30重量%、炭素繊維目付75g/m2 、幅500mmのUDプリプレグを作製した。
【0111】
このUDプリプレグの製造工程中においては、ボビンからの炭素繊維束の巻き出しが非常に安定しており、糸切れや毛羽の発生は全く無かったが、擦過バーでの均一な開繊がなされてなく、そのためにフラットな外観のUDプリプレグにはならなかった。
【0112】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の炭素繊維用サイズ剤によれば、機械的摩擦等による毛羽が発生し難く、工程通過性及び開繊性に優れ、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂に対して優れた含浸性を具備する炭素繊維束が得られる。
【0113】
又、本発明の炭素繊維のサイジング方法は、水溶液からなるサイジング浴を使用するものであるから、例えばアセトン等の有機溶剤溶液によるサイジングを行なう場合に比較して、サイズ剤液が安定で、しかもその取扱いが容易であり、かつ作業雰囲気の衛生性及び安全性も得られる。
【0114】
更に本発明のサイジング処理された炭素繊維は、工程通過性及び開繊性に優れ、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂に対する優れた含浸性を有しているので、該炭素繊維を使用したシート状物の製造が容易であり、しかも該炭素繊維を強化材とする炭素繊維強化樹脂組成物にするときの製造工程が安定であり、しかも均質な複合化が達成できる。
【0115】
又本発明の炭素繊維によるシート状物は、上記の特性を具備する炭素繊維を使用したシート状物であるので、該シート状物中には開繊性に優れ、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂に対する優れた含浸性を有する炭素繊維が含まれているために、該シート状物を強化材とする炭素繊維強化樹脂組成物にするときの製造工程が安定であり、しかも均質な複合化が達成できる。
【0116】
更に本発明の繊維強化複合材料は、上記の特性を具備する炭素繊維又は該炭素繊維を使用したシート状物を強化材とする炭素繊維強化樹脂組成物を成形してなるものであるので、該繊維強化複合材料の成形素材である炭素繊維強化樹脂組成物の均質な複合化が達成できるために、良好な力学的特性を備えたものになる。
Claims (5)
- 請求項1に記載の混合物の水溶液によって炭素繊維を処理することを特徴とする炭素繊維のサイジング方法。
- 請求項1に記載の混合物がその表面に付着していることを特徴とするサイジング処理された炭素繊維。
- 請求項3に記載の炭素繊維を使用してあることを特徴とするシート状物。
- 請求項3に記載の炭素繊維又は請求項4に記載のシート状物を強化材とする炭素繊維強化樹脂組成物を成形してなることを特徴とする繊維強化複合材料。
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