JP3680928B2 - 路面の摩擦係数推定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、路面の摩擦係数推定装置に係り、更に詳細には所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車輌に於いて路面の摩擦係数を推定する装置の一つとして、例えば本願出願人のうちの一の出願人の出願にかかる特開平7−132787号公報に記載されている如く、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に瞬間的に制動力を付与し、その際の車輪の接地荷重に対する制動力の比に基づき路面の摩擦係数を推定するよう構成された摩擦係数推定装置が従来より知られている。
【0003】
一般に、車輪の制動力は制動圧等より推定可能であり、また車輪の接地荷重も車輌の走行状態に基づき推定可能であるので、上述の先の提案にかかる摩擦係数推定装置によれば、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の車輪の制動力及び接地荷重を推定することにより路面の摩擦係数を推定することができる。
【0004】
また上述の先の提案にかかる摩擦係数推定装置によれば、左右一対の車輪に制動力が付与されるので、何れか一つの車輪に制動力が付与されたり、対角線に位置する一対の車輪に制動力が付与される場合に比して、付与される制動力に起因して車輌に余分なヨーモーメントが付与される虞れを低減し、車輌の走行安定性が低下する虞れを低減することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、車輌が左右一対の車輪に対応する摩擦係数が相互に異なる所謂またぎ路を走行するような場合には、摩擦係数推定のための制動力の自動付与によっても左右一対の車輪により相互に異なる制動力が発生される。
【0006】
しかるに上述の如き従来の摩擦係数推定装置に於いては、摩擦係数推定のための制動力の付与は車輌が不必要に減速されないよう比較的高い制動力の増減率にて運転者の意図に関係なく瞬間的に行われるので、走行路がまたぎ路である場合には摩擦係数推定のための制動力の付与により車輌に比較的急激に余分なヨーモーメントが発生し、そのため余分なヨーモーメントに対処するための運転者による修正操舵に十分な時間的余裕が与えられない虞れがある。
【0007】
本発明は、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の車輪の接地荷重に対する制動力の比に基づき路面の摩擦係数を推定するよう構成された従来の摩擦係数推定装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、摩擦係数推定のための制動力の付与に伴い車輌に余分なヨーモーメントが急激に発生することを防止することにより、摩擦係数推定のための制動力の付与に起因して車輌の走行安定性が急激に悪化する虞れを低減することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の主要な課題は、本発明によれば、アンチスキッド制御が行われる車輌に適用され、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、路面の摩擦係数の推定のために前記一対の車輪に制動力を付与するときには他の場合に比してアンチスキッド制御の開始閾値を低く設定することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置(請求項1の構成)、又は所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、前記一対の車輪の車輪速度若しくは路面の性状に基づき前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の概略値を推定し、前記二つの概略値の差として前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の差を推定する手段を有し、前記差の大きさが基準値以上であるときには路面の摩擦係数の推定のために前記一対の車輪に付与する制動力の増大率を他の場合に比して低減することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置(請求項3の構成)によって達成される。
【0009】
上記請求項1の構成によれば、摩擦係数推定のために左右一対の車輪に制動力が付与されるときには他の場合に比してアンチスキッド制御の開始閾値が低く設定されるので、摩擦係数推定のために左右一対の車輪に制動力が付与されるときには他の場合に比してアンチスキッド制御が早く開始され、従って車輌がまたぎ路を走行するような場合にも摩擦係数推定のために左右一対の車輪に制動力が付与されることに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが生じる虞れが低減される。
【0010】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、路面の摩擦係数の推定のために前記一対の車輪に制動力を付与している状況に於いて前記一対の車輪の一方についてアンチスキッド制御が実行されるときには、当該車輪とは左右反対側のアンチスキッド制御が実行されていない車輪に付与する制動力の増大率を他の場合に比して低減するよう構成される(請求項2の構成)。
上記請求項2の構成によれば、上記請求項1の構成による作用効果が得られることに加えて、摩擦係数推定のために左右一対の車輪に制動力が付与されている状況に於いて左右一対の車輪の一方についてアンチスキッド制御が実行されるときには、当該車輪とは左右反対側のアンチスキッド制御が実行されていない車輪に付与される制動力の増大率が他の場合に比して低減されるので、左右一対の車輪の制動力の差が急激に増大すること及びこれに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが生じる虞れが低減される。
【0011】
また上記請求項3の構成によれば、一対の車輪の車輪速度若しくは路面の性状に基づき一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の概略値が推定され、二つの概略値の差として左右一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の差が推定され、その差の大きさが基準値以上であるときには路面の摩擦係数推定のために左右一対の車輪に付与される制動力の増大率が他の場合に比して低減されるので、左右一対の車輪の制動力の差が急激に増大すること及びこれに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが生じる虞れが低減される。
【0012】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記一対の車輪の車輪速度若しくは路面の性状に基づき前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の概略値を推定し、前記二つの概略値の差として前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の差を推定する手段を有し、アンチスキッド制御の開始閾値を低く設定することは前記差の大きさが基準値以上であるときに行われるよう構成される(請求項4の構成)。
【0013】
請求項4の構成によれば、一対の車輪の車輪速度若しくは路面の性状に基づき一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の概略値が推定され、二つの概略値の差として左右一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の差が推定され、アンチスキッド制御の開始閾値が低く設定することは路面の摩擦係数の差の大きさが基準値以上であるときに行われるので、摩擦係数推定のために左右一対の車輪に制動力が付与されることに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが生じる虞れが一層確実に低減される。
【0014】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前記一対の車輪の車輪速度若しくは路面の性状に基づき前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の概略値を推定し、前記二つの概略値の差として前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の差を推定する手段を有し、車輪の制動力の増大率を低減することは前記差の大きさが基準値以上であるときに行われるよう構成される(請求項5の構成)。
【0015】
請求項5の構成によれば、一対の車輪の車輪速度若しくは路面の性状に基づき一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の概略値が推定され、二つの概略値の差として左右一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の差が推定され、車輪の制動力の増大率低減することは路面の摩擦係数の差の大きさが基準値以上であるときに行われるので、左右一対の車輪の制動力の差が急激に増大すること及びこれに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが生じる虞れが一層確実に低減される。
【0016】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、アンチスキッド制御の開始閾値は車輪の制動スリップの程度に関する閾値であるよう構成される(好ましい態様1)。
【0017】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2の構成に於いて、制動力の増大率は左右一対の車輪の一方についてアンチスキッド制御が実行される際の車輌のヨーモーメントを制御するヨーコントロール制御の制動力の増大率であるよう構成される(好ましい態様2)。
【0019】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3の構成に於いて、路面の摩擦係数推定装置は前記差の大きさが基準値以上であるときには路面の摩擦係数の推定のために一対の車輪に付与する制動力の減少率も他の場合に比して低減するよう構成される(好ましい態様)。
【0020】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5の何れかの構成に於いて、左右一対の車輪は左右の前輪であるよう構成される(好ましい態様4)。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0022】
第一の実施形態
図1は本発明による路面の摩擦係数推定装置の第一の実施形態を示す概略構成図である。
【0023】
図1に於て、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ車輌の左右の後輪を示している。操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール14の転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置16によりタイロッド18L 及び18R を介して操舵される。
【0024】
各車輪の制動力は制動装置20の油圧回路22によりホイールシリンダ24FR、24FL、24RR、24RLの制動圧が制御されることによって制御されるようになっている。図には示されていないが、油圧回路22はオイルリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧は通常時には運転者によるブレーキペダル26の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ28により制御され、また必要に応じて後に詳細に説明する如く路面の摩擦係数を推定する自動制動制御装置30若しくはABS制御装置32により制御される。
【0025】
自動制動制御装置30には圧力センサ34i(i=fl、fr、rl、rr)よりそれぞれ左右前輪及び左右後輪の制動圧Pi(i=fl、fr、rl、rr)(ホイールシリンダ24FR、24FL、24RL、24RR内の圧力)を示す信号が入力される。一方ABS制御装置32にはストップランプスイッチ(STPSW)36がオン状態にあるか否かを示す信号及び車輪速度センサ38i(i=fl、fr、rl、rr)より対応する左右前輪及び左右後輪の車輪速度Vwi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力される。更に自動制動制御装置30及びABS制御装置32は相互に必要な信号の送受信を行う。
【0026】
尚図には詳細に示されていないが、自動制動制御装置30及びABS制御装置32はそれぞれ例えばCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のマイクロコンピュータを含んでいる。
【0027】
自動制動制御装置30は、図2に示されたフローチャートに従い、路面の最大摩擦係数μmaxを推定すべきときには、左右前輪の制動圧Pfl、Pfrが所定値Po(正の定数)を越えるか又は左右前輪についてアンチスキッド制御が開始されるまで、左右前輪の制動圧を所定の増圧勾配にて増圧しつつ、左右前輪の前後力Fxj及び支持荷重Fzj(j=fl、fr)を演算し、Fxj/Fzjとして路面の摩擦係数μj1〜μjn(nは正の整数)を演算し、各摩擦係数の左右前輪の平均値μja1〜μjanを演算し、それらの平均値の最大値を最大摩擦係数μmaxとして選択し、しかる後左右前輪の制動圧を減圧する。
【0028】
一方ABS制御装置32は、図4に示されたフローチャートに従い、後述の如く各車輪速度Vwiに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車体速度Vbを推定すると共に、各車輪について推定車体速度Vbと車輪速度Vwiとの偏差として制動スリップ量SLi(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、推定車体速度Vbが制御開始閾値Vbs(正の定数)以上であり且つ制動スリップ量SLiが予め設定された閾値SLo以上であるときには、当該車輪の制動圧を増減制御することにより制動スリップ量を低減するアンチスキッド制御を行い、また車輌に過剰のヨーモーメントが作用しないよう必要に応じてアンチスキッド制御が行われる車輪とは左右反対側の車輪の制動力の増大率を制限するヨーコントロール制御を行う。
【0029】
特に図示の実施形態に於いては、自動制動制御装置30は、例えば本願出願のうちの一の出願人の出願にかかる特開平11−788435号公報に記載されている如く、各車輪の車輪速度Vwiに基づき左右輪に対応する路面の摩擦係数の勾配Dol及びDdrを演算し、勾配Dol及びDorに基づき左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrを演算し、これらの偏差の大きさが基準値μo(正の定数)以上であるときには、アンチスキッド制御の開始閾値SLoを低下させる指令信号をABS制御装置32へ出力し、また前輪のアンチスキッド制御に於けるヨーコントロール制御の制動力の増大率を低下させる指令信号をABS制御装置32へ出力する。
【0030】
またABS制御装置32は、運転者の制動操作による制動中又は自動制動制御装置30による自動制動中であるか否かを判定し、何れかの制動中であるときには閾値SLoを制動時の閾値SLob(正の定数)に設定し、非制動中であるときには閾値SLoをSLobよりも高い非制動時の閾値SLoh(正の定数)に設定し、特に自動制動制御装置30よりアンチスキッド制御の開始閾値を低下させる指令信号が入力されているときには0<Ks<1を満たす値を補正係数Ksとして閾値SLoをKsSLobに設定する。
【0031】
次に図2に示されたフローチャートを参照して第一の実施形態に於ける路面の摩擦係数推定制御について説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0032】
まずステップ10に於いては路面の最大摩擦係数μmaxの推定が行われるべきタイミングであるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ10が繰り返し実行され、肯定判別が行われたときにはステップ20に於いて路面の最大摩擦係数μmaxの推定が可能であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ10へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ80へ進む。
【0033】
この場合、例えばABS制御装置32より入力される各車輪の車輪速度Vwiに基づき推定される車体速度Vbが基準値以上であり且つ運転者の制動操作による制動が行われていない場合に路面の最大摩擦係数μmaxの推定が可能であると判別されてよい。
【0034】
ステップ80に於いては左右前輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配にて開始され、ステップ90に於いては圧力センサ34fl、34frにより検出された左右前輪の制動圧Pfl、Pfr等の信号の読み込みが行われ、ステップ100に於いてはABS制御装置32より入力される左右前輪の車輪速度Vwfl、Vwfrの時間微分値としてそれぞれ車輪加速度Vwdfl、Vwdfrが演算されると共に、制動圧を車輪の接地点に於ける前後力へ変換する係数をKp(正の定数)とし、車輪の慣性モーメントをJwとし、車輪の回転半径をRとして下記の式1に従って左右前輪の前後力Fxj(j=fl、fr)が演算される。
Fxj=KpPj+JwVwdj/R ……(1)
【0035】
ステップ110に於いてはABS制御装置32より入力される各車輪の車輪速度Vwiに基づき推定車体速度Vbが演算されると共に、推定車体速度Vbの時間微分値として車輌の推定前後加速度Vbdが演算され、左右前輪の静的支持荷重をそれぞれFzsj(j=fl、fr)とし、車輌の質量をWとし、車輌の重心高さをHとし、車輌のホイールベースをLとして下記の式2に従って左右前輪の支持荷重Fzj(j=fl、fr)が演算される。
Fzj=Fzsj+WHVbd/(2L) ……(2)
【0036】
尚上記式2に於いて、車輌横方向の荷重移動が考慮されないのは、後述の如く左右前輪に対応する路面の摩擦係数の平均値が路面の摩擦係数とされることにより、車輌横方向の荷重移動が左右前輪の支持荷重に与える影響が相殺されるからである。
【0037】
ステップ120に於いては前後力Fxj及び支持荷重Fzjに基づき下記の式3に従って左右前輪について路面の摩擦係数μj(j=fl、fr)が演算される。
μj=Fxj/Fzj ……(3)
【0038】
ステップ130に於いては左右前輪の制動圧Pj(j=fl、fr)の何れも基準値Po(正の定数)を越えているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ150へ進み、否定判別が行われたときにはステップ140へ進む。
【0039】
ステップ140に於いては左右前輪の何れについてもアンチスキッド制御が開始されたか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ90へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ150へ進む。
【0040】
ステップ150に於いては各サイクル毎にステップ120に於いて演算された左右前輪の摩擦係数μj1〜μjnの平均値μja1〜μjanが各サイクル毎に演算され、平均値μja1〜μjanのうちの最大値が最大摩擦係数μmaxとして選択され、ステップ160に於いては左右前輪の制動圧が非制動時の圧力まで減圧され、各車輪の制動圧がマスタシリンダ28の圧力により制御される状態に戻される。
【0041】
尚図2には示されていないが、ステップ90〜140が実行される過程に於いて運転者の制動操作による制動が開始されると、図2に示されたルーチンによる制御を終了し、各車輪の制動圧がマスタシリンダ28の圧力により制御される状態に戻される。
【0042】
次に図3に示されたフローチャートを参照して第一の実施形態に於けるアンチスキッド制御の開始閾値の制御及び前輪のヨーコントロール制御に於ける目標昇圧勾配の制御について説明する。尚図3に示されたフローチャートによる制御も図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0043】
まずステップ210に於いては車輪速度センサ38iにより検出された車輪速度Vwiを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ220に於いては前述の特開平11−788435号公報に記載された要領にて左右輪に対応する路面の摩擦係数の勾配Dol及びDorが演算され、勾配Dol及びDorに基づき左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrが演算される。
【0044】
ステップ230に於いては左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrの差の絶対値が基準値μo(正の定数)以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ210へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ240へ進む。
【0045】
ステップ240に於いては左右前輪に自動的に制動力を付与することによる路面の摩擦係数の推定中であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ210へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ250に於いてアンチスキッド制御の開始閾値を低下させる指令信号がABS制御装置32へ出力される。
【0046】
ステップ260に於いては左右前輪の一方についてアンチスキッド制御が実行されているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ210へ戻り、肯定判別が行われたときには前輪のアンチスキッド制御に於けるヨーコントロール制御の目標昇圧勾配を低下させる指令信号がABS制御装置32へ出力され、しかる後ステップ210へ戻る。
【0047】
次に図4に示されたフローチャートを参照して図示の実施形態に於けるアンチスキッド制御について説明する。尚図4に示されたフローチャートによる制御も図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に例えば左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の順に各車輪について繰返し実行される。またステップ330は左右後輪については省略され、ステップ320に於いて否定判別が行われたときにはステップ350へ進む。
【0048】
まずステップ310に於いてはストップランプスイッチ36がオン状態にあるか否かを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ320に於いてはストップランプスイッチ36がオン状態にあるか否かの判別、即ち運転者よる制動操作が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ340へ進み、否定判別が行われたときにはステップ330へ進む。
【0049】
ステップ330に於いては図2に示されたルーチンに従って自動制動制御装置30による自動制動が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ340に於いて制動時のアンチスキッド制御の開始条件が選択され、否定判別が行われたときにはステップ350に於いて非制動時のアンチスキッド制御の開始条件が選択される。具体的にはステップ340に於いてアンチスキッド制御のスリップ量についての閾値SLoがSLobに設定され、ステップ350に於いては閾値SLoが非制動時の閾値SLohに設定される。
【0050】
ステップ340の次に実行されるステップ342に於いては、自動制動制御装置30よりアンチスキッド制御の開始閾値を低下させる指令信号が入力されているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ360へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ344に於いて閾値SLoがSLobよりも低いKsSLobに設定された後ステップ360へ進む。
【0051】
ステップ360に於いてはアンチスキッド制御中であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ380へ進み、否定判別が行われたときにはステップ370へ進む。
【0052】
ステップ370に於いてはアンチスキッド制御の開始条件が成立しているか否かの判別、例えば推定車体速度Vbが制御開始閾値Vbs以上であり且つ車輪の制動スリップ量SLiが閾値SLo以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ310へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ390へ進む。
【0053】
ステップ380に於いてはアンチスキッド制御の終了条件が成立しているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ310へ戻り、否定判別が行われたときにはステップ390に於いて制動スリップ量SLiに応じて車輪の制動圧を増減制御することにより制動スリップ量を低減するアンチスキッド制御が実行される。
【0054】
尚ステップ380に於いては、
(1)運転者による制動又は自動制動制御装置による制動が終了
(2)推定車体速度Vbが制御終了閾値Vbf(正の定数)以下
の何れかの条件が成立する場合にアンチスキッド制御の終了条件が成立していると判定されてよい。
【0055】
ステップ400に於いては左右前輪についてはその一方がアンチスキッド制御されているときには図5に示されたルーチンに従ってアンチスキッド制御されていない他方の前輪についてヨーコントロール制御が実行され、左右後輪についてはその一方がアンチスキッド制御されているときには図6に示されたルーチンに従ってアンチスキッド制御されていない他方の後輪についてヨーコントロール制御が実行され、しかる後ステップ310へ戻る。
【0056】
図5に示されている如く、ステップ400のヨーコントロール制御ルーチンのステップ402に於いては左右前輪についてその一方のみがアンチスキッド制御されているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ410へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ404へ進む。
【0057】
ステップ404に於いては自動制動制御装置30よりヨーコントロール制御の目標昇圧勾配の低下指令信号が入力されているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ406に於いてアンチスキッド制御されていない左右反対側の前輪について実行されるヨーコントロール制御の目標昇圧勾配ΔPtが通常の昇圧勾配ΔPmax(正の定数)に設定され、肯定判別が行われたきにはステップ408に於いて0<Kp<1を満たす値を補正係数Kpとして目標昇圧勾配ΔPtがKpΔPmaxに設定される。
【0058】
ステップ410に於いてはステップ406又は408に於いて設定された目標昇圧勾配ΔPtに基づきアンチスキッド制御が実行されている左前輪又は右前輪とは左右反対側のアンチスキッド制御が実行されていない車輪について当技術分野に於いて公知の要領にて制動圧の増圧勾配をΔPt以下に制限するヨーコントロール制御が実行され、しかる後ステップ310へ戻る。
【0059】
また図6に示されている如く、ステップ412に於いては左右後輪についてその一方のみがアンチスキッド制御されているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ310へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ414に於いてアンチスキッド制御が実行されている左後輪又は右後輪とは左右反対側のアンチスキッド制御が実行されていない車輪について当技術分野に於いて公知の要領にて制動圧の増圧勾配を目標昇圧勾配ΔPmax以下に制限するヨーコントロール制御が実行され、しかる後ステップ310へ戻る。
【0060】
かくして図示の第一の実施形態によれば、路面の最大摩擦係数μmaxの推定が行われるべきタイミングであり、また路面の最大摩擦係数μmaxの推定が可能であるときには、ステップ10及び20に於いて肯定判別が行われ、ステップ80に於いて左右前輪の制動圧の増圧が所定の増圧勾配にて開始され、ステップ100に於いて左右前輪の前後力Fxjが演算され、ステップ110に於いて左右前輪の支持荷重Fzjが演算され、ステップ120〜150に於いて左右前輪の前後力Fxj及び支持荷重Fzjに基づき路面の最大摩擦係数μmaxが演算される。
【0061】
そしてステップ220に於いて左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrが演算され、左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrの偏差の絶対値が基準値μo以上であり、左右前輪に自動的に制動力を付与することによる路面の摩擦係数の推定中であるときには、ステップ230及び240に於いて肯定判別が行われ、ステップ250に於いてアンチスキッド制御の開始閾値を低下させる指令信号がABS制御装置32へ出力される。
【0062】
またアンチスキッド制御に於いて、制動中ではないときにはステップ320及び330に於いて否定判別が行われ、ステップ350に於いてアンチスキッド制御の開始閾値SLoとして非制動時の開始閾値SLohが選択されるが、制動中であるときにはステップ320又は330に於いて肯定判別が行われることにより、ステップ340に於いてアンチスキッド制御の開始閾値SLoとして制動時の開始閾値SLobが選択される。
【0063】
特に自動制動制御装置30よりアンチスキッド制御の開始閾値を低下させる指令信号が入力されているときには、ステップ342に於いて肯定判別が行われ、ステップ344に於いて閾値SLoがSLobよりも低いKsSLobに設定される。従って制動が運転者による制動よりも一般に急激な制動力の増大率にて行われる路面の摩擦係数の推定のための制動であり、しかも左右輪に対応する路面の摩擦係数の差が大きい状況に於いては、アンチスキッド制御の開始閾値SLoが通常の制動時よりも低下されるので、アンチスキッド制御を早めに開始させ、これにより摩擦係数推定のための制動力が左右前輪に付与されることに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが発生すること及びこれに起因して運転者に十分な修正操舵に対する時間的余裕が与えられなくなることを確実に防止することができる。
【0064】
尚アンチスキッド制御の開始閾値SLoが通常の制動時の値SLobよりも低い値に低下されても、左右の前輪が所定の制動スリップ状態になるまで左右前輪の制動力が増大されるので、アンチスキッド制御の開始閾値の低下に起因して路面の最大摩擦係数の推定精度が大きく悪化することはない。
【0065】
特に図示の第一の実施形態によれば、左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrの差の絶対値が基準値μo以上であるか否かが判別され、左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の差の絶対値が大きい場合にアンチスキッド制御の開始閾値を低下させる指令信号がABS制御装置32へ出力されるが、左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の差が小さく、摩擦係数推定のための制動力が左右前輪に付与されることに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが発生する虞れが小さいときには、閾値SLoはSLobに設定されるので、車輌に余分なヨーモーメントが発生することに起因する車輌の走行安定性の悪化を来すことなく路面の最大摩擦係数を正確に推定することができる。
【0066】
また図示の第一の実施形態によれば、左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrの偏差の絶対値が基準値μo以上であり、左右前輪に自動的に制動力を付与することによる路面の摩擦係数の推定中である場合に於いて、左右前輪についてはそれらの一方のみがアンチスキッド制御が実行されているときには、ステップ260に於いて肯定判別が行われ、ステップ270に於いて前輪のヨーコントロール制御の目標昇圧勾配を低下させる指令信号がABS制御装置32へ出力される。
【0067】
そして前輪のアンチスキッド制御に際し、ステップ402及び404に於いて肯定判別が行われ、ステップ408に於いて目標昇圧勾配ΔPtがKpΔPmaxに設定され、これによりステップ410に於けるアンチスキッド制御が実行されている車輪とは左右反対側の前輪について行われるヨーコントロール制御の制動圧の増圧勾配が低減されるので、このことによっても摩擦係数推定のための制動力が左右前輪に付与されることに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが発生すること及びこれに起因して運転者に十分な修正操舵に対する時間的余裕が与えられなくなることを確実に防止することができる。
【0068】
また図示の第一の実施形態によれば、上述のアンチスキッド制御の開始閾値の低下の場合と同様、左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrの差の絶対値が基準値μo以上であるか否かが判別され、左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の差の絶対値が大きい場合には前輪のヨーコントロール制御の目標昇圧勾配を低下させる指令信号がABS制御装置32へ出力されるが、左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の差が小さく、摩擦係数推定のための制動力が左右前輪に付与されることに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが発生する虞れが小さいときには、前輪のヨーコントロール制御の目標昇圧勾配は低下されないので、車輌に余分なヨーモーメントが発生することに起因する車輌の走行安定性の悪化を来すことなく車輌の制動性を向上させることができる。
【0069】
第二の実施形態
図7は本発明による路面の摩擦係数推定装置の第二の実施形態に於ける路面の摩擦係数推定制御ルーチンの要部を示すフローチャート、図8は第二の実施形態に於けるアンチスキッド制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0070】
尚図7及び図8に示されたフローチャートによる制御も図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。また図7及び図8に於いて、それぞれ図2及び図4に示されたステップに対応するステップにはそれぞれ図2及び図4に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
【0071】
この第二の実施形態に於いては、路面の摩擦係数推定ルーチンのステップ20に於いて肯定判別が行われると、ステップ30に於いてABS制御装置32より各車輪の車輪速度Vwiを示す信号の読み込みが行われ、ステップ40及び50がそれぞれ上述の第一の実施形態に於けるステップ220及び230と同様に実行される。
【0072】
そしてステップ50に於いて否定判別が行われると、ステップ60に於いて路面の摩擦係数推定の目的で左右前輪に制動力を付与するための増減圧勾配が通常の勾配に設定され、肯定判別、即ち左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrの差の絶対値が基準値μo以上である旨の判別が行われたときには、ステップ70に於いて路面の摩擦係数推定の目的で左右前輪に制動力を付与するための制動圧の増減圧勾配が通常の勾配よりも小さいまたぎ路時の勾配に設定され、しかる後上述の第一の実施形態の場合と同様にステップ80〜160が実行される。
【0073】
また上述の第一の実施形態に於ける図3に示されたアンチスキッド制御の開始閾値の制御及び前輪のヨーコントロール制御に於ける目標昇圧勾配の制御は行われず、これに対応してアンチスキッド制御は図8に示されたルーチンに従って実行され、図4のステップ342及び344に相当するステップは実行されず、またステップ400に於ける前輪のヨーコントロール制御に於いても目標昇圧勾配ΔPtの増減は行われない。
【0074】
かくして図示の第二の実施形態によれば、左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の差の絶対値が大きい状況に於いて、左右前輪に制動力を付与することによる路面の摩擦係数の推定が行われる場合には、摩擦係数推定の目的で左右前輪に付与される制動力の増減率が低減されるので、摩擦係数推定の目的で左右前輪に制動力が付与されることに起因して車輌に発生する余分なヨーモーメントの発生速度及び減少速度を低減し、これにより運転者が余分なヨーモーメントに起因する車輌挙動を是正するための修正操舵に対する時間的余裕が与えられなくなることを確実に防止することができる。
【0075】
特に図示の第二の実施形態によれば、上述の如く摩擦係数推定の目的で左右前輪に制動力を付与するための増圧勾配に加えて減圧勾配も低減されるので、増圧勾配のみが低減される場合に比して摩擦係数推定終了時に於ける車輌の走行安定性の悪化の虞れを低減することができる。
【0076】
また図示の第二の実施形態によれば、左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrの差の絶対値が基準値μo以上であるか否かが判別され、これらの差が小さく摩擦係数推定の目的で左右前輪に制動力が付与されることに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが発生する虞れが小さいときには、摩擦係数推定の目的で左右前輪に制動力を付与するための制動圧の増減率は低減されないので、左右前輪に制動力が付与されることに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが発生する虞れが小さい状況に於いては、摩擦係数推定のための制動力を左右前輪に速やかに付与し、これにより車輌が不必要に減速される虞れを低減することができる。
【0077】
尚上述の何れの実施形態に於いても、路面の最大摩擦係数を推定する目的で左右前輪に制動力が自動的に付与されるが、自動制動による制動力が付与されない左右後輪についてはステップ330が省略されるので、左右後輪についてもステップ330が実行されステップ340に於いて制動時のアンチスキッド制御の開始条件が選択される場合に比して、車輌の悪路走行時の如く制動以外の要因により路面反力に起因して車輪の減速スリップが大きくなる状況に於いて左右後輪について不必要なアンチスキッド制御が実行される虞れを低減することができる。
【0078】
以上に於ては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0079】
例えば上述の実施形態に於いては、路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrは前述の特開平11−788435号公報に記載された要領にて演算されるようになっているが、これらの概略値又は左右輪に対応する路面の最大摩擦係数の概略値の差は、例えば超音波などにより路面の性状を検出する装置の如く、当技術分野に於いて公知の任意の手段により検出又は推定されてよい。
【0080】
また上述の第一の実施形態に於けるアンチスキッド制御の開始閾値の低下量及び前輪のヨーコントロール制御の目標昇圧勾配の低下量は一定であり、また上述の第二の実施形態に於ける制動圧の増減勾配の低下量も一定であるが、これらの低下量は例えば路面の最大摩擦係数の概略値μl及びμrの差の大きさが大きいほど大きくなるよう、概略値μl及びμrの差の大きさに応じて可変設定されてもよい。
【0081】
また上述の第一の実施形態に於いては、アンチスキッド制御の開始閾値及び前輪のヨーコントロール制御の目標昇圧勾配の両者が必要に応じて低下されるようになっているが、これらの一方のみが低下されるよう修正されてもよく、また例えば第一の実施形態のステップ20の次に第二の実施形態のステップ40〜70が実行されることにより、第一及び第二の実施形態の構成が組み合わされてもよい。
【0082】
また上述の実施形態に於いては、路面の最大摩擦係数を推定する目的で自動制動制御装置32により左右前輪に自動的に制動力が付与されるようになっているが、左右後輪に制動力が付与されてもよく、その場合には左右前輪のアンチスキッド制御に於いて図4及び図8に示されたフローチャートのステップ330が省略される。
【0083】
また上述の実施形態に於いては、車輪の制動スリップが過大であるか否かの判別は制動スリップ量SLiにより判定されるようになっているが、推定車体速度Vbを基準速度とする制動スリップ率に基づき判定されてもよく、その場合にはステップ340及び350に於いて制動スリップ率の閾値が選択され、特にステップ340に於いてステップ350の場合よりも低い閾値が選択され、ステップ344に於いて更に低い閾値に設定される。
【0084】
更に上述の実施形態に於いては、制動装置は油圧式の制動装置であり、各車輪の制動力は対応する制動圧が制御されることにより制御されるようになっているが、制動装置は電磁気的に各車輪に制動力を付与する電気式の制動装置であってもよい。
【0085】
【発明の効果】
以上の説明より明らかである如く、本発明の請求項1の構成によれば、摩擦係数推定のために左右一対の車輪に制動力が付与されるときには他の場合に比してアンチスキッド制御を早く開始させ、これにより車輌がまたぎ路を走行するような場合にも摩擦係数推定のために左右一対の車輪に制動力が付与されることに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが生じる虞れを低減することができ、従って余分なヨーモーメントに対処するための運転者による修正操舵に十分な時間的余裕を与えることができる。
【0086】
また本発明の請求項2及び3の構成によれば、左右一対の車輪の制動力の差が急激に増大すること及びこれに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが生じる虞れを低減することができ、従って余分なヨーモーメントに対処するための運転者による修正操舵に十分な時間的余裕を与えることができる。
【0087】
また本発明の請求項4の構成によれば、摩擦係数推定のために左右一対の車輪に制動力が付与されることに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが生じる虞れを一層確実に低減することができ、請求項5の構成によれば、左右一対の車輪の制動力の差が急激に増大すること及びこれに起因して車輌に急激に余分なヨーモーメントが生じる虞れを一層確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による路面の摩擦係数推定装置の第一の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】第一の実施形態に於ける摩擦係数推定制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】第一の実施形態に於けるアンチスキッド制御の開始閾値の制御及びヨーコントロール制御に於ける目標昇圧勾配の制御のルーチンを示すフローチャートである。
【図4】第一の実施形態に於けるアンチスキッド制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図4に示されたフローチャートのステップ400に於ける前輪のヨーコントロール制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図4に示されたフローチャートのステップ400に於ける後輪のヨーコントロール制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】第二の実施形態に於ける摩擦係数推定制御ルーチンの要部を示すフローチャートである。
【図8】第二の実施形態に於けるアンチスキッド制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10FR〜10RL…車輪
20…制動装置
28…マスタシリンダ
30…自動制動制御装置
32…ABS制御装置
34i…圧力センサ
36…ストップランプスイッチ(STPSW)
38i…車輪速度センサ

Claims (5)

  1. アンチスキッド制御が行われる車輌に適用され、所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、路面の摩擦係数の推定のために前記一対の車輪に制動力を付与するときには他の場合に比してアンチスキッド制御の開始閾値を低く設定することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置。
  2. 路面の摩擦係数の推定のために前記一対の車輪に制動力を付与している状況に於いて前記一対の車輪の一方についてアンチスキッド制御が実行されるときには、当該車輪とは左右反対側のアンチスキッド制御が実行されていない車輪に付与する制動力の増大率を他の場合に比して低減することを特徴とする請求項1に記載の路面の摩擦係数推定装置。
  3. 所定の制動力又は所定のスリップ状態になるまで左右一対の車輪に制動力を付与し、その際の制動力に基づき路面の摩擦係数を推定する路面の摩擦係数推定装置にして、前記一対の車輪の車輪速度若しくは路面の性状に基づき前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の概略値を推定し、前記二つの概略値の差として前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の差を推定する手段を有し、前記差の大きさが基準値以上であるときには路面の摩擦係数の推定のために前記一対の車輪に付与する制動力の増大率を他の場合に比して低減することを特徴とする路面の摩擦係数推定装置。
  4. 前記一対の車輪の車輪速度若しくは路面の性状に基づき前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の概略値を推定し、前記二つの概略値の差として前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の差を推定する手段を有し、アンチスキッド制御の開始閾値を低く設定することは前記差の大きさが基準値以上であるときに行われることを特徴とする請求項1に記載の路面の摩擦係数推定装置。
  5. 前記一対の車輪の車輪速度若しくは路面の性状に基づき前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の概略値を推定し、前記二つの概略値の差として前記一対の車輪に対応する路面の摩擦係数の差を推定する手段を有し、車輪の制動力の増大率を低減することは前記差の大きさが基準値以上であるときに行われることを特徴とする請求項2に記載の路面の摩擦係数推定装置。
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