JP3680566B2 - コンクリ−ト構造体の貫通孔成形用装置及びコンクリート構造体の貫通孔製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、貫通孔を有するコンクリート構造体を製造する際に所定間隔を隔てて対向する一対の型枠の開口に両端部が保持される貫通孔成形用装置及びそれを用いた貫通孔製造方法で、特に、長スパンのプレキャストセグメント工法に有用である。
【0002】
【従来技術】
貫通孔の長さが1m以下の程度のものは、スパイラルシース管のみを両型枠開口に保持して貫通孔が成形されることが多い。貫通孔の長さが略1mを超えるものは、剛性補強体として鋼製、硬質塩ビ製等の剛性パイプに貫通孔の形成体としてのシース管を外装したものが両型枠開口に保持される装置が知られている。この装置では、コンクリート材料の固化後に該パイプを抜去し該開口からはみ出しているシース管の各々切断・除去の仕上作業が行われる。この仕上作業は上記1m以下の貫通孔製造でも同様に行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記装置は以下の問題を有している。スパイラルシース管のみの使用は、コンクリート打設の圧力、重量により成形される貫通孔の変形あるいは長さ方向の曲りが容易に発生する。これを防止するためシース管に挿入される剛性パイプは、長スパンの貫通孔の場合に重くなりコンクリート打設現場の人手による取扱い、保管が容易でない。また、貫通孔の開口からはみ出したシース管の切断・除去・その端面の研磨等の仕上作業が避けられない。更に、シース管内周面と剛性パイプ外周面の間に余剰の隙間があるためコンクリート打設の圧力、重量により、シース管の外周面に落込み、凹み等の変形を起こし易いし、あるいは、剛性パイプが型枠に保持されているのでシース管が型枠開口の径方向に位置ずれを起こし易のと、該パイプの抜去しが困難になり易い。これにより、シース管に適合するパイプの外径の選択が容易でなくコンクリート打設の事前試行が必要となる場合もある。
【0004】
更に、シース管を型枠開口に挿入することを容易にするため、シース管の外径が型枠開口の口径より小さいためその隙間からコンクリート材料の吐露漏れは避けられない。特に、長スパンのプレキャストセグメント工法の場合、製造された該セグメントが吐露漏れにより貫通孔の開口部付近の強度不足強いては機能への影響が懸念される。また、吐露漏れしたコンクリートの剥離等の仕上作業が必須となる。
【0005】
本発明は、これら問題に鑑みなされたもので、コンクリート構造体の貫通孔成形用装置及びそれを用いた貫通孔製造方法を提供するもので、第1の課題は装置の軽量化・縮小化で装置の搬入・架設・抜去し・保管等の取扱いを著しく容易にすること、第2の課題は長スパンに渡る貫通孔の形成体の変形防止を図ること、第3の課題は型枠の開口からのコンクリート材料の吐露漏れがないこととしている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1記載の発明は、貫通孔を有するコンクリート構造体を製造する際に用いられる貫通孔成形用装置において、該装置は、流体の入出により膨縮可能にした柔軟性のチューブ体と、該チューブ体に外装し前記孔の形成体として所定形状をした可撓性の筒状体とで構成されており、該装置の両端部が所定間隔を隔てて対向する一対の型枠の開口に各々保持される場合に、該両端部が該チューブ体であり、該装置の該筒状体の両開口が前記型枠開口間の内側に各々位置していることを特徴とする手段を有している。
【0007】
このことより、該装置のチューブ体が流体の入出で径方向の膨縮及び長さ方向の折畳みが可能となり、チューブ体が軽量化・縮小化しその搬入・架設・保持・抜去し・保管の取扱いが著しく容易になる。更に、所定形状をした筒状体の内周面の略全長に加圧膨張したチューブ体が密着するため、該チューブ体が剛性の補強体としての機能を持つことになり前記孔の形成体の変形及び位置ずれ防止となる。更に、両型枠の開口に保持される装置の端部が加圧膨張した柔軟なチューブ体のため、該開口からのコンクリート材料の吐露漏れがなくなる。更に、筒状体の全長が型枠内に埋設されるためコンクリート構造体の開口部仕上作業は不要となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1において、チューブ体がゴム製ホースであることを特徴とする手段を有する。このことより、所定形状をした筒状体の内周面に密着するチューブ体に流体加圧されたゴム弾性が付加するため、該チューブ体が剛性の補強体としての機能をより強化することになる。更に、該チューブ体がゴム弾性による膨張容易性のため筒状体の口径に合うチューブ体の選択は容易となる。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1乃至請求項2において、筒状体がスパイラルシース管であることを特徴とする手段を有する。このことより、筒状体が薄肉・軽量・安価で入手が容易なプレキャスト用スパイラルシース管で可撓性もあるため取扱い易く、型枠内の形状保持性及びシース管とチューブ体との剥離性も良くなり、チューブ体の挿入・抜去しが容易となる。このことで、長スパンのプレキャストセグメント工法によるコンクリート構造体に100〜150個前後の貫通孔を成形する場合でも確実にチューブ体の繰返し再使用回数が増加しコンクリート打設作業の効率が向上する。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3において、型枠開口間の内側に位置する筒状体の開口の内径が前記型枠開口の内径より小であることを特徴とする手段を有する。このことより、筒状体の開口から型枠開口までは膨張したチューブ体が貫通孔を成形することになり、貫通孔が開口方向に漸次拡径する。これにより、隣合うコンクリート構造体の貫通孔の開口部が各々大きいため、該開口部の間に生じる段差によるPC鋼線、ケーブル線等の挿通性不良の防止となる。更に、上記既設のコンクリート構造体の開口部にチューブ体の一端部を挿入して新たに型枠を隣接することができるため、作業用隙間のない所で貫通孔を有するコンクリート構造体の製造が可能となる。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4記載の装置を用いたコンクリート構造体の貫通孔製造方法において、該装置の両端部を所定の前記型枠開口に架設し、流体の注入で該チューブ体を加圧膨張し該筒状体の内周面に密着させることで該装置を形成する工程と、前記型枠内にコンクリート材料を注入し固化するまで該装置を保持した後、該流体の排出で該チューブ体を収縮し抜去ることで該筒状体を前記孔の形成体とする工程とからなることで、前記孔の形成体の変形を防止することを特徴とする手段を有する。このようにすれば、請求項1乃至請求項4記載の発明と同じく上述の課題を解決することができる。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項4記載の装置を用いたコンクリート構造体の貫通孔製造方法において、該装置の両端部を所定の前記型枠開口に架設し、流体の注入で該チューブ体を加圧膨張し該筒状体及び前記型枠開口の各々内周面に密着させることで該装置を形成する工程と、前記型枠内にコンクリート材料を注入し固化するまで該装置を保持した後、該流体の排出で該チューブ体を収縮し抜去ることで該筒状体を前記孔の形成体とする工程とからなることで、該装置と前記型枠開口との隙間からのコンクリート材料の吐露漏れを防止することを特徴とする手段を有している。このようにすれば、請求項1乃至請求項4記載の発明と同じく上述の課題を解決することができる。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項6において、請求項4記載の装置を用いて、貫通孔が開口方向に漸次拡径していることを特徴とする手段を有する。このようにすれば、請求項4記載の発明と同じく上述の課題を解決することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
チューブ体は、厚み4〜10mmのゴム製あるいは柔軟な樹脂製で、膨縮できるものであれば良い。使用する加圧力によっては補強繊維がスパイラル状に内装されたゴム製ホースが特に有効である。該チューブ体の両端部に加圧密封できるための金具が各々付き、一端側の金具に給排気バルブの付いたパイプ、他端側の金具に密閉栓を備えている。また、密閉栓に替えてホース継手金具とすることができる。該パイプにバルブの他に必要に応じ圧力計あるいは調整弁を備えても良い。
【0015】
筒状体は、可撓性の鋼板、アルミ製、硬質段ボールあるいは硬質樹脂製等でいずれも厚み0.3〜5mmの薄肉のもので、その形状は製造される貫通孔の3角形、方形、円形あるいは楕円形等の所要形状をしており、該形状の強度はチューブ体の挿入が容易にできる程度に該形状を維持できるもので良い。筒状体は成形された貫通孔から取除いても良いが、好ましくは、薄肉・軽量・安価で可撓性もあり形状保持が良く容易に入手でき、孔の周壁にも使用できるプレキャスト用スパイラルシース管が有効である。
【0016】
特に、筒状体の長さは、該筒状体の両開口の位置が両型枠の開口間の内側に各々位置する長さのもであれば良い。好ましくは、該位置が該型枠開口より各々50〜100mm程度の所にあると、貫通孔の直進性確保のために良い。
【0017】
更に、筒状体の両開口の位置が両型枠の開口より各々50〜100mm程度で、且つ、該筒状体の口径が該型枠開口の口径より10〜20mm程度小にすると貫通孔が開口方向に漸次拡径することが容易にできる。
【0018】
両型枠間が長スパンの場合は、複数の筒状体を直列にすることにより、また、必要によりチューブ体も同様にホース金具継手を用いて直列に繋ぐことにより、装置の長尺化が容易に可能となる。
【0019】
貫通孔を有するコンクリート構造体を製造する際に、前記孔の形成体となる筒状体の変形を防止する手段の装置を形成する工程は、チューブ体に外装した筒状体で構成される装置の両端部が所定間隔を隔てて対向する一対の型枠の開口に各々、該チューブ体が保持され、その開口の内周面に該チューブ体が加圧膨張し密着する。次に、前記孔の形成体とする工程は、型枠内にコンクリート材料の注入・固化を行う。必要ならば圧力計あるいは調整弁により装置の形状を保持しコンクリートの固化後、該流体を排出しチューブ体を縮径・抜去ることによる。
【0020】
特に、型枠の開口からのコンクリート材料の吐露漏れを防止する手段、貫通孔が開口の方向に漸次拡径する手段及び貫通孔開口部の仕上作業を不要とする手段は、筒状体の両開口が前記型枠開口間の内側に各々位置する上述の該筒状体をチューブ体に外装し、該チューブ体を両型枠開口に架設し、該チューブ体を加圧膨張し該型枠開口及び該筒状体の各々内周面に密着させて、チューブ体を両型枠開口に保持することによる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は、貫通孔が開口方向に漸次拡径したコンクリート構造体の製造で、筒状体2を外装したチューブ体3が一対の両型枠の開口41、42に保持された貫通孔成形用装置1の長さ方向上半分断面図を含む側面図が示されている。開口41、42の口径は90mmφである。参考例である図2は、チューブ体3に外装した筒状体2が開口42に保持され、対向する開口41にチューブ体3が保持された場合の貫通孔成形用装置1の長さ方向上半分断面図を含む側面図が示されている。図3は、チューブ体3の長さ方向上半分の断面図。図4は、方形の筒状体2に円筒状のチューブ体3が膨張拡径した貫通孔成形用装置1の径方向断面図。図5は、プレキャストセグメント工法による幅33m、長さ5mのコンクリート構造体6の用途を説明するための正面図。PC鋼線、ケーブル線等が挿入される貫通孔で90mmφの開口5が十数箇所例示されている。
【0022】
図1の筒状体2は、厚み0.3mm、口径80mmφ、長さ4.9mのプレキャスト用スパイラルシース管である。
【0023】
図3のチューブ体3は、厚み6mm、外径68mmφ、長さ6.25mで両端に金具31,32が付いたゴム製ホースで、補強繊維34がスパイラル状に2層内装され設計耐圧7.0kg/cm2で、加圧2.0kg/cm2のとき外径が92mmφとすることができる。チューブ体3は図6の如く、折畳むことができる。金具31は給排気バルブ(図示せず)の付いたパイプ33を備え、金具32は密閉栓(図示せず)を備える。
【0024】
図1による貫通孔製造方法の装置1を形成する工程は、筒状体2の両開口が両型枠開口41、42間の内側に各々位置するようにチューブ体3に外装され、チューブ体3を両型枠開口41,42に架設する。次に、パイプ33を通して加圧空気2kg/cm2を注入しチューブ体3を加圧膨張して両型枠開口41,42及び筒状体2の各々内周面に密着させて、チューブ体3を両型枠開口41、42に保持することにより装置1となる。
【0025】
前記孔の形成体とする工程は、型枠4の内側にコンクリート材料を注入し固化後、該空気を排出しチューブ体3を収縮・抜去することにより筒状体2は前記孔の形成体となる。
【0026】
上記実施例の方法による筒状体2の変形防止効果は、全長200mmの筒状体2を外装したチューブ体3に空気加圧を2.0kg/cm2行い、該筒状体の全長を圧縮試験機で径方向に204kg/cm2まで徐々に加圧した後除圧し、該チューブ体を抜去した後の筒状体2の口径に変形が目視されなかった。
【0027】
【発明の作用及び効果】
以上、本発明を詳細に説明したように、特に長スパンのコンクリート構造体で多数の貫通孔を成形する装置及びその貫通孔製造方法は、チューブ体が軽量かつ折り畳むことができるため取扱いが格段に容易となる。更に、加圧膨張した可撓性のチューブ体が所定形状をした筒状体と一体化することで、剛性の補強体として機能するため前記孔の形成体としての筒状体の変形防止となる。特に、型枠の開口に保持されのが加圧膨張したゴム製の弾性チューブ体のとき、コンクリート材料の吐露漏れ防止効果と剛性の補強体として機能が顕著となる。
【0028】
更に、筒状体が薄肉・軽量・安価なプレキャスト用スパイラルシース管は可撓性もあるので、その取扱い易く、形状保持性及びチューブ体との剥離性も良いため、チューブ体の挿入・抜去しが容易となりチューブ体の耐久性も向上する。更に、前記孔の形成体として筒状体の両開口の位置が両型枠開口間の各々内側に位置するとき、貫通孔の両端開口部の仕上作業がなくなる。更に、該筒状体の内径を両型枠開口の内径より小とする装置により貫通孔を各々開口方向に漸次拡径することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例のチューブ体が両型枠開口に保持された装置の長さ方向断面図を含む側面図。
【図2】 本参考例の筒状体が一方の型枠開口に保持され、対向する型枠開口にチューブ体が保持された場合の装置の長さ方向断面図を含む側面図。
【図3】 本実施例のチューブ体の長さ方向上半分断面図。
【図4】 チューブ体に方形の筒状体を外装した場合の装置の径方向断面図。
【図5】 プレキャストセグメント工法によるコンクリート構造体の用途を説明する正面図。
【図6】 本実施例のチューブ体を折畳んで保管している概要図。
【符号の説明】
1 装置
2 筒状体
3 チューブ体
31、32 チューブ体の両端末の金具
4 型枠
41、42 型枠の開口部
5 貫通孔の開口部
Claims (7)
- 貫通孔を有するコンクリート構造体を製造する際に用いられる貫通孔成形用装置において、該装置は、流体の入出により膨縮可能にした柔軟性のチューブ体と、該チューブ体に外装し前記孔の形成体として所定形状をした可撓性の筒状体とで構成されており、該装置の両端部が所定間隔を隔てて対向する一対の型枠の開口に各々保持される場合に、該両端部が該チューブ体であり、該装置の該筒状体の両開口が前記型枠開口間の内側に各々位置していることを特徴とするコンクリート構造体の貫通孔成形用装置。
- 請求項1において、チューブ体がゴム製ホースであることを特徴とするコンクリート構造体の貫通孔成形用装置。
- 請求項1乃至請求項2において、筒状体がスパイラルシース管であることを特徴とするコンクリート構造体の貫通孔成形用装置。
- 請求項1乃至請求項3において、型枠開口間の内側に位置する筒状体の開口の内径が前記型枠開口の内径より小であることを特徴とするコンクリート構造体の貫通孔成形用装置。
- 請求項1乃至請求項4記載の装置を用いたコンクリート構造体の貫通孔製造方法において、該装置の両端部を所定の前記型枠開口に架設し、流体の注入で該チューブ体を加圧膨張し該筒状体の内周面に密着させることで該装置を形成する工程と、前記型枠内にコンクリート材料を注入し固化するまで該装置を保持した後、該流体の排出で該チューブ体を収縮し抜去ることで該筒状体を前記孔の形成体とする工程とからなることで、前記孔の形成体の変形を防止することを特徴とするコンクリート構造体の貫通孔製造方法。
- 請求項1乃至請求項4記載の装置を用いたコンクリート構造体の貫通孔製造方法において、該装置の両端部を所定の前記型枠開口に架設し、流体の注入で該チューブ体を加圧膨張し該筒状体及び前記型枠開口の各々内周面に密着させることで該装置を形成する工程と、前記型枠内にコンクリート材料を注入し固化するまで該装置を保持した後、該流体の排出で該チューブ体を収縮し抜去ることで該筒状体を前記孔の形成体とする工程とからなることで、該装置と前記型枠開口との隙間からのコンクリート材料の吐露漏れを防止することを特徴とするコンクリート構造体の貫通孔製造方法。
- 請求項6において、請求項4記載の装置を用いて、貫通孔が開口方向に漸次拡径していることを特徴とするコンクリート構造体の貫通孔製造方法。
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