JP3678109B2 - ニッケル−水素蓄電池とそれに用いる水素吸蔵合金負極の製造方法 - Google Patents
ニッケル−水素蓄電池とそれに用いる水素吸蔵合金負極の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル−水素蓄電池とそれに用いる水素吸蔵合金負極の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からよく用いられている蓄電池としては、ニッケル−カドミウム蓄電池あるいは鉛蓄電池等が挙げられる。ところで、近年、これらの電池よりも軽量で且つ高容量で高エネルギー密度となる可能性があるということで、水素吸蔵合金を負極材料として用いた水素吸蔵負極を備えたニッケル−水素蓄電池が注目されている。
【0003】
このアルカリ蓄電池の負極に用いる水素吸蔵合金負極は、一般に、特開昭61−66366号公報に示されるように、ポリテトラフルオロエチレンやポリエチレンオキサイドなどの結着剤と水素吸蔵合金粉末とを混練してペーストを作製し、パンチングメタル等の芯体の両面に前記ペーストを塗着、乾燥して作製される。こうして作製された水素吸蔵負極は、ニッケル−カドミウム蓄電池に用いられている焼結式ニッケル正極との間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回した状態で電池外装缶に収容されニッケル−水素蓄電池が構成される。
【0004】
ここで、上記ニッケル−水素蓄電池では、過充電時に正極、負極で次式に示すようにガス発生反応が起こり、電池内圧が上昇する。特に、急速充電においてはこの圧力上昇が顕著になる。
【0005】
【式1】
【0006】
そこで、特開平2−291665号公報には、水素吸蔵合金負極表面に撥水性樹脂を設ける製造の一例として、PVAにフッ素樹脂粉末を分散させた水溶液に負極を塗布する方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水素吸蔵合金負極の表面に、有機溶媒にフッ素樹脂粉末を分散した溶液を塗布する際、溶液中のフッ素樹脂粉末の粒子の大きさにバラツキが大きいため、塗布ノズルの詰まりや負極への塗布むらが発生し、フッ素樹脂粉末の偏在している水素吸蔵合金負極の表面は、電解液の液周りが悪化するので、この負極を用いて例えばニッケル−水素蓄電池を構成するとその電池内圧が上昇するという問題が起こる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、水素吸蔵合金粉末を主成分とするペーストを支持体に充填または塗着して水素吸蔵合金負極を作製し、撥水剤であるフッ素樹脂粉末と有機溶媒とを混合した溶液を、超音波振動を加えながら有機溶媒にフッ素樹脂を分散させた状態で、水素吸蔵合金負極の表面に塗布する水素吸蔵合金負極の製造方法とした。
【0009】
これにより、水素吸蔵合金極板に塗布されたフッ素樹脂の比表面積の増加を図ることと、極板の撥水性が増加し水素吸蔵合金の水素ガス吸収の向上を目的としている。また、ノズルの詰まりや塗布むらを低減することを目的としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、水素吸蔵合金粉末を主成分とするペーストを支持体に充填または塗着して水素吸蔵合金負極を作製し、撥水剤であるフッ素樹脂粉末と有機溶媒とを混合した溶液を、超音波振動を加えながら前記有機溶媒に前記フッ素樹脂を分散させた状態で、前記水素吸蔵合金負極の表面に塗布する水素吸蔵合金負極の製造方法としたものである。
【0011】
これにより、フッ素樹脂粉末が、ノズルに詰まることを防ぐことができ、水素吸蔵合金負極の表面に均一に塗布されるので、撥水性が増加し水素吸蔵合金の水素ガス吸収の向上が図れる。
【0012】
また、上記の超音波振動は、周波数5〜40kHz、振幅40〜100μmであるのが好ましい。周波数が5kHz、振幅40μmでは充分な分散効果が得られない。周波数が40kHz、振幅100μmを超えると大きな超音波の発生装置が必要であり現実的でない。
【0013】
さらに、上記の有機溶媒に対してフッ素樹脂粉末の量は、4〜15%であると撥水性の効果が得られるとともに、均一に塗布することができるので好ましい。
【0014】
さらにまた、上記の水素吸蔵合金負極の表面に塗布するフッ素樹脂粉末の量は、0.10〜2.0mg/cm2であるのが好ましく、このフッ素樹脂粉末の量が、0.10mg/cm2より少ないと撥水性の効果が十分ではなく、また2.0mg/cm2より多いと電解液を吸収し難くなり水素吸蔵合金負極の抵抗が上昇するので好ましくない。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0016】
焼結式ニッケル基板に活物質である水酸化ニッケルを充填して正極1を作製した。
【0017】
合金組成がMm3.55Mn0.4Al0.3Co.75(Mmは希土類の混合物)で表わされる水素吸蔵合金を、湿式ボールミルにより水中で平均粒径30μmになるように機械的に粉砕した水素吸蔵合金粉末を作製した。この合金粉末と、同重量の80℃に加温した比重1.30の水酸化カリウム水溶液に60分浸漬攪拌し、水洗した水のpHが10以下になるまで水洗し、水素吸蔵合金粉末スラリーを得た。
【0018】
この合金粉末スラリーの重量100に対し、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを0.15重量%、導電剤としてカーボンブラックを0.3重量%、結着剤としてのスチレン−ブタジエン共重合体を0.8重量%及び分散媒として水とを混合しペーストを作製した。
【0019】
このペーストをパンチングメタルからなる導電性支持体表面に塗着した後、乾燥及び加圧を行い負極2を得た。
【0020】
このようにして得られた水素吸蔵合金負極2の表面に、5.89重量%のテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPという。)粉末を分散媒であるエタノールに加えた溶液を作製し、この溶液を攪拌するとともに、超音波振動を振幅80μm、周波数20kHzの条件で加えながら、溶液中のFEP粉末を分散させた状態(このときのFEP粉末の粒径は5〜72μmであった。)で、0.20mg/cm2,0.41mg/cm2,0.61mg/cm2の量で噴霧して本発明の負極2−1,2−2,2−3の3種類を作製した。
【0021】
このようにして作製した負極2−1〜2−3のそれぞれと焼結式ニッケル正極1とを、ポリプロピレン製の不織布からなるセパレータ3を介して捲回させ、渦巻状の電極群4を作製し、これを電池ケース5に収納し、この電池ケース5内に30重量%の水酸化カリウム水溶液をアルカリ電解液として注液した後、電池ケース5の上部を封口板6で密閉して、AAAサイズで公称容量750mAhの本発明の実施例における円筒密閉型ニッケル−水素蓄電池A1,A2,A3を作製した。
【0022】
(比較例)
上記実施例で作製した負極2の表面に、5.89重量%のFEP粉末を分散媒であるエタノールに加えて攪拌して溶液(このときのFEP粉末の粒径は20〜150μmであった。)を作製し、これを0.20mg/cm2,0.41mg/cm2,0.61mg/cm2の量で噴霧して比較例の負極7−1,7−2,7−3の3種類を作製した。
【0023】
比較例の負極7−1,7−2,7−3のそれぞれを用いた以外は、上記実施例と同じ構成とした比較例のニッケル−水素蓄電池B1,B2,B3を作製した。
【0024】
(実験1)
実施例の電池A1,A2,A3と比較例の電池B1,B2,B3のそれぞれの電池は、予めケースの底部に孔をあけて、この孔部に内圧測定用の圧力センサーを取り付けて、45℃の雰囲気下で2時間放置後、750mAの電流で1.2時間充電を行いながら、電池内圧を測定した。この結果を(表1)に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
(表1)から明らかなように、実施例と比較例は、FEP粉末の塗布量が多くなると電池内圧が下がる。また、実施例と比較例を比較すると、FEP粉末の塗布量が同じ場合は、実施例の電池内圧は、比較例のそれよりも低くなり、実施例の電池は、比較例の電池よりも良好である。
【0027】
これは、図1に示すように、実施例では、その負極2の表面に塗布されているFEP粉末が均一に分散されており撥水性が良好であるので電池内圧が低く良好であるのに対して、比較例ではその負極7の表面にFEP粉末が凝集して不均一な状態となって撥水性が損なわれるので電池内圧が高くなり良好ではないものとなったと考えられる。
【0028】
さらに、このことは、SEM写真で実施例の負極2の表面に分散しているFEP粉末の粒径を測定すると、5〜90μmであり、同じく負極7の表面に位置するFEP粉末の粒径を測定すると20〜200μmであったことからもわかる。
【0029】
上記の実施例では、負極2の表面に撥水剤としてFEP粉末を用いたが、PTFEなどのフッ素樹脂粉末を用いても同様な効果が得られる。
【0030】
また、上記の実施例では、負極2の表面に撥水剤としてFEP粉末の量は、有機溶媒に対して5.89重量%としたが、その量としては、4〜15重量%の範囲であれば同様な効果が得られる。
【0031】
さらに、上記の実施例では、負極表面に分散しているFEP粉末の粒径の範囲は5〜90μmであったが、この粒径の好ましい範囲は5〜100μmである。
【0032】
さらにまた、上記実施例の負極2の表面に塗布されているFEP粉末の量は0.20〜0.61mg/cm2の範囲であったが、FEP粉末の量としては、0.10〜2.0mg/cm2の範囲が好ましい。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、水素吸蔵合金電極の表面に、有機溶媒に分散させたフッ素樹脂を微粉化して塗布することで、フッ素樹脂の比表面積の増加が図れることと、極板の撥水性が増加し水素吸蔵合金の水素ガス吸収の向上が可能となり電池内圧上昇を抑制でき、また、ノズルの詰まりや塗布むらを低減することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における負極と比較例の負極の表面状態を示す図
【図2】本発明の実施例におけるニッケル−水素蓄電池の半裁断面図
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電極群
5 電池ケース
6 封口板
7 比較例の負極
Claims (6)
- 水素吸蔵合金粉末を主成分とするペーストを支持体に充填または塗着して水素吸蔵合金負極を作製し、撥水剤であるフッ素樹脂粉末と有機溶媒とを混合した溶液を、超音波振動を加えながら前記有機溶媒に前記フッ素樹脂を分散させた状態で、前記水素吸蔵合金負極の表面に塗布する水素吸蔵合金負極の製造方法。
- 超音波振動は、周波数5〜40kHz、振幅40〜100μmである請求項1記載の水素吸蔵合金負極の製造方法。
- 有機溶媒に対してフッ素樹脂粉末の量は、4〜15%である請求項1記載の水素吸蔵合金負極の製造方法。
- 水素吸蔵合金負極の表面に塗布するフッ素樹脂粉末の量は、0.10〜2.0mg/cm2である請求項1記載の水素吸蔵合金負極の製造方法。
- 水酸化ニッケルを主体とする正極と、水素吸蔵合金負極と、セパレータと、および電解液とからなるニッケル−水素蓄電池であって、前記水素吸蔵合金負極の表面には、粒径の範囲が5〜100μmのフッ素樹脂粉末が塗布されているニッケル−水素蓄電池。
- 水素吸蔵合金負極の表面に塗布されているフッ素樹脂粉末の量は、0.10〜2.0mg/cm2である請求項5記載のニッケル−水素蓄電池。
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