JP3673568B2 - 堆積膜形成装置及びこれを用いた堆積膜形成方法 - Google Patents

堆積膜形成装置及びこれを用いた堆積膜形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒状導電性基体上に堆積膜、とりわけ機能性堆積膜、特に半導体デバイス、電子写真用光受容部材、画像入力用ラインセンサー、撮像デバイス、光起電力デバイス等に用いるアモルファス半導体等を形成するプラズマCVDによる堆積膜形成装置及びこれを用いた堆積膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
像形成分野において、光受容部材における光受容層を形成する光導電材料としては、高感度で、SN比[光電流(Ip)/暗電流(Id)]が高く、照射する電磁波のスペクトル特性に適合した吸収スペクトルを有すること、光応答性が早く、所望の暗抵抗値を有すること、使用時において人体に対して無害であること等の特性が要求される。特に、事務機としてオフィスで使用される電子写真装置内に組み込まれる電子写真用光受容部材の場合には、上記の使用時における無公害性は重要な点である。
【0003】
こうした要求を満足し得る材料としてアモルファスシリコン(a−Si)を用いた電子写真用光受容部材が挙げられる。例えば特開昭54−86341号公報には、a−Siを光導電層に用いた、耐湿性、耐久性、電気特性に優れた電子写真用光受容部材に関する技術が記載されている。また、特開昭62−168161号公報には、表面層として、シリコン原子と炭素原子と41〜70atomic%の水素原子を構成要素として含む非晶質材料で構成された材料を用いる技術が記載されている。
【0004】
こうした技術により電気的、光学的、光導伝的特性、および、使用環境特性や耐久性が向上し、更に、画像品位の向上の可能なa−Siで構成された電子写真用光受容部材が実用化されるところとなった。
【0005】
一方で、a−Si電子写真用光受容部材の製造には高度な技術が必要とされる。特に電子写真用光受容部材の場合、他のデバイスに比較して、大面積でかつ厚い膜厚が必要とされるので、どの様に均一性を確保するか、また、a−Si膜堆積中に異物を核として発生する膜の異常成長をどのように防止するかが重要な要素となる。
【0006】
その様な観点から、いかに工業的に安定して高品位なa−Si電子写真用光受容部材を製造するかの点についても様々な提案がなされて来た。特に電子写真用光受容部材については、コピー画像上に細かい白い点が発生するいわゆる「白ポチ」の原因となる球状突起の発生と、部位によって画像濃度が変化するムラが重大な問題となるので、これらの改善のための提案がなされている。
【0007】
例えば特開平4−26764号公報には、堆積膜形成装置において原料ガス導入装置を多重管構造とし電極と兼用することで、電子写真用光受容部材の特性ムラを改善するための技術が記載されている。また特開平4−247877号公報には、ガス放出穴近傍をセラミックで形成し球状突起の発生を防止する技術が記載されている。
【0008】
球状突起の発生原因としては、ほこりや堆積膜形成装置内部に付着した膜が剥れる事によって生じる破片などが基体や形成途中の堆積膜に付着し、これを核として堆積膜が異常成長を起こす事がわかっている。こうした堆積膜形成装置内部の膜の剥れを防止するために、堆積膜形成装置の内部構造をできるだけ単純化することが、堆積膜の密着性を向上させ、また膜が堆積する部分の表面積を減少させる上でも効果的である。その様な意味で、上述の従来技術の様に電極と原料ガス導入装置の機能を兼用させることは有効な手段である。
【0009】
以上の様な従来技術を用いることで、特性ムラや、球状突起の少ない電子写真用光受容部材を安定して得る事が可能になった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、電子写真装置は従来にも増して、高画質化、高速化、高耐久化が求められている。更に、サービスコストの低減のため、各部品の信頼性向上によりメンテナンス回数の低減が必要とされる。この様な状況のもとで、電子写真用光受容部材は様々な環境下でサービスマンのメンテナンスを受けないまま、以前にも増して長時間繰り返し使用を続けられる様になった。この様な状況下では、従来の電子写真用光受容部材は改善されるべき余地が残されている。
【0011】
例えば従来のガス導入管と電極を兼用した装置では、電極に高周波電力を印加する場合、条件によって微小な「白ポチ」が発生する場合があった。また画像濃度ムラについても条件によって発生する場合があった。この様な画像濃度ムラも画像形成の高速化が進むにつれて、従来は問題にならなかった軽微な特性ムラ、例えば光感度ムラ等が顕著に現れる様になってきた。
【0012】
「白ポチ」については、従来問題にならなかった程度の微小な球状突起が存在し且つ高速で画像形成を長期に渡って繰り返した際は、その部分の疲労が次第に進み、場合によっては球状突起部分が欠落することで「白ポチ」を発生させることがわかった。しかしながら、この様な微小な球状突起は、単に原料ガス導入装置のガス放出穴近傍の膜の密着性を向上させるように材質や表面性を検討してもその効果はほとんど得られなかった。
【0013】
また、画像濃度ムラについても、例えば原料ガス導入装置を三重管や四重管構造などにし、またガス放出穴の配置や直径等を調整しても本質的に防止することは困難であった。
【0014】
本発明の目的は、堆積膜の異常成長を抑制し、球状突起の発生を低減でき、特に画像品質に優れた電子写真用光受容部材の製造に好適な堆積膜形成装置およびこれを用いた堆積膜形成方法を提供することにある。
【0015】
また本発明の別の目的は、プラズマの局在化を防止し、原料ガスの供給を放電空間全域に渡って均一ならしめることで、全面に渡って高度に均質化された堆積膜を形成でき、特に画像品質に優れた電子写真用光受容部材の製造に好適な堆積膜形成装置およびこれを用いた堆積膜形成方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明により達成できる。
【0017】
反応容器内に原料ガスを導入し且つ高周波電力を導入する原料ガス導入装置兼電極を備え、前記高周波電力によってグロー放電を発生させることにより前記原料ガスを分解して前記反応容器内に配置した基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置であって、前記原料ガス導入装置兼電極は、少なくとも前記高周波電力を導入するための円筒状または円柱状の電極と、該電極の表面を前記グロー放電領域より分離するために該電極を覆う円筒状の絶縁体とを有して成り、該絶縁体には、前記原料ガスを前記グロー放電領域へ導入する複数のガス放出穴が形成され、前記原料ガス導入装置兼電極には、供給された原料ガスを前記ガス放出穴に導入する原料ガス流路が、前記電極と前記電極を覆う絶縁体の電極側表面に囲まれた空間に形成されるか、または前記電極を覆う絶縁体の内部に形成された空間に形成され、前記原料ガス流路は前記原料ガス導入装置兼電極の周方向に複数配されており、且つ、各々の原料ガス流路の幅が0.5〜13mmであることを特徴とする堆積膜形成装置。
【0018】
上記本発明の堆積膜形成装置を用いた堆積膜形成方法において、前記堆積膜形成装置の反応容器内に基体を配置し、前記原料ガス導入装置兼電極のガス放出穴から原料ガスを前記基体側に導入し且つ前記原料ガス導入装置兼電極の電極から高周波電力を導入し、該高周波電力によってグロー放電を発生させることにより前記原料ガスを分解して前記基体上に堆積膜を形成することを特徴とする堆積膜形成方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明では、原料ガス導入手段と高周波導入手段とを兼用構造とし、しかも上述の特徴的構成にした原料ガス導入装置兼電極(原料ガス導入管兼電極)を用いることによって、堆積膜形成装置の内部構造を簡略化すると共に、電極に高周波を印加した場合であっても、従来の原料ガス導入装置兼電極で見られた球状突起の発生や、電子写真用光受容部材の特性ムラや、膜厚ムラを本質的に抑制できる。以下、本発明の作用を、本発明の完成に至った経緯と共に詳細に説明する。
【0020】
電子写真用光受容部材において、収率を左右する要因のひとつに球状突起の発生が挙げられる。この球状突起の発生の防止について、前述の様に電極と原料ガス導入装置を兼用することは有効な手段であった。しかし、この様な装置であっても、前述した様に微小な球状突起の発生や電子写真用光受容部材の膜厚ムラを含む特性ムラの発生を抑えることは困難である。そこで、本発明者は、従来の原料ガス導入装置兼電極におけるプラズマの局在化現像および原料ガス導入の偏りについて着目し、以下の様な解析を行った。
【0021】
ガス導入管のガス放出穴付近は堆積膜が剥れ易く、この部分での膜剥れが原因となって球状突起が形成される例が多い。この様なガス放出穴周辺の部分での膜の密着性を向上させる技術は、前述の特開平4−247877号公報に詳しく記載されている。しかしながら、本発明者が行なった解析によれば、ガス放出穴付近に剥れ易い膜を形成する様な本質的な現象が存在するので、この様に膜の密着性を向上させるだけでは効果が十分ではないことがわかって来た。
【0022】
ガス導入管の表面に形成されたガス放出穴の周辺には、周囲の放電よりも明るい放電領域が現れ、極端な場合はグロー放電中に目視においてもガス放出穴から炎を吹き出すように見える。以下、この現象を便宜上「吹き出し」と呼ぶ。
【0023】
本発明者の解析によれば、「吹き出し」部分ではプラズマ中の飽和電子電流が「吹き出し」の無い部分に比べて増加しており、プラズマが局在していることが確かめられた。この様な部分では、周囲の正常な部分に比べてかなり異なった活性種が生れていると考えられる。その結果、ガス放出穴の周囲に剥れやすい膜が堆積する。特に、条件によっては「吹き出し」部分の周囲にポリシラン様の粉体が発生する場合もある。これらの膜や粉体は、堆積膜形成過程において、原料ガスの突出圧力や堆積膜形成装置内部の圧力変化等の要因で原料ガス導入装置兼電極の表面から飛び散り、電子写真用光受容部材に微小な「白ポチ」を形成する核となることがわかった。
【0024】
また、上記の様なプラズマの局在状態が、電子写真用光受容部材の特性にも影響を与えることもわかった。本発明者の知見によれば、基体の堆積膜形成中の表面付近では、「吹き出し」部分に見られる様な飽和電子電流の顕著な上昇は確認されなかった。にもかかわらず、実際の電子写真用光受容部材では、ガス導入管のガス放出穴の位置に対応してムラが見られることが確認された。これは電子の移動度が高いので比較的早く拡散、散逸して平均化し、これにより電子飽和密度の測定では差が現れないが、一方、イオンや中性の活性種は電子に比べれば重く、拡散し難く基体表面付近まである程度の分布を持っているので、これが電子写真用光受容部材の特性に影響を与え、画像濃度ムラを引き起こす事によると推測される。
【0025】
こうした状況を緩和する目的で、例えば原料ガスの突出圧力が軽減する様に、ガス放出穴の径を大きくする等の対策は余り有効ではない。本発明者は、後に詳しく述べるが、ガス放出穴の直径を変化させた場合の電子写真用光受容部材上の球状突起の様子や特性ムラの変化を調べる実験を行なった。この実験によれば、ある程度まではガス放出穴の直径を広げるに従って、球状突起や特性ムラが改善される方向にあるものの、その効果は十分ではなかった。また、更にガス放出穴を広げると逆に球状突起が悪化すると同時に、膜厚ムラが悪化する傾向があることが確かめられた。これは、ガス放出穴径を大きくすると、ガスの突出圧力が下がり、プラズマの局在が緩和される効果がある反面、ガス導入管内部へのプラズマの回り込みが起こり易くなり、この部分からの膜剥がれが生じるためと考えられる。
【0026】
この様な点から、「吹き出し」の発生原因はガスの突出圧力が高い事に因るのではなく、電極の表面に開けられた穴(くぼみ)がプラズマ中に露出して穴(くぼみ)の周囲に電界が集中する事に因ると考えられる。また、本発明者は「吹き出し」の原因を確認するために、直径2mm、深さ2.5mmのくぼみを電極表面に設けて飽和電子電流の測定を行なったところ、実際に「吹き出し」が発生した事を確認している。
【0027】
本発明者はこうした経緯から、電極を絶縁体で被覆することで、グロー放電領域から分離する方法について検討した。しかしながら、原料ガス流路を原料ガス導入管兼電極内部に形成する場合、電極から放射された高周波電界が原料ガス流路に侵入するため、条件によっては原料ガス流路内部でグロー放電が発生する。このような場合、原料ガス流路内部のグロー放電で生成されたポリシラン様の粉体や、原料ガス流路の壁面に付着した膜が剥がれた破片などがガス放出穴から吹き出す結果となり、多量の粒状突起が発生すると同時に特性ムラも悪化する。
【0028】
以上の様な理由により、従来の原料ガス供給機構では、「白ポチ」の抑制と、電子写真用光受容部材の膜厚ムラまで含んだ特性の均一化を高いレベルで両立することは困難であった。
【0029】
本発明は、上記の様な解析に基づき完成された。すなわち、本発明に用いる原料ガス導入装置兼電極においては、電極の表面(従来プラズマに接していた部分)が絶縁体で覆われてグロー放電領域より分離され、原料ガスはこの絶縁体に形成されたガス放出穴を通して放電空間に放出され、且つ原料ガス流路の幅を0.5〜13mmの範囲とすることで、上述の様なガス放出穴周辺での電界の集中が発生せず、原料ガス流路の内部でグロー放電の発生を防止できるので、この結果ガス放出穴周辺での堆積膜の密着性が向上すると共に、ポリシラン様の粉体の発生を効果的に防止することができる。更には、「吹き出し」が根本的に発生しないので、プラズマの局在化を防止でき、堆積膜のムラの発生を本質的に抑止できる。
【0030】
本発明では、原料ガス流路の幅を0.5mm以上13mm以下とすることが重要である。原料ガス流路の幅を0.5mm未満にすると、原料ガス流路とガス放出穴のコンダクタンスの関係から、実用的なガス放出穴の配置や大きさでは、原料ガスを均一にグロー放電領域に供給することが困難なため、膜厚ムラ、特性ムラが大きくなる傾向がある。一方、原料ガス流路の幅を広げていくと、原料ガス流路の内部で放電が起り易い傾向が顕著になる。また、原料ガス流路の内部で原料ガスのよどみが発生し易くなる。こうしたよどみ部分ではダスト等が滞留し易く、堆積膜形成中に徐々にダストが放電空間に放出される傾向があるため、球状突起の発生に繋がる場合がある。
【0031】
したがって本発明の目的を達成するためには、原料ガス流路の幅を0.5以上13mm以下にすることが重要であり、最適には1mm以上5mm以下の範囲にすることが望ましい。なお、本発明において原料ガス流路の幅とは、原料ガスが流れる方向に対して垂直の断面における最長の幅を指す。また、上述の原料ガス流路の幅は例えば熱膨張などを考慮した上で、実際の堆積膜形成時の条件での幅をさす。
【0032】
本来、このような空間の大きさと放電の起き易さの関係は、パッシェンの法則に従って理論的に計算される。しかし、パッシェンの法則では、ガス種や圧力、高周波電源の周波数、電極の形状などがパラメータとして含まれているため、実際の放電条件は厳密には決めにくい。本発明者は実験を繰り返すことによって、原料ガス流路の内部でのグロー放電の発生を防止し、球状突起の発生と電子写真用光受容部材の特性の悪化を防止する条件を経験的に見い出したものである。
【0033】
本発明に用いる原料ガス導入装置兼電極は、少なくとも高周波電力を供給するための電極と電極の表面をグロー放電領域より分離するために覆う絶縁体とを有して成る。例えば、電極の表面を公知のコーティング法に従い絶縁体で被覆すれば、電極の耐性も向上した原料ガス導入装置兼電極が得られる。コーティングの材料としては、アルミナ、二酸化チタン、酸化マグネシウム等が挙げられる。特に、アルミナ、二酸化チタン等の耐酸性の良好な材料およびこれらの混合材料が適している。コーティング方法には特に制限は無く、CVD法、メッキ法、溶射法等が採用できる。特に溶射法は、コスト面やコーティング対象物の大きさ形状の制限を受け難い点から好ましい。とりわけプラズマ溶射法は、気孔率が低く密着性も良好なのでより好ましい。
【0034】
電極の形状と、この電極を覆う絶縁体の形状は、加工性や原料ガスを均等に放出する観点から円筒形状(または円柱形状)が望ましい。また、電極および絶縁体の配置についても同様の理由から同心円状に配置することが望ましい。
【0035】
電極を覆う絶縁体の大きさには特に制限は無い。ただし、複数の円柱状導電性基体を同一円周上に配置し、原料ガス導入装置兼電極を円柱状導電性基体の配置円内に設置する場合には、円筒形状の絶縁体の大きさ(すなわち円柱形状の原料ガス導入装置兼電極全体としての大きさ)は、この基体が配置される円周の直径に対して4〜25%程度の直径にすることが好ましい。また、円筒形状の絶縁体の被覆厚も特に制限は無いが、加工上の問題から0.5〜20mm程度の厚さが実用的である。更に、円筒形状(または円柱形状)の電極自体の直径についても特に制限は無く、上述の絶縁体の直径と原料ガスの流路の幅を満足できる範囲にすればよい。実用的には直径2mm以上が望ましい。
【0036】
原料ガス導入装置兼電極の長さには特に制限は無い。ただし、電子写真用光受容部材の特性の均一化の点から、基体の長さに対して90〜125%程度の長さが望ましい。ここで言う原料ガス導入装置兼電極の長さとは、電極を覆う絶縁体に同一方向(原料ガス導入装置兼電極の長さ方向)に開けられた複数の原料ガス放出穴のうち、最も離れた2つの穴の中心点の距離を指す。電極単体の長さは、絶縁体内部に電極を保持する点からは、原料ガス導入装置兼電極の長さに対して100〜150%程度の長さが望ましい。ただし、逆に原料ガス導入装置兼電極に対して100%未満の長さであっても、本発明の効果を得るには何等差し支えない。ここで言う電極単体の長さとは、実質的に放電空間内に高周波を放出する作用を有する部分を指す。
【0037】
絶縁体に形成するガス放出穴の大きさと個数は、原料ガスの流量、圧力などの条件と関連づけて決定すればよい。ガス放出穴が丸穴の場合、その大きさは直径0.4mm〜2.5mm程度が好ましい。直径0.4mm未満ではガス放出穴の周辺に堆積した膜によってガス放出穴が詰まる傾向にあり、逆に直径2.5mmを越えると電子写真用光受容部材の膜厚ムラや特性ムラを均一化するのが困難な傾向にある。ガス放出穴の個数については特に制限は無いが、電極を覆う絶縁体の単位表面積に対して、0.04〜0.31個/cm2 程度が好ましい。これらのガス放出穴の配置には特に制限は無いが、複数の方向に原料ガスを放出させるように配置することが望ましい。
【0038】
特に同一円周上に複数の円筒状導電性基体を配置し、この円周内に原料ガス導入管兼電極を配置する構成とした場合には、円筒状導電性基体の個数をnとして、n、またはn/2(nが偶数の場合)の方向に等配置するのが望ましい。
【0039】
電極の材質は、導電性のものであれば何れも使用できるが、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Ni、Te、V、Ti、Pt、Pb、Fe等の金属の他、これらの合金、例えばステンレス等が使用できる。また、表面を導電処理した絶縁体も使用でき、この場合、絶縁体としては、アルミナセラミックス、窒化アルミニウム、窒化ほう素、シリコン、コージェライト、ジルコンコージェライト、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、マイカ系セラミックス、石英ガラス、パイレックスガラス等が使用できる。
【0040】
電極を覆う絶縁体の材質は、前述したコーティング材料に限られず、例えば、アルミナセラミックス、窒化アルミニウム、窒化ほう素、シリコン、コージェライト、ジルコンコージェライト、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、マイカ系セラミックス、石英ガラス、パイレックスガラス等も使用できる。また加工性などの点から、テフロン、ポリスチレン等の樹脂を用いることもできる。
【0041】
更に、この絶縁体の少なくとも放電空間に接する側の表面に、主として堆積膜の膜剥れを防止する目的で凹凸を設けることもできる。この場合、凹凸の大きさとしては、2.5mmを基準長さとする+点平均粗さ(Rz)で5μm以上200μm以下の範囲が好ましい。表面に凹凸を設ける手段としては、特に制限はないが、例えば投射体を吹きつけるブラスト加工等が実用的に好ましい。
【0042】
本発明では、電極と電極を覆う絶縁体の表面に囲まれた領域に、電極の周方向に複数に分離された原料ガスの流路を設けることができる。本発明において、原料ガス導入管兼電極の内部に形成され且つ電極の周方向に複数配置された原料ガス流路とは、単に二重管構造にして内部に原料ガスを流入可能とした単一流路の従来の原料ガス導入管兼電極とは異なり、例えば、複数の障壁が二重管構造内部に周方向に等間隔に存在しており、この障壁が周方向への原料ガスの流れを制限するような構成を指す。この場合絶縁体に形成されたガス放出穴は周方向に配置された原料ガス流路の各々に対応して設ければ良い。また、こうして分離された各々の原料ガス流路の幅は前述の範囲にあることは言うまでもない。
【0043】
上記の様に原料ガス流路を電極の周方向に複数に分離した原料ガス導入管兼電極では、原料ガス流路を複数に分離しない場合の原料ガス導入管兼電極に比べて、原料ガス流路の幅を同じとした場合、原料ガス流路内部での原料ガスのよどみを減少させることができるので球状突起の発生をより効果的に防止できる。また、原料ガスの電極の周方向の流れが制限されるので、原料ガス導入管兼電極の周方向に渡って、原料ガスの供給が均一化される。したがって、反応容器内の同一円周上に複数の円筒状基体を配置し、この円周内に原料ガス導入管兼電極を設けた堆積膜形成装置の構成をとる場合には、複数の円筒状基体の間の堆積膜の特性のばらつきが効果的に抑制できる。
【0044】
本発明で、原料ガス流路を電極の周方向に複数に分離する場合、電極の表面と絶縁体の電極側表面とを密着させることが、原料ガス流路の分離を容易にする点から望ましい。ただし、機械加工上の問題点や電極の温度上昇による熱膨張などが問題となる場合は、隙間を設けてもさしつかえない。この場合、隙間の幅は原料ガスの流れを制御する立場から、0.5mm未満にすることが望ましい。ここで言う隙間の幅は、熱膨張等を考慮した実際の堆積膜形成時の条件での隙間の値を指す。本発明において、原料ガス流路を電極の周方向に複数配することは、電極の周方向への原料ガスの流れを実質的に制限しうる複数の障壁を設けることを指す。例えば上述の様な隙間が存在する場合であっても、電極の周方向への原料ガスの流れが実質的に制限されていれば、本発明の効果が得られる。
【0045】
原料ガス流路を形成するための方法としては、例えば、電極の表面に溝を切ることで原料ガス流路を形成する方法、絶縁体の電極側表面に溝を切ることで原料ガス流路を形成する方法、絶縁体内部に原料ガス流路を形成する方法、電極と電極を覆う絶縁体が形成する隙間に中子を挿入する方法等が挙げられる。
【0046】
以下、図面を用いて、原料ガス流路が内部に形成された原料ガス導入装置兼電極の例を説明する。
【0047】
図1は参考例であり、電極を絶縁体で覆い、電極と絶縁体の電極側表面に囲まれた空間によって原料ガス流路を形成した場合の円柱形状の原料ガス導入管兼電極を例示する模式図であり、図1(a)は直径方向の断面図、図1(b)は母線方向(伸線方向)の断面図である。
【0048】
図1の例では、原料ガス導入管兼電極102は円柱形状であり、円柱形状の電極112を絶縁体113でおおい、電極112と絶縁体113の電極側表面で囲まれた空間により原料ガス流路117を形成する構成より成る。絶縁体113には、所望の位置に所望の個数のガス放出穴116が貫通形成されている。原料ガス流路114の上端には上部から原料ガスを供給するための原料ガス導入口115が開口されている。図1の例では、原料ガス流路117の幅は、原料ガス流路117内に取れる電極112の接線の長さとして定義される。すなわち、母線方向を含む面に垂直に交わる断面において最も長い直線距離である。
【0049】
図1の例では、原料ガス導入装置(不図示)より供給される原料ガスは、原料ガス導入口115を通して原料ガス流路117に導入された後、絶縁体113に形成されたガス放出穴116を通して放電空間に放出される。
【0050】
図1の例では、原料ガス流路117の上端に1個の原料ガス導入口115を形成したが、本発明はなんらこれに限定されず、所望に応じて予め原料ガスの配管を分岐して複数の原料ガス導入口115より原料ガスを導入しても良い。また、原料ガスの導入口115は原料ガス流路117の下端に形成されても良いし、上記の様に予め分岐した原料ガスの配管をもって、原料ガス流路の上下に形成されてもさしつかえない。
【0051】
図2は、電極の表面に溝を切ることで原料ガス流路を形成した場合の円柱形状の原料ガス導入装置兼電極を例示する模式図であり、図2(a)は直径方向の断面図、図2(b)は電極表面に形成された原料ガス流路を示すための電極表面の展開図である。
【0052】
図2の例では、原料ガス導入装置兼電極102は円柱形状であり、円柱形状の電極112の表面を絶縁体113の層で覆った構成より成る。原料ガス流路117は円柱形状の電極112の表面に周方向に等間隔となる4箇所の位置(すなわち断面円における角度が、0度、90度、180度および270度の位置)に伸線方向に伸びた溝を切ることで形成された流路であり、この電極112の溝面と電極を覆う絶縁体113の電極側表面に囲まれた空間から成る。すなわち、電極112の表面の溝以外の部分が原料ガス流路を周方向に分離する障壁として機能する。また、原料ガス流路117の各々の側面を構成する絶縁体113には、所望の位置に所望の個数のガス放出穴116が貫通形成されている。原料ガス流路114は、円柱形状の電極112の表面に各2本の原料ガス流路117の中間の2箇所の位置(すなわち断面円における角度が、45度および225度の位置)に伸線方向に伸びた溝を切ることで形成された流路であり、この電極112の溝面と電極を覆う絶縁体113の電極側表面に囲まれた空間から成る。また、原料ガス流路114の各々の上端には外部から原料ガスを供給するための原料ガス導入口115が開口形成されている。原料ガス流路121は、円柱形状の電極112の表面に各1本の原料ガス流路114とこの両側に隣接する各2本の原料ガス流路117とが連通する様に伸線方向に対し垂直に伸びた溝を上下2本切ることで形成された流路であり、この電極112の溝面と電極を覆う絶縁体113の電極側表面に囲まれた空間から成る。
【0053】
図2の例では、原料ガス導入装置(不図示)より供給される原料ガスは、原料ガス導入口115を通して原料ガス流路114内に導入され、原料ガス流路121を通して原料ガス流路117に導入された後、更に絶縁体113に形成されたガス放出穴116を通して放電空間に放出される。
【0054】
図2の例の様に電極表面に溝を切って原料ガス流路を形成した場合、比較的簡単な機械加工で複雑な原料ガス流路が形成できるため、絶縁体に貫通形成された各々のガス放出穴から放出される原料ガスの流量の調節が容易であり、この結果特に原料ガスの流量が比較的少ない条件で堆積膜の上下方向の膜厚の均一化が図り易い。また、前述したコーティング法により電極の耐性を向上させることが容易である。
【0055】
図2の例では、1本の原料ガス流路117あたり上下2本の原料ガス流路121を形成したが、本発明は何等これに限定されず、原料ガス流路121は所望に応じて1本にしても良いし、3本以上の多数本を並列に配置させた構成にしても良い。また、図2の例では、予め原料ガスの配管を分離して、2本の原料ガス流路114(2つの原料ガス導入口115)から原料ガスを導入する構成にしたが、本発明は何等これに限定されず、所望に応じて1本の原料ガス流路114から原料ガスを導入してから分岐しても良いし、3本以上の多数の原料ガス流路114を設けても良い。また、図2の例では、電極の表面に溝を切ることで原料ガス流路を形成したが、電極の表面ではなく、絶縁体の電極側表面に同様の溝を切ることで同様の原料ガス流路を形成しても良い。
【0056】
図3は、電極を覆う絶縁体内に原料ガスの流路を形成した場合の円柱形状の原料ガス導入装置兼電極を例示する模式図であり、図3(a)は直径方向の断面図、図3(b)は母線方向(伸線方向)の断面図である。
【0057】
図3の例では、原料ガスの流路117は電極を覆う絶縁体113の内部に形成されている。また、原料ガス流路117の各々の上端には外部から原料ガスを供給するための原料ガス導入口115が貫通形成されており、更に、原料ガス流路117の各々の外側(放電空間側)の面を構成している絶縁体113には、所望の複数個のガス放出穴116が貫通形成されている。
【0058】
図3の例では、原料ガス導入装置(不図示)より供給される原料ガスは、原料ガス導入口115を通して原料ガス流路117内に導入され、更に絶縁体113に形成されたガス放出穴116を通して放電空間に放出される。
【0059】
図3の例の様に絶縁体内部に原料ガス流路を形成した場合には、電極表面が直接原料ガスと接触しない構造となるため、上記の様なコーティング法を用いること無しに耐性に富んだ電極が得られる。
【0060】
図4は参考例であり、電極と電極を覆う絶縁体が形成する隙間に中子を挿入して原料ガス流路を形成した場合の円柱形状の原料ガス導入装置兼電極を例示する模式図であり、図4(a)は直径方向の断面図、図4(b)は母線方向の断面図である。
【0061】
図4の例では、原料ガス導入装置兼電極102は円柱形状であり、円柱形状の電極112の表面を所望形状の中子120を介して絶縁体113の層で覆った構成より成る。原料ガス流路117は周方向に等間隔となる4箇所の位置に伸線方向に伸びた溝が構成される様に中子120を予め加工して形成した流路であり、中子120の外側(絶縁体113側)の加工面(溝面)と絶縁体113の中子側表面に囲まれた空間から成る。すなわち、中子120自体が原料ガス流路を周方向に分離する障壁として機能する。また、各原料ガス流路117の伸線方向のほぼ中間点おいても溝は遮られており、これにより原料ガス流路117は更に上下に分割されている。また、原料ガス流路117の各々の側面を構成する絶縁体113には、各原料ガス流路117のほぼ上端、下端、その中間の3箇所の位置にガス放出穴116が貫通形成されている。原料ガス流路114は、原料ガス流路117と周方向における同位置(4箇所)に伸線方向に伸びた溝が構成される様に中子120を予め加工して形成した流路であり、中子120の内側(電極112側)の加工面(溝面)と電極112の中子側表面に囲まれた空間から成り、同様に中子120自体が原料ガス流路を周方向に分離する障壁として機能する。また、原料ガス流路114の各々の上端には外部から原料ガスを供給するための原料ガス導入口115が貫通形成されている。また内部ガス放出穴118は、周方向における同位置の各々の原料ガス流路114から原料ガス流路117に原料ガスが放出される貫通穴が構成される様に中子120を予め加工して形成した穴である。この内部ガス放出穴118は、1本の原料ガス流路114毎に2つ設けられ、各々が原料ガス流路117に連通している。
【0062】
図4の例では、原料ガス導入装置(不図示)より供給される原料ガスは、原料ガス導入口115を通して原料ガス流路114に導入された後、内部ガス放出穴118を通して原料ガス流路117に流入し、更に電極を覆う絶縁体113に設けられたガス放出穴116を通して放電空間に供給される。
【0063】
図4の例の様に、中子を用いて原料ガス流路を形成する場合、中子の材質としては、電極に用いられる金属の他、電極を覆う絶縁体に用いられる絶縁体が好適に使用できる。
【0064】
図4の例の様に、中子を用いて原料ガス流路を形成すれば、中子によって多重管構造(図4の例では2重管構造)が構成できるため、堆積膜の上下方向の均一化が更に得やすい。また前述したコーティング法により電極の耐性向上も容易に図れる。
【0070】
次に、図面を用いて、本発明の堆積膜形成装置全体の構成の例を説明する。
【0071】
は、複数の円筒状導電性基体を同一円周上に配置した構成をとった場合の本発明の堆積膜形成装置の一例を示す模式図であり、図(a)は水平方向の断面図、図(b)は垂直方向の断面図である。
【0072】
に示す堆積膜形成装置は、大別すると減圧可能な(真空気密可能な)反応容器100、原料ガス導入装置(不図示)、反応容器100内を減圧するための排気装置(不図示)、原料ガス導入装置兼電極102に電力を供給するための電源107から構成される。
【0073】
反応容器100内には円筒状で導電性の基体101が所望に応じて配置され、基体加熱用ヒーター104、原料ガス導入装置兼電極102が設置されている。原料ガス導入装置兼電極102には高周波マッチングボックス106を介して電源107が接続されている。基体101はホルダー(不図示)を介して回転軸108に保持されており、回転軸108は真空シール(不図示)を通して反応容器100の外(大気側)に貫通し、ギア110を介してモーター109に接続されている。
【0074】
基体101は同一円周上に配置され、基体が取り囲む領域で放電空間111が形成される。基体101の本数は放電空間を形成できる本数であれば何本でもよいが、4本以上が好適である。図では基体を8本配置した例を示している。基体101は反応容器100内に設置された基体加熱用ヒーター104で内側から加熱されるようになっている。基体加熱用ヒーター104は、真空仕様のものであれば何れでもよく、例えばシースヒーターをパイプに巻きつけたもの、板状ヒーター、セラミックヒーター等の電気抵抗体の他、ハロゲンランプ等の熱放射体、気体や液体を媒介し熱交換手段による発熱体などが使用できる。
【0075】
これらの基体加熱用ヒーター104は、反応容器100内に設けられる他、反応容器とは別に基体加熱用容器を設けその中に設置して、あらかじめ基体加熱用容器で基体を加熱した後、反応容器100に基体101を真空中で搬送する手段も採れる。また、基体加熱用容器による基体の加熱と、反応容器100内での基体の加熱を併用することもできる。基体101の温度は、目的とする堆積膜の特性により適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、20〜500℃が望ましく、更に50〜480℃が好ましく、更に100〜450℃が最適である。
【0076】
次に、図に示した装置を用いて堆積膜を形成する方法の例を説明する。
【0077】
まず、反応容器100内に、あらかじめ脱脂洗浄した基体101を配置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器100内を排気する。続いて、基体101を回転させながら、ヒーター104により基体101の温度を20℃〜500℃の所望の温度に制御する。基体101が所望の温度になったところで、原料ガス供給系(不図示)より原料ガスを原料ガス導入装置兼電極102を通して内部チャンバ内に供給する。このときガスの突出等、極端な圧力変動が起きないよう注意する。次に、原料ガスの流量が所定の流量になったところで、真空計(不図示)を見ながら排気バルブ(不図示)を調整し、所望の内圧を得る。
【0078】
内圧が安定したところで、高周波電源107を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックス106を通じて原料ガス導入装置兼電極102に高周波電力を印加し、グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器100内に導入された原料ガスが分解され、基体101上に所望の堆積膜が形成される。この際、基体101をモーター109によって堆積膜形成中に回転させておくことで、基体101の全面に堆積膜が形成される。所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、反応容器への原料ガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。目的とする堆積膜の特性に応じて基体上に複数の層からなる堆積膜を形成する場合には、前記の操作を繰り返すことによって、所望の複数層構成の堆積膜を得ることができる。
【0079】
基体101として例えば円筒状のものが使用されるが、その材質は導電性材料または表面を導電処理した材料が通常使用される。例えばAl、Cr、Mo、Au、In、Nb、Ni、Te、V、Ti、Pt、Pb、Fe等の金属の他、これらの合金、例えばステンレスなどが使用できる。また、表面を導電処理した材料としてはアルミナセラミックス、窒化アルミニウム、窒化ほう素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、石英ガラス、パイレックスガラスなどの他、ポリカーボネート、テフロン等の合成樹脂が使用できる。表面を導電処理した材料を基体として使用する場合、堆積膜を形成する側と反対側も導電処理することが望ましい。
【0080】
堆積膜形成に使用される原料ガスは、例えばアモルファスシリコンを形成する場合にはSiH4 、Si2 H等のガス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が、Si供給用ガスとして有効に使用できる。また、水素化珪素の他にも、弗素原子を含む珪素化合物、いわゆる弗素原子で置換されたシラン誘導体、具体的には、例えばSiF4 、Si26 等のフッ化珪素や、SiH3 F、SiH22 、SiHF3 等の弗素置換水素化珪素等、ガス状の、またはガス化し得る物質もSi供給用ガスとして有効である。また、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じてH2 、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用しても何等差し支えない。
【0081】
更に前記のガスに加えて、必要に応じて周期律表3族に属する原子または周期律表5族に属する原子を、いわゆるドーパントとして用いることもできる。例えばホウ素原子を用いる場合には、B26 、B410等の水素化珪素、BF3 、BCl3 等のハロゲン化珪素が挙げられる。またリン原子を用いる場合には、PH3 、P24 等の水素化燐が使用できる。
【0082】
また、例えばアモルファスシリコンカーバイト(a−SiC)を形成する場合には、前記の原料ガスのほかに、炭素原子導入用のガスとして、CとHとを構成原子とする、例えば炭素数1〜5の飽和炭化水素、炭素数2〜4のエチレン系炭化水素、炭素数2〜3のアセチレン系炭化水素等を使用できる。具体的には、飽和炭化水素としては、メタン(CH4 )、エタン(C26 )等、エチレン系炭化水素としては、エチレン(C24 )、プロピレン(C36 )等、アセチレン系炭化水素としては、アセチレン(C22 )、メチルアセチレン(C34 )等が挙げられる。
【0083】
また、例えばアモルファス酸化シリコン(a−SiO)を形成する場合には、前記の原料ガスの他に、酸素原子導入用のガスとして使用できるものとして、酸素(O2 )、オゾン(O3 )、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2 )、一二酸化窒素(N2 O)、三二酸化窒素(N23 )、四二酸化窒素(N24 )、五二酸化窒素(N25 )、三酸化窒素(NO3 )、シリコン原子(Si)と酸素原子(O)と水素原子(H)とを構成原子とする、例えばジシロキサン(H3 SiOSiH3 )、トリシロキサン(H3 SiOSiH2 OSiH3 )等の低級シロキサン等を挙げることができる。
【0084】
例えばアモルファス窒化シリコン(a−SiN)を形成する場合には、前記の原料ガスの他に、窒素原子導入用のガスとして使用できるものとして、窒素(N2 )、アンモニア(NH3 )、ヒドラジン(H2 NNH2 )、アジ化水素(HN3 )等のガス状のまたはガス化し得る窒素、窒化物及びアジ化物等の窒素化合物を挙げることができる。この他に、窒素原子の供給に加えて、ハロゲン原子の供給も行えるという点から、三弗化窒素(F3 N)、四弗化窒素(F42 )等のハロゲン化窒素化合物を挙げることができる。
【0085】
反応容器内のガス圧も同様に目的とする堆積膜の特性により適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは0.01〜1000Pa、好ましくは0.03〜300Pa、最適には0.1〜100Paとするのが好ましい。
【0086】
高周波電力の周波数は特に制限はないが、発明者の知見によれば、周波数が20MHz未満の場合は、条件によっては放電が不安定となり、堆積膜の形成条件に制限が生じる場合があった。また450MHzより大きいと、高周波電力の伝送特性が悪化し、場合によってグロー放電を発生させること自体が困難になることもあった。したがって20MHz〜450MHzの周波数範囲が本発明には最適である。高周波の波形は、何れのものでも差し支えないが、サイン波、矩形波等が適する。また高周波電力の大きさは、目的とする堆積膜の特性等により、適宜決定されるが、基体1個あたり10〜5000Wが望ましく、さらに20〜2000Wがより望ましい。
【0087】
【実施例】
以下に本発明の効果を実証するため、より具体的な実施例、実験例等を説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0088】
参考実験例1>
図5に示した堆積膜形成装置に図1に示した電極と電極を覆う絶縁体の隙間により原料ガス流路を形成した構造の原料ガス導入装置兼電極を設置し、シングルプローブ(ラングミュアプローブ)を用いて飽和電子電流の測定を行なった。
【0089】
図1に示した原料ガス導入装置兼電極102の長さは420mmとし、直径は25mm(電極112の直径10mm)とし、原料ガス流路117の幅は12.5mmとし、ガス放出穴116の直径は1.2mmとし、ガス放出穴116は60mm間隔で4方向に計32個開けたものを使用した。また、円筒状導電性基体101の直径は80mm、長さは357mmとした。
【0090】
シングルプローブは、真空中で移動可能な機構とし、原料ガス導入装置兼電極の表面と基体表面までの最短距離を1とした場合に原料ガス導入装置兼電極の表面からの距離が0.4と0.9となる位置で、それぞれ原料ガス導入装置兼電極の母線方向へ10mm毎に飽和電子電流を計測した。この際ガス放出穴116の配列方向とシングルプローブの方向は一致させた。
【0091】
放電条件を下記表1に示す。
【0092】
【表1】
Figure 0003673568
こうして測定した結果を図にグラフとして示す。なお図における飽和電子電流の値は、原料ガス導入装置兼電極表面から0.4と0.9の位置でそれぞれの最大値を1とした場合の相対値である。
【0093】
から明らかな様に、本発明によれば、ガス放出穴周辺のプラズマの局在化がほとんど発生していないことがわかる。
【0094】
<比較実験例1>
に示した堆積膜形成装置に、従来の原料ガス導入装置兼電極を設置した以外は、実験例1と全く同様に飽和電子電流の測定を行なった。
【0095】
本比較実験例で使用した原料ガス導入装置兼電極は、電極を覆う絶縁体113を金属(SUS304)とし、上から1つ目のガス放出穴116と、上から2つ目のガス放出穴116の中間に直径2mm、深さ2.5mmのくぼみを設け、更にガス放出穴116の近傍に厚さ100μmのアルミナセラミックスをプラズマ溶射法にて形成したものである。なお、アルミナセラミックスで形成された部分の表面粗さはRzで約23μm〜52μmであった。これら以外の形状については、実験例1で使用したものと同一である。
【0096】
本比較実験例で測定した結果を図にグラフとして示す。図から明らかな様に、従来の原料ガス導入装置兼電極では、特に原料ガス導入装置兼電極の表面から0.4の位置でガス放出穴によるプラズマの局在化が顕著であると同時に、原料ガスを放出していないくぼみの周辺でもプラズマの局在化が見られた。更に、中子が無いことにより、原料ガスの上下方向の不均一に伴って、電子飽和電流が上部から下部に向かって減少する上下ムラの傾向が見られる。
【0097】
<比較実験例2>
比較実験例1で使用した原料ガス導入装置兼電極のガス放出穴の直径を4.5mmに広げた以外は同様にして飽和電子電流を測定した。
【0098】
本比較実験例で測定した結果を図にグラフとして示す。図から明らかな様に、ガス放出穴を広げることで、プラズマの局在化は比較実験例1よりも緩和されてはいるものの、根本的には解決していないことがわかる。またガス放出穴を大きくしたので、原料ガスが上部に偏って供給された事に起因すると見られる、上下ムラが比較実験例1に比べて更に悪化している。
【0099】
参考例1>
図5に示した堆積膜形成装置に、図2で示した電極に溝を切ることで原料ガス流路を形成した構造の原料ガス導入装置兼電極を設置し、図9に示す様な基体1102上に、電荷注入阻止層1103、光導電層1104、表面層1105を順次積層した層構成の電子写真用光受容部材1101を作製した。
【0100】
円筒状導電性基体として、直径108mm、長さ357mmのアルミニウム製シリンダーを用いた。また原料ガス導入装置兼電極は、電極112の直径を25mmとし、電極を覆う絶縁体113の直径を30mmとした。その他の形状は実験例1で使用したものと同一である。
【0101】
放電条件を下記表2に示す。
【0102】
【表2】
Figure 0003673568
なお上記表2中の「層厚」は、電子写真用光受容部材設計上のおおよその目安である。
【0103】
参考例では、原料ガス導入装置兼電極のガス放出穴116を0.2mmから4.5mmまで変化させて電子写真用光受容部材を作製し、下記方法に従い膜厚ムラ、球状突起の数、電位ムラを測定した。
【0104】
(1)膜厚ムラ
各々の電子写真用光受容部材の母線方向に2cm間隔で合計17点について渦電流式膜厚計を用いて膜厚を測定した。こうして測定した値を、それぞれの測定点について、同時に作製した8本の電子写真用光受容部材の間で平均値をとって、各原料ガス放出穴の径ごとに母線方向のムラについて最大の膜厚に対する最小の膜厚の割合を算出し、母線方向の膜厚ムラとして比較した。測定結果を図10(a)にグラフとして示す。
【0105】
また同時に、作製した8本の電子写真用光受容部材の中央部の膜厚について8本間の最大の膜厚に対する最小の膜厚の割合を算出し、8本間の膜厚ムラとして比較した。測定結果を図10(b)にグラフとして示す。図10(b)における「8本間の膜厚ムラ」の値は、ガス放出穴の直径を1.5mmとした時のその膜厚ムラを1とした場合の相対値である。
【0106】
(2)球状突起の数
各々の電子写真用光受容部材の表面を光学顕微鏡で観察し、10cm2 あたりの直径15μm以上の球状突起の個数を、同時に作製される電子写真用光受容部材8本全てについて調べた後、その平均値を算出し、球状突起の数として比較した。測定結果を図11にグラフとして示す。図11における「球状突起の数」は、ガス放出穴の直径を1.5mmとした時のその球状突起の数を1とした場合の相対値である。
【0107】
(3)画像濃度ムラ
各々の電子写真用光受容部材を電子写真装置(キャノン社製NP6060を本テスト用に改造したもの)にセットして、キャノン製中間調チャート(部品番号:FY9−9042)を原稿台に置いてコピーし、得られたコピー画像上の任意の50点の画像濃度を反射濃度計で測定し、各々の電子写真用光受容部材について最も画像濃度が濃い部分に対する最も画像濃度が薄い部分の割合を算出し、更に同時に作製される電子写真用光受容部材8本全てについて上記の測定を行ない最終的にそれらの割合を平均した値を画像濃度ムラとして比較した。測定結果を図11にグラフとして示す。図11における「画像濃度ムラ」の値は、ガス放出穴の直径を1.5mmとした時のその画像濃度ムラを1とした場合の相対値である。この比較法では数値が小さくなるほど画像濃度ムラが大きくなることを示している。
【0108】
10および図11から明かな様に、本発明においては、ガス放出穴の直径0.4mm〜2.5mmの範囲内で、膜厚ムラ、球状突起の数、画像濃度ムラ共に非常に良好な結果が得られることがわかる。一方、ガス放出穴の直径を0.2mmとしたときは、ガス放出穴の一部の堆積膜による詰まりが認められた。
【0109】
<比較例1>
図1で示した原料ガス導入装置兼電極の電極を覆う絶縁体113を金属(SUS304)に変更し、原料ガス放出穴の近傍をアルミナセラミックス(表面粗さはRzで約28μm〜63μm)で形成した以外は、実施例1で使用したものと同じ原料ガス導入装置兼電極を使用し、ガス放出穴を直径0.2mmから4.5mmまで変化させて、参考例1と同様に膜厚ムラ、球状突起の数、画像濃度ムラについて測定した。測定結果を同様に図12および図13に示す。
【0110】
図12および図13から明かな様に、ガス放出穴の直径を0.4mm〜2.5mmにすることで球状突起の数、画像濃度ムラ共に良化する傾向が見られるが、「吹き出し」の影響によりその効果は十分ではない。また、ガス放出穴を0.2mmとした場合は、参考例1と同様にガス放出穴の一部に堆積膜による詰まりが認められた。
【0111】
参考例2>
図5に示した堆積膜形成装置に、図3に示した電極を覆う絶縁体の内部に原料ガスの流路を形成した原料ガス導入装置兼電極を設置し、直径108mm、長さ357mmのアルミニウムシリンダーを基体として、図9に示した層構成の電子写真用光受容部材を作製した。
【0112】
参考例では、原料ガスの放出穴116の直径を1.2mmとし、原料ガス流路117の幅を4mmとした。また電極112の直径は15mm、電極を覆う絶縁体113の直径を32mmとし、その他の形状は参考実験例1で用いた原料ガス導入装置兼電極と同一とした。
【0113】
放電条件を下記表3に示す。
【0114】
【表3】
Figure 0003673568
なお上記表3中の「層厚」は、電子写真用光受容部材設計上のおおよその目安である。
【0115】
<比較例2>
図5に示した堆積膜形成装置に、従来の原料ガス導入装置兼電極を設置し参考例1と同様にして電子写真用光受容部材を作製した。なお本比較例で使用した原料ガス導入装置兼電極は、原料ガス流路117を電極112内部に形成した以外は参考例1と同様の形状にした。すなわち、電極を覆う絶縁体113を設けずに電極112の直径を32mmとし、電極内部に4mm幅の原料ガス流路を形成した。なおガス放出穴の近傍はセラミックで形成し、その際の表面粗さは約32μm〜48μmであった。
【0116】
次に、参考例2および比較例2で作製した電子写真用光受容部材について参考実験例1と同様にして、膜厚ムラ、球状突起の数、画像濃度ムラを評価した。その結果を下記表4に示す。なお、表4における各評価項目は、参考例2の値を1とした場合の相対値で表した。
【0117】
【表4】
Figure 0003673568
表4から明らかな様に、原料ガスの流路を周方向の分離した本発明の原料ガス導入装置兼電極では、膜厚ムラ、球状突起の数、画像濃度ムラ共に良好な結果が得られるのに対して、従来の原料ガス導入装置兼電極では、球状突起、画像濃度ムラも悪化することがわかる。
【0118】
<実施例
図5に示した堆積膜形成装置に、図2に示した電極の表面に溝を切ることで原料ガスの流路を形成した原料ガス導入装置兼電極を設置し、直径108mm、長さ357mmのアルミニウムシリンダーを基体として図9に示した層構成の電子写真用光受容部材を作製した。
【0119】
本実施例では、原料ガスの放出穴116の直径を1.2mmとし、原料ガス流路114、117の幅を0.5mm〜15mmまで変化させた。また電極112の直径は30mm、電極を覆う絶縁体113の直径は35mmとし、その他の形状は参考例1で用いた原料ガス導入装置兼電極と同一とした。
【0120】
放電条件を下記表5に示す。
【0121】
【表5】
Figure 0003673568
なお上記表中の「層厚」は、電子写真用光受容部材設計上のおおよその目安である。
【0122】
こうして作製した電子写真用光受容部材について参考例1と同様にして、膜厚ムラ、球状突起の数、画像濃度ムラを評価した。その結果を下記表6に示す。表6において各項目は、原料ガスの流路の幅を5.0mmとした時の値を1とした場合の相対値で表した。
【0123】
【表6】
Figure 0003673568
表6から明らかな様に、原料ガスの流路を13mm以下にした原料ガス導入装置兼電極では、膜厚ムラ、球状突起の数、画像濃度ムラ共に特に良好な結果が得られることがわかる。また、原料ガスの流路の幅を0.5mm〜8mm、更に1.0mm〜5.0mmの範囲にすることで、球状突起、画像濃度ムラ共に特に良好な結果が得られることがわかる。一方、原料ガスの流路を14mmおよび15mmとした場合(これらの場合は本発明に対する比較例となる)は、球状突起の数、画像濃度ムラ共に悪化する傾向が見られた。
【0124】
<実施例
図5に示した堆積膜形成装置に、図2で示した電極の表面に溝を切ることで原料ガスの流路を形成した原料ガス導入装置兼電極を設置し、直径108mm、長さ357mmのアルミニウムシリンダーを基体として、図9に示した層構成の電子写真用光受容部材を作製した。
【0125】
原料ガスの流路114、117の幅は4.0mmとし、電極112の直径は25mm、電極を覆う絶縁体113の直径は30mmとし、その他の形状は参考実験例1で用いた原料ガス導入装置兼電極と同一とした。
【0126】
また本実施例では、3層の形成の全てにおいて、電極に印加する高周波電力の周波数を20MHz〜450MHzの範囲で変化させた。その他の放電条件および層厚を下記表7に示す。
【0127】
【表7】
Figure 0003673568
なお上記表7中の「層厚」は、電子写真用光受容部材設計上のおおよその目安である。
【0128】
こうして作製した電子写真用光受容部材について、参考例1と同様にして、膜厚ムラ、球状突起の数、画像濃度ムラを評価した。その結果を下記表8に示す。表8において各項目は、実施例における原料ガスの流路の幅を5.0mmとした時の値を1とした場合の相対値で表した。
【0129】
【表8】
Figure 0003673568
表8から明らかな様に、高周波電力の周波数が20MHz〜450MHzの範囲ではいずれの周波数であっても良好な結果が得られた。
【0140】
参考
図5に示した堆積膜形成装置に、図14に示す電極の表面にアルミナセラミックスでコーティング119を施した原料ガス導入装置兼電極を設置し、前記表3の条件で、直径108mm、長さ357mmのアルミニウムシリンダーを基体として、図9に示した層構成の電子写真用光受容部材を作製した。
【0141】
参考例での電極のコーティングは、プラズマ溶射法により、厚さ100μmで行なった。
【0142】
こうして作製した電子写真用光受容部材について、参考例1と同様にして、膜厚ムラ、球状突起の数、画像濃度ムラを評価した。その結果を下記表11に示す。表11において各項目は、実施例における原料ガスの流路の幅を5mmとした時の値を1とした場合の相対値で表した。
【0143】
【表11】
Figure 0003673568
表11から明らかな様に、本参考例では全ての項目にわたって良好な結果が得られることがわかる。
【0144】
【発明の効果】
以上説明した様に本発明によれば、電界の集中による「吹き出し」を防止し、原料ガスの流れを簡単な構成で均一化することで、堆積膜の異常成長や球状突起を低減でき且つ高度に均質化された堆積膜を形成できる。したがって、電子写真用光受容部材の製造において問題となる膜厚ムラ、球状突起、画像濃度ムラの発生を効果的に抑制し、きわめて画像特性の優れた電子写真用光受容部材を形成する用途に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例の堆積膜形成装置に用いる原料ガス導入装置兼電極の一例を示す模式図である。
【図2】 本発明の堆積膜形成装置に用いる原料ガス導入装置兼電極の一例を示す模式図である。
【図3】 本発明の堆積膜形成装置に用いる原料ガス導入装置兼電極の一例を示す模式図である。
【図4】 参考例の堆積膜形成装置に用いる原料ガス導入装置兼電極の一例を示す模式図である。
【図5】 本発明の堆積膜形成装置の一例を示す模式図である。
【図6】 参考実験例1において測定した本発明の堆積膜形成装置の飽和電子電流の分布を示すグラフである。
【図7】 比較実験例1において測定した従来の堆積膜形成装置の飽和電子電流の分布を示すグラフである。
【図8】 比較実験例2において測定した従来の堆積膜形成装置の飽和電子電流の分布を示すグラフである。
【図9】 各実施例等において作製した電子写真用光受容部材の層構成を示す模式的断面図である。
【図10】 参考例1において作製した電子写真用光受容部材の膜厚ムラの変化を示すグラフである。
【図11】 参考例1において作製した電子写真用光受容部材の球状突起の数および画像濃度ムラの変化を示すグラフである。
【図12】 比較例1において作製した電子写真用光受容部材の膜厚ムラの変化を示すグラフである。
【図13】 比較例1において作製した電子写真用光受容部材の球状突起の数および画像濃度ムラの変化を示すグラフである。
【図14】 参考における本発明の堆積膜形成装置の原料ガス導入装置兼電極の一例を示す図である。
【符号の説明】
100 反応容器
101 基体
102 原料ガス導入装置兼電極
104 基体加熱用ヒーター
106 高周波マッチングボックス
107 電源
108 回転軸
109 モーター
110 ギア
111 放電領域
112 電極
113 電極を覆う絶縁体
114 原料ガス流路
115 原料ガス導入口
116 ガス放出穴
117 原料ガス流路
118 内部ガス放出穴
119 アルミナコーティング層
120 中子
121 原料ガス流路
1101 電子写真用光受容部材
1102 基体
1103 電荷注入阻止層
1104 光導電層
1105 表面層

Claims (6)

  1. 反応容器内に原料ガスを導入し且つ高周波電力を導入する原料ガス導入装置兼電極を備え、前記高周波電力によってグロー放電を発生させることにより前記原料ガスを分解して前記反応容器内に配置した基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置であって、
    前記原料ガス導入装置兼電極は、少なくとも前記高周波電力を導入するための円筒状または円柱状の電極と、該電極の表面を前記グロー放電領域より分離するために該電極を覆う円筒状の絶縁体とを有して成り、
    該絶縁体には、前記原料ガスを前記グロー放電領域へ導入する複数のガス放出穴が形成され、
    前記原料ガス導入装置兼電極には、供給された原料ガスを前記ガス放出穴に導入する原料ガス流路が、前記電極と前記電極を覆う絶縁体の電極側表面に囲まれた空間に形成されるか、または前記電極を覆う絶縁体の内部に形成された空間に形成され、前記原料ガス流路は前記原料ガス導入装置兼電極の周方向に複数配されており、且つ、各々の原料ガス流路の幅が0.5〜13mmであることを特徴とする堆積膜形成装置。
  2. 前記反応容器内の同一円周上に複数の円筒状導電性基体を配置し且つ該基体を自転させる手段を更に有し、前記原料ガス導入装置兼電極は該円周内に配置し、前記複数のガス放出穴は前記複数の円筒状導電性基体の配置円の円周方向に向けて原料ガスを供給し得る位置に形成されている請求項1記載の堆積膜形成装置。
  3. 前記電極の周方向に複数配されている原料ガス流路は、前記電極の表面に形成された溝と、前記電極を覆う絶縁体の電極側表面に囲まれた空間からなる請求項1または2記載の堆積膜形成装置。
  4. 前記高周波電力の周波数が、20MHz〜450MHzである請求項1〜の何れか一項記載の堆積膜形成装置。
  5. 請求項1記載の堆積膜形成装置を用いた堆積膜形成方法において、
    前記堆積膜形成装置の反応容器内に基体を配置し、前記原料ガス導入装置兼電極のガス放出穴から原料ガスを前記基体側に導入し且つ前記原料ガス導入装置兼電極の電極から高周波電力を導入し、該高周波電力によってグロー放電を発生させることにより前記原料ガスを分解して前記基体上に堆積膜を形成することを特徴とする堆積膜形成方法。
  6. 前記基体は、電子写真用光受容部材を構成するための円筒状導電性基体である請求項記載の堆積膜形成方法。
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