JP2004346188A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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義博 中井
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慶二 小畑
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Abstract

【課題】耐衝撃性、耐候性、耐熱性、耐熱分解性、熱板溶着性のいずれもが優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、α−メチルスチレン単位(a−1)5〜85質量%、シアン化ビニル単位(a−2)5質量%〜50質量%、スチレン単位(a−3)5質量%〜40質量%(合計100質量%)からなるα−メチルスチレン系共重合体(A)1質量部〜99質量部と、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレートゴム(b−2)からなる複合ゴムに、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物から選ばれる1種以上のビニル系単量体単位(b−3)から構成されるビニル系重合体がグラフトしたグラフト共重合体(B)1質量部〜99質量部とを含有する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車部品などに使用される熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、樹脂材料の耐熱性、耐衝撃性に対する要求はますます高くなっており、特に、自動車部品、例えばメーターフード、インスルメントパネル、コンソールボックス等の内装部品では耐熱性、耐衝撃性だけでなく、部品の大型化に対応できるように良好な射出成形性が要求されている。
自動車部品の一つである自動車用テールランプやストップランプ、ヘッドランプ等の自動車用ランプは、PMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂やPC(ポリカーボネート)樹脂等の透明樹脂からなるレンズと、それを支持するハウジングとから概略構成されている。この自動車用ランプの自動車用ランプハウジングにおいては、屋外で日光に曝されることが多いため、近年、耐候性に優れたものが求められている。さらに、ランプの光源バルブは発熱するため、自動車用ランプハウジング用材料には高い耐熱性が要求されている。
【0003】
この自動車用ランプを製造する際には、透明樹脂からなるレンズとハウジングとを接合するにあたり、両者の接合しようとする接合部分に加熱した熱板を数秒間押し当てて加熱溶融し、速やかに熱板を取り去って両者を接合する、いわゆる熱板溶着法が一般的になりつつある。ところが、このような熱板溶着法では、熱板を取り去る際に、両材料それぞれの一部が高温の熱板に付着したままになり、その付着した樹脂が引き延ばされて糸を曳く現象が生じることがある。この糸曳きは生産性を低下させるため、熱板溶着する材料としては糸曳きしにくいものが望まれる。
そこで、糸曳き性を改善することを目的として、ポリオルガノシロキサンとアクリルゴムとの複合ゴムを含むグラフト共重合体を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、α−メチルスチレンを共重合した共重合体を配合する方法が提案されている(例えば、特許文献2,特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−310676号公報
【特許文献2】
特開2001−002881号公報
【特許文献3】
特開2001−253990号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載された樹脂組成物は、特定条件下での熱板溶着性は良好であるものの、熱板溶着条件依存性が強いため、幅広い条件で良好な熱板溶着性を示さなかった。さらに、特許文献2,3に記載の樹脂組成物は、熱板溶着性は優れるものの、耐衝撃性が不十分であった。したがって、上述した従来の樹脂材料では、耐衝撃性、耐候性、耐熱性、耐熱分解性、熱板溶着性のいずれかの項目が不十分であり、近年の厳しいニーズに十分に応えられなかった。
【0006】
このように、これまでに、耐衝撃性、耐候性、耐熱性、耐熱分解性、熱板溶着性の全てを満足する材料は見出されておらず、これらの特性を全て備えた材料の開発が強く望まれていた。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、耐衝撃性、耐候性、耐熱性、耐熱分解性、熱板溶着性のいずれもが優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、マレイミド系樹脂組成物の耐衝撃性、耐候性、耐熱性、耐熱分解性、熱板溶着性の全てを満足する方法について鋭意検討した結果、ビニル重合性官能基を有するポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムを含有したグラフト共重合体と、特定のα−メチルスチレン系共重合体より構成される樹脂組成物が上記課題を全て解決できることを見出し、以下の熱可塑性樹脂組成物を発明した。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、α−メチルスチレン単位(a−1)5〜85質量%、シアン化ビニル単位(a−2)5質量%〜50質量%、スチレン単位(a−3)5質量%〜40質量%、マレイミド系単量体単位(a−4)0質量%〜40質量%(合計100質量%)からなるα−メチルスチレン系共重合体(A)1質量部〜99質量部と、
ビニル重合性官能基含有シロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレートゴム(b−2)からなる複合ゴムに、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物から選ばれる1種以上のビニル系単量体単位(b−3)から構成されるビニル系重合体がグラフトしたグラフト共重合体(B)1質量部〜99質量部と
その他の熱可塑性樹脂(C)0質量部〜50質量部((A)と(B)と(C)の合計は100質量部)とからなることを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、α−メチルスチレン系共重合体(A)が、α−メチルスチレン単位(a−1)5質量%〜80質量%、シアン化ビニル単位(a−2)5質量%〜50質量%、スチレン単位(a−3)5質量%〜40質量%、マレイミド系単量体単位(a−4)5質量%〜35質量%(合計100質量%)からなることが好ましい。
また、ポリオルガノシロキサン(b−1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位含有量が0.2モル%〜3モル%であることが好ましい。
さらには、ポリオルガノシロキサン(b−1)中の、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子の含有量が、ポリオルガノシロキサン(b−1)中の全ケイ素原子に対して1モル%以下(0モル%を含む)であることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、α−メチルスチレン系共重合体(A)と、グラフト共重合体(B)と、必要に応じて、その他の熱可塑性樹脂(C)とを含有するものである。
<α−メチルスチレン系共重合体(A)>
α−メチルスチレン系共重合体(A)は、α−メチルスチレン単位(a−1)と、シアン化ビニル単位(a−2)と、スチレン単位(a−3)と、必要に応じて、マレイミド系単量体単位(a−4)とからなるものである。
α−メチルスチレン系共重合体(A)中のα−メチルスチレン単位(a−1)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性、熱板溶着性、耐熱分解性が優れることから、5質量%〜85質量%、好ましくは5質量%〜80質量%、より好ましくは10質量%〜70質量%、特に好ましくは20質量%〜55質量%である。なお、α−メチルスチレン単位(a−1)の含有量が5質量%未満では耐熱性が低くなり、また、85質量%を越える場合は耐衝撃性が低くなる傾向がある。
【0009】
α−メチルスチレン系共重合体(A)を構成するシアン化ビニル単位(a−2)とは、シアン化ビニル単量体がラジカル重合されて形成される繰り返し単位である。シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。
α−メチルスチレン系共重合体(A)中のシアン化ビニル単位(a−2)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と熱着色性が共に優れることから、5質量%〜50質量%、好ましくは10質量%〜40質量%、さらに好ましくは15質量%〜35質量%である。シアン化ビニル単位(a−2)の含有量が5質量%未満では熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低くなり、50質量%を越えると成形時に熱変色が生じ易い傾向がある。
【0010】
α−メチルスチレン系共重合体(A)中のスチレン単位(a−3)は、熱可塑性樹脂組成物の成形加工性と耐衝撃性が共に優れることから、5質量%〜40質量%含有することが好ましい。スチレン単位(a−3)の含有率が5質量%未満では成形加工性(流動性)が低下し、40質量%を越える場合には、α−メチルスチレン単位(a−1)、シアン化ビニル単位(a−2)、マレイミド系単量体単位(a−4)の含有量が必然的に少なくなり、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性や耐衝撃性が低くなる傾向がある。
【0011】
また、マレイミド系単量体単位(a−4)とは、マレイミド化合物単量体のラジカル重合によって形成される繰り返し単位である。マレイミド化合物単量体としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−トルイルマレイミド、N−キシリールマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ターシャリーブチルマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性および成形性がより優れることからN−フェニルマレイミドが好ましい。
【0012】
α−メチルスチレン系共重合体(A)中のマレイミド系単量体単位(a−4)は、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性、耐熱分解性、成形加工性が優れることから、0質量%〜40質量%が好ましい。40質量%を越えると成形加工性が低下したり、熱板溶着性の条件依存性が強くなったりするので好ましくない。なお、マレイミド系単量体単位(a−4)は、α−メチルスチレン系共重合体(A)中に含まれていなくてもよい。
また、α−メチルスチレン系共重合体(A)中のマレイミド系単量体単位の好ましい含有量は、熱可塑性樹脂組成物が優れた熱板溶着性と高い耐熱分解性とを兼備することから、5質量%〜35質量%であり、さらに好ましくは7〜30質量%である。なお、マレイミド系単量体単位(a−4)の含有量が5質量%未満では熱可塑性樹脂組成物の耐熱分解性が低くなりやすく、35質量%を越えると熱板溶着性の条件依存性がより強くなる(特定条件で熱板溶着性が低下し易い)傾向がある。
【0013】
上述したα−メチルスチレン系共重合体(A)の製造方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法およびバルク重合法等が挙げられる。
【0014】
<グラフト共重合体(B)>
グラフト共重合体(B)は、ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレートゴム(b−2)からなる複合ゴムに、ビニル系単量体単位(b−3)から構成されるビニル系重合体がグラフトしたものである。
【0015】
グラフト共重合体(B)の複合ゴムを構成するポリオルガノシロキサン(b−1)は、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位およびジメチルシロキサン単位を構成成分として含むものである。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものであれば制限されないが、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β−メタクリロキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシランおよびδ−メタクリロキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロキシシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシランさらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。
これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0016】
ビニル重合性官能基含有シロキサン単位のビニル重合性官能性基としては、熱可塑性樹脂組成物の成形性および耐衝撃性を考慮するとメタクリル基、ビニル基、アクリル基およびスチリル基等が好ましく、さらに好ましくはメタクリル基である。これらのビニル重合性官能基は2種類以上であってもよい。
【0017】
また、ポリオルガノシロキサン(b−1)に含まれるジメチルシロキサン単位としては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、中でも、3〜6員環のものが好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0018】
ポリオルガノシロキサン(b−1)中のビニル重合性官能基含有シロキサンの含有量は特に限定されないが、ポリオルガノシロキサン(b−1)中に、好ましくは0.2〜3モル%である。ポリオルガノシロキサン(b−1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が0.2モル%未満では、アクリルゴムとの複合化が不十分になり、熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度が低下し易くなる。また、ポリオルガノシロキサン(b−1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が3モル%を越える場合には、熱可塑性樹脂組成物の熱板溶着性が低下し易い傾向にある。
【0019】
また、ポリオルガノシロキサン(b−1)は、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子の含有量が、ポリオルガノシロキサン中に全ケイ素原子に対し1モル%以下(0モル%を含む)であることが好ましい。ポリオルガノシロキサン(b−1)中の3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子の含有量が、ポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対して1モル%を越える場合には、熱可塑性樹脂組成物の熱板溶着性が低下し易い傾向にある。
【0020】
ポリオルガノシロキサン(b−1)の製造方法としては、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物またはさらにシロキサン系架橋剤を含む混合物を乳化剤と水によって乳化させてラテックスを調製し、そのラテックスを微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和する方法が挙げられる。
【0021】
上述したポリオルガノシロキサン(b−1)の製造方法において、重合に用いる酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法等が挙げられるが、ポリオルガノシロキサンの粒子径を制御しやすいことから、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
【0022】
シロキサン混合物、乳化剤、水、必要に応じて、酸触媒を混合する方法としては、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーを用いる方法、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して高速攪拌により混合する方法などが挙げられる。これらの中でも、ホモジナイザーを使用する方法は、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径の分布が小さくなるので好ましい方法である。
【0023】
ポリオルガノシロキサン(b−1)製造の際に添加する乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、特にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸系の乳化剤が好ましい。
これらの乳化剤は、シロキサン混合物100質量部に対して、0.05質量部〜5質量部程度の範囲で使用される。0.05質量部より少ないと分散状態が不安定になって、微小な粒子径の乳化状態を保てなくなる。また、5質量部より多いと、この乳化剤に起因して成形品が甚だしく着色することがある。
【0024】
ポリオルガノシロキサン(b−1)の重合に用いられる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は、1種でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。また、これらの中でも、ポリオルガノシロキサン(b−1)ラテックスの安定化作用に優れているため、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。
また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸などの鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサン(b−1)ラテックスに使用した乳化剤成分に起因する熱可塑性樹脂組成物の着色を低減させることができる。
【0025】
また、重合温度は、50℃以上が好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。
重合時間は、酸触媒をシロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合し、微粒子化させて重合する場合には、通常2時間以上、好ましくは5時間以上であり、酸触媒の水溶液中にシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを滴下する方法では、ラテックスの滴下終了後1時間程度保持することが好ましい。
重合の停止の際に添加されるアルカリ性物質としては、例えば、苛性ソ−ダ、苛性カリ、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0026】
複合ゴムを構成するアルキル(メタ)アクリレートゴム(b−2)は、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体である。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートおよびヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられる。これらの中でも、特にn−ブチルアクリレートが好ましい。
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコ−ルジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコ−ルジメタクリレート、1,4−ブチレングリコ−ルジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0027】
ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレートゴム(b−2)からなる複合ゴムの製造方法としては、例えば、ポリオルガノシロキサン(b−1)ラテックスに、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとを添加し、含浸させてから、通常のラジカル重合開始剤を作用させて重合する方法などが挙げられる。
【0028】
上記複合ゴムの製造方法において、ポリオルガノシロキサン(b−1)にアルキル(メタ)アクリレートを混合する方法としては、ポリオルガノシロキサン(b−1)成分のラテックスとアルキル(メタ)アクリレートとを一括で混合する方法、ポリオルガノシロキサン(b−1)成分のラテックス中に一定速度でアルキル(メタ)アクリレートおよび多官能性アルキル(メタ)アクリレートを滴下する方法が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を考慮すると、ポリオルガノシロキサン(b−1)成分のラテックスとアルキル(メタ)アクリレートとを一括で混合する方法が好ましい。
また、重合の際に使用されるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、これらに酸化剤・還元剤をさらに組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。これらの中でもレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系レドックス系開始剤が好ましい。
【0029】
グラフト共重合体(B)のビニル系重合体は、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物から選ばれる1種以上のビニル系単量体単位(b−3)から構成されたものである。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられ、シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。そして、これらのうち、成形品の耐衝撃性および成形外観がより優れることから、スチレンとアクリロニトリルとを含む単量体単位からなっていることが特に好ましい。
【0030】
グラフト共重合体(B)の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、まず、複合ゴムのラテックスに、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物から選ばれる1種以上のビニル系単量体を加え、ラジカル重合技術により一段であるいは多段でグラフト重合してグラフト共重合体ラテックスを得る。次いで、このグラフト共重合体ラテックスを、塩化カルシウムまたは硫酸アルミニウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固してグラフト共重合体(B)を分離し、回収する。
なお、上記グラフト重合の際、グラフトポリマーであるビニル系重合体の分子量やグラフト率を調製するために、各種連鎖移動剤を添加してもよい。
【0031】
<その他の熱可塑性樹脂(C)>
その他の熱可塑性樹脂(C)としては特に制限はなく、例えば、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−N−置換マレイミド三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−N−置換マレイミド三元共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種オレフイン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、PPS樹脂、PES樹脂、PEEK樹脂、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂(ナイロン)等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて配合される。
【0032】
<各成分の配合比率>
熱可塑性樹脂組成物は、α−メチルスチレン系共重合体(A)1質量部〜99質量部とグラフト共重合体(B)99質量部〜1質量部とから構成される((A)と(B)の合計は100質量部)。また、耐衝撃性と耐熱性がより優れることから、好ましくは、α−メチルスチレン系共重合体(A)5質量部〜95質量部とグラフト共重合体(B)95質量部〜5質量部、さらに好ましくは、α−メチルスチレン系共重合体(A)10質量部〜90質量部とグラフト共重合体(B)90質量部〜40質量部とから構成される。なお、その他の熱可塑性樹脂(C)を含有する場合は、他の熱可塑性樹脂(C)の含有量は、0〜50質量部であり、好ましくは、5〜50質量部である((A)と(B)と(C)の合計は100質量部)。
【0033】
熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、染料、顔料、各種熱安定剤、光安定剤、補強剤、充填材、難燃剤、滑剤、金属石鹸等の添加剤を配合できる。
【0034】
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
熱可塑性樹脂組成物は、α−メチルスチレン系共重合体(A)と、グラフト共重合体(B)と、必要に応じて、その他の熱可塑性樹脂(C)とを混合し、その混合物を溶融混練することで製造される。その溶融混練では、押出機または、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いることができる。
また、熱可塑性樹脂組成物を、押出成形機、射出成形機、ブロー成形機、カレンダ成形機およびインフレーション成形機等により成形して成形品にすることができる。
【0035】
<成形品>
熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形品は、様々な用途で使用できる。例えば、工業的用途例としては、車両部品、特に無塗装で使用される各種外装・内装部品、壁材、窓枠等の建材部品、食器、玩具、掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電部品、インテリア部材、船舶部材および通信機器ハウジング、ノートパソコンハウジング、PDAハウジング、液晶プロジェクターハウジング等の電機機器ハウジングに好適に用いられる。中でも、特に耐熱性と熱板溶着性に優れることから、自動車用ランプのハウジングに好適である。
【0036】
以上説明した熱可塑性樹脂組成物は、α−メチルスチレン系共重合体(A)を含有しているので、耐熱性、熱板溶着性、耐熱分解性に優れている。また、グラフト共重合体(B)を含有しているので、耐衝撃性に優れており、さらに、グラフト共重合体(B)の複合ゴムは飽和ゴムなので、耐候性に優れている。したがって、この熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、耐候性、耐熱性、耐熱分解性、熱板溶着性のいずれもが優れている。
【0037】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「%」および「部」は明記しない限りは質量基準である。
【0038】
(製造例1)α−メチルスチレン系共重合体(A−1)の製造
圧力ポンプ、ジャケット温調機および攪拌装置を備えたステンレス製オートクレーブ内に、イオン交換水120部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.003部、リン酸カルシウム0.4部を投入して良く分散させた。次いで、これに表1に示す単量体混合物を投入し、攪拌して懸濁状態とした後に、内温を75℃に昇温して重合反応を開始させた。
重合開始から5時間で内温を100℃まで緩やかに上昇させ、100℃に達した時点からスチレン10部(表1の成分と合わせて単量体の合計100部)を約2時間かけて圧力ポンプにて供給した。それと同時に、内温を100℃から120℃に徐々に上昇させた。
スチレンの供給終了後、さらに120℃で1時間保持してから、冷却、脱水、洗浄、乾燥して、無色ビーズ状のα−メチルスチレン系共重合体(A−1)を得た。このα−メチルスチレン系共重合体(A−1)をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の25℃における還元粘度は0.65dl/gであった。
【0039】
【表1】
Figure 2004346188
【0040】
(製造例2)α−メチルスチレン系共重合体(A−2)の製造
製造例1と同様のステンレス製オートクレーブに、イオン交換水120部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.003部、リン酸カルシウム0.4部を投入して良く分散させた。次いで、これに表2に示す単量体混合物を投入し、攪拌して懸濁状態とした後に、内温を60℃に昇温して重合反応を開始させた。
重合開始から5時間で内温を80℃まで緩やかに上昇させ、80℃に達した時点からスチレン10部(表2の成分と合わせて単量体の合計100部)を約2時間かけて圧力ポンプにて供給した。それと同時に、内温を80℃から120℃に徐々に上昇させた。
スチレンの供給終了後、さらに120℃で1時間保持してから、冷却、脱水、洗浄、乾燥して、無色ビーズ状のα−メチルスチレン系共重合体(A−2)を得た。このα−メチルスチレン系共重合体(A−2)をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の25℃における還元粘度は0.63dl/gであった。
【0041】
【表2】
Figure 2004346188
【0042】
(製造例3)α−メチルスチレン系共重合体(A−3)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、表3に示すレドックス剤および乳化剤を投入し、溶解させた後に、反応器内温を60℃に昇温させた。次いで、表3に示す単量体混合物を添加して30分保持した後、クメンハイドロパーオキシド0.5部を添加して重合を開始させた。
重合発熱が確認されてから、アクリロニトリル10部(表3の成分と合わせて単量体の合計100部)を3時間かけて滴下供給するとともに緩やかに70℃まで上昇させた。滴下終了後、内温を80℃に上昇させて2時間保持してから冷却し、重合を終了してα−メチルスチレン系共重合体(A−3)ラテックスを得た。
このα−メチルスチレン系共重合体(A−3)ラテックスを、硫酸マグネシウムで凝固回収し、脱水、洗浄、乾燥工程を経て、白色粉末状であるα−メチルスチレン系共重合体(A−3)を得た。このα−メチルスチレン系共重合体(A−3)をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の25℃における還元粘度は0.51dl/gであった。
【0043】
【表3】
Figure 2004346188
【0044】
(製造例4)マレイミド系共重合体(A−4)の製造
完全混合重合反応器、ギヤポンプ、第2重合反応器、ギヤポンプ、脱揮押出機およびペレタイザーを連続的につなげた製造装置を用い、N−フェニルマレイミド、アクリロニトリル、スチレンを重合温度100℃、脱揮押出機温度250℃にて重合して、ペレット状のN−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体であるマレイミド系共重合体(A−4)を得た。
得られたマレイミド系共重合体(A−4)中の各単量体単位含有量は、N−フェニルマレイミド28質量%、アクリロニトリル20質量%、およびスチレン52質量%であった。また、N,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の25℃における還元粘度は0.65dl/gであった。
【0045】
(製造例5)ポリオルガノシロキサン(L−1)ラテックスの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間攪拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10質量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。
このドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度をそのまま維持してから、冷却した。次いで、この反応物を苛性ソーダ水溶液で中和した。
このようにして得られたポリオルガノシロキサン(L−1)ラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、18.0質量%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は0.05μmであった。さらに、ポリオルガノシロキサン中のメタクリロシロキサン単位は0.65モル%、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子は0モル%であった。
【0046】
(製造例6)ポリオルガノシロキサン(L−2)ラテックスの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン97.5部と、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部と、テトラエトキシシラン2部とを混合してシロキサン混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸1部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部と、水200部とからなるドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を添加した。そして、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間攪拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
この予備混合オルガノシロキサンラテックスを、冷却管、ジャケット加熱器および攪拌装置を備えた反応器内に入れ、攪拌混合しながら80℃で5時間加熱して重合した後、約20℃に冷却して、そのまま48時間放置した。次いで、この反応物を苛性ソーダ水溶液でpH7.0に中和し重合を完結した。
このようにして得られたポリオルガノシロキサン(L−2)ラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、36.5質量%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は160nmであった。また、ポリジメチルシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位は0.3モル%、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子はポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子に対し1.5モル%であった。
【0047】
(製造例7)グラフト共重合体(B−1)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、製造例1で製造したポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)8部(固形分)、エマールNC−35(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート;花王(株)製)0.2部、イオン交換水148.5部を仕込み、混合した後、表4に示すアクリレート混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じて雰囲気の窒素置換し、次いで、内温を60℃まで昇温した。60℃に達した時点で表4に示すレドックス水溶液を添加してラジカル重合を開始させた。重合開始後、アクリレート成分の重合熱により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、重合を完結させてポリオルガノシロキサン(L−1)とアクリル酸ブチルゴムとからなる複合ゴムのラテックスを得た。この複合ゴムの質量平均粒子径は120nmであった。
【0048】
【表4】
Figure 2004346188
【0049】
次いで、反応器内部の液温が70℃に低下した後、この複合ゴムラテックスに、ロンガリット0.25部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、続いて、表5に示す第1の単量体混合液を2時間にわたって滴下し、重合した。第1の単量体混合物の滴下が終了した後、温度60℃の状態を1時間保持し、次いで、表5に示すレドックス水溶液を添加し、続いて、第2の単量体混合物を2時間にわたって滴下して、重合した。第2の単量体混合物の滴下が終了した後、温度60℃の状態を0.5時間保持し、次いで、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加した。そして、さらに温度60℃の状態を0.5時間保持した後、冷却して、ポリオルガノシロキサン(L−1)とアクリル酸ブチルゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリルおよびスチレンをグラフト重合させたグラフト重合体ラテックスを得た。
次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト重合体ラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、得られた析出物を脱水、洗浄、乾燥して乳白色粉末状のグラフト重合体(B−1)を得た。
【0050】
【表5】
Figure 2004346188
【0051】
(製造例8)グラフト共重合体(B−2)の製造
製造例7において、ポリオルガノシロキサン(L−1)をポリオルガノシロキサン(L−2)に変更した以外は製造例7と同様にして乳白色粉末状のグラフト重合体(B−2)を得た。なお、その際、ポリオルガノシロキサン(L−2)の固形分量がポリオルガノシロキサン(L−1)と同一になるようにし、それに合わせて適宜イオン交換水量を調整した。
【0052】
(製造例9)その他の熱可塑性樹脂(C)
アクリロニトリル29部及びスチレン71部からなり、N,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の25℃における還元粘度が0.60dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体を公知の懸濁重合により製造した。
【0053】
(実施例1〜7、比較例1〜3)
α−メチルスチレン系共重合体(A−1)〜(A−3)、マレイミド系共重合体(A−4)、グラフト共重合体(B−1)〜(B−2)、その他の熱可塑性樹脂(C)を、合計100部になるように表6に記載の比率で配合し、さらに滑剤としてエチレンビスステアリルアミド0.4部を配合した。次いで、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物をバレル温度250℃に加熱した脱気式二軸押出機(池貝鉄工(株)PCM−30)に供給し、混練してペレットを得た。得られたペレットをシリンダー温度250℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって各種試験片を成形した。
【0054】
【表6】
Figure 2004346188
【0055】
得られた熱可塑性樹脂組成物の特性を以下のように評価した。結果を表6に示す。
(1)アイゾット衝撃強度の測定
ASTM D−256に準拠して測定した。
(2)ビカット軟化温度
シリンダー温度240℃の2オンス射出成形機で成形した試片を用い、ASTM D−1525(49N荷重)に準拠して測定した。
(3)耐候性評価
100mm×100mm×3mm黒着色板をサンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用い、ブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨:12分)の条件にて1,000時間処理した。そして、その処理前後の変色の度合い(ΔE)を色差計で測定して評価した。
【0056】
(4)耐熱分解性
熱可塑性樹脂組成物のペレットを100℃にて30分間エージングした後、セイコー電子工業(株)製TG/DTA200を用い、昇温条件20℃/分の条件で1%重量減少温度を測定した。
(5)熱板溶着性
フッ素系樹脂で加工した熱板を表面温度260℃に加熱しておき、この熱板に、上記熱可塑性樹脂組成物からなる試験用シート(30mm×100mm×3mm)を12秒間接触させ、次いで、試験用シートを垂直に引き上げて、その断面凹凸形状を目視観察して熱板溶着性を評価した(条件1)。さらに、同様の手順にて、熱板表面温度300℃で接触時間9秒(条件2)、熱板表面温度340℃で接触時間4秒(条件3)の条件についても評価した。
糸曳き後の凹凸がなく平滑なものを○、糸曳き後の凹凸が顕著ものを×、その中間を△とした。
【0057】
各実施例及び比較例の結果から、次のことが明らかとなった。
実施例1〜7の熱可塑性樹脂組成物は、α−メチルスチレン系共重合体(A)およびグラフト共重合体(B)とを含有していたので、いずれも良好なアイゾット衝撃強度、耐候性、ビカット軟化点温度、耐熱分解性、熱板溶着性を示した。
特に、実施例1〜実施例3の熱可塑性樹脂組成物は、α−メチルスチレン系共重合体(A−1)とグラフト共重合体(B−1)とを共に含有していたので、特に優れた性能バランスを示した。
なお、実施例4の熱可塑性樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサン中の3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子の比率が1モル%を越えていたので、条件3での熱板溶着性がやや低かった。
また、実施例5の熱可塑性樹脂組成物は、マレイミド系単量体単位を含まないα−メチルスチレン系共重合体(A−3)を含有していたので、耐熱分解性がやや低かった。
【0058】
一方、比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、マレイミド系共重合体を含有し、α−メチルスチレン系共重合体を含有しなかったので、熱板溶着性が低かった。
比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、α−メチルスチレン系共重合体(A)を含有しなかったので、ビカット軟化点が低かった。
比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(B)を含有しなかったので、アイゾット衝撃強度、熱板溶着性が低かった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特定のα−メチルスチレン系共重合体(A)および特定のグラフト共重合体(B)を含有しているので、耐衝撃性、耐候性、耐熱性、耐熱分解性、熱板溶着性のいずれもが優れる。特に、耐衝撃性、耐候性、耐熱分解性、熱板溶着性のバランスは、従来の熱可塑性樹脂組成物では得られない極めて高いレベルにある。したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種工業材料、とりわけ耐候性材料としての利用価値が極めて高い。

Claims (4)

  1. α−メチルスチレン単位(a−1)5〜85質量%、シアン化ビニル単位(a−2)5質量%〜50質量%、スチレン単位(a−3)5質量%〜40質量%、マレイミド系単量体単位(a−4)0質量%〜40質量%(合計100質量%)からなるα−メチルスチレン系共重合体(A)1質量部〜99質量部と、
    ビニル重合性官能基含有シロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレートゴム(b−2)からなる複合ゴムに、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物から選ばれる1種以上のビニル系単量体単位(b−3)から構成されるビニル系重合体がグラフトしたグラフト共重合体(B)1質量部〜99質量部と
    その他の熱可塑性樹脂(C)0質量部〜50質量部((A)と(B)と(C)の合計は100質量部)とからなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. α−メチルスチレン系共重合体(A)が、α−メチルスチレン単位(a−1)5質量%〜80質量%、シアン化ビニル単位(a−2)5質量%〜50質量%、スチレン単位(a−3)5質量%〜40質量%、マレイミド系単量体単位(a−4)5質量%〜35質量%(合計100質量%)からなることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. ポリオルガノシロキサン(b−1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位含有量が0.2モル%〜3モル%であることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. ポリオルガノシロキサン(b−1)中の、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子が、ポリオルガノシロキサン(b−1)中の全ケイ素原子に対して1モル%以下(0モル%を含む)であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007302837A (ja) * 2006-05-15 2007-11-22 Mitsubishi Rayon Co Ltd 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品
WO2011145628A1 (ja) * 2010-05-18 2011-11-24 テクノポリマー株式会社 ランプハウジング用熱可塑性樹脂組成物及び成形品
WO2011162264A1 (ja) * 2010-06-24 2011-12-29 テクノポリマー株式会社 ランプハウジング用熱可塑性樹脂組成物及び成形品

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