JP3625917B2 - 線状溶接部品 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属素線を巻回してコイル状とした線材がレーザによって溶接された線状溶接部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
コイル状の線材を相互に接合する場合においては、YAGレーザや炭酸ガスレーザ等を使用したレーザ溶接によって行われている。このレーザ溶接では、脆化層を含む熱影響部が接合部(溶接部)に形成されるため、溶接部の疲労強度が溶接前の素材に対し大きく低下する問題が生じていた。この疲労強度低下に対する対策として、特開平4−61854号公報においては線材の相互の突き合わせ端面をレーザスポットにより1周溶接した後、この溶接部を含む金属素線と隣接する金属素線をレーザスポットにより複数箇所溶着している。これにより、可撓性管の突き合わせ端面の溶接箇所の弾性限界の低下を排除している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、溶接部の強度低下、特に疲労強度の低下は溶接部の溶融金属部の外側に形成される熱影響部の性質によることが知られている。すなわち、この熱影響部の大きさが小さければそれだけ疲労強度の低下を低く押さえることが可能となるものである。上述した特開平4−61854号公報では、コイル状線材相互の突き合わせ部の1周の溶接によって生じる熱影響部を隣接する金属素線と複数箇所レーザ溶接することで、疲労強度等の低下を排除している。
【0004】
このような溶接においては、線材の突き合わせ部端面の隙間が0.02mmの場合、レーザ光の1スポットのエネルギーを3J以上にしないと、隙間が溶接後に残って、溶接不良の欠陥品となる。この3Jのエネルギーによって形成される熱影響部の厚さは、平均0.8mmである。
【0005】
ここで、熱影響部の大きさはレーザスポットのエネルギーの大きさにより決まるため、上述した方法では、線材相互の突き合わせ部に生じた熱影響部の一部を、隣接する金属素線と複数箇所レーザ溶接する際に再溶解して取り除いているが、この再溶解時のレーザスポットによって、同じような大きさの熱影響部が形成される。このため強度向上を十分に達成することができない。これに対して、熱影響部を小さくするために、溶接のエネルギー値を小さくすると、溶接しようとする線材相互の突き合わせ部近辺の金属素線の溶融量が十分でなくなる。これにより溶接されない隙間が可撓性管の突き合わせ部に生じて不良となる問題があった。
【0006】
本発明は以上の問題点を考慮してなされたものであり、可撓性管の相互の突き合わせ部に隙間を生じることなく、しかも、溶接部に形成される熱影響部の大きさを小さくすることによって疲労強度を向上させた線状溶接部品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の線状溶接部品は、金属素線をコイル状に巻いて形成した軟性の可撓性管及び硬性の可撓性管のそれぞれの端部を突き当て、この突き当て部の外周にレーザスポットを照射して溶接するものであり、前記可撓性管の突き当て部の端面の隙間が0.01mm以下でないと溶接されない大きさのエネルギー値、又は溶接により生じる熱影響部の厚さが0.1mm以下のエネルギー値に前記スポット溶接のエネルギー値を設定し、前記可撓性管の突き当て部の外周面を2周以上にわたり溶接することを特徴とする。
【0008】
本発明の別の線状溶接部品は、金属素線をコイル状に巻いて形成した軟性の可撓性管及び硬性の可撓性管のそれぞれの端部を突き当て、この突き当て部の外周をレーザスポットによって1周にわたり溶接するものであり、前記可撓性管の内、少なくとも軟性の可撓性管に対して、溶接部を含む金属素線と隣接する金属素線とを前記可撓性管の突き当て部を溶接したエネルギーより小さいエネルギーのレーザスポットにより複数箇所溶接することを特徴とする。
【0009】
上述した本発明では、可撓性管相互の突き合わせ部を、その隙間が0.01mm以下でないと溶接されない大きさの低いエネルギー値に設定するか、又は溶接により生じる熱影響部の厚さが0.1mm以下の低いエネルギー値に設定して2周以上にわたりスポット溶接するか、もしくは軟性の可撓性管の金属素線とその隣接する金属素線とを、突き当て部を溶接したエネルギーよりも小さいエネルギーのレーザスポットにより複数箇所溶接するため、可撓性管の突き合わせ部を一回で溶接できるような大きなエネルギーで溶接する場合に比べて、小さいエネルギーで溶接したスポットが溶接部品に残る。従って、溶接部品に最終的に残る熱影響部は従来の溶接部品よりも小さくできるので、溶接部品の疲労強度の低下を従来の溶接に比べ小さくできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1〜3は本発明の実施の形態1を示し、図1はコイル状の可撓性管1、2を相互に突き合わせ、その突き合わせ部に対して、外周からレーザスポットを照射して溶接する状態である。同図において、1は外径3mm、素線径1mm、長さ200mmのSUS304からなる軟性の可撓性管であり、2は外径3mm、素線径1.4mm、長さ500mmのSUS304からなる硬性の可撓性管である。これらの可撓性管1、2の対向する端面3、4はいずれも研削により平面加工されている。この端面3、4を突き合わせた状態で、YAGレーザ光10によって突き合わせ部の外周をレーザ溶接する。なお、レーザ光10のレーザ本体及びその光学系は図示を省略してある。11は可撓性管1、2を突き合わせる際に、端面3、4の突き合わせ部に生じる隙間を示す。
【0011】
図2は、スポットレーザのスポット溶接によって溶接された可撓性管1、2の突き合わせ溶接部5の近傍の外観を示し、同図において、6はレーザ光10により溶融凝固したレーザスポット痕を示す。
【0012】
図3は図2の長さ方向の断面図を示し、8はレーザ光10により溶融凝固した部分に形成される再結晶部である溶け込みを示し、7は溶け込みの外周に形成される熱影響部を示す。この熱影響部7はレーザ溶接時の熱により機械的強度が低下しているので、ピッカース硬度を測定することにより、その範囲を知ることができる。
【0013】
本実施の形態においては、可撓性管1、2をそれぞれ図示していない回転チャックに固定し、これらの可撓性管1、2の端面3、4を100g重の荷重で押し付ける。この状態で、レーザ光10の1スポット毎に可撓性管1、2を一定角度回転させながら、突き合わせ部の端面3及び4をレーザ光によりスポット溶接する。このとき、レーザ光10の1スポット毎のエネルギーを1J(パルス幅3ms)として、レーザ光10のスポット毎に回転させる可撓性管1、2の回転量を、隣接するレーザスポット痕6の相互の重なりが10%になるように設定して可撓性管1、2の突き合わせぶの端面3、4を2周にわたり溶接する。
【0014】
この溶接の際、突き合わせ部の溶け込み8は平均で、外周面の直径(φ)が0.7mm、深さが0.4mmとなる。このとき熱影響部7は、厚さ0.09mmとなる。この溶接のエネルギーは低いエネルギー値であり、このようなエネルギーのレーザ光10のスポットによる1周目の溶接では、可撓性管1、2の突き合わせ部の隙間11が0.01mmを越えると、可撓性管1と2が融着されずに溶接不良の1つである隙間となる。
【0015】
しかしながら一周目の溶接においては、可撓性管1、2が接している部分が溶接されることで、次のスポットに相当する突き合わせ部直前のスポットによる溶融金属が流れ込んだり、溶融後の冷却収縮に伴い、端面3、4が引き寄せられて溶接される。また、端面3、4にバリ等が存在して隙間11が形成されている場合は、1周目のレーザ光10のスポットでバリ等を溶解したり、燃焼して小さくする。
【0016】
一周目の溶接では以上のような作用を有するため、これに続く2周目の溶接では、1周目の可撓性管1、2の突き合わせ部の端面3、4の隙間11がないところから溶接が始まり、次々に連続して溶接される。この2周目では1周目に溶接されなかった箇所が溶接されるため、突き合わせ部の隙間11が0.06mmでも、隙間が残ることのない溶接が可能となった。
【0017】
以上の実施の形態による可撓性管1、2 の溶接部品は、2周溶接を行うため、溶接部に隙間等の欠陥が生じることが少ない。また、可撓性管相互の隙間が0.02mmのとき、従来の溶接で生じる熱影響部の厚さは0.8mmであるのに対し、本実施の形態ではレーザ光のスポット毎のエネルギー値を小さくしているため、熱影響部の厚さを0.09mmに押さえることができる。
【0018】
以上のことから、溶接部を中心とした180度の繰り返し曲げによる疲労強度は、パルスあたり3J(パルス幅3ms)で溶接した従来の製品が1000回以下であったのに対し、上述した溶接部品は10000回以上の疲労強度を有していた。又、疲労強度のばらつきも標準偏差で従来の500程度から100以下と大幅に小さくなり、品質が安定化していた。
【0019】
(実施の形態2)
図1及び図4、5を用いて実施の形態2を説明する。なお、実施の形態1と同一の要素は同一符号を付し、説明を省略する。図4は本実施の形態の可撓性管1、2の突き合わせ部の溶接部分の外観を示す。同図において、13は突き合わせ部の外周をスポット溶接した溶接部5と隣接するスポット溶接部を示す。このスポット溶接部10は隣接する金属素線を相互にスポット溶接することで形成される。
【0020】
図5は図4の長さ方向の断面図を示し、15はレーザ光10により形成されるスポット溶接の溶け込みを示す。この溶け込み部分15は隣接する金属素線のスポット溶接によって形成されるものである。
【0021】
本実施の形態において、可撓性管1、2をそれぞれ図示していない回転チャックに固定し、これらの可撓性管1、2の端面3、4を100g重の荷重で押し付ける。この状態で、レーザ光10の1スポット毎に可撓性管1、2を一定角度回転させながら、突き合わせ部の端面3及び4をスポット溶接する。このとき、レーザ光10の1スポット毎のエネルギーを3J(パルス幅3ms)として、レーザ光10のスポット毎に回転させる可撓性管1、2の回転量を隣接するレーザスポット痕相互の重なりが10%になるように設定して可撓性管1、2の突き合わせ部を1周にわたり溶接する。
【0022】
この溶接の際、突き合わせ部の溶け込み8は平均で、外周面の直径(φ)がφ1.0mm、深さが1.5mmとなる。このとき熱影響部7は厚さ0.8mmとなる。さらに、突き合わせ部から0.7mm離れた点にスポット溶接13を1周につき4点ずつ両方の可撓性管1、2上に照射する。こうすることで、突き合わせ部を溶接する溶接部5に形成された熱影響部7が溶融され、スポット溶接13による熱影響部がスポット溶接部では残る。この部分での熱影響部7の厚さは0.09mmである。
【0023】
以上のような本実施の形態による溶接部品は、スポット溶接のエネルギーを小さくするため、この部分に形成される熱影響部が小さくなる。従って、溶接部近傍での疲労強度の低下が従来に比べ著しく小さくできる。
【0024】
また、可撓性管1、2の突き合わせ部に存在する厚さ0.8mmの熱影響部をその後のスポット溶接により再度溶解する。このため溶接部品における軟性の可撓性管1に形成される熱影響部は、厚さ0.09mmとなる。これによって溶接部を中心とした180度の繰り返し曲げによる疲労強度は、3J(パルス幅3ms)で溶接した従来の溶接部品が1000回以下であったのに対し、上述した溶接部品は6000回以上の疲労強度を有していた。さらに疲労強度のばらつきも標準偏差で従来の500程度から100以下と大幅に小さくなり、品質を安定化することが可能となった。
【0025】
【発明の効果】
本発明の線状溶接部品は、溶接部の溶接不良を生じることなく、その熱影響部を小さくできる。このため高品質で疲労強度や曲げ延ばしに強い特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】可撓性管の突き合わせ状態を示す正面図である。
【図2】実施の形態1による突き合わせ状態での溶接時の状態の正面図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】実施の形態2の溶接時の正面図である。
【図5】図4の断面図である。
【符号の説明】
1 軟性の可撓性管
2 硬性の可撓性管
3 端面
4 端面
5 溶接部
6 レーザスポット痕
7 熱影響部
8 溶け込み部
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属素線を巻回してコイル状とした線材がレーザによって溶接された線状溶接部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
コイル状の線材を相互に接合する場合においては、YAGレーザや炭酸ガスレーザ等を使用したレーザ溶接によって行われている。このレーザ溶接では、脆化層を含む熱影響部が接合部(溶接部)に形成されるため、溶接部の疲労強度が溶接前の素材に対し大きく低下する問題が生じていた。この疲労強度低下に対する対策として、特開平4−61854号公報においては線材の相互の突き合わせ端面をレーザスポットにより1周溶接した後、この溶接部を含む金属素線と隣接する金属素線をレーザスポットにより複数箇所溶着している。これにより、可撓性管の突き合わせ端面の溶接箇所の弾性限界の低下を排除している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、溶接部の強度低下、特に疲労強度の低下は溶接部の溶融金属部の外側に形成される熱影響部の性質によることが知られている。すなわち、この熱影響部の大きさが小さければそれだけ疲労強度の低下を低く押さえることが可能となるものである。上述した特開平4−61854号公報では、コイル状線材相互の突き合わせ部の1周の溶接によって生じる熱影響部を隣接する金属素線と複数箇所レーザ溶接することで、疲労強度等の低下を排除している。
【0004】
このような溶接においては、線材の突き合わせ部端面の隙間が0.02mmの場合、レーザ光の1スポットのエネルギーを3J以上にしないと、隙間が溶接後に残って、溶接不良の欠陥品となる。この3Jのエネルギーによって形成される熱影響部の厚さは、平均0.8mmである。
【0005】
ここで、熱影響部の大きさはレーザスポットのエネルギーの大きさにより決まるため、上述した方法では、線材相互の突き合わせ部に生じた熱影響部の一部を、隣接する金属素線と複数箇所レーザ溶接する際に再溶解して取り除いているが、この再溶解時のレーザスポットによって、同じような大きさの熱影響部が形成される。このため強度向上を十分に達成することができない。これに対して、熱影響部を小さくするために、溶接のエネルギー値を小さくすると、溶接しようとする線材相互の突き合わせ部近辺の金属素線の溶融量が十分でなくなる。これにより溶接されない隙間が可撓性管の突き合わせ部に生じて不良となる問題があった。
【0006】
本発明は以上の問題点を考慮してなされたものであり、可撓性管の相互の突き合わせ部に隙間を生じることなく、しかも、溶接部に形成される熱影響部の大きさを小さくすることによって疲労強度を向上させた線状溶接部品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の線状溶接部品は、金属素線をコイル状に巻いて形成した軟性の可撓性管及び硬性の可撓性管のそれぞれの端部を突き当て、この突き当て部の外周にレーザスポットを照射して溶接するものであり、前記可撓性管の突き当て部の端面の隙間が0.01mm以下でないと溶接されない大きさのエネルギー値、又は溶接により生じる熱影響部の厚さが0.1mm以下のエネルギー値に前記スポット溶接のエネルギー値を設定し、前記可撓性管の突き当て部の外周面を2周以上にわたり溶接することを特徴とする。
【0008】
本発明の別の線状溶接部品は、金属素線をコイル状に巻いて形成した軟性の可撓性管及び硬性の可撓性管のそれぞれの端部を突き当て、この突き当て部の外周をレーザスポットによって1周にわたり溶接するものであり、前記可撓性管の内、少なくとも軟性の可撓性管に対して、溶接部を含む金属素線と隣接する金属素線とを前記可撓性管の突き当て部を溶接したエネルギーより小さいエネルギーのレーザスポットにより複数箇所溶接することを特徴とする。
【0009】
上述した本発明では、可撓性管相互の突き合わせ部を、その隙間が0.01mm以下でないと溶接されない大きさの低いエネルギー値に設定するか、又は溶接により生じる熱影響部の厚さが0.1mm以下の低いエネルギー値に設定して2周以上にわたりスポット溶接するか、もしくは軟性の可撓性管の金属素線とその隣接する金属素線とを、突き当て部を溶接したエネルギーよりも小さいエネルギーのレーザスポットにより複数箇所溶接するため、可撓性管の突き合わせ部を一回で溶接できるような大きなエネルギーで溶接する場合に比べて、小さいエネルギーで溶接したスポットが溶接部品に残る。従って、溶接部品に最終的に残る熱影響部は従来の溶接部品よりも小さくできるので、溶接部品の疲労強度の低下を従来の溶接に比べ小さくできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1〜3は本発明の実施の形態1を示し、図1はコイル状の可撓性管1、2を相互に突き合わせ、その突き合わせ部に対して、外周からレーザスポットを照射して溶接する状態である。同図において、1は外径3mm、素線径1mm、長さ200mmのSUS304からなる軟性の可撓性管であり、2は外径3mm、素線径1.4mm、長さ500mmのSUS304からなる硬性の可撓性管である。これらの可撓性管1、2の対向する端面3、4はいずれも研削により平面加工されている。この端面3、4を突き合わせた状態で、YAGレーザ光10によって突き合わせ部の外周をレーザ溶接する。なお、レーザ光10のレーザ本体及びその光学系は図示を省略してある。11は可撓性管1、2を突き合わせる際に、端面3、4の突き合わせ部に生じる隙間を示す。
【0011】
図2は、スポットレーザのスポット溶接によって溶接された可撓性管1、2の突き合わせ溶接部5の近傍の外観を示し、同図において、6はレーザ光10により溶融凝固したレーザスポット痕を示す。
【0012】
図3は図2の長さ方向の断面図を示し、8はレーザ光10により溶融凝固した部分に形成される再結晶部である溶け込みを示し、7は溶け込みの外周に形成される熱影響部を示す。この熱影響部7はレーザ溶接時の熱により機械的強度が低下しているので、ピッカース硬度を測定することにより、その範囲を知ることができる。
【0013】
本実施の形態においては、可撓性管1、2をそれぞれ図示していない回転チャックに固定し、これらの可撓性管1、2の端面3、4を100g重の荷重で押し付ける。この状態で、レーザ光10の1スポット毎に可撓性管1、2を一定角度回転させながら、突き合わせ部の端面3及び4をレーザ光によりスポット溶接する。このとき、レーザ光10の1スポット毎のエネルギーを1J(パルス幅3ms)として、レーザ光10のスポット毎に回転させる可撓性管1、2の回転量を、隣接するレーザスポット痕6の相互の重なりが10%になるように設定して可撓性管1、2の突き合わせぶの端面3、4を2周にわたり溶接する。
【0014】
この溶接の際、突き合わせ部の溶け込み8は平均で、外周面の直径(φ)が0.7mm、深さが0.4mmとなる。このとき熱影響部7は、厚さ0.09mmとなる。この溶接のエネルギーは低いエネルギー値であり、このようなエネルギーのレーザ光10のスポットによる1周目の溶接では、可撓性管1、2の突き合わせ部の隙間11が0.01mmを越えると、可撓性管1と2が融着されずに溶接不良の1つである隙間となる。
【0015】
しかしながら一周目の溶接においては、可撓性管1、2が接している部分が溶接されることで、次のスポットに相当する突き合わせ部直前のスポットによる溶融金属が流れ込んだり、溶融後の冷却収縮に伴い、端面3、4が引き寄せられて溶接される。また、端面3、4にバリ等が存在して隙間11が形成されている場合は、1周目のレーザ光10のスポットでバリ等を溶解したり、燃焼して小さくする。
【0016】
一周目の溶接では以上のような作用を有するため、これに続く2周目の溶接では、1周目の可撓性管1、2の突き合わせ部の端面3、4の隙間11がないところから溶接が始まり、次々に連続して溶接される。この2周目では1周目に溶接されなかった箇所が溶接されるため、突き合わせ部の隙間11が0.06mmでも、隙間が残ることのない溶接が可能となった。
【0017】
以上の実施の形態による可撓性管1、2 の溶接部品は、2周溶接を行うため、溶接部に隙間等の欠陥が生じることが少ない。また、可撓性管相互の隙間が0.02mmのとき、従来の溶接で生じる熱影響部の厚さは0.8mmであるのに対し、本実施の形態ではレーザ光のスポット毎のエネルギー値を小さくしているため、熱影響部の厚さを0.09mmに押さえることができる。
【0018】
以上のことから、溶接部を中心とした180度の繰り返し曲げによる疲労強度は、パルスあたり3J(パルス幅3ms)で溶接した従来の製品が1000回以下であったのに対し、上述した溶接部品は10000回以上の疲労強度を有していた。又、疲労強度のばらつきも標準偏差で従来の500程度から100以下と大幅に小さくなり、品質が安定化していた。
【0019】
(実施の形態2)
図1及び図4、5を用いて実施の形態2を説明する。なお、実施の形態1と同一の要素は同一符号を付し、説明を省略する。図4は本実施の形態の可撓性管1、2の突き合わせ部の溶接部分の外観を示す。同図において、13は突き合わせ部の外周をスポット溶接した溶接部5と隣接するスポット溶接部を示す。このスポット溶接部10は隣接する金属素線を相互にスポット溶接することで形成される。
【0020】
図5は図4の長さ方向の断面図を示し、15はレーザ光10により形成されるスポット溶接の溶け込みを示す。この溶け込み部分15は隣接する金属素線のスポット溶接によって形成されるものである。
【0021】
本実施の形態において、可撓性管1、2をそれぞれ図示していない回転チャックに固定し、これらの可撓性管1、2の端面3、4を100g重の荷重で押し付ける。この状態で、レーザ光10の1スポット毎に可撓性管1、2を一定角度回転させながら、突き合わせ部の端面3及び4をスポット溶接する。このとき、レーザ光10の1スポット毎のエネルギーを3J(パルス幅3ms)として、レーザ光10のスポット毎に回転させる可撓性管1、2の回転量を隣接するレーザスポット痕相互の重なりが10%になるように設定して可撓性管1、2の突き合わせ部を1周にわたり溶接する。
【0022】
この溶接の際、突き合わせ部の溶け込み8は平均で、外周面の直径(φ)がφ1.0mm、深さが1.5mmとなる。このとき熱影響部7は厚さ0.8mmとなる。さらに、突き合わせ部から0.7mm離れた点にスポット溶接13を1周につき4点ずつ両方の可撓性管1、2上に照射する。こうすることで、突き合わせ部を溶接する溶接部5に形成された熱影響部7が溶融され、スポット溶接13による熱影響部がスポット溶接部では残る。この部分での熱影響部7の厚さは0.09mmである。
【0023】
以上のような本実施の形態による溶接部品は、スポット溶接のエネルギーを小さくするため、この部分に形成される熱影響部が小さくなる。従って、溶接部近傍での疲労強度の低下が従来に比べ著しく小さくできる。
【0024】
また、可撓性管1、2の突き合わせ部に存在する厚さ0.8mmの熱影響部をその後のスポット溶接により再度溶解する。このため溶接部品における軟性の可撓性管1に形成される熱影響部は、厚さ0.09mmとなる。これによって溶接部を中心とした180度の繰り返し曲げによる疲労強度は、3J(パルス幅3ms)で溶接した従来の溶接部品が1000回以下であったのに対し、上述した溶接部品は6000回以上の疲労強度を有していた。さらに疲労強度のばらつきも標準偏差で従来の500程度から100以下と大幅に小さくなり、品質を安定化することが可能となった。
【0025】
【発明の効果】
本発明の線状溶接部品は、溶接部の溶接不良を生じることなく、その熱影響部を小さくできる。このため高品質で疲労強度や曲げ延ばしに強い特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】可撓性管の突き合わせ状態を示す正面図である。
【図2】実施の形態1による突き合わせ状態での溶接時の状態の正面図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】実施の形態2の溶接時の正面図である。
【図5】図4の断面図である。
【符号の説明】
1 軟性の可撓性管
2 硬性の可撓性管
3 端面
4 端面
5 溶接部
6 レーザスポット痕
7 熱影響部
8 溶け込み部
Claims (2)
- 金属素線をコイル状に巻いて形成した軟性の可撓性管及び硬性の可撓性管のそれぞれの端部を突き当て、この突き当て部の外周にレーザスポットを照射して溶接することにより得られる線状溶接部品において、
前記可撓性管の突き当て部の端面の隙間が0.01mm以下でないと溶接されない大きさのエネルギー値、又は溶接により生じる熱影響部の厚さが0.1mm以下のエネルギー値に前記スポット溶接のエネルギー値を設定し、前記可撓性管の突き当て部の外周面を2周以上にわたり溶接することを特徴とする線状溶接部品。 - 金属素線をコイル状に巻いて形成した軟性の可撓性管及び硬性の可撓性管のそれぞれの端部を突き当て、この突き当て部の外周をレーザスポットによって1周にわたり溶接することにより得られる線状溶接部品において、
前記可撓性管の内、少なくとも軟性の可撓性管に対して、溶接部を含む金属素線と隣接する金属素線とを前記可撓性管の突き当て部を溶接したエネルギーより小さいエネルギーのレーザスポットにより複数箇所溶接することを特徴とする線状溶接部品。
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JPH0999382A JPH0999382A (ja) | 1997-04-15 |
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1995
- 1995-10-05 JP JP25846395A patent/JP3625917B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH0999382A (ja) | 1997-04-15 |
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