JP4128022B2 - インサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法およびそれに用いるインサート部材 - Google Patents

インサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法およびそれに用いるインサート部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属配管材、金属板材等の開先突き合わせ溶接に係り、特にインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法およびそれに用いるインサート部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属配管材や金属板材等をTIG溶接等により突き合わせ溶接する場合における継手断面形式としては、均一で健全な裏波ビード形状を得やすいことから一般にV型開先継手形式が用いられている。これは、図12に示すように母材101の継手部102における断面形状をV型開先形状に加工し、その開先部分(V溝内)に溶接材(フィラーワイヤー:溶加棒)103を溶着、盛り付けして接合強度を得るものである。
【0003】
継手部102は予め所定の間隙tを有するように仮固定され、溶接時には溶融した溶接材103が間隙tから継手部102の裏面側にはみ出て凸形状の裏波ビード104が形成される。この裏波ビード104が溶接長手方向に均一かつ滑らかに形成されることにより接合強度の高い信頼性のある溶接がなされる。よって、裏波ビード104の形成には最も注力を要するといっても過言ではない。
【0004】
従来、裏波ビードの形成をより確実なものにして溶接の信頼性を高めるのに効果のある溶接方法として、図13に示すように継手部102の間にインサート部材105を介在させて溶接を行う突き合わせ溶接が行われている。インサート部材105は溶接時に溶接材と共に良好に継手部102に溶け込み、均一で滑らかな裏波ビードが形成される。なお、金属配管材等を上記のように溶接する場合にはインサート部材105がリング状に形成されてインサートリングと呼ばれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接を行うには、継手部102の断面形状を既存のV型開先形状からU型開先形状となるように追加工し、インサート部材105に接触する薄肉かつ肉厚一定のリップ部106を形成しなければならず、その加工精度が高く要求される事から加工コストが嵩む上に、溶接前に継手部102の間にインサート部材105を予め介装して突き合わせ固定する作業(仮付け作業)に多大な手間が掛かるという難点があった。
【0006】
このため、インサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法は、高品質な溶接方法であるにもかかわらず、主に原子力プラントの重要部等のみにしか採用されていないのが現状である。また、TIG溶接より2〜3倍程度高速で高能率化が可能なMAG溶接の施行を考える場合においても、継手部の加工コストが高いことと仮付け作業が困難な事がネックとなっており、インサート部材を用いた開先突き合わせ溶接が原子力プラント分野を除く火力プラントおよび一般産業分野に普及しにくい大きな要因となっている。
【0007】
なお、継手部の断面形状をU型開先形状ではなくV型開先形状としてインサート部材を用いて溶接した場合、初層溶接時に溶接熱がインサート部材と継手部とに均一に伝播されずに双方の溶け込みが不足する等して所望の溶接強度が得られないという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、高品質な連続溶接を可能にしつつ、継手部の断面形状としてV型開先形状を適用可能にし、継手部の加工コストを低減させるとともに仮付け作業を容易にし、これによりインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接を幅広い産業分野に普及させ得るインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法およびそれに用いるインサート部材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係るインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法は、請求項1に記載したように、母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであるインサート部材を形成するインサート部材形成ステップと、このインサート部材を上記母材のV型開先継手部に仮付けする仮付けステップと、上記仮付けステップ後に母材のV型開先継手部と上記インサート部材とを連続溶接する連続溶接ステップとを有すると共に、上記インサート部材は前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状が凹状、開先裏面側を向く面形状が凸状であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法は、請求項2に記載したように、母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであるインサート部材を形成するインサート部材形成ステップと、このインサート部材を上記母材のV型開先継手部に仮付けする仮付けステップと、上記仮付けステップ後に母材のV型開先継手部と上記インサート部材とを連続溶接する連続溶接ステップとを有すると共に、上記インサート部材は前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状が凸状、開先裏面側を向く面形状が凹状であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法は、請求項3に記載したように、母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであるインサート部材を形成するインサート部材形成ステップと、このインサート部材を上記母材のV型開先継手部に仮付けする仮付けステップと、上記仮付けステップ後に母材のV型開先継手部と上記インサート部材とを連続溶接する連続溶接ステップとを有すると共に、上記インサート部材は前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状と開先裏面側を向く面形状とが共に凹状であることを特徴とする。
【0012】
これらの溶接方法によれば、溶接熱源から入力された熱エネルギーが効率良くV型開先継手部とインサート部材とに伝達されて双方が良好に融合でき、これにより初層溶接時に均等かつ滑らかな凸形状の裏波ビードが得られる。したがって、高品質かつ高効率な連続溶接が可能になるとともに、継手部の断面形状としてV型開先形状が適用可能になり、継手部の加工コスト低減と仮付け作業の容易化に繋がる。
【0013】
また、上記の各態様でインサート部材を形成すれば、凸状、凹状の曲面によりインサート部材の表面積が増加し、これにより溶接熱源から入力された熱エネルギーがより効率良くインサート部材に伝達されるため、その分インサート部材の開先継手部間隔方向の厚みBを小さく設定することが可能になり、V型開先継手部の開先断面積、即ち溶融プールの断面積を小さくし、より高効率な溶接が可能になる。
【0014】
さらに、本発明に係るインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法は、請求項4に記載したように、前記母材の材質を、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼の少なくとも1種類以上の材料を用いることを特徴とする。これにより、高い溶接強度が得られる。
【0015】
また、本発明に係るインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法は、請求項5に記載したように、前記インサート部材を前記母材のV型開先継手部に仮付けする仮付けステップにおいて、インサート部材の一側を母材の一方のV型開先継手部に仮付けした後、インサート部材の他側を母材の他方のV型開先継手部に仮付けすることを特徴とする。こうすれば、仮付け作業を容易にすることができる。
【0016】
そして、本発明に係るインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法は、請求項6に記載したように前記母材と同等な溶接材料で製作されたフィラーワイヤー(溶加棒)を別途適量供給しながらTIG溶接を行う、または請求項7に記載したように前記母材と同等な溶接材料で製作されたフィラーワイヤー(溶加棒)を消耗電極として使用し、このフィラーワイヤーを別途適量供給しながらMAG溶接を行うことを特徴とする。これらにより、高い溶接強度の確保と連続した裏波ビードの形成が可能になるとともに、溶着効率の向上を図ることができる。
【0017】
また、本発明に係るインサート部材は、請求項8に記載したように、母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであると共に、前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状が凹状、開先裏面側を向く面形状が凸状であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るインサート部材は、請求項9に記載したように、母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであると共に、前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状が凸状、開先裏面側を向く面形状が凹状であることを特徴とする。
さらに、本発明に係るインサート部材は、請求項10に記載したように、母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであると共に、前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状と開先裏面側を向く面形状とが共に凹状であることを特徴とする。
これらのインサート部材によれば、溶接熱源から入力された熱エネルギーが効率良くV型開先継手部とインサート部材とに伝達されて双方が良好に融合でき、これにより初層溶接時に均等かつ滑らかな凸形状の裏波ビードが得られる。したがって、高品質かつ高効率な連続溶接が可能になるとともに、継手部の断面形状としてV型開先形状が適用可能になり、継手部の加工コスト低減と仮付け作業の容易化に繋がる。
また、上記の各態様でインサート部材を形成すれば、凸状、凹状の曲面によりインサート部材の表面積が増加し、これにより溶接熱源から入力された熱エネルギーがより効率良くインサート部材に伝達されるため、その分インサート部材の開先継手部間隔方向の厚みBを小さく設定することが可能になり、V型開先継手部の開先断面積、即ち溶融プールの断面積を小さくし、より高効率な溶接が可能になる。
さらにまた、本発明に係るインサート部材は、請求項11に記載したように、前記接触面の厚みAを前記母材の開先継手部間の食い違い公差寸法よりも少なくとも0.5mm大きくしたことを特徴とする。これにより、開先継手部の食い違いが最大量であったとしても、少なくとも0.5mm以上の接合面が得られて溶接が可能になる。
また、本発明に係るインサート部材は、請求項12に記載したように、前記接触面の厚みAが1.0mm〜3.0mmの範囲内であることを特徴とする。このようにインサート部材の厚みAを設定することにより、インサート部材とV型開先継手部との間における溶け残りや、V型開先継手部のV溝内における溶融プールの溶け落ち等が起きにくくなり、より健全な裏波ビードを形成して高品質な連続溶接が可能になる。請求項13に記載したように接触面の厚みAを2.0mmに設定すればより好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る溶接方法を金属配管材に適用した例を示す側面図である。溶接の母材となる金属配管材1,1の継手部(接合部)2はV型開先形状に加工され、その間にリング状に形成されたインサート部材(インサートリング)3が介装される。
【0020】
図2(a)は、図1に示す金属配管材1,1の継手部2とインサート部材3とを密着させた部分を示す拡大断面図であり、図2(b)はインサート部材3単体の断面図である。継手部2は例えばJIS規格に基づくV型開先形状に加工され、その開先面4,4の傾斜角度は例えば30°に設定され、先端となるルート面5,5にインサート部材3の接触面6,6が突き当てられて溶接される。
【0021】
インサート部材は、接触面6,6の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aとなるように寸法設定される。一例として、A=2mmとした場合、Bは2mmを超え、かつ6mm未満に設定される。
【0022】
また、上記A寸法は、母材である金属配管材1,1の継手部2の食い違い公差寸法よりも少なくとも0.5mm大きく設定される。上記寸法とすることにより、継手部2の食い違いが最大量であったとしても、少なくとも0.5mm以上の接合面が得られて溶接が可能になり、信頼性が高まる。
【0023】
上記A寸法は、1.0mm〜3.0mmの範囲内に設定するのが良く、その中間値の2.0mmに設定するのが最も好ましい。
【0024】
さらに、インサート部材3の、継手部2の開先表面側(金属配管材1,1の外面側)を向く外面8の面形状が凹状、開先裏面側(金属配管材1,1の内面側)を向く内面9の面形状が凸状に形成されている。これらの凹凸形状は例えば滑らかな湾曲面状に形成される。
【0025】
また、図3(a),(b)に示すインサート部材3aのように外面8の面形状を凸状、内面9の面形状を凹状に形成したり、図4(a),(b)に示すインサート部材3bのように外面8の面形状と内面9の面形状を共に凹状に形成してもよい。いずれのインサート部材3,3a,3bの場合も、A寸法とB寸法の関係が、A<B<3Aとなるように設定し、A寸法を1.0mm〜3.0mmの範囲内、好ましくは2.0mmに設定する。
【0026】
本発明に係る開先突き合わせ溶接方法は、上記仕様のインサート部材3(3a,3b)を形成するインサート部材形成ステップと、このインサート部材3を金属配管材1,1の継手部2に仮付けする仮付けステップと、上記仮付けステップ後に継手部2とインサート部材3とを連続溶接する連続溶接ステップとを有してなる。
【0027】
前記仮付けステップの手順を図5(a),(b),(c)に示す。まず、(a)に示すようにインサート部材3の片側の接触面6を継手部2の一方のルート面5に当接させ、次に(b)に示すようにインサート部材3と一方のルート面5との間を一定ピッチの点溶接11等により仮付けし、最後に(c)に示すようにインサート部材3の他側の接触面6を継手部2の他方のルート面5に当接させて同じく点溶接11等により仮付けする。仮付けされた部分の断面は図6に示すようなものとなる。
【0028】
このような手順でインサート部材3と継手部2との間を仮付けすることにより、継手部2の間を治具等で固定する必要がなくなり、仮付け作業を容易にすることができる。
【0029】
次に、前記連続溶接ステップについて説明する。これは本溶接とも呼ばれるステップであり、下記のTIG溶接またはMAG溶接によって良好に成し遂げることができる。この連続溶接ステップは自動あるいは手動溶接により行われる。
【0030】
TIG溶接では、図7に示すように溶接トーチ13先端のタングステン等で形成された非消耗電極14からのアーク放電により、継手部2とインサート部材3とが加熱、溶融される。同時に、母材(金属配管材1,1)と同等な溶接材料で製作されたフィラーワイヤー(溶加棒)15が別途適量供給され、このフィラーワイヤー15が継手部2の開先面4,4とインサート部材3とがなすV溝内において溶融し、溶融プール16を形成する。溶融プール16は開先面4,4とインサート部材3とに融合し、同時にルート面5,5とインサート部材3との間も融合する。そして、図8に示すように溶接ビード17が形成されて継手部2が溶接される。なお、溶接トーチ13からは溶接部に向ってシールドガス(不活性ガス)18が噴き付けられる。
【0031】
一方、MAG溶接では、図9に示すように溶接トーチ21に設けられた電極22が母材(金属配管材1,1)と同等な溶接材料で製作されており、この電極22がアーク放電を行いつつ、フィラーワイヤー(溶加棒)として適量供給される消耗電極として機能する。電極22は継手部2の開先面4,4とインサート部材3とがなすV溝内において溶融プール23を形成し、TIG溶接の場合と同様に溶接ビード17(図8参照)が形成される。MAG溶接の場合も溶接トーチ21から溶接部に向ってシールドガス(活性ガス)24が噴き付けられる。
【0032】
TIG溶接、MAG溶接、いずれの溶接方法においても、溶接ビード17(図8)は継手部2の表裏両側に若干はみ出す凸形断面をなし、特に継手部2の裏側にはみ出した部分17aが裏波ビードと呼ばれ、この裏波ビード17aが溶接長手方向に均一かつ滑らかに形成されることにより溶接の接合強度が高められる。インサート部材3の介装は裏波ビード17aの形成をより確実なものにする。このように、インサート部材3を用いてTIG溶接またはMAG溶接によって連続溶接(本溶接)を行うことにより、高い溶接強度の確保と連続した裏波ビード17aの形成を可能にするとともに、溶着効率の向上を図ることができる。
【0033】
溶接ビード17(溶融プール16,23)の形成は、母材(金属配管材1,1)の厚みに応じて複数回に分けて実行され、例えば図8の溶接ビード17は1層目17bと2層目17cからなる2層構造となっている。裏波ビード17aは1層目17bの形成時に同時形成される。
【0034】
母材(金属配管材1,1)の材質は、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼の少なくとも1種類以上の材料を用いれば、高い溶接強度を得ることができる。
【0035】
本発明では、インサート部材3の接触面6の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係をA<B<3Aとなるように定めたことにより、溶接トーチ13,21等の溶接熱源から入力された熱エネルギーを効率良く継手部2とインサート部材3とに伝達させて双方を良好に融合させ、これにより初層(1層目17b)の溶接時に均等かつ滑らかな凸形状の裏波ビード17aを得ることができる。
【0036】
したがって、高品質かつ高効率な連続溶接が可能になるとともに、継手部2の断面形状として既存のV型開先形状が適用可能になるため、従来の加工困難なU型開先形状等にする必要がなく、継手部2の加工コスト低減と仮付け作業の容易化を達成することができる。
【0037】
ところで、図10に示すように、V型開先形状を適用した状態で、インサート部材3のA,B寸法の関係をA>Bとした場合には、図2〜図4に示す本発明のA<Bの状態と比較して開先継手のV溝断面積が著しく減少することにより、初層溶接時に溶融プール26が開先面4,4と接触する面積が増加する。この事が溶接熱源からの熱エネルギーの伝導範囲27を拡張させ、熱エネルギーを母材1,1側に過大に分散させてしまう。その結果、熱エネルギー効率が非常に悪くなり、ルート面5とインサート部材3との間に融合不良等に起因する溶接欠陥が生じやすくなることが実験により確認されている。
【0038】
逆に、図11に示すように、インサート部材3のB寸法がA寸法に対し過大(実験では3倍を大きく超えた場合)になると、溶接時における溶融プール26の深度が不足して熱エネルギーの伝導範囲27が著しく縮小され、熱エネルギーがインサート部材3にのみ集中し、表面張力によりバランスしている溶融プール26を維持できずに溶け落ち現象が発生する。しかも、開先継手のV溝断面積が大きくなることにより、フィラーワイヤー(溶加棒)の必要量が増加するとともに溶接作業時間が長くなるといった弊害があり、溶接作業効率とコスト面で極めて不利である。
【0039】
したがって、継手部2の断面形状としてV型開先形状を適用可能にしつつ、熱エネルギーを効率良くルート面5,5とインサート部材3に伝達してインサート部材3を過不足なく良好に融合させるためには、本発明のようにインサート部材3のA寸法とB寸法の関係が、A<B<3Aであることが望ましい。
【0040】
インサート部材3のB寸法が小さくなる程、V字開先継手のV溝断面積、即ち溶融プールの断面積が小さくなって溶接作業効率とコスト面においては有利になる。しかしその反面、前述の如く熱エネルギー効率が悪くなることにより、ルート面5,5とインサート部材3との間に融合不良等に起因する溶接欠陥が生じやすくもなる。
【0041】
そこで、本発明のようにインサート部材3の外面8および内面9の面形状を凹状、または凸状とすれば、インサート部材3の表面積が増加し、これにより熱エネルギーが効率良くインサート部材3に伝達されるため、その分インサート部材3のB寸法を小さく設定することが可能になり、より高効率な溶接が可能になる。
【0042】
一方、実験によれば、インサート部材3のA寸法を2.0mmに設定すると、初層溶接時に均等で滑らかな凸形状の裏波ビードが容易に得られることが判明している。
【0043】
しかし、A寸法を0.5mmと薄く設定した場合には、初層溶接時に溶融プールの溶け落ち現象が頻繁に発生し、この条件下で適正な裏波ビード形状を得るためには必然的に溶接電流を低く設定せざるを得ず、これにより接効率が低下して溶接施工条件の許容範囲が狭くなるため非実用的である。
【0044】
逆に、A寸法を3.5mmと厚く設定した場合には、インサート部材3の厚みが増加したことで加熱の必要なエリアが増大し、インサート部材3とルート面5,5とが充分に融合出来なくなって溶接欠陥が発生しやすい。
【0045】
これらの実験結果から、インサート部材のA寸法を1.0mm〜3.0mmに設定すれば、安定した良好な裏波ビードを得ることができる。その中でも中央値の2.0mmが最適な寸法であると判断できる。
【0046】
また、図13に示す従来のU型開先形状の継手部102にインサート部材105を介装して溶接した場合に形成された溶接ビードと、図2に示す本発明に係る溶接方法およびインサート部材3により形成された溶接ビードとを冶金学的に比較した場合、従来の溶接ビードは母材と溶接金属(フィラーワイヤーおよびインサート部材)とが約50%の割合で混合した溶着金属となるのに対し、本発明における溶接ビードは約90%が溶接金属となり、母材との希釈率が小さくて溶接部の機械的性質や耐食性等も従来に比べて優れていることが判明した。したがって、この点でも本発明による溶接方法およびインサート部材は従来のものよりも優れていると言える。
【0047】
なお、上記実施形態では溶接母材が金属配管材である場合の例についてのみ説明したが、本発明に係る溶接方法およびインサート部材は金属配管材に限らず、金属板や、他の多くの形状の構造材等の突き合わせ溶接にも幅広く適用することができる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法およびそれに用いるインサート部材よれば、高品質で信頼性の高い連続溶接を可能にしつつ、継手部の断面形状として既存のV型開先形状を追加工なしで適用可能にし、継手部の加工コストを低減させるとともに仮付け作業を容易にし、これによりインサート部材を用いた高品質な開先突き合わせ溶接を幅広い産業分野にローコストで普及させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶接方法を金属配管材に適用した例を示す側面図。
【図2】本発明の第1実施形態を示すもので、(a)は継手部とインサート部材とを密着させた部分を示す拡大断面図、(b)はインサート部材単体の断面図。
【図3】本発明の第2実施形態を示すもので、(a)は継手部とインサート部材とを密着させた部分拡大断面図、(b)はインサート部材単体の断面図。
【図4】本発明の第3実施形態を示すもので、(a)は継手部とインサート部材とを密着させた部分拡大断面図、(b)はインサート部材単体の断面図。
【図5】仮付けステップの手順を示すもので、(a)はインサート部材を一方の継手部に当接させた状態を示す図、(b)はインサート部材と一方の継手部とを仮付けした状態を示す図、(c)はインサートを他方cの継手部に当接させて仮付けした状態を示す図。
【図6】図5(c)のVI−VI線に沿う断面図。
【図7】TIG溶接の概略説明図。
【図8】溶接ビードの断面図。
【図9】MAG溶接の概略説明図。
【図10】V型開先形状を適用した状態でインサート部材のA,B寸法の関係をA>Bとした場合を示す断面図。
【図11】インサート部材のB寸法がA寸法に対し過大な場合を示す断面図。
【図12】従来の技術を示すインサート部材を用いないV型開先溶接部の断面図。
【図13】従来の技術を示すインサート部材を用いたU型開先溶接部の断面図。
【符号の説明】
1 母材となる金属配管材
2 継手部
3 インサート部材
4 開先面
5 ルート面
6 接触面
8 V型開先継手部の開先表面側を向く面
9 V型開先継手部の開先裏面側を向く面
15 TIG溶接時におけるフィラーワイヤー(溶加棒)
22 MAG溶接時におけるフィラーワイヤー(溶加棒)となる電極

Claims (13)

  1. 母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであるインサート部材を形成するインサート部材形成ステップと、このインサート部材を上記母材のV型開先継手部に仮付けする仮付けステップと、上記仮付けステップ後に母材のV型開先継手部と上記インサート部材とを連続溶接する連続溶接ステップとを有すると共に、上記インサート部材は前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状が凹状、開先裏面側を向く面形状が凸状であることを特徴とするインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法。
  2. 母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであるインサート部材を形成するインサート部材形成ステップと、このインサート部材を上記母材のV型開先継手部に仮付けする仮付けステップと、上記仮付けステップ後に母材のV型開先継手部と上記インサート部材とを連続溶接する連続溶接ステップとを有すると共に、上記インサート部材は前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状が凸状、開先裏面側を向く面形状が凹状であることを特徴とするインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法。
  3. 母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであるインサート部材を形成するインサート部材形成ステップと、このインサート部材を上記母材のV型開先継手部に仮付けする仮付けステップと、上記仮付けステップ後に母材のV型開先継手部と上記インサート部材とを連続溶接する連続溶接ステップとを有すると共に、上記インサート部材は前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状と開先裏面側を向く面形状とが共に凹状であることを特徴とするインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法。
  4. 前記母材の材質は、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼の少なくとも1種類以上の材料を用いることを特徴とする請求項1、2または3のいずれかに記載のインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法。
  5. 前記インサート部材を前記母材のV型開先継手部に仮付けする仮付けステップにおいて、インサート部材の一側を母材の一方のV型開先継手部に仮付けした後、インサート部材の他側を母材の他方のV型開先継手部に仮付けすることを特徴とする請求項1、2または3のいずれかに記載のインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法。
  6. 前記母材と同等な溶接材料で製作されたフィラーワイヤー(溶加棒)を別途適量供給しながらTIG溶接を行うことを特徴とする請求項1、2または3のいずれかに記載のインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法。
  7. 前記母材と同等な溶接材料で製作されたフィラーワイヤー(溶加棒)を消耗電極として使用し、このフィラーワイヤーを別途適量供給しながらMAG溶接を行うことを特徴とする請求項1、2または3のいずれかに記載のインサート部材を用いた開先突き合わせ溶接方法。
  8. 母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであると共に、前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状が凹状、開先裏面側を向く面形状が凸状であることを特徴とするインサート部材。
  9. 母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであると共に、前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状が凸状、開先裏面側を向く面形状が凹状であることを特徴とするインサート部材。
  10. 母材のV型開先継手部に接触する接触面の厚みAと、開先継手部間隔方向の厚みBとの関係が、A<B<3Aであると共に、前記母材のV型開先継手部の開先表面側を向く面形状と開先裏面側を向く面形状とが共に凹状であることを特徴とするインサート部材。
  11. 前記接触面の厚みAが前記母材の開先継手部間の食い違い公差寸法 よりも少なくとも0.5mm大きいことを特徴とする請求項8、9または10のいずれかに記載のインサート部材。
  12. 前記接触面の厚みAが1.0mm〜3.0mmの範囲内であることを特徴とする請求項8、9または10のいずれかに記載のインサート部材。
  13. 前記接触面の厚みAが2.0mmであることを特徴とする請求項8、9または10のいずれかに記載のインサート部材。
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