JP3611499B2 - 未延伸繊維、延伸繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維からなる未延伸繊維、延伸繊維及びその製造方法に関する。詳しくは、ポリトリメチレンテレフタレートを溶融紡糸し、一旦未延伸繊維として巻き取った後に、これを延伸することによって繊維を製造する、いわゆる2段階製造方法に於ける中間製品である未延伸繊維とそれを延伸して得られる延伸繊維及びその製造方法に関する。更に詳しくは、均一性の高い衣料用ポリメチレンテレフタレート延伸繊維とそれを得ることが可能な未延伸繊維、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート繊維(以下「PET繊維」と称す)は衣料用途に最も適した合成繊維として世界中で大量に生産されて、一大産業となっている。
一方、ポリトリメチレンテレフタレート繊維(以下「PTT繊維」と称す)は古くから研究歴はあるが、従来は原料の一つであるトリメチレングリコールの価格が高く、未だ本格的工業生産に至っていない。ところが、近年このトリメチレングリコールの安価な製法が開発され、工業化の可能性が出てきた。
PTT繊維はポリエステル繊維の良い点と、ナイロン繊維の良い点を併せ持つ画期的繊維という期待が寄せられており、その特徴を生かして、衣料及びカーペットなどへの応用が検討されている。
【0003】
PTT繊維については、(A)J.Polymer Science:Polymer Phisics Edition Vol.14 P263ー274(1976)、及び、(B)Chemical Fibers International Vol.45,April(1995)110ー111、(C)特開昭52−5320号公報、(D)同58−104216号公報、(E)同52−8123号公報、(F)同52−8124号公報、(G)WO99/27168号公開パンフレット、等の先行技術が存在し、既に知られている。
【0004】
先行技術(A)及び(B)には、PTT繊維の応力−伸長特性についての基本特性が記載され、PTT繊維が初期モジュラスが小さく且つ弾性回復性に優れており衣料用途やカーペット用途などに適していることが示唆されている。
また、先行技術(C)〜(G)にはPTT繊維のかかる特徴を更に改良すべく、熱に対する寸法安定性を良好にし弾性回復性をいつそう向上させる方法が提案されている。
これらの先行技術においては、そのほとんどがPTT繊維を得る製造方法として2段階法で製造されている。その中でも、技術的には本発明に近似している先行技術(D)には以下の技術が開示されている。
【0005】
通常の製造方法によるPTT未延伸繊維、即ち紡糸速度2000m/分未満の紡糸速度で紡糸された未延伸繊維は、配向度及び結晶化度が極めて低く、且つガラス転移温度が35℃と低いので、経時変化が極めて速く、延伸時に毛羽やネップが多発し良好な性質を有するPTT繊維を得ることが困難である。
そして先行技術(D)には、この問題を回避する技術として、紡糸速度を2000m/分以上、好ましくは2500m/分以上にし、繊維の配向度及び結晶化度を高め、延伸温度を35〜80℃に保つ方法が提案されている。また、先行技術(D)には3500m/分以上の紡糸速度で未延伸繊維を得て、温度20℃、湿度60%の条件下に24時間放置した後に延伸した例が開示されている。
【0006】
しかし、先行技術(D)には2000m/分未満の紡糸速度で紡糸さた未延伸繊維の構造や物性が、室温付近で時間と共に変化するいわゆる経時変化が顕著で、そのことが直接延伸調子に悪影響を与えることは記載されているが、その回避策については記載も示唆もない。ましてや、その経時変化を最小限に抑え、良好な延伸調子と良好な繊維の品質を与える具体的手段についての示唆などはない。また先行技術(D)の実施例の記載から、(D)の方法で得られるPTT延伸繊維は、タフネスが18(cN/dtex)%1/2 以下の力学的性質が劣るPTT繊維となっていることが読みとれる。
先行技術(D)の比較例には、紡糸速度1200m/分で紡糸し、未延伸繊維を20℃、相対湿度60%の雰囲気内に放置した後延伸したことが記載されいるが、タフネスが17.6(cN/dtex)%1/2 と低い値の繊維しか得られておらず、繊度変動値U%や周期的変動についての記載はない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
PTT繊維の2段階法による製造に於いては、未延伸繊維パッケージの形状が収縮または乾燥のために経時的に変化し、このように経時変化したパッケージに巻かれた未延伸繊維から得られる延伸繊維は、全般に繊度変動値、即ちU%が大きく、且つ未延伸繊維巻取機のトラバース幅またはその倍数と実延伸倍率の積に相当する周期的な繊度の変動が生じる。
この周期的繊度変動は、低繊度側と高繊度側に鋸歯状に検出される。
図1にイブネステスターによる連続繊度変動測定チャートの例を示す。周期的繊度変動とは、図1のチャート上に等間隔に存在するひげ状シグナルに対応する変動のことである。シグナルが等間隔に観察されるということは、シグナル発生の原因となる繊度変動が周期的に起こっていることを意味し、下向きに強いシグナルが存在することは、繊維長方向のその点の繊度(繊維の太さ)が低い側に変動していることを意味している。また、上向きに強いシグナルが存在することは、繊維長方向のその点の繊度が高い側に変動していることを意味している。
【0008】
この周期的繊度変動の発生間隔は、実質的に未延伸繊維パッケージの両端部間の1ストローク分の未延伸繊維長×実延伸比、または2ストローク分の未延伸繊維長×実延伸比に相当している。
2段階法において、周期的繊度変動の発生は未延伸繊維パッケージの巻取機のストローク長、綾角、延伸比で決まるが、通常は10m以下である。
このように繊度変動値U%が大きく、且つ周期的繊度変動を有する延伸繊維は、編織物にした後染色すると全般的に染色の均一性が悪く、且つ周期的な染斑や光沢斑を呈し、均一性を尊ぶ衣料用途には適さない。
【0009】
図2には、この周期的変動が存在しないイブネステスターの測定チャートの例である。
本発明者らは、かかる問題を解決する一つの方法として未延伸繊維を巻取る際の巻取張力と、未延伸繊維の保管及び延伸工程の温度と湿度の管理を特定する提案を特願平11−068672号として出願した。
この提案によれば、未延伸繊維パッケージ形状の経時的変形が解消され、その結果延伸繊維の低繊度側に現れる周期的繊度変動及びタフネスが改善されるとしている。
【0010】
通常、2段階法での合成繊維の工業的製造では、5〜10kgの重量の未延伸繊維を巻取後、ラグ時間を経て2〜3kg巻量の延伸繊維パーンに2〜5回分取している。この未延伸繊維の延伸繊維への分取作業は、1回目のみ全錘に糸掛け操作を行いその後の分取では「中間切替」と称し、糸かけ操作を省略しパーンの差し替えのみを行う。そして、この「中間切替」の際には、延伸開始時の糸切れ抑制から延伸ピンを採用する。
また、工業的製造では未延伸の巻取から延伸終了まで4〜5日かかることもあり得る。
【0011】
このように未延伸繊維の延伸に際して延伸ピンを採用して延伸を行う場合や、延伸までのラグ時間が約100時間を越える場合には、先の提案の採用のみではまま周期的繊度変動が現れ、その目的を完全に達成することが困難であることが明らかになった。更に、周期的繊度変動は低繊度側のみでなく高繊度側にも現れることが明らかとなった。また、このような条件下の延伸では、先行技術(D)に開示されているように単に複屈折率を高めるだけでは、もはや解消不可能であることも明らかになった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、PTT繊維の2段階法による製造に於いて、均一性に優れた延伸繊維を製造することが可能な未延伸繊維と、それを延伸して得られる延伸繊維、及びその製造方法の提供である。即ち、延伸に際して延伸ピンの使用や、未延伸繊維を約100時間を越える長時間の放置にも係わらず、安定した延伸調子(延伸収率)が得られ、且つ繊度変動、特に周期的変動が解消し得るPTT未延伸繊維とそれを延伸して得られる延伸繊維、及びその工業的製造方法の提供である。
そして、本発明の解決しようとする課題は、PTT未延伸繊維の経時的変化を最小限に抑え、長時間の放置に於いて延伸調子及び延伸繊維の品質に与える悪影響を解消することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、PTT未延伸繊維の複屈折率と水分率を特定することにより、延伸調子や延伸繊維の品質が極めて向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の第1の発明は、95モル%以上のトリメチレンテレフタレート繰り返し単位と5モル%以下のその他のエステル繰り返し単位から構成され、極限粘度が0.7〜1.3のポリトリメチレンテレフタレートからなり、以下に示す(1)、(2)を満足することを特徴とする未延伸繊維である。
(1)未延伸繊維の複屈折率≦0.06
(2)未延伸繊維の水分含有率≦2重量%
【0014】
本発明の第2の発明は、第1の発明の未延伸繊維を延伸して得られる延伸繊維であって、タフネスが20(cN/dtex)%1/2 以上で、イヴネステスターによる連続的繊度変動測定においてU%が1.5%以下で、且つ以下の(1)、(2)、(3)のいずれかの特性を示すことを特徴とする延伸繊維である。
(1)イヴネステスターチャート上に発生間隔10m以下の周期的変動が存在し、該変動の大きさが平均繊度対比2%以下である。
(2)イヴネステスターチャート上では発生間隔が10m以下の周期的変動は判別できないが、繊度変動の周期解析図上に間隔10m以下の周期的変動が存在する。
(3)イヴネステスターチャート上では発生間隔が10m以下の周期的変動が判別できず、且つ繊度変動の周期解析図上に間隔10m以下の周期的変動が存在しない。
ただし、タフネス=破断強度×破断伸度1/2 (cN/dtex)%1/2
イブネステスターの測定繊維長=250m
【0015】
本発明の第3の発明は、95モル%以上のトリメチレンテレフタレート繰り返し単位と5モル%以下のその他のエステル繰り返し単位から構成され、極限粘度が0.7〜1.3のポリトリメチレンテレフタレートからなる未延伸繊維を製造するにあたり、以下の(1)〜(3)の要件を満足することを特徴とする未延伸繊維の製造方法である。
(1)未延伸繊維に付与する仕上げ剤の水系エマルジョン濃度を15重量%以上とし、
(2)該仕上げ剤を、未延伸繊維の水分含有率が2重量%以下とする付与量で付与した後、
(3)巻取速度を3000m/分以下で巻取る。
【0016】
本発明は、95モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰り返し単位からなり、5モル%以下がその他のエステル繰り返し単位からなり、固有粘度が0.7〜1.3のPTTからなる繊維を、紡糸工程において一旦未延伸パッケージに巻取り、次いで該未延伸繊維を延伸工程で延伸する2段階法で延伸繊維を製造する方法を対象とする。
一般に2段階法における延伸は、延撚機(ドローツイスター)または延伸巻取機(ドローワインダー)と呼ばれる設備を利用して行われ、延伸繊維は前者ではパーン、後者ではチーズと呼ばれる形状に巻かれる。延伸繊維は、一般に、パーンにおいては有撚で、チーズにおいては無撚である。
【0017】
本発明の第1の発明は、該2段階法で延伸繊維を製造する際の中間製品である未延伸繊維に関するものである。
本発明の未延伸繊維では、パッケージに巻かれる未延伸繊維の複屈折率が0.06以下であることが必要である。
未延伸繊維の複屈折率が0.06を越えると、延伸繊維の繊度変動が大きくなり本発明の目的の達成が困難となる。
すなわち、紡糸段階で空気抵抗などにより繊維が受けた応力(紡糸張力として測定される)の回復が未延伸繊維がパッケージに巻き取られた後に生じる。ところが両端部は収縮が規制されているために、結果的には耳高のフォームとなり、この耳部とそれ以外の部分とで繊度が異なって周期的繊度変動を生じるものと推定される。
長時間の静置によっても延伸調子や延伸繊維の品質を維持するために、未延伸繊維の複屈折率は0.05以下であることが好ましい。延伸繊維のタフネスを高めるのに更に好ましい複屈折率は0.03以下である。
【0018】
本発明の未延伸繊維では、パッケージに巻かれる未延伸繊維の水分含有率を2重量%以下とすることが重要である。
未延伸繊維の水分含有率が2重量%を越えると、延伸繊維に周期的繊度変動が発生し品位の低下を来すばかりか、延伸調子も損なわれる。
未延伸繊維の水分含有率が、延伸繊維の延伸調子や品質に顕著に影響する理由は、長時間の放置により未延伸繊維の表面や両端部の未延伸繊維の水分含有率が減少し、それ以外の部分の未延伸繊維の水分含有率との差が拡大する。
この水分含有率差が、延伸時の平滑斑や温度斑となり周期的繊度変動を発生させるものと推定される。
【0019】
未延伸繊維パッケージに巻かれる未延伸繊維の水分含有率は、低いほど好ましいが、1重量%以下であれば約100時間以上の長時間静置によっても、延伸調子や延伸繊維の周期的繊度変動の発生をほとんど完全に回避できる。更に好ましい水分含有率は、0.8重量%以下である。
本発明の未延伸繊維は、硬質樹脂や紙管などに巻かれていることが好ましい。
本発明の未延伸繊維から延伸して得られる延伸繊維は、延伸調子が良好であるばかりでなく、延伸繊維の品質も優れたものとなる。
延伸繊維の繊度変動値U%は1.5%以下であり、且つ低繊度に由来する周期的繊度変動も実質的に存在しない。
【0020】
本発明の第2の発明は、第1の発明の未延伸繊維を延伸して得られる延伸繊維である。
第2の発明においてはタフネスは20(cN/dtex)%1/2 以上でなければならない。タフネスが20(cN/dtex)%1/2 未満では、PTT繊維を加工して得られる編織物の、引き裂き強度などの力学的性質が劣るものになり、衣料用繊維としては十分ではない。タフネスの好ましい範囲は22(cN/dtex)%1/2 以上である。ちなみに一般の衣料用ポリエチレンテレフタレート繊維のタフネスは約24(cN/dtex)%1/2 である。
第2の発明においては、イブネステスターによる連続的繊度変動測定においてU%は1.5%以下でなければならない。U%が1.5%を越えると物性の均一性や染色の均一性が悪く、その結果編織物に加工したときに、編織物全般に染め斑や染め筋が目立ち良好なものは得られない。U%の好ましい範囲は1.2%以下であり、更に好ましい範囲は1.0%以下である。
2重量%以上の高い水分率を有している未延伸繊維パッケージでは、パッケージの側面が経時的乾燥のために未延伸繊維の繊度変動が増大し、U%の悪化につながっていると思われる。
【0021】
第2の発明においては少なくとも、まずイブネスターによる連続的繊度測定のそのチャート上に発生間隔が10m以下の周期的繊度変動が存在し、該変動の大きさが平均繊度変動対比2%以下でなければならない。これは上記の(1)に相当する。周期的変動とは、図1のようなイブネステスターによる連続繊度変動測定チャート上に、等間隔に存在する上下向きのひげ状シグナルに対応する変動のことである。シグナルが等間隔に観察されるということは、シグナル発生の原因となる繊度変動が周期的に起こっていることを意味する。下向きのシグナルが存在することは、繊維長方向のその点の繊度(繊維の太さ)が低い側に変動していることを意味し、上向きのシグナルが存在することは、繊維長方向のその点の繊度が高い側に変動していることを意味する。このように繊度変動の対平均繊度比率はチャート上から直読できる。これが2%を越えると編織物に加工したときに、U%が1.5%以下であっても、この周期的変動が原因で部分的に強い染斑や光沢斑が顕著であり、良好な衣料用編織物は得られない。
【0022】
周期的繊度変動の発生間隔は実質的に未延伸繊維パッケージの両端部間の1ストローク分の未延伸繊維長×実延伸比、または2ストローク分の未延伸繊維長×実延伸比に相当している。両端部または片端部に存在する未延伸繊維の水分率が乾燥により減少し、これが延伸時に加熱斑や平滑斑となって延伸斑となり繊度変動となっているものと思われる。2段階法において周期的変動の発生間隔は未延伸繊維の巻取機のストローク長、綾角、延伸比で決まるが、通常10m以下である。
周期的変動が小さくなると連続変動測定チャート上では図2のように上下等間隔のシグナルが判別できなくなる。
しかし周期解析図図3のように周期変動があることを示すシグナルが現れる。
【0023】
このように連続変動測定チャート上には周期変動シグナルが顕著でないが、周期解析図にはシグナルが現れるのが、上記の(2)の特性である。ちなみに周期解析においては、シグナルが低繊度側か高繊度側かは方法上わからない。この(2)の範囲が本発明の好ましい範囲である。
周期的変動が更に小さくなると、連続変動測定チャートにも周期解析図においてもシグナルが観察されない。この例が図2と周期解析図4である。この状態が上記(3)の特性を示す状態である。
これが本発明の最も好ましい範囲である。
【0024】
以下に本発明の第3の発明である未延伸繊維の製造方法について詳述する。
本発明におけるPTTポリマーは、95モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰り返し単位からなり、5モル%以下がその他のエステル繰り返し単位からなる。
即ち、本発明におけるPTTは、PTTホモポリマー、及び5モル%以下のその他のエステル繰り返し単位を含む共重合ポリトリメチレンテレフタレートである。共重合成分の代表例には、以下のごときものがあげられる。
酸性分としては、イソフタール酸や5−ナトリウムスルホイソフタル酸に代表される芳香族ジカルボン酸、アジピン酸やイタコン酸に代表される脂肪族ジカルボン酸等々である。グリコール成分としては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等々である。また、ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸もその例に含まれる。これらの複数が共重合されていても良い。
【0025】
また、本発明のPTTには本発明の効果を妨げない範囲で、酸化チタン等の艶消し剤、熱安定剤、酸化防止剤、制電剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、種々の顔料等々の添加剤を含有又は共重合として含んでいてもよい。
本発明におけるPTTの固有粘度は、0.7〜1.3の範囲が好ましい。特に好ましくは0.8〜1.1である。
本発明におけるPTTの製造方法は、公知のもので良く、その代表例は一定の固有粘度までは溶融重合で重合度を上げ、続いて固相重合で所定の固有粘度に相当する重合度まで上げる2段階法である。
【0026】
以下に本発明におけるPTT未延伸繊維の製造方法及び、これを用いた延伸繊維の製造方法を図5及び図6、図7を用いて詳述する。
図5においてまず、乾燥機3で30ppm以下の水分率までに乾燥されたPTTペレットを255〜265℃の温度に設定された押出機4に供給し溶融する。溶融PTTは、その後ベンド5を経て250〜265℃に設定されたスピンヘッド6に送液され、ギヤポンプで計量される。その後、スピンパック7に装着された複数の孔を有する紡糸口金8を経て、マルチフィラメント9として紡糸チャンバー内に押し出される。
押出機及びスピンヘッドの温度は、PTTペレットの固有粘度や形状によって上記範囲から最適なものを選ぶ。
【0027】
紡糸チャンバー内に押し出されたPTTマルチフィラメントは、冷却風10によって室温まで冷却されつつ所定の速度で回転する引取ゴデットロール12、13によって細化されて、固化し、所定の繊度の未延伸繊維パッケージ15として巻き取られる。
未延伸繊維は、引取ゴデットロール12に接する前に、仕上げ剤付与装置11によって仕上げ剤が付与される。未延伸繊維は引取ゴデットロール13を出た後巻取機14によって、未延伸繊維パッケージとして巻き取られる。
未延伸繊維パッケージの概略図を図8に示す。
【0028】
本発明の未延伸繊維の製造方法において、未延伸繊維に付与する仕上げ剤は、水系エマルジョンタイプが使用される。
仕上げ剤の水系エマルジョンの濃度は、15重量%以上であることが必要である。エマルジョン濃度が15重量%未満では、延伸後の延伸繊維の仕上げ剤付与量を通常の0.5〜1.0重量%付与するためには、未延伸繊維に過剰の水分量が付与されることとなり、本発明の目的が達成されない。
即ち、エマルジョン濃度が15重量%未満の仕上げ剤を使用して未延伸繊維の水分含有率を本発明の範囲である2重量%以下にするには、仕上げ剤付与量を少量にすることが考えられるが、この場合には延伸繊維に付与される仕上げ剤の付与量が例えば0.3重量%以下となり、延伸繊維の平滑性が損なわれる。好ましいエマルジョン濃度は、20〜35重量%である。
【0029】
本発明の未延伸繊維の製造方法においては、仕上げ剤量を未延伸繊維の水分含有率が2重量%以下となるように付与することが必要である。
未延伸繊維の水分含有率が2重量%を越えると、長時間の静置により紡糸調子や延伸繊維の品質が不良となり、本発明の目的が達成されない。
未延伸繊維の水分含有率の調整は、仕上げ剤エマルジョン濃度と付与量を調整することにより決定することができる。
【0030】
本発明の未延伸繊維の製造方法においては、巻取速度を3000m/分以下で巻き取ることが必要である。
巻取速度が3000m/分を越えると、未延伸繊維の複屈折率率が0.06を越え、本発明の目的が達成されない。
好ましい巻取速度は、1000〜2000m/分であり、更に好ましくは1200〜1800m/分である。
【0031】
未延伸繊維は、次に延伸工程に供給され、図6または図7に示すのような延伸機で延伸される。延伸工程に供給するまでの未延伸繊維の保存環境は、雰囲気温度を10〜25℃、相対湿度75〜100%に保っておくことが好ましい。
また、延伸機上の未延伸繊維は、延伸中を通してこの温度、湿度に保持することが好ましい。
延伸機上では、まず未延伸繊維パッケージ15は45〜65℃に設定された供給ロール16上で加熱され、供給ロール16と延伸ロール18との周速度比を利用して所定の繊度まで延伸される。繊維は延伸後あるいは延伸中に、100〜150℃に設定されたホットプレート17に接触しながら走行し、緊張熱処理を受ける。延伸ロールを出た繊維はスピンドルによって撚りをかけられながら、延伸繊維パーン19として巻取る。
【0032】
より好ましくは、供給ロール温度は50〜60℃、更に好ましくは52〜58℃である。
供給ロール16と延伸ロール18との比即ち、延伸比及びホットプレート温度は延伸張力が0.35cN/dtex前後となるように設定するのが良い。
また、必要に応じて図7に示すような延撚機を用いて、供給ロール16とホットプレート17の間に延伸ピンを設け、延伸を行っても良い。
この場合には、供給ロール温度を50〜60℃、より好ましくは52〜58
℃になるように厳密に管理することが良い。
本発明の製造方法は、この供給ロール温度と延伸ピンを組み合わせた延伸の場合に、本発明の効果が一層顕著に効奏する。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に実施例などをもって本発明を更に詳細に説明するが、言うまでもなく本発明は実施例などにより限定されるものではない。
なお、実施例において行った物性の測定方法及び測定条件を説明する。
(1).固有粘度
固有粘度[η]は、次式の定義に基づいて求められる値である。
定義式中のηrは純度98%以上の0−クロロフェノールで溶解したPTTポリマーの稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶液の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで現されるポリマー濃度である。
【0034】
(2).繊維の水分率
JISーL−1013 に準じて次式により求めた。
水分率(重量%)=〔(W1 ーW2 )/W2 〕×100
ここで、W1 :試料の採取時の重量(g)
W2 :試料の絶乾時の重量(g)
【0035】
(3).連続繊度変動測定(チャート)及び繊度変動値U%
以下の方法で連続繊度変動チャート(Diagram Mass)を求めると同時にU%を測定する。
測定機 イブネステスター(ツェルベガーウースター社製;ウスターテスター4)
測定条件
・糸速 100m/分
・撚数 10000回/分
・測定繊維長 250m
・スケール 繊維の繊度変動に応じて設定
【0036】
(4).染め級
以下の基準で熟練者が判定する。
5級: 最も優れる(合格)
4級: 優れる (合格)
3級: 良好 (ぎりぎり合格)
2級: 劣る (不合格)
1級: 非常に劣る(不合格)
【0037】
【実施例1〜5、比較例1〜3】
酸化チタンを0.4重量%含む固有粘度0.91のPTTペレットを図5及び図6のような紡糸機及び延伸機を用いて、56デシテックス/24フィラメントPTT繊維の製造実験を行った。この実験では、未延伸繊維に付与する仕上げ剤の濃度と付与量を異ならせることにより、未延伸繊維の水分率含有量を異ならせて、これらの未延伸繊維のラグ時間による延伸繊維の繊度変動値U%へ与える影響を調べた。
この紡糸機においては、紡糸口金が同時に16個装着可能で、従って本実施例では未延伸繊維を同時に16個採取した。これに続く延伸においては、この同時に採取した16本の未延伸繊維を同時に延伸を開始した。
未延伸繊維の巻取は、6kg巻きとし、延伸に際しては、この未延伸繊維から1.5kg巻き延伸繊維をラグ時間ごとに4本採取するやり方をとった。
未延伸繊維の巻取中、保管中及び延伸中を通して、未延伸繊維は一定条件の雰囲気に保持した。雰囲気条件としては、温度を22℃、相対湿度を90%に保った。
【0038】
本実施例及び比較実施例における紡糸条件及び延伸条件は、以下のごとくである。
【0039】
【0040】
(延伸繊維物性)
繊度 54.2デシテックス
破断強度 3.5cN/dtex
破断伸度 45%
タフネス 23(cN/dtex)%1/2
沸水収縮率 13.1%
未延伸繊維の水分含有率と、これをラグ時間120時間まで静置して延伸した延伸繊維の繊度変動値U%と染め品位を、第1表に示す。
第1表から明らかなように、未延伸繊維の水分含有率が本発明の範囲であれば長時間のラグにも係わらず、延伸繊維の染めが良好な品位を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【実施例6〜10、比較例4】
本実施例では、未延伸繊維の複屈折率が延伸繊維の染め品位に及ぼす影響について調べた。
本実施例及び比較実施例における紡糸条件及び延伸条件は、以下のごとくである。
未延伸繊維の水分含有率は0.8重量%であった。また、パッケージの巻取中、保管中及び延伸中を通して未延伸繊維は一定条件の雰囲気に保持した。雰囲気条件としては、温度を22℃、相対湿度を90%に保った。
【0043】
【0044】
【0045】
(延伸繊維物性)
繊度 54.2デシテックス
破断強度 3.5cN/dtex
破断伸度 45%
タフネス 23(cN/dtex)%1/2
沸水収縮率 13.1%
仕上げ剤付着率 0.8重量%
第2表に未延伸繊維の複屈折率と、これをラグ時間120時間まで静置して延伸した延伸繊維の繊度変動値U%と染め品位を示す。
第2表から明らかなように、未延伸繊維の複屈折率が本発明の範囲であれば長時間のラグにも係わらず、延伸繊維の染めが良好な品位を示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、PTT繊維の2段階法、即ち紡糸−未延伸繊維巻取、それに続く延伸からなる延伸繊維の製造方法において、未延伸繊維の経時的変化が原因で起こる延伸調子の不調と延伸繊維の繊度変動を最小限に抑えることが出来、均一性の高いPTT繊維を高収縮率で得ることができる。
本発明のPTT未延伸繊維は、長時間のラグによっても延伸して得られる延伸繊維の繊度変動を小さく維持することが出来、均一性の高いPTT繊維を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】周期的変動の顕著なイブネステスターU%チャート(Diagram Mass)図である。
【図2】周期的変動が顕著でないイブネステスターU%チャート図である。
【図3】周期的変動が存在する周期解析図(Spectrogram Mass)である。
【図4】周期的変動が存在しない周期解析図である。
【図5】紡糸機の概略図である。
【図6】延撚機の概略図である。
【図7】延伸ピンを有する延撚機の概略図である。
【図8】未延伸繊維パッケージの概略図である。
【符号の説明】
1 未延伸繊維
2 未延伸繊維巻き取りボビン
3 ポリマーチップ乾燥機
4 押出機
5 ベンド
6 スピンヘッド
7 スピンパック
8 紡糸口金
9 フィラメント
10 冷却風
11 仕上げ剤付与装置
12、13 ゴデットロール
14 巻き取り機
15 未延伸繊維パッケージ
16 供給ロール
17 ホットプレート
18 延伸ロール
19 パーン
20 延伸ピン
Claims (6)
- 95モル%以上のトリメチレンテレフタレート繰り返し単位と5モル%以下のその他のエステル繰り返し単位から構成され、極限粘度が0.7〜1.3のポリトリメチレンテレフタレートからなり、以下に示す(1)、(2)を満足することを特徴とする未延伸糸を一旦巻取り別工程で延伸する2段階製造法に用いる未延伸繊維。
(1)未延伸繊維の複屈折率≦0.06
(2)未延伸繊維の平均水分含有率≦2重量% - 未延伸繊維の複屈折率が0.05以下で、平均水分含有率が1重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の未延伸繊維。
- 95モル%以上のトリメチレンテレフタレート繰り返し単位と5モル%以下のその他のエステル繰り返し単位から構成され、極限粘度が0.7〜1.3のポリトリメチレンテレフタレートからなる未延伸繊維を製造するにあたり、以下の(1)〜(3)の要件を満足することを特徴とする未延伸糸を一旦巻取り別工程で延伸する2段階製造法に用いる未延伸繊維の製造方法。
(1)未延伸繊維に付与する仕上げ剤の水系エマルジョン濃度を15重量%以上とし、
(2)該仕上げ剤を、未延伸繊維の平均水分含有率が2重量%以下とする付与量で付与した後、
(3)巻取速度を3000m/分以下で巻取る。 - 仕上げ剤の水系エマルジョン濃度を20重量%以上とし、未延伸繊維の平均水分含有率が1重量%とする付与量で付与した後、巻取速度を2000m/分以下で巻取ることを特徴とする請求項3記載の未延伸繊維の製造方法。
- 請求項3記載の未延伸糸を、45〜65℃の供給ロール温度で延伸することを特徴とする延伸繊維の製造方法。
- 請求項3記載の未延伸糸を、50〜60℃の供給ロール温度で、且つ延伸ピンを使用して延伸することを特徴とする延伸繊維の製造方法。
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