JP3603597B2 - 内燃機関 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射を少なくとも吸気行程と圧縮行程で行う内燃機関に関し、回転速度のフィードバック制御の応答性向上を企図したものである。
【0002】
【従来の技術】
吸気管に燃料を噴射して吸入空気と混合し、燃焼室に混合気を導入するようにした一般的な4サイクルの内燃機関(MPIエンジン)では、アイドル運転時における回転速度のフィードバック制御が行われ、実回転速度が予め設定された目標回転速度となるように吸入空気量が変更されるようになっている(アイドルスピードコントロール:ISC)。
【0003】
従来のISC制御では、エアコンやパワーステアリング等の外部負荷がオンになった場合、ISCバルブを開いて吸入空気量を増加して回転速度を高くしている。この時、ISCバルブの作動状態と実際の吸入空気量の増加状態とには時間差があり吸入空気量は直ぐには増加されないため、回転速度のフィードバック制御を続行すると、吸入空気量が所定量導入され得る状態にあるにも拘らず実回転速度が高くならない状態でのフィードバック制御となり、過制御になってしまうことになる。そこで、ISCバルブが開いてから所定期間経過して吸入空気量が安定するまでは、回転速度のフィードバック制御を禁止して過制御になることを防止している。
【0004】
近年、有害排出ガス成分の低減や燃費の向上等を図るため、吸気管内に燃料を噴射する吸気管噴射エンジンに代えて、燃焼室内に直接燃料を噴射する多気筒型筒内噴射エンジンが種々提案されている。多気筒型筒内噴射エンジンは、主として吸気行程で燃料噴射が行なわれる吸気行程噴射モード(吸気リーンモード)と、主として圧縮行程で燃料噴射が行なわれる圧縮行程噴射モード(圧縮リーンモード)とが運転状態に応じて切換えられるようになっている。また、アイドル運転時には実回転速度が予め設定された目標回転速度となるように回転速度のフィードバック制御が実施されている。
【0005】
上述した多気筒型筒内噴射エンジンは、圧縮リーンモードでは、可燃空燃比が広く、空燃比の変更によって回転速度を変化させやすいため、空燃比を変更することで回転速度のフィードバック制御が実施されている。吸気行程噴射モードでは、可燃空燃比がストイキオ近傍の狭い範囲で設定されるため、空燃比の変更によって回転速度を変化(増加)させにくいので、MPIエンジンと同様に吸入空気量を変更することで回転速度のフィードバック制御が実施されている。
【0006】
そして、エアコンやパワーステアリング等の外部負荷がオンになった場合、圧縮リーンモードでは、空燃比を変更して回転速度を高くし、吸気行程噴射モードでは、吸入空気量を変更して回転速度を高くするようにしている。この場合、回転速度を高くするように制御してからは、所定時間経過して回転速度が安定するまでは、回転速度のフィードバック制御を禁止して過制御になることを防止している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した多気筒型筒内噴射エンジンでは、回転速度のフィードバック制御を禁止する所定期間は、圧縮リーンモードと吸気行程噴射モードとで同じに設定されている。しかし、圧縮リーンモードで回転速度を高くする場合、燃料量が変更されるために回転速度の応答性がよく、吸入空気量を変更して回転速度を高くする吸気行程噴射モードに比べて短い期間で回転速度が安定するようになっている。このため、圧縮リーンモードではフィードバック制御を禁止する期間が長くなり、無駄な禁止期間が設定さた状態になっていた。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、外部負荷が加わった時に回転速度を変更する場合、回転速度のフィードバック制御の応答性を向上させることができる内燃機関を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の構成は、吸気行程では吸気量を変更する一方圧縮行程では少なくとも燃料量を変更して機関の実回転速度が予め設定された目標回転速度となるように回転速度をフィードバック制御する制御手段を備え、禁止手段により外部負荷が加わった際に回転速度のフィードバック制御を所定期間禁止すると共に、設定手段により所定期間を吸気行程と圧縮行程で別設定することを特徴とする。
【0010】
具体的には、エアコン等の外部負荷が加わった際に燃料量の変更により回転速度を高くする圧縮リーンモードの場合のフィードバック制御の禁止期間を、吸気量の変更により回転速度を高くする吸気行程噴射モードの場合のフィードバック制御の禁止期間に比べて短く設定し、吸気行程噴射モードでのフィードバック制御の安定性を確保すると共に圧縮リーンモードでのフィードバック制御の応答性を向上させる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明の実施形態例を説明する。図示の実施形態例は、内燃機関として、燃焼室内に直接燃料を噴射するようにした多気筒型筒内噴射内燃機関を例に挙げて説明してある。図1には本発明の一実施形態例に係る多気筒型筒内噴射内燃機関の概略構成、図2には燃料噴射制御マップを示してある。
【0012】
図1に基づいて多気筒型筒内噴射内燃機関の構成を説明する。多気筒型筒内噴射内燃機関としては、例えば、燃料を直接燃焼室に噴射する筒内噴射型直列4気筒ガソリンエンジン(筒内噴射エンジン)1が適用される。筒内噴射エンジン1は、燃焼室や吸気装置及び排気ガス再循環装置(EGR装置)等が筒内噴射専用に設計されている。
【0013】
筒内噴射エンジン1のシリンダヘッド2には各気筒毎に点火プラグ3が取り付けられると共に、各気筒毎に燃料供給手段としての電磁式の燃料噴射弁4が取り付けられている。燃焼室5内には燃料噴射弁4の噴射口が開口し、ドライバ20を介して燃料噴射弁4から噴射される燃料が燃焼室5内に直接噴射されるようになっている。筒内噴射エンジン1のシリンダ6にはピストン7が上下方向に摺動自在に支持され、ピストン7の頂面には半球状に窪んだキャビティ8が形成されている。キャビティ8により、吸気流に通常のタンブル流とは逆の逆タンブル流を発生させるようになっている。
【0014】
シリンダヘッド2には燃焼室5を臨む吸気ポート9及び排気ポート10が形成され、吸気ポート9は吸気弁11の駆動によって開閉され、排気ポート10は排気弁12の駆動によって開閉される。シリンダヘッド2の上部には吸気側のカムシャフト13及び排気側のカムシャフト14が回転自在に支持され、吸気側のカムシャフト13の回転により吸気弁11が駆動され、排気側のカムシャフト14の回転により排気弁12が駆動される。排気ポート10には大径の排気ガス再循環ポート(EGRポート)15が斜め下方に向けて分岐している。
【0015】
筒内噴射エンジン1のシリンダ6の近傍には冷却水温を検出する水温センサ16が設けられている。また、各気筒の所定のクランク位置(例えば75度BTDC及び5度BTDC)でクランク角信号SGT を出力するベーン型のクランク角センサ17が設けられ、クランク角センサ17はエンジン回転速度を検出可能としている。また、クランクシャフトの半分の回転数で回転するカムシャフト13,14には気筒識別信号SGC を出力する識別センサ18が設けられ、気筒識別信号SGC によりクランク角信号SGT がどの気筒のものか識別可能とされている。尚、図中の符号で19は点火プラグ3に高電圧を印加する点火コイルである。
【0016】
吸気ポート9には吸気マニホールド21を介して吸気管40が接続され、吸気マニホールド21にはサージタンク22が備えられている。また、吸気管40には、エアクリーナ23、スロットルボデー24、ステッパモータ式の第1エアバイパス弁25及びエアフローセンサ26が備えられている。エアフローセンサ26は吸入空気量を検出するもので、例えば、カルマン渦式フローセンサが用いられている。尚、サージタンク22にブースト圧センサを取り付け、ブースト圧センサで検出される吸気管圧力から吸入空気量を求めることもできる。
【0017】
吸気管40にはスロットルボデー24を迂回して吸気マニホールド21に吸気を行う大径のエアバイパスパイプ27が設けられ、エアバイパスパイプ27にはリニアソレノイド式の第2エアバイパス弁28が設けられている。エアバイパスパイプ27は吸気管40に準ずる流路面積を有し、第2エアバイパス弁28の全開時には筒内噴射エンジン1の低中速域で要求される量の吸気が可能とされている。
【0018】
スロットルボデー24には流路を開閉するバタフライ式のスロットル弁29が設けられると共に、スロットル弁29の開度を検出するスロットルポジションセンサ30が備えられている。スロットル弁29の開度を検出するスロットルポジションセンサ30からは、スロットル弁29の開度に応じたスロットル電圧が出力され、スロットル電圧に基づいてスロットル弁29の開度が認識されるようになっている。また、スロットルボデー24にはスロットル弁29の全閉状態を検出して筒内噴射エンジン1のアイドリング状態を認識するアイドルスイッチ31が備えられている。
【0019】
一方、排気ポート10には排気マニホールド32を介して排気管33が接続され、排気マニホールド32にはO2センサ34が取り付けられている。また、排気管33には三元触媒35及び図示しないマフラーが備えられている。また、EGRポート15は大径のEGRパイプ36を介して吸気マニホールド21の上流側に接続され、EGRパイプ36にはステッパモータ式のEGR弁37が設けられている。
【0020】
燃料タンク41に貯留された燃料は、電動式の低圧燃料ポンプ42に吸い上げられ、低圧フィードパイプ43を介して筒内噴射エンジン1側に送給される。低圧フィードパイプ43内の燃料圧力は、リターンパイプ44に設けられた第1燃圧レギュレータ45により比較的低圧(低燃圧)に調圧される。筒内噴射エンジン1側に送給された燃料は、高圧燃料ポンプ46により高圧フィードパイプ47及びデリバリパイプ48を介して各燃料噴射弁4に送給される。
【0021】
高圧燃料ポンプ46は、例えば、斜板アキシャルピストン式であり、排気側のカムシャフト14又は吸気側のカムシャフト13により駆動され、筒内噴射エンジン1のアイドリング運転時においても所定圧力以上の吐出圧を発生可能としている。そして、デリバリパイプ48内の燃料圧力は、リターンパイプ49に設けられた第2燃圧レギュレータ50により比較的高圧(高燃圧)に調圧される。
【0022】
第2燃圧レギュレータ50には電磁式の燃圧切換弁51が取り付けられ、燃圧切換弁51はオン状態で燃料をリリーフしてデリバリパイプ48内の燃料圧力を低燃圧に低下させることが可能である。尚、図中の符号で52は、高圧燃料ポンプ46の潤滑や冷却等に利用された一部の燃料を燃料タンク41に還流させるリターンパイプである。
【0023】
車両には制御装置としての電子制御ユニット(ECU)61が設けられ、このECU61には、入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶を行う記憶装置、中央処理装置及びタイマやカウンタ類が備えられている。ECU61によって筒内噴射エンジン1の総合的な制御が実施される。前述した各種センサ類の検出情報はECU61に入力され、ECU61は各種センサ類の検出情報に基づいて、燃料噴射モードや燃料噴射量を始めとして点火時期やEGRガスの導入量等を決定し、燃料噴射弁4のドライバ20や点火コイル19、EGR弁37等を駆動制御する。
【0024】
尚、ECU61の入力側には、前述した各種センサ類の他に、エアコンスイッチ71等の図示しない多数の外部負荷スイッチ類等が接続され、また、出力側にも図示しない各種警告手段や機器類が接続されている。
【0025】
上述した筒内噴射エンジン1では、筒内噴射エンジン1が冷機状態にある時には、運転者がイグニッションキーをオン操作すると、低圧燃料ポンプ42と燃圧切換弁51がオンにされて燃料噴射弁4に低燃圧の燃料が供給される。次に、運転者がイグニッションキーをスタート操作すると、図示しないセルモータにより筒内噴射エンジン1がクランキングされ、同時にECU61による燃料噴射制御が開始される。
【0026】
この時点では、ECU61は前期噴射モード(即ち、吸気行程で燃料が噴射される吸気行程噴射モード)を選択し、比較的リッチな空燃比となるように燃料が噴射される。
【0027】
このような始動時においては、第2エアバイパス弁28は略全閉近傍まで閉鎖されている。従って、燃焼室5への吸気は、スロットル弁29の隙間や第1エアバイパス弁25を介して行われる。尚、第1エアバイパス弁25と第2エアバイパス弁28とはECU61により一元管理され、スロットル弁29を迂回する吸入空気の必要量に応じてそれぞれの開弁量が決定される。
【0028】
このようにして筒内噴射エンジン1の始動が完了し、筒内噴射エンジン1が所定の回転速度でアイドル運転を開始すると、高圧燃料ポンプ46は定格の吐出作動が開始され、ECU61により燃圧切換弁51がオフにされて燃料噴射弁4に高圧の燃料が供給される。この時の要求燃料噴射量は、高圧燃料ポンプ46の吐出圧と燃料噴射弁4の開弁時間とから得られる。
【0029】
水温センサ16で検出される冷却水温が所定値に上昇するまでは、始動時と同様に前期噴射モードが選択されて燃料が噴射される。エアコン等の補機類の負荷の増減に応じたアイドル回転速度の制御は、第1エアバイパス弁25によって行われる。所定サイクルが経過してO2センサ34が活性化されると、O2センサ34の出力電圧に応じて空燃比フィードバック制御が開始される。これにより、有害排気ガス成分が三元触媒35によって良好に浄化される。
【0030】
筒内噴射エンジン1の暖機が完了すると、ECU61は、スロットル弁29の開度に応じたスロットル電圧から得た目標出力相関値、例えば、目標平均有効圧Petとエンジン回転速度Neとに基づき、図2の燃料噴射マップから現在の燃料噴射領域を検索して燃料噴射モードを決定する。これにより、各燃料噴射モードでの目標空燃比に応じた燃料噴射量が決定され、この燃料噴射量に応じて燃料噴射弁4が駆動制御されると共に、点火コイル19が駆動制御される。また、同時に第1エアバイパス弁25と第2エアバイパス弁28及びEGR弁37の開閉制御も実施される。
【0031】
アイドル運転時や低速走行時等の低負荷域では、燃料噴射領域は図2中の後期噴射リーンモード(即ち、圧縮行程で燃料が噴射される圧縮リーンモード)が選択される。この場合、第1エアバイパス弁25と第2エアバイパス弁28が制御され、リーンな空燃比となるように目標平均有効圧Petに応じた目標空燃比がスロットル電圧とエンジン回転速度Neに基づき設定される。そして、目標空燃比に応じた燃料噴射量が設定され、この燃料噴射量に応じた燃料噴射を行うように燃料噴射弁4が駆動制御される。
【0032】
また、定速走行時等の中負荷領域では、負荷状態やエンジン回転速度に応じて図2中の前期噴射リーンモード、あるいはストイキオフィードバックモードになる。前期噴射リーンモードでは、第1エアバイパス弁25を通常のアイドルスピードコントロールバルブと同様に制御し、エアフローセンサ26からの吸入空気量信号とエンジン回転速度に応じて目標空燃比を算出し、比較的リーンな空燃比となるように燃料噴射量が制御される。
【0033】
ストイキオフィードバックモードでは、前期噴射リーンモードと同様に、第1エアバイパス弁25を通常のアイドルスピードコントロールバルブと同様に制御すると共に、第2エアバイパス弁28を全閉として出力の過剰な上昇を防止し、更に、EGR弁37を略全閉に制御すると共に、目標空燃比が理論空燃比となるようにO2センサ34の出力電圧に応じて空燃比フィードバック制御を行い、燃料噴射量が制御される。
【0034】
また、急加速時や高速走行時等の高負荷域では、図2中のオープンループモードとなる。この場合、第2エアバイパス弁28を閉鎖すると共に、比較的リッチな空燃比となるようにマップから目標空燃比を設定し、この目標空燃比に応じて燃料噴射量が制御される。
【0035】
上述した筒内噴射エンジン1では、アイドルスイッチ31がオンされたアイドル運転時における実回転速度が予め設定された目標回転速度となるように、回転速度のフィードバック制御が実施されている。圧縮リーンモードでは、可燃空燃比が広く、空燃比の変更によって回転速度を変化させやすいため、空燃比を変更することでエンジンに供給される燃料噴射量及び吸入空気量を変更して回転速度のフィードバック制御が実施されている。吸気行程噴射モードでは、吸入空気量を変更することで回転速度のフィードバック制御が実施されている。
【0036】
そして、エアコンスイッチ71やパワーステアリング等の外部負荷がオンになった場合、圧縮リーンモードでは、少なくとも燃料噴射量を変更することにより空燃比を変更して回転速度を高くし、吸気行程噴射モードでは、吸入空気量を変更して回転速度を高くするようにしている(制御手段)。この場合、回転速度を高くするように制御してからは、所定期間経過して回転速度が安定するまでは、回転速度のフィードバック制御を禁止して過制御になることを防止している(禁止手段)。回転速度が安定するまでフィードバック制御を禁止する所定期間は、圧縮リーンモードと吸気行程噴射モードで別設定されている(設定手段)。
【0037】
上述した筒内噴射エンジン1におけるアイドル運転時における回転速度のフィードバック制御が行われている時に外部負荷がオンになった際の状況を図3乃至図6に基づいて説明する。図3には圧縮リーンモードにおける経時変化状況、図4には吸気行程噴射モードにおける経時変化状況、図5、図6にはアイドル運転時における回転速度のフィードバック制御のフローチャートを示してある。
【0038】
図3に示すように、圧縮リーンモードでのアイドル運転時における実回転速度が予め設定された目標回転速度となるように回転速度のフィードバック制御が実施されている時に、外部負荷であるエアコンスイッチ71(パワーステアリングスイッチやライトスイッチ、ワイパスイッチ等)がオンになると、燃料係数が高くなり、燃料量が増加して空燃比が変更される。同時に回転速度のフィードバック制御が禁止される。また、燃料量の増加に応じて、例えば、第1エアバイパス弁25が開いて空気量が増加される。これにより、圧縮リーンモードでのアイドル運転時における回転速度が高くされる。
【0039】
燃料量を変更して回転速度を高くすることで、燃料量を増加してから短時間で回転速度が所定の回転速度に安定するため、エアコンスイッチ71がオンになった後、圧縮リーンモード用の回転速度のフィードバック禁止タイマが作動して短時間のtの間、回転速度のフィードバック制御が禁止され、経過後、フィードバック制御が再開される。
【0040】
圧縮リーンモードの場合、燃料量による補正のため応答性良く回転速度が高く安定するため、回転速度のフィードバック制御が短時間のtの間だけ禁止され、回転速度のフィードバック制御の応答性が向上する。
【0041】
一方、図4に示すように、吸気行程噴射モードでのアイドル運転時における実回転速度が予め設定された目標回転速度となるように回転速度のフィードバック制御が実施されている時に、外部負荷であるエアコンスイッチ71(パワーステアリングスイッチやライトスイッチ、ワイパスイッチ等)がオンになると、例えば第1エアバイパス弁25が開いて空気量が変更され、それに応じて燃料量が変更される。これにより、吸気行程噴射モードでのアイドル運転時における回転速度が高くされる。
【0042】
空気量を変更して回転速度を高くする場合、例えば第1エアバイパス弁25が開いてから空気量が増加するまでに時間があるため、所定時間が経過してから回転速度が所定の回転速度に安定する。このため、エアコンスイッチ71がオンになった後、吸気行程噴射モード用の回転速度のフィードバック禁止タイマが作動して、圧縮リーンモードの時よりも長い時間のTの間、回転速度のフィードバック制御が禁止され、経過後、フィードバック制御が再開される。
【0043】
吸気行程噴射モードの場合、空気量の増加にタイムラグが生じるため、回転速度のフィードバック制御がタイムラグが解消される時間Tの間禁止され、フィードバック制御の安定性が確保される。
【0044】
上述したアイドル運転時における状況を図5、図6に基づいて説明する。
【0045】
図5に示すように、ステップS1でアイドルスイッチ31がオンか否かが判断され、オンではないと判断された場合、アイドル運転ではないのでリターンとなる。ステップS1でアイドルスイッチ31がオンであると判断された場合、アイドル運転であるので、ステップS2で外部負荷信号が変化したか否か、例えば、エアコンスイッチ71がオンになったか否かが判断される。
【0046】
ステップS2でエアコンスイッチ71がオンに変化したと判断された場合、ステップS3で圧縮リーンモードであるか否かが判断される。ステップS3で圧縮リーンモードであると判断された場合、ステップS4で圧縮リーンモード用の回転速度のフィードバック禁止タイマ(時間t)をセットする。ステップS3で圧縮リーンモードではないと判断された場合、ステップS5で圧縮リーンモード以外の回転速度のフィードバック禁止タイマ(例えば、吸気行程噴射モード用の回転速度のフィードバック禁止タイマ:時間T)をセットする。
【0047】
尚、圧縮リーンモード以外のアイドル運転は、例えば、冷態始動時が考えられ、この場合、ストイキオフィードバックモード(図2参照)となり、圧縮リーンモード以外の回転速度のフィードバック禁止タイマは、吸気行程噴射モード用の回転速度のフィードバック禁止タイマとなる。
【0048】
ステップS4もしくはステップS5でタイマをセットした後、図6のステップS6に移行してタイマをカウントダウンする。一方、ステップS2でエアコンスイッチ71がオンに変化していないと判断された場合、ステップS7に移行して圧縮リーンモード用の回転速度のフィードバック禁止タイマもしくは吸気行程噴射モード用の回転速度のフィードバック禁止タイマがセットされているか否かが判断される。タイマがセットされていると判断された場合、ステップS6に移行してタイマをカウントダウンする。
【0049】
ステップS6でタイマをカウントダウンした後、ステップS8でタイマが0か否かが判断される。ステップS8でタイマが0であると判断された場合、ステップS9で回転速度のフィードバックを許可し、タイマが0ではないと判断された場合、ステップS9で回転速度のフィードバックを禁止する。一方、ステップS7に移行して圧縮リーンモード用の回転速度のフィードバック禁止タイマもしくは吸気行程噴射モード用の回転速度のフィードバック禁止タイマはセットされていないと判断された場合、ステップS9に移行して回転速度のフィードバックを禁止する。
【0050】
つまり、アイドル運転中に外部負荷が加わると、例えば、エアコンスイッチ71がオンになると、圧縮リーンモードの場合、圧縮リーンモード用の回転速度のフィードバック禁止タイマでセットされた、燃料量の変更で回転速度が安定する短い時間tが経過する間、回転速度のフィードバックが禁止され、吸気行程噴射モードの場合、吸気行程噴射モード用の回転速度のフィードバック禁止タイマでセットされた、時間tよりも長く空気量の変更で回転速度が安定する時間Tが経過する間、回転速度のフィードバックが禁止される。
【0051】
このため、圧縮リーンモードのアイドル運転中に外部負荷が加わった場合と、吸気行程噴射モードのアイドル運転中に外部負荷が加わった場合とで、回転速度のフィードバックを禁止する期間がそれぞれ設定され、圧縮リーンモードでの回転速度のフィードバック制御の応答性が向上すると共に、吸気行程噴射モードでのフィードバック制御の安定性が確保される。
【0052】
【発明の効果】
本発明の内燃機関は、吸気行程では吸気量を変更する一方圧縮行程では少なくとも燃料量を変更して機関の実回転速度が予め設定された目標回転速度となるように回転速度をフィードバック制御する制御手段を備え、禁止手段により外部負荷が加わった際に回転速度のフィードバック制御を所定期間禁止すると共に、設定手段により所定期間を吸気行程と圧縮行程で別設定するようにしたので、空燃比の変更により回転速度を高くする圧縮リーンモードの場合のフィードバック制御の禁止期間を、吸気量の変更により回転速度を高くする吸気行程噴射モードの場合のフィードバック制御の禁止期間に比べて短く設定することができる。この結果、回転速度のフィードバック制御を実施する際に、吸気行程噴射モードでのフィードバック制御の安定性が確保されると共に圧縮リーンモードでのフィードバック制御の応答性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例に係る多気筒型筒内噴射内燃機関の概略構成図。
【図2】燃料噴射制御マップ。
【図3】圧縮リーンモードにおける経時変化状況説明図。
【図4】吸気行程噴射モードにおける経時変化状況説明図。
【図5】アイドル運転時における回転速度のフィードバック制御のフローチャート。
【図6】アイドル運転時における回転速度のフィードバック制御のフローチャート。
【符号の説明】
1 多気筒型筒内噴射内燃機関(筒内噴射エンジン)
2 シリンダヘッド
4 燃料噴射弁
5 燃焼室
9 吸気ポート
10 排気ポート
25 第1エアバイパス弁
61 ECU
71 エアコンスイッチ
Claims (1)
- 燃料噴射を少なくとも吸気行程と圧縮行程で行う内燃機関において、吸気行程では吸気量を変更する一方圧縮行程では少なくとも燃料量を変更して機関の実回転速度が予め設定された目標回転速度となるように回転速度をフィードバック制御する制御手段を備え、制御手段には、外部負荷が加わった際に回転速度のフィードバック制御を所定期間禁止する禁止手段と、禁止手段における所定期間を吸気行程と圧縮行程で別設定する設定手段とが備えられていることを特徴とする内燃機関。
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