JP3595767B2 - 自動車用シートバック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用シートバック、特に自車が他車に追突された時に、自車乗員の頚椎を保護する自動車用シートバックの構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のかかる自動車用シートバックとしては、例えば特開平10−119619号公報に示すように、サイドフレームの上端部の前側に回転ヒンジを有する横フレーム部材を備え、追突されたことに伴う受圧部材を備えている。
【0003】
このため、例えば自車が追突された時、シートバックには、前側に向けての衝撃的な荷重(一次衝突という)が最初に作用し、次に、乗員の身体自体による反動荷重(二次衝突という)が後ろ側に向けて作用する。即ち、受圧部材に該荷重が作用する。その際、受圧部材は、後ろ側に移動されることにより、前側の回転ヒンジを中心に横フレーム部材が前側に回転して、該横フレーム部材に支持されたヘッドレストが乗員の頭部相当部に移動することで、ヘッドレストは、乗員の頭部に接近する方向に作動する。
【0004】
従って、自車が追突された時に、自車乗員の反動荷重でシートバックが後ろ側に撓んでも、該反動荷重によって受圧部材が梃子の原理によりヘッドレストを瞬時にして乗員の頭部に接近作動させるので、乗員の頭部は、ヘッドレストに確実に受け止められ、乗員の頚椎の保護が図られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、前側に回転ヒンジが設けられているので、前側からシートバックを押圧すると、そこに回転ヒンジを異物として捕らえられることになる。また、横フレーム部材が前側に傾くので、乗員の肩部に干渉し易くなり、弾性など肩幅のある乗員の肩部などにより横フレーム部材の移動が停止されてしまうおそれがあり、ヘッドレストの前側への移動量を大きくするという改善が求められている。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、ヘッドレストが前側に移動する際の回転中心位置が異物感として乗員に与えることがなく、しかも、受圧部材で押された分だけヘッドレストが前側に移動することができることを目的とした自動車用シートバックを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、両側部に少なくともサイドフレームを有するシートバックフレームと、該サイドフレームの上端部間に前後に回転自在に架設されてなるヘッドレスト支持部材と、該ヘッドレスト支持部材に支持されてなると共に追突に伴う衝撃荷重を受け得る位置に配されてなる受圧部材と、前記ヘッドレスト支持部材に支持されてなるヘッドレストホルダによって上下移動自在に支持されてなるヘッドレストとより少なくとも構成されてなる自動車用シートバックであって、前記受圧部材には、前記サイドフレーム間に架設されたテンションスプリングが上下スライド自在に支持されてなる。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ヘッドレストを支持したヘッドレストホルダを支持したヘッドレスト支持部材がサイドフレームに対して前後に回転する際に、その回転中心位置がサイドフレームという後ろ側にあるので、乗員の肩部にヘッドレスト支持部材が干渉しない。従って、乗員に異物感を与えないばかりか、ヘッドレストは前側に移動できることになり、乗員の頸部を確実に保持できることになる。また、受圧部材の下端部を前側に付勢しているテンションスプリングが、受圧部材に沿って上下スライド自在であるので、テンションスプリングの応力が低下し、反力が少ないことになり、ヘッドレスト支持部材の回転がよりスムースになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車用シートバックであって、前記テンションスプリングがスライド自在に支持される受圧部材には、合成樹脂製の受圧部が配設されてなる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、受圧部材の受圧部が合成樹脂製なので、テンションスプリングがスライドする際にスムースに上下動できるし、擦れ音が発生しない。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自動車用シートバックであって、前記サイドフレームの上端部間には、アッパクロスメンバが固定的に架設されてなる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、シートバックは、サイドフレームとアッパクロスメンバにより方形をなすので、シートバックの強度が著しく向上し、二次衝突を受圧する受圧部材を支持するヘッドレスト支持部材が変形するような支障を来すようなことがない。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の自動車用シートバックであって、前記テンションスプリングは、前記受圧部材を常時前側に付勢してなると共に着座荷重では伸長せず、追突に伴う衝撃荷重でのみ伸長可能なる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記受圧部材は、テンションスプリングにより常時前側に付勢されてなると共に着座荷重では伸長せず、追突に伴う衝撃荷重でのみ伸長可能なるので、通常時の乗員の着座やリラックス状態においては、該乗員の背中による背凭れ荷重に対応しては伸長せず、背中を保持できることになる。また、追突による二次衝突による荷重が加わった時には、該テンションスプリングが伸張することが可能であるので、受圧部材が移動することに支障を与えないことになり、確実に移動できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の自動車用シートバックであって、前記受圧部材は、前記ヘッドレスト支持部材の左右方向の略中央に狭い巾で垂下されてなる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、追突に伴う衝撃荷重を受け得る位置である乗員の背中に相当する受圧部材が、正面視で略I字状であるので、突起部が存在せず、その分、受圧用の作動板などが不用となり、安価であると共に受圧部材が1本だけであり、著しい軽量化が図れる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の自動車用シートバックであって、前記受圧部材は、乗員の肩部相当部を避けた直線部と、乗員の背中相当部側に寄り且つ乗員の腰部相当部に位置する曲線部とを有する。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、乗員の肩部に直線部が干渉しないので、ヘッドレストの前側への回転が大きくなる。また、前記直線部の下端部の曲線部が、乗員の背中相当部側に寄っている、ということは前側に「く」の字状に曲がっていることになるので、受圧部材の受圧部が後ろ側RRに移動した時に、受圧部が後ろ側に出っ張らず、後席乗員との空間が確保されることになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。尚、FRを前側、RRを後ろ側、UPは上側、LWRは下側として説明する。
【0020】
図1乃至図5は、この発明の一実施形態を示すもので、符号1は自動車のシートバック、符号3はヘッドレストである。
【0021】
前記シートバック1は、シートバックフレーム4と、ヘッドレスト支持部材7と、受圧部材8と、ヘッドレストホルダ9と、より構成されてなる。
【0022】
前記シートバックフレーム4は、両側部に配されてなる鉄板製のサイドフレーム2,2と、該サイドフレーム2の上端部2a,2aの前側FR間に略水平状に架設されてなる断面コの字状の鉄板製のアッパクロスメンバ10と、前記サイドフレーム2の下端部2b,2bに略水平状に架設されてなる鉄板製のロアクロスメンバ11とよりなり、サイドフレーム2とアッパクロスメンバ10とロアクロスメンバ11とは、相互に溶接GWにより支持されている。
【0023】
前記サイドフレーム2,2間には、通常使用時には撓むことのないテンションスプリング12と、通常使用時の荷重で撓むことが可能な乗員の乗り心地を良くするためのS字スプリング35とが配されて、テンションスプリング12は、サイドフレーム2に直接架設され、S字スプリング35は、クリップ17、17を介してサイドフレーム2に架設されてなる。
【0024】
前記受圧部材8は、前記ヘッドレスト支持部材7の後面部7bの左右方向の中央部の前側FRの面に、溶接GWにより固設されて垂下されてなる直線部14と、該直線部14の下端部から若干前側に曲がった位置から垂下されてなる曲線部14aとよりなり、図1乃至図5に明らかなように左右方向の巾が全体に狭く垂下されている。該受圧部材8の断面は、同じく図1乃至図5に明らかなように、左右巾よりも前後巾の方が潰されてなる。前記直線部14と前記曲線部14aとの境部の後部は、図3に示す側面視で、前側に「く」の字状に折曲される曲折部20を有する。該受圧部材8の配設位置は、前記シートバック1に凭れる乗員による、追突に伴う二次衝撃荷重を受け得る位置である。
【0025】
また、受圧部材8の下端部8aには、合成樹脂製の受圧部15が配されて、該受圧部材8の下端部8aを覆ってなり、該受圧部15の後ろ側RRの面に、前記テンションスプリング12が係合されていて、前記受圧部材8の下端部8aは、常時前側FRに付勢されてなる。つまり、前記ヘッドレスト支持部材7の後述する後面部7bが、前記アッパクロスメンバ10の後述するストッパ面10aに当接する方向に常時付勢されている。前記受圧部15の後ろ側RRの面は、摩擦抵抗の少ない滑面に形成されているので、前記テンションスプリング12が、該滑面上を上下にスライド自在である。
【0026】
前記テンションスプリング12は、針金状に形成されてなり、断面が略真円でも略正多角形でもよく、それ自体が回転可能であれば良い。また、図示しない乗員の着座荷重では伸長せず、追突に伴う二次衝撃の荷重でのみ伸長が可能である「ばね力」を有するように、コイルスプリング12aを、前記テンションスプリング12に二カ所介在してなる。
【0027】
前記ヘッドレスト支持部材7は、鉄板製で、左右に延在されてなると共に上面部7aと後面部7bとが直角状に折り曲げられて、断面逆L字状に形成されてなる。また、前記ヘッドレスト支持部材7は、その左右端部が、前記後面部7b、7bから前側FRに折り曲げられた支持部7c、7cが形成され、前記シートバックフレーム4のサイドフレーム2,2の上端部2a,2aに、段付きボルト5及び回転時の擦れ音や衝撃吸収のためのブッシュ6により、前後FR,RRに回転自在にそれぞれ軸支されてなる。また、前記上面部7aそのもの及び前記後面部7bより突出したブラケット7dには、図5に示すように、前記ヘッドレストホルダ9が挿通支持される上下貫通孔19、19が、左右に離間して形成されてなる。
【0028】
前記アッパクロスメンバ10は、図1、図2そして図5に示すように、鉄板製で、左右に延在されてなると共に上面部10bと、ストッパ面10aとより一体に形成されてなる。前記上面部10bは、前側FRが閉じられ且つ後ろ側RRが開口されてなる断面コの字状をなす。前記ストッパ面10aは、該上面部10bの下側から壁状に垂下されてなる。前記ストッパ面10aと上面部10bとの折り曲がり部には、前記受圧部材8の直線部14が挿入且つ移動可能な前後に長い孔10cが形成されている。前記上面部10bには、前記ヘッドレスト3のステー13との干渉を防止する切り欠き10d、10dが形成されている。
【0029】
前記ヘッドレスト支持部材7の後面部7bの下端部7eは、図3に示すように、前記アッパクロスメンバ10から垂下されたストッパ面10aに対向した位置まで垂下されていて、該ストッパ面10aに配されている緩衝部材16の第1緩衝部16aに前記ヘッドレスト支持部材7の後面部7bの下端部7eが、図3に示すように、ぶつかって、それ以上の動きが停止される。つまり、前記ヘッドレスト支持部材7自体の後ろ側RRへの回転防止位置を特定している。
【0030】
前記ヘッドレスト支持部材7の後面部7bには、前記受圧部材8の直線部14が支持されていて、該ヘッドレスト支持部材7が回転するに伴い受圧部材8が前記アッパクロスメンバ10のストッパ面10aに近接したとき、該ストッパ面10aに配されている前記緩衝部材16の第2緩衝部16bに受圧部材8の後面が、図7に示すように、ぶつかって、それ以上の動きが停止される。つまり、前記ヘッドレスト支持部材7自体の前側FRへの回転防止位置を特定している。前記第2緩衝部16bは、前記ストッパ面10aへの緩衝部材16の支持部でもある。
【0031】
前記ヘッドレストホルダ9は、前記ヘッドレスト支持部材7の上下貫通孔19,19に係合して支持されてなると共に前記ヘッドレスト3のステー13を保持する合成樹脂製の部材である。該ヘッドレストホルダ9には、前記ステー13の上下位置を適宜移動可能なると共に適宜の位置で停止可能である周知のストッパ機構を有する。
【0032】
前記直線部14は、正面視で垂直状をなし、該直線部14の保持位置は、前記アッパクロスメンバ10の後ろ側RRに配されているので、自車が追突されたことにより、前記シートバックフレーム4の前側FRからの該乗員による荷重、つまり乗員がシートバック1に前側FRから押し付けられても、該乗員のショルダポイントが、直線部14に干渉しないことになる。
【0033】
また、前記受圧部材8は、設置される位置が図示しない乗員の背中部近傍であり、前側FRに寄り且つ前後FR,RRに薄く潰して平面状に形成されることで、上下に所定の幅を有する。
【0034】
次に、この実施形態に係る作動を説明する。
【0035】
前記シートバック1は、常時、図1乃至図3に示す状態にある。即ち、テンションスプリング12により受圧部材8の下端部8aの受圧部15が前側FRに押圧されてなるので、該受圧部材8を支持したヘッドレスト支持部材7の後面部7bが緩衝部材16を介してアッパクロスメンバ10のストッパ面10aに当接していて、該ヘッドレスト支持部材7に支持されたヘッドレストホルダ9を介してヘッドレスト3が保持されている。
【0036】
この状態の前記シートバック1と図示しないシートクッションとよりなるシートのシートクッションに乗員が着座し、前記シートバック1に背中を凭れかけない運転状態などでは、乗員の頭部とヘッドレスト3との間には、隙間があり、乗員の背中と受圧部材8との間にも隙間が形成されている。尤も、該乗員の背中と受圧部材8との間には、図示しないパッドや表皮部材などが介在されているので、密着されている。また、着座時における乗員が、リラックス状態で、シートバック1に凭れかけると、乗員の背中から加えられた荷重により、パッド及びS字スプリング35の撓みによって、乗員の背中を柔らかに受け止めることができる状態にある。従って、着座感が良いものとなる。勿論、受圧部材8には、荷重が加わらない。
【0037】
この状態で、自車が追突されると、まず前側FRへの衝撃荷重となって、乗員はシートバック1から前側FRに投げ出される方向の荷重を受ける。次に、乗員には、後ろ側RRに移動される荷重、つまり二次衝撃荷重(二次衝突という)が加わることになる。かかる二次衝突に伴う衝撃値は、テンションスプリング12のコイルスプリング12aが伸長を始める荷重以上であるので、テンションスプリング12のコイルスプリング12aが伸張するに伴い、前記受圧部材8の下端部の受圧部15が、後ろ側RRに移動される。
【0038】
前記受圧部材8の下端部の後ろ側RRへの移動により、ヘッドレスト支持部材7の支持部7c,7cが、段付きボルト5及びブッシュ6を中心に前側FRに回転する。前記ヘッドレスト支持部材7に支持されたヘッドレストホルダ9が、ヘッドレスト支持部材7と共に前側FRに回転して、該ヘッドレストホルダ9に支持されたステー13がヘッドレスト3と共に前側FRへ回転制御されることになり、乗員の頭部の後ろ側RRに移動することで、乗員の頭部を確実に保持できることによって、頚部の保護が可能となる。かかる回転制御は、瞬時に行われることは勿論である。
【0039】
また、かかるヘッドレスト3の回転中心3aが、サイドフレーム2,2に設けられた段付きボルト5と同軸であって、かかる段付きボルト5の配設位置が、シートバック1の後ろ側RRであるので、シートバック1の前側FRに着座した乗員に干渉せず、結果として異物感を与えないことになる。また、受圧部材8に乗員の二次衝突による荷重が加えられた場合、受圧部材8は、サイドフレーム2,2の上端部2a,2aを中心に回転するので、乗員の肩部に干渉しにくい位置にある。つまり、その分、ヘッドレスト3は、前側FRに移動できることになり、乗員の頸部を確実に保持できることになる。
【0040】
また、乗員のショルダポイントが、シートバック1の図示しないパッドが受圧部材8の直線部14に食い込むことはないため、直線部14は、パッドの後面をスムースに移動できることになり、該直線部14の回転に伴うパッドの上昇UPは妨げられず、十分ヘッドレスト3の作動量を確保することができる。
【0041】
こうして、乗員の背中が、衝撃によって、後ろ側RRに移動することで、残される挙動をするはずの乗員の頭部が、ヘッドレスト3の前側FRへの移動により、確実に保持されることになる。しかも、この状態で、前記直線部14の下端部である曲折部20は、前側に「く」の字状に曲がっているので、受圧部材8が後ろ側RRに移動した時に、受圧部材8が後ろ側RRに出っ張らず、後席乗員との空間が確保されることになる。
【0042】
また、前記ヘッドレストホルダ9に対して、前記ヘッドレスト3のステイ13,13が上下移動自在に支持されてなるので、体格の異なる乗員の頭部の位置に適宜ヘッドレスト3を合致させることができる。
【0043】
また、シートバック1は、サイドフレーム2,2と、アッパクロスメンバ10と、ロアクロスメンバ11とにより方形をなすので、シートバック1の強度が著しく向上し、二次衝突を受圧する受圧部材8を支持するヘッドレスト支持部材7が変形するような支障を来すようなことがない。
【0044】
また、前記受圧部材8は、テンションスプリング12により、前側FRに付勢されてなると共に着座荷重では伸長せず、追突に伴う衝撃荷重でのみ伸長可能なるので、通常時の乗員の着座やリラックス状態においては、該乗員の背中による背凭れ荷重に対応してテンションスプリング12が伸長せず、S字スプリング35により快適に乗員の背中部を保持できることになる。また、追突による二次衝突による荷重が加わった時には、テンションスプリング12のコイルスプリング12aが伸張することが可能であるので、受圧部材8が移動することに支障を与えないことになり、確実に移動できる。
【0045】
二次衝突により、ヘッドレスト3が前側FRに回転して乗員の頸部を保護可能なる状態になった時、アッパクロスメンバ10のストッパ面10aに支持された緩衝部材16の第2緩衝部16bに、前記ヘッドレスト支持部材7に支持された受圧部材8がぶつかることにより、ヘッドレスト3の前側FRへの回転角度を制限できるので、異常にヘッドレスト3が前側FRに回転してしまう不具合の発生は阻止される。つまり、一つの緩衝部材16でもって、ヘッドレスト3の立設停止位置及び前側回転停止位置が決まるため、製造原価が安価となる。また、位置精度が出しやすくなる。
【0046】
また、前記テンションスプリング12が受圧部材8に沿って上下スライド自在であるので、テンションスプリング12の応力が低下し、反力が少ないことになり、ヘッドレスト支持部材7の回転がよりスムースになる。
【0047】
前記受圧部材8の受圧部15が合成樹脂製なので、テンションスプリング12がスライドする際にスムースに上下動できるし、擦れ音が発生しない。
【0048】
追突に伴う衝撃荷重を受け得る位置である乗員の背中に相当する受圧部材8が、前記ヘッドレスト支持部材7の左右方向の略中央に狭い巾で垂下されてなるので、突起部が存在せず、その分、受圧用の作動板などが不用となり、安価であると共に受圧部材8が1本だけであり、著しい軽量化が図れる。
【0049】
前記作動説明で、乗員の頭部が、ヘッドレスト3の移動により、確実に保持されるとしたが、ヘッドレスト3の移動と、シートバック1の移動とは、相対的なものであり、乗員の背中によってシートバック1が後ろ側RRに移動しても、乗員の頭部に対してヘッドレスト3が移動せず、その位置に保持されることで、乗員の頭部が保護されるものと説明されるものも含むものである。
【0050】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、ヘッドレストを支持したヘッドレストホルダを支持したヘッドレスト支持部材がサイドフレームに対して前後に回転する際に、その回転中心位置がサイドフレームという後ろ側にあるので、乗員の肩部にヘッドレスト支持部材が干渉しない。従って、乗員に異物感を与えないばかりか、ヘッドレストは前側に移動できることになり、乗員の頸部を確実に保持できることになる。また、受圧部材の下端部を前側に付勢しているテンションスプリングが、受圧部材に沿って上下スライド自在であるので、テンションスプリングの応力が低下し、反力が少ないことになり、ヘッドレスト支持部材の回転がよりスムースになる。
【0051】
請求項2に記載の発明によれば、受圧部材の受圧部が合成樹脂製なので、テンションスプリングがスライドする際にスムースに上下動できるし、擦れ音が発生しない。
【0052】
請求項3に記載の発明によれば、シートバックは、サイドフレームとアッパクロスメンバにより方形をなすので、シートバックの強度が著しく向上し、二次衝突を受圧する受圧部材を支持するヘッドレスト支持部材が変形するような支障を来すようなことがない。
【0053】
請求項4に記載の発明によれば、前記受圧部材は、テンションスプリングにより常時前側に付勢されてなると共に着座荷重では伸長せず、追突に伴う衝撃荷重でのみ伸長可能なるので、通常時の乗員の着座やリラックス状態においては、該乗員の背中による背凭れ荷重に対応しては伸長せず、背中を保持できることになる。また、追突による二次衝突による荷重が加わった時には、該テンションスプリングが伸張することが可能であるので、受圧部材が移動することに支障を与えないことになり、確実に移動できる。
【0054】
請求項5に記載の発明によれば、追突に伴う衝撃荷重を受け得る位置である乗員の背中に相当する受圧部材が、前記ヘッドレスト支持部材の左右方向の略中央に狭い巾で垂下されてなるので、突起部が存在せず、その分、受圧用の作動板などが不用となり、安価であると共に受圧部材が1本だけであり、著しい軽量化が図れる。
【0055】
請求項6に記載の発明によれば、乗員の肩部に直線部が干渉しないので、ヘッドレストの前側への回転が大きくなる。また、前記直線部の下端部の曲線部が、乗員の背中相当部側に寄っている、ということは前側に「く」の字状に曲がっていることになるので、受圧部材の受圧部が後ろ側RRに移動した時に、受圧部が後ろ側に出っ張らず、後席乗員との空間が確保されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係るシートバックを示す側面図。
【図2】図1の拡大側面図。
【図3】図2の要部拡大断面図。
【図4】図1の正面図。
【図5】図1及び図4の分解斜視図。
【図6】図1の作動後における側面図。
【図7】図6の要部拡大断面図。
【符号の説明】
1 シートバック
2 サイドフレーム
2a サイドフレームの上端部
3 ヘッドレスト
4 シートバックフレーム
5,6 回転ヒンジ
7 ヘッドレスト支持部材
8 受圧部材
9 ヘッドレストホルダ
10 アッパクロスメンバ
10b アッパクロスメンバの上面部
12 テンションスプリング
13 ヘッドレストステー
14 直線部
15 受圧部
FR 前側
RR 後ろ側
UP 上側
LWR 下側
Claims (6)
- 両側部に少なくともサイドフレームを有するシートバックフレームと、該サイドフレームの上端部間に前後に回転自在に架設されてなるヘッドレスト支持部材と、該ヘッドレスト支持部材に支持されてなると共に追突に伴う衝撃荷重を受け得る位置に配されてなる受圧部材と、前記ヘッドレスト支持部材に支持されてなるヘッドレストホルダによって上下移動自在に支持されてなるヘッドレストとより少なくとも構成されてなる自動車用シートバックであって、
前記受圧部材には、前記サイドフレーム間に架設されたテンションスプリングが上下スライド自在に支持されてなることを特徴とする自動車用シートバック。 - 請求項1に記載の自動車用シートバックであって、
前記テンションスプリングがスライド自在に支持される受圧部材には、合成樹脂製の受圧部が配設されてなることを特徴とする自動車用シートバック。 - 請求項1又は請求項2に記載の自動車用シートバックであって、
前記サイドフレームの上端部間には、アッパクロスメンバが固定的に架設されてなることを特徴とする自動車用シートバック。 - 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の自動車用シートバックであって、
前記テンションスプリングは、前記受圧部材を常時前側に付勢してなると共に着座荷重では伸長せず、追突に伴う衝撃荷重でのみ伸長可能なることを特徴とする自動車用シートバック。 - 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の自動車用シートバックであって、
前記受圧部材は、前記ヘッドレスト支持部材の左右方向の略中央に狭い巾で垂下されてなることを特徴とする自動車用シートバック。 - 請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の自動車用シートバックであって、
前記受圧部材は、乗員の肩部相当部を避けた直線部と、乗員の背中相当部側に寄り且つ乗員の腰部相当部に位置する曲線部とを有することを特徴とする自動車用シートバック。
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