JP3584931B2 - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録用シートに関し、特に水性インクを用いた画像記録や印字プリンター等に用いられるインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット方式の性能、特にプリント速度、解像度、彩度などの向上によって、とりわけ高速にカラーハードコピーを作成するインクジェットカラープリンターの技術進歩により、鮮明な画像と優れた印字品位を得ることが可能となってきた。
一方でプリントの品位、彩度、外観、画像を更に改良するために、より高度な特性を持つ記録材が要求されるようになってきた。特にプリント速度、解像度、彩度などの向上によって被記録材に対してもインクの速乾性、高吸収容量、ドット径およびにじみの制御等、より高度な特性が要求されるようになり、インク受容層を表面に設けた各種記録用シートが開発されている。
【0003】
例えば、特開昭56−148584号公報には、支持体の表面に色素を吸着し保持する機能を有する多孔性無機顔料(天然ゼオライト、合成ゼオライト、ケイソウ土、微粒珪酸、合成雲母)粒子を含有するインク受容層を設けることが開示されている。特開昭58−94491号公報にはインク受容層に二価金属の弱酸塩を含有することが、特開平6−234268号公報にはインク受容層に4級アンモニウム塩物質を含有させることが、特公平7−67852号公報にはインク受容層顔料にフッ素を含有させることが、開示されている。
【0004】
しかし、このようなインクジェット記録用シートでは、支持体に吸水性の高いパルプを主原料とした紙を使用しているため、水濡れにより紙が破れるという欠点があった。耐水化した紙を用いても伸び、しわ、カール等の問題が生じ、実用上耐水性に問題があった。
一方、支持体として耐水性に優れた樹脂フィルムを使用した場合では、従来の方法で支持体上にインク受容層を設けた場合、水滴などで濡れた紙面を指やペン等で擦ると、支持体と界面からインク受容層が剥がれるという塗膜耐水性不良が発生する。多層構成を持つインクジェット用紙としては、特開平1−225585号公報、特開平5−051470号公報等が挙げられるが、いずれの層も、インク保持層、あるいはインク受容層であり、塗膜の耐水性はなかった。
【0005】
更に、近年印字濃度を向上させるためにインクジェットプリンターのインクの吐出量が多くなる傾向にあり、水を吸収しない樹脂フィルムを基材としたインクジェット用記録用紙ではインクの吸収は塗工層のみで行われ、基材はインクを全く吸収しないため、インク吸収容量不足によるにじみが問題となっている。
このように、インクジェット記録用シートとして様々な提案がなされているが、未だインクの吸収が良好で、にじみ、印字濃度、塗膜強度および塗膜耐水性に優れるインクジェット記録用シートは存在しない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の態様を含む。
〔1〕樹脂フィルムからなる支持体にアンダーコート層とインク受容層を設けてなるインクジェット記録用シート(但し、オフセット印刷原版を除く)であり、前記アンダーコート層が炭酸カルシウム及び酸化亜鉛から選ばれる顔料の少なくとも1種と、水不溶性樹脂として(メタ)アクリル系重合体ラテックスを含有し、且つアンダーコート層に結着剤として水溶性樹脂を含まず、前記インク受容層が合成非晶質シリカ及び、結着剤として水溶性樹脂と水不溶性樹脂を含有するインクジェット記録用シート。
〔2〕インク受容層に含有される水不溶性樹脂が(メタ)アクリル系重合体、及び酢酸ビニル系重合体より選ばれる少なくとも1種を含む〔1〕記載のインクジェット記録用シート。
〔3〕インク受容層に含有される水不溶性樹脂がカチオン性またはノニオン性であることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載のインクジェット記録用シート。
〔4〕インク受容層に含有される結着剤の総固形量中の水不溶性樹脂含有比率が、20重量%以上80重量%以下であることを特徴とする〔1〕,〔2〕または〔3〕記載のインクジェット記録用シート。
〔5〕インク受容層に含有される結着剤が合成非晶質シリカ100重量部に対し30重量部から100重量部含有されていることを特徴とする〔1〕,〔2〕,〔3〕または〔4〕記載のインクジェット記録用シート。
〔6〕インク受容層が水溶性カチオン樹脂を含有することを特徴とする〔1〕,〔2〕,〔3〕,〔4〕または〔5〕記載のインクジェット記録用シート。
〔7〕アンダーコート層のJIS P−8137に基づく撥水度がR6以上であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
【0008】
本発明で、何故インクの吸収性、発色性、にじみ、塗膜強度および塗膜耐水性が良好な記録用シートが得られるかは必ずしも明らかではないが下記のように推測できる。
【0009】
支持体に樹脂フィルムを使用し直接インク受容層を設けた場合、高い吸水性が要求されるインク受容層の性質上、インク受容層の結着剤に水溶性樹脂が使用される。しかし、記録シートが水に濡れた場合、塗工面や記録シート断面から水が侵入し、インク受容層自体または支持体とインク受容層との層間の接着性が損なわれ、塗膜耐水性の良好なものが得られない。また、塗膜耐水性を向上させるために前記インク受容層に水不溶性樹脂を添加した場合、少量ではインク受容層自体の耐水性は向上するものの、インク受容層と支持体を十分に密着できるだけの結着剤が存在しないため、必要とされる層間の耐水性が得られない。また多量に使用した場合、耐水性は向上するものの水不溶性樹脂が多量にインク受容層に存在するためインク吸収容量が低下し、インク受容層からインクがあふれ、印字部ににじみが発生する。塗工量を極端に増やすことでにじみは改善する傾向にあるものの、塗膜強度、塗工安定性に問題が生じる可能性があり、実用に適した量ではない。
しかし、水不溶性樹脂を主成分とするアンダーコート層を設けることにより、支持体とアンダーコート層の密着性およびインク受容層とアンダーコート層の密着性が向上するため、層間の耐水性が改善される。そのためインク受容層にインクの吸収容量を損なわない程度に水不溶性樹脂を使用することが可能となり、インク受容層自体の耐水性および層間の耐水性が向上し、塗膜耐水性が良好でかつインク吸収性が良好なインクジェット記録用シートを得ることができる。
【0010】
また、インク受容層に水溶性樹脂を含有することでインクの吸収性が良好で塗膜の強度に優れるインク受容層が得られる。ただし、使用する樹脂の種類によってはインクを樹脂内部に吸収する前にインク受容層の表面でインクが横方向に広がり、結果としてにじみが生じる場合もある。しかし、本発明の好ましい態様ではインク受容層中の水溶性樹脂として、部分ケン化型ポリビニルアルコールを含有させることにより、にじみが良好で、塗膜強度が良好で、塗膜の耐水性に優れるインクジェット記録用シートが得られる。これは部分鹸化型ポリビニルアルコールは水の吸水性が高くインクを横方向に広げる前にインクを樹脂内部に吸着することができるためと考えられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で支持体に使用される樹脂フィルムとしては、熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂およびオレフィン樹脂等が例示できる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリシクロヘキセンテレフタレート等が、またオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体からなるもの、またはこれらを主成分とするものを例示できる。
また、これらの熱可塑性樹脂を1種または2種以上適宜選択して使用でき、他の熱可塑性樹脂としてポリスチレン、アクリル酸エステル共重合体等を混合して使用することもできる。これら熱可塑性樹脂を縦方向および/または横方向に延伸して成形したフィルムも使用できる。この他、この熱可塑性樹脂中に無機質微細粉末を混合してフィルムを形成し、これを例えば1軸延伸処理または2軸延伸処理して紙状の層としてもよい。
本発明においては、このようなフィルムを複数層積層して得られた多層フィルムを支持体として使用し、例えば、基材層と両面または片面に紙状の層を設けた2〜3層フィルム、または更にその少なくとも片面の紙状の層上に表面層を形成した3〜5層フィルム等を使用してもよい。このように熱可塑性樹脂を紙状の層としたものは一般に合成紙として知られている。このようなフィルムの不透明度は、本発明において特に限定されるものではない。また、これら樹脂フィルムは紙等に比べ耐水性が良好であり、本発明の支持体として適している。
【0012】
水不溶性樹脂を含有するアンダーコート層を設けることにより、支持体とインク受容層との密着性が良好で、塗膜の耐水性に優れるインクジェット記録用シートを得ることができる。アンダーコート層に使用される水不溶性樹脂としては、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等の(メタ)アクリル系重合体ラテックスである。
【0013】
(メタ)アクリル系重合体ラテックスは製膜後の耐水性の良好なものが得やすく、水不溶性樹脂として(メタ)アクリル系重合体ラテックスを使用すると、塗工乾燥後のアンダーコート層の水に対するバリアー性が高くなり特に好ましい。水不溶性樹脂のガラス転移温度は50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。ガラス転移温度に下限はないが、例えば−70℃のものも使用できる。これによりポリオレフィン等の支持体シートとインク受容層との接着性が良好となる。これらの水不溶性樹脂は、通常アンダーコート層塗料の層固形分に対して乾燥重量で、10〜100重量%の範囲が好ましく、より好ましくは20〜80重量%の範囲で使用される。これらの水不溶性樹脂は必要に応じて2種以上を併用することも可能である。
【0014】
本発明のアンダーコート層は水不溶性樹脂を主成分とするが、塗料の塗工適性等を向上させる等のために、炭酸カルシウム、酸化亜鉛から選ばれる顔料の少なくとも1種を使用する。
【0015】
本発明のアンダーコート層には、添加剤として顔料分散剤、消泡剤、粘度調整剤、架橋剤等が製造条件、要求性能に応じて適宜使用される。
【0016】
本発明に使用されるアンダーコート層のJIS P 8137記載の方法に基づく撥水性をR6以上(R6〜R10)にすることで、より塗膜耐水性にすぐれるアンダーコート層を得ることができるため好ましい。また、支持体上にアンダーコート層を設ける方法は、特に限定されるものではなく、従来から公知の、バーコーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター等の塗工機によって設けることができる。本発明で得られるアンダーコート層の塗工量は、最終用途によって決定され、塗膜耐水性、記録特性、保存性等を満足させるかぎり不必要に多くする必要はなく、0.2〜15.0g/m2 が好ましく、0.5〜8.0g/m2 がより好ましい。アンダーコート層の塗工量が少ないと、支持体との接着性、塗膜耐水性が必ずしも充分ではない恐れがあり、また、アンダーコート層の塗工量が多いと、アンダーコート層上に塗工したインク受容層の表面に微細な球状物質(泡)が発生し、記録紙の外観を損なう恐れがある。
【0017】
本発明のインク受容層に使用される顔料として、高純度珪砂を珪酸ソーダと硫酸を混同し珪酸ゾルを生成させ、前記珪酸ゾルを三次元的凝集体にする方法、温度、イオン、界面活性剤の影響で二次凝集体の成長を止め沈降させる方法、または四塩化珪素の分解による方法等により得られた合成非晶質シリカを使用することができる。インク受容層にこれらの合成非晶質シリカを使用することでよりインクの発色性に優れた記録用シートが得られる。また、これらの非晶質合成シリカの粒子径は20μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましい。この様な粒子径の非晶質シリカを用いることでインクドットの真円性が良好な画像を得ることができる。
【0018】
本発明のインク受容層に使用される水溶性樹脂は、例えば分子内に水酸基を多数有しており、そのため表面に水酸基を有する合成非晶質シリカとの親和性が良好であり、前記2種の水酸基間に水素結合が存在するため塗料乾燥後の塗膜強度は良好となる。また水溶性樹脂がインクを吸収するため、インク吸収性、にじみおよび塗膜強度が良好なインク受容層を得ることができる。本発明のインク受容層に使用される水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコールおよびカチオン性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール誘導体、カゼイン等の蛋白質、澱粉、および酸化澱粉等の誘導体等が使用される。これらの水溶性樹脂は、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0019】
本発明の好ましい態様ではインク受容層の水溶性樹脂として部分鹸化ポリビニルアルコールを使用する。これによりにじみ防止効果に一層優れたインクジェット記録用シートを得ることができる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをアルカリで鹸化することにより製造される。このときポリ酢酸ビニルのすべてのアセチル基を水酸基に置換したものが完全鹸化ポリビニルアルコールであり、一般には鹸化度98%〜99%程度のものは完全鹸化ポリビニルアルコールと称されている。
一方、本発明の好ましい態様では上記以外の部分的に鹸化したポリビニルアルコール、すなわち部分鹸化ポリビニルアルコールを選択的に使用するものである。何故部分鹸化ポリビニルアルコールがにじみに良好であるかは定かではないが以下のように推測される。完全鹸化ポリビニルアルコールはポリ酢酸ビニル分子内のほとんど全てのアセチル基を水酸基に置換した物質であり、水酸基同士による強固な水素結合が物質内に多量に存在する。また、これらの水酸基が存在することで水溶性樹脂は水分を分子内に吸収していると推測される。
しかし、完全鹸化ポリビニルアルコールを含有したインク受容層上に水分を多量に含んだインクが着弾した場合、インク内の水分子は完全鹸化ポリビニルアルコール内の水素結合間に侵入しようとするが、完全鹸化ポリビニルアルコール内の水素結合が強固であるため、水分子が完全鹸化ポリビニルアルコール内の水素結合間に侵入するインク受容層への吸着に時間がかかる。そのため、インクは分子内に吸着される前に樹脂表面の水酸基に引っ張られ横方向に広がり、結果としてにじみが比較的に悪化するものと推測される。
しかし、部分鹸化ポリビニルアルコールは分子内にアセチル基がランダムに存在しており、アセチル基の立体障害により分子内水酸基間の水素結合が部分的に阻害され、結果として分子内の水素結合が弱くなり、水の吸着性が向上する。そのため部分鹸化ポリビニルアルコールを含有したインク受容層上に水分を多量に含んだインクが着弾した場合、インクは素早く部分鹸化ポリビニルアルコールが存在するインク受容層に吸着され、吸着後は縦方向への吸収が優先的に起こるため、にじみの良好な記録シートを得ることができる。上述したインクの吸収機構はインクが受容層表面に着弾し、インクが受容層表面を溶解し吸着される時の概念を示しており、全てのインクを吸収するいわゆるインクの吸収性とは異なる。
【0020】
本発明では更に鹸化度が90%以下の部分鹸化ポリビニルアルコールを用いることがより好ましい。一方、鹸化度に下限はないが、鹸化度が低いと水への溶解度が低下するため塗料の調製にアルコール類の添加が必要となり安全性、取り扱い易さの点で不利となる場合があるため、部分鹸化ポリビニルアルコールの鹸化度は65%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。
【0021】
本発明のインク受容層に使用される部分鹸化ポリビニルアルコールの重合度は特に限定するものではないが、印字品質および塗膜の耐水性に関しては重合度200以上が良い傾向にある。ただし重合度が5000を超えると塗工用塗料の粘度が高くなり塗工が困難になる傾向にある。また、重合度が200未満であると記録用シートにした場合受容層の耐水性が悪化する恐れもある。以上の理由より重合度は200以上5000以下が好ましい。
【0022】
本態様においてインク受容層にインクのにじみを損なわない範囲において、顔料分散性、塗工適性の向上のために他の水溶性樹脂を添加しても良い。このような水溶性樹脂としては、カチオン、シラノール等の変性ポリビニルアルコール、カゼイン等の蛋白質、澱粉、および酸化澱粉等前記のものが例示される。
【0023】
前記のように本発明ではインク受容層に水不溶性樹脂を含有させることでインク受容層の耐水性が良好で、アンダーコート層とインク受容層間の耐水性に優れるインク受容層を得ることができる。本発明のインク受容層に使用される水不溶性樹脂としては、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等の(メタ)アクリル系重合体ラテックス、酢酸ビニル系重合体(酢酸ビニル重合体、酢酸ビニル共重合体)等のビニル系重合体ラテックス等の水不溶性樹脂類が例示できる。水不溶性樹脂としては、(メタ)アクリル系重合体ラテックスおよび酢酸ビニル系重合体ラテックスが、塗工後の耐候性に優れインク受容層の黄変が抑制されるため好ましい。一般的に、インクジェットの水性インクに使用される染料はアニオン性であるため、受容層の水不溶性樹脂が同じアニオン性の場合、インクが受容層に吸着されにくくなり、経時的ににじみが発生する場合がある。そのため、前記水不溶性樹脂は、カチオン性もしくはノニオン性のものがインクの吸着性が良好であるため好ましい。
【0024】
インク受容層の結着剤の合成非晶質シリカ100重量部に対する添加比率は特に限定しないが30重量部以上100重量部以下とすることが好ましい。前記添加比率が少ない場合、得られたインク受容層の表面強度が低下する恐れがある。また前記添加比率が多い場合、インクの吸収速度が遅くなり、そのためインクの乾燥に時間がかかる恐れがある。
【0025】
インク受容層に含有される結着剤総固形量中の水不溶性樹脂含有比率が、20重量%以上80重量%以下であることが好ましい。前記含有比率が少ない場合、インク受容層内の水溶性樹脂量が多くなり、塗膜の耐水性が低下する恐れがある。また、前記含有比率が多い場合、塗膜の耐水性は向上するものの、インク吸収容量不足によりにじみが発生する恐れがある。
【0026】
尚、インク受容層に部分鹸化ポリビニルアルコールと水不溶性樹脂を含む本発明の前記好ましい態様においては、部分鹸化ポリビニルアルコール100重量部に対して水不溶性樹脂が30重量部以上200重量部以下含有されることが好ましい。前記水不溶性樹脂の含有率が少ないと、インク受容層内の部分鹸化ポリビニルアルコール量が多くなり、塗膜の耐水性が低下する恐れがある。また、前記水不溶性樹脂の含有率が多いと、塗膜の耐水性は向上するものの、インク吸収容量不足によりにじみが発生する恐れがある。
【0027】
本発明のインク受容層に、水溶性カチオン樹脂を含有することでインクの発色性をより向上させることができる。本発明のインク受容層に使用される水溶性のカチオン樹脂として、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ジシアンジアミドポリアルキル−ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の化合物およびこれらの変性物等が例示できる。水溶性カチオン樹脂の配合量は水溶性樹脂総固形分に対して1%〜50%が好ましい。水溶性カチオン樹脂の配合量が少ないと印字の鮮明性改良効果が充分には得られない場合があり、逆に多くてもインクの発色性は向上するものの、水溶性カチオン樹脂は接着剤としての効果が低いものもあり所望の塗膜強度が得られない恐れがある。
【0028】
この他、添加剤として、顔料分散剤、消泡剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、架橋剤等が製造条件、印字品質、要求性能に応じて適宜使用される。
【0029】
塗料の塗工にはバーコーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター等の公知の塗工設備が応用される。支持体上にインク受容層を設けたシートは、そのまま本発明の記録用シートとして使用することが可能であるが、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー等で処理し、表面の平滑性を与えることもできる。
本発明で得られるインク受容層の塗工量は、最終用途によって決定され特に限定はしないが、インク吸収性、発色性、塗膜強度を満足させるかぎり不必要に多くする必要はなく、3〜30g/m2 、好ましくは5〜20g/m2 の範囲から適宜選択して用いられる。インク受容層が少ないと多くの場合インク吸収容量が不足し、画像が流れ出したり、色にじみ込みが生じ、画像がぼけてしまったり、乾燥が遅く、プリンターの排紙ロール等にインクが付着し、汚れてしまう恐れがある。しかしながら、多くてもインク受容層が厚いためアンダーコートとの接着性が弱くなり、剥がれ落ちたインク受容層によりヘッドノズルの目づまりのような問題を生じる恐れがあり、さらにコスト的にも高価なものとなる。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれによって限定されるものではない。尚、以下において部および%とあるのは、すべて重量部および重量%を示す。
【0031】
比較例1
ポリプロピレンと無機顔料を含む3層構造で、中心の基材層と表裏両面に紙状層を有する合成紙(商品名:ユポFPG−110,王子油化合成紙製、厚さ110μm)の片面にバーコーターを用いアンダーコート層塗料1を絶乾量で2g/m2 塗工後乾燥を行いアンダーコート層を設け、その上にインク受容層塗料1を絶乾量で15g/m2 塗工後乾燥を行い、インクジェット記録用シートを製造した。
「アンダーコート層塗料1」
炭酸カルシウム(商品名:カルライトSA、白石中央研究所社製) 100部,水不溶性樹脂 SBRラテックス(商品名:0589、Tg=0℃、日本合成ゴム製) 100部
「インク受容層塗料1」
合成非晶質シリカ(商品名:サイリシア#450 粒子径=5.2μm、富士シリシア製)100部,水溶性樹脂 酸化澱粉(商品名:エースA,王子コーンスターチ製)70部,水不溶性樹脂 アニオン性アクリル系重合体ラテックス(商品名:アプレタン760H,ヘキスト合成製)40部
【0032】
比較例2
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム(商品名:ルミラーT、東レ社製、厚さ75μm)の片面にバーコーターを用いアンダーコート層塗料2を絶乾量で15g/m2 塗工後乾燥を行いアンダーコート層を設け、その上にインク受容層塗料2を絶乾量で30g/m2 塗工、乾燥を行い、インクジェット記録用シートを製造した。
「アンダーコート層塗料2」
合成非晶質シリカ(商品名:ミズカシルP−603、粒子径=2.2μm、水沢化学製)100部,水不溶性樹脂 アクリル系重合体ラテックス(商品名:ヨドゾール AD−36、Tg=20℃、カネボウNSC製)50部
「インク受容層塗料2」
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−37、粒子径=2.5μm、トクヤマ製)100部,水溶性樹脂 ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、クラレ製、鹸化度98%,平均重合度1700)45部,水不溶性樹脂 アニオン性SBRラテックス(商品名:LACSTAR2800A、大日本インキ化学工業製)5部
【0033】
実施例1
比較例1で用いた合成紙ユポFPG−110の片面にバーコーターを用いアンダーコート層塗料3を絶乾量で15g/m2 塗工後乾燥を行いアンダーコート層を設け、その上にインク受容層塗料3を絶乾量で30g/m2 塗工、乾燥を行い、インクジェット記録用シートを製造した。
「アンダーコート層塗料3」
酸化亜鉛(商品名:亜鉛華1号,加商製)100部,水不溶性樹脂 アクリル系重合体ラテックス(商品名:レジン125−2211、Tg=23℃、カネボウNSC製)120部
「インク受容層塗料3」
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−37、粒子径=2.5μm、トクヤマ製) 100部、水溶性樹脂 酸化デンプン(商品名:エースA、王子コーンスターチ製)16部、水不溶性樹脂 ノニオン性酢酸ビニル系重合体ラテックス(商品名:ヨドゾール CD−5、カネボウNSC製) 64部
【0034】
比較例3
比較例1に用いた合成紙ユポFPG−110の片面にバーコーターを用いアンダーコート層塗料1を絶乾量で5g/m2 塗工、乾燥を行いアンダーコート層を設け、その上にインク受容層塗料4を絶乾量で20g/m2 塗工し、乾燥を行いインクジェット記録用シートを製造した。
「インク受容層塗料4」
合成非晶質シリカ(商品名:サイリシア#450、粒子径=5.2μm、富士シリシア製) 100部、水溶性樹脂 ポリビニルアルコール(商品名:デンカポバールK−17、電気化学工業製、鹸化度98%,平均重合度1700) 20部、水不溶性樹脂 カチオン性アクリル共重合体ラテックス(商品名:ヨドゾールAF943、カネボウNSC製) 5部
【0035】
実施例2
比較例1に用いた合成紙ユポFPG−110の片面にバーコーターを用いアンダーコート層塗料3を絶乾量で5g/m2 塗工、乾燥を行いアンダーコート層を設け、その上にインク受容層塗料5を絶乾量で20g/m2 塗工し、乾燥を行いインクジェット記録用シートを製造した。
「インク受容層塗料5」
合成非晶質シリカ(商品名:サイリシア#450、粒子径=5.2μm、富士シリシア製)100部、水溶性樹脂 ポリビニルアルコール(商品名:デンカポバールK−17、電気化学工業製、鹸化度98%,平均重合度1700)25部、水不溶性樹脂 ノニオン性酢酸ビニル系重合体ラテックス(商品名:ヨドゾールCD−5、カネボウNSC製)10部、水溶性カチオン樹脂(商品名:PAS−H−5L、日東紡製) 8部
【0036】
参考例1
比較例1で用いた合成紙ユポFPG−110の片面にバーコーターを用いアンダーコート層塗料4を絶乾量で5g/m2塗工後乾燥を行いアンダーコート層を設け、その上にインク受容層塗料1を絶乾量で15g/m2 塗工、乾燥を行い、インクジェット記録用シートを製造した。
「アンダーコート層塗料4」
炭酸カルシウム(商品名:カルライトSA、白石中央研究所社製)100部、水不溶性樹脂 酢酸ビニル・アクリル共重合体ラテックス(商品名:レジン125−1140、Tg=−20℃、カネボウNSC製)500部、水溶性樹脂ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、クラレ製)40部
【0037】
比較例4
比較例2に用いたPETフィルムの片面にバーコーターを用い、インク受容層塗料2を絶乾量で30g/m2 塗工し、乾燥を行いインクジェット記録用シートを製造した。
【0038】
比較例5
比較例1に用いた合成紙FPG−110の片面にバーコーターを用い、インク受容層塗料6を絶乾量で10g/m2 塗工し、乾燥を行いインクジェット記録用シートを製造した。
「インク受容層塗料6」
合成非晶質シリカ(商品名:サイリシア#450、粒子径=5.2μm、富士シリシア製)100部、水溶性樹脂 ポリビニルアルコール(商品名:デンカポバールK−17:電気化学工業製、鹸化度98%,平均重合度1700)25部、水不溶性樹脂 カチオン性アクリル共重合体ラテックス(商品名:ヨドゾールAF943、カネボウNSC製)25部
【0039】
比較例6
比較例1に用いた合成紙FPG−110の片面にバーコーターを用い、アンダーコート層塗料1を絶乾量で5g/m2 塗工し、アンダーコート層を設け、その上にインク受容層塗料7を絶乾量で10g/m2 塗工し、インクジェット記録用シートを製造した。
「インク受容層塗料7」
合成非晶質シリカ(商品名:サイリシア#450、粒子径=5.2μm、富士シリシア製)100部、水不溶性樹脂 カチオン性アクリル系重合体ラテックス(商品名:ヨドゾールAF943、カネボウNSC製)100部
【0040】
比較例7
実施例1に用いたPETフィルムの片面にバーコーターを用い、アンダーコート層塗料3を絶乾量で8g/m2 塗工し、アンダーコート層を設け、その上にインク受容層塗料8を絶乾量で15g/m2 塗工し、インクジェット記録用シートを製造した。
「インク受容層塗料8」
合成非晶質シリカ(商品名:サイリシア#450、粒子径=5.2μm、富士シリシア製)100部、水溶性樹脂 ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、クラレ製、鹸化度98%,平均重合度1700)40部得られた各塗工シートサンプルに関して、以下の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0041】
(1)アンダーコート層の撥水性
JIS P−8137に基づき測定した。
R0:連続した跡であって一様な幅を示すもの
R2:連続した跡であって水滴よりわずかに狭い幅を示すもの
R4:連続した跡であるがところどころで切れていて、明らかに水滴より狭い幅を示すもの
R6:跡の半分がぬれているもの
R7:跡の1/4は、長くのびた水滴によってぬれているもの
R8:跡の1/4以上は、球形の小滴が散在しているもの
R9:ところどころに球形の小水滴が散らばるもの
R10:完全に転がり落ちるもの
【0042】
(2)インク吸収性
インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製、デスクライターC)を用い、印字したインクが乾燥するまでの時間を測定した。
評価は以下の5段階で行った。
5・・・インク乾燥時間が4秒未満であり非常に良好
4・・・インク乾燥時間が4〜6秒であり良好
3・・・インク乾燥時間が7〜10秒でありやや良好
2・・・インク乾燥時間が11〜15秒であり実用上問題有り
1・・・インク乾燥時間が16秒以上であり実用不可
【0043】
(3)インクの発色性
インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製、デスクライターC)を用い、イエロー、マゼンタ、シアンの記録部分を目視で評価した。評価は以下の5段階で行った。
5・・・記録部分の色が極めて鮮明である
4・・・記録部分の色が鮮明である
3・・・記録部分の色が普通であり、実用上問題なし
2・・・記録部分の色が沈んでおり実用上問題有り
1・・・記録部分の色が沈み、極めて不鮮明であり実用不可
【0044】
(4)塗膜強度
セロハンテープ(ニチバン製)剥離試験で評価した。評価は官能評価で行い5段階で評価した。
5・・・塗膜強度は非常に強く良好
4・・・塗膜強度は強く良好
3・・・塗膜強度はやや弱いが実用上問題なし
2・・・塗膜強度は弱く実用上問題有り
1・・・塗膜強度が非常に弱く実用不可
【0045】
(5)塗膜耐水性
サンプルを20℃の水に24時間浸水後、塗膜表面を指で擦り、塗膜が剥がれるかどうかを官能評価した。
5・・・塗膜が剥がれず耐水性に優れる
4・・・塗膜が若干剥がれる傾向がある
3・・・塗膜が剥がれる傾向があるものの、実用上問題なし
2・・・塗膜が剥がれ、実用上問題有り
1・・・塗膜が極めて剥がれやすく、実用不可
【0046】
(6)塗膜黄変性
塗工層が上面になるようにサンプルを板に張り付け、6時間屋外で太陽光下に放置し、塗膜の黄変性を目視にて評価した。
5・・・塗膜が全く黄変しない
4・・・塗膜が少し黄変する
3・・・塗膜が黄変するものの、実用上問題なし
2・・・塗膜が黄変し、実用上問題有り
1・・・塗膜が極めて黄変し、実用不可
【0047】
【表1】
【0048】
表1からわかるように、実施例により得られたインクジェット記録用シートは、インク吸収性、発色性、塗膜強度および塗膜耐水性のいずれに関しても非常に優れている。これに対して比較例により得られたインクジェット記録用シートは、インク吸収性、および塗膜耐水性において良好な結果は得られなかった。
【0049】
【発明の効果】
本発明のインクジェットプリンター記録用紙は、インクの吸収性、および発色性、印字濃度に優れているだけでなく、塗膜強度および塗膜耐水性、塗膜黄変性においても優れているため、高品位な画像を屋外で長時間掲示が可能であるという効果を奏する。
Claims (5)
- 樹脂フィルムからなる支持体にアンダーコート層とインク受容層を設けてなるインクジェット記録用シート(但し、オフセット印刷原版を除く)であり、前記アンダーコート層が炭酸カルシウム及び酸化亜鉛から選ばれる顔料の少なくとも1種と、水不溶性樹脂として(メタ)アクリル系重合体ラテックスを含有し、且つアンダーコート層に結着剤として水溶性樹脂を含まず、前記インク受容層が合成非晶質シリカ及び、結着剤として水溶性樹脂と水不溶性樹脂を含有するインクジェット記録用シート。
- インク受容層に含有される水不溶性樹脂が、(メタ)アクリル系重合体及び酢酸ビニル系重合体より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載のインクジェット記録用シート。
- インク受容層に含有される結着剤の総固形量中の水不溶性樹脂含有比率が、20重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録用シート。
- アンダーコート層の水不溶性樹脂がガラス転移温度30℃以下であることを特徴とする請求項1,2または3記載のインクジェット記録用シート。
- アンダーコート層のJIS P−8137に基づく撥水度がR6以上である請求項1〜4より選ばれるいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
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