JP3582383B2 - ゼンマイトルク出力装置およびこれを用いた機械時計 - Google Patents

ゼンマイトルク出力装置およびこれを用いた機械時計 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゼンマイ出力装置およびこれを用いた時計に関し、例えばゼンマイが解ける時等の機械エネルギーで輪列に固定された指針を運針させる機械時計や、ゼンマイの機械エネルギーを駆動源として動作しつつ、一部を発電機で電気エネルギーに変換し、この電力により回転制御手段を作動させて回転周期を制御する電子制御式機械時計、あるいはゼンマイで駆動する駆動機構等を有する他の機器などの技術分野に属する。
【0002】
【背景技術】
従来より、ゼンマイが解ける時等の機械エネルギーで輪列に固定された指針を運針させる機械時計が知られている。また、ゼンマイの機械エネルギーを発電機で電気エネルギーに変換し、その電気エネルギーにより回転制御手段を作動させて発電機のコイルに流れる電流値等を制御することにより、輪列内の指針を正確に駆動して正確に時刻を表示する電子制御式機械時計として、特開平8−5758号公報に記載されたものが知られている。
【0003】
図9,10は、同公報に開示された電子制御式機械時計の平面図および断面図である。
【0004】
各図において、ゼンマイを内蔵した香箱車1からの回転動力は、地板2および輪列受3に支持された二番車7、三番車8、四番車9、五番車10、六番車11からなる輪列を介して増速されて発電機20に連繋される。
【0005】
発電機20は、従来の電池駆動式電子時計の駆動用ステップモータに類似する構造であり、ロータ12、ステータ150及びコイルブロック160とからなっている。
【0006】
ロータ12は、六番車11に連繋して回転するロータかな12aの軸回りに、ロータ磁石12b、円板状のロータ慣性板12cを一体に取付けたものである。ステータ150は、ステータ体150aに4万ターンのステータコイル150bを巻線したものである。
【0007】
コイルブロック160は、磁心160aに11万ターンのコイル160bを巻線したものである。ここで、ステータコイル150bとコイル160bは、各々の発電電圧を加えた出力電圧がでるように直列に接続されている。
【0008】
そして、この発電機20は、ロータ12の回転により得られた電力を、図示しないコンデンサを介して水晶発振器を備えた電子回路に給電し、この電子回路でロータの回転検出及び基準周波数に応じてロータ回転の制御信号をコイルに送り、この結果、輪列は常時その制動力に応じて一定の回転速度で回転する。
【0009】
この機械時計は、指針の駆動をゼンマイを動力源とするために運針駆動用のモータが不要であり、部品点数が少なく安価であるという特徴がある。その上、電子回路を作動させるのに必要な僅かな電気エネルギーを発電するだけでよく、少ない入力エネルギーで時計を作動することもできた。
【0010】
ところで、このような機械時計に用いられるゼンマイは、巻数Nが同一の場合、最大出力トルクTmaxが大きいほどエネルギ体積(Tmax×N)が大きいことが一般的に知られている。つまり、図10に実線で示すように、最大出力トルクT1maxを有するゼンマイよりも、2倍の最大出力トルクT2maxを有するゼンマイの方がエネルギー体積が大きい。従って、最大出力トルクT2max(より大きいエネルギー体積)のゼンマイを用い、二番車7以下の輪列をより小さい駆動トルク、例えば1/2の駆動トルクで駆動するようにすれば、ゼンマイのトルク曲線が一点鎖線で示すようになり、最大出力トルクT1maxのゼンマイを用いる場合よりも2倍の持続時間を達成することが可能である。
【0011】
また、同一体積のゼンマイ(香箱車)を用いた場合では、出力トルクを大きくして巻数を少なくするか、または、出力トルクを小さくして巻数を多くするかを選択でき、このような場合では、前者の方のエネルギ体積が大きくなって持続時間をより延ばすことができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、出力トルクの大きいゼンマイをゆっくり開放して使用する場合には、香箱車1から例えば二番車7への増速比を大きく設定し、二番車7の径寸法や歯のモジュールをより小さくする必要があるので、これに伴って種々の問題が生じる。すなわち、二番車7の歯底径が小さくなり過ぎて秒針の付く四番車9用の穴を設けることができなかったり、二番かなの歯数が少なくなって一歯の送り角度が大きくなり、よって効率変動が大きくなり過ぎたり、あるいは歯のモジュールが小さ過ぎて強度や加工上の問題が生じる。
【0013】
このため、二番車7の径寸法および歯数などは、香箱車から二番車7への増速比でいえば7前後、また、歯のモジュールは0.1程度にするのが一般的とされ、従って、容易にそれらの諸設定を変更し、より大きなエネルギー体積のゼンマイを用いる等して時計の持続時間を延ばそうとすることは極めて困難といえる。本発明の目的は、番車の径寸法や歯の大きさなどの各種の設定を変えずにより大きなエネルギー体積のゼンマイを用いることができ、これによって持続時間を大幅に延ばすことができる機械時計を提供することにある。
【0014】
一方、前述の機械時計に限らず、ゼンマイで駆動する駆動機構等を有する他の機器においても、設計あるいは製造上最適なゼンマイの出力トルクと、使用上最適なゼンマイの出力トルクとの間には隔たりがある場合があり、ゼンマイの出力トルクを可変できる装置が望まれている。
【0015】
本発明の他の目的は、ゼンマイの出力トルクを容易に可変できるゼンマイトルク出力装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
先ず、本発明のゼンマイトルク出力装置は、ゼンマイの内端と連動する内端側車と、外端と連動する外端側車と、これらの内外端車を連結する歯車とを備え、前記内外端車の少なくともいずれか一方から前記ゼンマイのトルクを出力可能に構成され、前記内外端車を連結する歯車の数は奇数であるとともに、前記内外端車の減速比は前記ゼンマイのトルクが出力される側に向けて2より小さいことを特徴とすることを特徴とするものである。
【0017】
このような本発明においては、内外端車の減速比に応じて、ゼンマイから任意の大きさのトルクが容易に出力されるようになる。
【0018】
また、本発明のゼンマイトルク出力装置では、前記内外端車を連結する歯車には、前記ゼンマイの巻上げ時にスリップし、かつ出力時にロックするスリップ機構が設けられていることが望ましい。
【0019】
このような場合には、前記歯車にスリップ機構を設けるので、内外端側車のうちの一方の車を回転させてゼンマイの巻き上げる際、その回転が他方の車に伝達されるのを防止可能である。
【0020】
さらに、本発明の前記ゼンマイトルク出力装置では、内外端車を連結する歯車の数は奇数であるとともに、前記内外端車の減速比は前記ゼンマイのトルクが出力される側に向けて2より小さくするともよく、このような場合には、出力トルクが小さくなるとともに、ゼンマイの解ける時間が長くなる。
【0023】
次に、本発明の機械時計は、前述のゼンマイ出力装置を備えていることを特徴とするものであり、より大きなエネルギー体積のゼンマイを番車の諸設定を変えずに用いることが可能となり、時計の持続時間が大幅に延びる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0025】
〔第1実施形態〕
図1〜図2は、本発明の第1実施形態を示すものである。なお、各図において、発電機の構成の主要部が従来と異なる以外は、従来と同一なので、その同一部分もしくは相当部分に同一符号を付し、異なる部分、あるいは新たに説明を付加する部分にのみ異なる符号を付して説明する。
【0026】
各図において、電子制御式機械時計は、ゼンマイ1a、香箱歯車1b、香箱真1c、及び香箱蓋1dからなる香箱車1を備えている。ゼンマイ1aは、外端が香箱歯車1b、内端が香箱真1cに固定される。筒状の香箱真1cは、地板2に設けられた支持部材に挿通されて角穴ネジ5によって固定され、角穴車4と一体で回転する。そして、地板2には、カレンダー板2a、および円板状の文字板2bが取り付けられている。
【0027】
香箱歯車1bの回転は増速輪列となる各番車7〜11を介して合計126,000倍に増速されている。この際、各番車7〜11は各々異なる軸線上に設けられて後述するコイル124,134に重ならない位置に配置され、ゼンマイ1aからのトルク伝達経路を形成している。
【0028】
二番車7と係合する筒かな7aには時刻表示を行う図示しない分針が、秒かな14aには時刻表示を行う図示しない秒針がそれぞれ固定されている。従って、二番車7を1rphで、秒かな14aを1rpmで回転させるためには、ロータ12は5rpsで回転するように制御すればよい。このときの香箱歯車1bは、1/7rphとなる。
【0029】
また、トルク伝達経路から外れた秒かな14aは、香箱車1とコイル124との間に設けられた指針抑制装置140によってそのバックラッシュが詰められている。指針抑制装置140は、テフロン処理や分子間結合被膜等で表面処理された一対の直線状の抑制ばね141,142と、各抑制ばね141,142の基端側を支持して二番受113に固定されるヒゲ玉143,144とで構成されている。
【0030】
この電子制御式機械時計は、ロータ12およびコイルブロック121,131から構成される発電機120を備えている。ロータ12は、ロータかな12a、ロータ磁石12b、および円板状のロータ慣性板12cを備えて構成される。
【0031】
コイルブロック121,131は、それぞれ同一形状とされたステータ(コア、磁心)123,133にコイル124,134を巻線して構成されたものである。ステータ123,133は、ロータ12に隣接して配置されるコアステータ部122,132と、前記コイル124,134が巻回されるコア巻線部123b、133bと、互いに連結されるコア磁気導通部123a,133aとが一体に形成されて構成されている。
【0032】
前記各ステータ123,133つまり各コイル124,134は互いに平行に配置されている。そして、前記ロータ12は、コアステータ部122,132側において、その中心軸が各コイル124,134間に沿った境界線L上に配置され、コアステータ部122,132が前記境界線Lに対して左右対称となるように構成されている。
【0033】
この際、各ステータ123,133のロータ12が配置されたステータ孔122a,132aには、図2に示すように、位置決め部材60が配置されている。そして、各ステータ123,133の長手方向の中間部分つまりコアステータ部122,132およびコア磁気導通部123a,133a間に偏心ピンからなる樹脂製の位置決め治具55を配置している。この位置決め治具55を回すと、各ステータ123,133のコアステータ部122,132を位置決め部材60に当接させてその位置合わせを正確にかつ簡単に行うことができるとともに、コア磁気導通部123a,133aの側面同士を確実に接触させることができる。 各コイル124,134の巻数は同数とされている。本実施形態においても、巻数が同数とは、完全に同数の場合だけではなく、コイル全体からは無視できる程度の誤差、例えば数百ターン程度の違いまでをも含むものである。
【0034】
なお、各ステータ123,133のコア磁気導通部123a,133aは、その側面が当接されて互いに連結されている。また、コア磁気導通部123a,133aの下面は、各コア磁気導通部123a,133aに跨って配置された図示しないヨークに接触されている。これにより、コア磁気導通部123a,133aでは、各コア磁気導通部123a,133aの側面部分を通る磁気導通経路と、コア磁気導通部123a,133aの下面およびヨークを通る磁気導通経路との2つの磁気導通経路が形成され、ステータ123,133は環状の磁気回路を形成している。各コイル124,134は、ステータ123,133のコア磁気導通部123a,133aからコアステータ部122,132に向かう方向に対して同方向に巻線されている。
【0035】
これらの各コイル124,134の端部は、ステータ123,133のコア磁気導通部123a,133a上に設けられた図示しないコイルリード基板に接続されている。
【0036】
このように構成された電子制御式機械時計を使用している場合、各コイル124,134に外部磁界H(図1)が加わると、外部磁界Hは平行に配置された各コイル124,134に対して同方向に加わるため、各コイル124,134の巻線方向に対しては外部磁界Hは互いに逆方向に加わることになる。このため、外部磁界Hによって各コイル124,134で発生する起電圧は互いに打ち消し合うように働くため、その影響を軽減できる。
【0037】
また、直列に接続された各コイル124,134は、図3に示すように、起電力発生用、ロータ12の回転検出用および発電機120の回転制御用に兼用されている。すなわち、ICからなる電子回路240をコイル124,134の起電力で駆動し、回転検出および回転制御を行っている。電子回路240は、水晶振動子241を駆動する発振回路242と、発振回路242に生じたクロック信号を基に時刻信号となる基準周波数信号を生成する分周回路243と、前記ロータ12の回転を検出する検出回路244と、検出回路244で得られた回転周期と基準周波数信号とを比較してその差分を出力する比較回路245と、その差分に応じて前記発電機120に制動用の制御信号を送る制御回路246とから構成されている。なお、水晶振動子241の代わりに各種の基準標準振動源等を用いてクロック信号を発生させてもよい。
【0038】
各回路242〜246は、直列に接続された各コイル124,134で生成した電力により駆動されるもので、発電機120のロータ12が輪列からの回転を受けて一方向に回転すると、各コイル124,134には交流出力が生じ、この出力をダイオード247、コンデンサ248からなる昇圧充電回路により昇圧整流し、この整流された直流電流により制御回路(電子回路)240を駆動する。また、各コイル124,134の交流出力の一部は、ロータ12の回転周期の検出信号として取り出され、前記検出回路244に入力される。各コイル124,134から出力された出力波形は、一回転周期毎に正確な正弦波を描く。従って検出回路244は、この信号をA/D変換して時系列的なパルス信号とし、この検出信号を比較回路245により基準周波数信号と比較し、制御回路246ではその差分に応じた制御信号を各コイル124,134のブレーキ回路として機能するショート回路249に送る。
【0039】
そして、制御回路246からの制御信号に基づいて、ショート回路249は各コイル124,134の両端を短絡してショートブレーキをかけてロータ12の回転周期を調速する。
【0040】
なお、前記ショート回路249は、図4に示すように、互いに逆方向に電流を通す一対のダイオード251と、これらの各ダイオード251に直列に接続されたスイッチSWと、各スイッチSWに並列に接続された寄生ダイオード250とからなる両方向スイッチにより構成されている。これにより、各コイル124,134の交流出力の全波を利用してブレーキ制御を行うことができ、ブレーキ量を大きくとれるようにしている。
【0041】
次に、図1,5に基づき、本実施形態の最も特徴的な構成であるゼンマイトルク出力装置300について以下に説明する。
【0042】
ゼンマイトルク出力装置300は、ゼンマイ1aと、ゼンマイ1aの内端が固定された内端側車としての前記角穴車4と、外端が固定された外端側車としての前記香箱歯車1bと、角穴車4および香箱歯車1bとを連結する歯車としての巻上げ車301、巻上げ中間車302、および切換車303とで構成され、巻上げ車301が角穴車4と巻上げ中間車302とに噛み合い、切換車303の切換歯車303aが香箱歯車1bに、切換かな303bが巻上げ中間車302にそれぞれ噛み合っている。
【0043】
また、巻上げ車301および巻上げ中間車302は、案内ピンおよび止めネジによって地板2に支持され、切換車303は、一端側が地板2に、他端側が輪列受3に支持されている。そして、これらの奇数個(3つ)の歯車301〜303により、角穴車4および香箱歯車1bが同じ方向に回転するように構成され、この際の角穴車4から香箱歯車1bに向けての減速比Zzは1よりも小さく設定されている(Zz<1)。
【0044】
切換車303において、切換歯車303aには、切換かな303b側のラチェット部303cが嵌合する開口部が設けられており、この開口部内には前記ラチェット部303cに係止するバネ303dが設けられている。また、押さえ蓋304により、切換歯車303aとラチェット部303cとの断面的な噛み合い外れを防止している。このような切換車303では、角穴車4を回転させてゼンマイ1aを巻き上げると、角穴車4の回転に伴って切換かな303b側のみが回転し、その回転は切換歯車303aに伝達されず、反対に、ゼンマイ1aが解けることで香箱歯車1bが回転すると、バネ303dがラチェット部303cに係止して切換歯車303aと切換かな303bとが共に矢印A方向(図5)に回転する。すなわち、ラチェット部303cおよびバネ303dで本発明に係るスリップ機構が形成されている。
【0045】
このようなゼンマイトルク出力装置300では、図6に模式的に示すように、ゼンマイ1aが解ける時の出力トルクをTとすると、香箱歯車1bが各歯車301〜303を介して角穴車4と抗することになるため、香箱歯車1bにはその回転方向とは逆向きにZz・Tのトルクが生じる。この時、角穴車4から香箱歯車1bへの減速比Zzは1より小さく、Zz・T=<T(香箱歯車1bを回転させようとするT)となるため、香箱歯車1bは実線で示した出力トルクTの向き(ゼンマイ1aが外端から解ける向き)に回転するとともに、香箱歯車1bから二番車7へ出力される出力トルクToutは、Tout=T−Zz・T=(1−Zz)T=となり、ゼンマイ1aの出力トルクTの(1−Zz)倍となって、出力トルクTよりも小さくなる。
【0046】
また、角穴車4と香箱歯車1bとの間には3つの歯車301〜303が配置されているから、香箱歯車1bが回転すると、この回転に伴って角穴車4が同方向すなわち巻き上がる方向に回転する。この際、減速比Zz<1であることにより、香箱歯車1bが一周してゼンマイ1aを外端側から巻き解く間に、角穴車4は同方向にZz周してゼンマイ1aを内端側から巻き上げ、結果的にはゼンマイ1aが(1−Zz)周だけ解け、香箱車1のみを設けた従来に比してより遅く解けきることになる。
【0047】
従って、例えば図10に示したような最大出力トルクT2maxのゼンマイを用い、減速比Zzを0.5とした場合には、香箱歯車1bの出力トルクToutのカーブは、図10中の一点鎖線のように、最大出力トルクがT2maxの1/2となってT1maxと同じになり、持続時間が2倍になる。 このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
【0048】
1)本実施形態の電子制御式機械時計はゼンマイトルク出力装置300を備えているため、より大きなエネルギー体積のゼンマイ1aを使用しつつも、その出力トルクToutを小さく可変して二番車7に出力することができる。従って、出力トルクToutを小さくしたことによる余剰エネルギーで角穴車4を巻き上げることにより、ゼンマイ1aが最後まで巻き解ける時間を長くでき、香箱歯車1bから二番車7への増速比を大きくするために二番車7の径寸法や歯の大きさなどの諸設定を変えなくとも、時計の持続時間を大幅にしかも容易に延ばすことができる。
【0049】
2)ゼンマイトルク出力装置300を構成する切換車303には、ラチェット部303cおよびバネ303dからなるスリップ機構が形成されているので、ゼンマイ1aを巻き上げるために角穴車4を回転させても、その回転が香箱歯車1bに伝達されるのを防止でき、指針等が回転してしまうのを確実に防止できる。
【0050】
3)ステータ123,133はそれぞれ独立した部品で形成され、構造上ステータ孔の片持ち支持などによる脆弱部分や外ノッチのように変形しやすい部分がないため、取扱いが簡単になり、各工程でのハンドリング性を良好にでき、歩留り低下も防止できる。
【0051】
4)ステータ123,133が同一形状であるため、同一部品に巻線することができ、部品を共用でき、部品数を削減できる。このため、製造コストや部品コストを低減でき、取り扱いも容易にできる。
【0052】
5)同一形状のステータ123,133を左右対称に配置し、かつ各ステータ123,133のコイル124,134の巻回数が同じであるため、時計の外部に発生するACノイズ等による磁束は二本のコイル122,132内を同数流れ、これによって外部ノイズの影響をキャンセルすることができ、ノイズに強い電子制御式機械時計を形成できる。
【0053】
6)二〜六番車7〜11を各々異なった軸線上に配置することでそれら番車7〜11の配置設計の自由度を高めることが可能であるから、秒かな14aをトルク伝達経路から外すなどして、各番車7〜11をロータ12に向けて迂遠させて配置することにより、コイル124,134と重ならない位置に配置することができる。従って、コイル124,134の厚さ方向を大きくするようにして巻数を稼げるため、コイル124,134の平面方向の長さ、すなわち磁路長を短くでき、鉄損を減少させてゼンマイ1aの持続時間を延ばすことができる。
【0054】
7)さらに、ロータ12を前記境界線L上に配置しかつ各ステータ123,133を左右対称に構成しているので、コアステータ部122,132部分の磁路も短くでき、この点でも磁路長を短くできて鉄損を減少させることができる。
【0055】
8)コア磁気導通部123a,133a部分で2つの磁気導通経路を形成しているので、磁気抵抗を小さくかつ安定させることができる。そして、磁気抵抗が安定することで、起電圧を安定化でき、発電やブレーキも安定化できる。また、漏れ磁束を低減でき、金属部品での渦損失を削減することができる。
【0056】
9)位置決め治具55および位置決め部材60を設けたので、ロータ12をステータ孔53内に配置した状態でステータ123,133の位置合わせを行うことができ、例えば製品出荷直前においてロータ12に対するステータ122,123の最適位置の設定を簡単に行うことができ、位置精度をより一層向上させることができる。
【0057】
10)位置決め治具55を各ステータ123,133よりも柔らかい樹脂部材で構成したので、位置決め治具55による各ステータ123,133の破損も防止できる。
【0058】
11)位置決め治具55を、コアステータ部122,132およびコア磁気導通部123a,133a間に配置したので、各ステータ123,133毎に1つの位置決め治具55でコアステータ部122,132の位置合わせおよびコア磁気導通部123a,133aの当接状態を調整することができる。これにより、位置決め治具55の数を少なくできて構成を簡易にでき、コストも低減できる。
【0059】
12)外部磁界Hによる磁気ノイズを軽減できるため、電子制御式機械時計の文字板2b部分などムーブメント部品に耐磁板を設けたり、外装部品に耐磁効果のある材料を使用する必要がなくなる。このため、コストを軽減できるとともに、耐磁板等が不要になる分、ムーブメントの小型化や薄型化を実現でき、ひいては各部品の配置などが外装部品に制限されないためにデザインの自由度が高まり、意匠性や製造効率などに優れた電子制御式機械時計を提供できる。
【0060】
13)秒かな14aがトルク伝達経路から外れていることにより、秒かな14aには香箱車1と重なるトルク伝達用の歯車等が不要であるから、その分ゼンマイ1aの幅寸法(時計の厚さ方向の寸法)を大きくでき、時計全体の厚さを維持しつつゼンマイ1aの持続時間をさらに延ばすことができる。
【0061】
〔第2実施形態〕
図7には、本発明の第2実施形態に係るゼンマイトルク出力装置300が示されている。なお、前記第1実施形態と同様な機能部品には同一符号を付してそれらの説明を省略する(以下の実施形態でも同様である)。
【0062】
本実施形態では、角穴車4の径寸法が香箱歯車1bの径寸法よりも大きく、これらの間が巻上げ車を兼用した1つの切換車303で連結されている。そして、第1実施形態と同様に、角穴車4から香箱歯車1bに向けての減速比Zzが1よりも小さく設定されている。
【0063】
このような実施形態でも、第1実施形態と同様に前述した1)、2)の効果を同様に得ることができるうえ、以下の効果がある。
【0064】
14)角穴車4の径寸法が香箱歯車1bの径寸法よりも大きいので、角穴車4から香箱歯車1bに向けての減速比Zzを1よりも小さくし、かつ角穴車4および香箱歯車1bを同方向に回転させるためには、切換車303を1つだけ用い、その切換歯車303aを香箱歯車1bに、切換かな303bを角穴車4にそれぞれ噛み合わせるようにすればよく、第1実施形態のよう巻上げ車301や巻上げ中間車302を不要にできる。従って、部品数の低減および時計の小型化を促進できる。
【0081】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0082】
例えば、前記第1、第2実施形態では、減速比Zzを1よりも小さくすることで香箱歯車1bの出力トルクを抑える反面、ゼンマイ1aの持続時間を延ばすように構成されていたが、この他、切換車303の切換歯車303aと角穴車4と噛み合わせ、切換かな303bと香箱歯車1bとを噛み合わせた前記第3実施形態において、角穴車4から香箱歯車1bへの減速比Zzを1<Zz<2に設定することにより、出力トルクを抑えて持続時間を延ばすようにしてもよい。
【0083】
また、第1実施形態では、香箱歯車1bと角穴車4とが3つの歯車301〜303で連結され、第2実施形態では、切換車303のみで連結されていたが、それらの実施形態と同様な作用・効果を得るためには、香箱歯車1bと角穴車4とを5つ以上の奇数個の歯車で連結してもよい。
【0086】
また、本発明に係るスリップ機構は、前記第1実施形態に示したものに限定されず、その構造等は実施にあたって適宜に決められてよい。
【0087】
さらに、本発明の機械時計としては、発電機を備えた電子制御式機械時計に限らず、テンプ等の調速機を備えた機械時計であってもよい。
【0088】
そして、本発明のゼンマイトルク出力装置としては、時計に用いられるものに限らず、ゼンマイで駆動する駆動機構等を有する他の機器に適用できる。
【0089】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明のゼンマイトルク出力装置によれば、ゼンマイの出力トルクを容易に可変できるという効果があり、このゼンマイトルク出力装置を機械時計に適用するれば、番車の径寸法や歯の大きさなどの各種の設定を変えずにより大きなエネルギー体積のゼンマイを用いることができ、これによって持続時間を大幅に延ばすことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子制御式機械時計を示す平面図である。
【図2】第1実施形態の断面図である。
【図3】第1実施形態における発電機と電子回路との接続形態を示す回路ブロック図である。
【図4】図3のショート回路を示す回路図である。
【図5】第1実施形態の要部を示す断面図である。
【図6】第1実施形態の要部を平面的に示す模式図である。
【図7】第2実施形態の要部を平面的に示す模式図である。
【図8】従来技術を示す平面図である。
【図9】従来技術を示す断面図である。
【図10】トルク曲線を示す図である。
【符号の説明】
1a ゼンマイ
1b 外端側車である香箱歯車
4 内端側車である角穴車
301〜303,305 歯車である巻上げ車、巻上げ中間車、切換車、および巻解き車
300 ゼンマイトルク出力装置
303c ラチェット部
303d バネ
Zz 減速比

Claims (3)

  1. ゼンマイの内端と連動する内端側車と、外端と連動する外端側車と、これらの内外端車を連結する歯車とを備え、前記内外端車の少なくともいずれか一方から前記ゼンマイのトルクを出力可能に構成され、前記内外端車を連結する歯車の数は奇数であるとともに、前記内外端車の減速比は前記ゼンマイのトルクが出力される側に向けて2より小さいことを特徴とするゼンマイトルク出力装置。
  2. 請求項1に記載のゼンマイトルク出力装置において、前記内外端車を連結する歯車には、前記ゼンマイの巻上げ時にスリップし、かつ出力時にロックするスリップ機構が設けられていることを特徴とするゼンマイトルク出力装置。
  3. 請求項1に記載のゼンマイ出力装置を備えていることを特徴とする機械時計。
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