JP2004004005A - 電子制御式機械時計 - Google Patents

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JP2004004005A JP2003082928A JP2003082928A JP2004004005A JP 2004004005 A JP2004004005 A JP 2004004005A JP 2003082928 A JP2003082928 A JP 2003082928A JP 2003082928 A JP2003082928 A JP 2003082928A JP 2004004005 A JP2004004005 A JP 2004004005A
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Masatoshi Mogi
茂木 正俊
Osamu Takahashi
高橋 理
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Abstract

【課題】
【解決手段】ロータ慣性板12cとステータ123,133との間のギャップhを、これらの部品間の空気粘性抵抗による負荷トルクがロータでの最大出力トルクの1/10以下となるように設定した。従って、負荷トルクが十分に小さくなるので、ゼンマイのエネルギーロスを小さく抑えることができ、時計の持続時間を延ばすことができる。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、ゼンマイ等の機械的エネルギー貯蔵手段を駆動源として動作しつつ、一部を発電機で電気エネルギーに変換し、この電力により回転制御手段を作動させて回転周期を制御する電子制御式機械時計に関し、特に機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機の周辺構造の改良に関する。
【0002】
【背景技術】
ゼンマイが解ける時の機械エネルギーを発電機で電気エネルギーに変換し、その電気エネルギーにより回転制御手段を作動させて発電機のコイルに流れる電流値等を制御することにより、輪列に固定される指針を正確に駆動して正確に時刻を表示する電子制御式機械時計として、特開平8 −5758 号公報に記載されたものが知られている。
【0003】
図17 ,18 は、同公報に開示された時計の平面図および断面図である。各図において、ゼンマイを内蔵した香箱車1 からの回転動力は、地板2 および輪列受3 、二番受113 に支持された二番車7 、三番車8 、四番車9 、五番車10 、六番車11 からなる輪列を介して増速されて発電機20 に連繋される。
発電機20 は、従来の電池駆動式電子時計の駆動用ステップモータに類似する構造であり、ロータ12 、ステータ150 、およびコイルブロック160 とからなっている。
ロータ12 は、六番車11 に連繋して回転するロータかな12a の軸回りに、ロータ磁石12b 、円板状のロータ慣性板12c を一体に取付けたものである。
ステータ150 は、ステータ体150a に4 万ターンのステータコイル150b を巻線したものである。
コイルブロック160 は、磁心160a に11 万ターンのコイル160b を巻線したものである。ここで、ステータコイル150b とコイル160b は、各々の発電電圧を加えた出力電圧がでるように直列に接続されている。
【0004】
そして、この発電機20 は、ロータ12 の回転により得られた電力を、図示しないコンデンサを介して水晶発振器を備えた電子回路に給電し、この電子回路でロータの回転検出及び基準周波数に応じてロータ回転の制御信号をコイルに送り、この結果、輪列は常時その制動力に応じて一定の回転速度で回転する。
【0005】
このような電子制御式機械時計は、指針の駆動をゼンマイを動力源とするために運針駆動用のモータが不要であり、部品点数が少なく安価であるという特徴がある。そのうえ、電子回路を作動させるのに必要な僅かな電気エネルギーを発電するだけでよく、少ない入力エネルギーで時計を作動することもできた。
【0006】
ところで、前述の公報記載の電子制御式機械時計においては、ゼンマイが解ける力でロータ12 を一定速度で回転させる必要があるが、このロータ12 の回転を安定させるために前記ロータ慣性板12c が設けられている。
【0007】
しかしながら、ロータ慣性板12c の周辺には、このロータ慣性板12c に対して軸方向に近接対向するように地板2 やステータ150 が配置されているため、ロータ慣性板12c とそれらの地板2 、ステータ150 との間のギャップが小さ過ぎると、それらの部品間で生じる空気粘性抵抗がロータ12 の回転に悪影響を及ぼす。すなわち、それらの部品間のギャップが小さ過ぎる場合には、空気粘性抵抗が大きくなってロータ12 を回転させるのに必要な負荷トルクが増すので、その分だけ時計の持続時間が短くなるという問題が生じる。
【0008】
また、電子制御式機械時計に用いられる発電機としては、慣性板12c を備えたものの他、ブラシレスモータと同様な構造のものを用いることがある。このような発電機では、ロータの軸方向に沿って一対の円板状のステータ体が取り付けられ、各ステータ体には交互に極が異なる複数の磁石が周方向に設けられ、これらのステータ体間(磁石間)に挟まれるようにして基板上に形成されたコイルが介装されている。従って、円板状のステータ体を含むロータ自身が慣性板としても作用するため、前述のような慣性板12c が不要である。
【0009】
しかし、そのような発電機においても、ステータ体と地板やコイルとの間のギャップが小さ過ぎると、それらの部品間の空気粘性抵抗によって前述の問題が同様に生じる。
【0010】
本発明の目的は、空気粘性抵抗の影響を低減して持続時間を延ばすことができる電子制御式機械時計を提供することにある。
【0011】
【発明の開示】
請求項1 記載の電子制御式機械時計は、機械的エネルギー貯蔵手段をエネルギー源として機械的エネルギー伝達手段を駆動するとともに、機械的エネルギー伝達手段によって回転する発電機に電力を生じさせ、この電力により駆動される電子回路によって前記発電機の回転周期を制御することで、機械的エネルギー伝達手段に制動をかけて調速するようにした電子制御式機械時計において、前記発電機は前記機械的エネルギー伝達手段に連繋して回転するロータを備え、このロータの最大径部材と当該ロータに対して軸方向に最も近接対向して固定された対向部品との前記軸方向のギャップをh 、円周率をπ、空気の粘度をμ、ロータの回転周波数をf 、ロータに伝えられる機械的エネルギー貯蔵手段の最大出力トルクをT rzmax 、係数をK 、ロータの回転中心からロータの最大径部材と前記対向部品とが平面的に重なる部分の内縁までの距離をr  、ロータの回転中心からロータの最大径部材と前記対向部品とが平面的に重なる部分の外縁までの距離をr  とし、前記ギャップh が、
【0012】
【数2】
Figure 2004004005
【0013】
で与えられる場合に、前記係数K は1 /10 以下に設定されていることを特徴とする。
【0014】
ここで、「対向部品」および「最大径部材」とは、互いのギャップh が小さくなるにつれて、それらの間で粘性抵抗が大きくなり、ロータでの負荷トルクを大きくさせる部品および部材である。
【0015】
従って、「対向部品」に関していえば、例えば、後述の請求項6 に記載のブリッジ形状または片持ち式の支持部材や、請求項8 に記載の近接部品など、ロータの最大径部材と平面的に重なる面積が少なく、ギャップh が小さくなっても最大径部材との間の空気粘性抵抗が問題とならない部品は対向部品に含まれない。
【0016】
「最大径部材」についていえば、例えば、ロータ慣性板などの最大径部材における半径の中点より外周側において、慣性を高めるための凸部を対向部品側に突出させて設けた場合、対向部品と平面的に重なる凸部の面積が最大径のなす面積の1 /5 未満であれば、凸部と対向部品との対向面間の空気粘性抵抗は問題にならないため、このような対向面間のギャップは本発明でいうギャップh ではなく、本発明でいうギャップh は、この凸部以外の面と対向部品とのギャップを指す。そして、この凸部は本発明の最大径部材にはならない。
【0017】
また、ロータ慣性板などの最大径部材の半径の中点より中心側に前記のような凸部を設けた場合でも、対向部品と平面的に重なる凸部の面積が最大径のなす面積の2 /5 未満であれば、凸部と対向部品との対向面間の空気粘性抵抗は問題にならないため、このような対向面間のギャップも本発明でいうギャップh ではなく、本発明でいうギャップh は、この凸部以外の面と対向部品とのギャップを指す。そして、この凸部も本発明の最大径部材にはならない。
【0018】
このような本発明においては、発電機がロータを備えて構成されるが、ロータにおける空気粘性抵抗が問題となり易い最大径部材と対向部品との間のギャップh は、これらの部品間の空気粘性抵抗による負荷トルクが機械的エネルギー貯蔵手段からロータに伝えられる最大出力トルクT rzmax の1 /10 (10 %)以下になるように設定される。
【0019】
例えば、図14 のグラフには、本発明者が後述する第1 実施例に記載の実験を行って得た二番車7 (符号に関しては図1 、図2 を参照)の負荷トルクT 2 #とギャップh との関係、および本発明者が後述する第1 実施形態に記載の理論から計算した空気粘性によるロータ負荷トルクT rz を二番車7 の負荷トルクT  に換算した値とギャップh との関係が示されている。
【0020】
このグラフにおいて、実測値から計算値を減じた値はギャップh の大きさによらず略一定であるため、この値は輪列での機械摩擦やほぞの油の粘性抵抗など、ロータ12 および対向部品(例えばステータ123 ,133 や等)間に働く空気の粘性抵抗以外による負荷抵抗であると判断できる。
【0021】
一方、図16 のグラフは、後述の第2 実施例に記載のように、ギャップh と持続時間およびムーブメントの厚みとの関係を示している。
【0022】
図14 ,16 のグラフから、ギャップh を0 .1mm 未満にすると、空気粘性による負荷が急激に大きくなり、持続時間は急激に短くなることがわかる。持続時間は、ゼンマイ1a の能力と時計を動かすのに必要な負荷トルクの関係で決まる。ギャップh を0 .1mm としたときの空気粘性によるロータ12 での負荷トルク7T rz は、図14 のグラフから二番車7 換算で84 .34 ×10 −6 N ・m (0 .86gcm を国際単位系に変換した値である)であり、機械的エネルギ貯蔵手段であるゼンマイ1a からロータ12 に伝達される最大出力トルクT rzmax の略1 /10 に相当する。
【0023】
このことから、ギャップh を係数K が1 /10 以下になるように設定すると、ロータ12 の空気粘性抵抗による負荷トルクT rz が小さく抑えられ、機械的エネルギ貯蔵手段のエネルギロスが小さく抑えられて時計の持続時間が延びる。
【0024】
請求項2 記載の電子制御式機械時計では、前記係数K は、1 /20 ないし1 /60 に設定されていることを特徴とする。
【0025】
請求項3 記載の電子制御式機械時計では、前記係数K は、1 /20 ないし1 /40 に設定されていることを特徴とする。
【0026】
図16 において、ギャップh を0 .6mm 以上にしても、ムーブメントの厚みが大きくなる割に持続時間は長くならないことがわかる。ギャップh が0 .6mm のときの空気粘性による二番車7 換算の負荷トルクT  は、図14 から13.73 ×10 −6 N ・m (0 .14gcm を国際単位系に変換した値である)となり、ゼンマイ1a からロータ12 に伝達される最大出力トルクT rzmax の略1 /60 になる。
【0027】
時計として求められる持続時間およびムーブメントの厚みを考慮すると、ギャップh は0 .2 〜0 .4mm あたりがより好ましい値になる。ギャップh0 .2mm のときの空気粘性による負荷トルクT  は42 .17 ×10−6 N ・m (0 .43gcm を国際単位系に変換した値である)、0 .4mm のときの負荷トルクT  21 .57 ×10 −6 N ・m (0 .22gcm を国際単位系に変換した値である)で、それぞれゼンマイ1a からロータ12 に伝達される最大出力トルクT rzmax の略1 /20 、1 /40 になる。
【0028】
請求項4 記載の電子制御式機械時計では、前記対向部品は、前記ロータの軸方向の少なくとも一端側を支持する支持部材であり、この支持部材は、当該支持部材に保持されて前記軸方向の一端側を受ける軸受よりも前記ロータから軸方向に離れていることを特徴とする。
ここで、支持部材としては、例えば、機械的エネルギー伝達手段としての輪列を受ける輪列受や地板などを適用できる。
このような構成では、ロータの回転中心に近い軸受よりも回転中心から離れた(径方向に離れているの意)位置にある支持部材が、ロータに対して軸方向にも大きく離れるので、軸受とロータの軸方向との係合状態を何ら変えることなく良好に維持しながらも、支持部材とロータの最大径部材とのギャップh を確実に確保できる。
【0029】
請求項5 記載の電子制御式機械時計では、前記対向部品は、前記ロータの軸方向の少なくとも一端側を支持する支持部材であり、この支持部材は、前記軸方向の一端側を受ける軸受を保持するための保持部を有するとともに、この保持部の周辺部位が当該保持部よりも前記ロータから軸方向に離れていることを特徴とするものであり、ここでの支持部材としても、輪列受や地板を適用できる。
このよな構成でも、支持部材におけるロータの最大径部材と近接対向する部位のみがロータに対して大きく離れ、軸受自身の構造等は何ら変更されないから、前述した請求項4 記載の発明と同じ作用効果を奏する。また加えて、支持部材に設けられる軸受保持用の保持部はロータから離れず、大きな肉厚に形成されるので、軸受が確実に保持されるようになる。なお、この際、保持部はロータの回転中心寄り、すなわちロータの周速度が小さく、空気粘性抵抗がさほど問題とならない位置に設けられるから、時計の持続時間が短くなるように作用することはない。
【0030】
請求項6 記載の電子制御式機械時計では、前記ロータの軸方向の一端は、前記機械的エネルギー伝達手段を支持する部品とは別体で、かつブリッジ形状または片持ち式とされた支持部材で支持されていることを特徴とする。
このような構成では、ロータを支持する支持部材を機械的エネルギー伝達手段支持用の部品とは別体に設けるため、このロータ支持部材を面状ではなく、比較的棒状に近い構造のブリッジ形状あるいは片持ち式に設けることができる。従って、ロータを確実に支持しつつ、ロータに対して軸方向に近接対向する対向部品をギャップh 以上確実に離すことができるうえ、支持部材による空気粘性抵抗の上昇も生じない。
【0031】
請求項7 記載の電子制御式機械時計では、前記機械エネルギー伝達手段は複数の番車から構成された輪列であり、前記ロータと当該ロータに噛み合う前記機械的エネルギー伝達手段の番車との軸方向のギャップh ′は、前記ギャップh よりも小さいことを特徴とする。
このような場合には、ギャップh ′をギャップh よりも小さく設定することで時計の厚みが小さくなり、時計の薄型化が促進される。なお、この際には、番車とロータ(後述のロータ慣性板やロータ体)との重なり合う部位は、互いの噛み合いによる回転によって同方向に向かうため、その重なり合う部位での相対速度がさほど大きくならず、ギャップh は、両部品間で生じる空気粘性抵抗によってロータに噛み合う番車やロータに振れが生じても互いに接触しない程度に設定しておけば、実際上は問題がない。ただし、h ′≧1 /2h とすれば、空気粘性抵抗の影響を十分に小さくできる。
【0032】
請求項8 記載の電子制御式機械時計では、前記ロータの最大径部材と前記対向部品との間に配置された近接部品を備え、この近接部品における前記ロータの最大径部材に対応した位置には、前記軸方向に貫通した開口部が設けられていることを特徴とする。
このような構成では、近接部品におけるロータの最大径部材と対向する位置に開口部が設けられているので、最大径部材と対向部品とのギャプh を確実に確保しながらも、ロータの負荷トルクに何ら影響を及ぼさずにロータの最大径部材および対向部品間に近接部品を配置することができ、時計内の部品配置スペースに対する配置効率を向上させることができる。
【0033】
請求項9 記載の電子制御式機械時計では、前記機械的エネルギー貯蔵手段、機械的エネルギー伝達手段、および発電機を含んで構成されたムーブメントの内部が減圧されていることを特徴とするものである。
ここで、「減圧されている」とは、真空を含むものをいう。
このような本発明においては、ムーブメント内の空気密度が低いので、前述来の空気粘性抵抗が問題とならず、時計の持続時間を格段に延ばすことが可能である。
【0034】
一方、請求項10 記載の電子制御式機械時計では、前記発電機のロータは径方向に延出した慣性板を備え、この慣性板が前記ロータの最大径部材であることを特徴とする。
【0035】
他方、請求項11 記載の電子制御式機械時計では、前記発電機のロータは径方向に延出しかつ複数のロータ磁石が周方向に配置されたロータ体を備え、このロータ体が前記ロータの最大径部材であることを特徴とする。
これらのように、本発明の電子制御式機械時計に用いられる発電機としては、慣性板を備えたロータで構成されるタイプ、およびロータ体を備えたロータで構成されるタイプの両方に適用できる。
【0036】
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の各実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0037】
〔第1 実施形態〕
図1 〜図2 は、本発明の第1 実施形態を示すものである。なお、各図において、発電機の構成の主要部が従来と異なる以外は、従来と同一なので、その同一部分もしくは相当部分に同一符号を付し、異なる部分、あるいは新たに説明を付加する部分にのみ異なる符号を付して説明する。
【0038】
各図において、電子制御式機械時計は、機械的エネルギー貯蔵手段としてのゼンマイ1a 、香箱歯車1b 、香箱真1c 、及び香箱蓋1d からなる香箱車1を備えている。ゼンマイ1a は、外端が香箱歯車1b 、内端が香箱真1c に固定される。筒状の香箱真1c は、地板2 に設けられた支持部材に挿通されてこの支持部材と香箱ネジ5 とによって上下方向(軸方向)のガタが設定され、角穴車4 と一体で回転する。そして、地板2 には、カレンダー板2a 、および円板状の文字板2b が取り付けられている。
【0039】
香箱歯車1b の回転は、機械的エネルギー伝達手段としての増速輪列となる各番車7 〜11 を介して合計126 ,000 倍に増速されている。この際、各番車7 〜11 は各々異なる軸線上に設けられて後述するコイル124 ,134 に重ならない位置に配置され、ゼンマイ1a からのトルク伝達経路を形成している。
【0040】
二番車7 と係合する筒かな7a には時刻表示を行う図示しない分針が、秒かな14a には時刻表示を行う図示しない秒針がそれぞれ固定されている。従って、二番車7 を1rph で、秒かな14a を1rpm で回転させるためには、ロータ12 は5rps で回転するように制御すればよい。このときの香箱歯車1b は、1 /7rph となる。
【0041】
また、トルク伝達経路から外れた秒かな14a は、香箱車1 とコイル124との間に設けられた指針抑制装置140 によってそのバックラッシュが詰められている。指針抑制装置140 は、テフロン処理や分子間結合被膜等で表面処理された一対の直線状の抑制ばね141 ,142 と、各抑制ばね141 ,142 の基端側を支持して二番受113 に固定されるヒゲ玉143 ,144 とで構成されている。
【0042】
この電子制御式機械時計は、ロータ12 およびコイルブロック121 ,131から構成される発電機120 を備えている。ロータ12 は、ロータかな12a 、ロータ磁石12b 、および円板状のロータ慣性板12c を備え、このロータ慣性板12c がロータ12 の最大径部材である。
【0043】
コイルブロック121 ,131 は、それぞれ同一形状の薄板を積層して構成したステータ(コア、磁心)123 ,133 にコイル124 ,134 を巻線して構成されたものである。ステータ123 ,133 は、ロータ12 に隣接して配置されるコアステータ部122 ,132 と、前記コイル124 ,134 が巻回されるコア巻線部123b 、133b と、互いに連結されるコア磁気導通部123a ,133a とが一体に形成されて構成されている。
【0044】
前記各ステータ123 ,133 つまり各コイル124 ,134 は互いに平行に配置されている。そして、前記ロータ12 は、コアステータ部122 ,132 側において、その中心軸が各コイル124 ,134 間に沿った境界線L 上に配置され、コアステータ部122 ,132 が前記境界線L に対して左右対称となるように構成されている。
【0045】
この際、各ステータ123 ,133 のロータ12 が配置されたステータ孔122a ,132a には、図2 に示すように、樹脂製のブッシュ60 が配置されている。そして、各ステータ123 ,133 の長手方向の中間部分つまりコアステータ部122 ,132 およびコア磁気導通部123a ,133a 間に樹脂製の偏心ピン55 を配置している。この偏心ピン55 を回すと、各ステータ123 ,133 のコアステータ部122 ,132 をブッシュ60 に当接させてその位置合わせを正確にかつ簡単に行うことができるとともに、コア磁気導通部123a ,133a の側面同士を確実に接触させることができる。
【0046】
各コイル124 ,134 の巻数は同数とされている。本実施形態において、巻数が同数とは、完全に同数の場合だけではなく、コイル全体からは無視できる程度の誤差、例えば数百ターン程度の違いまでをも含むものである。
【0047】
なお、各ステータ123 ,133 のコア磁気導通部123a ,133a は、その側面が当接されて互いに連結されている。また、コア磁気導通部123a,133a の下面は、各コア磁気導通部123a ,133a に跨って配置された図示しないヨークに接触されている。これにより、コア磁気導通部123a,133a では、各コア磁気導通部123a ,133a の側面部分を通る磁気導通経路と、コア磁気導通部123a ,133a の下面間に跨設された前記ヨークを通る磁気導通経路との2 つの磁気導通経路が形成され、ステータ123 ,133 は環状の磁気回路を形成している。各コイル124 ,134 は、ステータ123 ,133 のコア磁気導通部123a ,133a からコアステータ部122 ,132 に向かう方向に対して同方向に巻線されている。
【0048】
これらの各コイル124 ,134 の端部は、ステータ123 ,133 のコア磁気導通部123a ,133a 上に設けられた図示しないコイルリード基板に接続されている。
【0049】
このように構成された電子制御式機械時計を使用している場合、各コイル124 ,134 に外部磁界H (図1 )が加わると、外部磁界H は平行に配置された各コイル124 ,134 に対して同方向に加わるため、各コイル124 ,134 の巻線方向に対しては外部磁界H は互いに逆方向に加わることになる。このため、外部磁界H によって各コイル124 ,134 で発生する起電圧は互いに打ち消し合うように働くため、その影響を軽減できる。
【0050】
また、直列に接続された各コイル124 ,134 は、図3 に示すように、起電力発生用、ロータ12 の回転検出用、および発電機120 の回転制御用に兼用されている。すなわち、IC からなる電子回路240 をコイル124 ,134 の起電力で駆動し、回転検出および回転制御を行っている。電子回路240 は、水晶振動子241 を駆動する発振回路242 と、発振回路242 に生じたクロック信号を基に時刻信号となる基準周波数信号を生成する分周回路243 と、前記ロータ12 の回転を検出する検出回路244 と、検出回路244 で得られた回転周期と基準周波数信号とを比較してその差分を出力する比較回路245 と、その差分に応じて前記発電機120 に制動用の制御信号を送る制御回路246 とから構成されている。なお、水晶振動子241 の代わりに各種の基準振動源等を用いてクロック信号を発生させてもよい。
【0051】
各回路242 〜246 は、直列に接続された各コイル124 ,134 で生成した電力により駆動されるもので、発電機120 のロータ12 が輪列からの回転を受けて一方向に回転すると、各コイル124 ,134 には交流出力が生じ、この出力をダイオード247 、コンデンサ248 からなる昇圧充電回路により昇圧整流し、この整流された直流電流が蓄電用のコンデンサ250 に充電され、このコンデンサ250 により制御回路(電子回路)240 を駆動する。
【0052】
また、各コイル124 ,134 の交流出力の一部は、ロータ12 の回転周期の検出信号として取り出され、前記検出回路244 に入力される。各コイル124,134 から出力された出力波形は、一回転周期毎に正確な正弦波を描く。従って検出回路244 は、この信号をA /D 変換して時系列的なパルス信号とし、この検出信号を比較回路245 により基準周波数信号と比較し、制御回路246 ではその差分に応じた制御信号を各コイル124 ,134 のブレーキ回路として機能するショート(閉ループ)回路249 に送る。
【0053】
そして、制御回路246 からの制御信号に基づいて、ショート回路249 は各コイル124 ,134 の両端を短絡してショートブレーキをかけてロータ12 の回転周期を調速する。
【0054】
なお、前記ショート回路249 は、図4 に示すように、互いに逆方向に電流を通す一対のダイオード251 と、これらの各ダイオード251 に直列に接続されたスイッチSW と、各スイッチSW に並列に接続された寄生ダイオード250 とからなる両方向スイッチにより構成されている。これにより、各コイル124 ,134 の交流出力の全波を利用してブレーキ制御を行うことができ、ブレーキ量を大きくとれるようにしている。
【0055】
次に、図5 に基づいて、本実施形態の最も特徴的な構成について以下に説明する。
【0056】
本実施形態の電子制御式機械時計においては、ロータ慣性板12c とこれに対して軸方向に近接対向する対向部品としてのステータ123 ,133 (厳密にはコアステータ部122 ,132 )との間には、空気粘性抵抗が生じる。この際、ロータ慣性板12c とコアステータ部122 ,132 との間の空気の流れはクエット(Couette )流と見なすことができるので、空気粘性抵抗に相当する空気層のせん断応力をτ、空気の粘度をμ、ロータ12 の回転速度をU 、ロータ慣性板12c とコアステータ部122 ,132 とのギャップをh とすれば、せん断応力τは以下の(1 )式で与えられる。
【0057】
【数3】
Figure 2004004005
【0058】
また、このせん断応力τ(空気粘性抵抗)による負荷トルクをT 、ロータ慣性板12c とコアステータ部122 ,132 とが重なる部分の面積をS 、ロータ12 の回転中心からロータ慣性板12c とコアステータ部122 ,132 とが平面的に重なる部分までの距離をr とすれば、負荷トルクT は、コアステータ部122 ,132 の平面形状によっても若干異なるが、概ね以下の(2 )式で与えられる。
【0059】
【数4】
Figure 2004004005
【0060】
さらに、ロータ12 の角速度をω、回転周波数をf 、円周率をπとすれば、回転速度U =r ・ω=r ・2 πf となり、面積S を前記ロータ慣性板12c とコアステータ部122 ,132 とが平面的に重なる部分までの距離r 1からdr だけ径方向に大きくなった微少面積とすれば、ロータ12 とコアステータ部122 ,132 とが重なり合う部分全体での負荷トルクT rz は以下の(3 )式で与えられる。ここで、r  は、図5 に示すように、ロータ12 の回転中心から両部品が重なる部分の外縁までの距離である。
【0061】
【数5】
Figure 2004004005
【0062】
従って、前記(3 )式から、ギャップh は以下の(4 )式で表せる。
【0063】
【数6】
Figure 2004004005
【0064】
そして、本実施形態のように、機械的エネルギー貯蔵手段としてゼンマイ1aを用いた場合、ゼンマイ1a が解けきる持続末期での出力トルクは、最大出力トルクの1 /2 程度になってしまう。また、電子制御式機械時計においては、磁気的損失、摩擦損失、および制御回路でのエネルギー損失が全体のエネルギー損失の大部分を占める。このため、ロータ12 に伝えられるゼンマイ1a の最大出力トルクをT rzmax とした場合、ロータ12 とコアステータ部122 ,132との間の空気粘性抵抗による負荷トルクT rz は、図14 のグラフに基づいて前述したように、最大出力トルクT rzmax の1 /10 以下(T =1 /10 ・Trzmax )、好ましくは1 /20 〜1 /40 に設定する必要がある。
【0065】
従って、図5 に示すギャップh は、係数をK とすれば、以下の(5 )、(6 )式で決定されることになり、こうすることで空気粘性抵抗を小さくしてその分の負荷トルクT rz を抑え、ゼンマイ1a のエネルギーロスを小さくすることが可能である。
【0066】
【数7】
Figure 2004004005
【0067】
【数8】
Figure 2004004005
【0068】
また、図5 に示すように、ロータ慣性板12c と六番車11 の歯車との間のギャップh ′は、ロータ慣性板12c とステータ123 ,133 との間のギャップh よりも小さく設定され(h ′<h )、時計の薄型化が図られている。
【0069】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
1 )本実施形態の電子制御式機械時計では、ロータ慣性板12c とステータ123 ,133 との間のギャップh は、係数K を1 /10 以下とすることにより、これらの部品間の空気粘性抵抗による負荷トルクT rz がロータ12でのゼンマイ1a の最大出力トルクT rzmax の1 /10 以下となるように設定されているので、ゼンマイ1a のエネルギーロスを小さく抑えることができ、時計の持続時間を延ばすことができる。
【0070】
2 )係数K を1 /20 〜1 /40 以下に設定すれば、ギャップh をより大きくしてロータ12 での負荷トルクT rz を一層小さくでき、時計の持続時間をさらに延ばすことができるうえ、ギャップh が必要以上に大きくなるのを防止でき、時計が極端に厚くなるの防いで薄型化を阻害する心配がない。
【0071】
3 )ロータ慣性板12c とこれに噛み合う六番車11 との間のギャップh ′がギャップh よりも小さく設定されているため、時計の厚みを小さくして薄型化を促進できる。また、この際には、六番車11 とロータ慣性板12c との重なり合う部位は、互いの噛み合いによる回転によって同方向に向かうため、その重なり合う部位での相対速度がさほど大きくならず、両部品間で生じる空気粘性抵抗はギャップh ′が小さくても問題になることはない。
【0072】
4 )ステータ123 ,133 はそれぞれ独立した部品で形成され、構造上ステータ孔の片持ち支持などによる脆弱部分や外ノッチのように変形しやすい部分がないため、取扱いが簡単になり、各工程でのハンドリング性を良好にでき、歩留り低下も防止できる。
【0073】
5 )ステータ123 ,133 が同一形状であるため、同一部品を表裏にして巻線でき、部品を共用でき、部品数を削減できる。このため、製造コストや部品コストを低減でき、取り扱いも容易にできる。
【0074】
6 )同一形状のステータ123 ,133 を左右対称に配置し、かつ各ステータ123 ,133 のコイル124 ,134 の巻回数が同じであるため、時計の外部に発生するAC ノイズ等による磁束は二本のコイル122 ,132 内を同数流れ、これによって外部ノイズの影響をキャンセルすることができ、ノイズに強い電子制御式機械時計を形成できる。
【0075】
7 )二〜六番車7 〜11 を各々異なった軸線上に配置することでそれら番車7〜11 の配置設計の自由度を高めることが可能であるから、秒かな14a をトルク伝達経路から外すなどして、各番車7 〜11 をロータ12 に向けて迂遠させて配置することにより、コイル124 ,134 と重ならない位置に配置することができる。従って、コイル124 ,134 の厚み方向を大きくするようにして巻数を稼げるため、コイル124 ,134 の平面方向の長さ、すなわち磁路長を短くでき、鉄損を減少させてゼンマイ1a の持続時間を延ばすことができる。
【0076】
8 )さらに、ロータ12 を前記境界線L 上に配置しかつ各ステータ123 ,133 を左右対称に構成しているので、コアステータ部122 ,132 部分の磁路も短くでき、この点でも磁路長を短くできて鉄損を減少させることができる。
【0077】
9 )コア磁気導通部123a ,133a 部分で2 つの磁気導通経路を形成しているので、磁気抵抗を小さくかつ安定させることができる。そして、磁気抵抗が安定することで、起電圧を安定化でき、発電やブレーキも安定化できる。また、漏れ磁束を低減でき、金属部品での渦損失を削減することができる。
【0078】
10 )偏心ピン55 およびブッシュ60 を設けたので、ロータ12 をステータ孔53 内に配置した状態でステータ123 ,133 の位置合わせを行うことができ、例えば製品出荷直前においてロータ12 に対するステータ122 ,123 の最適位置の設定を簡単に行うことができ、位置精度をより一層向上させることができる。
【0079】
11 )偏心ピン55 を各ステータ123 ,133 よりも柔らかい樹脂部品で構成したので、偏心ピン55 による各ステータ123 ,133 の破損も防止できる。
【0080】
12 )偏心ピン55 を、コアステータ部122 ,132 およびコア磁気導通部123a ,133a 間に配置したので、各ステータ123 ,133 毎に1 つの偏心ピン55 でコアステータ部122 ,132 の位置合わせおよびコア磁気導通部123a ,133a の当接状態を調整することができる。これにより、偏心ピン55 の数を少なくできて構成を簡易にでき、コストも低減できる。
【0081】
13 )外部磁界H による磁気ノイズを軽減できるため、電子制御式機械時計の文字板2b 部分などムーブメント部品に耐磁板を設けたり、外装部品に耐磁効果のある材料を使用する必要がなくなる。このため、コストを軽減できるとともに、耐磁板等が不要になる分、ムーブメントの小型化や薄型化を実現でき、ひいては各部品の配置などが外装部品に制限されないためにデザインの自由度が高まり、意匠性や製造効率などに優れた電子制御式機械時計を提供できる。
【0082】
14 )秒かな14a がトルク伝達経路から外れていることにより、秒かな14a には香箱車1 と重なるトルク伝達用の歯車等が不要であるから、その分ゼンマイ1a の幅(香箱真1c の軸線と平行方向の大きさ)を大きくでき、時計全体の厚さを維持しつつゼンマイ1a の持続時間をさらに延ばすことができる。
【0083】
〔第2 実施形態〕
図6 に基づき、本発明の第2 実施形態について説明する。なお、本実施形態において、前記第1 実施形態と同様な部品等には同一符号を付してそれらの説明を省略するとともに、以下には第1 実施形態との相違点について説明する。
【0084】
本実施形態では、ロータ12 として、ブラシレスモータと同様な構造(フラットトルクモータタイプ)のものが用いられている。すなわち、ロータ12 は、複数のロータ磁石12b を円板状のバックヨーク12d 上で回転軸周りに配置したロータ体12e を備え、このロータ体12e を軸方向に対向配置した構成になっている。各ロータ体12e において、隣り合うロータ磁石12b は極の方向が交互に異なるように配置されている。対向部品としての基板223 は、各ロータ体12e 間に配置されており、各ロータ磁石12b に対応した位置には周方向に配置された複数のコイル124 が設けられている。このロータ12 では、円板状のロータ体12e が慣性板としても作用するため、第1 実施形態のようなロータ慣性板12c は設けられていない。
【0085】
すなわち、本実施形態では、このロータ体12e が第1 実施形態のロータ慣性板12c と同様、対向部品とのギャップh を規定する際の基準となる部品であって、ロータ12 の最大径部材になっている。このため、ロータ体12e (ロータ磁石12b )とこれに近接対向する基板223 との間のギャップh は、前述した(5 )、(6 )式のように設定されている。また、ロータ体12eと六番車11との間のギャップh ′もギャップh より小さく設定されている。
【0086】
従って、本実施形態においても、前述した1 )〜3 )の効果を同様に得ることができる。
【0087】
なお、図中下側のロータ体12e と地板2 との間の距離、および上側のロータ体12e と輪列受3 との間の距離もまた、前述した(5 )、(6 )式のように設定されており、これら地板2 、輪列受3 による空気粘性抵抗の影響を受けずにロータ12 を回転させることが可能である。
【0088】
〔第3 実施形態〕
本発明の第3 実施形態としての電子制御式機械時計は、図示を省略するが、ゼンマイ、各番車で形成された輪列、および発電機を含んで構成されらたムーブメントの内部が減圧されいるものである。
【0089】
このような電子制御式機械時計は、例えば気密性を有する透明な箱内を減圧しておき、この箱内に手を差し入れるなどしてムーブメントの組立や、ケースへのムーブメントの組込、およびケースへの裏蓋の取付を行うことで得ることが可能である。
【0090】
このような実施形態では、ムーブメント内の空気密度が低いので、前述来の空気粘性抵抗を低減でき、時計の持続時間を格段に延ばすことができる。
【0091】
また、空気粘性抵抗を低減できることにより、ロータとステータとのギャップをより小さくするなどして、時計の薄型化を一層促進できるという効果もある。
【0092】
〔第4 実施形態〕
図7 、図8 には、本発明の第4 実施形態に係る電子制御式機械時計の要部が示されている。
【0093】
本実施形態の電子制御式機械時計では、ロータ慣性板12c が各ステータ123 ,133 と地板2 との間に介在するようにロータ12 が構成されている。
この際、ロータ慣性板12c に近接した近接部品としての地板2 には、ロータ慣性板12c と対向する部位に軸方向に貫通した開口部2c が設けられている。開口部2c の中央にはロータ12 の図7 中の下端のホゾ12f を受ける組軸受31 用の保持部2d が設けられ、この保持部2d は隣接する六番車11 の組軸受32 用に設けられた保持部2e と連続している。このような構成では、地板2 に開口部2c が設けられていることにより、ロータ慣性板12cの地板2 側の略全面は、各保持部2d ,2e およびこれらの連続部分を除き、開口部2c の奥側にあるカレンダー板2a と対向することになる。そして、保持部2d ,2e およびこれらの連続部分はロータ慣性板12c と平面的に重なる面積が非常に小さいため、ロータ慣性板12c に近接していても、負荷トルクT rz を上昇させることはない。
【0094】
従って、本実施形態では、カレンダー板2a が本発明に係る対向部品であり、ロータ慣性板12c とカレンダー板2a との間のギャップh や、ロータ慣性板12c とステータ123 ,133 との間のギャップh 等は、それぞれ第1 実施形態で説明した(5 )、(6 )式に基づいて設定されている(以下の各実施形態での図面に記載のギャップh も同様である)。
【0095】
本実施形態によれば、ロータ慣性板12c と最も近接した地板2 においては、ロータ慣性板12c と対向する対向部位に開口部2c が設けられているので、ロータ慣性板12c に対して実質的に対向する部品はカレンダー板2a となる。従って、ロータ慣性板12c とカレンダー板2a とのギャップh を確実に確保すれば、前述した1 )の効果を得ることができる。
【0096】
この際、開口部2c の面積は、この開口部2c がない場合に地板2 とロータ慣性板12c とが平面的に重なる面積の1 /2 以上、好ましくは2 /3 以上であれば、前記効果が著しい。
【0097】
また、地板2 全体をロータ12 の負荷トルクT rz を何ら上昇させることなく当該ロータ12 にギャップh よりも近接配置でき、時計内の部品配置スペースに対する配置効率を向上させて時計の薄型化を促進できるという効果がある。
【0098】
なお、本実施形態では、開口部2c の中央の保持部2d が六番車11 の保持部2e と連続していたが、図7 の平面図である図8 中に一点鎖線で示すように、保持部2d と開口部2c の別の内周部分とを連続させる連続部2f 等を設けてもよく、保持部2d を開口部2c のどの部分に連続させるかや、何カ所で連続させるかなどは、地板2 に要求される強度等を勘案して任意に決められてよい。しかし、本実施形態のように、六番車11 側の保持部2e が保持部2d 側に膨出して設けられている場合には、これらの保持部2d ,2e 間を連続させることが、ロータ慣性板12c との平面的な重なり部分をより少なくできる。
【0099】
〔第5 実施形態〕
図9 に示す第5 実施形態は、フラットトルクモータタイプのロータ12 を有する電子制御式機械時計の地板2 に、前述した第4 実施形態と略同様な開口部2cを設けた構成である。ただし、図9 において、保持部2d と開口部2cの内周との連続部分は存在するが図示されていない。
【0100】
このような電子制御式機械時計においても、ロータ12 (下側のロータ体12e )と最も近接する部品は地板2 であるが、この地板2 にも開口部2c が設けられているので、下側のロータ体12e と実質的に対向するのは、このロータ体12e から大きく離れたカレンダー板2a であり、カレンダー板2a が本発明に係る対向部品である。
【0101】
このような本実施形態でも、前記第4 実施形態と同様な効果を奏することができる。すなわち、ロータ12 の空気粘性抵抗による負荷トルクT rz を小さくできるとともに、地板2 全体をロータ体12e に近づけることができ、時計の薄型化を図ることができる。
【0102】
この際、開口部2c の面積も、第4 実施形態と同様に、この開口部2c がない場合に地板2 とロータ体12e とが平面的に重なる面積の1 /2 以上、好ましくは2 /3 以上であれば、前記効果が著しい。ことに、開口部2c の内周縁がロータ体12e の外周縁より大きな径で形成されていると、ロータ体12e の最外周の回転速度が最も大きいだけに、空気粘性抵抗を減じる効果は大きくなる。
【0103】
〔第6 実施形態〕
図10 、11 に示す第6 実施形態では、図示しない二番車から六番車11 で構成される輪列が地板2 と輪列受3 とで支持されているのに対し、ロータ12 は、一端側が地板2 で支持され、他端側が輪列受3 とは別体の支持部材40 で支持されている。
支持部材40 は、地板2 に対してロータ12 の径方向の両側に位置するように立設されるピン等の一対の支柱部材41 (図中の一点鎖線)間にブリッジ形状(支柱部材41 を含めた断面門形状)に跨設されてネジ止めされている。支持部材40 の長手方向の略中央には組軸受33 が保持され、この組軸受33にロータ12 のホゾ12g が係合している。支持部材40 は、幅寸法T がロータ慣性板12c の径寸法D の1 /2 以下に設定されており、ロータ12を確実に支持できる強度を有しながらも、ロータ慣性板12c と重なる面積を小さくしている。この際、この重なる面積は、好ましくは、ロータ慣性板12c全体が重なる場合の面積の1 /2 以下であり、より好ましくは1 /3 以下である。
【0104】
また、輪列受3 においては、六番車11 用の組軸受34 を保持するための保持部3a がロータ慣性板12c と平面的に重なるように膨出している。ただし、この保持部3a の大きさも、組軸受34 を確実に保持し、かつ膨出量が最小限になるように設けられており、ロータ慣性板12c と重なる面積が極力小さくなるように設定されている。
【0105】
このような本実施形態によれば、ロータ12 を支持する支持部材40 を輪列受3 とは別体に設けるため、この支持部材40 を大きな面状部分を有しない部品にできる。従って、ロータ慣性板12c に対して軸方向に近接対向する対向部品を、ロータ慣性板12c から大きく離れた裏蓋43 にでき、ギャップh を確実に確保できる。
【0106】
なお、本実施形態では、支持部材40 は、支柱部材41 間にブリッジ形状に跨され、これによって支柱部材41 を含めた断面門形形状に設けられていたが、この他、地板2 の切削加工時に、筒状の掘り残し部分を設け、この筒状部分の開口側に支柱部材40 を架け渡す等して断面門形状に設けてもよい。しかし、このような場合には、ロータ慣性板12c の外周端面と周方向に連続した筒状部分の内面との間で空気粘性抵抗が大きくなる可能性があるので、ピンなどの支柱部材41 を用いて断面門形状に形成するのが好ましい。
【0107】
また、本実施形態では、支持部材40 は、その両端が支柱部材41 に固定されたブリッジ状であったが、例えば、そのような支柱部材41 を一本のみ立設し、この支柱部材41 に支持部材40 の一端をビス止めして構成してもよく、このような場合には、棒状部品が支柱部材41 に片持ち式で固定されるようになる。
【0108】
また、ロータ慣性板が地板側に近接するロータでは、ロータの一端側を輪列受で支持し、輪列受に固定した支持部材でその他端側を支持してもよい。
さらに、ロータ慣性板を備えたロータの他、フラットトルクモータタイプのロータを本実施形態のような支持部材で支持してもよい。
【0109】
〔第7 実施形態〕
図12 に示す第7 実施形態では、ロータ慣性板12c と最も近接対向した輪列受3 (支持部材)の厚み寸法が組軸受33 の厚み寸法よりも小さく、輪列受3 のロータ慣性板12c との対向面が組軸受33 の対向面よりもロータ慣性板12cから軸方向に離れている。
組軸受33 において、外周を形成している外周部材33a は、輪列受3 に接触する部分の肉厚が輪列受3 の厚み寸法に応じて同様に薄くされているが、中央側が従来と同様に厚くなっている。このため、外周部材33a 内の部品の大きさや形状を変える必要がなく、ロータ12 とホゾ12g との係合状態を良好に維持することが可能になっている。
【0110】
本実施形態では、ロータ12 の回転中心に近い組軸受33 よりも、回転中心から離れた(径方向に離れているの意)位置にある輪列受3 が、ロータ慣性板12c に対して軸方向にも大きく離れているので、組軸受33 とロータ12 のホゾ12g との係合状態を何ら変えることなく良好に維持しながらも、輪列受3 とロータ慣性板12c の外周側とのギャップh を大きできる。このため、ロータ慣性板12c の周速度が大きくなる外周側、すなわち空気粘性抵抗が大きく影響する部位において、当該空気粘性抵抗を確実に減少させることができ、時計の持続時間を延ばすことができる。
【0111】
前述の中央が厚くなった部分の面積は小さい方がよいが、回転中心側に設けられているので、ロータ慣性板12c の平面視での投影面積(ロータ慣性板12cに開口部分がある場合、この開口部分の投影部分も投影面積に含める)の1 /3以下であれば、空気粘性抵抗を減少させる効果は大きい。
【0112】
なお、組軸受33 の外周部材33a の外形形状は断面逆凸状である必要はなく、図中に一点鎖線で示すように、断面矩形状の通常タイプであってもよい。
【0113】
また、本実施形態では、ロータ慣性板12c に最も近接対向した支持部材として輪列受3 の場合を示したが、ロータ慣性板12c が地板2 側に近接して設けられるような場合には、この地板2 を図12 に示す組軸受31 よりもロータ慣性板12c から離せばよい。
さらに、このような構成の地板2 や輪列受3 をフラットトルクモータタイプのロータを有した電子制御式機械時計に適用しても同様の効果が得られる。
【0114】
〔第8 実施形態〕
図13 に示す第8 実施形態では、ロータ12 の図中下側のホゾ12f を支持し、かつロータ12 (下側のロータ体12e )に最も近接対向して固定された支持部材としての地板2 は、ホゾ12f を受ける組軸受31 をその厚み寸法の全域で保持するための保持部2d を有している。この保持部2d の周辺は、当該保持部2 よりもロータ体12e から離れるように窪んだ凹状部2g となっている。
【0115】
このような本実施形態によれば、地板2 には、組軸受31 をその厚み寸法の全)域で保持する保持部2d が設けられているから、組軸受31 の保持強度を確実に確保できる。この際、厚みの大きい保持部2d は、ロータ12 のホゾ12f 寄り、すなわちロータ体12e の周速度が小さく、空気粘性抵抗がさほど問題とならない位置に設けられるから、時計の持続時間が短くなるように作用することはない。むしろ、保持部2d の周囲に設けられた凹状部2g により、地板2 をロータ体12e の外周側から確実に離すことができ、ギャップh を確保できる。
【0116】
なお、上側のロータ体12e が輪列受3 と最も近接対向している場合には、図中の一点鎖線で示すように、この輪列受3 に凹状部3b を設ければよい。この際、各凹状部2g ,3b の面積は、ロータ体12e に対して1 /2 以上、好ましくは2 /3 以上であれば、空気粘性抵抗が著しく減少する。
【0117】
また、このような凹状部2g ,3b を有した地板2 や輪列受3 を、ロータ慣性板付のロータを備えた電子制御式機械時計に適用しても同様な効果を得ることができる。
【0118】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記第1 実施形態では、発電機120 周りの構造以外にも電子制御式機械時計にかかわる他の構造が示されているが、これら他の箇所に関する構造や構成部品等は第1 実施形態の構造や形状に限定されるものではなく、その実施にあたって任意に決められてよい。
【0119】
また、第1 実施形態では、ロータ12 のロータ慣性板12c がステータ123,133 と輪列受3 との間に配置されていたが、図7 に示すように、ステータと地板との間に配置されていてもよく、このような場合には、ロータ慣性板とステータとの間、あるいはロータ慣性板と地板との間の各ギャップを前記(5 )、(6 )式に基づいて設定すればよい。
さらに、前記第1 、第2 実施形態では、ギャップh ′がギャップh よりも小さく設定されていたが、これに限らず、ギャップh ′をギャップh よりも大きく設定した場合でも本発明に含まれる。しかし、各実施形態のようにすることにより、空気粘性抵抗の影響を考慮することなく時計を薄型化できるので好ましい。
【0120】
そして、本発明に係るロータ慣性板を有するロータとしては、ロータ磁石が無いタイプも含まれる。このような場合には、ロータ磁石が例えばロータと噛み合う六番車等に設けられ、この六番車を含んで発電機が構成されることになる。
【0121】
また、本発明の最大径部材としてのロータ慣性板やロータ体は、地板などの対向部品との対向面が平面である必要はなく、このような対向面に開口部を設けてもよい。このような場合には、ロータ側の開口部の空気はロータと共に回転するため、ロータ側に開口部を設けても空気粘性の低減に対する効果は薄いが、開口部を設けることでロータの余分な重量が減少するので、軸受での摩擦損失を抑えることができる。特に開口部をロータの中心側に設けると、重量を抑えながらロータの慣性を大きくでき、効果的である。そして、この際の開口部の面積は、ロータ慣性板やロータ体の面積の1 /2 以上、好ましくは2 /3 以上であると、その効果が顕著である。
【0122】
本発明に係る対向部品としては、地板、輪列受、裏蓋等に限定されず、例えば、輪列を構成する番車のうち、ロータ慣性板やロータ体と平面的に重なり、かつこれらに比べて回転速度が著しく遅い番車も、ロータ慣性板やロータ体からすれば実質的に静止しているのと同じであるから、対向部品として見なすことができる。また、任意の番車を蹴飛ばしてロータを始動させるような蹴飛ばし機構が設けられている時計では、この蹴飛ばし機構のレバーが当該機構を作動させることで一時的にロータ慣性板やロータ体と平面的に重なって近接対向する場合がある。従って、このようなレバーも空気粘性抵抗の関係でロータの負荷トルクに影響を及ぼす時には対向部品と見なしてよい。
【0123】
前記各実施形態では、機械エネルギ貯蔵手段としてゼンマイ1a が用いられていたが、機械エネルギ貯蔵手段としてはゼンマイに限定されず、ゴム、スプリング、重錘でもよく、また、電子制御式機械時計を腕時計としてではなく、大がかりな時計として製作する場合には、圧縮空気などの流体を機械エネルギ貯蔵手段としてもよい。
【0124】
また、前記請求項6 以外の電子制御式機械時計においては、機械的エネルギー伝達手段として、輪列以外の例えばタイミングベルトやチェーンなど、無端縁状の部品を用いてもよい。
【0125】
〔第1 実施例〕
本発明の第1 実施例として、先ず、第1 実施形態に基づき、ギャップh を以下の表1 に示すように変化させた時の空気粘性抵抗による負荷トルクT  を、前記(3 )式による計算および実測によって調べた。表1 および図14にギャップh と負荷トルクT  との関係を示す。なお、この負荷トルクT はロータ12 での負荷トルクT rz を二番車7 で生じる負荷トルクに換算したものである。(6 )式にその換算式を示す。ここで、n はロータ12から二番車7 までの増速比であり、本実施例では36000 、x はロータ12 から二番車7 までの一段あたりの伝達効率であり、本実施例では0 .9 、y はロータ12 から二番車7 までの噛み合い段数であり、本実施例では5 である。また、表1 において、下段の表は、上段の表の値を国際単位系に変換したものである。
【0126】
本実施例における諸条件は以下の通りである。
【0127】
【表1】
Figure 2004004005
【0128】
【数9】
Figure 2004004005
【0129】
空気の粘度μ:1.853Pa・s(0.189×10−8gfs/mmを国際単位系に変換した値である)
回転周波数f :10Hz
距離r    :1 .5mm
距離r    :3 .0mm
ゼンマイ   :ロータに伝えられるゼンマイの最大出力トルクT rzmaxxが0.0137×10−6N・m(1.4mgmm(二番車換算で8.5gcm)を国際単位系に変換した値である)のものを用いた。
【0130】
ロータ磁石  :磁気による負荷トルクを生じさせないために、ロータ  磁石の代わりとして、同等の形状および重量を有する  磁気のない部材を用いた。
【0131】
本実施例によれば、表1 および図14 のグラフから明らかなように、実測値から計算値を減じた値が略一定であるため、この値が輪列中の機械摩擦やほぞ油の粘性抵抗など、空気粘性抵抗以外の抵抗によるものであると解される。
【0132】
従って、(3 )式によって求められる負荷トルクT rz を略間違いなく空気粘性抵抗によるものと判断できる。
【0133】
また、本実施例では、最大出力トルクT rzmax が0 .0137 ×10−6N ・m (1 .4mgmm (二番車換算で8 .5gcm )を国際単位系に変換した値である)であるから、前記(5 )、(6 )式によれば、ギャップh が0 .102mm 以上となるように係数K を設定すればよいことになる。このことに関し、図14 のグラフによれば、ギャップh が0 .102mm よりも小さいと、二番車換算の負荷トルクT  が83 .36 ×10 −6 N ・m (0 .85gcm (ロータ換算にして0 .14mgmm )を国際単位系に変換した値である)を越えてしまって急激に増大し、ロータ12 での空気粘性抵抗による負荷トルクT rz が最大出力トルクT rzmax の1 /10 を越えてしまうから、空気粘性抵抗が時計の持続時間に悪影響を及ぼすことがわかる。
【0134】
反対に、ギャップh が0 .102mm 以上であれば、負荷トルクT  がほぼ横ばいとなって十分に小さくなるため、空気粘性抵抗が持続時間に与える影響を無視できると判断できる。
従って、この実施例により、ギャップh を前記(5 )、(6 )式の通りに設定することの有効性が認められる。
【0135】
〔第2 実施例〕
続いて、第2 実施例について以下に説明する。本実施例では、第1 実施形態の前記(5 )、(6 )式に基づいて設定されるギャップh と、時計の持続時間と、ムーブメントの厚みとの関係を調べた。
【0136】
本実施例における諸条件は以下の通りである。
【0137】
空気の粘度μ:1.853Pa・s(0.189×10−8gfs/mmを国際単位系に変換した値である)
回転周波数f:8Hz
距離    :1 .5mm
距離    :3 .0mm
ゼンマイ   :蓄積可能エネルギ→1 .106 μJ
最大出力トルク→6.77N・m (69gcm (ロータに伝えられる最大出力トルクT rzmaxが1.4mgmm(二車換算で8.5gcm))を国際単位系に変換した値である)
有効巻数→5 .72 巻
有効巻数解けた後の出力トルク→2.94N・m(30gcm を国際単位系に変換した値である)
以上の条件下で、香箱車から二番車の増速比を7 とした場合、旧来の機械式時計並の40 時間の持続時間を持つ電子制御式機械時計のギャップh は、前記(5)、(6 )式より、最小で0 .095mm となり、ムーブメント全体の厚みは、図15 に示す通り3 .0mm 、およびムーブメントの各部の厚みも図15 に示す通りである。そして、本実施例では、ギャップh をさらに大きく変化させた時の持続時間の変化、およびムーブメントの厚みの変化を調べた。
【0138】
ただし、香箱車から二番車の増速比は、空気粘性抵抗による負荷トルクの変化に応じて適切な値を選んだ。また、図15 において、ギャップh ≧0 .55mmの場合には、輪列受3 とロータ慣性板12c との間のギャップh ″もギャップhと等しくなるように変化させた。
【0139】
表2 、および図16 にその結果を示す。
【0140】
この表2 および図16 のグラフから明らかなように、ギャップh を大きくすれば、これに伴って持続時間も延びることを確認でき、前記(5 )、(6 )式に基づいてギャップh を設定することの有効性を確認できた。なお、持続時間の延び率は、ギャップh が0 .3mm を越えたあたりから著しく小さくなるため、ギャップh を必要以上に大きくしても、ムーブメントの厚みが厚くなるのに対しての持続時間を延ばすメリットが減少する。このため、ギャップh を0 .3mm 程度にすることが、ムーブメントの厚みをさほど厚くせずに、持続時間を効果的に延ばせる(48 .4 時間)といえる。
【0141】
ただし、ギャップh は、0 .3 ±0 .2mm 程度であれば、持続時間やムーブメント厚を勘案しても十分に実用に供される。
【0142】
従って、この0 .3mm は、当初の持続時間(40 時間)の時のギャップh (0 .095mm )の約3 倍であるから、前記(5 )式から逆算すれば、T rzmax の1 /30 (約30 %)となるようにギャップh を決定するのが効果的である。
【0143】
そして、その効果としては、持続時間が40 時間から48 時間に延びれば、例えば手巻き式の電子制御式機械時計では、二日毎の同じ時刻にゼンマイを巻き上げればよいうえ、巻上げ時には時刻合わせが不要なので、持続時間が40 時間の場合に比べて使い勝手を良好にできる。これにより、前記請求項2 の発明が有効であるといえる。
【0144】
【表2】
Figure 2004004005
【0145】
【産業上の利用可能性】
以上に述べたように、本発明によれば、部品間の空気粘性抵抗による負荷トルクが十分小さくなるように係数K 、ひいては部品間のギャップh が設定されるているので、ゼンマイのエネルギーロスを小さく抑えることができ、時計の持続時間を延ばすことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1 実施形態に係る電子制御式機械時計を示す平面図である。
【図2】前記第1 実施形態を示す断面図である。
【図3】前記第1 実施形態における発電機と電子回路との接続形態を示す回路ブロック図である。
【図4】図3 のショート回路を示す回路図である。
【図5】本発明の実施形態の要部を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明の第2 実施形態に係る電子制御式機械時計の要部を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の第4 実施形態に係る電子制御式機械時計の要部を示す断面図である。
【図8】前記第4 実施形態を示す平面図である。
【図9】本発明の第5 実施形態に係る電子制御式機械時計の要部を示す断面図である。
【図10】本発明の第6 実施形態に係る電子制御式機械時計の要部を示す平面図である。
【図11】前記第6 実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明の第7 実施形態に係る電子制御式機械時計の要部を示す断面図である。
【図13】本発明の第8 実施形態に係る電子制御式機械時計の要部を示す断面図である。
【図14】本発明の第1 実施例を示すグラフである。
【図15】本発明の第2 実施例を示す断面図である。
【図16】前記第2 実施例を示すグラフである。
【図17】従来技術を示す平面図である。
【図18】従来技術を示す断面図である。

Claims (11)

  1. 機械的エネルギー貯蔵手段をエネルギー源として機械的エネルギー伝達手段を駆動するとともに、機械的エネルギー伝達手段によって回転する発電機に電力を生じさせ、この電力により駆動される電子回路によって前記発電機の回転周期を制御することで、機械的エネルギー伝達手段に制動をかけて調速するようにした電子制御式機械時計において、前記発電機は前記機械的エネルギー伝達手段に連繋して回転するロータを備え、このロータの最大径部材と当該ロータに対して軸方向に最も近接対向して固定された対向部品との前記軸方向のギャップをh 、円周率をπ、空気の粘度をμ、ロータの回転周波数をf 、ロータに伝えられる機械的エネルギー貯蔵手段の最大出力トルクをT rzmax 、係数をK 、ロータの回転中心からロータの最大径部材と前記対向部品とが平面的に重なる部分の内縁までの距離をr  、ロータの回転中心からロータの最大径部材と前記対向部品とが平面的に重なる部分の外縁までの距離をr  とし、前記ギャップh が、
    Figure 2004004005
    で与えられる場合に、前記係数K は1 /10 以下に設定されていることを特徴とする電子制御式機械時計。
  2. 請求項1 に記載の電子制御式機械時計において、前記係数K は、1 /20 ないし1 /60 に設定されていることを特徴とする電子制御式機械時計。
  3. 請求項2 に記載の電子制御式機械時計において、前記係数K は、1 /20 ないし1 /40 に設定されていることを特徴とする電子制御式機械時計。
  4. 請求項1 ないし請求項3 のいずれかに記載の電子制御式機械時計において、前記対向部品は、前記ロータの軸方向の少なくとも一端側を支持する支持部材であり、この支持部材は、当該支持部材に保持されて前記軸方向の一端側を受ける軸受よりも前記ロータから軸方向に離れていることを特徴とする電子制御式機械時計。
  5. 請求項1 ないし請求項3 のいずれかに記載の電子制御式機械時計において、前記対向部品は、前記ロータの軸方向の少なくとも一端側を支持する支持部材であり、この支持部材は、前記軸方向の一端側を受ける軸受を保持するための保持部を有するとともに、この保持部の周辺部位が当該保持部よりも前記ロータから軸方向に離れていることを特徴とする電子制御式機械時計。
  6. 請求項1 ないし請求項3 のいずれかに記載の電子制御式機械時計において、前記ロータの軸方向の一端は、前記機械的エネルギー伝達手段を支持する部品とは別体で、かつブリッジ形状または片持ち式とされた支持部材で支持されていることを特徴とする電子制御式機械時計。
  7. 請求項1 ないし請求項6 のいずれかに記載の電子制御式機械時計において、前記機械エネルギー伝達手段は複数の番車から構成された輪列であり、前記ロータと当該ロータに噛み合う前記機械的エネルギー伝達手段の番車との軸方向のギャップh ′は、前記ギャップh よりも小さいことを特徴とする電子制御式機械時計。
  8. 請求項1 ないし請求項7 のいずれかに記載の電子制御式機械時計において、前記ロータの最大径部材と前記対向部品との間に配置された近接部品を備え、この近接部品における前記ロータの最大径部材に対応した位置には、前記軸方向に貫通した開口部が設けられていることを特徴とする電子制御式機械時計。
  9. 請求項1 ないし請求項8 のいずれかに記載の電子制御式機械時計において、前記機械的エネルギー貯蔵手段、機械的エネルギー伝達手段、および発電機を含んで構成されたムーブメントの内部が減圧されていることを特徴とする電子制御式機械時計。
  10. 請求項1 ないし請求項9 のいずれかに記載の電子制御式機械時計において、前記発電機のロータは径方向に延出した慣性板を備え、この慣性板が前記ロータの最大径部材であることを特徴とする電子制御式機械時計。
  11. 請求項1 ないし請求項9 のいずれかに記載の電子制御式機械時計において、前記発電機のロータは径方向に延出しかつ複数のロータ磁石が周方向に配置されたロータ体を備え、このロータ体が前記ロータの最大径部材であることを特徴とする電子制御式機械時計。
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