JP3579898B2 - 車両の振動制御装置および振動制御方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両に設置され、例えばエンジンのような振動源から発生された周期的な振動を低減制御させる車両の振動制御装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクティブに車両振動や騒音を低減させる技術に、例えば、GB2201858Aや特開平3−274897号や特表平1−501344号、さらには特開平5−232969号の手法がある。
〈GB2201858A〉
この従来技術は、フィルタ処理の中に最小二乗法(Least Mean Square)を用いることから、Filtered−x LMS法と呼ばれる。この手法の概略ブロック図を図1に示す。同図において、能動的に騒音を消すために、2つのスピーカから制御音を発生し、残留騒音を3つのマイクで拾い、この残留雑音を2つのフィルタを有するコントローラにフィードバックして、さらに騒音を消すというものである。図中、フィルタ1は残留騒音信号の振幅を最小化するように自動的に特性を変える適応フィルタであり、フィルタ2はスピーカ・マイクロホン間の音響伝達特性と同じ特性を持つフィルタである。騒音の逆位相信号すなわち制御信号は、エンジンなどの騒音源信号(例えば騒音のもとになる振動の波形信号)を前述の両フィルタでフィルタリング処理することによって生成される。
【0003】
フィルタ2は基準信号発生器からの信号をフィルタ処理する。フィルタ1は、フィルタ2の出力信号と残留騒音信号との積を入力し、その平均パワーが最小になるようにフィルタ特性を変えていく。フィルタ1は、スピーカ1つに対して1つ用意され、図1の例では2つのフィルタが必要である。また、フィルタ2はスピーカ・マイクロホン間の音響伝達特性と同じ特性を持つフィルタであるので、2つのスピーカと3つのマイクとからなるシステムでは、6つのフィルタ2が必要となる。
【0004】
LMS法は汎用性に富むなどの長所を有する反面、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)などの現状の計算能力を超えた多くの計算を伴う場合が多いという問題点を残している。特に車室内エンジン騒音制御のように、複数のスピーカとマイクロホンとを用いて広い空間範囲で騒音を低減しなければならない場合や、複数の周波数成分を同時に制御しなければならない場合には、フィルタリング処理の計算量が増大し、単一のDSP(digital signal processor)で制御を行うことが困難になる。
【0005】
〈特開平3−274897号〉
特開平3−274897号に開示された手法(便宜上「エラースキャニング法」と呼ぶ)は上記LMS法の計算量を低減するために提案された。
前述のLMS法では、毎サンプリング毎に、乗算器における6つの残留雑音信号の乗算と、6つの乗算結果信号を入力してフィルタ1において行なわれるパラメータの更新処理とが行なわれることになるので、演算量が多かったものである。
【0006】
一方、エラースキャニング法が適用されるシステムは、LMS法が適用されるシステムと実質的に同じであるが、1サンプリング時間毎に行なわれるフィルタ処理が1つに限定される点において相異がある。即ち、エラースキャニング法に於ては、2つのフィルタ1と6つのフィルタ2とが用意され、あるサンプリング時点では、3つのマイクからの信号のうちの1つだけを選択し、その選択されたマイク信号と、6つのフィルタ2のうちの選択された1つのフィルタ2からの出力との積をフィルタ1に出力するものである。次のサンプリング時点では、次のマイク信号と次のフィルタ2を選択する。即ち、マイク信号(エラー信号)とフィルタ2を順にスキャニングすることから、「エラースキャニング法」と呼ばれる。
【0007】
このように、エラースキャニング法では、各サンプリング時点では1つのマイクからの信号を処理するということのために、フィルタ1における騒音低減のための制御の収束が遅れることになるものの、フィルタ1におけるパラメータの更新のための処理量が減るという利点はある。
しかしながら、ここのフィルタ1における演算は、実質的にLMS法と変わりはないので、期待したほどには演算量の低減を達成することはできていない。
【0008】
〈特表平1−501344号〉
上記3つの手法は、デジタルフィルタを用いて、時間順に入力されたエラー信号を時間領域においてフィルタ処理するというものであった。これは、マイクが検出した誤差信号の中で、制御上問題となるのは高調波成分であるので、この高調波成分を取り出すために、図2に示すように、フーリエ変換を行なう。即ち、特表平1−501344号の手法は、前述のLMSの手法を周波数領域で行なうというものである。そのために、図2に示すように、誤差センサ(マイク)からの誤差信号をフーリエ変換して適応型フィルタ処理を行ない、高調波成分を取り出し、さらに逆フーリエ変換してから第2音源(即ちスピーカ)へ出力するというものである。
【0009】
特表平1−501344号の手法を以下に説明する。
騒音信号の周波数領域における1つの高調波について、或る順番の誤差信号の複素数値は次式で与えられる。
【0010】
【数1】
【0011】
但し、Alはアクティブ制御されないときのElの値であり、wmは第m番目の二次音源の複素振幅、Clmは第l番目のセンサとm番目音源との間の複素伝達関数である。数式表示すれば、
【0012】
【数2】
【0013】
となる。ここで、
【0014】
【数3】
【0015】
である。この場合のコスト関数を、J=EHEと書くことができ、Hはベクトルまたはマトリクスの複素共役転置を表すとすると、
【0016】
【数4】
【0017】
従って、
【0018】
【数5】
【0019】
となり、最急降下アルゴリズムは、
【0020】
【数6】
【0021】
と記述される。ここで、WkとEkとは、夫々、第k番目の反復におけるフィルタ特性と誤差出力である。
誤差信号eに対して作用するフーリエ変換演算を一回行うことによってIm(ω0) におけるeの2次形式の周波数成分を得ることを図3に示し、この際に、積分回路(図中、Iで示す)と乗算回路(図中、Xで示す)が使用される。
【0022】
このように、特表平1−501344号においては、フィルタ演算を行なうために、フーリエ変換した信号に適応型処理を行ない、処理された信号のうちのセンサにおける各高調波の複素係数に対して逆フーリエ変換を行なってスピーカへの出力信号としている。一般に、フーリエ変換は結果を数回平均しなければ信頼できる結果が得られないので、特表平1−501344号では、図3に示すように、積分回路を必要とすることとなる。
【0023】
しかしながら、積分回路を設けて平均化処理を行なうことは制御に応答性の劣化が現われ、従って応答性が要求される加速時等においては良好な追従性が得られないことがある。
〈特開平5−232969号〉
特表平1−501344号における応答性の劣化の問題を解消するために、本出願人は、特開平5−232969等で、演算量を大幅に減らした新しい振動低減方法を提案した。この特開平5−232969号の手法を以下に説明する。
【0024】
先ず、簡単のために、図4に示すように、騒音に対する逆位相音即ち制御音を1つのスピーカから発し、その結果として残留する騒音を1つのマイクで観測する1入力1出力系を考える。制御信号をu、残留騒音信号をe、このeに含まれる元の騒音に起因する成分をdとし、これら3者の関係は次の式で表される。
【0025】
【数7】
【0026】
ここで、g(t)はスピーカ・マイク間インパルス応答関数、h(t)はg(t)から次の式8により求められる周期関数である。
【0027】
【数8】
【0028】
この方法の特徴は、制御信号u、残留騒音信号e、dのいずれもが周期Tの時間関数であると仮定したことである。
式1の右辺第2項を十分小さな時間幅Δtで離散化してベクトル表現で表すと、式7は次の式9によって与えられる。
【0029】
【数9】
【0030】
但し、
【0031】
【数10】
【0032】
であって、Nは
(T/Δt)−1≦N<T/Δt
を満足する整数である。式9では、制御信号変数uはすでに時間の関数として扱われなくなっているので、uの最適化を行なうことができる。最適化として最急降下法を適用し、評価関数
J(u)=E[e2(t)](Eは期待値記号)
を最小化するuを最適なuとする。Jをuで微分することにより、誤差信号eのパワーが最小となるようにuを決定する。ここで、前述の特表平1−501344号では、評価関数(コスト関数)の最急勾配方向ベクトルの平均値を用いているのに対し、この特開平5−232969号では、
M[dJ/du]T
と表された推定瞬時値を用いることを特徴とする。この瞬時値を最急勾配ベクトルの代わりとして用いながらΔtごとに制御信号uを更新することにすれば、uの最適値は次の式11の漸化式を反復計算することにより得られる。
【0033】
【数11】
【0034】
ただし、μは周期T,時間幅Δt,ステップ幅などにより決まる定係数である。この特開平5−232969の動作原理を図4に示す。図4において、同じ周期Tを有する周期関数であるu,hを「リング」で表した。式11によると、マイクが検出した信号eに−μが乗ぜられ、−μeにhが乗ぜられて制御信号uが生成される。式5の漸化式表現は図4においては、uとhの「リング」上を回転することにより模されている。
【0035】
具体的には、Δtをサンプリング周期として、先ず、
u(0),u(Δt),u(2Δt),…
の順で、制御信号uの各要素を周期的に出力する。図4において、この順次の出力を「リング」上の回転として模してある。次に、11式に従ってu1を演算し、
u1(0),u1(Δt),u1(2Δt),…
を順に出力する。制御信号uを式11に従って反復的に更新し出力することにより、騒音が低減されてゆく。このとき騒音の周波数成分のうち、基本周期Tの成分、言い換えれば周波数1/Tの全高調波成分が同時に低減される。このような騒音の低減はエンジン騒音の制御には適している。また、この特開平5−232969号では、畳み込み計算を全く用いず、殆ど式11のみの計算で制御を行うために、計算量が少なく、DSPを利用した実用的なシステムを容易に実現できるという利点もある。
【0036】
制御信号u(t)の周期T、言い換えれば制御信号ベクトルuの要素数は、制御対象とする次数成分の種類とエンジン回転数とに基づいて調整する必要がある。この特開平5−232969における制御信号の周期調整方法について説明する。
制御対象の次数との関係では、例えば4気筒エンジンの場合、0.5次,1次,2次の全高調波成分を制御対象とするには、夫々Tをエンジン回転周期の2倍,1倍,0.5倍に一致させなければならない。しかしながら、エンジン回転周期は変動する。そこで、補間法などを用いてuのデータ波形が相似形を維持するように要素数Nを変更するか、あるいは単にサンプリング周期Δtを変化させる。周期を変更させるのが図4においては周期調整器である。
【0037】
図6は要素数Nを変更する方法を模式的に説明する。即ち、図6は、要素数Nを変更する簡単な例として、6個の要素からなる旧制御信号データ(即ち、T=6Δt側)を8個の要素からなる新制御信号データ(即ち、T=8Δt’側)に変換した場合を説明したものである。図中、黒小丸は実際にuに格納されている6個のデータの値を、黒小三角は1次補間により求められた値を示す。即ち、T=8Δt’側において、番号2のデータは、番号1のデータからΔt’の位置に於て、T=6Δt側の番号1と番号2のデータの線形補間により計算される。この補間方法によれば信号波形の概略形状を維持したまま信号周期を変更できる。この方法を用いる場合の制御の安定性等については、自動車エンジン程度の周期変動率の下であれば、μの値を適当に調整することのみによって制御信号uの安定かつ良好な収束を確保できる。
【0038】
図4〜図6に示された特開平5−232969の手法を用いて広い空間範囲にわたって騒音低域効果を発揮する振動制御システムを構築するには、図7に示すように、複数のスピーカとマイクロホンを音響空間内に配置する必要がある。L個のスピーカとM個のマイクロホンを含む多入出力系における第mマイクロホンの出力信号、即ち、第mマイクが拾った残留騒音信号emは、式9を拡張して得られる式12で表される。
【0039】
【数12】
【0040】
ここで、mは1,2,3…Mの整数で、ulは第l番目のスピーカに入力される信号レベルであり、hlmは第l番目のスピーカと第m番目のマイクとの間でのインパルス応答関数glmから式2の同じようにして求められる周期関数の離散値からなるベクトルである。従って最小化すべき評価関数を式13のように、
【0041】
【数13】
【0042】
定めれば、制御信号ベクトルulkは、漸化式表現により表される式14のアルゴリズムで最適化、即ちJを最小化することができる。
【0043】
【数14】
【0044】
式14の制御信号ベクトルulkは、第l番目のスピーカに対するk番目のサンプリング時点での入力信号を表す。
式14のアルゴリズムでは、毎回のサンプリング時点で全てのマイクロホン信号を用いて制御信号ベクトルの更新を行うが、この代わりに、図7に示すように、1サンプリング時点で1つのマイクからの情報のみを用いる式15を用いても統計的にほぼ等価な効果が得られる。
【0045】
【数15】
【0046】
ただし、m(k)は1,2,…,Mの各々の出現確率が等しくなるような任意の整数系列である。
特開平5−232969の手法に前述のエラースキャニング法(特開平3−274897号)を適用した場合の計算量は、式15から明らかなように、マイクロホンを複数個用いる場合でもマイクロホン1個の場合と等しくなり、大幅に低減される。これに対してLMS方式では、エラースキャニング法を適用した場合でも、図1中のフィルタ1の特性変更計算が軽減されるだけで、計算量の大半を占めるフィルタリング処理には全く影響がないため、アルゴリズム全体への計算量低減効果は本手法の場合ほど大きくない。
【0047】
図8に、特開平5−232969の手法とLMSの1サンプリングあたりの計算量を比較した結果を示す。表中、Nadd,Nmulはそれぞれ加減算と乗算の回数を、Ninsは代表的DSPの一種であるTMS320C30で計算を行なった場合の命令サイクル数を示す。比較の条件として、いずれの手法もES法を低起用した場合の主要計算部分のみを考え、本手法ではuの要素数を50(エンジン回転数1200rpm,サンプリング周期1msのときのエンジン回転1周期分に相当する)とし、LMSではすべてのフィルタのタップ長を128(サンプリング周期1msで500Hz以下の車室内スピーカ・マイクロホン間インパルス応答波形を表現するには、最低限この程度のタップ長が必要である)とした。また本手法におけるuのデータ長調整法としては、前述の1次補間法による方法を用いた。表より、本手法は、演算回数でLMSの14〜30%、寿命サイクル数で約30〜50%の計算量で済むことがわかる。
【0048】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、本出願人による特開平5−232969の手法は、誤差信号eを最小化するのに、M[dJ/du]Tと表された推定瞬時値を用いているために、過去のデータを参照する必要性がなくなり、喩えマイクが複数を擁するシステムであっても1つのマイクのシステムと同じになる故に、特表平1−501344号の手法よりも計算量においても低減され、制御の応答性は向上している。
【0049】
しかしながら、それでも実際の加速時においては、特開平5−232969の手法によっても騒音低減に応答性の悪い場合がある。
これは、式9においては、フィルタ演算において更新される必要のあるパラメータの数が多数に昇り、まだまだ演算に時間がかかっていることにある。
さらに、図6に関連して説明したように、騒音周期Tの変動に伴う制御の変更を線形補間を用いていたが、補間後の周期性の形状が実際とは離れてしまい、これも加速時の応答性の劣化の原因となるのである。
【0050】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の目的は、フィルタ処理における計算量を大幅に軽減できた車両の振動制御装置及び方法を提案する。
上記課題を達成するための本発明の構成は、
周期的な車両振動を低減する車両の振動制御装置において、
前記車両振動の基本振動数を検出する検出手段と、
検出された基本振動数の高調波成分のフーリエ級数に基づいて、車両振動を低減するための制御振動を発生するための制御信号を発生する発生手段と、
この制御信号に基づいて振動を発生するアクチュエータ手段と、
車両振動を示す振動信号を検出するためのセンサ手段と、
検出された振動信号と、前記アクチュエータ手段と前記センサ手段間の周波数伝達関数とに基づいて、各高調波成分についての前記フーリエ級数の振幅成分を更新する更新手段とを備えたことを特徴とする。
【0051】
同課題を達成するための本発明の他の構成は、
車両振動を低減するための制御振動をアクチュエータ手段から発生し、車両振動を示す振動信号をセンサ手段により検出することにより、周期的な車両振動を低減する車両の振動制御方法において、
前記車両振動の基本振動数を検出し、
検出された基本振動数の高調波成分のフーリエ級数に基づいて、車両振動を低減するための制御振動を前記アクチュエータ手段から発生し、
前記アクチュエータ手段と前記センサ手段間の周波数伝達関数とに基づいて、各高調波成分についての前記フーリエ級数の振幅成分を更新することを特徴とする。
【0052】
【作用】
前記制御振動は、検出された基本振動数の高調波成分のフーリエ級数に基づいて決定される。振動抑制の精度はフーリエ級数の次数に左右されるが、このフーリエ級数の振幅成分は、時間に依存する成分(Ci,Si)と位相成分(fci,fsi)という4つの成分のみとなり、必要次数をNとすれば、振動低減のために必要なパラメータの数は4N個となる。
【0053】
【実施例】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
〈原理〉
図9は、実施例の原理を説明するために、1スピーカ、1マイクのシステムのブロック図である。変数名u,d,g,eなどは図2のシステムと同じである。即ち、騒音dを打ち消すための制御変数uがスピーカから発生された場合に、その変数uはマイクによって応答g(即ち、スピーカ・マイク間インパルス応答関数)として認識され残留騒音(誤差騒音)eとして検出される。この誤差信号eはコントローラに入力され、以下の手法によりコントローラは制御変数uを計算する。
【0054】
先ず、u,d,eが全て周期Tの時間関数であるとすると、eは
【0055】
【数16】
【0056】
で表される。応答gが周期Tの関数であれば、次のようなgの級数h(t)を導入することにより、
【0057】
【数17】
【0058】
式16は、
【0059】
【数18】
【0060】
と変形することができる。本実施例の大きな特徴は、制御変数uと応答関数hとを次のようにフーリエ級数で表すことにある。即ち、
【0061】
【数19】
【0062】
【数20】
【0063】
である。式19,20を導入することにより、u,hを求めることは未知数ai,ψi,bj,φjを求めることに帰結する。
式20は、周波数伝達関数hがωによって表されている。換言すれば、式20を定義することによって、そのときのエンジン回転の周波数に対応する伝達関数の成分を用いてフィルタ演算における逐次演算を行なうことが可能となる。
【0064】
式19,20を式18に代入すると、
【0065】
【数21】
【0066】
【数22】
【0067】
ここで、ω1,ω2,…,ωNは全て2π/Tの整数倍であるから、上式の第1項と第2項は0となり、次の式23が得られる。
【0068】
【数23】
【0069】
23式において、
【0070】
【数24】
【0071】
【数25】
【0072】
【数26】
【0073】
【数27】
【0074】
【数28】
【0075】
【数29】
【0076】
である。fci,fsiは制御変数uの振幅aiの位相成分と考えることができ、fci,fsiは応答関数hの振幅biの位相成分と考えることができる。式23を行列表現、ベクトル表現、複素数表現を用いて書き改めると、
【0077】
【数30】
【0078】
となる。ここで、行列x,ベクトルh,ベクトルfは、
【0079】
【数31】
【0080】
【数32】
【0081】
【数33】
【0082】
である。4N個の未知数、ai(i=1〜N),ψi(i=1〜N),bi(i=1〜N),φi(i=1〜N)を求めることは、式30に最急降下法を適用して、4N個の未知数fci(i=1〜N),fsi(i=1〜N),hci(i=1〜N),hsi(i=1〜N)を求めることに帰結する。
式30において、Re(行列X・ベクトルf)は制御信号uを表す。従って、1スピーカ1マイク系では、ある時刻kにおける制御信号出力ukは、その時刻kにおける式26,式27で定義した適応パラメータfci,fsiを用いて、
【0083】
【数34】
【0084】
となる。後にさらに詳しく説明する、制御手順では、時刻kに於て生成した制御信号ukをスピーカから出力し、同時にマイクから入力した残留騒音信号ekに基づいて、次の時刻k+1における適応パラメータfci,fsiを決定する。
【0085】
【数35】
【0086】
式35は、誤差信号のパワーが最小になるように前述の最急降下法を用いて得た。式35において、周波数伝達関数hc,hsを含む行列は式28,29によって演算される。また、Cn,Snを含むベクトルは式24,25によって決定される。従って、式35に基づいて時刻kにおける適応パラメータfci,fsiから時刻k+1における適応パラメータfci,fsiが決定される。
【0087】
〈L×Mシステムへの拡張〉
以上は、1スピーカ、1マイクからなるシステムにおける手法の説明である。この手法を、図5に示されたようなL個のスピーカとM個のマイクからなるシステムに拡張すると、式30の代わりに、
【0088】
【数36】
【0089】
が得られる。ここで、ベクトルe,ベクトルdは夫々、M個のマイクが検出したM個の残留騒音e、M個の外部雑音dであり、
【0090】
【数37】
【0091】
【数38】
【0092】
また、ベクトルhiをk番目のスピーカに与えられる応答関数hkの振幅bについての式32に対応するベクトルとすると、即ち、
【0093】
【数39】
【0094】
となり、さらにベクトルfiをk番目のスピーカに与えられる制御変数ukの振幅aについての式33に対応するベクトルとすると、即ち、
【0095】
【数40】
【0096】
となる。従って、式36において、行列Hは、
【0097】
【数41】
【0098】
である。ここで、行列H中の要素であるベクトルhは、1スピーカ1マイク系で得られた式32のベクトルhを拡張したもので、例えばベクトルh11は、1番目マイクと1番目のスピーカとの間のその瞬間での伝達特性である。
また、行列Xは、
【0099】
【数42】
【0100】
となり、ベクトルハットfは、
【0101】
【数43】
【0102】
となる。
1スピーカ1マイクのシステムをLスピーカ、Mマイクのシステムの特種形態と考えれば、式36〜式43が一般的な騒音低減システムを表すこととなる。そこで、評価関数
【0103】
【数44】
【0104】
を最小化すべく、式43に対して最急降下法を適用する。即ち、各マイクで検出される騒音の平均パワーが最小になるようにする。但し、勾配ベクトルとして、その真の値を用いず瞬時推定値を用いる。すると、
【0105】
【数45】
【0106】
であるから、
【0107】
【数46】
【0108】
が得られる。尚、*は共役の転置を表す。
従って、ベクトルハットfを最適化するためには、
【0109】
【数47】
【0110】
であればよい。
尚、式36において、行列H(または2/T・H)は、スピーカ/マイク間の伝達特性と考えることができる。従って制御uは、
【0111】
【数48】
【0112】
となる。また、マイクで検出される制御音yを、
【0113】
【数49】
【0114】
と定義すれば、
【0115】
【数50】
【0116】
と表すことができる。
〈システムの構成〉
図10,図11は、本発明を車両に適用した場合の騒音低減システムの構成を示す。この実施例のシステムは、4スピーカ(20a〜20d)と4マイク(30a〜30d)の構成からなる。騒音の基本周期Tを検出するために、エンジン11の回転周期を検出する点火コイル10からの信号IGを用いる。図10のコントローラ100の詳細な構成を図11に示す。図11において、信号IGは波形成形器によって波形成形され、DSP102によって取り込まれる。4つのマイクからの信号eはA/D変換されてDSP102が取り込む。また、DSP102は、スピーカ出力信号uをDA変換してスピーカから出力する。
【0117】
〈制御手順〉
1スピーカ、1マイクシステム(=1×1システム)
図12は、説明の簡略化上、1スピーカと1マイクを用いたときのDSP102における制御手順を示す。
そこで、ステップS2では、波形成形器101を介して点火時期信号IGを入力し、ステップS4で、点火時期信号IGに基づいて騒音の基本周波数ωを演算する。ここで、
ω=2π/T
である。ステップS6では制御出力信号の位相角θkを次式に従って決定する。
【0118】
【数51】
【0119】
位相角θkは式19,20における位相角に相当するもので、φ等が未知故にθkで置き換えたものである。また、引き数kは時刻を表す。時刻の原点をイグニッションキーが投入されたときに取れば、時刻k=0においてθ0=0である。また、本発明では制御変数uや伝達関数が周期性を有していることを前提にしているので、θkの範囲を、
−π≦θk<π
とした。従って、時刻k=1においては、θ1=ωΔtである。
【0120】
ステップS8では、逐次的に、式24,25で定義されたパラメータCn+1,Sn+1を決定する。パラメータCn+1,Sn+1のnは高調波の次数を表す。エンジンからの騒音を制御することを目的とする場合には、5次の高長波を制御すれば十分である。パラメータCn+1,Sn+1は、式23から明らかなように、一般的に次の漸化式によって決定される。
【0121】
【数52】
【0122】
時刻k=1では、式24,25から明らかに、1次の高調波についてのパラメータに対しては、
【0123】
【数53】
【0124】
が得られ、二次については、
【0125】
【数54】
【0126】
を解くことによって得られる。二次のパラメータC,Sが得られれば、順にN次までのパラメータが得られる。式26,27によって定義されたN次までのパラメータを、fc1,fs1,fc2,fs2,…,fcN,fsNと表記し、そのパラメータの初期値(即ち、時刻k=1における)fc1,fs1,fc2,fs2,…,fcN,fsNが与えられていれば、n=1〜Nについての、Cn,SnはステップS8で求められているから、時刻k=1における制御変数出力u1は式34によって与えられる。即ち、ステップS10で、
【0127】
【数55】
【0128】
である。ステップS12ではこのようにして決定されたu1をスピーカに入力する。そして、ステップS14では、マイクから信号ek(即ちe1)を入力する。ステップS16では、基本周波数オメガに対応する周波数伝達関数hcn,hsnをメモリから読み出す。ステップS18では、式35に従って、次の時刻k+1における(即ち、時刻k=2における)、1次からN次(n=1〜N)までの適応パラメータfc1,fs1,fc2,fs2,…,fcN,fsNを決定する。式35において、k=1におけるfc1,fs1,fc2,fs2,…,fcN,fsNは与えられている。また、k=1における、n=1〜NについてのCn,Snも既にステップS8において求められているから、周波数伝達関数hさえ求めることができれば、時刻k=2のための、1次からN次(n=1〜N)までの適応パラメータfc1,fs1,fc2,fs2,…,fcN,fsNを決定することができる。
【0129】
ステップS16の周波数伝達関数hcn,hsnについて説明する。
スピーカマイク間の、ある周波数ωに対する周波数伝達関数をH(ω)と表せば、この伝達関数H(ω)を前もって測定することが可能である。そして、この伝達関数を、フーリエ変換することによりその高調波成分H(2ω),H(3ω)…H(Nω)を求めることができる。そして、このような各高調波成分に対する実数部分と虚数部分を、hc,hsと表記すれば、
【0130】
【数56】
【0131】
とおくことにより、各高調波に対するhcn,hsn(n=1〜N)を前もってコントローラ内のメモリに記憶しておくことができる。このようにして、式35によって、時刻k=2のための、適応パラメータfを決定することができる。
時刻k=2になれば、ステップS2,S4において、騒音の基本周波数ωが求められる。そして、制御出力uの位相角θ2が決定され、ステップS8で、1次からN次までのパラメータCn,Snが決定され、ステップS12で制御出力u2が決定され、ステップS14でu2が出力され、ステップS16でマイクから騒音信号e2が出力され、ステップS18で式35に従って時刻k=3のための適応パラメータfが決定される。
【0132】
一般的に、時刻k−1の制御サイクルの終了時点で、式35にしたがって時刻kの制御サイクルのための適応パラメータfkが決定されるから、時刻kの時点の制御サイクルでは、ステップS2,S4において、騒音の基本周波数ωが求められる。そして、制御出力ukの位相角θkが決定され、ステップS8で、1次からN次までのパラメータCnk,Snkが決定され、ステップS12で制御出力ukが式34に従って決定され、ステップS14でukが出力され、ステップS16でマイクから騒音信号ekが出力され、ステップS18で式35に従って時刻k+1のための適応パラメータfk+1が決定される。
【0133】
このようにして、逐次的に、その時刻に適したパラメータに従って決定された制御信号uがスピーカから出力され、その結果がマイク信号eによってモニタされ、その結果はパラメータfの更新に反映される。
以上説明した本実施例の方法の最大の特徴は、式19,20を導入したことにより、フィルタ演算処理において更新されるパラメータの数が大幅に減したことにある。即ち、エンジン騒音においては5次の高調波成分まで求めれば足りるとされているが、前述の特開平5−232969号の手法では例えば5次の高調波成分まで求めようとした場合には50個程度の適応パラメータの更新演算がを必要であったが、本手法を用いれば、fc1,fs1,fc2,fs2,…,fc5,fs5とC1,S1,C2,S2,…,C5,S5の合計20個のパラメータの更新演算で足りることである。パラメータ数が低減されても、収束速度が向上するために、結果的には、騒音低減の精度は劣化しない。従って、加速時などの過渡期においても追随性良く騒音を低減することができる。また、本手法は、振動の基本周期T(即ち、周波数ω)に変動が有っても、その変動はステップS8で求められるパラメータC1,S1,C2,S2,…,CN,SNに反映される。換言すれば、エンジン回転数が急激に変化する、即ち振動の基本周期が急激に変化する加速時においても、図5,図6に示したような制御出力uの線形補間(この補間は精度の低い)が不要となり、結果的に加速時の振動低減が向上する。
【0134】
なお、DSP内の不図示のメモリに記憶されている周波数伝達関数hcn,hsnについて補足する。この周波数伝達関数hcn,hsnは、前もって、所定の基本周波数毎に設定されている。その基本周波数をω0とすれば、
【0135】
【数57】
【0136】
となる。しかし、ステップS4で検出された周波数ωがメモリに記憶されている周波数と必ずしも一致するとは限らない。メモリ内に、例えば、ω0,ω1について記憶されていて、エンジンの周波数ω’(ω0<ω’<ω1)であった場合には、ω0について記憶されているhcn,hsnと、ω1について記憶されているhcn,hsnとに基づいて線形補間を適用して、ω’についてのhcn,hsnを求める。
【0137】
L個のスピーカ、M個のマイクのシステム(=L×Mシステム)
L個のスピーカから制御信号1u,2u,…,Luを出力し、M個のマイクから残留騒音em(k)を入力するシステムに、前述の1×1の手法を拡張的に適用する。図13にL×Mシステムの制御手順を示す。
ステップS22〜ステップS28は、1×1システムの制御手順と同じである。ステップS30では、式48に基づいて制御出力uを決定する。式48を、L×M系の適応パラメータ1fc1,1fs1,2fc1,2fs1,…,Lfc1,Lfs1を用いて変形すると、l番目(l=1〜L)のスピーカからの制御出力luは、
【0138】
【数58】
【0139】
となる。ここで、Cn,Snは1×1システムのそれと同じである。また、1fc1,1fs1,2fc1,2fs1,…,Lfc1,Lfs1の演算については後述する。
ステップS32では、DSP102は、L個のスピーカに制御出力lu(l=1〜L)を同時にあるいは順に出力する。ステップS34ではM個のマイクから順に、騒音信号em(k)を入力する。但し、m(k)は時刻kにおける整数列で、1,2,…,Mである。ステップS36では、基本周波数ωについての周波数伝達関数1m(k)hc1,1m(k)hs1…1m(k)hcN,1m(k)hsN,2m(k)hc1,2m(k)hs1…2m(k)hcN,2m(k)hsN,…,Lm(k)hc1,Lm(k)hs1…Lm(k)hcN,Lm(k)hsNをメモリから読み込む。
【0140】
1番目のスピーカとm(k)番目のマイクとの間についての、1次からN次までの周波数伝達関数hは、
【0141】
【数59】
【0142】
に良って、また、2番目のスピーカとm(k)番目のマイクとの間についての周波数伝達関数hは、
【0143】
【数60】
【0144】
によって、同様にして、L番目のスピーカとm(k)番目のマイクとの間についての周波数伝達関数hは、
【0145】
【数61】
【0146】
によって前もって決めておくことができる。
ステップS38では、これらの周波数伝達関数hを用いて、時刻k+1のための適応パラメータlfc,lfsを式47に基づいて求める。式47は周波数伝達関数を用いて、
【0147】
【数62】
【0148】
但し、n=1〜N、l=1〜Lである。
〈従来例との比較〉
本実施例の演算を、従来のLMS法と特開平5−232969号の手法とを比較し、定性的比較を図14に、定量的比較を図15に示した。なお、エンジン回転数を1200rpm、サンプリング周波数1kHz、1〜5時の全次数成分を演算した。
【0149】
〈他の実施例〉
上記実施例では、1×1系により、また、L×M系により、エンジン騒音を低減するシステムを説明したが、本発明は、エンジン騒音に限られず、例えば排気音の低減、さらには、車両振動の低減にも適用できる。
図16に、本発明を、振動低減のためのアクティブエンジンマウントに適用した例を示す。このマウント50は、エンジン40と車体間に作用する力を発生するためのアクチュエータを内蔵しており、加速度センサ60で検出された車体フロア振動のパワーが最小になるようにアクチュエータが制御される。これにより、アイドル振動や加速時の振動など、乗員にとって不快な車体振動が抑制される。
【0150】
【発明の効果】
以上説明した本発明において、振動を抑制するためにアクチュエータ手段(例えばスピーカ)から発生される制御振動は、検出された基本振動数ω(例えばエンジン回転数)の高調波成分のフーリエ級数に基づいて決定される。振動抑制の精度はフーリエ級数の次数に左右されるが、このフーリエ級数の振幅成分は、時間に依存する成分(Ci,Si)と位相成分(fci,fsi)という4つの成分のみとなり、必要次数をNとすれば、振動低減のために必要なパラメータの数は4N個となる。
【0151】
一方、特開平5−232969号においては、図6に示すように、制御振動u、周波数伝達関数ともに、必要なデータ数はT/Δt(=50個前後)だけ必要であった。本発明の振動制御装置若しくは振動制御方法では、大幅に演算量を低減することができ、その結果、振動制御が速やかに収束することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のLMS法を適用した騒音低減システムの構成を示すブロック図。
【図2】従来のLMS法を周波数領域において適用した騒音低減システムの構成を示すブロック図。
【図3】図2の従来例において積分回路が必要となる理由を説明する図。
【図4】特開平5−232969号の騒音低減システムの構成を示すブロック図。
【図5】特開平5−232969号の騒音低減の原理を説明する図。
【図6】特開平5−232969号における線形補間を説明する図。
【図7】特開平5−232969号にエラースキャニング法を適用した場合のシステム図。
【図8】特開平5−232969号とLMS法とを比較した結果を示す図。
【図9】本発明を1×1系に適用した実施例の概略構成を示した図。
【図10】本発明を4×4系に適用した実施例の構成を示した図。
【図11】図9の実施例のコントローラ100の構成を示す図。
【図12】1×1系の制御手順を示すフローチャート。
【図13】L×M系の制御手順を示すフローチャート。
【図14】実施例の騒音低減に必要な演算を従来の手法と定性的に比較した結果を示す図。
【図15】実施例の騒音低減に必要な演算を従来の手法と定量的に比較した結果を示す図。
【図16】本発明を騒音低減に適用した実施例のシステムを示す図。
【産業上の利用分野】
本発明は、車両に設置され、例えばエンジンのような振動源から発生された周期的な振動を低減制御させる車両の振動制御装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクティブに車両振動や騒音を低減させる技術に、例えば、GB2201858Aや特開平3−274897号や特表平1−501344号、さらには特開平5−232969号の手法がある。
〈GB2201858A〉
この従来技術は、フィルタ処理の中に最小二乗法(Least Mean Square)を用いることから、Filtered−x LMS法と呼ばれる。この手法の概略ブロック図を図1に示す。同図において、能動的に騒音を消すために、2つのスピーカから制御音を発生し、残留騒音を3つのマイクで拾い、この残留雑音を2つのフィルタを有するコントローラにフィードバックして、さらに騒音を消すというものである。図中、フィルタ1は残留騒音信号の振幅を最小化するように自動的に特性を変える適応フィルタであり、フィルタ2はスピーカ・マイクロホン間の音響伝達特性と同じ特性を持つフィルタである。騒音の逆位相信号すなわち制御信号は、エンジンなどの騒音源信号(例えば騒音のもとになる振動の波形信号)を前述の両フィルタでフィルタリング処理することによって生成される。
【0003】
フィルタ2は基準信号発生器からの信号をフィルタ処理する。フィルタ1は、フィルタ2の出力信号と残留騒音信号との積を入力し、その平均パワーが最小になるようにフィルタ特性を変えていく。フィルタ1は、スピーカ1つに対して1つ用意され、図1の例では2つのフィルタが必要である。また、フィルタ2はスピーカ・マイクロホン間の音響伝達特性と同じ特性を持つフィルタであるので、2つのスピーカと3つのマイクとからなるシステムでは、6つのフィルタ2が必要となる。
【0004】
LMS法は汎用性に富むなどの長所を有する反面、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)などの現状の計算能力を超えた多くの計算を伴う場合が多いという問題点を残している。特に車室内エンジン騒音制御のように、複数のスピーカとマイクロホンとを用いて広い空間範囲で騒音を低減しなければならない場合や、複数の周波数成分を同時に制御しなければならない場合には、フィルタリング処理の計算量が増大し、単一のDSP(digital signal processor)で制御を行うことが困難になる。
【0005】
〈特開平3−274897号〉
特開平3−274897号に開示された手法(便宜上「エラースキャニング法」と呼ぶ)は上記LMS法の計算量を低減するために提案された。
前述のLMS法では、毎サンプリング毎に、乗算器における6つの残留雑音信号の乗算と、6つの乗算結果信号を入力してフィルタ1において行なわれるパラメータの更新処理とが行なわれることになるので、演算量が多かったものである。
【0006】
一方、エラースキャニング法が適用されるシステムは、LMS法が適用されるシステムと実質的に同じであるが、1サンプリング時間毎に行なわれるフィルタ処理が1つに限定される点において相異がある。即ち、エラースキャニング法に於ては、2つのフィルタ1と6つのフィルタ2とが用意され、あるサンプリング時点では、3つのマイクからの信号のうちの1つだけを選択し、その選択されたマイク信号と、6つのフィルタ2のうちの選択された1つのフィルタ2からの出力との積をフィルタ1に出力するものである。次のサンプリング時点では、次のマイク信号と次のフィルタ2を選択する。即ち、マイク信号(エラー信号)とフィルタ2を順にスキャニングすることから、「エラースキャニング法」と呼ばれる。
【0007】
このように、エラースキャニング法では、各サンプリング時点では1つのマイクからの信号を処理するということのために、フィルタ1における騒音低減のための制御の収束が遅れることになるものの、フィルタ1におけるパラメータの更新のための処理量が減るという利点はある。
しかしながら、ここのフィルタ1における演算は、実質的にLMS法と変わりはないので、期待したほどには演算量の低減を達成することはできていない。
【0008】
〈特表平1−501344号〉
上記3つの手法は、デジタルフィルタを用いて、時間順に入力されたエラー信号を時間領域においてフィルタ処理するというものであった。これは、マイクが検出した誤差信号の中で、制御上問題となるのは高調波成分であるので、この高調波成分を取り出すために、図2に示すように、フーリエ変換を行なう。即ち、特表平1−501344号の手法は、前述のLMSの手法を周波数領域で行なうというものである。そのために、図2に示すように、誤差センサ(マイク)からの誤差信号をフーリエ変換して適応型フィルタ処理を行ない、高調波成分を取り出し、さらに逆フーリエ変換してから第2音源(即ちスピーカ)へ出力するというものである。
【0009】
特表平1−501344号の手法を以下に説明する。
騒音信号の周波数領域における1つの高調波について、或る順番の誤差信号の複素数値は次式で与えられる。
【0010】
【数1】
【0011】
但し、Alはアクティブ制御されないときのElの値であり、wmは第m番目の二次音源の複素振幅、Clmは第l番目のセンサとm番目音源との間の複素伝達関数である。数式表示すれば、
【0012】
【数2】
【0013】
となる。ここで、
【0014】
【数3】
【0015】
である。この場合のコスト関数を、J=EHEと書くことができ、Hはベクトルまたはマトリクスの複素共役転置を表すとすると、
【0016】
【数4】
【0017】
従って、
【0018】
【数5】
【0019】
となり、最急降下アルゴリズムは、
【0020】
【数6】
【0021】
と記述される。ここで、WkとEkとは、夫々、第k番目の反復におけるフィルタ特性と誤差出力である。
誤差信号eに対して作用するフーリエ変換演算を一回行うことによってIm(ω0) におけるeの2次形式の周波数成分を得ることを図3に示し、この際に、積分回路(図中、Iで示す)と乗算回路(図中、Xで示す)が使用される。
【0022】
このように、特表平1−501344号においては、フィルタ演算を行なうために、フーリエ変換した信号に適応型処理を行ない、処理された信号のうちのセンサにおける各高調波の複素係数に対して逆フーリエ変換を行なってスピーカへの出力信号としている。一般に、フーリエ変換は結果を数回平均しなければ信頼できる結果が得られないので、特表平1−501344号では、図3に示すように、積分回路を必要とすることとなる。
【0023】
しかしながら、積分回路を設けて平均化処理を行なうことは制御に応答性の劣化が現われ、従って応答性が要求される加速時等においては良好な追従性が得られないことがある。
〈特開平5−232969号〉
特表平1−501344号における応答性の劣化の問題を解消するために、本出願人は、特開平5−232969等で、演算量を大幅に減らした新しい振動低減方法を提案した。この特開平5−232969号の手法を以下に説明する。
【0024】
先ず、簡単のために、図4に示すように、騒音に対する逆位相音即ち制御音を1つのスピーカから発し、その結果として残留する騒音を1つのマイクで観測する1入力1出力系を考える。制御信号をu、残留騒音信号をe、このeに含まれる元の騒音に起因する成分をdとし、これら3者の関係は次の式で表される。
【0025】
【数7】
【0026】
ここで、g(t)はスピーカ・マイク間インパルス応答関数、h(t)はg(t)から次の式8により求められる周期関数である。
【0027】
【数8】
【0028】
この方法の特徴は、制御信号u、残留騒音信号e、dのいずれもが周期Tの時間関数であると仮定したことである。
式1の右辺第2項を十分小さな時間幅Δtで離散化してベクトル表現で表すと、式7は次の式9によって与えられる。
【0029】
【数9】
【0030】
但し、
【0031】
【数10】
【0032】
であって、Nは
(T/Δt)−1≦N<T/Δt
を満足する整数である。式9では、制御信号変数uはすでに時間の関数として扱われなくなっているので、uの最適化を行なうことができる。最適化として最急降下法を適用し、評価関数
J(u)=E[e2(t)](Eは期待値記号)
を最小化するuを最適なuとする。Jをuで微分することにより、誤差信号eのパワーが最小となるようにuを決定する。ここで、前述の特表平1−501344号では、評価関数(コスト関数)の最急勾配方向ベクトルの平均値を用いているのに対し、この特開平5−232969号では、
M[dJ/du]T
と表された推定瞬時値を用いることを特徴とする。この瞬時値を最急勾配ベクトルの代わりとして用いながらΔtごとに制御信号uを更新することにすれば、uの最適値は次の式11の漸化式を反復計算することにより得られる。
【0033】
【数11】
【0034】
ただし、μは周期T,時間幅Δt,ステップ幅などにより決まる定係数である。この特開平5−232969の動作原理を図4に示す。図4において、同じ周期Tを有する周期関数であるu,hを「リング」で表した。式11によると、マイクが検出した信号eに−μが乗ぜられ、−μeにhが乗ぜられて制御信号uが生成される。式5の漸化式表現は図4においては、uとhの「リング」上を回転することにより模されている。
【0035】
具体的には、Δtをサンプリング周期として、先ず、
u(0),u(Δt),u(2Δt),…
の順で、制御信号uの各要素を周期的に出力する。図4において、この順次の出力を「リング」上の回転として模してある。次に、11式に従ってu1を演算し、
u1(0),u1(Δt),u1(2Δt),…
を順に出力する。制御信号uを式11に従って反復的に更新し出力することにより、騒音が低減されてゆく。このとき騒音の周波数成分のうち、基本周期Tの成分、言い換えれば周波数1/Tの全高調波成分が同時に低減される。このような騒音の低減はエンジン騒音の制御には適している。また、この特開平5−232969号では、畳み込み計算を全く用いず、殆ど式11のみの計算で制御を行うために、計算量が少なく、DSPを利用した実用的なシステムを容易に実現できるという利点もある。
【0036】
制御信号u(t)の周期T、言い換えれば制御信号ベクトルuの要素数は、制御対象とする次数成分の種類とエンジン回転数とに基づいて調整する必要がある。この特開平5−232969における制御信号の周期調整方法について説明する。
制御対象の次数との関係では、例えば4気筒エンジンの場合、0.5次,1次,2次の全高調波成分を制御対象とするには、夫々Tをエンジン回転周期の2倍,1倍,0.5倍に一致させなければならない。しかしながら、エンジン回転周期は変動する。そこで、補間法などを用いてuのデータ波形が相似形を維持するように要素数Nを変更するか、あるいは単にサンプリング周期Δtを変化させる。周期を変更させるのが図4においては周期調整器である。
【0037】
図6は要素数Nを変更する方法を模式的に説明する。即ち、図6は、要素数Nを変更する簡単な例として、6個の要素からなる旧制御信号データ(即ち、T=6Δt側)を8個の要素からなる新制御信号データ(即ち、T=8Δt’側)に変換した場合を説明したものである。図中、黒小丸は実際にuに格納されている6個のデータの値を、黒小三角は1次補間により求められた値を示す。即ち、T=8Δt’側において、番号2のデータは、番号1のデータからΔt’の位置に於て、T=6Δt側の番号1と番号2のデータの線形補間により計算される。この補間方法によれば信号波形の概略形状を維持したまま信号周期を変更できる。この方法を用いる場合の制御の安定性等については、自動車エンジン程度の周期変動率の下であれば、μの値を適当に調整することのみによって制御信号uの安定かつ良好な収束を確保できる。
【0038】
図4〜図6に示された特開平5−232969の手法を用いて広い空間範囲にわたって騒音低域効果を発揮する振動制御システムを構築するには、図7に示すように、複数のスピーカとマイクロホンを音響空間内に配置する必要がある。L個のスピーカとM個のマイクロホンを含む多入出力系における第mマイクロホンの出力信号、即ち、第mマイクが拾った残留騒音信号emは、式9を拡張して得られる式12で表される。
【0039】
【数12】
【0040】
ここで、mは1,2,3…Mの整数で、ulは第l番目のスピーカに入力される信号レベルであり、hlmは第l番目のスピーカと第m番目のマイクとの間でのインパルス応答関数glmから式2の同じようにして求められる周期関数の離散値からなるベクトルである。従って最小化すべき評価関数を式13のように、
【0041】
【数13】
【0042】
定めれば、制御信号ベクトルulkは、漸化式表現により表される式14のアルゴリズムで最適化、即ちJを最小化することができる。
【0043】
【数14】
【0044】
式14の制御信号ベクトルulkは、第l番目のスピーカに対するk番目のサンプリング時点での入力信号を表す。
式14のアルゴリズムでは、毎回のサンプリング時点で全てのマイクロホン信号を用いて制御信号ベクトルの更新を行うが、この代わりに、図7に示すように、1サンプリング時点で1つのマイクからの情報のみを用いる式15を用いても統計的にほぼ等価な効果が得られる。
【0045】
【数15】
【0046】
ただし、m(k)は1,2,…,Mの各々の出現確率が等しくなるような任意の整数系列である。
特開平5−232969の手法に前述のエラースキャニング法(特開平3−274897号)を適用した場合の計算量は、式15から明らかなように、マイクロホンを複数個用いる場合でもマイクロホン1個の場合と等しくなり、大幅に低減される。これに対してLMS方式では、エラースキャニング法を適用した場合でも、図1中のフィルタ1の特性変更計算が軽減されるだけで、計算量の大半を占めるフィルタリング処理には全く影響がないため、アルゴリズム全体への計算量低減効果は本手法の場合ほど大きくない。
【0047】
図8に、特開平5−232969の手法とLMSの1サンプリングあたりの計算量を比較した結果を示す。表中、Nadd,Nmulはそれぞれ加減算と乗算の回数を、Ninsは代表的DSPの一種であるTMS320C30で計算を行なった場合の命令サイクル数を示す。比較の条件として、いずれの手法もES法を低起用した場合の主要計算部分のみを考え、本手法ではuの要素数を50(エンジン回転数1200rpm,サンプリング周期1msのときのエンジン回転1周期分に相当する)とし、LMSではすべてのフィルタのタップ長を128(サンプリング周期1msで500Hz以下の車室内スピーカ・マイクロホン間インパルス応答波形を表現するには、最低限この程度のタップ長が必要である)とした。また本手法におけるuのデータ長調整法としては、前述の1次補間法による方法を用いた。表より、本手法は、演算回数でLMSの14〜30%、寿命サイクル数で約30〜50%の計算量で済むことがわかる。
【0048】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、本出願人による特開平5−232969の手法は、誤差信号eを最小化するのに、M[dJ/du]Tと表された推定瞬時値を用いているために、過去のデータを参照する必要性がなくなり、喩えマイクが複数を擁するシステムであっても1つのマイクのシステムと同じになる故に、特表平1−501344号の手法よりも計算量においても低減され、制御の応答性は向上している。
【0049】
しかしながら、それでも実際の加速時においては、特開平5−232969の手法によっても騒音低減に応答性の悪い場合がある。
これは、式9においては、フィルタ演算において更新される必要のあるパラメータの数が多数に昇り、まだまだ演算に時間がかかっていることにある。
さらに、図6に関連して説明したように、騒音周期Tの変動に伴う制御の変更を線形補間を用いていたが、補間後の周期性の形状が実際とは離れてしまい、これも加速時の応答性の劣化の原因となるのである。
【0050】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の目的は、フィルタ処理における計算量を大幅に軽減できた車両の振動制御装置及び方法を提案する。
上記課題を達成するための本発明の構成は、
周期的な車両振動を低減する車両の振動制御装置において、
前記車両振動の基本振動数を検出する検出手段と、
検出された基本振動数の高調波成分のフーリエ級数に基づいて、車両振動を低減するための制御振動を発生するための制御信号を発生する発生手段と、
この制御信号に基づいて振動を発生するアクチュエータ手段と、
車両振動を示す振動信号を検出するためのセンサ手段と、
検出された振動信号と、前記アクチュエータ手段と前記センサ手段間の周波数伝達関数とに基づいて、各高調波成分についての前記フーリエ級数の振幅成分を更新する更新手段とを備えたことを特徴とする。
【0051】
同課題を達成するための本発明の他の構成は、
車両振動を低減するための制御振動をアクチュエータ手段から発生し、車両振動を示す振動信号をセンサ手段により検出することにより、周期的な車両振動を低減する車両の振動制御方法において、
前記車両振動の基本振動数を検出し、
検出された基本振動数の高調波成分のフーリエ級数に基づいて、車両振動を低減するための制御振動を前記アクチュエータ手段から発生し、
前記アクチュエータ手段と前記センサ手段間の周波数伝達関数とに基づいて、各高調波成分についての前記フーリエ級数の振幅成分を更新することを特徴とする。
【0052】
【作用】
前記制御振動は、検出された基本振動数の高調波成分のフーリエ級数に基づいて決定される。振動抑制の精度はフーリエ級数の次数に左右されるが、このフーリエ級数の振幅成分は、時間に依存する成分(Ci,Si)と位相成分(fci,fsi)という4つの成分のみとなり、必要次数をNとすれば、振動低減のために必要なパラメータの数は4N個となる。
【0053】
【実施例】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
〈原理〉
図9は、実施例の原理を説明するために、1スピーカ、1マイクのシステムのブロック図である。変数名u,d,g,eなどは図2のシステムと同じである。即ち、騒音dを打ち消すための制御変数uがスピーカから発生された場合に、その変数uはマイクによって応答g(即ち、スピーカ・マイク間インパルス応答関数)として認識され残留騒音(誤差騒音)eとして検出される。この誤差信号eはコントローラに入力され、以下の手法によりコントローラは制御変数uを計算する。
【0054】
先ず、u,d,eが全て周期Tの時間関数であるとすると、eは
【0055】
【数16】
【0056】
で表される。応答gが周期Tの関数であれば、次のようなgの級数h(t)を導入することにより、
【0057】
【数17】
【0058】
式16は、
【0059】
【数18】
【0060】
と変形することができる。本実施例の大きな特徴は、制御変数uと応答関数hとを次のようにフーリエ級数で表すことにある。即ち、
【0061】
【数19】
【0062】
【数20】
【0063】
である。式19,20を導入することにより、u,hを求めることは未知数ai,ψi,bj,φjを求めることに帰結する。
式20は、周波数伝達関数hがωによって表されている。換言すれば、式20を定義することによって、そのときのエンジン回転の周波数に対応する伝達関数の成分を用いてフィルタ演算における逐次演算を行なうことが可能となる。
【0064】
式19,20を式18に代入すると、
【0065】
【数21】
【0066】
【数22】
【0067】
ここで、ω1,ω2,…,ωNは全て2π/Tの整数倍であるから、上式の第1項と第2項は0となり、次の式23が得られる。
【0068】
【数23】
【0069】
23式において、
【0070】
【数24】
【0071】
【数25】
【0072】
【数26】
【0073】
【数27】
【0074】
【数28】
【0075】
【数29】
【0076】
である。fci,fsiは制御変数uの振幅aiの位相成分と考えることができ、fci,fsiは応答関数hの振幅biの位相成分と考えることができる。式23を行列表現、ベクトル表現、複素数表現を用いて書き改めると、
【0077】
【数30】
【0078】
となる。ここで、行列x,ベクトルh,ベクトルfは、
【0079】
【数31】
【0080】
【数32】
【0081】
【数33】
【0082】
である。4N個の未知数、ai(i=1〜N),ψi(i=1〜N),bi(i=1〜N),φi(i=1〜N)を求めることは、式30に最急降下法を適用して、4N個の未知数fci(i=1〜N),fsi(i=1〜N),hci(i=1〜N),hsi(i=1〜N)を求めることに帰結する。
式30において、Re(行列X・ベクトルf)は制御信号uを表す。従って、1スピーカ1マイク系では、ある時刻kにおける制御信号出力ukは、その時刻kにおける式26,式27で定義した適応パラメータfci,fsiを用いて、
【0083】
【数34】
【0084】
となる。後にさらに詳しく説明する、制御手順では、時刻kに於て生成した制御信号ukをスピーカから出力し、同時にマイクから入力した残留騒音信号ekに基づいて、次の時刻k+1における適応パラメータfci,fsiを決定する。
【0085】
【数35】
【0086】
式35は、誤差信号のパワーが最小になるように前述の最急降下法を用いて得た。式35において、周波数伝達関数hc,hsを含む行列は式28,29によって演算される。また、Cn,Snを含むベクトルは式24,25によって決定される。従って、式35に基づいて時刻kにおける適応パラメータfci,fsiから時刻k+1における適応パラメータfci,fsiが決定される。
【0087】
〈L×Mシステムへの拡張〉
以上は、1スピーカ、1マイクからなるシステムにおける手法の説明である。この手法を、図5に示されたようなL個のスピーカとM個のマイクからなるシステムに拡張すると、式30の代わりに、
【0088】
【数36】
【0089】
が得られる。ここで、ベクトルe,ベクトルdは夫々、M個のマイクが検出したM個の残留騒音e、M個の外部雑音dであり、
【0090】
【数37】
【0091】
【数38】
【0092】
また、ベクトルhiをk番目のスピーカに与えられる応答関数hkの振幅bについての式32に対応するベクトルとすると、即ち、
【0093】
【数39】
【0094】
となり、さらにベクトルfiをk番目のスピーカに与えられる制御変数ukの振幅aについての式33に対応するベクトルとすると、即ち、
【0095】
【数40】
【0096】
となる。従って、式36において、行列Hは、
【0097】
【数41】
【0098】
である。ここで、行列H中の要素であるベクトルhは、1スピーカ1マイク系で得られた式32のベクトルhを拡張したもので、例えばベクトルh11は、1番目マイクと1番目のスピーカとの間のその瞬間での伝達特性である。
また、行列Xは、
【0099】
【数42】
【0100】
となり、ベクトルハットfは、
【0101】
【数43】
【0102】
となる。
1スピーカ1マイクのシステムをLスピーカ、Mマイクのシステムの特種形態と考えれば、式36〜式43が一般的な騒音低減システムを表すこととなる。そこで、評価関数
【0103】
【数44】
【0104】
を最小化すべく、式43に対して最急降下法を適用する。即ち、各マイクで検出される騒音の平均パワーが最小になるようにする。但し、勾配ベクトルとして、その真の値を用いず瞬時推定値を用いる。すると、
【0105】
【数45】
【0106】
であるから、
【0107】
【数46】
【0108】
が得られる。尚、*は共役の転置を表す。
従って、ベクトルハットfを最適化するためには、
【0109】
【数47】
【0110】
であればよい。
尚、式36において、行列H(または2/T・H)は、スピーカ/マイク間の伝達特性と考えることができる。従って制御uは、
【0111】
【数48】
【0112】
となる。また、マイクで検出される制御音yを、
【0113】
【数49】
【0114】
と定義すれば、
【0115】
【数50】
【0116】
と表すことができる。
〈システムの構成〉
図10,図11は、本発明を車両に適用した場合の騒音低減システムの構成を示す。この実施例のシステムは、4スピーカ(20a〜20d)と4マイク(30a〜30d)の構成からなる。騒音の基本周期Tを検出するために、エンジン11の回転周期を検出する点火コイル10からの信号IGを用いる。図10のコントローラ100の詳細な構成を図11に示す。図11において、信号IGは波形成形器によって波形成形され、DSP102によって取り込まれる。4つのマイクからの信号eはA/D変換されてDSP102が取り込む。また、DSP102は、スピーカ出力信号uをDA変換してスピーカから出力する。
【0117】
〈制御手順〉
1スピーカ、1マイクシステム(=1×1システム)
図12は、説明の簡略化上、1スピーカと1マイクを用いたときのDSP102における制御手順を示す。
そこで、ステップS2では、波形成形器101を介して点火時期信号IGを入力し、ステップS4で、点火時期信号IGに基づいて騒音の基本周波数ωを演算する。ここで、
ω=2π/T
である。ステップS6では制御出力信号の位相角θkを次式に従って決定する。
【0118】
【数51】
【0119】
位相角θkは式19,20における位相角に相当するもので、φ等が未知故にθkで置き換えたものである。また、引き数kは時刻を表す。時刻の原点をイグニッションキーが投入されたときに取れば、時刻k=0においてθ0=0である。また、本発明では制御変数uや伝達関数が周期性を有していることを前提にしているので、θkの範囲を、
−π≦θk<π
とした。従って、時刻k=1においては、θ1=ωΔtである。
【0120】
ステップS8では、逐次的に、式24,25で定義されたパラメータCn+1,Sn+1を決定する。パラメータCn+1,Sn+1のnは高調波の次数を表す。エンジンからの騒音を制御することを目的とする場合には、5次の高長波を制御すれば十分である。パラメータCn+1,Sn+1は、式23から明らかなように、一般的に次の漸化式によって決定される。
【0121】
【数52】
【0122】
時刻k=1では、式24,25から明らかに、1次の高調波についてのパラメータに対しては、
【0123】
【数53】
【0124】
が得られ、二次については、
【0125】
【数54】
【0126】
を解くことによって得られる。二次のパラメータC,Sが得られれば、順にN次までのパラメータが得られる。式26,27によって定義されたN次までのパラメータを、fc1,fs1,fc2,fs2,…,fcN,fsNと表記し、そのパラメータの初期値(即ち、時刻k=1における)fc1,fs1,fc2,fs2,…,fcN,fsNが与えられていれば、n=1〜Nについての、Cn,SnはステップS8で求められているから、時刻k=1における制御変数出力u1は式34によって与えられる。即ち、ステップS10で、
【0127】
【数55】
【0128】
である。ステップS12ではこのようにして決定されたu1をスピーカに入力する。そして、ステップS14では、マイクから信号ek(即ちe1)を入力する。ステップS16では、基本周波数オメガに対応する周波数伝達関数hcn,hsnをメモリから読み出す。ステップS18では、式35に従って、次の時刻k+1における(即ち、時刻k=2における)、1次からN次(n=1〜N)までの適応パラメータfc1,fs1,fc2,fs2,…,fcN,fsNを決定する。式35において、k=1におけるfc1,fs1,fc2,fs2,…,fcN,fsNは与えられている。また、k=1における、n=1〜NについてのCn,Snも既にステップS8において求められているから、周波数伝達関数hさえ求めることができれば、時刻k=2のための、1次からN次(n=1〜N)までの適応パラメータfc1,fs1,fc2,fs2,…,fcN,fsNを決定することができる。
【0129】
ステップS16の周波数伝達関数hcn,hsnについて説明する。
スピーカマイク間の、ある周波数ωに対する周波数伝達関数をH(ω)と表せば、この伝達関数H(ω)を前もって測定することが可能である。そして、この伝達関数を、フーリエ変換することによりその高調波成分H(2ω),H(3ω)…H(Nω)を求めることができる。そして、このような各高調波成分に対する実数部分と虚数部分を、hc,hsと表記すれば、
【0130】
【数56】
【0131】
とおくことにより、各高調波に対するhcn,hsn(n=1〜N)を前もってコントローラ内のメモリに記憶しておくことができる。このようにして、式35によって、時刻k=2のための、適応パラメータfを決定することができる。
時刻k=2になれば、ステップS2,S4において、騒音の基本周波数ωが求められる。そして、制御出力uの位相角θ2が決定され、ステップS8で、1次からN次までのパラメータCn,Snが決定され、ステップS12で制御出力u2が決定され、ステップS14でu2が出力され、ステップS16でマイクから騒音信号e2が出力され、ステップS18で式35に従って時刻k=3のための適応パラメータfが決定される。
【0132】
一般的に、時刻k−1の制御サイクルの終了時点で、式35にしたがって時刻kの制御サイクルのための適応パラメータfkが決定されるから、時刻kの時点の制御サイクルでは、ステップS2,S4において、騒音の基本周波数ωが求められる。そして、制御出力ukの位相角θkが決定され、ステップS8で、1次からN次までのパラメータCnk,Snkが決定され、ステップS12で制御出力ukが式34に従って決定され、ステップS14でukが出力され、ステップS16でマイクから騒音信号ekが出力され、ステップS18で式35に従って時刻k+1のための適応パラメータfk+1が決定される。
【0133】
このようにして、逐次的に、その時刻に適したパラメータに従って決定された制御信号uがスピーカから出力され、その結果がマイク信号eによってモニタされ、その結果はパラメータfの更新に反映される。
以上説明した本実施例の方法の最大の特徴は、式19,20を導入したことにより、フィルタ演算処理において更新されるパラメータの数が大幅に減したことにある。即ち、エンジン騒音においては5次の高調波成分まで求めれば足りるとされているが、前述の特開平5−232969号の手法では例えば5次の高調波成分まで求めようとした場合には50個程度の適応パラメータの更新演算がを必要であったが、本手法を用いれば、fc1,fs1,fc2,fs2,…,fc5,fs5とC1,S1,C2,S2,…,C5,S5の合計20個のパラメータの更新演算で足りることである。パラメータ数が低減されても、収束速度が向上するために、結果的には、騒音低減の精度は劣化しない。従って、加速時などの過渡期においても追随性良く騒音を低減することができる。また、本手法は、振動の基本周期T(即ち、周波数ω)に変動が有っても、その変動はステップS8で求められるパラメータC1,S1,C2,S2,…,CN,SNに反映される。換言すれば、エンジン回転数が急激に変化する、即ち振動の基本周期が急激に変化する加速時においても、図5,図6に示したような制御出力uの線形補間(この補間は精度の低い)が不要となり、結果的に加速時の振動低減が向上する。
【0134】
なお、DSP内の不図示のメモリに記憶されている周波数伝達関数hcn,hsnについて補足する。この周波数伝達関数hcn,hsnは、前もって、所定の基本周波数毎に設定されている。その基本周波数をω0とすれば、
【0135】
【数57】
【0136】
となる。しかし、ステップS4で検出された周波数ωがメモリに記憶されている周波数と必ずしも一致するとは限らない。メモリ内に、例えば、ω0,ω1について記憶されていて、エンジンの周波数ω’(ω0<ω’<ω1)であった場合には、ω0について記憶されているhcn,hsnと、ω1について記憶されているhcn,hsnとに基づいて線形補間を適用して、ω’についてのhcn,hsnを求める。
【0137】
L個のスピーカ、M個のマイクのシステム(=L×Mシステム)
L個のスピーカから制御信号1u,2u,…,Luを出力し、M個のマイクから残留騒音em(k)を入力するシステムに、前述の1×1の手法を拡張的に適用する。図13にL×Mシステムの制御手順を示す。
ステップS22〜ステップS28は、1×1システムの制御手順と同じである。ステップS30では、式48に基づいて制御出力uを決定する。式48を、L×M系の適応パラメータ1fc1,1fs1,2fc1,2fs1,…,Lfc1,Lfs1を用いて変形すると、l番目(l=1〜L)のスピーカからの制御出力luは、
【0138】
【数58】
【0139】
となる。ここで、Cn,Snは1×1システムのそれと同じである。また、1fc1,1fs1,2fc1,2fs1,…,Lfc1,Lfs1の演算については後述する。
ステップS32では、DSP102は、L個のスピーカに制御出力lu(l=1〜L)を同時にあるいは順に出力する。ステップS34ではM個のマイクから順に、騒音信号em(k)を入力する。但し、m(k)は時刻kにおける整数列で、1,2,…,Mである。ステップS36では、基本周波数ωについての周波数伝達関数1m(k)hc1,1m(k)hs1…1m(k)hcN,1m(k)hsN,2m(k)hc1,2m(k)hs1…2m(k)hcN,2m(k)hsN,…,Lm(k)hc1,Lm(k)hs1…Lm(k)hcN,Lm(k)hsNをメモリから読み込む。
【0140】
1番目のスピーカとm(k)番目のマイクとの間についての、1次からN次までの周波数伝達関数hは、
【0141】
【数59】
【0142】
に良って、また、2番目のスピーカとm(k)番目のマイクとの間についての周波数伝達関数hは、
【0143】
【数60】
【0144】
によって、同様にして、L番目のスピーカとm(k)番目のマイクとの間についての周波数伝達関数hは、
【0145】
【数61】
【0146】
によって前もって決めておくことができる。
ステップS38では、これらの周波数伝達関数hを用いて、時刻k+1のための適応パラメータlfc,lfsを式47に基づいて求める。式47は周波数伝達関数を用いて、
【0147】
【数62】
【0148】
但し、n=1〜N、l=1〜Lである。
〈従来例との比較〉
本実施例の演算を、従来のLMS法と特開平5−232969号の手法とを比較し、定性的比較を図14に、定量的比較を図15に示した。なお、エンジン回転数を1200rpm、サンプリング周波数1kHz、1〜5時の全次数成分を演算した。
【0149】
〈他の実施例〉
上記実施例では、1×1系により、また、L×M系により、エンジン騒音を低減するシステムを説明したが、本発明は、エンジン騒音に限られず、例えば排気音の低減、さらには、車両振動の低減にも適用できる。
図16に、本発明を、振動低減のためのアクティブエンジンマウントに適用した例を示す。このマウント50は、エンジン40と車体間に作用する力を発生するためのアクチュエータを内蔵しており、加速度センサ60で検出された車体フロア振動のパワーが最小になるようにアクチュエータが制御される。これにより、アイドル振動や加速時の振動など、乗員にとって不快な車体振動が抑制される。
【0150】
【発明の効果】
以上説明した本発明において、振動を抑制するためにアクチュエータ手段(例えばスピーカ)から発生される制御振動は、検出された基本振動数ω(例えばエンジン回転数)の高調波成分のフーリエ級数に基づいて決定される。振動抑制の精度はフーリエ級数の次数に左右されるが、このフーリエ級数の振幅成分は、時間に依存する成分(Ci,Si)と位相成分(fci,fsi)という4つの成分のみとなり、必要次数をNとすれば、振動低減のために必要なパラメータの数は4N個となる。
【0151】
一方、特開平5−232969号においては、図6に示すように、制御振動u、周波数伝達関数ともに、必要なデータ数はT/Δt(=50個前後)だけ必要であった。本発明の振動制御装置若しくは振動制御方法では、大幅に演算量を低減することができ、その結果、振動制御が速やかに収束することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のLMS法を適用した騒音低減システムの構成を示すブロック図。
【図2】従来のLMS法を周波数領域において適用した騒音低減システムの構成を示すブロック図。
【図3】図2の従来例において積分回路が必要となる理由を説明する図。
【図4】特開平5−232969号の騒音低減システムの構成を示すブロック図。
【図5】特開平5−232969号の騒音低減の原理を説明する図。
【図6】特開平5−232969号における線形補間を説明する図。
【図7】特開平5−232969号にエラースキャニング法を適用した場合のシステム図。
【図8】特開平5−232969号とLMS法とを比較した結果を示す図。
【図9】本発明を1×1系に適用した実施例の概略構成を示した図。
【図10】本発明を4×4系に適用した実施例の構成を示した図。
【図11】図9の実施例のコントローラ100の構成を示す図。
【図12】1×1系の制御手順を示すフローチャート。
【図13】L×M系の制御手順を示すフローチャート。
【図14】実施例の騒音低減に必要な演算を従来の手法と定性的に比較した結果を示す図。
【図15】実施例の騒音低減に必要な演算を従来の手法と定量的に比較した結果を示す図。
【図16】本発明を騒音低減に適用した実施例のシステムを示す図。
Claims (9)
- 周期的な車両振動を低減する車両の振動制御装置において、
前記車両振動の基本振動数を検出する検出手段と、
検出された基本振動数の高調波成分のフーリエ級数に基づいて、車両振動を低減するための制御振動を発生するための制御信号を発生する発生手段と、
この制御信号に基づいて振動を発生するアクチュエータ手段と、
車両振動を示す振動信号を検出するためのセンサ手段と、
検出された振動信号と、前記アクチュエータ手段と前記センサ手段間の周波数伝達関数とに基づいて、各高調波成分についての前記フーリエ級数の振幅成分を更新する更新手段とを備えたことを特徴とする車両の振動制御装置。 - 前記検出手段はエンジンの回転を検出し、その回転周波数を振動の基本振動数とすることを特徴とする請求項1に記載の車両の振動制御装置。
- 前記更新手段は、前記センサ手段が検出した振動信号の平均パワーが最小になるように、各高調波成分についての前記フーリエ級数の振幅成分を更新することを特徴とする請求項1に記載の車両の振動制御装置。
- 前記センサ手段は複数の振動検知センサを有し、前記アクチュエータ手段は複数の振動アクチュエータを有し、
前記複数の振動検知センサの1つと前記複数の振動アクチュエータの1つを選択する手段とを具備し、
前記更新手段は、1サンプリング期間において、選択された1つのセンサと1つのアクチュエータとの間の周波数伝達関数に基づいて各高調波成分についての前記フーリエ級数の振幅成分を更新することを特徴とする請求項1に記載の車両の振動制御装置。 - 前記センサ手段はマイクロフォンであり、前記アクチュエータ手段はスピーカであることを特徴とする請求項1に記載の車両の振動制御装置。
- 車両振動を低減するための制御振動をアクチュエータ手段から発生し、車両振動を示す振動信号をセンサ手段により検出することにより、周期的な車両振動を低減する車両の振動制御方法において、
前記車両振動の基本振動数を検出し、
検出された基本振動数の高調波成分のフーリエ級数に基づいて、車両振動を低減するための制御振動を前記アクチュエータ手段から発生し、
前記アクチュエータ手段と前記センサ手段間の周波数伝達関数とに基づいて、各高調波成分についての前記フーリエ級数の振幅成分を更新することを特徴とする車両の振動制御方法。 - エンジンの回転周波数を振動の基本振動数とすることを特徴とする請求項6に記載の車両の振動制御方法。
- 前記更新工程において、前記センサ手段が検出した振動信号の平均パワーが最小になるように、各高調波成分についての前記フーリエ級数の振幅成分を更新することを特徴とする請求項6に記載の車両の振動制御方法。
- 前記センサ手段は複数の振動検知センサを有し、前記アクチュエータ手段は複数の振動アクチュエータを有し、
前記複数の振動検知センサの1つと前記複数の振動アクチュエータの1つを選択し、
1サンプリング期間において、選択された1つのセンサと1つのアクチュエータとの間の周波数伝達関数に基づいて各高調波成分についての前記フーリエ級数の振幅成分を更新することを特徴とする請求項6に記載の車両の振動制御方法。
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---|---|---|---|
JP12371694A JP3579898B2 (ja) | 1994-06-06 | 1994-06-06 | 車両の振動制御装置および振動制御方法 |
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