JP3430795B2 - 周期性信号の適応制御方法 - Google Patents

周期性信号の適応制御方法

Info

Publication number
JP3430795B2
JP3430795B2 JP13209096A JP13209096A JP3430795B2 JP 3430795 B2 JP3430795 B2 JP 3430795B2 JP 13209096 A JP13209096 A JP 13209096A JP 13209096 A JP13209096 A JP 13209096A JP 3430795 B2 JP3430795 B2 JP 3430795B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
adaptive
signal
algorithm
phase
transfer characteristic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP13209096A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09319403A (ja
Inventor
勝博 後藤
浩幸 市川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Riko Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Riko Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Riko Co Ltd filed Critical Sumitomo Riko Co Ltd
Priority to JP13209096A priority Critical patent/JP3430795B2/ja
Publication of JPH09319403A publication Critical patent/JPH09319403A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3430795B2 publication Critical patent/JP3430795B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Soundproofing, Sound Blocking, And Sound Damping (AREA)
  • Feedback Control In General (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の周期性信号の適応制
御方法は、除去すべき周期性信号に対し適応的に生成し
た信号を加えることによって、その周期性信号の特定周
波数成分の影響を能動的に除去する適応制御または能動
制御の技術分野に属する。除去すべき周期性信号は、振
動(能動制振)、騒音(アクティブ・ノイズ・サプレッ
ション)、電磁波、電気ノイズなどの多岐にわたるの
で、本発明は極めて広い技術分野において適用可能であ
る。
【0002】
【従来の技術】周期性信号の適応制御方法に関しては、
いわゆるアクティブコントロールとして既に幾つもの制
御理論とその適用例があり、例えば社団法人「計測自動
制御学会」発行の「計測と制御」誌第32巻第4号(平
成5年4月)の特集記事にも紹介されている。
【0003】(FX−LMS)従来、各種騒音や振動等
に対するアクティブキャンセルシステムとして適応デジ
タルフィルタ技術が利用されており、特に図10に模式
的に示すFiltered−X LMSアルゴリズム
(略称FX−LMS)が広く利用されている。また、こ
の変形態様として、図11に模式的に示すように、制御
対象の伝達特性Gの推定値を考慮に入れたFX−LMS
制御方法もある。
【0004】しかし、FX−LMSにおいては、参照信
号を生成する際に畳み込み演算が必要になり、系のイン
パルス応答を適正に実現するためにはサンプリング周期
によって異なる多数のタップ数が必要とされる。したが
って処理データが膨大になり、これに伴うフィルタ係数
の演算にもタップ数分の畳み込み演算が必要となるた
め、なお演算量が増加する。特に、複数の入出力信号を
扱う場合には、このような演算量の増加が一層顕著とな
り、演算装置の能力が追いつかなくなるばかりでなく、
フィルタ係数の適正な収束特性が得られない恐れもあ
る。
【0005】(SFX−LMS)このような不都合を解
消しFX−LMSの演算量を削減する目的で、図12に
模式的に示す同期式適応アルゴリズム(Synchro
nized Filterd−X Algorith
m、略称SFX−LMSまたは単にSFX)が開発され
た。
【0006】SFXは、周期性の信号または擬周期性の
信号を対象としており、周期性入力信号の基本周期と同
期したインパルス列をプロセッサ内部で生成し、これを
仮想入力としてFX−LMSを適用できるようにしたも
のである。SFXのアルゴリズムは、特願平6−201
384号「周期性信号の適応制御方法」明細書の従来の
技術の欄に具体的に記載されている。SFXを用いるこ
とによって畳み込み演算が不要になり演算量を削減でき
るので、サンプリング周期をより速く設定できて制御能
力の向上を図ることができる。
【0007】しかしながら、上記SFXにおいては、制
御対象とする周期性信号の周波数が上昇すると、これに
同期してサンプリング周期が短くなるので、インパルス
応答のタップ数もこれに伴って次数を高くする必要が生
じる。その結果、これらの処理に要する演算時間の増大
とサンプリング周期の短縮によって、演算装置の能力が
不足したり、その不足を補うために演算精度を低下させ
ざるを得ないなどの問題がなお生じていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
(DXHS−LMS:先行技術)前述のSFXが持つ問
題を解決し、周期性信号のサンプリング周期の短縮に伴
う演算精度の低下をもたらすことなく、システムの信号
除去特性を向上させることができる周期性信号の適応制
御方法を、本件出願人は前述の特願平6−201384
号に出願済である。その明細書に記載された先行技術と
しての制御方法を、ここではDelayed−X Ha
rmonics Synthesizerアルゴリズム
(略称DXHS−LMSまたは単にDXHS)と呼ぶこ
とにする。その制御方法の概要を、ブロック線図にして
図13に模式的に示す。
【0009】DXHSは、例えば自動車のエンジンの回
転や、飛行機のプロペラおよびヘリコプタのロータの回
転などによって生じる騒音や振動のような、周期性を持
った信号の基本波とその高調波を抑制対象とし、その特
定周波数成分を除去する適応制御方法である。すなわち
DXHSは、正弦波出力信号を含む関数の二乗で表され
る評価関数を、同出力信号の振幅と位相の関数であるフ
ィルタ係数Wによって偏微分することにより勾配ベクト
ルを求め、勾配ベクトルに一定数を掛け合わせたものを
前記フィルタ係数から減算することにより、時刻の経過
毎のフィルタ係数を更新し、更新したフィルタ係数の振
幅と位相により、正弦波出力信号の振幅と位相を更新す
るものである。かかる計算手法によりDXHSでは、従
来は出力計算に必要であった畳み込み演算を不要にし、
演算量を削減して演算精度の低下を防ぐことができる。
【0010】なお、前述のFX−LMS,FSXおよび
DXHSのいずれも、LMS(最小二乗法)系の更新ア
ルゴリズムである。 (従来技術および先行技術が持つ問題点)ところで、前
述の従来技術および先行技術(DXHS)の各アルゴリ
ズムでは、通常、システムの遅延要素を含む伝達特性を
インパルス応答、または各周波数でのゲインおよび位相
遅れといった形式で予め予測し、これらのデータに基づ
いてフィルタ係数の更新を行っている。
【0011】しかし、現実のシステムに応用すると、シ
ステムの伝達特性が初期に測定した状態のままであると
は限らない。例えば自動車のような系を対象とした場
合、停車時と走行時とでは伝達特性に違いがあり、ま
た、気温等の気象条件や荷客積載状態によっても左右さ
れるほか、新車の状態と数万キロメートル走行後の状態
とでも伝達特性が異なる。このように、実際の制御対象
となるシステムでは、常にその伝達特性が変化する可能
性を持っている。このような伝達特性の変化、特に位相
遅れで表現される遅延特性の変化に対しては、前述の従
来技術および先行技術(DXHS)では、対応できる範
囲がごく限られたものでしかなかった。
【0012】この問題点を端的に示す例として、発明者
らは、FX−LMSとDXHSとを取り上げ、両者の位
相遅れ特性の変化に対する応答を調べる実験を行った。
(同実験については、前述の特願平6−201384号
に詳細が記載されている。)同実験では、電気回路内に
位相変換アンプを用いて位相遅れすなわち遅延特性の変
化を人為的に作りだし、制御対象システムの位相遅れ特
性の変化に対する上記両アルゴリズムの追随性を調べ
た。
【0013】その結果、FX−LMS・DXHS共に位
相変化±60度程度では対応できて応答は収束するが、
±90度に達すると追随できなくなり、系の応答は発散
してしまうことが確認された。したがって、従来技術
(FX−LMS)だけではなく先行技術(DXHS)に
よっても、制御対象となるシステムの伝達特性の位相遅
れが予め設定した値から大きく外れると、抑制すべき周
期性信号を安定に制御することができなくなるという不
都合があった。
【0014】そこで本発明は、制御対象となるシステム
の伝達特性(各周波数でのゲインおよび位相遅れ)の変
化に対応することができ、安定性に優れ収束が速やかな
周期性信号の適応制御方法を提供することを解決すべき
課題とする。わけても、位相遅れすなわち遅延特性の大
きな経時変化に対応してこれに追随することができ、大
きな位相遅れの変動に遇っても発散することなく速やか
に収束し、抑制すべき周期性信号を安定に制御すること
ができることを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
記課題を解決するために、発明者らは以下の手段を発明
した。 (第1手段) 本発明の第1手段は、観測点へ影響を及ぼす周期性信号
f(n)に対し、該周期性信号に同期している一次の基
本正弦波およびまたは該基本正弦波から該基本正弦波の
K次(2≦K)までの高調波信号からなる適応信号y
(n)を、逆位相で直接または間接的に加えることによ
って、該周期性信号f(n)の特定周波数成分の該観測
点への影響を能動的に除去し、該観測点で検知される誤
差信号e(n)を低減する周期性信号の適応制御方法に
おいて、時刻nにおいて、前記周期性信号f(n)の一
次角振動数ωに基づき、前記適応信号y(n)を発生さ
せる適応信号発生アルゴリズムと、該周期性信号f
(n)の前記基本正弦波の周期の自然数倍の時間に一致
する無駄時間qだけ過去の該誤差信号e(n−q)と、
当該時刻での該誤差信号e(n)とに基づいて、該適応
信号y(n)が前記観測点に至るまでの制御対象システ
ムの伝達特性Gを推定する、すなわち数5および数6の
うち一方に従って該伝達特性Gの推定値Gハットの成分
である推定利得Aハット(n)および推定位相Φハット
(n)を逐次更新する伝達特性推定アルゴリズムと、該
適応信号y(n)の各次数(k=1,・・,K)の正弦
波の振幅akおよび位相φk を成分として含む適応係数
ベクトルW(n)を、少なくとも該誤差信号e(n)お
よび該推定位相Φハット(n)に基づいて該時刻nの経
過毎に更新し、該周期性信号f(n)の各次数の振幅、
位相および一次角振動数ωの変動と該制御対象システム
の該伝達特性Gの変動とに対して、該適応係数ベクトル
W(n)の各該成分を適応的に調整する適応係数ベクト
ル更新アルゴリズムとを有し、更新された該適応係数ベ
クトルW(n)の成分である各次数の振幅ak および位
相φk をもって、該適応信号y(n)の各次数の正弦波
の振幅ak および位相φk が更新されることを特徴とす
る周期性信号の適応制御方法である。
【0016】
【数5】
【0017】
【数6】
【0018】本手段では、伝達特性推定アルゴリズムに
より、適応信号y(n)が観測点に至るまでの制御対象
システムの伝達特性Gが推定される。すなわち、伝達特
性Gの推定値であるGハットの成分としての推定利得A
ハット(n)および推定位相Φハット(n)が逐次更新
されて、徐々に真値に収束していく。その際、適応信号
y(n)の振幅ak および位相φk と、周期性信号f
(n)の一次角振動数ωと、制御対象システムの伝達特
性Gの位相Φの推定値Φハット(n)とが、伝達特性推
定アルゴリズムの計算に供される。あわせて、観測され
た現時点の誤差信号e(n)およびそのqステップ以前
の誤差信号e(n−q)と、現時点の適応信号y(n)
の振幅a(n)および位相φ(n)ならびにそのqステ
ップ以前の振幅a(n−q)および位相φ(n−q)と
が、伝達特性推定アルゴリズムの計算に供される。
【0019】qステップの時間差は、qステップに相当
する時間tqが周期性信号f(n)の基本振動の周期T
(=2π/ω)の自然数倍に一致するように、設定され
ている。すなわち、準定常状態では、時刻nの各種信号
と時刻(n−q)の同信号とは、位相が360°の整数
倍異なる状態で互いに同期している。それゆえ、qステ
ップの時間差のある誤差信号e(n),e(n−q)と
適応信号yの振幅ak(n),ak (n−q)および位
相φk (n),φk (n−q)とに基づいて、確率論的
に制御対象システムの伝達特性Gを逐次推定していくこ
とができる。すなわち、推定利得Aハット(n)および
推定位相Φハット(n)は、伝達特性推定アルゴリズム
によって逐次更新され、確率的に徐々に真値に収束して
いく。
【0020】いっぽう、制御対象システムの伝達特性G
の推定と平行して、適応信号y(n)の振幅ak (n)
および位相φk (n)をそれぞれ成分としている適応係
数ベクトルW(n)の更新が、適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズムにより行われる。すなわち、適応係数ベクト
ルW(n)の成分は、適応信号y(n)の各次数の正弦
波の振幅ak および位相φk を含むと定義される。適応
係数ベクトルW(n)の各成分は、誤差信号e(n)お
よび推定位相Φハット(n)に基づいて時刻nの経過
(すなわちサンプリング周期または制御周期)毎に更新
される。この更新は、周期性信号f(n)の各次数k
(k=1,・・,K)の振幅・位相および一次角振動数
ωの変動と、制御対象システムの伝達特性Gの変動とに
対して、適応係数ベクトルW(n)の各成分を適応的に
調整するものである。
【0021】適応係数ベクトル更新アルゴリズムによっ
て更新された適応係数ベクトルW(n)の成分である各
次数の振幅ak および位相φk をもって、適応信号y
(n)の各次数の正弦波の振幅ak および位相φk が更
新される。そして、適応係数ベクトル更新アルゴリズム
により、時刻nにおいて周期性信号f(n)の一次角振
動数ωに基づき、適応信号y(n)の発生が行われる。
【0022】すなわち、適応信号y(n)は、各次数k
(=1,・・,K)において適正な振幅ak および位相
φk で角振動数kω(時間はnt)の正弦波として発振
され、周期性信号f(n)の影響が除去されるべき観測
点に到達する。観測点では、周期性信号f(n)の各次
数の振動成分と対応する適応信号y(n)の各次数の正
弦波とは、おおむね同振幅・逆位相で重畳され、互いに
相殺して誤差信号e(n)は抑制される。その結果、周
期性信号f(n)を適応的に相殺する適応制御が可能と
なり、観測点における周期性信号f(n)の影響を抑制
することができる。
【0023】以上の本適応制御の過程で、伝達特性推定
アルゴリズムにより、適応信号y(n)が観測点に至る
までの制御対象システムの伝達特性Gの推定値Gハット
(推定利得Aハット(n)、推定位相Φハット(n))
が求められている。それゆえ、制御対象システムの伝達
特性Gが大幅に変動した場合にも、伝達特性推定アルゴ
リズムでその推定値Gハットを調整して追随させること
により、発散することなく速やかに適応することが可能
である。たとえば、制御対象システムの伝達特性Gの位
相Φが急変したり大幅に変動したりした場合にも、伝達
特性推定アルゴリズムで推定位相Φハット(n)を追随
させることにより、速やかに適応することができる。
【0024】したがって本手段によれば、制御対象とな
るシステムの伝達特性G(各周波数でのゲインAおよび
位相遅れΦ)の変化に対応することができ、安定性に優
れ収束が速やかな周期性信号の適応制御方法を提供する
ことができる。わけても本手段によれば、制御対象シス
テムの伝達特性Gのうち、従来技術では適応が難しかっ
た位相遅れΦ、すなわち遅延特性の大きな経時変化に対
応してこれに追随することができる。その結果、本手段
によれば、大きな位相遅れΦの変動に遇っても誤差信号
e(n)は発散することなく速やかに収束し、観測点に
おいて抑制すべき周期性信号f(n)の影響を抑制して
安定に制御することができるという効果がある。
【0025】(第2手段) 本発明の第2手段は、上記第1手段において、前記適応
係数ベクトル更新アルゴリズムは、前記適応係数ベクト
ルW(n)を、前記誤差信号e(n)と前記伝達特性G
の推定値Gハットの成分のうちの前記推定位相Φハット
(n)のみとに基づいて該時刻nの経過毎に更新し、該
周期性信号f(n)の各次数の振幅、位相および一次角
振動数ωの変動と該制御対象システムの該伝達特性Gの
変動とに対して、該適応係数ベクトルW(n)の各該成
分を適応的に調整する、すなわち数7および数8のうち
一方で定義されるDXHSアルゴリズムである周期性信
号の適応制御方法である。
【0026】
【数7】
【0027】
【数8】
【0028】本手段では、適応係数ベクトルW(n)の
更新アルゴリズムが、DHXSアルゴリズムである。そ
れゆえ、周期性信号f(n)の一次角振動数ωが増大し
ていく場合にも、サンプリング周期tを短くすることな
く適応することができるというDXHSアルゴリズム本
来の長所を引き継いでいる。また、適応係数ベクトルW
(n)の更新に、各種ある最小二乗法系のアルゴリズム
のうち多くで必要とされる畳み込み演算が不要であり、
畳み込み演算をしない分、計算量が軽減されている。
【0029】なお、上記数7および上記数8に記載され
ているように、適応係数ベクトルW(n)の修正項の中
には、全要素に制御対象システムの伝達特性Gの位相遅
れの推定値Φハットが含まれている。すなわち、推定値
Φハットを適応係数ベクトルW(n)の修正量に含むこ
とにより、制御対象システムの伝達特性Gの位相遅れΦ
の大きな変動にも追随していくことが可能になってい
る。
【0030】したがって本手段によれば、前述の第1手
段の効果に加え、より少ない計算量で一次角振動数ωが
変動する周期性信号の適応制御が可能である。すなわ
ち、本手段によれば、制御装置にかかる負担が減るの
で、より安価に制御システムを構築することが可能にな
るという効果がある。 (第3手段)本発明の第3手段は、上記第1手段におい
て、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムは、前記誤
差信号e(n)の二乗を前記適応係数ベクトルW(n)
で偏微分して求められる勾配ベクトルの各成分に、適正
なステップサイズ係数を乗じて修正量ベクトルを求め、
該適応係数ベクトルW(n)から該修正量ベクトルを減
算して該適応係数ベクトルW(n)を更新する最小二乗
法系のアルゴリズムである周期性信号の適応制御方法で
ある。
【0031】本手段では、最小二乗法系のアルゴリズム
で適応係数ベクトル更新アルゴリズムが組まれているの
で、比較的直観的にアルゴリズムが構成しやすいという
長所がある。なお、誤差信号e(n)の二乗を適応係数
ベクトルW(n)で偏微分する際、誤差信号e(n)に
は制御対象システムの伝達特性Gの位相遅れΦが含まれ
ている。この位相遅れΦは、上記適応係数ベクトル更新
アルゴリズム上では、伝達特性推定アルゴリズムで推定
されている推定値Φハットをもって代替されている。本
手段の適応制御方法のアルゴリズムは、もって制御対象
システムの伝達特性Gの位相遅れΦの大きな変動にも追
随していくことが可能になっている。
【0032】したがって本手段によれば、前述の第1手
段の効果に加えて、比較的直観的にアルゴリズムが構成
しやすく、多くの形式があり得る最小二乗法系のアルゴ
リズムを各々の特性に応じて採用することができるとい
う効果がある。 (第4手段)本発明の第4手段は、上記第1手段におい
て、前記周期性信号fの前記一次角振動数ωの変動範囲
が複数の区間に分けられており、前記適応信号y(n)
の各次数(k=1,・・,K)の正弦波の前記振幅ak
および前記位相φk 、ならびに前記制御対象システムの
前記伝達特性Gの前記推定値Gハットの成分である前記
推定利得Aハットおよび前記推定位相Φハットのうち、
少なくともいずれかの適応値が各該区間毎に記憶されて
いるテーブルデータを有し、該一次角振動数ωが変動し
て、該一次角振動数ωに対応している当該区間が変わる
と、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムおよび前記
伝達特性推定アルゴリズムのうち少なくとも一方に、該
一次角振動数ωの変動先の該区間の該テーブルデータか
ら該適応値が供給される周期性信号の適応制御方法であ
る。
【0033】本手段では、テーブルデータに、周期性信
号f(n)の一次角振動数ωの区間毎に、適応係数(a
k ,φk ,Aハット,Φハット)のうち重要ないくつか
が読み出し可能な記憶として保存されている。この記憶
は、ベンチマークテスト等により本手段の起動以前に予
め定められているデータでも良いし、本手段の運転中に
適応していった適応係数(ak ,φk ,Aハット,Φハ
ット)から読み込んで記憶としてもよい。
【0034】そして、一次角振動数ωが変動して一つの
区間から他の区間に移ると、記憶されている適応値が、
自動的にテーブルデータの当該区間から読みだされ、伝
達特性推定アルゴリズムおよび適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズムに供給される。通常、一次角振動数ωが変動
すると、周期性信号f(n)の振幅や位相ならびに制御
対象システムの伝達特性G(A,Φ)も少なからず変動
することも多い。それゆえ、一次角振動数ωの変動によ
り制御システムの適応状態は乱れるが、適応状態に影響
が大きい適応係数については、テーブルデータからその
一次角振動数ωによく適応した値を与えられれば、制御
系はすみやかに適応することができる。すなわち、誤差
信号e(n)も過大になることなく速やかに収束する。
【0035】したがって本手段によれば、前述の第1手
段の効果に加えて、一次角振動数ωが変動し、それに起
因する制御対象システムの伝達特性Gや周期性信号f
(n)の振幅・位相特性が激変する場合にも、よりいっ
そう安定で速やかに適応制御することができる。すなわ
ち、一次角振動数ωの変動により特性が激変するシステ
ムに対しても、テーブルデータを参照することによって
誤差信号e(n)の過大な増加を抑制し、速やかに収束
させることができるという効果がある。
【0036】(第5手段)本発明の第5手段は、上記第
4手段において、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズ
ムおよび前記伝達特性推定アルゴリズムが演算される毎
に、または収束判定アルゴリズムを有し該収束判定アル
ゴリズムにより十分に適応し収束していると判定された
場合に、前記適応係数ベクトルW(n)または前記伝達
特性推定値Gハットのうち少なくとも一方から推定値が
供給され、前記テーブルデータのうち前記一次角振動数
ωが該当している前記区間の前記適応値は、該推定値で
更新されることを特徴とする周期性信号の適応制御方法
である。
【0037】本手段では、適応係数ベクトル更新アルゴ
リズムおよびまたは伝達特性推定アルゴリズムにより更
新または推定された適応値(ak ,φk ,Aハット,Φ
ハット)をもって、テーブルデータの更新が行われてい
る。すなわち、制御対象システムの伝達特性Gや周期性
信号f(n)の周波数特性が経時変化していく場合に
も、随時にテーブルデータがアップデートされる。
【0038】それゆえ、周期性信号f(n)の一次角振
動数ωが頻繁に通過する範囲においては、制御対象シス
テムや周期性信号f(n)の経時変化に追随して、テー
ブルデータがアップデートされている。こうしてテーブ
ルデータが常に適正な範囲の値に保たれているので、テ
ーブルデータの値が適正な適応値とかけ離れることはな
い。したがって、他の一次角振動数ωの範囲に入った際
に、テーブルデータから適応値を与えられることによっ
て逆に適応状態が悪化し、誤差信号e(n)が過大にな
るという不具合は防止される。
【0039】したがって本手段によれば、前述の第4手
段の効果に加えて、制御対象システムの伝達特性Gや周
期性信号f(n)の周波数特性が経時変化していく場合
にも、より安定でいっそう速やかに収束するという効果
がある。なお、テーブルデータのアップデートが制御周
期毎に行われる適応制御方法では、収束判定アルゴリズ
ムを必要とせず、比較的簡素なアルゴリズム構成で済む
という長所がある。
【0040】いっぽう、収束判定アルゴリズムを有し、
収束判定アルゴリズムにより十分に適応し収束している
と判定された場合にテーブルデータのアップデートが行
われる適応制御方法には、他の長所がある。すなわち、
テーブルデータの区間を変わった際に、始めは適応が十
分ではない場合もありえるが、十分に適応しきらない状
態ではテーブルデータのアップデートが行われることが
ない。逆に、テーブルデータがアップデートされる際に
は、すでに十分適応が完了していると収束判定アルゴリ
ズムで判定されている場合に限られているので、テーブ
ルデータには十分に信頼に足りる適応値のみが収録され
る。それゆえ、テーブルデータの信頼性が高くなるとい
う長所がある。
【0041】(第6手段)本発明の第6手段は、上記第
1手段において、前記周期性信号f(n)には、制御す
べき複数の互いに異なる一次角振動数ω j (j=1,・
・,J)の正弦波振動成分が含まれ、前記適応信号発生
アルゴリズム、前記伝達特性推定アルゴリズムおよび前
記適応係数ベクトル更新アルゴリズムは、該一次角振動
数ωj のそれぞれについて演算される周期性信号の適応
制御方法である。
【0042】本手段では、その影響を抑制されるべき周
期性信号f(n)に、高調波ではなく、互いに異なる一
次角振動数ωj (j=1,・・,J)の正弦波振動成分
が含まれている。一次角振動数ωj の振動成分の各々に
ついては、第1手段と同様にK次までの高調波を含みう
るものとする。すなわち、第1手段では適応信号y
(n)を一次角振動数ωの基本正弦波およびまたはその
K次までの高調波として定義しているが、本手段では適
応信号yj(n)のそれぞれについて基本波およびまた
は高調波を定義している。したがって、第1手段では適
応信号発生アルゴリズムは、 であるが、第6手段では適応信号発生アルゴリズムは、 である。
【0043】そして、互いに異なる一次角振動数ωj
それぞれについて、適応係数ベクトル更新アルゴリズム
および伝達特性推定アルゴリズムが演算され、適応制御
が行われる。したがって本手段によれば、前述の第1手
段の効果に加えて、周期性信号f(n)の発生源が複数
個あって互いに独立な信号成分を生成する場合にも、本
発明の周期性信号の適応制御方法を適用することができ
る。その結果、互いに独立な複数の信号成分をもつ周期
性信号f(n)に対しても、位相遅れの大きな経時変化
に追随して適応し、誤差信号e(n)を抑制することが
可能になるという効果がある。
【0044】
〔実施例1〕
(実施例1の概要)本発明の実施例1としての周期性信
号の適応制御方法は、図1に示すように、観測点Pに外
乱として加えられる周期性信号f(n)に対し、逆位相
で相殺信号z(n)を加えることにより、その影響を抑
制する適応制御システム100として実施される。適応
制御システム100は、適応フィルタ10と、伝達特性
推定アルゴリズム2と、適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム3とを主たる構成要素としている。
【0045】適応フィルタ10は、適応信号発生アルゴ
リズム1(図4参照)に相当するもので、周期性信号f
(n)の同期信号x(n)をもとに、ゲインak と位相
差φ k とを与えて適応信号y(n)を発生させる。適応
信号y(n)は、適応制御システム100から出力さ
れ、制御対象システム4の伝達特性Gを経て相殺信号z
(n)に変換され、観測点Pに至る。観測点Pでは、周
期性信号f(n)と相殺信号z(n)とが重畳され、観
測信号c(n)(c(n)=f(n)+z(n))とな
る。誤差信号e(n)は、制御目標信号d(n)と観測
信号c(n)との差として定義される(e(n)=d
(n)−c(n))。
【0046】伝達特性推定アルゴリズム2は、時刻nで
の周期性信号f(n)の一次角振動数ωにおける制御対
象システム4の伝達特性G〔ゲインA,位相Φ〕を推定
するアルゴリズムである。伝達特性Gの推定には、周期
性信号f(n)の基本正弦波の周期の自然数倍の時間に
対応する無駄時間qだけ過去の観測信号c(n−q)
と、現時点での観測信号c(n)とが供される。伝達特
性推定アルゴリズム2では、適応信号y(n)が観測点
Pに至るまでの制御対象システム4の伝達特性Gを推定
する。すなわち、数9にしたがい、k次振動の角振動数
kωにおける伝達特性Gの推定値Gハットの成分(推定
利得Ak ハット(n)および推定位相Φkハット
(n))が逐次更新される。(注:推定値であることを
示す目的で数式中の記号の上に付した山形記号は、本明
細書中では記号の末尾に「ハット」を付して表現するも
のとする。)
【0047】
【数9】
【0048】いっぽう、適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム3は、適応信号y(n)の各次数(k=1,・・,
K)の正弦波の振幅ak および位相φk を成分として含
む適応係数ベクトルW(n)を調整するアルゴリズムで
ある。同アルゴリズムでは、誤差信号e(n)および推
定位相Φk ハット(n)に基づいて時刻nの経過毎に適
応係数ベクトルW(n)が更新される。その際、周期性
信号f(n)の各次数の振幅ak 、位相φk および一次
角振動数ωの変動と、制御対象システム4の伝達特性G
の変動とに対し、適応係数ベクトルW(n)の各成分は
適応的に調整される。適応係数ベクトル更新アルゴリズ
ム3は、最小自乗法系の更新アルゴリズムでもよいが、
本実施例では数10で定義されるDXHSアルゴリズム
を使用している。
【0049】
【数10】
【0050】適応係数ベクトルW(n)の適応係数(各
次数の振幅ak および位相φk )は、適応係数ベクトル
更新アルゴリズム3により適正に調整され、適応フィル
タ10に提供される。適応フィルタ10は、周期性信号
f(n)の基本振動(k=1)と同期している所定振幅
の同期信号x(n)=Xcos{ωtn}をフィルタリ
ングし、振幅ak および位相φk の調和信号である適応
信号y(n)に変換する。適応信号y(n)は、制御対
象システム4の伝達特性Gを経て相殺信号z(n)とな
り、観測点Pにおいて周期性信号f(n)と相殺する。
こうして、周期性信号f(n)のうち基本振動からK次
の高調波までの成分の影響は、適応制御システム100
の作用により除去もしくは抑制される。
【0051】(実施例1の理論展開)前述の適応係数ベ
クトル更新アルゴリズム3および伝達特性推定アルゴリ
ズム2について、前述のように定めた根拠を以下に明ら
かにしておく。 (適応係数ベクトル更新アルゴリズムの導出)まず、適
応係数ベクトル更新アルゴリズム3について説明する。
【0052】適応係数ベクトル更新アルゴリズム3は、
DXHSを基礎にした適応係数ベクトルW(n)の更新
アルゴリズムである。DXHSについては、特願平7−
129868号、特願平8−5709号、特願平8−1
0763号に詳細に記載されている。通常の最小自乗法
においては、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリ
ズムは、誤差e(n)の二乗平均の期待値E〔e
2 (n)〕の代用として、瞬時誤差すなわち誤差信号e
(n)の二乗が評価関数J(n)として使用される。評
価関数J(n)=e2 (n)を、適応係数ベクトルW
(n)の各成分で偏微分することにより、数11に示す
ように、勾配ベクトルD(n)が求められる。勾配ベク
トルD(n)に適正なステップサイズ係数μを乗じれ
ば、修正量ベクトルμD(n)が定められる。
【0053】
【数11】
【0054】そして、数12に示すように、現時点の適
応係数ベクトルW(n)から修正量ベクトルμD(n)
を減算することにより、更新された適応係数ベクトルW
(n+1)が算出される。
【0055】
【数12】
【0056】数12の更新過程を繰り返すことにより、
適応係数ベクトルW(n)は逐次更新され、最適解(誤
差信号e(n)の二乗を確率的に最小にする)の付近に
収束する。DXHSは、最小自乗法によるアルゴリズム
の改良として位置づけられる。理解を容易にするため
に、適応信号y(n)が高調波をもたず基本周波数成分
のみからなる場合を想定し、DXHSによる適応係数ベ
クトル更新アルゴリズム3をもつ適応制御システムを図
2に示す。
【0057】この場合、適応信号はy(n)=a(n)
・cos{ωtn+φ(n)}であるから、適応係数ベ
クトルW(n)の成分は、振幅保障係数としてのa
(n)と位相保障係数としてのφ(n)との2成分であ
る。それゆえ、図2中の適応フィルタ10にあるよう
に、適応係数ベクトルは、W(n)=〔a(n),φ
(n)〕T と表記される。
【0058】いっぽう、制御対象システム4の伝達特性
Gは、経時変化を無視して表記すれば、応答が線型な範
囲では角振動数ωにより定まるゲインA(ω)および位
相(位相遅れの逆符号)Φ(ω)として表記される。す
なわち、図2中の制御対象システム4にあるように、G
(ω)=〔A(ω),Φ(ω)〕T と表記される。ただ
し、ゲインA(ω)および位相Φ(ω)は、経時変化す
ることがある。
【0059】それゆえ、誤差信号e(n)は、適応信号
y(n)の振幅a(n)および位相φ(n)、制御対象
システム4のゲインA(ω)および位相Φ(ω)、周期
性信号f(n)および制御目標信号d(n)を成分とし
て表記される。すなわち、誤差信号e(n)は、図2の
関係に従って次の数13のごとく展開される。
【0060】
【数13】 e(n) = d(n)−c(n) = d(n)−{z(n)+f(n)} = d(n)−{G(ω)y(n)+f(n)} = d(n)−{G(ω)W(n)x(n)+f(n)} = d(n)−{A(ω)a(n)X・ cos〔ωtn+φ(n)+Φ(ω)〕+f(n)} 前述の数12に数11を代入し、誤差信号e(n)を数
13にしたがって展開すると、適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズム3は、数14のように表記される。この際、
同期信号x(n)の振幅Xには任意の定数をあてること
ができるものとして、X=1と置いて数14の表記を簡
略化している。
【0061】
【数14】
【0062】数14においては、制御対象システム4の
伝達特性Gの真値、すなわちゲインA(ω)および位相
Φ(ω)を求めることが困難であるので、推定利得Aハ
ット(ω)および推定位相Φ(ω)ハットで代用してい
る。推定利得Aハット(ω)および推定位相Φ(ω)
は、伝達特性推定アルゴリズム2によって提供されてい
る。なお、本明細書中では、所定の信号や特性を表す記
号にハットを付すことにより、同記号が推定値である旨
を示すものとする。
【0063】ここで、数14中のAハット(ω)および
a(n)と更新係数μa ’,μp ’とをまとめて、新た
にステップサイズ係数μa ,μp と置くものとする(す
なわち、μa =Aハット(ω)μa ’,μp =−Aハッ
ト(ω)a(n)μp ’)。すると、前述の数10と等
価な数15が導き出される。
【0064】
【数15】
【0065】なお、制御目標信号d(n)は、自動車の
制振など大半の応用例においては、d(n)=0(ゼ
ロ)と設定されるのが普通である。その場合、観測信号
c(n)と誤差信号e(n)とは、符号が異なるものの
実質的に等価であるとみなしてよい。DXHSは、適応
係数ベクトルW(n)の更新方法として、伝達特性推定
アルゴリズム2なしに単独で適応制御システムを構成す
ることも可能である。自動車のエンジンのように一次角
振動数ωが変動する周期性信号f(n)に対しても、D
XHSによる周期性信号の適応制御方法により、卓越し
た制振効果が得られることを、発明者らは実験により確
認済である。
【0066】(伝達特性推定アルゴリズムの導出)次
に、伝達特性推定アルゴリズム2について説明する。前
述のDXHS制御システム(図2参照)において、制御
の実行中に観測信号c(n)または誤差信号e(n)が
観測できるばかりではなく、不可制御な外力(外乱)で
ある周期性信号f(n)が独立して観測できれば、制御
は容易である。観測信号c(n)と周期性信号f(n)
とから相殺信号z(n)を割り出し、適応信号y(n)
に対する応答を調べることにより、制御対象システム4
の伝達特性Gを同定することができるからである。
【0067】しかしながら、自動車の制振など実際の物
理系に本発明の周期性信号の適応制御方法を適用する場
合には、周期性信号f(n)を独立して観測することは
できないことが多い。ただし、二つの異なる適応フィル
タW* ,W**の出力としての適応信号y* ,y**、相殺
信号z* ,z**および観測信号c* ,c**の差を取るこ
とにより、周期性信号f(n)の影響を除去して推定伝
達特性Gハットを求めることは可能である。
【0068】すなわち、図3(a)および図3(b)に
示すように、入力として同一の同期信号x(n)=co
s(ωtn)を入力しても、図3(a)に示す系の出力
**,z**,c**と、図3(b)に示す系の出力y*
* ,c* とは異なっている。ここで、上記nが2π/
(ωt)の整数倍だけ異なる場合であれば、同期信号x
(n)は等しいこと〔x(n)=x(n+i×2π/ω
t),i=0,±1,±2・・・〕に着目する。そこで
本実施例では、2π/ωtの正の整数倍(すなわち自然
数倍)のステップ差qを同期信号x(n)に与えるもの
とする。
【0069】同期信号x(n)と同期信号x(n−q)
とは、振幅も周期も位相も互いに一致した同一の信号で
あっても、ステップ差q(無駄時間qtに相当)があ
る。それゆえ、適応すべく変化している適応フィルタ1
0の適応係数ベクトルW(n)は、qステップ過去の適
応係数ベクトルW(n−q)と異なっており、同一の入
力に対しても異なる出力が得られる。すなわち、再び図
3(a)および図3(b)から明らかなように、 c** = f+z** = f+Gy** = f+GW**x c* = f+z* = f+Gy* = f+GW* x と表記される。ここで、**付きの数式と*付きの数式
とのうち、前者が現時点を表す時刻nのものであり、後
者がqステップ以前の時刻(n−q)のものであると定
義する。すると、適応係数ベクトルW(n)とW(n−
q)との違いによって、その出力としての観測信号c
(n)とc(n−q)との間に生じる差異としての差分
値δは、 δ = c**−c* = Gy**−Gy* と表記される。制御対象システム4の伝達特性Gの真値
は測定できないので、推定値である推定伝達特性Gハッ
トで代用し、その旨を示す目的で左辺も推定差分値δハ
ットで代替すると、次の数式が得られる。
【0070】 δハット = Gハットy**−Gハットy* そこで、推定差分値δハットと真値(差分値δ)との差
を減らし、もって推定伝達特性Gハットを真値(伝達特
性G)に近づけることを目的として、新たに評価函数I
を導入し次の数式で定義する。上記二本の数式により、
評価函数Iは推定伝達特性Gハットを含む形に展開され
る。
【0071】 I = E〔(δハット−δ)2 〕 =E〔{(Gハットy**−Gハットy* )−(c**−c* )}2 〕 評価函数Iを推定伝達特性Gハットで偏微分した傾きの
ベクトルBは、数16に示すように展開される。
【0072】
【数16】
【0073】ここで、前述のように**付きの記号は時
刻n、*付きの記号は時刻(n−q)のものであるか
ら、これにしたがって数16を時刻nまたは(n−q)
による表記に改めると、傾きのベクトルB(n)は数1
7に示すように展開される。ただし数17では、時刻n
と時刻n−qとの間において、推定利得Aハットおよび
推定位相Φハットの変化は無視できるものとしている。
【0074】
【数17】
【0075】最小自乗法に則り、数17の傾きのベクト
ルB(n)の各成分にそれぞれ適正な更新係数(ステッ
プサイズパラメータ)ηa ' ,ηp ’を乗じたものを、
推定伝達特性Gハット(n)の修正ベクトルとする。す
ると、推定伝達特性Gハットを逐次的に調整して、現時
点での一次角振動数ωに関する制御対象システム4の伝
達特性GのゲインAおよび位相Φを推定する伝達特性推
定アルゴリズム2を、数18で定式化することができ
る。数18では、更新係数ηp に推定利得Aハット
(n)が丸め込まれて(ηp =ηp ’Aハット(n))
いて、同アルゴリズムを演算する負荷がいくらか軽減さ
れている。
【0076】
【数18】
【0077】前述のように、制御目標信号d(n)は通
常ゼロと設定されるので、数18の観測信号c(n)を
定義(e=d−c)に従い逆符号の誤差信号−e(n)
で置換すれば、数18は前述の数9と等価である。こう
して、適応係数ベクトル更新アルゴリズム3は、数9と
して定式化されている。なお、制御目標信号d(n)が
定常的にゼロでは無い場合には、伝達特性推定アルゴリ
ズム2として数9の代わりに数18を使用することによ
り、制御目標信号d(n)に対応することができる。
【0078】(実施例1のシステム構成および作用)本
実施例の周期性信号の適応制御方法を行うアルゴリズム
は、以上のようにして導出されているが、ここで図4を
参照してまとめておく。本実施例は、センサの置かれた
観測点Pに印加される周期性信号f(n)の影響を能動
的に除去することを制御目標としている。周期性信号f
(n)は周期性信号源5から発生しており、周期性信号
f(n)の影響(すなわち誤差信号e(n))は、周期
性信号f(n)と逆位相で同期した相殺信号z(n)を
観測点Pに加えることによって相殺される。相殺信号z
(n)は、適応信号y(n)を制御対象システム4の伝
達特性Gを介して伝達させることにより、観測点Pに加
えられる。
【0079】したがって、周期性信号f(n)に同期し
て逆位相で同じ振幅の相殺信号z(n)を発生させるよ
うに、適応信号y(n)の一次角振動数ω、各次数の振
幅a k および該位相φk が適応的に調整されなければな
らない。周期性信号f(n)のうち制御すべき成分の次
数K(k=1,・・,K)は、周期性信号f(n)の性
質や制御系の設計目標・制御コストなどを勘案して定め
る。
【0080】その際、周期性信号f(n)の一次角振動
数ω、振幅および位相が変動するばかりではなく、制御
対象システム4の伝達特性G〔A(ω),Φ(ω)〕に
も、少なからず経時的な変動があるものとする。本発明
の目的は、前述のように、これらの変動に適応して適正
な適応信号y(n)を発生させ、誤差信号e(n)を収
束させることができる周期性信号の適応制御方法を提供
することである。
【0081】本実施例のアルゴリズムは、図4に示すよ
うに、適応信号発生アルゴリズム1、伝達特性推定アル
ゴリズム2および適応係数ベクトル更新アルゴリズム3
から構成されている。 (適応信号発生アルゴリズム)適応信号発生アルゴリズ
ム1は、次の数19で定式化され、周期性信号f(n)
に同期している一次の基本正弦波およびまたは同基本正
弦波からそのK次(2≦K)までの高調波信号からなる
適応信号y(n)を発生する。なお数19では、周期性
成分をcosで表記しているが、sinで表記しても位
相を調整すれば同一とみなすことができる。
【0082】
【数19】 その際、適応信号y(n)の各次数の振幅ak および該
位相φk は、適応係数ベクトル更新アルゴリズム3から
提供される。また、周期性信号f(n)に対する適応信
号y(n)の同期は、周期性信号源5から発生する同期
信号s(n)によって保たれており、周期性信号f
(n)の一次角振動数ωも同期信号s(n)から即時に
判明する。したがって、同期信号s(n)が入力する適
応信号発生アルゴリズム1は、前述の同期信号x(n)
が入力する適応フィルタ10(図1参照)に相当する。
【0083】適応信号発生アルゴリズム1から出力され
た適応信号y(n)は、制御対象システム4の伝達特性
Gを経て相殺信号z(n)となる。そして、観測点Pへ
影響を及ぼす周期性信号f(n)に対し、相殺信号z
(n)が逆位相で加えられ、周期性信号f(n)の特定
周波数成分の観測点Pへの影響は能動的に除去される。
その結果、観測点Pで検知される誤差信号e(n)は低
減する。
【0084】(伝達特性推定アルゴリズム)伝達特性推
定アルゴリズム2は、所定の無駄時間qだけ過去の誤差
信号e(n−q)と、当該時刻での誤差信号e(n)と
に基づいて制御対象システム4の伝達特性Gを推定す
る。無駄時間qは、周期性信号f(n)の基本正弦波の
周期の自然数倍の時間に対応する時間であり、数周期分
の時間差があるもののf(n)とf(n−q)とは同位
相である。なお、数値シミュレーションでは、おおむね
同位相であればある程度の無駄期間qの設定誤差は許容
されることを発明者らは確認している。
【0085】すなわち、伝達特性推定アルゴリズム2
は、前述の数9にしたがって制御対象システム4の伝達
特性Gの推定値Gハットの成分である推定利得Aハット
(n)および推定位相Φハット(n)を逐次更新して推
定するアルゴリズムである。 (適応係数ベクトル更新アルゴリズム)適応係数ベクト
ル更新アルゴリズム3は、前述の数10にしたがって、
適応信号y(n)の各次数(k=1,・・,K)の正弦
波の振幅ak および位相φk を成分として含む適応係数
ベクトルW(n)を更新するDXHSアルゴリズムであ
る。
【0086】適応係数ベクトル更新アルゴリズム3によ
り、適応係数ベクトルW(n)は、誤差信号e(n)お
よび推定位相Φハット(n)に基づいて、時刻n(また
は制御周期)の経過毎に更新される。ここで、適応係数
ベクトルW(n)の成分は、適応信号y(n)の各次数
の振幅ak および位相φk である。その結果、周期性信
号f(n)の各次数の振幅、位相および一次角振動数ω
の変動と制御対象システム4の伝達特性Gの変動とに対
して、適応係数ベクトルW(n)の各成分は適応的に調
整される。
【0087】適応係数ベクトル更新アルゴリズム3によ
って更新された適応係数ベクトルW(n)の成分である
各次数の振幅ak および位相φk をもって、適応信号y
(n)の各次数の正弦波の振幅ak および位相φk が更
新される。前述の適応信号発生アルゴリズム1は、適応
係数ベクトル更新アルゴリズム3によって更新された振
幅ak および位相φk をもって、適応信号y(n)を発
生させる。適応信号y(n)は、制御対象システム4の
伝達特性Gを経て相殺信号z(n)として観測点Pに到
達し、周期性信号f(n)のうち所定の次数(K次)ま
での成分を相殺してこれを抑制する。
【0088】(実施例1のテーブルデータ)さて、前述
の三つのアルゴリズム1,2,3は、一次角振動数ωが
変動する周期性信号f(n)にも適応して、観測点Pに
対するその影響を抑制する。適応係数ベクトル更新アル
ゴリズム3の適応速度(誤差信号e(n)の収束に要す
る時間)が、周期性信号f(n)の一次角振動数ωの変
動による振幅および位相の変動速度よりも十分に速けれ
ば、上記アルゴリズムだけで対応できる。また、制御対
象システム4の伝達特性Gの経時変化に対しては、伝達
特性推定アルゴリズム2の推定機能をもって対応が可能
である。
【0089】しかし、一次角振動数ωの変動による周期
性信号f(n)の振幅および位相の変動速度が速く、か
つ大きい場合には、適応係数ベクトル更新アルゴリズム
3の適応機能だけでは適応速度が十分でない場合があり
得る。また、制御対象システム4の伝達特性G(特に位
相Φ)の経時変化が大きい場合には、伝達特性推定アル
ゴリズム2の推定速度が十分でない場合があり得る。い
ずれの場合にも、適応するまでの所定の時間の間は、誤
差信号e(n)が十分に抑制されないという不都合を生
じる。
【0090】そこで本実施例では、両アルゴリズム2,
3の速やかな適応を促す補助手段として、一次角振動数
ωで区分された数値データであるテーブルデータ(図
略)が用意されている。すなわち、本実施例のテーブル
データでは、周期性信号f(n)の一次角振動数ωの変
動範囲(0〜249Hz)が、幅1Hz毎に249の区
間に分けられており、各区間毎に(ak ,Aハット,Φ
ハット)の数値データが記憶されている。これらは、そ
れぞれ適応信号y(n)の各次数(k=1,・・,K)
の正弦波の振幅ak 、ならびに制御対象システム4の伝
達特性Gの推定値Gハットの成分である推定利得Aハッ
トおよび推定位相Φハットである。適応信号y(n)の
位相φk については、アルゴリズム2,3だけでも十分
に速い適応能力があり、必要性が少ないので、本実施例
ではテーブルデータに含めていない。
【0091】上記数値データは、いずれも事前に周波数
掃引加振応答により計測されているものである。すなわ
ち、1〜247Hzの範囲で1Hz刻みで順に生成した
正弦波状入力信号に対する制御対象システムの応答を観
測し、ゲインおよび位相特性を計測することで得られた
数値データが、コントローラ100’内のメモリにテー
ブルデータとしてストアされている。なお、事前に数値
データを用意できなかった場合には、本実施例のシステ
ムの運転中に測定(推定)された適応値をもって数値デ
ータをストアしていく手法をとることも可能である。
【0092】同期信号s(n)(図4参照)を観測する
ことにより、周期性信号f(n)の一次角振動数ωを即
時に計測できることはすでに述べた。それゆえ、現在
(時刻n)の一次角振動数ωにテーブルデータのどの区
間が対応しているかは、容易に明らかになっている。そ
こで、一次角振動数ωが変動し、ある区間から他の区間
へ一次角振動数ωに対応している区間が変わると、新し
く対応している変動先の区間から、記憶されていた適応
値(ak ,Aハット,Φハット)がアルゴリズム2,3
に供給される。
【0093】そのいっぽうで、アルゴリズム2,3か
ら、適応または推定された適応値(a k ,Aハット,Φ
ハット)がテーブルデータに供給されており、テーブル
データの一次角振動数ωに該当する区間の適応値がアッ
プデートされている。すなわち、適応係数ベクトル更新
アルゴリズム3および伝達特性推定アルゴリズム2が演
算される毎に、推定値(ak ,Aハット,Φハット)が
テーブルデータに供給される。適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズム3により更新された適応係数ベクトルW
(n)からは、振幅ak が供給される。また、伝達特性
推定アルゴリズム2により推定された伝達特性推定値G
ハットからは、推定利得Aハットおよび推定位相Φハッ
トが供給される。供給された推定値(ak ,Aハット,
Φハット)をもって、テーブルデータのうち一次角振動
数ωが該当している区間の数値データは更新される。し
たがって、テーブルデータは常に最新の経験による推定
値にアップデートされている。
【0094】(実施例1の効果)本実施例の周期性信号
の適応制御方法は、以上詳述した各アルゴリズム1,
2,3と、これらと適応値を交換するテーブルデータと
を用いているので、適応能力が飛躍的に向上している。
すなわち、周期性信号f(n)の一次角振動数ωの変動
と、これに伴う振幅および位相の変動、および振幅位相
特性の経時変化に適応して誤差信号e(n)を速やかに
抑制することができる。そればかりではなく、制御対象
システム4の伝達特性G(ω)の経時変化に対しても、
速やかに適応して誤差信号e(n)を短時間に収束させ
ることができる。わけても、位相特性Φ(ω)が大きく
変動していく場合にも、伝達特性推定アルゴリズム2が
よく追随し、誤差信号e(n)を発散させることなく速
やかに収束せしめることができる。
【0095】位相特性Φ(ω)の大変動に対する良好な
適応性は、前述の従来技術や先行技術によっては得られ
なかった特性であり、この特性に本実施例の進歩性がよ
く発揮されている。 (実施例1の実験による検証)前述の本実施例の周期性
信号の適応制御方法が有する効果を物理実験によって実
証する目的で、評価回路を用いた実験装置で実験を行っ
た。
【0096】同実験装置は、図5に示すように、周期性
信号源としてのファンクションジェネレータ5’と、制
御装置としてのコントローラ100’と、制御対象シス
テムとしての位相器4’と、三つの抵抗器とを回路要素
として構成されている。ファンクションジェネレータ
5’は、所望の一次角振動数ωで正弦波等の所望の波形
の周期性信号f(n)を電圧として発生させる装置であ
る。周期性信号f(n)は、10kΩの抵抗器を経て位
相遅れなしに観測点Pに印加される。ファンクションジ
ェネレータ5’は、周期性信号f(n)に同期して同期
信号s(n)をも電圧として発生させ、コントローラ1
00’に入力している。
【0097】コントローラ100’は、前述の周期性信
号の適応制御方法を具現化した三つのアルゴリズム1,
2,3(図4参照)とテーブルデータ(図略)とを、ソ
フトウェアとして内蔵している。また、同期信号s
(n)から周期性信号f(n)の一次角振動数ωを割り
出すアルゴリズムも、コントローラ100’に内蔵され
ている。すなわち、コントローラ100’は、同ソフト
ウェアを内蔵している小型コンピュータと、同コンピュ
ータの入出力をそれぞれ担当するA/D変換器およびD
/A変換器とから(いずれも図略)構成されている。
【0098】A/D変換器は、前述の同期信号s(n)
の電圧と、観測信号c(n)としての観測点Pでの電圧
とを、所定のサンプリング周期tでサンプリングし、デ
ジタル信号に変換して上記コンピュータに入力する。こ
こで、制御目標信号d(n)=0としたから、観測信号
c(n)と誤差信号e(n)とは符号が異なるだけであ
り、コントローラ100’は実質的に誤差信号e(n)
を観測している。
【0099】いっぽうD/A変換器は、上記コンピュー
タが適応信号発生アルゴリズム1により生成した適応信
号y(n)を、デジタル信号からアナログ電圧信号に変
換し、位相器4’に入力する。位相器4’は、所定の位
相遅れ(位相Φ)を入力した適応信号y(n)に与えて
伝達し、相殺信号z(n)として電圧で出力する。位相
器4’は、位相Φを所望の値に順次変動させていくこと
ができる。出力された相殺信号z(n)は、10kΩの
抵抗器を介して観測点Pに印加される。
【0100】観測点Pには、周期性信号f(n)と相殺
信号z(n)とがそれぞれ10kΩの抵抗器を介して印
加される。観測点Pは、第3の10kΩの抵抗器を介し
て設置しているので、周期性信号f(n)と相殺信号z
(n)との和の1/2の電圧が生じている。それゆえ、
観測信号c(n)は、観測点Pの電圧の2倍としてコン
トローラ100’で認識されている。
【0101】なお、より厳密には、周期性信号f(n)
も相殺信号z(n)もともに、再び図4に示すように、
観測点Pに与える影響の大きさで定義される。それゆえ
厳密には、ファンクションジェネレータ5’の出力は、
周期性信号f(n)の2倍であり、同様に位相器4’の
出力は相殺信号z(n)の2倍である。しかし、適応制
御系においては本質的な過誤とはなりえないので、これ
以上は拘泥しないことにする。
【0102】本実験では、周期性信号f(n)を基本波
のみ(K=1)の正弦波信号とし、その一次角振動数ω
は周波数で125Hz、その振幅は0.5V(観測点P
では0.25V)とした。周期性信号f(n)は、コン
トローラ100’は何も制御しない状態での観測点Pに
おける誤差信号e(n)として、図6に示すように、コ
ントローラ100’により計測される。ここで、コント
ローラ100’のサンプリング周期(制御周期)tは、
0.5ミリ秒(2000サンプル/秒)であった。ま
た、伝達特性推定アルゴリズム2(数9)の無駄時間q
は、16ステップ(周期性信号f(n)の周期の1倍に
相当)と設定されていた。なお、同期信号s(n)は、
周期性信号f(n)と同期して正負が切り替わる矩形波
信号とした。
【0103】(比較実験の結果)まず、比較実験とし
て、先行技術による制御方法をもって、位相器4’の位
相Φが経時変化する場合の誤差信号e(n)を記録し
た。先行技術は、前述のようにDXHSによる適応係数
ベクトル更新アルゴリズムと、本実施例のものと同様の
適応信号発生アルゴリズム1とによる適応制御方法であ
り、本実施例と異なって伝達特性推定アルゴリズム2を
有していない。位相器4’の位相Φの経時変化は、図7
(a)に示すように、毎秒22.5°づつステップ状に
位相遅れが増大している。
【0104】その結果、誤差信号e(n)は、図7
(b)に示すように、位相Φが90°程度に近づいたあ
たりから急速に振幅を増大し、前述の無制御の場合の振
幅(0.25V)を大幅に上回っている。それゆえ、位
相器4’(制御対象システム4の伝達特性Gに相当)の
位相Φの大幅な経時変化に、先行技術では適応すること
ができず、誤差信号e(n)を収束させることが難しい
ことが分かる。なお、位相遅れが315°(Φ=−31
5°)のあたりからは、誤差信号e(n)の振幅が減少
しているが、これは360°位相をずらしてみれば位相
進みΦ=45°と等価であり、実質的な位相Φの変動が
減少しているからと推定される。
【0105】(本実施例の実験結果)次に、前述の本実
施例の周期性信号の適応制御方法による制御を施したと
ころ、図8(a)および図8(b)に示すように、先程
と同様な位相遅れ(位相Φの変動)に対しても、誤差信
号e(n)の振幅を低く抑制することができた。すなわ
ち、位相Φがゼロから−360°まで変動しても、その
全ての領域で誤差信号e(n)は位相変動ゼロ(Φ=0
°)の時と同じ程度(約0.05V)に抑制されてい
る。
【0106】なお、位相Φがステップ状に急変する度
に、誤差信号e(n)には小さなパルスが立っている
が、ほとんど瞬時に収束しており、また、同パルスのピ
ークも0.2Vには達していない。それゆえ、本実施例
の実験では、瞬時といえども無制御状態(0.25V)
より誤差信号e(n)が悪化することはない。以上の実
験結果から、本実施例の周期性信号の適応制御方法によ
れば、制御対象システム4の伝達特性G(位相器4’)
の位相Φの大幅な変動に対しても適応可能であり、誤差
信号e(n)を速やかに収束させ得ることが結論付けら
れる。また、ステップ状の位相Φの急変に対しても、極
めて速やかに適応可能であることが実証された。
【0107】(実施例1の自動車への適用=エンジン振
動の制振)以上詳述した本実施例としての周期性信号の
適応制御方法を、自動車のエンジンの振動による乗員の
座席への影響を抑制する車載制振システムとして実施す
ることもできる。再び図4を参照してこの車載制振シス
テムを説明すると、次のようになる。
【0108】すなわち、エンジンは周期性信号源5であ
り、周期性信号f(n)は、エンジンマウントや車体を
介して観測点Pに達するエンジンに起因する振動であ
る。観測点Pは、座席に取り付けられた加速度センサで
あり、同センサの出力信号が誤差信号e(n)として検
出される。エンジンのクランクシャフトまたはカムシャ
フトの回転は、エンジンの回転速度を計測するためのパ
ルスカウンタにより検知されており、同パルスカウンタ
からのパルス信号をもって同期信号s(n)に当てるこ
とができる。同期信号s(n)には、その外に点火栓に
供給される点火パルスを用いることもできる。
【0109】適応制御システム100は、前述のコント
ローラ100’(図5参照)と、制御対象システム4の
一部であるパワーアンプ(図略)およびアクチュエータ
(図略)とによって構成されている。コントローラ10
0’は、本実施例の制御ソフトを内蔵している内蔵コン
ピュータと、A/D変換器およびD/A変換器とからな
る。
【0110】コントローラ100’の適応信号発生アル
ゴリズム1からD/A変換器を経て電圧信号として出力
された適応信号y(n)は、制御対象システム4に入力
される。制御対象システム4は、適応信号y(n)を増
幅するパワーアンプと、パワーアンプに駆動されるアク
チュエータ内蔵エンジンマウントとが含まれており、両
者は適応制御システム100の一部でもある。アクチュ
エータ内蔵エンジンマウントは、適応信号y(n)がパ
ワーアンプで増幅された駆動電圧により駆動され、エン
ジンとエンジンベッドとの間を能動的に加振する。この
加振力が車体等を伝達して観測点Pに至り、その振動成
分が相殺信号z(n)として作用する。
【0111】したがって、制御対象システム4の伝達特
性Gは、適応信号y(n)からパワーアンプ、アクチュ
エータ内蔵エンジンマウント、エンジンおよび車体を伝
達して観測点Pに至るまでの、所定の帯域幅でのゲイン
/位相遅れ特性である。それゆえ、制御対象システム4
の伝達特性Gには、温度変化、経年変化、乗員や搭載量
による変化、装備の変更に伴う変化等々、様々な原因で
少なからぬ変化が生じうる。従来技術や先行技術によっ
ては、伝達特性Gの変動のうちゲインAの変動に対して
は比較的よく適応することができたが、位相Φの90°
ないしそれ以上に及ぶ変動に関しては、十分に適応して
制御することは困難であった。
【0112】そこで、本実施例の周期性信号の適応制御
方法を用いれば、伝達特性Gの位相Φの急激かつ大幅な
変動に対しても、発散することなく適応することがで
き、速やかに座席での振動を抑制する車載制振システム
を実現することができる。なお、この車載制振システム
は、同じ技術思想のもとにセンサやアクチュエータを若
干変更するだけで、その他の制振システムにも適用する
ことができる。特にヘリコプタなどの回転翼航空機で
は、ロータの騒音と振動とが激しく客室内の快適性が著
しく損なわれているので、本発明の制御方法による能動
的な騒音低減と制振とが導入されれば、商品として競争
力が向上するものと期待される。
【0113】(実施例1の変形態様1)前述の本実施例
の効果を検証する実験では、抑制すべき正弦波の次数を
1と置いて(K=1)電圧の基本振動のみを抑制し、抑
制すべき周期性信号f(n)に高調波は含まれていなか
った。しかし、現実の周期性信号f(n)には、無視で
きない影響を生じる高調波が含まれているものが少なく
ない。
【0114】たとえば、自動車などの4サイクルエンジ
ンの制振では、カムシャフトの一回転が基本振動の一周
期に相当するが、クランクシャフトは二回転しており、
基本振動よりもむしろ二次の高調波振動のほうが卓越し
ている。さらに、基本振動や二次高調波振動よりはずっ
と振幅が小さいが、気筒数に相当するまでの次数の高調
波振動が発生している。
【0115】また、ヘリコプタなどの回転翼航空機で
は、メインロータ(主回転翼)の一回転が基本振動の一
周期に相当するが、ロータブレードの枚数に相当する次
数の高調波振動が発生する。ロータブレードの枚数は機
種によって異なるが、2枚から7枚程度まである。この
高調波振動に関しては、プロペラをもつ飛行機において
も、プロペラブレードの枚数に相当する次数の高調波振
動が発生する点で、事情はおおむね同じである。
【0116】そこで、本実施例の周期性信号の適応制御
方法で使用した三つのアルゴリズム1,2,3を変形
し、再び図4に示すように、基本振動からK次の高調波
振動(Kは2以上の自然数)までを抑制し得る変形態様
が可能である。すなわち、伝達特性推定アルゴリズム2
(数9)および適応係数ベクトル更新アルゴリズム3
(数10)において、一次角振動数ωをk次角振動数k
ωに、基本振動の振幅aおよび位相φをk次の振幅ak
および位相φk に置換する。また、推定利得Aハットお
よび推定位相Φハットは、それぞれ添字に次数kをつけ
てAk ハットおよびΦk ハットとし、k次角振動数kω
に相当する周波数での伝達特性Gを推定するものとす
る。適応信号発生アルゴリズム1(数19)は、すでに
高調波成分が含まれている表記であるから、そのまま使
用できる。
【0117】その結果、推定伝達特性のGハットベクト
ルや適応係数ベクトルW(n)は、成分(ベクトルの要
素)がK倍に増大し、演算処理量もK倍に増大する。た
だし、1〜K次の正弦波振動のうち、所望の次数のみを
選択的に抑制し、他の次数の振動成分は放置するアルゴ
リズムは、上記アルゴリズム1,2,3の変形のうち、
所望でない次数の成分を省略することで容易に得られ
る。たとえば、4枚ロータのヘリコプタでは、基本振動
と4次高調波振動とだけを抑制すればよく、かような場
合にコントローラ100’の負担を軽減するうえで、次
数の一部が省略されたアルゴリズムは効果がある。
【0118】テーブルデータは、伝達特性推定アルゴリ
ズム2および適応係数ベクトル更新アルゴリズム3の各
次数kの要素と、それぞれk次角振動数kωが該当する
区間との間で数値データ(適応値)のやり取りをする。
したがって、コントローラ100’に内蔵されているテ
ーブルデータの記憶容量をk倍にする必要はなく、高調
波により増大する周波数領域までをカバーしていればよ
い。
【0119】本変形態様によれば、実施例1と同様に制
御対象システム4の伝達特性Gの位相Φの大きな変化に
追随して適応し、さらに周期性信号f(n)の高調波成
分の影響をも抑制することが可能になるという効果があ
る。 (実施例1の変形態様2)前述の変形態様1では、1次
からK次までの調和振動を抑制対象としているが、制御
対象によっては、複数の一次角振動数ω1 〜ωJ が存在
し、それぞれの振動が互いに整数倍の調和振動でない場
合もありうる。たとえば、複数の互いに異なる周期性信
号源5を有する場合がこれに該当し、ヘリコプタのメイ
ンロータとテイルロータとから発生する振動や騒音がこ
れにあたる。このように複数の一次角振動数ω1 〜ωJ
の成分を含む周期性信号f(n)が発生する場合にも、
次のように本実施例のアルゴリズムを変形するだけでそ
の影響を抑制することができる。
【0120】すなわち、周期性信号f(n)には、制御
すべき複数の互いに異なる一次角振動数ωj (j=1,
・・,J)の正弦波振動成分が含まれる場合には、適応
信号発生アルゴリズム1、伝達特性推定アルゴリズム2
および適応係数ベクトル更新アルゴリズム3は、一次角
振動数ωj のそれぞれについて演算されるアルゴリズム
構成が可能である。
【0121】テーブルデータとアルゴリズム2,3との
間では、互いに異なる一次角振動数ωj (j=1,・
・,J)のk次成分ごとに、角振動数kωj が該当する
区間の数値データのやりとりがある。本変形態様によれ
ば、実施例1と同様に制御対象システム4の伝達特性G
の位相Φの大きな変化に追随して適応し、さらに周期性
信号f(n)の互いに独立した正弦波成分の影響をも抑
制することが可能になるという効果がある。
【0122】(実施例1の変形態様3)前述の実施例1
では、制御周期(または更新周期)毎に、アルゴリズム
2,3による適応値または推定値(ak ,Aハット,Φ
ハット)をもって、一次角振動数ωが該当する区間のテ
ーブルデータがアップデートされている。しかし、各区
間においてアルゴリズム2,3の推定または適応が十分
な精度に達しないうちに、テーブルデータの他の区間に
一次角振動数ωが推移してしまう場合もある。この場合
には、十分な精度を持たない数値(ak ,Aハット,Φ
ハット)をもってテーブルデータのアップデートが行わ
れるので、むしろアップデート以前の数値のほうが適正
であるという不都合が生じかねない。
【0123】そこで、アルゴリズム2,3の推定または
適応が十分か否かを判定する収束判定アルゴリズムを有
する変形態様も可能である。本変形態様では、収束判定
アルゴリズムにより十分に適応し収束していると判定さ
れた場合に、初めて適応係数ベクトルW(n)や伝達特
性推定値Gハットから適応値や推定値が供給され、テー
ブルデータの該当区間の数値がアップデートされる。逆
に、収束判定アルゴリズムにより収束済と判定されない
あいだは、テーブルデータの該当区間の数値はアップデ
ートされず、テーブルデータはそのまま保存される。
【0124】収束判定アルゴリズムとしては、たとえ
ば、誤差信号e(n)を観測して判定するアルゴリズム
や、推定値(ak ,Aハット,Φハット)の修正量を観
測して判定するアルゴリズムなどが考えられる。前者の
判定条件としては、誤差信号e(n)の振幅が適応信号
y(n)の振幅a(n)(もしくはak の二乗和平方
根)の所定割合よりも小さく、かつ、誤差信号e(n)
の振幅が所定値未満である状態が、所定のステップ数の
間連続することが挙げられる。後者の条件としては、ア
ルゴリズム2,3における推定値(ak ,Aハット,Φ
ハット)の各々の成分の修正量の絶対値が所定値未満で
あることが、一例として挙げられる。
【0125】本変形態様によれば、実施例1と同様に、
制御対象システム4の伝達特性Gの位相Φの大きな変化
に追随して適応することができる。さらに、一次角振動
数ωの変動が激しく、かつ、所定の一次角振動数ωに対
応する周期性信号f(n)の成分や制御対象システム4
の伝達特性Gの経時変化が大きい場合にも、誤差信号e
(n)を発散させることなく制御することができるとい
う効果がある。
【0126】(実施例1の変形態様4)周期性信号f
(n)の一次角振動数ωの変化に伴う周期性信号f
(n)の成分〔ak ,φk 〕や制御対象システム4の伝
達特性G〔A,Φ〕の変動が、比較的小さい場合には、
テーブルデータなしの変形態様が可能である。すなわ
ち、本変形態様は、実施例1のアルゴリズム1,2,3
を、テーブルデータなし(適応値のやりとりもなし)で
演算していく周期性信号の適応制御方法である。
【0127】本変形態様によれば、テーブルデータの記
憶容量とその数値交換操作とが省略でき、簡素な構成で
ありながら、実施例1と同様に制御対象システム4の伝
達特性Gの位相Φの大きな経時変化に追随して適応し、
誤差信号e(n)を収束させることができる。 (実施例1の変形態様5)前述の実施例1では、DXH
S手法で適応信号発生アルゴリズム1を構成していた
が、最小自乗法系の手法(FX−LMSやSFXなども
含む)で適応信号発生アルゴリズム1が構成されている
変形態様も可能である。本変形態様の適応係数ベクトル
更新アルゴリズム1では、誤差信号e(n)の二乗を適
応係数ベクトルW(n)で偏微分して求められる勾配ベ
クトルの各成分に、適正なステップサイズ係数を乗じて
修正量ベクトルが求められる。そして、適応係数ベクト
ルW(n)から修正量ベクトルを減算することにより、
適応係数ベクトルW(n)が更新され、適応信号y
(n)の振幅ak および位相φk が設定される。
【0128】本変形態様によっても、実施例1と同様に
制御対象システム4の伝達特性Gの位相Φの大きな経時
変化に追随して適応し、誤差信号e(n)を収束させる
ことができる。 〔実施例2〕 (実施例2のアルゴリズム)本発明の実施例2としての
周期性信号の適応制御方法は、前述の実施例1と異な
り、複数の観測点に置かれた複数のセンサと、複数のア
クチュエータとを使用する多入力多出力の適応制御方法
である。すなわち、本実施例では、観測点P1〜PL
設置されている複数のセンサ(L個)で、複数の観測信
号c1 (n)〜cL (n)を観測し、同観測信号および
制御目標信号d1 (n)〜dL (n)に基づき、適応信
号y1 (n)〜yM (n)を発生させる。そして同適応
信号により、複数のアクチュエータ(M個)を駆動し
て、周期性信号が各観測点P1 〜P L に与える影響f1
(n)〜fL (n)を能動的に相殺する。
【0129】たとえば、2個のセンサ(L=2)で観測
して2個のアクチュエータ(M=2)を駆動する場合に
は、図9に示すように、実施例1の1入力1出力システ
ムに比べて、制御ブロックの数が約4倍に増える。同図
では、理解を容易にするために、基本振動のみの周期性
信号で表記してあるが、必要に応じ実施例1のように高
調波まで拡張することができる。また、同図の各制御ブ
ロック中に記載されている記号の添字は、それぞれW
(k,m) ,G(m,l,o) ,Gハット(m,l,o) (oはωを表
す)である。
【0130】ここで、無駄時間qのブロック21’は、
現時点(時刻n)の信号と、qステップ過去の信号とを
伝達特性推定アルゴリズム2’に伝達する。また、フィ
ルタ22は、適応係数ベクトルW(n)の要素(振幅a
k および位相φk )を、伝達特性推定アルゴリズム2’
に伝達する。三つのアルゴリズム1’,2’,3’につ
いても、多入力多出力に拡張して適用されている。すな
わち、適応フィルタ10’に相当する適応信号発生アル
ゴリズム1’は、W(1,1) とW(1,2) とのそれぞれにつ
いて数19を適用する。また、伝達特性推定アルゴリズ
ム2’には数20を適用し、適応係数ベクトル更新アル
ゴリズム3には数21を適用する。数20および数21
は、次に示す通りである。
【0131】
【数20】
【0132】
【数21】
【0133】テーブルデータ(図略)については、制御
対象システム4”の伝達特性G(1,1 ,o) ,G(1,2,o)
(2,1,o) ,G(2,2,o) のそれぞれについて用意されて
いることが望ましい。各テーブルデータの作用等につい
ては、実施例1と同様とする。 (実施例2の作用効果)以上のように構成された本実施
例の周期性信号の適応制御方法によれば、多入力多出力
系に対しても、適応信号y1 (n)〜yM (n)を発生
させて、それぞれの誤差信号e1 (n)〜eL (n)を
速やかに収束させることができる。
【0134】その際、制御対象システム4”の伝達特性
(1,1,o) ,G(1,2,o) ,G(2,1,o ) ,G(2,2,o) のそ
れぞれにおける経時変化、特に位相特性の大きな経時変
化に対しても、実施例1と同様に優れた適応能力が発揮
される。また、テーブルデータの作用により、実施例1
と同様に、一次角振動数ωの変動による周期性信号f 1
(n)〜fL (n)や制御対象システム4”の各伝達特
性の急変に対しても、短時間で適応が可能である。その
結果、複数の誤差信号e1 (n)〜eL (n)のうちい
ずれも発散することがなく、速やかに収束するという効
果がある。
【0135】(実施例2の各種変形態様)本実施例に対
しても、実施例1に対するその各変形態様に相当する各
種の変形態様が可能で、実施例1の同変形態様に相当す
る効果が得られえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1としての適応制御システムの構成を
示すブロック線図
【図2】 DXHS法による適応制御システムの構成を
示すブロック線図
【図3】 異なる適応フィルタによって生じる応答の差
異を示す組図 (a)適応フィルタW**による応答を示すブロック線図 (b)適応フィルタW* による応答を示すブロック線図
【図4】 実施例1としての適応制御システムの構成を
示すブロック線図
【図5】 実施例1の適応制御方法の実験装置の構成を
示す回路図
【図6】 実験(制御なし)での誤差信号を示すグラフ
【図7】 実験(DXHS適応制御方法)での応答を示
すグラフ (a)制御対象システムの位相遅れ (b)誤差信号
【図8】 実験(本実施例の適応制御方法)での応答を
示すグラフ (a)制御対象システムの位相遅れ (b)誤差信号
【図9】 実施例2としての適応制御システムの構成を
示すブロック線図
【図10】従来技術のFX−LMS適応制御システムを
示すブロック線図
【図11】従来技術のFXLMS改適応制御システムを
示すブロック線図
【図12】従来技術のSFX適応制御システムを示すブ
ロック線図
【図13】先行技術のDXHS適応制御システムを示す
ブロック線図
【符号の説明】
1:適応信号発生アルゴリズム 2,2’:伝達特性推定アルゴリズム 3,3’:適応係数ベクトル更新アルゴリズム 4,4”:制御対象システム 4’:位相器 5:周期性信号源 5’:ファンクションジェネレー
タ 10,10’:適応フィルタ 20,20’:推定伝
達特性Gハット 21,21’:無駄時間要素 22:フィルタ 100:適応制御システム 100’:コントローラ c(n):観測信号 d(n):制御目標信号 e
(n):誤差信号 f(n):周期性信号(観測点Pに影響を及ぼす信号) s(n),x(n):同期信号(周期性信号f(n)の
基本振動に同期) y(n):適応信号(適応フィルタや適応信号発生アル
ゴリズムの出力) z(n):相殺信号 z(n)=G〔A,Φ〕y(n) n:時刻(ステップ数で) q:無駄時間(ステップ
数で) ak ,φk :適応信号y(n)のk次の正弦波の振幅お
よび位相 t:制御周期(サンプリング周期または更新周期) G,A,Φ:制御対象システムの伝達特性とそのゲイン
および位相 Gハット,Aハット,Φハット:制御対象システムの推
定伝達特性とその推定利得および推定位相 K:適応信号y(n)の調和振動の最高次数(k=1,
・・,K) L:誤差信号e(n)を観測するセンサの個数(l=
1,・・,L) M:相殺信号z(n)を生じるアクチュエータの個数
(m=1,・・,M) P:観測点(センサ設置点) W(n):適応係数ベ
クトル *,**:同一入力で異なるフィルタを通過後の信号を
示す添字
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−334165(JP,A) 特開 平7−133842(JP,A) 特開 平8−123445(JP,A) 特開 平7−64572(JP,A) 特開 平5−108081(JP,A) 特開 平7−271451(JP,A) 特開 平7−129184(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G05B 11/00 - 13/04 G10K 11/16

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】観測点へ影響を及ぼす周期性信号f(n)
    に対し、該周期性信号に同期している一次の基本正弦波
    およびまたは該基本正弦波から該基本正弦波のK次(2
    ≦K)までの高調波信号からなる適応信号y(n)を、
    逆位相で直接または間接的に加えることによって、該周
    期性信号f(n)の特定周波数成分の該観測点への影響
    を能動的に除去し、該観測点で検知される誤差信号e
    (n)を低減する周期性信号の適応制御方法において、 時刻nにおいて、前記周期性信号f(n)の一次角振動
    数ωに基づき、前記適応信号y(n)を発生させる適応
    信号発生アルゴリズムと、 該周期性信号f(n)の前記基本正弦波の周期の自然数
    倍の時間に一致する無駄時間qだけ過去の該誤差信号e
    (n−q)と、当該時刻での該誤差信号e(n)とに基
    づいて、該適応信号y(n)が前記観測点に至るまでの
    制御対象システムの伝達特性Gを推定する、すなわち数
    1および数2のうち一方に従って該伝達特性Gの推定値
    Gハットの成分である推定利得Aハット(n)および推
    定位相Φハット(n)を逐次更新する伝達特性推定アル
    ゴリズムと、 該適応信号y(n)の各次数(k=1,・・,K)の正
    弦波の振幅ak および位相φk を成分として含む適応係
    数ベクトルW(n)を、少なくとも該誤差信号e(n)
    および該推定位相Φハット(n)に基づいて該時刻nの
    経過毎に更新し、該周期性信号f(n)の各次数の振
    幅、位相および一次角振動数ωの変動と該制御対象シス
    テムの該伝達特性Gの変動とに対して、該適応係数ベク
    トルW(n)の各該成分を適応的に調整する適応係数ベ
    クトル更新アルゴリズムとを有し、 更新された該適応係数ベクトルW(n)の成分である該
    各次数の該振幅ak および該位相φk をもって、該適応
    信号y(n)の該各次数の該正弦波の該振幅ak および
    該位相φk が更新されることを特徴とする周期性信号の
    適応制御方法。 【数1】 【数2】
  2. 【請求項2】前記適応係数ベクトル更新アルゴリズム
    は、前記適応係数ベクトルW(n)を、前記誤差信号e
    (n)と前記伝達特性Gの推定値Gハットの成分のうち
    の前記推定位相Φハット(n)のみとに基づいて該時刻
    nの経過毎に更新 し、該周期性信号f(n)の各次数の
    振幅、位相および一次角振動数ωの変動と該制御対象シ
    ステムの該伝達特性Gの変動とに対して、該適応係数ベ
    クトルW(n)の各該成分を適応的に調整する、すなわ
    数3および数4のうち一方で定義されるDXHSアル
    ゴリズムである請求項1記載の周期性信号の適応制御方
    法。 【数3】 【数4】
  3. 【請求項3】前記適応係数ベクトル更新アルゴリズム
    は、前記誤差信号e(n)の二乗を前記適応係数ベクト
    ルW(n)で偏微分して求められる勾配ベクトルの各成
    分に、適正なステップサイズ係数を乗じて修正量ベクト
    ルを求め、該適応係数ベクトルW(n)から該修正量ベ
    クトルを減算して該適応係数ベクトルW(n)を更新す
    る最小二乗法系のアルゴリズムである請求項1記載の周
    期性信号の適応制御方法。
  4. 【請求項4】前記周期性信号fの前記一次角振動数ωの
    変動範囲が複数の区間に分けられており、前記適応信号
    y(n)の各次数(k=1,・・,K)の正弦波の前記
    振幅ak および前記位相φk 、ならびに前記制御対象シ
    ステムの前記伝達特性Gの前記推定値Gハットの成分で
    ある前記推定利得Aハットおよび前記推定位相Φハット
    のうち、少なくともいずれかの適応値が各該区間毎に記
    憶されているテーブルデータを有し、 該一次角振動数ωが変動して、該一次角振動数ωに対応
    している当該区間が変わると、 前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムおよび前記伝達
    特性推定アルゴリズムのうち少なくとも一方に、該一次
    角振動数ωの変動先の該区間の該テーブルデータから該
    適応値が供給される請求項1記載の周期性信号の適応制
    御方法。
  5. 【請求項5】前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムお
    よび前記伝達特性推定アルゴリズムが演算される毎に、
    または収束判定アルゴリズムを有し該収束判定アルゴリ
    ズムにより十分に適応し収束していると判定された場合
    に、 前記適応係数ベクトルW(n)または前記伝達特性推定
    値Gハットのうち少なくとも一方から推定値が供給さ
    れ、前記テーブルデータのうち前記一次角振動数ωが該
    当している前記区間の前記適応値は、該推定値で更新さ
    れることを特徴とする請求項4記載の周期性信号の適応
    制御方法。
  6. 【請求項6】前記周期性信号f(n)には、制御すべき
    複数の互いに異なる一次角振動数ωj (j=1,・・,
    J)の正弦波振動成分が含まれ、 前記適応信号発生アルゴリズム、前記伝達特性推定アル
    ゴリズムおよび前記適応係数ベクトル更新アルゴリズム
    は、該一次角振動数ωj のそれぞれについて演算される
    請求項1記載の周期性信号の適応制御方法。
JP13209096A 1996-05-27 1996-05-27 周期性信号の適応制御方法 Expired - Fee Related JP3430795B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13209096A JP3430795B2 (ja) 1996-05-27 1996-05-27 周期性信号の適応制御方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13209096A JP3430795B2 (ja) 1996-05-27 1996-05-27 周期性信号の適応制御方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09319403A JPH09319403A (ja) 1997-12-12
JP3430795B2 true JP3430795B2 (ja) 2003-07-28

Family

ID=15073264

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP13209096A Expired - Fee Related JP3430795B2 (ja) 1996-05-27 1996-05-27 周期性信号の適応制御方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3430795B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3564974B2 (ja) * 1997-11-07 2004-09-15 東海ゴム工業株式会社 周期性信号の適応制御方法
JP3568105B2 (ja) * 1998-12-22 2004-09-22 東海ゴム工業株式会社 周期性信号の適応制御方法
JP3611180B2 (ja) * 1999-04-21 2005-01-19 東海ゴム工業株式会社 周期性信号の適応制御方法
JP4079831B2 (ja) * 2003-05-29 2008-04-23 松下電器産業株式会社 能動型騒音低減装置
JP4923409B2 (ja) * 2005-01-27 2012-04-25 村田機械株式会社 工具寿命予測装置
JP4792302B2 (ja) 2006-03-01 2011-10-12 東海ゴム工業株式会社 周期性信号の適応制御装置
JP6125389B2 (ja) 2013-09-24 2017-05-10 株式会社東芝 能動消音装置及び方法
JP2020094805A (ja) * 2017-03-08 2020-06-18 株式会社日立製作所 振動騒音問題要因推定システム

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05108081A (ja) * 1991-10-15 1993-04-30 Fujitsu Ten Ltd 騒音制御装置
JP3406651B2 (ja) * 1993-08-27 2003-05-12 アルパイン株式会社 フィルタードリファレンス信号生成方式
JPH07129184A (ja) * 1993-11-01 1995-05-19 Mazda Motor Corp 車両の振動低減装置
JPH07133842A (ja) * 1993-11-08 1995-05-23 Matsushita Electric Ind Co Ltd 能動型振動制御装置
JP3572486B2 (ja) * 1994-03-25 2004-10-06 本田技研工業株式会社 振動騒音制御装置
JP3579898B2 (ja) * 1994-06-06 2004-10-20 マツダ株式会社 車両の振動制御装置および振動制御方法
JPH08123445A (ja) * 1994-10-28 1996-05-17 Alpine Electron Inc 騒音キャンセルシステム

Also Published As

Publication number Publication date
JPH09319403A (ja) 1997-12-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7873173B2 (en) Active vibratory noise control apparatus
US7352869B2 (en) Apparatus for and method of actively controlling vibratory noise, and vehicle with active vibratory noise control apparatus
JP3572486B2 (ja) 振動騒音制御装置
CN103210235B (zh) 主动型振动或噪音抑制装置
JP6650570B2 (ja) 能動型騒音低減装置
US20120070013A1 (en) Method and device for narrow-band noise suppression in a vehicle passenger compartment
KR20160019312A (ko) 소음제어시스템 및 그 방법
EP0665976A1 (en) Adaptive control system
JP3430795B2 (ja) 周期性信号の適応制御方法
Zech et al. Active control of planetary gearbox vibration using phase-exact and narrowband simultaneous equations adaptation without explicitly identified secondary path models
JP2022075543A (ja) エンジンオーダーキャンセレーションのための仮想場所ノイズ信号推定
JP3506285B2 (ja) 周期性信号の適応制御方法
JP3579898B2 (ja) 車両の振動制御装置および振動制御方法
JP3402549B2 (ja) 周期性信号の適応制御方法
JP7262499B2 (ja) 能動型振動騒音低減装置
JPH1049204A (ja) 周期性信号の適応制御方法
CN113470607A (zh) 有源振动噪音降低***
Hausberg et al. Incorporation of adaptive grid-based look-up tables in adaptive feedforward algorithms for active engine mounts
JP5846776B2 (ja) 能動型振動騒音抑制装置
JPH08339191A (ja) 振動騒音制御装置
JP5674569B2 (ja) 能動型振動騒音抑制装置
JP5752928B2 (ja) 能動型振動騒音抑制装置
WO2022201520A1 (ja) 能動型騒音制御装置、能動型騒音制御方法、プログラム及び非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体
JP3303626B2 (ja) 周期性信号の適応制御方法
JP5674568B2 (ja) 能動型振動騒音抑制装置

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080523

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090523

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees