JP3577985B2 - 蒸発燃料処理装置の故障診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は蒸発燃料処理装置の故障診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンにおいては、燃料タンク内からの蒸発燃料を一旦キャニスタに吸着させ、所定の運転領域となったときにパ−ジバルブを開いて、キャニスタに吸着された蒸発燃料をエンジン吸気系に供給することが行われている。この燃料タンクからキャニスタを経てパ−ジバルブに至るまでの蒸発燃料システムに漏れがあると、蒸発燃料が大気に放出されてしまうことになり、このため、蒸発燃料システムに漏れがないか否かを診断する故障診断が行われている。
【0003】
蒸発燃料システムの漏れ故障診断は、一般に、パ−ジバルブを開弁させて、エンジン吸気負圧を利用して蒸発燃料システム内を減圧処理し、該減圧処理時における蒸発燃料システム内の圧力もしくはその後の圧力変化に基づいて行われる(例えば特開平5−125997号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近では、蒸発燃料システムの故障診断を行う機会を増大させること、および極めて小さな漏れも診断つまり検出できるようにすることが要求されている。この一方、小さな漏れに起因する密閉状態にある蒸発燃料システム内の圧力変化はかなり小さいものとなり、誤診断を生じやすいものとなる。特に、密閉状態にある蒸発燃料システム内の圧力変化は、漏れのみならず、蒸発燃料の発生量や、温度、燃料残量等、種々の要因でかなり大きく変化するものとなる。このような観点から、小さな漏れを故障診断するときの実行条件を、漏れ以外の要因では圧力変化があまり生じない状態に限定することも考えられるが、この場合は、漏れ故障の診断を行う機会がかなり限定されてしまう。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、小さな漏れを診断する機会を極力多く確保しつつ、漏れ故障の診断を精度よく行えるようにした蒸発燃料処理装置の故障診断装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明にあってはその第1の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
負圧もしくは正圧の圧力が導入された状態で蒸発燃料システム内を密閉して、この密閉状態での蒸発燃料システム内の圧力変化に基づいて漏れ故障を診断するようにした蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、
前記圧力の導入とその後の密閉とを複数回行って、各回での密閉状態における圧力変化を検出することにより複数回の圧力変化を得て、該複数回の圧力変化に基づいて漏れ故障診断が行われるように設定され、
前記複数回の圧力変化の差が所定値よりも大きいときに、漏れ故障診断を行うことを禁止する禁止手段を備えている、
ようにしてある。上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項4、請求項6および請求項8に記載のとおりである。
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあってはその第2の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項5に記載のように、
負圧もしくは正圧の圧力が導入された状態で蒸発燃料システム内を密閉して、この密閉状態での蒸発燃料システム内の圧力変化に基づいて漏れ故障を診断するようにした蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、
少なくともエンジン回転数およびエンジン負荷をパラメ−タとして設定される所定領域において、大きな漏れ故障の診断を行う第1故障診断手段と、
前記所定領域であって、かつ車両運転状態に関するパラメ−タの変化が小さい定常運転時であることを条件として、小さな漏れ故障診断を行う第2故障診断手段と、
を備えたものとしてある。上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項6〜請求項8に記載のとおりである。
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にあってはその第3の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項9に記載のように、
負圧もしくは正圧の圧力が導入された状態で蒸発燃料システム内を密閉して、この密閉状態での蒸発燃料システム内の圧力変化に基づいて漏れ故障を診断するようにした蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、
アイドル時に、前記圧力導入前での蒸発燃料の発生量が少ないことを条件として、1回の前記圧力変化に基づいて漏れ故障診断を行う第1故障診断手段と、
オフアイドル時に、前記圧力の導入とその後の密閉とを複数回行って、各回での密閉状態における圧力変化を検出することにより複数回の圧力変化を得て、該複数回の圧力変化に基づいて漏れ故障診断を行なう第2故障診断手段と、
を備えたものとしてある。
【0009】
【発明の効果】
請求項1によれば、複数回の圧力変化に基づいて漏れ故障診断を行うので、1回の圧力変化のみに基づいて漏れ故障診断を行う場合に比して、精度よく診断することができる。また、複数回の圧力変化の間での差が大きいときには、一部の圧力変化について漏れ以外の要因で圧力変化がおきた可能性があるときであるとして、禁止手段により漏れ故障診断を禁止するので、より一層精度よく漏れ故障診断を行うことができる。そして、上記禁止手段による禁止の設定により、漏れ故障診断を行う条件を極端に厳しくする必要もなくなり、漏れ故障診断を行う機会を極力多く確保する上で好ましいものとなる。
請求項2によれば、定常運転時であることを条件として漏れ故障診断を行うので、漏れ故障の精度を確保する上で好ましいものとなる。
【0010】
請求項3によれば、第1故障診断手段と第2故障診断手段との使い分けによって、漏れ故障を診断する機会を十分確保しつつ、大小の漏れの程度に応じた適切な漏れ故障診断を行うことが可能になる。
請求項4によれば、第1故障診断手段によって大きな漏れ故障の診断を行う機会を十分確保しつつ、第2故障診断手段によって小さな漏れ故障の診断を精度よく行うことができる。
請求項5によれば、請求項4に対応した効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0011】
請求項6によれば、第1故障診断手段は、大きな漏れ故障の診断用であって、漏れ以外の要因での圧力変化にあまり大きく影響されないので、誤診断を避けつつ極力簡単かつすみやかに診断する上で好ましいものとなる。また、第2故障診断手段は、複数回の圧力変化に基づいて漏れ故障診断を行うので、1回の圧力変化のみに基づいて漏れ故障診断を行う場合に比して、精度よく漏れ故障診断を行うことができる。
請求項7によれば、圧力変化に大きな影響を与える燃料残量の状態が所定状態のときに限定して漏れ故障診断を実行させることにより、誤診断を防止する上で好ましいものとなる。また、小さな漏れ故障診断を行う第2故障診断手段については上記所定状態をより厳しい条件設定として、小さな漏れについての誤診断を防止する上で好ましいものとなる。
【0012】
請求項8によれば、オフアイドルという車両走行時に故障診断を行って、漏れ故障診断を行う機会を十分確保する上で好ましいものとなる。
請求項9によれば、アイドル時とオフアイドル時との両方で漏れ故障診断を行うことにより、診断機会を極力多く確保する上で好ましいものとなる。また、アイドル時には、漏れ故障診断を1回の圧力変化に基づいて故障診断することにより診断を極力簡単かつすみやかに行いつつ、圧力導入前の蒸発燃料発生量が多いときは診断実行を禁止して、誤診断を防止、つまり診断を精度よく行う上で好ましいものとなる。さらに、オフアイドル時には、複数回の圧力変化に基づいて漏れ故障診断を行うことにより、1回の圧力変化にのみ基づいて漏れ故障診断を行う場合に比して、精度よく診断することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1において、1はエンジン本体で、左の(第1の)のバンク1Lと、右(第2の)バンク1RとをV型に配置したV型多気筒エンジン用となっている。各バンク1L、1Rは、それぞれ直列に複数(実施形態では3つ)の気筒を有している。吸気通路2は、1本の共通吸気通路3と、共通吸気通路3の下流側部分において互いに並列な2本の分岐吸気通路となる2つのサ−ジタンク4L、4Rとを有する。共通吸気通路3には、その上流側から下流側へ順次、エアクリーナ5、エアフロ−メ−タ6、スロットル弁7が配設されている。
【0014】
左右バンク1L、1Rの各気筒に対しては、上記サ−ジタンク4L、4Rから伸びる独立吸気通路8L、8Rが接続されている。実施形態では、各気筒は吸気2弁式つまり2つの吸気ポ−トを有するものとされて、1つの気筒についてそれぞれ、一方の吸気ポ−トに対して左の独立吸気通路8Lが接続されると共に、他方の吸気ポ−トに対して右の独立吸気通路8Rが接続されている。つまり、1つの気筒について、両サ−ジタンク4L、4Rから吸気が供給されるようになっている。ただし、高回転あるいは高負荷のように大きなエンジン出力が要求される特定運転状態以外の運転状態では、各気筒それぞれについて、一方の独立吸気通路が閉じられて、対応する一方のサ−ジタンクからのみ吸気が供給されるようになっている(上記特定運転状態以外の運転状態では、左バンク気筒に対しては左サ−ジタンク4Lからのみ吸気供給され、右バンク気筒には右サ−ジタンク4Rからのみ吸気供給される)。
【0015】
左バンク4Lに独立排気通路10Lが接続されると共に、右バンク4Rに独立排気通路10Rが接続されて、各独立排気通路10Lと10Rは最終的に1本の共通排気通路11に連なっている。左の独立排気通路10Lには、排気ガス浄化触媒(三元触媒)12Lが接続されると共に、この触媒12Lの上流側と下流側にはそれぞれ空燃比センサとしての酸素センサ13L、14Lが接続されている。同様に、右の独立排気通路10Rには、排気ガス浄化触媒(三元触媒)12Rが接続されると共に、この触媒12Rの上流側と下流側にはそれぞれ空燃比センサとしての酸素センサ13R、14Rが接続されている。さらに、共通排気通路11には、排気ガス浄化触媒(三元触媒)15が接続されると共に、この触媒15の上流側と下流側にはそれぞれ空燃比センサとしての酸素センサ16、17が接続されている。
【0016】
酸素センサ13Lと14Lとの出力の相違状態を比較することにより、触媒12Lの劣化が検出される。同様に、酸素センサ13Rと14Rとの出力の相違状態を比較することにより触媒12Rの劣化が検出され、酸素センサ16と17との出力の相違状態を比較することにより触媒15の劣化が検出される。空燃比のフィ−ドバック制御に際しては、左バンク1L用としては酸素センサ13Lが用いられ、右バンク1R用としては酸素センサ13Rが用いられる。
【0017】
気筒に対する吸気供給が、運転状態の変化にかかわらず常時行われる独立吸気通路8R、8Lには、それぞれ燃料噴射弁20L、20Rが配設されている。燃料噴射弁20L、20Rに対する燃料供給系統は、次のように構成されている。すなわち、燃料タンク21からポンプ22によって汲み上げられた燃料が、供給配管23を介して一方のバンク用の燃料噴射弁20Rに供給された後、連通配管24を介して他方のバンク用の燃料噴射弁20Lに供給された後、リタ−ン配管25を介して燃料タンク21へ戻される。上記供給配管23にはパルセーションダンパ26が接続され、リタ−ン配管25には燃圧調整用のレギュレータ27が接続される。なお、供給配管23のうちポンプ22付近には、フィルタ28、29が接続されている。
【0018】
蒸発燃料つまりエバポガスのエンジンへの供給系統が、次のように構成されている。まず、エバポガスを一時的に貯溜するキャニスタ30が設けられ、このキャニスタ30が、導入用配管31を介して燃料タンク21内に連なっている。また、キャニスタ30は、排出用配管32を介して前記共通吸気通路3のうちスロットル弁7下流側に接続され、この排出用配管32の共通吸気通路3への開口部分が、エバポガス導入口として符号32aで示される。
【0019】
上記導入用配管31は、燃料タンク21側において2本に分岐されて、一方の分岐配管31aが燃料タンク21内の上部空間に開口されている。また、他方の分岐配管31bが、燃料タンク21内の上部空間に2本の分岐状態で開口されており、分岐配管31bの途中には、機械式の開閉弁33が接続されている。この開閉弁33は、燃料タンク21(の燃料供給口)に給油ノズルが挿入されたときに閉弁されるものである。なお、配管31の燃料タンク21内への合計3つの開口部分にはそれぞれ、液体燃料の存在によって閉弁されるカット弁34が接続されている。
【0020】
前記排出用配管32にはパ−ジバルブ35が接続されており、このパ−ジバルブ35は、電磁式とされて、その開度が連続可変的に調整可能とされている。また、キャニスタ30は、大気導入通路30aを有するが、この大気導入通路30aには、フィルタ36、電磁式の開閉弁(大気開放弁)37が接続されている。パ−ジバルブ35が閉じられている状態で、燃料タンク21からの蒸発燃料が、導入用配管31を介してキャニスタ30に一時的に貯溜される。所定運転状態のとき、パ−ジバルブ35および大気開放弁37が開かれて、キャニスタ30に貯溜されていた蒸発燃料が、排出用通路32を介して共通吸気通路3へ供給されて、最終的に気筒内で燃焼されることになる。
【0021】
図2は、空燃比フィ−ドバック制御および蒸発燃料システムの漏れ故障診断の制御を行うための制御系統をブロック図的に示すものである。この図2において、Uはマイクロコンピュ−タを利用して構成されたコントロ−ラであり、各種センサ13L、13R、6の他、センサあるいはスイッチS1〜S9からの信号が入力される。S1は燃料タンク21内の圧力を検出する圧力センサである。S2は大気圧を検出する大気圧センサである。S3はアクセルペダルが全閉のときにONとなるアイドルスイッチである。S4はスロットル開度を検出するスロットル開度センサである。S5はエンジン回転数を検出する回転数センサである。S6は車速を検出する車速センサである。S7は燃料タンク21内の残量燃料量を検出する燃料センサである。S8はエンジンの吸気温度を検出する吸気温センサである。S9はエンジンの冷却水温を検出する水温センサである。なお、上記各種センサやスイッチは、検出手段として表現することができる。
【0022】
酸素センサ13L、13Rを用いた空燃比フィ−ドバック制御は、アイドル時にも行われるようになっている。すなわち、酸素センサ13L、13Rは、理論空燃比を境にしてその出力がオンオフ的に反転されるもので、コントロ−ラUは、酸素センサ13L、13Rの出力がリッチを示すときは燃料噴射弁20L、20Rからの燃料噴射量を減量補正し、酸素センサ13L、13Rの出力がリーンを示すときは燃料噴射弁20L、20Rからの燃料噴射量を増量補正し、これにより実際の空燃比が理論空燃比となるようにフィ−ドバック制御される。
【0023】
次に、蒸発燃料システムの漏れ故障の診断の制御について説明するが、故障診断の態様として、モ−ド(故障診断モ−ド)A、モ−ドB、モ−ドCの3種類が設定されている。モ−ドAは、アイドル時でかつ空燃比のフィ−ドバック制御中が行われるもので、例えば直径が0.02インチ程度の小さな漏れ(小さな孔)の検出を行うものとなっている。モ−ドBは、オフアイドル時に、例えば直径が0.02インチ程度の小さな漏れ(小さな孔)の検出を行うものとなっている。モ−ドCは、オフアイドル時に、例えば直径が0.04インチ程度の比較的大きな漏れ(大きな孔)の検出と、配管はずれ等の極めて大きな漏れ(いわゆるラージリーク)の検出を行うものとなっている。
【0024】
蒸発燃料システムの故障診断実行条件は、例えば次のように設定されている。まず、各モ−ド共通の共通実行条件が次のように設定されている。
.最低吸気温度が所定値以上であること。
.ラージリーク判定をしていないこと。
.エンジン始動時の冷却水温から最低吸気温度を差し引いた値が所定値以下であること。
.異常負圧を検出していないこと。
.吸気温度が所定範囲内であること。
.燃料残量が所定範囲内であること。
.燃料タンクの内圧が所定値以上であること。
.大気圧が所定値以上であること。
.車速が所定値以下であること。
.エンジン始動時の冷却水温が所定範囲内であること。
【0025】
モ−ドA実行条件は例えば次のように設定されている。
.共通実行条件を満足すること。
.モ−ドAの故障診断をまだ行っていないこと。
.アイドルスイッチがオン(アイドル時)であること。
.エンジン回転数が所定値以上であること。
.燃料の液面変動が小さいこと(燃料残量の検出値の変動が小)。
.燃料残量が所定値以上であること。
.車速所定値以下が所定時間継続していること。
.再診断カウンタがカウントアップしていないこと。
.冷却水温が所定範囲内であること。
.エンジン始動時の冷却水温が所定値以下であること。
.始動後タイマが所定値以下であること。
【0026】
モ−ドBの実行条件が例えば次のように設定されている。
.共通実行条件を満足すること。
.モ−ドBの故障診断をまだ行っていないこと。
.スロットル開度が所定範囲内であること。
.充填効率が所定範囲内であること。
.エンジン回転数が所定範囲内であること。
.車速が所定範囲内であること。
.燃料の液面変動が小さいこと(燃料残量の検出値の変動が小)。
.燃料残量が所定値以上であること。
.所定車速を越えてから所定時間経過していること。
.再診断カウンタがカウントアップしていないこと。
.冷却水温が所定範囲内であること。
.スロットル開度の変化率が所定値以下であること。
.車速の変化率が所定値以下であること。
.エンジン始動時の冷却水温が所定値以下であること。
.始動後タイマが所定値以下であること。
【0027】
モ−ドCの実行条件が例えば次のように設定されている。
.共通実行条件を満足すること。
.モ−ドCの故障診断をまだ行っていないこと。
.スロットルディレータイマがカウントアップしていないこと。
.充填効率が所定範囲内であること。
.エンジン回転数が所定範囲内であること。
.車速が所定値以上であること。
.燃料の液面変動が小さいこと(燃料残量の検出値の変動が小)。
.再診断カウンタがカウントアップしていないこと。
.冷却水温が所定範囲内であること。
.所定車速を越えてから所定時間経過していること。
【0028】
モ−ドAの概要について、図3のタイムチャ−トを参照しつつ説明する。まず、パ−ジバルブ35を閉じて燃料タンク内圧がほぼ大気圧になるのを待ち、この間の経過時間が実行待機タイマによってカウントされる。燃料タンク内圧がほぼ大気圧になると(t3時点)、大気開放弁37が閉じられると共に、エバポ発生量用タイマがセットされ、このときの燃料タンク内圧がftp8として検出、記憶される。上記エバポ発生量用タイマでの設定時間が経過した時点(t4時点)で、再度燃料タンク内圧がftp9として検出、記憶される。
【0029】
ftp9の検出、記憶と同時に、パ−ジバルブ35が所定開度Lだけ開かれる。これにより蒸発燃料システム内の減圧が開始される。パ−ジバルブ35は、酸素センサの出力が反転される毎に、所定分づつ開度が増大される(開度上限規制あり)。燃料タンク内圧が第2目標負圧(第2所定負圧)にまで低下すると(t5時点)、パ−ジバルブ35の開度は所定開度だけ低減されてこの低減された一定開度状態に保持され、これにより燃料タンク内圧の低下度合いが緩くなる。やがて、燃料タンク内圧が最終的な目標負圧である第1目標負圧(第1所定負圧)になると、パ−ジバルブ35が全閉にされて蒸発燃料システム内が密閉状態とされると共に、負圧保持タイマがセットされる(t6時点)。負圧保持タイマのセットから短い所定時間経過後に、燃料タンク内圧がftp1として検出、記憶される。負圧保持タイマでの設定時間が経過した時点(t7時点)で、燃料タンク内圧がftp2として検出、記憶され、この後すみやかに大気開放弁37が開かれる。
【0030】
蒸発燃料システムに漏れ故障があるか否かの判定のために、下記式 (1)に基づいて判定値が演算される。ただし、式中Kは制御定数である。
【0031】
判定値=(ftp2−ftp1)−K・(ftp9−ftp8)・・・ (1)
【0032】
「ftp2−ftp1」は、蒸発燃料システム内が密閉状態にあるときの圧力上昇分、つまり漏れの度合いを示すことになる。また、「K・(ftp9−ftp8)」は、蒸発燃料が自然発生するときの圧力上昇分となる。小さい漏れ故障を診断するために、蒸発燃料の自然発生による圧力上昇分の影響を加味することが望ましいものとなり、このために上記式 (1)に示すように、判定値としては「K・(ftp9−ftp8)」分だけ差し引くようにしてある。
【0033】
漏れ故障判定のために、正常判定用しきい値と異常判定用しきい値との2つのしきい値が設定される(正常判定しきい値<異常判定しきい値)。すなわち、上記判定値が、正常判定しきい値よりも小さければ、漏れ故障のない正常であると判定される。また、上記判定値が異常判定しきい値よりも大きければ、漏れ故障のある異常時であると判定される。
【0034】
モ−ドBの概要について、図4のタイムチャ−トを参照しつつ説明する。このモ−ドBでは、蒸発燃料システム内を所定負圧に密閉保持した状態で、初期の燃料タンク内圧ftp11(図3のftp1対応)と、後期の燃料タンク内圧ftp21(図3のftp2対応)とを検出するが、このような検出つまり減圧処理とその後の密閉保持とを合計2回行って、2回目の減圧後の密閉状態初期の圧力がftp12として検出、記憶され、密閉状態後期の圧力がftp22として検出、記憶される。1回目の圧力変化を得た後から、2回目の減圧処理開始までのインターバルが、図4のt5時点からt12時点までの間で示される。そして、次式 (2)に基づいて判定値が演算される。
【0035】
【0036】
上記式 (2)は、つまるところ、図3のモ−ドAにおける圧力差「ftp2−ftp1」について、2回分を相加平均したものに相当する。このように、2回(複数回)の圧力差をみるのは、1回のみではノイズ等によって正確に判定しにくいという観点からである。ただし、モ−ドBの場合、走行中に故障診断を行うため、走行風による燃料タンク内の蒸発燃料の凝縮が発生することから、減圧処理前の蒸発燃料発生量を用いるとかえって誤診断するため、モ−ドAとは異なり、減圧処理前の蒸発燃料発生量(に基づく圧力変化)は判定値に含めないようにしてある。勿論、このモ−ドBでも、正常判定用しきい値と異常判定用しきい値との2つのしきい値が設定される(正常判定しきい値<異常判定しきい値であるが、モ−ドB専用の大きさに設定される)。そして、式 (2)により得られる判定値が正常判定しきい値よりも小さければ、漏れ故障のない正常であると判定される。また、式 (2)により得られる判定値が異常判定しきい値よりも大きければ、漏れ故障のある異常時であると判定される。
【0037】
モ−ドCは、基本的には、モ−ドBとほぼ同じような手法での漏れ故障診断となる。ただし、蒸発燃料システム内を密閉状態としたときの圧力変化(圧力差)はモ−ドAと同様に1回のみ見るようにしてある。また、ラージリーク検出ということで、減圧処理中の圧力状態によっても、漏れ故障を診断するようにしてある。
【0038】
次に、コントロ−ラUによる蒸発燃料システムの漏れ故障の診断制御の詳細について、図5以下のフロ−チャ−トを参照しつつ説明する。なお、以下のフロ−チャ−トでは、タイマ、カウンタは、初期値0からカウントアップしていく形式となっており、図3、図4のタイムチャ−トではカウントダウンされているのと相違する。なお、以下の説明でY、Q、RあるいはZはそれぞれステップを示す。
【0039】
まず、図5は、メインのフロ−チャ−トとなるもので、Y1において、モ−ドA〜モ−ドCのいずれかの故障診断が実行されているか否かが判別される。このY1の判別でNOのときは、Y2において、モ−ドAの故障診断実行条件が満足されているか否かが判別される。このY2の判別でYESのときは、Y3において、モ−ドAの故障診断が実行される。Y2の判別でNOのときは、Y4において、モ−ドBの故障診断実行条件が満足されているか否かが判別される。このY4の判別でYESのときは、Y5において、モ−ドBの故障診断が実行される。Y4の判別でNOのときは、Y5において、モ−ドCの故障診断実行条件が満足されているか否かが判別される。このY6の判別でYESのときは、Y7において、モ−ドCの故障診断が実行される。Y1の判別でYESのとき、あるいはY6の判別でNOのときは、それぞれそのままリタ−ンされる。
【0040】
図6〜図11は、モ−ドAの故障診断の内容を示すものである。まず、図6のQ1において、始動後タイマTstが0に初期化された後、Q2において運転状態が検出され、Q3においてエンジンが始動しているか否かが判別される。このQ3の判別でNOのときはQ1へ戻る。Q3の判別でYESのときは、Q4において、再診断実行カウンタCrtが0に初期化される。このCrtは、1回目で故障診断ができなかった場合でも、あらかじめ設定された所定回数だけ繰り返し故障診断を実行させるようにするためのものである。
【0041】
Q5では、低車速カウンタVspcが0に初期化された後、Q6において、現在の車速がVspとして検出される。Q7では、車速Vspが所定値よりも小さいか否かが判別され、このQ7の判別でNOのときはQ5へ戻る。Q7の判別でYESのときは、Q8において、低車速カウンタVspcをカウントアップした後、Q9において、Vspcが所定値よりも大きいか否かが判別される。このQ9の判別でNOのときは、Q6へ戻る。Q9の判別でYESのときは、低車速が所定時間継続したときであり、このときは図7のQ11において、診断実行待機タイマが0に初期化される。Q12での運転状態検出、Q13での始動後タイマのカウントアップが行われた後、Q14において、モ−ドAの実行条件を満足しているか否かが判別される。このQ14の判別でNOのときは、図6のQ10に移行して、大気開放弁37を開いた後、Q5へ戻る。
【0042】
Q14の判別でYESのときは、Q15において、大気開放弁37を閉じ、Q16においてパ−ジバルブ35の駆動を停止(燃料タンク内圧の大気圧復帰のため)した後、Q17において、燃料タンク内圧ftpが検出される。Q18では、検出された燃料タンク内圧ftpが所定値よりも大きいか否かが判別される。このQ18の判別でYESのときは、Q19において、タイマTpgposが0に初期化される。Q18の判別でNOのときは、Q20において、待機タイマTwtがカウントアップされた後、Q21において、Twtが所定値よりも大きいか否かが判別される。このQ21の判別でYESのときは、Q19に移行し、Q21の判別でNOのときは、Q12へ戻る。
【0043】
Q19の後は、図8のQ31において、揺れ判定用の燃料タンク内圧の最大値ftprmax1が0に初期化される。この後、Q32において、運転状態が検出され、Q33において始動後タイマtSTがカウントアップされた後、Q34において、モ−ドAの実行条件が満足されているか否かが判別される。このQ34の判別でYESのときは、Q35において、パ−ジバルブ35の駆動が停止される。Q36では、燃料タンク内圧ftp8が検出されたか否かが判別される、このQ35の判別でNOのときは、Q37において現在検出されている燃料タンク内圧がftp8として検出、記憶された後、Q38に移行する。また、Q36の判別でYESのときは、Q37を経ることなくQ38へ移行する。Q38では、Tpgposがカウントアップされ、この後、Q39において、燃料タンクの液面変動が小さいか否かが判別される。このQ39の判別でYESのときは、Q40において、揺れ判定用の現在の燃料タンク内圧が検出されて、ftprとして記憶される。この後、ftpmax1の更新がなされるが、これは、前回と今回のftprの偏差と、いままで記憶されているftpmax1とのうち、いずれか大きい方が最新のftpmax1として更新される。
【0044】
Q41の後、Q42において、ftpmax1が所定値よりも小さいか否かが判別される。このQ42の判別でYESのときは、Q43において、Tpgposが所定値よりも大きいか否かが判別される。このQ43の判別でYESのときは、図3のt4時点となったときであり、このときは、Q44において、現在の燃料タンク内圧ftpが、ftp9として記憶される。Q45では、ftp9からftp8を差し引いた値が、所定値よりも小さいか否かが判別される。このQ45の判別でYESのときは、自然発生する蒸発燃料量が少ないときであり、このときはQ46において、減圧タイマTpgonが0に初期化される。Q47での運転状態の検出、Q48での始動後タイマTstのカウントアップが行われた後、Q49において、モ−ドAの実行条件が満足しているか否かが判別される。
【0045】
Q49の判別でYESのときは、図9のQ51において、減圧タイマTpgonがカウントアップされた後、パ−ジバルブ35が全閉であるか否かが判別される。Q52の判別でYESのときは、Q53において、パ−ジバルブ35が所定の初期開度Lに設定される(図3のT4時点参照)。Q52の判別でNOのときは、図3のt4時点を過ぎたときであり、このときは、Q54において、酸素センサ出力が反転したか否かが判別される。このQ54の判別でYESのときは、パ−ジバルブ35の開度が、所定の上限開度よりも小さいか否かが判別される。このQ55の判別でYESのときは、Q56において、パ−ジバルブ35の開度が、所定の小さな増大分だけ増大される。Q55の判別でNOのときは、Q57において、燃料タンク内圧が第2所定値(図3の第2目標負圧)以下であるか否かが判別される。このQ57の判別でYESのときは、Q58において、パ−ジバルブ35の開度が所定分低減されて一定開度とされる(図3のt5時点)。
【0046】
Q53、Q56、Q58の後、Q54の判別でNOのとき、あるいはQ57の判別でNOのときは、それぞれ、Q59に移行する。Q59では、燃料タンク内圧ftpが所定値(図3の第1目標負圧)よりも小さいか否かが判別される。このQ59の判別でNOのときは、Q60において、負圧引き込みタイマTpgonが所定値よりも大きいか否かが判別される。このQ60の判別でYESのとき、あるいはQ59の判別でYESのときは、図10のQ71に移行する。
【0047】
Q71では、負圧保持タイマTpgofが0に初期化された後、Q72において、揺れ判定用燃料タンク内圧の最大値ftpmax2が0に初期化される。Q73での運転状態の検出が行われた後、Q73において、故障判定用しきい値SS1、SS2が設定される。SS1が異常判定用、SS2が正常判定用であり、SS1>SS2とされる。この後、Q75において、パ−ジバルブ35が停止され(全閉で図3のt6時点)、Q76において始動後タイマTstがカウントアップされた後、Q77において、モ−ドAの実行条件が満足されているか否かが判別される。
【0048】
Q77の判別でYESのときは、Q78において、負圧保持タイマTpgofがカウントアップされた後、Q79において、ftp1が計測されているか否かが判別される(実際には、Q78とQ79との間に短い所定時間を経過させるのが好ましい)。Q79の判別でNOのときは、Q80において、現在検出された燃料タンク内圧ftpがftp1として記憶される。Q79の判別でYESのとき、あるいはQ80の後は、それぞれQ81において、燃料タンク内の液面変動が小さいか否かが判別される。このQ81の判別でYESのときは、図11のQ85に移行して、揺れ判定用燃料タンク内圧がftprとして計測される。この後、Q86において、ftpmax2の更新が行われるが、更新の手法はQ41の場合と同じである。
【0049】
Q87では、負圧保持タイマTpgofが所定値よりも大きいか否かが判別される。このQ87の判別でYESのときは(図3のt7時点)、Q88において、現在の燃料タンク内圧ftpがftp2として記憶される。Q89では、前述した式 (1)に基づいて、判定値が演算される。Q90では、判定値が、異常用判定しきい値SS1よりも大きいか否かが判別される。このQ90の判別でYESのときは、Q91において、ftpmax2が、K・(ftp2−ftp1)よりも大きいか否かが判別される。K・(ftp2−ftp1)は、ftp2とftp1との検出時点の間での傾き(単位時間あたりの圧力上昇度合い)であり、揺れ判定用の内圧最大値がこの傾きよりも大きいときは、揺れに起因して蒸発燃料が多量に発生して圧力上昇したときであると考えられる。上記Q91の判別でYESのときは、Q92において、ftpmax1が所定値よりも小さいか否かが判別される。このQ92の判別は、つまるところ、図3のt3〜t4の間での揺れに起因する蒸発燃料の多量発生に起因する圧力上昇が大きいか否かの判別あとなる。このQ92の判別でYESのときは、揺れに起因する大きな圧力上昇はなかったということで、Q93において、最終的に漏れ故障がある異常であると判定される(故障判定でモ−ドAの故障診断終了)。
【0050】
Q90の判別でNOのときは、Q94において、判定値が正常用判定しきい値SS2よりも小さいか否かが判別される。このQ94の判別でYESのときは、Q95において、ftpmax1が所定値よりも小さいか否かが判別される。このQ95の判別でYESのときは、Q96において、漏れ故障がないという正常判定が行われる(モ−ドAの故障診断終了)。
【0051】
Q91の判別でNOのとき、Q92の判別でNOのとき、Q94の判別でNOのとき、Q95の判別でNOのとき、さらにはQ77の判別でNOのとき、Q42の判別でNOのとき、Q45の判別でNOのとき、Q49の判別でNOのときはそれぞれ、Q97に移行する。Q97では、再診断実行カウンタCrtをカウントアップした後、Q98において、Crtが所定値(例えば3回)よりも大きいか否かが判別される。このQ98の判別でNOのときは、図6のQ10へ移行して、モ−ドAでの故障診断する機会が再度与えられる。Q98の判別でYESのときは、モ−ドAの故障診断は終了される。
【0052】
図12〜図16は、モ−ドBの故障診断の内容を示すものであるが、モ−ドAと共通するところはごく簡単な説明にとどめるものとする。まず、図12のR1〜R4は、Q1〜Q4と同じである。R5では、モ−ドB特有の2回分の蒸発燃料システム密閉状態下での圧力変化検出のためのインターバル設定用タイマCexが0に初期化される。R6〜R10はQ46〜Q51と同じであり、R13は、Q10と同じである。 R11では、大気開放弁37が閉とされ、パ−ジバルブ35が開かれて、減圧処理が開始される(図4のt2時点)。
【0053】
図13のR21〜R24の処理が、減圧の際のパ−ジバルブ35の開度制御であり、モ−ドAとは異なるものである。すなわち、Q21において、燃料タンク内圧ftpが所定値(図4の第2目標負圧で、第2所定負圧)よりも小さくないと判別されたときは、R22において、パ−ジバルブ35の開度が所定の上限開度よりも小さいか否かが判別される。R22の判別でNOのときは、R23において、パ−ジバルブ35の開度が徐々に大きくされるが、この徐々なる開度増大は、酸素センサ出力の反転に同期することなく、時間に同期して行われる(所定時間毎に所定開度づつ開度増大される−図4のt2時点以後でt3よりも前)。R21の判別でYESのときは、R24において、所定開度減少された一定開度に保持される(図4のt3〜t4)。
【0054】
R23の後、R22の判別でYESのとき、あるいはR24の後は、それぞれR25に移行される。R25はQ59に対応し、R26はQ60に対応し、R27はQ71に対応し、R28はQ72に対応し、R29はQ75に対応する。なお、R29が、図4のt4時点となる。
【0055】
R29の後は、図14のR31において、燃料タンク内圧ftpがftp1として記憶される(図4のftp11あるいはftp12対応)。R32では、検出された大気圧のうち、現在の大気圧と、その最大値と、その最小値とが記憶されるが、初期時には、現在の大気圧と最大値と最小値とが同じ値となる。R33での運転状態の検出が行われた後、R33において、判定しきい値SSが設定される。R35で始動後タイマTstがカウントアップされた後、R36において、モ−ドBの実行条件が満足されているか否かが判別される。
【0056】
R36の判別でYESのときは、R37において、大気圧の最大値と最小値との更新が行われる。この後、R38において、負圧保持タイマTpgofがカウントアップされた後、R39において、燃料タンク内の液面変動が大きいか否かが判別される。R39の判別でNOのときは、R40において、揺れ判定用の現在の燃料タンク内圧がftprとして記憶される。R41では、最大値ftpmaxの更新が行われるが、これは、前回と今回のftprの偏差と、いままで記憶されているftpmaxとのうち、いずれか大きい方が最新のftpmaxとして更新される。この後、R42において、負圧保持タイマTpgofが所定値よりも大きいか否かが判別される。
【0057】
R42の判別でYESのときは、図15のR51において、燃料タンク内圧ftpが、ftp2として記憶される(図4のftp21、あるいはftp22に対応)。R52では、診断回数設定用のカウンタCexがカウントアップされた後、R53において、Cexが所定値(実施形態では2)よりも大きいか否かが判別される。当初は、R53の判別でNOとなって、R54において、次の減圧処理開始までのインターバル設定用タイマCintが0に初期化される(図4のtc5時点)。R55、R56の処理によって、Cintが所定値以上になるのを確認したら、R57において、ftp2からftp1を差し引いた値(圧力変化)が、△Pとして設定され、この後R58において、△Pが前回の△Pを示す△P1として記憶される。すなわち、△P1は、図4において、ftp21−ftp11に相当するものとなる。
【0058】
R53の判別でYESのときは、R59において、ftp2からftp1を差し引いた値(圧力変化)が、△Pとして設定される。このときの、△Pは、図4において、ftp22−ftp12に相当する。R60においてftpmaxよりもK・△Pの方が大きいことが確認されたとき、およびR61においてftpmaxよりもK・△P1の方が大きいことが確認されたときは、。図16のR74に移行する。なお、Kは制御定数である。また、R58の後は、図16のR71に移行する。
【0059】
図16のR71では、R32で記憶されている大気圧、その最大値および最小値が、それぞれ前回値として記憶される。また、図16のR74では、△P1と△Pとの偏差の絶対値が、△PPとして演算される。次いで、R75において、△PPが所定値よりも小さいか否かが判別される。このR75の判別でYESのときは、前述した式 (2)に基づいて判定値Aveが演算される。R77では、故障判定しきい値がSS1として設定される。この後、R78において、判定値Aveが、判定しきい値SS1よりも大きいか否かが判別される。このR78の判別でYESのときは、漏れ故障が考えられるときであり、このときは、R79において、大気圧変動が大きいか否かが判別される。このR79での判別は、具体的には次のようにして行われる。すなわち、R32で記憶されている大気圧の最小値(△Pを求める間の最小値で図4のt14〜t15の間での最小値)から、R32で記憶されている大気圧を差し引いた値が所定値よりも小さいとき、または、R71で記憶されている大気圧の最小値(△P1を求める間の最小値で図4のt4〜t5の間での最小値)からR71で記憶されている大気圧を差し引いた値が所定値よりも小さいときに、R79の判別でYESとなる。R79の判別でYESのときは、R80において、蒸発燃料システムに漏れ故障のある異常時であると判定されて、モ−ドBの故障診断が終了される。
【0060】
R78の判別でNOのときは、R81において、大気圧変動が小さいか否かが判別される。このR81は、前記R79の場合の最小値の代わりに最大値を用いる点においてのみ相違する。すなわち、R32で記憶されている大気圧の最大値(△Pを求める間の最大値で図4のt14〜t15の間での最大値)から、R32で記憶されている大気圧を差し引いた値が所定値よりも小さいとき、または、R71で記憶されている大気圧の最大値(△P1を求める間の最大値で図4のt4〜t5の間での最大値)から、R71で記憶されている大気圧を差し引いた値が所定値よりも小さいときに、R81の判別でYESとなる。R81の判別でYESのときは、R82において、蒸発燃料システムに漏れ故障のない正常時であると判定されて、モ−ドBの故障診断が終了される。
【0061】
R75の判別でNOのとき、R79の判別でNOのとき、R81の判別でNOのとき、R71の後、R61の判別でNOのとき、R36の判別でNOのとき、さらにはR39の判別でNOのときはそれぞれ、R72に移行する。R72では、再診断実行カウンタCrtをカウントアップした後、R73において、Crtが所定値(例えば3回)よりも大きいか否かが判別される。このR73の判別でNOのときは、図12のR13へ移行して、モ−ドBでの故障診断する機会が再度与えられる。R73の判別でYESのときは、モ−ドBの故障診断は終了される。
【0062】
図17〜図22は、モ−ドCの故障診断の内容を示すものであり、基本的にはモ−ドBと共通であるが、ラージリークをみる関係上、特に次の点においてモ−ドBと相違する。まず、減圧処理中に、十分に減圧できない負圧導入不良判定の診断を行うようにしてある。負圧導入不良の発生が、燃料タンク内の液面傾斜によって燃料タンク21内のバルブ34が2個以上閉塞されたときにも生じるので、このような可能性のあるときはラージリーク判定を行わないようにしてある。具体的には、燃料タンク内圧が所定以上大きいとき、負圧引き込み時間が異常に早いとき(燃料タンク内圧センサが、燃料タンク21内そのものではなく、燃料タンク21とキャニスタ30との接続系路途中に設けられているため)、および燃料残量が所定値以上という3つの条件を全て満足したときは、負圧導入不良の判定を行わないようにしてある。負圧導入不良判定のために、判定しきい値を設定するが、この判定しきい値を、基本値と、始動後時間をパラメ−タとして演算される補正値とでもって決定するようにしてある。
【0063】
モ−ドCでは、スロットル開度が所定開度よりも小さいことを条件として故障診断されるが、この所定開度を大気圧で補正するようにしてある(大気圧が低いほどつまり高地ほど所定開度が大きくされる)。ただし、スロットル開度が所定開度よりも大きいときでも、この時間が短ければ故障診断を行うようにしてある。また、負圧保持した後の圧力変化(ftp2−ftp1に相当)を判定しきい値と比較してモ−ドBと同様に故障判定を行うが、モ−ドBとは異なって、この圧力変化は1回分のみをみるようにしてある。
【0064】
以上のことを前提として、モ−ドC特有部分に特に着目して説明する。まず、図17のZ1〜Z5は、R1〜R6に相当するが、蒸発燃料システム内を負圧保持した状態での圧力変化は1回しかみないので、R5に相当するステップは有しない。Z6、Z7は、モ−ドC特有であり、Z6においてスロットル開度tvoと大気圧atpとが検出され、Z7において、スロットル開度tvoが所定開度よりも小さいことが確認されたときに、Z8に移行する制御続行となる。このZ7での所定開度は、前述したように、大気圧atpをパラメ−タとして設定される(大気圧が低いほど所定開度が大)。Z9もモ−ドC特有であり、負圧導入不良判定しきい値の基本値SLが設定される。
【0065】
図18のZ21、Z22はモ−ドC特有であり、負圧導入不良判定を禁止するか否かの判定用として、そのときの燃料タンク内圧ftpが、判定値ftpstpとして設定される。Z23〜Z29は、R10〜R29と同じである。
【0066】
図19のZ31〜Z35は、モ−ドC特有であり、前述したスロットル開度が小さいとき、あるいはスロットル開度が大きい状態が短い所定時間内であることを条件として、Z34において、燃料タンク内圧ftpが所定値よりも小さいか否かが判別される。このZ34の判別でNOのときは、十分に減圧されていないときであり、このときは、負圧導入経過時間Tpgonが所定値よりも大きいか否かが判別される。このZ35の判別でYESのときは、Z36において、異常であると判定される(負圧導入不良の判定)。Z34の判別でYESのときは、Z37において、ここまでの経過時間Tpgonが、負圧導入判定禁止用の判定しきい値Tpgonstpとして記憶される。Z38〜Z42は、R27〜R32と同じである。
【0067】
図20のZ51〜Z56は、モ−ドC特有であり、負圧導入不良判定しきい値を決定するための係数Ktstが、始動後経過時間Tstに基づいて決定される(Tst大ほどKtstが大)。次いでZ52において、最終的な判定しきい値Prt2が、初期値SLにe.Ktstを加算した値として演算される(eは制御定数)。Z53では、燃料残量がftlstpとして計測される。Z54では、ラージリークの判定禁止条件となっているか否かが判別される。このZ54での判別は、前述した説明からすでに明らかなように、燃料タンク内圧Ftpstpが所定より大きいとき、負圧引き込み時間Tpgonstpが所定値より小さいとき、燃料残量ftlstpが所定値以上という3つの条件を全て満足したときにYESとされる。Z54の判別でYESのときは、Z55において、Ftp1よりもFtp2の方が大きいか否かが判別される。このZ55の判別でNOのときは、Z56におてい、異常であると判定される(負圧導入不良判定)。Z55の判別でYESのときは、Z57に移行されるが、Z57〜Z59はモ−ドBのR33〜R35と同じである。
【0068】
図21のZ61〜Z68は、モ−ドBのR36〜R51と同じである。Z69では、ftpmaxよりもK・(ftp2−ftp1)の方が大きいか否かが判別される(Kは制御定数)。このZ69の判別でYESのときは、Z70において、判定しきい値を決定するための係数Ktstが、始動後経過時間Tstに基づいて決定される(Tst大ほどKtstが大)。次いでZ71において、最終的な判定しきい値Prt1が、初期値SSにKtstを加算した値として演算される。
【0069】
図22のZ81では、圧力変化「ftp2−ftp1」の絶対値が、判定しきい値prt1よりも大きいか否かが判別される。このZ81移行の処理となるZ82〜Z85は、モ−ドBのR79〜R82と同じであり、Z86、Z87はモ−ドBのR72、R73と同じである。
【0070】
R75の判別でNOのとき、R79の判別でNOのとき、R81の判別でNOのとき、R71の後、R61の判別でNOのとき、R36の判別でNOのとき、さらにはR39の判別でNOのときはそれぞれ、R72に移行する。R72では、再診断実行カウンタCrtをカウントアップした後、R73において、Crtが所定値(例えば3回)よりも大きいか否かが判別される。このR73の判別でNOのときは、図12のR13へ移行して、モ−ドBでの故障診断する機会が再度与えられる。R73の判別でYESのときは、モ−ドBの故障診断は終了される。
【0071】
ここで、特許請求の範囲との関係で、若干の補足説明を行う。まず、請求項1、請求項2では、モ−ドBを想定したものとなっている。請求項3〜請求項8では、モ−ドBとモ−ドCとを対比して表現したものとなっている。請求項9では、モ−ドAとモ−ドBとを対比して表現したものとなっている。なお、モ−ドBとモ−ドCとは、少なくともエンジン回転数とエンジン負荷とをパラメ−タとして設定される所定領域において診断実行されるように設定して、モ−ドBではそのうち運転状態を示すパラメ−タの変化が小さい定常状態であることをも実行条件として設定することもできる(モ−ドCは、定常状態という実行条件なし)。
【0072】
以上実施形態について説明したが、故障判定の禁止としては、実施形態のように故障判定を行わないようにすることは勿論のこと、故障判定そのものは行うが、判定結果を無効とすることをも含むものである(最終的に判定されていない状態となればよい)。酸素センサの出力反転に同期してパ−ジバルブの開度を徐々に増大させるのは、アイドル時に限らないものであり、例えばアイドル付近の低速低回転領域においても行うことができる。パ−ジバルブを開いて減圧処理するのは、少なくとも空燃比のフィ−ドバック制御を行う領域内で設定するのが好ましいが、酸素センサの出力反転に同期してパ−ジバルブ開度を徐々に増大させることのないモ−ドBやモ−ドCでは、空燃比のフィ−ドバック制御を行わない領域でもって減圧処理つまり蒸発燃料システムの故障診断を行うこともできる。なお、蒸発燃料システム内に圧力導入して密閉状態の圧力変化をみる場合、導入される圧力としては負圧ではなくて正圧とすることもできる(漏れがある場合、負圧導入の場合とは逆に圧力低下を示すことになる)。
【0073】
フロ−チャ−トに示す各ステップあるいはステップ群は、その機能の上位表現に手段の名称を付して、あるいは第1、第2等の識別符号を付した手段として表現することができる。また、フロ−チャ−トに示す各ステップあるいはステップ群は、コントロ−ラU内に構成された制御部あるいは機能部として表現することができる。同様に、センサやスイッチ等の各種部材は、その機能の上位表現に手段の名称を付して表現することができる。また、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。さらに、本発明は、制御方法として表現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】蒸発燃料システムの一例を示す全体系統図。
【図2】故障診断を行う制御系統を示す図。
【図3】モ−ドAでの制御内容を示すタイムチャ−ト。
【図4】モ−ドBでの制御内容を示すタイムチャ−ト。
【図5】故障診断モ−ドの選択を行うためのフロ−チャ−ト。
【図6】モ−ドAでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図7】モ−ドAでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図8】モ−ドAでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図9】モ−ドAでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図10】モ−ドAでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図11】モ−ドAでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図12】モ−ドBでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図13】モ−ドBでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図14】モ−ドBでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図15】モ−ドBでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図16】モ−ドBでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図17】モ−ドCでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図18】モ−ドCでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図19】モ−ドCでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図20】モ−ドCでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図21】モ−ドCでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【図22】モ−ドCでの制御例を示すフロ−チャ−ト。
【符号の説明】
1:エンジン
13L、13R:酸素センサ(空燃比検出手段)
20L、20R:燃料噴射弁(燃料供給手段)
21:燃料タンク
30:キャニスタ
32:パ−ジ通路
35:パ−ジバルブ
37:大気開放弁
S1:燃料タンク内圧検出センサ(内圧検出手段)
S2:大気圧センサ(大気圧検出手段)
S3:アイドルスイッチ(アイドル検出手段)
Claims (9)
- 負圧もしくは正圧の圧力が導入された状態で蒸発燃料システム内を密閉して、この密閉状態での蒸発燃料システム内の圧力変化に基づいて漏れ故障を診断するようにした蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、
前記圧力の導入とその後の密閉とを複数回行って、各回での密閉状態における圧力変化を検出することにより複数回の圧力変化を得て、該複数回の圧力変化に基づいて漏れ故障診断が行われるように設定され、
前記複数回の圧力変化の差が所定値よりも大きいときに、漏れ故障診断を行うことを禁止する禁止手段を備えている、
ことを特徴とする蒸発燃料処理装置の故障診断装置。 - 請求項1において、
前記漏れ故障の診断が、車両運転状態に関するパラメ−タの変化が小さい定常運転時であることを条件として行われる、ことを特徴とする蒸発燃料処理装置の故障診断装置。 - 請求項1において、
少なくともエンジン回転数およびエンジン負荷をパラメ−タとして設定される所定領域において、漏れ故障診断を行う第1故障診断手段と、
前記所定領域であって、かつ車両運転状態に関するパラメ−タの変化が小さい定常運転時であることを条件として漏れ故障診断を行う第2故障診断手段と、
を備え、
前記禁止手段による漏れ故障診断の禁止が、前記第2故障診断手段に対してのみ行われて、前記第1故障診断手段に対しては禁止を行わないようにされている、
ことを特徴とする蒸発燃料処理装置の故障診断装置。 - 請求項3において、
前記第1故障診断手段が、前記蒸発燃料システムの大きな漏れ故障を診断するものとされ、
前記第2故障診断手段が、前記蒸発燃料システムの小さな漏れ故障を診断するものとされている、
ことを特徴とする蒸発燃料処理装置の故障診断装置。 - 負圧もしくは正圧の圧力が導入された状態で蒸発燃料システム内を密閉して、この密閉状態での蒸発燃料システム内の圧力変化に基づいて漏れ故障を診断するようにした蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、
少なくともエンジン回転数およびエンジン負荷をパラメ−タとして設定される所定領域において、大きな漏れ故障の診断を行う第1故障診断手段と、
前記所定領域であって、かつ車両運転状態に関するパラメ−タの変化が小さい定常運転時であることを条件として、小さな漏れ故障診断を行う第2故障診断手段と、
を備えていることを特徴とする蒸発燃料処理装置の故障診断装置。 - 請求項4または請求項5において、
前記第1故障診断手段による故障診断が、1回の前記圧力変化に基づいて行われ、
前記第2故障診断手段による故障診断が、複数回の前記圧力変化に基づいて行われる、
ことを特徴とする蒸発燃料処理装置の故障診断装置。 - 請求項5または請求項6において、
前記各故障診断手段による漏れ故障診断がそれぞれ、燃料タンク内の燃料残量に関する状態が所定状態であるときを実行条件として実行され、
前記実行条件が、前記第2故障診断手段の方が前記第1故障診断手段よりも漏れ故障診断が実行されにくいように厳しく設定されている、
ことを特徴とする蒸発燃料処理装置の故障診断装置。 - 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
漏れ故障診断が、オフアイドル時に行われる、ことを特徴とする蒸発燃料処理装置の故障診断装置。 - 負圧もしくは正圧の圧力が導入された状態で蒸発燃料システム内を密閉して、この密閉状態での蒸発燃料システム内の圧力変化に基づいて漏れ故障を診断するようにした蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、
アイドル時に、前記圧力導入前での蒸発燃料の発生量が少ないことを条件として、1回の前記圧力変化に基づいて漏れ故障診断を行う第1故障診断手段と、
オフアイドル時に、前記圧力の導入とその後の密閉とを複数回行って、各回での密閉状態における圧力変化を検出することにより複数回の圧力変化を得て、該複数回の圧力変化に基づいて漏れ故障診断を行なう第2故障診断手段と、
を備えていることを特徴とする蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
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