JP3574543B2 - ポリエステル太細糸の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は直接紡糸延伸法により、繊維軸方向に太さ斑を有する太細繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル太細繊糸はそれによって得られる布帛が特異な風合を呈し、また該当布帛を染色することによって霜降り状を呈することから特殊な糸条として知られている。
従来より、ポリエステル太細糸条の製造方法として、ポリエステル繊維の紡糸または延伸中に、溝つきロ−ラまたはガイドとの接触角を変化させてヤ−ン張力を変動させる方法、2成分よりなる複合繊維を紡糸する際に2成分の吐出割合を変化させる方法等が知られている。しかしながら、これらの方法では装置が複雑になりしかも生産性が悪く工業的実施までは至っていない。
またポリエステル未延伸糸を適当な延伸倍率で、ガラス転移点温度以下の温度で延伸する方法も知られている。しかしながら、かかる方法では、紡糸直後の未延伸糸を使用したのでは太さ斑が発現しにくく、数日経過した後の未延伸糸を使用する必要があり、効率のよい生産が困難である問題を抱えていた。またこれらの方法では紡糸工程、延伸工程の2工程を必要とし経済的な生産方法ではないので、工業的には1工程で太細繊維を製造できる方法が望まれていた。
【0003】
また、最近では直接紡糸延伸装置によりガラス転移点温度以下の温度と特定の延伸倍率で延伸し、一工程で太細繊維を製造する方法も提案されている(特開昭57−117610号公報)。
しかしながら、かかる方法ではガラス転移点温度以下に設定された加熱ロ−ラの表面に糸条から析出したスカム等が付着し、さらに熱によりそれがこびりつくため該加熱ロ−ラから糸条への熱伝達に斑が生じ、その結果太細斑のコントラストに斑が生じる欠点があった。
一方、直接紡糸延伸方法において、ロ−ラ間での不均一延伸であるがために規則性の強い太細繊維が得られ、太細部をより繊維間に分散、混在させた自然な太細繊維を得ることができないという問題もあった。
かかる問題を解決する手段として、特開平6−184816号公報には直接紡糸延伸法において、紡糸口金と加熱帯域との間にガラス転移点温度以下に冷却したポリエステル糸条を間歇的あるいは瞬間的に熱処理する方法が提案されている。しかしながら、かかる方法では糸条の糸揺れのため太細斑が不均一となり、さらに工程性に問題があり、安定に長期間に亘って紡糸することは困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題点に鑑み検討した結果、製造工程中に加熱装置を導入した直接紡糸延伸法において、太細繊維を低コストで安定に生産する方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、繊維形成性ポリエステルを紡糸口金より溶融紡糸し、紡出糸条を一旦該ポリエステルのガラス転移点温度以下に冷却し、引き続いて加熱されたパイプヒーター(以下加熱装置と略す)中を走行させて延伸熱処理を施した後油剤を付与し、2500m/分以上の引取り速度で巻き取る紡糸方法において、紡糸口金と加熱されたパイプヒーターとの間に流体噴射装置を設置して該糸条に交絡を付与することを特徴とするポリエステル太細糸の製造方法である。
【0006】
本発明の方法により太細糸条が得られるのは、紡糸口金と加熱装置との間で、糸条に間歇的、あるいは瞬間的に流体を噴射して交絡を付与することにより、加熱装置入り口までの糸条速度が変化することによって発現する斑と、加熱装置中での熱処理斑により発現する斑とが相俟ってより自然な斑が糸条に付与されるものと推定される。
糸条には全体に亘って太い部分と細い部分とが周期性を持って混在しており、加熱装置入り口までの太細部の周期は約50〜100cmであることが自然な斑を発現させるためには好ましく、とくに50〜70cmであることが望ましい。また加熱装置中での熱処理斑により発現する延伸斑の周期は20〜80mmであることが好ましく、とくに40mm以下であることが望ましい。これらの2つの斑によってより自然な斑形態を得ることができるのである。
【0007】
本発明において、太細斑の周期のコントロ−ルは、紡糸口金と加熱装置間の流体噴射装置の位置を変化させること、流体交絡処理を短時間で行うことにより成される。
かかる交絡処理時には、紡糸口金から吐出された糸条が、該糸条を構成するポリエステルのガラス転移点温度以下の温度になっていることが必要であり、この点を考慮すると紡糸口金と加熱装置間に設置する流体噴射装置の位置は、紡糸口金出口から400mm以上離れた位置であることが好ましい。流体噴射装置の位置が400mm未満の場合には糸条の温度が高すぎるので、フロ−延伸が起こり、融着毛羽、糸切れが生じるばかりでなく、得られた糸条の強度低下が大きく、布帛としたときの伸び回復性が著しく不良となり実用に耐えることができない。
【0008】
交絡処理を行う方法として電流を用いた制御計で行う方法があるが、短時間で交絡処理が行えればその方法に限定されるものではない。
交絡処理に使用される流体とは空気が一般的であり、水蒸気では100℃以上の温度になっており、糸条の融着等の起因になるので好ましくない。また流体の間歇時間は0.04秒以下、とくに0.02秒以下が好ましく、圧力は1kg/cm2 以上であることが好ましい。常時噴射されている流体中を糸条が短時間、たとえば瞬間的に走行することが好ましい。また、流体による交絡延伸を行うためには流体噴射装置中の糸条温度を上げることが好ましく、流体の温度は10〜60℃の範囲、とくにポリエステルのガラス転移点温度以下であることが好ましい。
さらに、その噴射方向は糸条の走行方向に直角であっても糸条の走行方向に対して傾斜していてもよい。傾斜している場合には糸条との角度が60度以下であることが好ましい。
【0009】
また流体噴射装置のガイド径は銘柄によって変更し、下記式(1)を満足する範囲の仕様とすることが好ましい。かかる範囲外では毛羽、断糸を生じる場合がある。
(A+10)/40<d<(A+50)/40 (1)
ここで、Aは糸条の平均繊度(デニ−ル)、dはガイド径(mm)を示す。
【0010】
図1は本発明の実施形態の一例を示したものである。
まず、紡糸口金1より溶融吐出されたポリエステル糸条Yは冷却風によりガラス転移点温度以下に冷却細化された後、流体噴射装置2により短時間で間歇的または瞬間的に流体処理され、引き続き、加熱装置3中に導入された後油剤を付与されて巻き取られる。紡糸口金出口から加熱装置入り口までの距離は0.5〜3.0mの範囲であることが好ましく、加熱装置の長さは糸条の延伸性を考慮して1.0〜2.0mの範囲であることが好ましい。加熱装置の温度は繊維物性を十分実用的なものとするために120℃以上、とくに160℃以上とすることが好ましい。かかる温度の上限は加熱装置中で糸条が融着や断糸を生じない温度であればとくに限定されない。
引取り速度は物性、太細斑の点から2500m/分以上必要であり、とくに3500m/分以上であることが好ましい。
本発明においては、紡糸口金の形状はいずれでもよく、丸断面、異形断面、さらには公知の複合断面形状でもよい。
また、得られたポリエステル太細糸は仮撚加工が施されてもよい。
【0011】
本発明でいうポリエステルとはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、シクロヘキサン1,4−ジメタノ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等のジオ−ル化合物とからなるポリエステルを挙げることができるが、なかでも構成単位の80モル%以上、とくに90モル%以上がエチレンテレフタレ−ト単位またはブチレンテレフタレ−ト単位であるポリエステルが好ましい。
【0012】
該ポリエステルには紫外線吸収剤、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤等の添加剤が含有されていてもよい。
また該ポリエステルの重合度はポリエステルの種類、所望とする太細糸条の用途等に応じて適宜設定し得るべきものであるが、通常、その極限粘度が0.55〜0.75であることが太細部の発現、繊維化工程性等の点で好ましい。
【0013】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の各測定値は以下の方法により測定算出、評価されたものである。
(1)ポリエステルの極限粘度
フェノ−ル/テトラクロロエタン等重量混合溶液中に試料を溶解し、30℃にて測定した。
(2)ウスタ−斑(U%)
ツエルベ−ガ−社製ウスタ−斑試験機により、糸速度100m/分、レンジ±12.5%、チャ−ト速度10cm/分とし、繊維軸方向の太さ斑を測定し、U%を算出した。
(3)染色のコントラスト
得られた糸条を織物にし染色、仕上げ処理を行い、太細部のコントラストを評価した。
評価基準
◎:濃淡部の周期が40mm以下であり、濃淡差の大きい霜降調のものが得られた。
○:濃淡部の周期が40〜80mmであり、濃淡差のやや大きい霜降調のものが得られた。
△:濃淡部の周期が80mm以上であり、濃淡差の小さいものであった。
×:濃淡差の不十分なものであった。
(4)紡糸性
100kgの原料を紡糸した際の毛羽・断糸の発生状況で評価した。
評価基準
◎:毛羽・断糸の発生が全くなく良好であった。
○:断糸はなかったが、毛羽の発生がわずかに認められた。
△:断糸がわずかに発生した。
×:断糸が頻繁に発生した。
【0014】
実施例1
極限粘度が0.70のポリエチレンテレフタレ−トを290℃で溶融し、孔数48個の紡糸口金(丸断面、孔径0.2mmφ)から吐出した。吐出ポリマ−量は1孔当り0.93g/分であった。口金から吐出した糸条に横吹き型冷却装置を使用し、25℃65RH%に調整された空気を0.5m/秒の速度で1.0mの長さに亘って吹き付け、糸条をガラス転移点温度以下に冷却した。ついで、紡糸口金下方600mmに設置されたインタ−レ−サ−により空気処理を施した。空気処理条件を表1に示す。間歇時間が「0」とは常時空気が噴射していることを示す。
ついで、口金下方1.5mmに位置した長さ1m、内径30mmφのパイプヒ−タ−に導入し、該パイプヒ−タ−内で延伸を施した後、ガイドオイリング方式により油剤を付与し、引き続いて2個対の引取りロ−ラを介して4000m/分の引き取り速度で巻き取った。この時、パイプヒ−タ−の内壁温度は170℃に設定した。
得られた糸条の評価結果を表1に示す。なお、糸条の繊度は100デニ−ルであった。
【0015】
実施例2〜5
実施例1において、インタ−レ−サ−のガイド径を3.5mmに変更した以外(実施例2)、インタ−レ−サ−の位置を紡糸口金下方800mmにした以外 (実施例3)、引取り速度を3000m/分にした以外(実施例4)、インタ−レ−サ−の空気処理時間を0.04秒にした以外(実施例5)は同様にして処理を施し、太細糸条を得た。
得られた糸条の評価結果を表1に示す。なお、糸条の繊度は100デニ−ルであった。
【0016】
実施例6〜7
実施例1において、インタ−レ−サ−のガイド径を2mmにした以外(実施例6)、空気の圧力を0.5kg/cm2 にした以外(実施例7)は同様にして太細糸条を得た。
得られた糸条の評価結果を表1に示す。なお、糸条の繊度は100デニ−ルであった。
実施例6においては、断糸がわずかに発生したが、実質的に問題はなく、濃淡差のある霜降り調の布帛を作成することができた。
また、実施例7においては、紡糸工程性が非常に良好で、得られた糸条の染色による斑の濃淡差は大きく、間延びのする布帛であったが、用途を限定することにより実用化可能であった。
【0017】
比較例1〜2
実施例1において、引取り速度を2000m/分とした以外(比較例1)、インタ−レ−サ−の位置を紡糸口金下方300mmにした以外(比較例2)は同様にして太細糸条を得た。
比較例1においては、引取り速度が遅いため、空気にさらされる糸条の時間が長く、空気抵抗が小さすぎて加熱装置内での延伸が行われず、太細繊維を得ることができなかった。
比較例2においては糸条の温度が高温のまま空気処理されたのでフロ−延伸が起こり、得られた糸条の強度が大きく低下して断糸が多発した。
【0019】
【表1】
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、直接紡糸延伸法において、太細繊維を低コストで長期間にわたり安定に生産することができ、濃淡差の大きい霜降り調の布帛を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するに適した装置の一例を示す簡略図である。
【符号の説明】
1:紡糸口金
2:流体噴射装置
3:加熱装置
4:油剤付与装置
5:第1引取ロ−ラ
6:第2引取ロ−ラ
7:巻取装置
Y:糸条
Claims (1)
- 繊維形成性ポリエステルを紡糸口金より溶融紡糸し、紡出糸条を一旦該ポリエステルのガラス転移点温度以下に冷却し、引き続いて加熱されたパイプヒーター中を走行させて延伸熱処理を施した後油剤を付与し、2500m/分以上の引取り速度で巻き取る紡糸方法において、紡糸口金と加熱されたパイプヒーターとの間に流体噴射装置を設置して該糸条に交絡を付与することを特徴とするポリエステル太細糸の製造方法。
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JP02252497A JP3574543B2 (ja) | 1997-02-05 | 1997-02-05 | ポリエステル太細糸の製造方法 |
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JPH10219518A JPH10219518A (ja) | 1998-08-18 |
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