JP3571421B2 - 一本針上飾り糸付き二重環縫目とその縫目を形成するためのミシン - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、一本針上飾り糸付き二重環縫目とその縫目を形成するためのミシンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二重環縫いの縫目はJISによりステッチクラス400に分類され、本縫いの縫目と比べて伸縮性に富むので、ニット素材の縫製に用いられるうえ、二重環縫いミシンは下糸をボビンに巻き返すことなく糸立てからミシンに直接導くことができるので、作業能率がよく、ニット素材だけでなく、織物やその他、薄物から厚物まで各種の布地の縫製に広く利用されている。
【0003】
ところが、この二重環縫い目のうち、1本の針と1本のルーパーによって形成されるステッチ形式401の縫目は、表面は本縫いと同様に1本の針糸が直線状に表れるのに対して、裏面は下糸(ルーパー糸)がループを形成しているため3本の糸の列となって表れ、縫製後に、縫目部分を脇割りするときに片側に布地が倒れ勝ちになり、また、脇割り部にアイロン掛けするとアタリが下糸側に目立つという難点があった。
【0004】
この難点を取り除くためには、布地の表面に飾り糸を配設することが考えられる。しかし、二重環縫目の布地の表面に飾り糸を付けた縫目としてJISにステッチ形式408の他、クラス600に分類される偏平縫い縫目があるが、これらはいずれも左右に配置した複数の針を備えた二重環縫いミシンにおいて、たとえば、特公昭54−9111号、特公昭54−33188号、特公昭55−11074号に示された偏平縫いミシンのように、飾り糸振り具を用いて、その左右の針糸間に上飾り糸を掛け渡し、左右の針糸で上飾り糸を蛇行させた状態で布地に縫い付けるようにしたもので、1本の針を用いた二重環縫目のための飾り糸付き縫目やそのための装置は提案されていない。
【0005】
たとえば、従来の2本の針を左右に配置した偏平縫いミシンを用いて、1本の針とルーパー糸と上飾り糸とにより二重環縫いを行なおうとしても、1本の針糸では上飾り糸の蛇行状態を固定できないので、上飾り糸が不規則に絡みついた縫目となる。
【0006】
一方、1本の針を用いる一般のミシンにおいて、上飾り糸を縫い付ける方法および装置が、特公昭57−54153号、特公昭57−54154号に開示されている。しかしその方法および装置においては、飾り糸を縫い付けるために上糸(針糸)を強制的に側方に排除し、その排除により生じた空隙部に飾り糸を配設するようにしているために、針糸が締まり難く、飾り糸を縫い付けるだけのためであれば十分であっても生地を縫い合わせて連結するためには問題があった。また、針糸を排除し飾り糸を配設するためのルーパーは進退と往復回動の2つの運動を組み合わせた複雑な構造を有し、しかも上糸と飾り糸とに同時に作用させる必要があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、この発明の第1の課題は、縫い糸が布地の縫製部分の表面と裏面にほぼ同様に表れた新規な二重環縫目を提供することにあり、第2の課題はその縫目を形成するために、従来の二重環縫いミシンに少しの改良を加えるのみでその新規な縫目を形成できるミシンを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかわる新規な一本針上飾り糸付き二重環縫目は、引き揃えて1つにまとめられた2本の針糸AAと、1本のルーパー糸Bと、1本の上飾り糸Cとで構成され、針糸AAのループは布を表側から裏側へ通り抜けて、その裏面で糸Bの1つのループを通り抜け、次に糸Bの2番目のループと他糸ルーピングし、その他糸ルーピングの部分を布に向って引き付け、上飾り糸Cは布の表面上で閉ループを形成し、2本の針糸AAの前記ループがその閉ループ内を通ることにより、上飾り糸Cの閉ループをそのループ間の針糸で布の表面に向って引き付けていることを特徴とする。
【0009】
また、上記の新規な縫目を形成するためのこの発明にかかる二重環縫いミシンは、下端に1本の針を保持しミシン主軸に連動して昇降する針棒と、針棒下方のミシンベッド内において針棒の昇降運動に同調して左右に揺動するルーパーと、前後且つほぼ水平方向の長孔を有しミシンベッド上方の針の右側方に設けられた上飾り糸案内と、その上飾り糸案内の上方において針棒と同期して昇降する目孔を有する昇降糸道と、針棒に平行に配置された往復回動する軸と、その軸に支持されて針の通過線のまわりを左右に往復回動してその左への回動時に先端で縫着前の上飾り糸を引っ掛けて針通過線の手前を左へ案内する上飾り糸用の糸振り具とを備えた二重環縫いミシンにおいて、糸振り具は、糸振り具自身の内周側よりも外周側を深く切り込んだ溝によって先端を上片と下片に分割して、上片を外側に向う突出尖端、下片を内側に向う突出尖端としてそれぞれ形成し、糸振り具の先端が針通過線の前を左へ向って往動するときに、目孔から長孔を経て布地に連なる上飾り糸を糸振り具下片の突出尖端で引っ掛けてその下片と上片との間に保持し、右へ復動するときに上飾り糸が長孔から糸振り具の下片と溝を経て布地に連なることにより形成する閉ループ内に針が降下するようにしたことを特徴とする。
【0010】
【作用】
この発明の縫目においては、基本的には引き揃えられた2本の針糸AAと、1本のルーパー糸Bとによりステッチタイプ401の二重環縫目を形成して、重ね合わされた布地をその2本の針糸AAとルーパー糸Bで強固に連結することができる。そして、縫目の外観をみると、布地の裏面においてはルーパー糸Bが3本の糸の列になって表れ、表面においては引き揃えられた2本の針糸AAと上飾り糸Cとが3本の糸の列になって裏面に表れた糸BBBの列と類似の外観を呈している。また、上飾り糸Cは閉ループとなってそのループ内に針糸AAが通っているので、針糸で1縫目毎に規則正しく布地の表面に固定される。
【0011】
また、この発明のミシンは、上述した通りの手段によって、この出願の発明にかかわる新規な縫目を形成することができる。
【0012】
【実施例】
この発明の実施例に係る縫目は、図1に示すように引き揃えて1つにまとめられた2本の針糸AAと、1本のルーパー糸Bと、1本の上飾り糸Cとで構成され、針糸AAのループAALは布(図示省略)を表側から裏側へ、すなわち図1において上から下へ通り抜けて、その裏面でルーパー糸Bの1つのループBL1を通り抜け、次にルーパー糸Bの2番目のループBL2と他糸ルーピングし、その他糸ルーピングの部分を布に向って引き付け、上飾り糸Cは布の表面上で閉ループCLを形成し、2本の針糸AAの針糸ループAALがその閉ループCL内を通ることにより、上飾り糸Cの閉ループを矢印Yで示す布進行方向の前後において各針糸ループAAL間の針糸AAで布の表面に向って引き付けている。
【0013】
この実施例の縫目において、針糸は2本の糸AAが1つにまとめられて引き揃えた状態になっているものの、2本の糸が撚り合わされた1本の糸となっていないので、布地の表面に表れた縫目は裏面に表れた縫目の3本の糸BBBの列と同様に、3本の糸AACが列状をなしている。このように2本の針糸を引き揃え状態にするには、糸立てに保持させた2個の糸巻きコーンからそれぞれ1本の糸Aを引出して1個の糸調子器に導くことによって引き揃え、その引き揃えた糸を1本の針の針孔に通して使用するのが非常に簡便であるが、他の引き揃え手段によって引き揃えてもよい。
【0014】
この発明の縫目を形成するために用いるミシンとその縫目形成工程の1例を図2ないし図5により説明する。ここに示すミシンは、前述した従来の偏平縫いミシンにおいて、上飾り糸用の糸振り具に改良を加えて用いるもので、偏平縫いミシンの基本的な機構は一部省略して説明する。
【0015】
図2において、上下に昇降運動する針棒1の下端には針留め2が固定されている。この針留め2にはミシン針3を左右に3本並列して取付けられるようになっているが、この実施例においては中央に1本だけ取付けてあり、その針3に2本の針糸AAを引き揃えた状態で通すことができる。針板4(図5参照)を備えたミシンベッド21内には、針棒1の昇降運動に同調して前後上下に平行四運動し針板の上面に出没する送り歯5と左右に揺動するルーパー6とが設けられ、そのルーパー6には糸通し孔が設けられてルーパー糸Bが通される。針板4上には送り歯5に対向して押さえ足7が昇降可能に設けられている。
【0016】
このミシンの針棒1の近傍の後方には、針棒に同調して往復回動する回動軸8が針棒と平行に配置され、その回動軸8には針通過線NLの後方からその右側に延びるアーム9を介して手前へ円弧状に湾曲して水平方向に延びる糸振り具10を取付けてあり、その糸振り具10の先端は、針棒1が昇降するときに、上下に昇降する針3の通過線NLのまわりの手前側を、押さえ足7のやや上方において左右に往復回動するようにしている。この糸振り具10の回動平面の上方には前後方向に延びる長孔11をもつ上飾り糸案内12が配置されるとともに、その上飾り糸案内12の上方において針棒1と同期して昇降する目孔13を有する飾り糸用の昇降糸道14を設けており、さらに針留め2の下部には針糸案内ピン15を取付けている。
【0017】
このミシンの糸振り具10は図3、4、5にも示すように、先端を溝16によって上片17と下片18に分割し、上片17を外側に向う突出尖端、下片18を内側に向う突出尖端としてそれぞれ形成するとともに、その溝16の底部は糸振り具10の内周側の底部19よりも外周側の底部20が深く切り込まれている。
【0018】
このように構成したミシンにおいて、針棒1(針3)を上昇位置にして押さえ足7の下のミシンベッド21に布地Wを供給し、ミシンを始動すると、布地Wは押さえ足7と送り歯5とに挟まれて針板4上を移動するとともに、針3が針棒1の昇降運動に伴って押さえ足7、布地W、針板4を通過し、針板4の下面においてこれに同調して左右に揺動するルーパー6と協働して縫目を形成する。すなわち針3に通された2本の針糸AAはループとなって針板4の下方でルーパー糸Bの1つのループを通り抜け、次にルーパー糸Bの2番目のループと他糸ルーピングし、針3の上昇時にその他糸ルーピングの部分を布に向って引き付け、布地Wに二重環縫目を形成する。この二重環縫目の布地裏面(下面)における形成過程は、従来の二重環縫目の形成過程とほぼ同じであり詳細説明は省略する。
【0019】
次に布地Wの表面(上面)における上飾り糸付き二重環縫目の形成過程を説明する。このミシンにおいて上飾り糸Cは図示を省略した糸調子器から目孔13、長孔11を経て布地上に導き、針糸AAは2本の糸を引き揃えて、糸調子器から針糸案内ピン15を経て針3の目孔に導く。そしてミシンの針板上に布地Wを供給して縫目を形成するに際して、針が上死点近傍にあるときには、図2の(a)および図3に示すように、糸振り具10の先端は針通過線NLの手前左側にあって、長孔11から導かれる上飾り糸Cを下片18で捕捉し、その上飾り糸Cは糸振り具10の溝16の内周側の底部19から外周側の底部20を経て布に連なって閉ループを形成している。
【0020】
針3が次第に下降するとともに糸振り具10が右へ移動し、すでに形成されている縫目Sも送り歯5により布地Wとともに矢印Y方向に前進すると、上飾り糸Cの閉ループもやや縦長となって右へ移動し、その移動した閉ループは針通過線NLを囲む状態となり、図2の(b)、図4、および図5の(a)、(b)に示すように、針3の先端がその閉ル−プの中に降下する。
【0021】
引き続き針糸AAも、図2の(c)に示すように、針3とともに上飾り糸Cの閉ループ内に降下し、糸振り具10は右へ後退して糸振り具10に引っ掛けられている上飾り糸Cは下片18から離脱して針3および針糸AAの周りに巻き付いた状態となる。針3の先端がさらに針板4の下方に降下すると、針糸AAは上飾り糸Cを布地Wに押さえつけ、針3はルーパー6と協働して針糸AAとルーパー糸Bとをルーピングさせて二重環縫目を形成する。
【0022】
針3が下死点を経て上昇するとき、図2の(d)に示すように糸振り具10の先端が右死点から針通過線すなわち針糸AAの前を左へ向って往動し、目孔13から長孔11を経て押さえ足7の下の布地に連なる上飾り糸Cを糸振り具先端の下片突出尖端18の外側と上片突出尖端17の内側との間から溝16の中に導かれるように引っ掛ける。糸振り具10がさらに左へ進むと、布地から延びる上飾り糸Cは図3で示したように溝16の外周側の底部20から内周側の底部19を経て長孔11、目孔13に連なって閉ループを形成することとなる。
【0023】
引続き針3が上死点に達し、糸振り具10も少し遅れて左死点に至ったのち、上述したように、針3が下降するとともに糸振り具10が右へ復動するときに、上飾り糸Cの閉ループ内に針3が針糸AAとともに降下して、その針糸AAで上飾り糸Cの閉ループを布地Wの表面に押しつけて固定することとなる。
【0024】
【発明の効果】
以上にのべたように、この発明の縫目は、本縫いの代わりに広く用いることができ伸縮性や生産性においてすぐれる1本針の二重環縫目において、布地の縫製部分の表面と裏面にほぼ同様の縫い糸の列を表すことができ、縫目部分を脇割りするときに布地を両側に均等に倒し易くなり作業能率が向上するうえ、脇割り部にアイロン掛けしたときのアタリも目立ち難くなるという効果がある。
【0025】
さらに縫製した布地に表れる縫い糸の列が表と裏とでよく似ているので、縫目の用途を新たに創出できるという効果がある。
【0026】
また、この発明の新規な縫目を形成するためのミシンは、従来の二重環縫いミシンを用いることができ、また、そのために複雑な動きをする各種の糸振り機構等を付設する必要がなく、少しの改良を加えるのみで、その新規な縫目を形成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる縫目の形態を示す斜視図。
【図2】(a),(b),(c),(d)はこの発明の縫目を形成するミシン要部の作用を過程順に示す斜視図。
【図3】図2(a)の過程における作用を説明するための平面図。
【図4】図2(b)の過程における作用を説明するための平面図。
【図5】(a),(b)は、それぞれ図2(b)の過程における要部を断面で示す側面図、正面図。
1:針棒、3:針、4:針板、5:送り歯、6:ルーパー、7:押さえ足、8:軸、 10:糸振り具、11:長孔、12:上飾り糸案内、13:目孔、14:昇降糸道、16:溝、17:上片、18:下片、19・20:底部、A:針糸、B:ルーパー糸、C:上飾り糸、NL:針通過線
【産業上の利用分野】
この発明は、一本針上飾り糸付き二重環縫目とその縫目を形成するためのミシンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二重環縫いの縫目はJISによりステッチクラス400に分類され、本縫いの縫目と比べて伸縮性に富むので、ニット素材の縫製に用いられるうえ、二重環縫いミシンは下糸をボビンに巻き返すことなく糸立てからミシンに直接導くことができるので、作業能率がよく、ニット素材だけでなく、織物やその他、薄物から厚物まで各種の布地の縫製に広く利用されている。
【0003】
ところが、この二重環縫い目のうち、1本の針と1本のルーパーによって形成されるステッチ形式401の縫目は、表面は本縫いと同様に1本の針糸が直線状に表れるのに対して、裏面は下糸(ルーパー糸)がループを形成しているため3本の糸の列となって表れ、縫製後に、縫目部分を脇割りするときに片側に布地が倒れ勝ちになり、また、脇割り部にアイロン掛けするとアタリが下糸側に目立つという難点があった。
【0004】
この難点を取り除くためには、布地の表面に飾り糸を配設することが考えられる。しかし、二重環縫目の布地の表面に飾り糸を付けた縫目としてJISにステッチ形式408の他、クラス600に分類される偏平縫い縫目があるが、これらはいずれも左右に配置した複数の針を備えた二重環縫いミシンにおいて、たとえば、特公昭54−9111号、特公昭54−33188号、特公昭55−11074号に示された偏平縫いミシンのように、飾り糸振り具を用いて、その左右の針糸間に上飾り糸を掛け渡し、左右の針糸で上飾り糸を蛇行させた状態で布地に縫い付けるようにしたもので、1本の針を用いた二重環縫目のための飾り糸付き縫目やそのための装置は提案されていない。
【0005】
たとえば、従来の2本の針を左右に配置した偏平縫いミシンを用いて、1本の針とルーパー糸と上飾り糸とにより二重環縫いを行なおうとしても、1本の針糸では上飾り糸の蛇行状態を固定できないので、上飾り糸が不規則に絡みついた縫目となる。
【0006】
一方、1本の針を用いる一般のミシンにおいて、上飾り糸を縫い付ける方法および装置が、特公昭57−54153号、特公昭57−54154号に開示されている。しかしその方法および装置においては、飾り糸を縫い付けるために上糸(針糸)を強制的に側方に排除し、その排除により生じた空隙部に飾り糸を配設するようにしているために、針糸が締まり難く、飾り糸を縫い付けるだけのためであれば十分であっても生地を縫い合わせて連結するためには問題があった。また、針糸を排除し飾り糸を配設するためのルーパーは進退と往復回動の2つの運動を組み合わせた複雑な構造を有し、しかも上糸と飾り糸とに同時に作用させる必要があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、この発明の第1の課題は、縫い糸が布地の縫製部分の表面と裏面にほぼ同様に表れた新規な二重環縫目を提供することにあり、第2の課題はその縫目を形成するために、従来の二重環縫いミシンに少しの改良を加えるのみでその新規な縫目を形成できるミシンを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかわる新規な一本針上飾り糸付き二重環縫目は、引き揃えて1つにまとめられた2本の針糸AAと、1本のルーパー糸Bと、1本の上飾り糸Cとで構成され、針糸AAのループは布を表側から裏側へ通り抜けて、その裏面で糸Bの1つのループを通り抜け、次に糸Bの2番目のループと他糸ルーピングし、その他糸ルーピングの部分を布に向って引き付け、上飾り糸Cは布の表面上で閉ループを形成し、2本の針糸AAの前記ループがその閉ループ内を通ることにより、上飾り糸Cの閉ループをそのループ間の針糸で布の表面に向って引き付けていることを特徴とする。
【0009】
また、上記の新規な縫目を形成するためのこの発明にかかる二重環縫いミシンは、下端に1本の針を保持しミシン主軸に連動して昇降する針棒と、針棒下方のミシンベッド内において針棒の昇降運動に同調して左右に揺動するルーパーと、前後且つほぼ水平方向の長孔を有しミシンベッド上方の針の右側方に設けられた上飾り糸案内と、その上飾り糸案内の上方において針棒と同期して昇降する目孔を有する昇降糸道と、針棒に平行に配置された往復回動する軸と、その軸に支持されて針の通過線のまわりを左右に往復回動してその左への回動時に先端で縫着前の上飾り糸を引っ掛けて針通過線の手前を左へ案内する上飾り糸用の糸振り具とを備えた二重環縫いミシンにおいて、糸振り具は、糸振り具自身の内周側よりも外周側を深く切り込んだ溝によって先端を上片と下片に分割して、上片を外側に向う突出尖端、下片を内側に向う突出尖端としてそれぞれ形成し、糸振り具の先端が針通過線の前を左へ向って往動するときに、目孔から長孔を経て布地に連なる上飾り糸を糸振り具下片の突出尖端で引っ掛けてその下片と上片との間に保持し、右へ復動するときに上飾り糸が長孔から糸振り具の下片と溝を経て布地に連なることにより形成する閉ループ内に針が降下するようにしたことを特徴とする。
【0010】
【作用】
この発明の縫目においては、基本的には引き揃えられた2本の針糸AAと、1本のルーパー糸Bとによりステッチタイプ401の二重環縫目を形成して、重ね合わされた布地をその2本の針糸AAとルーパー糸Bで強固に連結することができる。そして、縫目の外観をみると、布地の裏面においてはルーパー糸Bが3本の糸の列になって表れ、表面においては引き揃えられた2本の針糸AAと上飾り糸Cとが3本の糸の列になって裏面に表れた糸BBBの列と類似の外観を呈している。また、上飾り糸Cは閉ループとなってそのループ内に針糸AAが通っているので、針糸で1縫目毎に規則正しく布地の表面に固定される。
【0011】
また、この発明のミシンは、上述した通りの手段によって、この出願の発明にかかわる新規な縫目を形成することができる。
【0012】
【実施例】
この発明の実施例に係る縫目は、図1に示すように引き揃えて1つにまとめられた2本の針糸AAと、1本のルーパー糸Bと、1本の上飾り糸Cとで構成され、針糸AAのループAALは布(図示省略)を表側から裏側へ、すなわち図1において上から下へ通り抜けて、その裏面でルーパー糸Bの1つのループBL1を通り抜け、次にルーパー糸Bの2番目のループBL2と他糸ルーピングし、その他糸ルーピングの部分を布に向って引き付け、上飾り糸Cは布の表面上で閉ループCLを形成し、2本の針糸AAの針糸ループAALがその閉ループCL内を通ることにより、上飾り糸Cの閉ループを矢印Yで示す布進行方向の前後において各針糸ループAAL間の針糸AAで布の表面に向って引き付けている。
【0013】
この実施例の縫目において、針糸は2本の糸AAが1つにまとめられて引き揃えた状態になっているものの、2本の糸が撚り合わされた1本の糸となっていないので、布地の表面に表れた縫目は裏面に表れた縫目の3本の糸BBBの列と同様に、3本の糸AACが列状をなしている。このように2本の針糸を引き揃え状態にするには、糸立てに保持させた2個の糸巻きコーンからそれぞれ1本の糸Aを引出して1個の糸調子器に導くことによって引き揃え、その引き揃えた糸を1本の針の針孔に通して使用するのが非常に簡便であるが、他の引き揃え手段によって引き揃えてもよい。
【0014】
この発明の縫目を形成するために用いるミシンとその縫目形成工程の1例を図2ないし図5により説明する。ここに示すミシンは、前述した従来の偏平縫いミシンにおいて、上飾り糸用の糸振り具に改良を加えて用いるもので、偏平縫いミシンの基本的な機構は一部省略して説明する。
【0015】
図2において、上下に昇降運動する針棒1の下端には針留め2が固定されている。この針留め2にはミシン針3を左右に3本並列して取付けられるようになっているが、この実施例においては中央に1本だけ取付けてあり、その針3に2本の針糸AAを引き揃えた状態で通すことができる。針板4(図5参照)を備えたミシンベッド21内には、針棒1の昇降運動に同調して前後上下に平行四運動し針板の上面に出没する送り歯5と左右に揺動するルーパー6とが設けられ、そのルーパー6には糸通し孔が設けられてルーパー糸Bが通される。針板4上には送り歯5に対向して押さえ足7が昇降可能に設けられている。
【0016】
このミシンの針棒1の近傍の後方には、針棒に同調して往復回動する回動軸8が針棒と平行に配置され、その回動軸8には針通過線NLの後方からその右側に延びるアーム9を介して手前へ円弧状に湾曲して水平方向に延びる糸振り具10を取付けてあり、その糸振り具10の先端は、針棒1が昇降するときに、上下に昇降する針3の通過線NLのまわりの手前側を、押さえ足7のやや上方において左右に往復回動するようにしている。この糸振り具10の回動平面の上方には前後方向に延びる長孔11をもつ上飾り糸案内12が配置されるとともに、その上飾り糸案内12の上方において針棒1と同期して昇降する目孔13を有する飾り糸用の昇降糸道14を設けており、さらに針留め2の下部には針糸案内ピン15を取付けている。
【0017】
このミシンの糸振り具10は図3、4、5にも示すように、先端を溝16によって上片17と下片18に分割し、上片17を外側に向う突出尖端、下片18を内側に向う突出尖端としてそれぞれ形成するとともに、その溝16の底部は糸振り具10の内周側の底部19よりも外周側の底部20が深く切り込まれている。
【0018】
このように構成したミシンにおいて、針棒1(針3)を上昇位置にして押さえ足7の下のミシンベッド21に布地Wを供給し、ミシンを始動すると、布地Wは押さえ足7と送り歯5とに挟まれて針板4上を移動するとともに、針3が針棒1の昇降運動に伴って押さえ足7、布地W、針板4を通過し、針板4の下面においてこれに同調して左右に揺動するルーパー6と協働して縫目を形成する。すなわち針3に通された2本の針糸AAはループとなって針板4の下方でルーパー糸Bの1つのループを通り抜け、次にルーパー糸Bの2番目のループと他糸ルーピングし、針3の上昇時にその他糸ルーピングの部分を布に向って引き付け、布地Wに二重環縫目を形成する。この二重環縫目の布地裏面(下面)における形成過程は、従来の二重環縫目の形成過程とほぼ同じであり詳細説明は省略する。
【0019】
次に布地Wの表面(上面)における上飾り糸付き二重環縫目の形成過程を説明する。このミシンにおいて上飾り糸Cは図示を省略した糸調子器から目孔13、長孔11を経て布地上に導き、針糸AAは2本の糸を引き揃えて、糸調子器から針糸案内ピン15を経て針3の目孔に導く。そしてミシンの針板上に布地Wを供給して縫目を形成するに際して、針が上死点近傍にあるときには、図2の(a)および図3に示すように、糸振り具10の先端は針通過線NLの手前左側にあって、長孔11から導かれる上飾り糸Cを下片18で捕捉し、その上飾り糸Cは糸振り具10の溝16の内周側の底部19から外周側の底部20を経て布に連なって閉ループを形成している。
【0020】
針3が次第に下降するとともに糸振り具10が右へ移動し、すでに形成されている縫目Sも送り歯5により布地Wとともに矢印Y方向に前進すると、上飾り糸Cの閉ループもやや縦長となって右へ移動し、その移動した閉ループは針通過線NLを囲む状態となり、図2の(b)、図4、および図5の(a)、(b)に示すように、針3の先端がその閉ル−プの中に降下する。
【0021】
引き続き針糸AAも、図2の(c)に示すように、針3とともに上飾り糸Cの閉ループ内に降下し、糸振り具10は右へ後退して糸振り具10に引っ掛けられている上飾り糸Cは下片18から離脱して針3および針糸AAの周りに巻き付いた状態となる。針3の先端がさらに針板4の下方に降下すると、針糸AAは上飾り糸Cを布地Wに押さえつけ、針3はルーパー6と協働して針糸AAとルーパー糸Bとをルーピングさせて二重環縫目を形成する。
【0022】
針3が下死点を経て上昇するとき、図2の(d)に示すように糸振り具10の先端が右死点から針通過線すなわち針糸AAの前を左へ向って往動し、目孔13から長孔11を経て押さえ足7の下の布地に連なる上飾り糸Cを糸振り具先端の下片突出尖端18の外側と上片突出尖端17の内側との間から溝16の中に導かれるように引っ掛ける。糸振り具10がさらに左へ進むと、布地から延びる上飾り糸Cは図3で示したように溝16の外周側の底部20から内周側の底部19を経て長孔11、目孔13に連なって閉ループを形成することとなる。
【0023】
引続き針3が上死点に達し、糸振り具10も少し遅れて左死点に至ったのち、上述したように、針3が下降するとともに糸振り具10が右へ復動するときに、上飾り糸Cの閉ループ内に針3が針糸AAとともに降下して、その針糸AAで上飾り糸Cの閉ループを布地Wの表面に押しつけて固定することとなる。
【0024】
【発明の効果】
以上にのべたように、この発明の縫目は、本縫いの代わりに広く用いることができ伸縮性や生産性においてすぐれる1本針の二重環縫目において、布地の縫製部分の表面と裏面にほぼ同様の縫い糸の列を表すことができ、縫目部分を脇割りするときに布地を両側に均等に倒し易くなり作業能率が向上するうえ、脇割り部にアイロン掛けしたときのアタリも目立ち難くなるという効果がある。
【0025】
さらに縫製した布地に表れる縫い糸の列が表と裏とでよく似ているので、縫目の用途を新たに創出できるという効果がある。
【0026】
また、この発明の新規な縫目を形成するためのミシンは、従来の二重環縫いミシンを用いることができ、また、そのために複雑な動きをする各種の糸振り機構等を付設する必要がなく、少しの改良を加えるのみで、その新規な縫目を形成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる縫目の形態を示す斜視図。
【図2】(a),(b),(c),(d)はこの発明の縫目を形成するミシン要部の作用を過程順に示す斜視図。
【図3】図2(a)の過程における作用を説明するための平面図。
【図4】図2(b)の過程における作用を説明するための平面図。
【図5】(a),(b)は、それぞれ図2(b)の過程における要部を断面で示す側面図、正面図。
1:針棒、3:針、4:針板、5:送り歯、6:ルーパー、7:押さえ足、8:軸、 10:糸振り具、11:長孔、12:上飾り糸案内、13:目孔、14:昇降糸道、16:溝、17:上片、18:下片、19・20:底部、A:針糸、B:ルーパー糸、C:上飾り糸、NL:針通過線
Claims (2)
- 引き揃えて1つにまとめられた2本の針糸AAと、1本のルーパー糸Bと、1本の上飾り糸Cとで構成され、針糸AAのループは布を表側から裏側へ通り抜けて、その裏面でルーパー糸Bの1つのループを通り抜け、次にルーパー糸Bの2番目のループと他糸ルーピングし、その他糸ルーピングの部分を布に向って引き付け、上飾り糸Cは布の表面上で閉ループを形成し、2本の針糸AAの前記ループがその閉ループ内を通ることにより、上飾り糸Cの閉ループをそのループ間の針糸AAで布の表面に向って引き付けていることを特徴とする一本針上飾り糸付き二重環縫目。
- 下端に1本の針を保持しミシン主軸に連動して昇降する針棒と、針棒下方のミシンベッド内において針棒の昇降運動に同調して左右に揺動するルーパーと、前後且つほぼ水平方向の長孔を有しミシンベッド上方の針の右側方に設けられた上飾り糸案内と、その上飾り糸案内の上方において針棒と同期して昇降する目孔を有する昇降糸道と、針棒に平行に配置された往復回動する軸と、その軸に支持されて針の通過線のまわりを左右に往復回動してその左への回動時に先端で縫着前の上飾り糸を引っ掛けて針通過線の手前を左へ案内する上飾り糸用の糸振り具とを備えた二重環縫いミシンにおいて、糸振り具は、糸振り具自身の内周側よりも外周側を深く切り込んだ溝によって先端を上片と下片に分割して、上片を外側に向う突出尖端、下片を内側に向う突出尖端としてそれぞれ形成し、糸振り具の先端が針通過線の前を左へ向って往動するときに、目孔から長孔を経て布地に連なる上飾り糸を糸振り具下片の突出尖端で引っ掛けてその下片と上片との間に保持し、右へ復動するときに上飾り糸が長孔から糸振り具の下片と溝を経て布地に連なることにより形成する閉ループ内に針が降下するようにしたことを特徴とする二重環縫いミシン。
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JP20912695A JP3571421B2 (ja) | 1995-07-24 | 1995-07-24 | 一本針上飾り糸付き二重環縫目とその縫目を形成するためのミシン |
Applications Claiming Priority (1)
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JPH0928950A JPH0928950A (ja) | 1997-02-04 |
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-
1995
- 1995-07-24 JP JP20912695A patent/JP3571421B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH0928950A (ja) | 1997-02-04 |
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