JP3560360B2 - 水系における殺菌処理方法 - Google Patents

水系における殺菌処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、水系に於ける殺菌処理方法、特に冷却水系、製紙工程等におけるスライムトラブルを防止しうる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工業用水の主な用途として、冷却用水、製品処理水、洗浄水、温調用水等があり、これらの用途では微生物に由来する障害が頻繁に発生する。特に微生物が分泌した粘質性物質が水中の土砂、鉄錆、その他有機物等と混合してスライムと呼ばれる泥状物を生成し、工場の運転上の多くの障害を招くことになる。冷却水系においては、用水の不足を補い、かつ用水コストを低減するために、水の回収再利用が盛んになってきた。この場合、冷却水は主に冷水塔で再冷却して使用するため水が濃縮され、同時に栄養物質や汚濁物質の濃度が上昇し、微生物の繁殖がより活発となる。細菌類、藻類、真菌類の繁殖が助長され、そこに汚濁物質の吸着も加わると、スライムの形成がより増大することとなる。スライムの付着、繁殖はストレーナーの通水や熱交換器の伝熱を妨げるだけでなく、配管断面積の減少による冷却水流量の低下や、更に著しい場合は配管閉塞を生じ、またスライム付着による金属の孔食などを促進する。スライム対策として、一般には、各種の殺菌剤、生育抑制剤および除藻剤等を用いて、微生物の生育を抑制あるいは死滅させる方法がとられており、塩素系殺菌剤が安価で各種の微生物に効果があることからよく使用されている。
【0003】
また、製紙工場においては大量の工業用水を使用するが、良質な工業用水の確保が次第に困難になり、また環境上の問題もあって、大量の排水を放流出来なくなってきている。そのため工程水の再使用化が進んでいるが、このように用水の再使用を行うと、循環する用水中に溶解物、パルプ、デンプン、タルクなどの浮遊物が濃縮され、微生物の生育を促すと共に、浮遊物の堆積によりスライムが非常に発生しやすくなっている。スライムは、用水系だけでなく、抄紙工程における白水ピット、フローボックス、配管等にも発生する。抄紙工程において形成したスライムは、ある程度成長すると壁面から剥離してパルプに混じり抄紙される。そのため、紙の中にスライムを含み、スライムの部分の紙強度が著しく低下して乾燥工程にて紙切れの原因となり易い。また、スライムを含んだ紙は、製品とした場合、紙面に着色、斑点、目玉等を生じ、特に上質紙においてこの現象が目立つため、製品価値を著しく低下させることとなる。このように、製紙工程においてスライムが発生すると多大な経済的損失をもたらすことになる。製紙工程など有機物成分が大量に含まれる系では塩素系殺菌剤の効果が低下するため、スライム抑制には有機系殺菌剤が主として使用されるがやはり十分な効果を示さない。
【0004】
有機系殺菌剤として、有機臭素化合物がある。有機臭素化合物は単独で使用される例が多いが、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールと過酸化水素供給化合物とを併用すると効果が向上するとするとの発明がある(特開平5−170602号公報)。この発明においては、2−ブロモ−4’−ヒドロキシアセトフェノン、1−ブロモアセトキシ−2−プロパノール、1−ブロモ−2−ニトロ−2−ヒドロキシメチルプロパンジオール−1,3、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン等の有機ブロム系の化合物と過酸化水素供給化合物との併用も研究したが、上記2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールと過酸化水素供給化合物との併用の際に見られた優れた相乗的な菌の発育阻止効果は全く見られなかったとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
殺菌剤を徒らに増量するとコストがかさむばかりでなく装置へも悪影響を及ぼすこともあり好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、殺菌剤の増量を抑えながら殺菌力を飛躍的に高めた、工業用水系における殺菌処理方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は過酸化水素供給化合物との併用によって殺菌力を飛躍的に高めうる多種の化合物を提供し、それによって状況等に応じて適切な殺菌剤を使用しうるよう殺菌剤の選択範囲を拡げうるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、工業用水系でのスライム防止をはかるため、少量の殺菌剤で大きな力を発揮する殺菌方法を確立すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の有機臭素化合物と過酸化水素供給化合物を同時に作用させることによって少量の殺菌剤で強力な殺菌力を発揮させることができることを見いだし本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
1,4−ジブロモ−2,3−ブタンジオン
一般式(I)の臭素化カルボン酸誘導体
【0010】
【化5】
Figure 0003560360
〔式中、Rは水素原子または炭素数6以下のアルキル基、X、Xは少なくとも一方は臭素原子であり、他方は水素原子または臭素原子、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、炭素数6以下のアルキル、あるいはヒドロキシルアルキル基、アンモニウム塩、または合計炭素数12以下で酸素原子、窒素原子を含んでいてもよいアミンの塩である。〕
一般式(II)の臭素化アルコール誘導体
【0011】
【化6】
Figure 0003560360
〔式中、Rは水素原子、または炭素数6以下のアルキル基で、アルキル基中に臭素原子、ヒドロキシル基を有していてもよく、X、Xは少なくとも一方は臭素原子で、他は水素原子または臭素原子である。〕
一般式(III)の3−ブロモピルビン酸誘導体
【0012】
(Br)(3−n)CCOCOOM (III)
〔式中、nは1または2、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、炭素数6以下のアルキル、あるいはヒドロキシルアルキル基、アンモニウム塩、または合計炭素数12以下で酸素原子、窒素原子を含んでいてもよいアミンの塩である。〕
N−ブロムコハク酸イミド
一般式(IV)の臭素化ヒダントイン
【0013】
【化7】
Figure 0003560360
〔式中、X、Xのうち少なくとも一つは臭素原子で、他は臭素原子、塩素原子、水素原子またはアルカリ金属原子を表し、R、Rは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。〕
の群より選ばれた一種以上の有機臭素化合物と過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム及び過酢酸の群より選ばれた一種以上の過酸化水素供給化合物を同時に作用させることを特徴とする水系における殺菌処理方法に関するものである。
【0015】
一般式(I)の臭素化カルボン酸誘導体において、Rは水素原子または炭素数6以下のアルキル基であるが、アルキル基は直鎖、又は分岐していてもよく、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜4である。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル等を挙げることができる。XおよびXの一方は臭素原子であり、他方は水素原子または臭素原子である。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、炭素数6以下のアルキル、あるいはヒドロキシルアルキル基、アンモニウム塩、または合計炭素数12以下で酸素原子、窒素原子を含んでいてもよいアミン類の塩である。アルカリ金属原子の例としてはナトリウム、カリムウ等、アルカリ土類金属原子の例としてはカルシウム、バリウム等を挙げることができる。アルキル、あるいはヒドロキシルアルキル基は炭素数6以下、好ましくは炭素数3以下であり、直鎖、又は分岐構造のいずれでもよく、例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヒドロキシルエチル、2−ヒドロキシルプロピル等を挙げることができる。アミン類は合計炭素数12以下、好ましくは8以下であり酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐状、環状構造のいずれでもよいアミンで、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれでもよく、例としてはメチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン等を挙げることができる。
【0016】
このような一般式(I)の臭素化カルボン酸誘導体の例としては、ブロモ酢酸、2−ブロモプロピオン酸、2−ブロモ−n−酪酸、2−ブロモヘキサン酸、ブロモ酢酸メチルエステル、ブロモ酢酸テトラエチルアンモニウム塩、2−ブロモプロピオン酸プロピルアミン塩などを挙げることができる。
【0017】
一般式(II)の臭素化アルコール誘導体において、Rは水素原子または炭素数6以下のアルキル基で、アルキル基中に臭素原子、ヒドロキシル基を有していてもよく、アルキル基は直鎖、又は分岐していてもよく、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜4である。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル等を挙げることができる。X、Xは、少なくとも一つは臭素原子で、他は水素原子または臭素原子である。一般式(II)の臭素化アルコール誘導体の例としては、2−ブロモエタノール、2,3−ジブロモプロパノール、2,2−ジブロモペンチルグリコール、2,3−ジブロモ−1−プロパノールなどを挙げることができる。
【0018】
一般式(III)の3−ブロモピルビン酸誘導体において、nは1または2である。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、炭素数6以下のアルキル、あるいはヒドロキシルアルキル基、アンモニウム塩、または合計炭素数12以下で酸素原子、窒素原子を含んでいてもよいアミン類の塩である。アルカリ金属原子の例としてはナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属原子の例としてはカルシウム、バリウム等を挙げることができる。アルキル、あるいはヒドロキシルアルキル基は炭素数6以下、好ましくは炭素数3以下であり、直鎖、又は分岐構造のいずれでもよく、例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヒドロキシルエチル、2−ヒドロキシルプロピル等を挙げることができる。アミン類は合計炭素数12以下、好ましくは8以下であり酸素原子、窒素原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐状、環状構造のいずれでもよいアミンで、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれでもよく、例としてはメチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン等を挙げることができる。一般式(III)の3−ブロモピルビン酸誘導体の例としては、3−ブロモピルビン酸やそれらのメチルエステル、エチルエステル、エチルアミン塩、モルホリン塩などを挙げることができる。
【0019】
一般式(IV)の臭素化ヒダントインのX、Xにおけるアルカリ金属原子の例としてはナトリウム、カリウム等を挙げることができる。RまたはRがアルキル基の場合このましいものは炭素数1〜3である。アルキル基の例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルを挙げることができる。一般式(IV)の臭素化ヒダントインの例としては、1ーブロモー3ークロロー5,5ージメチルヒダントイン、1,3ージブロモー5,5ージメチルヒダントインなどを挙げることができる。本発明においてはこれらの有機臭素化合物を一種、あるいは二種以上を組み合わせて使用される。
【0021】
本発明における過酸化水素供給化合物は、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム及び過酢酸からなる群より選ばれる。その中で、過酸化水素が、取り扱いの容易さ、経済的な有利性などから特に好ましい。本発明においてはこれらの過酸化水素供給化合物を一種、あるいは二種以上を組み合わせて使用される。
【0022】
本発明の水系における殺菌処理方法は、上記の有機臭素化合物と過酸化水素供給化合物が水系中で同時に作用すればよいが、有機臭素化合物を適当な濃度の溶液として、別に過酸化水素供給化合物の水溶液を作り、これらを混合した後水系に投入するのが好ましい。有機臭素化合物と過酸化水素供給化合物を混合する際、有機臭素化合物の溶液に過酸化水素供給化合物を単純に加えるだけでもよいが、有機臭素化合物の溶液を酸性にし、ここに過酸化水素供給化合物を加えたほうが好ましいことがある。また、有機臭素化合物を溶液とする場合、溶解し難いときには適当な有機溶剤、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルなどに溶解し、必要に応じて乳化、分散のための界面活性剤を添加することも有効である。本発明はこのような混合方法については特に限定されるものではない。
【0023】
本発明における有機臭素化合物、及び過酸化水素供給化合物は本来単独でもそれなりの殺菌作用をもっているものである。ところがこれら有機臭素化合物と過酸化水素供給化合物が組合わさると浸透力を持った、より顕著な殺菌作用を示すところが従来の知見では考えられなかったことである。従って、有機臭素化合物、過酸化水素供給化合物の配合比はこのような作用を発揮する範囲から任意に選ばれるが、本発明方法における顕著な効果をさせるためには、有機臭素化合物中の臭素原子を活性化させるに充分な量の過酸化水素供給化合物が必要である。すなわち、過酸化水素供給化合物の添加量は、有機臭素化合物中の臭素原子を活性化させるに充分な量であり、相乗効果が発揮される比率は、有機臭素化合物に対し過酸化水素供給化合物を1〜100倍(モル比)、好ましくは2〜10倍(モル比)である。この範囲の外でもそれなりの効果はあるが、添加量の割に効果の増加はなく経済的に好ましくない。
【0024】
水系への添加量は、水中の菌数、水質、温度、その他運転条件により異なるが一般的には、系内の保有水量に対して有機臭素化合物が0.01〜1000ppm、好ましくは0.1〜100ppm、特に好ましくは1〜10ppmである。有機臭素化合物の添加量が0.01ppm以下ではその効果が少なく、また、1000ppm以上ではそれなりの効果はあるが、添加量の割に効果の増加はなく経済的に好ましくない。
【0025】
本発明の方法においては、これと同時に、他のスライム防止剤、殺菌剤、スライム分散剤、防食剤、スケール防止剤等を加えることには何ら制限を加えるものではない。また臭化ナトリウム(NaBr)など無機臭素化合物あるいは次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素剤との併用に対しても制限を加えるものではない。
【0026】
【作用】
従来の殺菌処理剤は、微生物を死滅させることだけを目的として、微生物を滅菌水などに分散させそこに殺菌剤を添加して、濁度の変化やコロニーカウント法などで微生物の死滅度合いを指標に開発されてきた。しかし、実際の系では微生物が分泌した粘質性物質、さらに水中の土砂、鉄錆、パルプ、その他有機物等が混合してスライムを作ってその中に微生物が生息している。そこで、水中に浮遊している微生物を死滅させる能力があっても、このような有機物に覆われた微生物に作用しなければ殺菌処理剤としては不十分である。実際、浮遊している微生物より付着している微生物のほうが薬品に対して耐性が強いという報告〔微生物の生態16(学会出版センター)37頁〕、スライムを防除するために、グルカナーゼを利用して微生物の分泌した多糖類を分解することにより殺菌力を補う方法(特開平3−193号公報)や、スライムの剥離には微生物の分泌した多糖類の粘性を低下させることが必要であるとする報告(特開平5−155719号公報)もある。微生物だけでなく周囲の有機物を含めたスライム全体で考えていくことの必要性が示唆されている。また、微生物は自ら分泌する細胞外多糖、夾膜(カプセル)多糖に覆われている種類も多く、しばしば殺菌剤が菌体にまで届かない場合もある。ところがこのような多糖類を分泌する微生物ほどスライムを作り易い。しかし、スライムを形成する能力の高い微生物に効果を示さなければ、殺菌処理剤として意味がない。従来の殺菌剤はこのような殺菌処理剤としての観点より開発されていないため、冷却水系や製紙工程に殺菌剤を添加して水中の菌数が減少していることを確認してもスライムトラブルが発生するという矛盾が多々生じていたと本発明者は考え、本発明に到達するに至った。
【0027】
臭素化合物の殺菌作用については、臭化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムから次亜臭素酸を作ることは従来より知られており、これは次亜塩素酸ナトリウム単独と比較して高pHで殺菌効果が優れているとする報告(J.E. Alleman etc, Water Reuse Symposium 5 of American Water Works Association Aug/1987, J.E. Alleman etc, 42 nd Annual Purodue Industrial Water Conference May/1987)、臭化酢酸はムラサキガイの防除に効果がある(特公昭52−84号公報)、臭化酢酸アルキルエステルが藻類の繁殖抑制に効果がある(特公昭60−46082号公報)、臭化ニトロアルキルアルコール単独の殺菌力(特開昭59−175406号公報)などで公知になっている。一方、過酸化水素との組み合わせでは、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ブタンジオールとの組み合わせで相乗効果が認められているが、他のニトロアルコール類、ブロモアセトキシ類とは相乗効果が認められないとする報告がある(特開平5−170602号公報)。しかしこれらの方法もスライムや多糖類で覆われた微生物を殺菌するとなるとまだまだ不十分である。
【0028】
本発明は、工業用水系に於けるスライム防止方法として、水中に浮遊している微生物はもちろん、スライム中に生息している微生物を死滅させ、且つ細胞外多糖や夾膜多糖に浸透してこれら多糖類に覆われた微生物に直接作用して死滅させうることによるスライム防止方法を提供するものである。
【0029】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
〔実施例に用いた有機臭素化合物〕
化合物−A:1,4ージブロモー2,3ーブタンジオン
(和光製薬(株)社製 試薬)
化合物−B:ブロモ酢酸(関東化学(株)製 試薬)
化合物−C:2ーブロモプロピオン酸(関東化学(株)製 試薬)
化合物−D:2ーブロモーnー酪酸(関東化学(株)製 試薬)
化合物−E:2ーブロモエタノール(関東化学(株)製 試薬)
化合物−F:2,3ージブロモプロパノール(和光製薬(株)社製 試薬)
化合物−G:3ーブロムピルビン酸エチルエステル(アルドリッチ社製 試薬)
化合物−H:Nーブロモコハク酸イミド(関東化学(株)製 試薬)
化合物−I:1,3ージブロモー5,5ージメチルヒダントイン
(帝人化成(株)製)
【0032】
以上の有機臭素化合物をアセトン−水(1:1容積比)混合液中に溶解し、試験に用いた。
【0033】
〔実施例に用いた有機臭素化合物組成物〕
有機臭素化合物の各1重量%溶液1mlに、過酸化水素(30%)0.2mlを加え供試サンプルとした。また、比較のため純水1mlに過酸化水素水(30%)0.2mlを加えたもの、有機臭素化合物の各1重量%溶液1mlに純水0.2mlを加えたものを作成した。
【0034】
〔実施例に用いた菌株〕
エッセレシア コリ(Escherechia coli:IAM−12119)
スタフロコッカス アウレウス(Staphrococcus aureus:IAM−12544)
シュードモナス エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa:IFO−12689)
シュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorecens:IAM−1154)
バチルス コアクランス(Bacillus coaqulans:IFO−12583)
ベイジェリンキア インディカ(Beijerinckia indica:IFO−3745)
アルカリゲネス レイタス B−16(Alcaligenes latus B−16:FERM BP−2015)
キサントモナス カンペストリス(Xanthmonas campestris:IFO−13551)
トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride:IFO−5720)
サッカロミセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae:IAM−4274)
【0035】
実施例1
対数増殖期に調整した菌体エッセレシア コリ、スタフロコッカス アウレウス、シュードモナス エルギノーサ、シュードモナス フルオレセンス、バチルス コアクランスをそれぞれ1白金耳、10mlの滅菌水に加え懸濁液とした。これら菌液をニュートリエントブロース(pH=6.8)(Diffico社製)のプレートに0.1ml滴下した後、コンラージ棒で均一によく延ばした。その中心部に、直径5mmの滅菌済みのグラスフィルターをのせ、有機臭素化合物組成物サンプルを、0.02ml滴下した。
【0036】
30℃、3日間培養した後、菌の生育阻止面積を測定した。有機臭素化合物組成物が浸透した部分には菌の生育がないことから、この菌の生育阻止面積が広いほど有機臭素化合物組成物は寒天培地中(有機物中)の浸透能力が高く、且つ殺菌能力が高いことを示している。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
Figure 0003560360
【0038】
この結果より、有機臭素化合物単独、過酸化水素水単独に比べて、有機臭素化合物と過酸化水素水を組み合わせたものは、浸透力が格段と向上し、広い域の殺菌ができることが認められた。
【0039】
実施例2
対数増殖期に調整した菌体エッセレシア コリ、スタフロコッカス アウレウス、シュードモナス エルギノーサ、シュードモナス フルオレセンス、バチルス コアクランスをそれぞれ1白金耳、10mlの滅菌水に加え懸濁液とした。これら菌液をニュートリエントブロースに0.1ml滴下し、さらにグリシンNa緩衝液を添加してpH=8.5に調製した後、コンラージ棒で均一によく延ばした。実施例1と同様にして、中心部に滅菌済みのグラスフィルターをのせ、この上に有機臭素化合物組成物溶液を、0.02ml滴下、30℃、3日間培養した後、菌の生育阻止面積を測定した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
Figure 0003560360
【0041】
この結果より、pH=8.5においても、有機臭素化合物と過酸化水素水を組み合わせたものは、浸透力が優れ、広い域の殺菌ができることが認められた。
【0042】
実施例3
PDAプレート(田辺製薬(株))培養したトリコデルマ ビリデ(Tricohdermaviride:カビ類)を滅菌水に入れ、菌数1×10セル/mlの胞子懸濁液を作った。また、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae:酵母)を対数増殖期に調整した後1白金耳を滅菌水10mlに入れよく振り混ぜ懸濁液を作った。これら菌液をPDAプレートに滴下した後コンラージ棒で均一に延ばした。その中心部に置いた滅菌グラスフィルター上に有機臭素化合物組成物溶液を0.02mlを滴下し、25℃にて5日間培養した。各有機臭素化合物組成物について、菌の生育阻止面積を測定した。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
Figure 0003560360
【0044】
この結果より、有機臭素化合物と過酸化水素水を混合したものは、浸透力が大きく、カビ類、酵母に対しても殺菌力が大きいことがわかる。
【0045】
実施例4
菌体が多糖類で覆われている菌株ベイジェリンキア インディカ(Beijerinckiaindica)、アルカリゲネス レイタス B−16(Alcaligenes latus B−16)、キサントモナス カンペストリス(Xanthmonas campestris)のそれぞれを用いて水中での殺菌試験を行なった。対照としてエッセレシア コリ(Escherechia coli)を使用した。対数増殖期にあるこれら菌株を1白金耳、100mlの滅菌水に入れ懸濁液を作った。この菌液をプレートカウント法にて菌数測定した後、有機臭素化合物組成物溶液を1ml添加して30℃にて1時間、震盪した後、菌数を測定した。有機臭素化合物組成物添加前と後との菌数測定値より生存率(%)を求め、有機臭素化合物組成物の評価を行った。結果を表4に示す。
【0046】
【表4】
Figure 0003560360
【0047】
この結果より、過酸化水素水単独では、対照として行ったエッセレシア コリはかなり殺菌されるが、多糖類で覆われている菌株ベイジェリンキア インディカ、アルカリゲネス レイタス B−16、キサントモナス カンペストリスには殺菌効果がみられない。これは菌が多糖類により守られていることによるものである。有機臭素化合物単独ではいずれの菌に対しても殺菌効果がみられない。ところが、本発明の有機臭素化合物と過酸化水素水を組み合わせると、エッセレシアコリはもちろん、多糖類で覆われている菌株ベイジェリンキア インディカ、アルカリゲネス レイタス B−16、キサントモナス カンペストリスに対しても極めて強い殺菌効果を示した。
【0048】
【発明の効果】
本発明の方法は、水中にいる微生物を死滅させ、微生物が分泌した粘質性物質、水中の土砂、鉄錆、パルプ、その他有機物がからんだスライムに対して浸透性を示し、中に生息している微生物を死滅させ、且つ細胞外多糖や夾膜多糖に浸透してこれら多糖に覆われた微生物に直接作用して死滅させることにより、スライム防止効率が非常に高い。また、スライム内部に作用するため、既に形成されているスライムにもその凝集性を失わせ、スライムを分散、消滅させることができる。さらに本発明の方法は、従来の塩素系殺菌剤に比べて、高pHでも殺菌力が大きく、また腐食性も少ないので工業的な使用に好ましい。

Claims (3)

  1. 1,4−ジブロモ−2,3−ブタンジオン
    一般式(I)の臭素化カルボン酸誘導体
    Figure 0003560360
    〔式中、Rは水素原子または炭素数6以下のアルキル基、X、Xは少なくとも一方は臭素原子であり、他方は水素原子または臭素原子、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、炭素数6以下のアルキル基、あるいはヒドロキシルアルキル基、アンモニウム塩、または合計炭素数12以下で酸素原子、窒素原子を含んでいてもよいアミンの塩である。〕
    一般式(II)の臭素化アルコール誘導体
    Figure 0003560360
    〔式中、Rは水素原子または炭素数6以下のアルキル基で、アルキル基に臭素原子、ヒドロキシル基を有していてもよく、X、Xは少なくとも一方は臭素原子で、他方は水素原子または臭素原子である。〕
    一般式(III)の3−ブロモピルビン酸誘導体
    (Br)(3−n)CCOCOOM (III)
    〔式中、nは1または2、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、炭素数6以下のアルキル基、あるいはヒドロキシルアルキル基、アンモニウム塩、または合計炭素数12以下で酸素原子、窒素原子を含んでいてもよいアミンの塩である。〕
    N−ブロムコハク酸イミド及び
    一般式(IV)の臭素化ヒダントイン
    Figure 0003560360
    〔式中、X、Xのうち少なくとも一つは臭素原子で、他は臭素原子、塩素原子、水素原子またはアルカリ金属原子を表し、R、Rは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。〕
    の群より選ばれた一種以上の有機臭素化合物と過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム及び過酢酸の群より選ばれた一種以上の過酸化水素供給化合物を同時に作用させることを特徴とする水系における殺菌処理方法。
  2. 過酸化水素供給化合物が過酸化水素である請求項1記載の水系における殺菌処理方法。
  3. 有機臭素化合物を溶液として、これに過酸化水素供給化合物とを予め混合した後、水系に投入することを特徴とする請求項1または2記載の水系における殺菌処理方法。
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