JP3543874B2 - 水性樹脂分散体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ラジカル重合性シリコーン系マクロモノマーと他のラジカル重合性単量体を水性乳化重合させることにより、微細な樹脂粒子が懸濁する水性樹脂分散体を生産性よく得るための製造方法、および前期水性樹脂分散体からなるコーティング剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、分子の末端に重合性基を有する高分子量単量体であるマクロモノマーを他の共重合性単量体と共重合させて得られる構造的に制御されたグラフトポリマーが、高機能高分子材料として注目され、塗料、接着剤または高分子添加剤等として有用されている。
【0003】
上記グラフトポリマーのうちでも、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンを骨格とするラジカル重合性マクロモノマー(以下「シリコーン系マクロモノマー」という)を他の単量体と共重合して得られるシリコーン系グラフトポリマーは、その枝成分となるマクロモノマーに由来する特性、すなわち撥水性、耐汚染性および低摩耗性等を有するため、各種基材のコーティング剤または塗料等として好適に使用されている(例えば特開昭63−227670号公報等)されている。かかるシリコーン系グラフトポリマーは、従来は専ら溶液重合によって製造され、製品としても溶剤型が一般的であったが、この溶剤型製品は有機溶剤による大気汚染あるいは資源の浪費のような問題の解決のために、最近では水性エマルジョンが求められている。
【0004】
このような状況下で、シリコーン系マクロモノマーと共重合性単量体を水性重合させることが多数検討されている。例えば特開平5−9248号公報では、シリコーン系マクロモノマー、共重合性単量体および油溶性重合開始剤を水中に乳化分散させた水性分散体、所謂プレエマルジョンを、所定の温度の水中に滴下することにより重合させる方法を採用し、かつ該プレエマルジョンを形成するための乳化剤としてスルホコハク酸ソーダ等の特定の界面活性剤を用いることが提案されている。
【0005】
上記公報記載の方法によれば、安定な水性重合が可能で、外観的には一応均一な水性エマルジョンが得られるが、それから形成される塗膜は透明性に劣るという問題があった。本発明者らの検討によれば、前記透明性の問題を解決するためには、特殊な装置を使用してプレエマルジョンを0.5μ以下程度にまで微細化することが必要であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、ラジカル重合性シリコーン系マクロモノマーと他の共重合性単量体を水性乳化重合する方法について多角的に研究を重ねた結果、乳化剤としてシリコーンを枝成分とし、ビニル重合性単量体からなるカルボキシレート基を含有する重合体を幹成分とする水溶性グラフト共重合体から構成された高分子乳化剤を選択することにより、一旦微細化されたプレエマルジョン、すなわち単量体の水性乳化分散体を形成し、これを重合させるという煩雑な方法に依らなくても、平均粒径が0.1〜0.2μm の微小樹脂粒子が均質に乳化分散する水性樹脂分散体が得られることを確認した。
【0007】
上記の水溶性グラフト共重合体からなる高分子乳化剤は、既に特開平5−154369号公報として本出願人により提案されており、具体的には (a)シリコーン分子の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー、 (b)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸および (c)その他のラジカル重合性単量体を共重合して得られるグラフト共重合体中のカルボキシル基の一部または全量を、塩基で中和して得られるものである。該高分子乳化剤は、特に(メタ)アクリル酸アルキル、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等のモノマーを対象とする水性樹脂エマルジョン型接着剤および塗料等の製造に供した際に優れた耐水性を付与し得ることについては解明されているが、シリコーン系マクロモノマーと他のビニル単量体を共重合させる場合に、それを乳化剤として用いることは開示されていない。
【0008】
本発明の目的は、特殊な装置を使用してプレエマルジョンを微細化するという煩雑な操作を行わずとも、透明性に優れる塗膜を与えるシリコーン系水性樹脂分散体の製造方法、ならびに該方法で得られた水性樹脂分散体からなるコーティング剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による水性樹脂分散体の製造方法は、ラジカル重合性基を有するシリコーン系マクロモノマーを該マクロモノマーと共重合性を有する他のビニル単量体に溶解した溶液を、 (a)シリコーン分子の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー、 (b)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸および (c)その他のラジカル重合性単量体を共重合して得られるグラフト共重合体中のカルボキシル基の一部または全量を塩基で中和した水溶性グラフト共重合体からなる高分子乳化剤の存在下で、水性媒体中に分散し、ラジカル重合開始剤により前記シリコーン系マクロモノマーと他のビニル単量体を共重合させることを構成上の特徴とする。
【0011】
本発明に使用されるシリコーン系マクロモノマーは、末端にラジカル重合性基を有するシリコーンを骨格とする高分子量単量体であり、その好ましい数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算の数平均分子量として1,000〜100,000、好ましくしは2,000〜50,000である。この数平均分子量が、1,000未満であると得られるグラフトポリマーにおける枝ポリマーが短すぎてシリコーンに由来する潤滑性、離型性、耐候性等の特性が発現し難く、一方、100,000を越えると、共重合させるビニル単量体との共重合性に劣りグラフトポリマーの収率が低下する。シリコーン骨格の末端に結合するラジカル重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アリル基、ビニルベンジル基、ビニルエーテル基、ビニルアルキルシリル基、ビニルケトン基およびイソプロペニル基等が挙げられる。
【0012】
上記のラジカル重合性のシリコーン系マクロモノマーは、公知の方法により製造することができる。例えば、リチウムトリアルキルシラノレートを重合開始剤とし、環状シロキサンをアニオン重合することによりリビングポリマーを得、これとγ−メタクリロキシプロピルジメチルモノクロロシランを反応させて合成する方法(特開昭59−78236 号公報)、末端シラノール基含有シリコーンと有機ケイ素化合物との縮合反応生成物としてシリコーン系マクロモノマーを得る方法(特開昭58−167606号公報、特開昭60−123518号公報)等を用いることができる。
【0013】
本発明においてシリコーン系マクロモノマーと共重合させる単量体は、水性媒体中において乳化可能なビニル単量体またはビニル単量体混合物であればよく、常温で液体である疎水性のものが好ましく用いられる。具体的には、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ポリフロロ(メタ)アクリレート、パーフロロ(メタ)アルキルアクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのシリコーン含有アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのスチレン系化合物、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類などが挙げられる。
【0014】
上記のビニル単量体には、その他のビニル単量体を併用することができる。併用し得るビニル単量体としては、例えばメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ) アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルピロリドンおよひビニルピリジン等の親水性ビニル単量体、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートおよびジエチレングリコールジアクリレート等の多官能性ビニル単量体、ならびにステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、ブタジエン、イソプレンおよび塩化ビニリデン等などが挙げられる。
【0015】
シリコーン系マクロモノマーはビニル単量体に溶解した状態で使用されるが、その好ましい共重合割合は、シリコーン系マクロモノマー1〜50重量%、ビニル単量体50〜99重量%の範囲である。シリコーン系マクロモノマーの割合が50重量%を越えると重合時にゲル化を招き易い。また、多官能性ビニル単量体を共重合性単量体の一部として使用する場合、該多官能ビニル単量体の好ましい使用量は全単量体の合計量に対して5重量%以下が好ましい。
【0016】
本発明において使用される高分子乳化剤は、 (a)シリコーン分子の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー、すなわちシリコーン系マクロモノマー、 (b)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸および (c)その他のラジカル重合性単量体を共重合して得られるグラフト共重合体中のカルボキシル基の一部または全量を塩基で中和した水溶性グラフト共重合体からなる。
【0017】
高分子乳化剤における (a)成分として使用されるマクロモノマーは、基本的に前述のシリコーン系マクロモノマーと同一であり、高分子乳化剤におけるシリコーン単位の好ましい量は、5〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。シリコーン単位の割合が5重量%未満である高分子乳化剤を用いると、シリコーン系マクロモノマーおよび共重合性ビニル単量体の水性媒体中での重合が不安定になる。一方、シリコーン単位の量が60重量%を越えると、高分子乳化剤の水溶性が不足し、乳化性能が劣るようになる。
【0018】
(b)成分として使用し得るα,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。該α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の好ましい使用量は、グラフト共重合体の酸価が30〜260mgKOH/g 樹脂になる量である。前記酸価範囲を与えるα, β−エチレン性不飽和カルボン酸の使用量は用いる不飽和カルボン酸の種類によって異なるが、重合に供する全ラジカル重合性成分の合計量を基準として通常3〜40重量%である。グラフト共重合体の酸価が30mgKOH/g 樹脂未満の場合は、塩基で中和してもグラフト共重合体を水溶化できず、260mgKOH/g 樹脂を越えると得られる水性樹脂分散体からなる皮膜の耐水性が減退するようになる。
【0019】
高分子乳化剤を構成する (c)成分は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキル等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、トリクロルエチレン等であり、これらは単独または二種以上を併せて使用することができる。このうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体の使用が好適である。グラフト共重合体における上記ラジカル重合性単量体単位の好ましい割合は、10〜96重量%である。
【0020】
(a) 、(b) および(c) 成分は、例えば放射線照射法、ラジカル重合開始剤を用いる方法など公知の重合手段によって共重合される。重合操作の簡便性や生成するグラフト共重合体の分子量調節の容易性を考慮するとラジカル重合開始剤を用いる方法が好ましく、また有機溶媒を用いる溶液重合法を適用することがより好ましい。溶液重合法における溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤などが挙げられる。
【0021】
上記重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素等の無機系ラジカル重合開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド等の有機系ラジカル重合開始剤が挙げられる。
また、グラフト共重合体の分子量調整のため、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、2−メルカプトエタノール、エチルメルカプトアセテート、チオフェノール、2−ナフタレンチオール、ドデシルメルカプタンまたはチオグリセロール等の連鎖移動剤を重合系に適宜添加してもよい。重合温度は、60〜100℃が好ましく、また、重合時間は3〜10時間が適当である。
【0022】
高分子乳化剤は、上記の重合によって得られたカルボキシル基含有グラフト共重合体の有機溶剤溶液に塩基を添加し、カルボキシル基の一部ないし全部を中和した水溶性グラフト共重合体として調製される。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機のアルカリ金属塩基、アンモニア、またはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。カルボキシル基の中和量は、50モル%以上であることが好ましく、50モル%を下回るとグラフト共重合体を水溶性に転換することが困難となる。皮膜の耐水性をより向上させるためには、皮膜作成中に残存しにくいアンモニア、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンの適用が好ましい。
【0023】
上記の水溶性グラフト共重合体からなる高分子乳化剤は、水性樹脂分散体の製造時に、重合媒体の水に添加されて使用される。その好ましい使用量は、目的とする水性樹脂分散体の製造に使用されるモノマーの合計量を基準にして1〜100重量%の範囲である。使用量が1重量%未満の場合は、疎水性であるラジカル重合性基を有するシリコーン系マクロモノマーを乳化分散できなくなり、安定な水性樹脂分散体が得られない。一方、使用量が100重量%を越えると、得られた水性樹脂分散体を塗布した際に皮膜の耐水性ならびに膜強度が低下する。
【0024】
本発明においてシリコーン系マクロモノマーと他のビニル単量体の共重合に使用するラジカル重合開始剤は、一般にラジカル重合に用いられているものであれば水溶性、油溶性に限らず使用可能であり、重合条件に応じて適切なものを選択して使用すればよい。例えば、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩系重合開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物系重合開始剤、クメンヒドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイド類からなる酸化剤と、ロンガリット、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤等を用いることができる。これらラジカル重合開始剤の好ましい使用量は、シリコーン系マクロモノマーと共重合ビニル単量体の合計量に対し、0.1〜5重量%である。
【0025】
本発明の水性樹脂分散体は、上記の各成分を用い、ラジカル重合性基を有するシリコーン系マクロモノマーを他のビニル単量体に溶解し、得られた溶液を水性媒体中で高分子乳化剤の存在下で、ラジカル重合開始剤によりシリコーン系マクロモノマーと他のビニル単量体を共重合させる操作により製造される。具体的には、高分子乳化剤を水に溶解させておき、この水性媒体を撹拌させながらシリコーン系マクロモノマーをビニル単量体に溶解した溶液およびラジカル重合開始剤を別々の滴下ルートから供給する操作手順で行われる。この際、シリコーン系マクロモノマーをビニル単量体に溶解した溶液を、事前に水性乳化分散化してから重合系に供給してもよい。また、ラジカル重合開始剤として油溶性のものを用いる場合には、予めシリコーン系マクロモノマーをビニル単量体に溶解した溶液に溶解して重合系に供給することが操作的に簡便である。
【0026】
上記の製造方法により得られる水性樹脂分散体は、極めて微細な粒径の樹脂が乳化分散した水性エマルジョンであり、コーティング面が透明であり、かつ撥水、防汚、潤滑等の諸特性に優れているため、特に磁気テープ、感熱記録フィルムまたは感光記録フィルム等を対象とするコーティング剤として有用である。
【0027】
【作用】
本発明によれば、ラジカル重合性基を有するシリコーン系マクロモノマーと他のビニル単量体を水性乳化重合させて水性樹脂分散体を製造する場合に、乳化剤としてシリコーンを疎水性単位とし、カルボン酸塩を親水性単位とした特定組成の水溶性グラフト共重合体からなる高分子乳化剤を選択使用し、シリコーン系マクロモノマーを共重合性ビニル単量体に溶解した状態で、水性媒体中において前記高分子乳化剤の存在下にラジカル重合開始剤により共重合させることにより、極めて微細化した樹脂粒子が均質に乳化分散する水性樹脂分散体を容易に製造することができる。
【0028】
上記と同一の重合方法において、公知のシリコーン系高分子界面活性剤〔例えば、信越化学工業(株)製のKF354(HLB;18)、KF353(HLB;10)、KF6016(HLB;4.5) 等。いずれもポリジメチルシロキサン−ポリエチレングリコールのグラフト共重合体からなるノニオン系界面活性剤〕を乳化剤として用いても、後述する比較例2のように重合途中で凝集物が多量に発生し、安定な重合は困難であった。
【0029】
本発明によって製造される水性樹脂分散体は、極めて微細な樹脂分散系で貯蔵安定性の良好な水性エマルジョンであり、コーティングにより形成される塗面は透明であるうえ、撥水性、防汚性、耐候性、潤滑性、離型性等に優れるものであるが、この諸物性は上記した本発明の特定された成分組合せと重合方法によって初めて達成することが可能となる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。なお、各実施例で用いた高分子乳化剤AおよびBは、それぞれ下記の方法により調製した。
【0031】
高分子乳化剤A;
ブチルメタクリレート55重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部、メタクリル酸15重量部およびメチルエチルケトン100重量部を混合した。この混合液にシリコーン分子の末端にメタクリル基を有するシリコーンマクロモノマー〔チッソ(株)製、FMO725;数平均分子量約10,000)20重量部、n−ドデシルメルカプタン1.0重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN〕という)1.0重量部を溶解し、撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに仕込み、窒素雰囲気下80℃で4時間加熱した後、更にAIBN0.5重量部を投入し、同温度で4時間加熱し、不揮発分49.7%、酸価100mgKOH/g 樹脂のグラフト共重合体を合成した。得られた反応液を撹拌しながら1.7%濃度のアンモニア水溶液100g を徐々に加え、減圧下に50℃の温度に加温してメチルエチルケトンを留去してpH7.7の高分子乳化剤Aを得た。
【0032】
高分子乳化剤B;
シリコーン系マクロモノマーとして分子末端の重合性基がメタクリロイル基であるシリコーン系マクロモノマー〔東亞合成(株)製、AK−32;数平均分子量20,000〕20重量部、また共重合性単量体としてブチルアクリレート50重量部、スチレン10重量部およびアクリル酸20重量部を用い、得られた不揮発分49.8%、酸価155mgKOH/g 樹脂のグラフト共重合体の溶液を3.0%トリエチルアミン水溶液100g により中和した。それ以外の条件は全て高分子乳化剤Aの合成方法と同様な操作により、pH8.1の高分子乳化剤Bを得た。
【0033】
実施例1
メチルメタクリレート35重量部、ブチルアクリレート35重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部の混合液に、末端メタクリロイル基型シリコーンマクロモノマー〔チッソ(株)製、FMO725〕20重量部を溶解して混合溶液を調製した。撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに脱イオン水100重量部および高分子乳化剤A60重量部を添加しておき、窒素雰囲気下に60℃に昇温した後、液撹拌下にtert−ブチルハイドロパーオキシドの10重量%水溶液5重量部、ロンガリットの10重量%水溶液5重量部および上記単量体混合溶液100重量部を4時間かけて滴下した。滴下後、同温度で更に2時間反応を継続させて重合を終了した。重合反応の段階でフラスコの壁に凝集物がわずかに付着したほかは、分離やブロッキング等の現象は起こらず安定であった。
【0034】
得られた水性樹脂分散体を200メッシュのネットで濾過した結果、グリッド量は100ppm 以下であり、微細な樹脂粒子の分散系であることが確認された。該水性樹脂分散体は、室温で1ヶ月放置後も沈殿物は殆ど見られず、優れた貯蔵安定性を示した。得られた樹脂につきゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算の数平均分子量を測定したところ20.0万で、重量平均分子量は132.2万であった。また、分散樹脂の平均粒子径は0.15μm であり、その分布は狭いものであった〔 (株) 堀場製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置LA−910で測定〕。次に、上記の水性樹脂分散体を膜厚が20μm になるようにガラス板に塗布し、透明性をヘイズメーター(JIS K−6714の準拠)で測定したところ、ヘイズは0.8となり、透明性は良好であった。
【0035】
実施例2
ブチルメタクリレート50重量部、2−エチルヘキシルアクリレート30重量部、アクリロニトリル10重量部、N−メチールアクリルアミド1重量部および2−ヒドロキシメチルメタクリレート9重量部の混合溶液に、末端メタクリロイル基型シリコーンマクロモノマー〔東亞合成(株)製、AK−32〕10重量部を溶解した。この混合溶液に高分子乳化剤Bの60重量部を加え、スリーワンモーターを用いて脱イオン水40重量部中に乳化させ、水性乳化分散体(以下「プレエマルジョン」という)を調製した。得られたプレエマルジョンは、1日経過しても分離せず、安定なエマルジョンであった。分散樹脂粒子の平均粒径は1.65μm であり、その粒径分布は狭いものであった。次に、撹拌機、温度計、冷却器付きフラスコに脱イオン水60重量部を入れ、窒素をバブルさせながら液温を70℃に保持し、撹拌しながら過硫酸アンモニウム/脱イオン水=0.7重量部/9.3重量部の液10重量部とプレエマルジョン200重量部を4時間かけて滴下した後、更に2時間反応を継続させ重合を終了した。重合中、フラスコの壁に凝集物が僅かに付着したほかは、分離やブロッキング等は起こらず、安定であった。
【0036】
得られた水性樹脂分散体を200メッシュのネットで濾過した結果、グリッド量は100ppm 以下であり、また該樹脂分散体の貯蔵安定性も良好であった。分散樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の数平均分子量は25.2万、重量平均分子量は155.1万であった。また、分散樹脂の平均粒子径は0.11μm であり、その分布は狭いものであった。この水性樹脂分散体をガラス板に膜厚が20μm になるように塗布し、透明性をヘイズメーターで測定したところ、ヘイズは0.7となり、透明性は良好であった。
【0037】
比較例1
実施例2における高分子乳化剤Bに代えて、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム2.0重量部およびHLB15.5のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル5.0重量部を乳化剤として使用して、ホモミキサーにより平均粒径0.46μm に乳化分散させたプレエマルジョンを用い、その他の条件は実施例2と同一にして水性樹脂分散体を得るための乳化重合を行った。得られた水性樹脂分散体を200メッシュのネットで濾過した結果、グリッド量は100ppm 以下であり、樹脂分散体の貯蔵安定性も良好であった。また、分散体の平均粒径は0.41μm であったが、水性樹脂分散体をガラス板に膜厚20μm になるように塗布したところ、塗膜は白濁していることが認められた。この透明性をヘイズメーターで測定したところ、ヘイズは22.7であった。
【0038】
比較例2
実施例1における高分子乳化剤Aに代えて、ポリジメチルシロキサン−ポリエチレングリコールのグラフト共重合体〔信越化学工業(株)製、KF354(HLB;18)30重量%を乳化剤として使用し、その他の条件は実施例1と同一にして水性樹脂分散体を得るための乳化重合を行ったところ、重合途中で凝集物が多量に発生し、反応系が非常に不安定な状況になった。このため、乳化重合を途中で停止した。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、プレエマルジョンの粒径を微細化するという煩雑な処理操作なしに、微細な粒径の樹脂からなる優れた物性のシリコーン系水性樹脂分散体が得られる。本発明により得られる水性樹脂分散体は、撥水、潤滑、離型、防汚、耐候、気体透過等の諸特性に優れているため、極めて広範囲の用途、すなわち塗料(離型性、防汚、落書き防止、貼紙防止、着氷防止、着雪防止、耐候性等)、コーティング剤(磁気テープ、感熱記録フィルム、感光記録フィルム等)、粘着剤、接着剤、シーリング剤、艶出し剤、顔料やフィラー等の分散改良剤、帯電防止剤および樹脂改質剤等に好適に用いられる。
Claims (1)
- ラジカル重合性基を有するシリコーン系マクロモノマーを該マクロモノマーと共重合性を有する他のビニル単量体に溶解した溶液を、(a)シリコーン分子の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー、(b)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸および(c)その他のラジカル重合性単量体を共重合して得られるグラフト共重合体中のカルボキシル基の一部または全量を塩基で中和した水溶性グラフト共重合体からなる高分子乳化剤の存在下で、水性媒体中に分散し、ラジカル重合開始剤により前記シリコーン系マクロモノマーと他のビニル単量体を共重合させることを特徴とする水性樹脂分散体の製造方法。
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