JP3540485B2 - 電子スチルカメラ - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被写体を電荷結合素子(ＣＣＤ)等の撮像素子によって撮像して光電変換した後、信号処理することにより映像データを得て、この映像データをメモリ手段に記録する電子スチルカメラに係り、特に、そのホワイトバランス制御に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、通常のテレビでは、華氏3200度の色温度にて照明された被写体の色彩が正しく再現されるようになっているが、撮影シーンは太陽下あるいは人工的照明下等のように同一状態でなく、撮影条件，環境によって被写体が多種多様の色温度状態になる。したがって、それぞれの撮影シーンに応じて色彩が適正に再現されるように映像信号を補正する必要がある。この補正を自動的に行うことを自動ホワイトバランス(ＡＷＢ)制御という。
【０００３】
ＡＷＢ制御では、例えば、Ｒ(赤)成分を検出するセンサとＢ(青)成分を検出するセンサとを有し、各センサからの信号を、対数圧縮・減算回路を通してＲ信号とＢ信号との比からなる色温度情報を求め、この色温度情報に応じて各色信号のゲインをコントロールするものである。
【０００４】
一方、ＣＣＤを用いた電子スチルカメラにおいても前記ＡＷＢ制御が用いられているが、ストロボ撮影が行われる場合、被写体におけるストロボ光の到達範囲ではストロボ色の色温度に基づいてＡＷＢ制御が行われ、またストロボ光が到達しない範囲では他の照明光の色温度に基づいてＡＷＢ制御が行われる。
【０００５】
このようにストロボ撮影が行われる場合には色温度を考慮する必要があり、このストロボ撮影時の基準となる色温度の変化に対応するため、種々の装置が提案され、実施されている。例えば、特開平2-288575号公報に記載された電子スチルカメラでは、測距結果により、被写体がストロボ光の十分到達する距離範囲にあれば、ストロボ発光したときの所定のＡＷＢ制御値(ストロボ光用ＡＷＢ制御値)によってホワイトバランス制御を行い、また、被写体がストロボ光が到達しない遠い距離にあれば、ストロボ光の色温度および被写体自体の色温度に基づいて適当なＡＷＢ制御値を設定してホワイトバランス制御を行っている。
【０００６】
さらに、特公平5-75314号公報に記載された撮像装置では、ストロボ撮影時、ストロボ光とは色温度の異なる照明光の光量を検出し、ＡＷＢ制御値を補正している。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平2-288575号公報に記載された電子スチルカメラでは、主被写体の距離に応じてストロボ光用ＡＷＢ制御値または背景の照明用ＡＷＢ制御値のいずれか一方を選択使用してホワイトバランス制御を行うものであるため、ストロボ光が到達する主被写体と、ストロボ光が到達し得ない背景とが混在するシーンにおいては、主被写体あるいは背景のいずれか一方しかホワイトバランスを合わせることができず、撮影画面全体としては適正なホワイトバランスがなされないという問題がある。
【０００８】
また、特公平5-75314号公報に記載された撮像装置では、主被写体と背景との中間的ホワイトバランス制御は行われるが、前記従来の電子スチルカメラと同様に撮影画面全体としては適正なホワイトバランスがなされない場合があるという問題がある。
【０００９】
本発明の目的は、ストロボ光が到達する主被写体とストロボ光が到達し得ない背景とが混在するシーンであっても、撮影画面全体として適正なホワイトバランスが行われる電子スチルカメラを提供することにある。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、被写体を電荷結合素子等の撮像素子によって撮像して光電変換した後、信号処理することにより映像データを得て、この映像データをメモリ手段に記録する電子スチルカメラにおいて、映像データを一時的に保持するフレームメモリと、少なくともストロボ発光して露光させたときの映像データと、ストロボ発光させないで露光させたときの映像データとを、任意の被写体領域ごとに比較してデータの比を求める比較手段と、前記比の値によりストロボ光の寄与度を判定する判定手段と、ストロボ発光させないときのホワイトバランス制御値を決定するホワイトバランス値決定手段と、ストロボ発光して露光させたときの映像データに対して前記判定手段の判定に基づき前記比較した被写体領域ごとに、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値、あるいはストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択して、ホワイトバランス制御を行うホワイトバランス制御手段とを備えたものであって、この構成により、撮像画像の中において任意に設定される被写体領域ごとに、ストロボ発光して露光させたときの映像データと、ストロボ発光させないで露光させたときの映像データとの比を求め、この比の値からストロボ光の寄与度を判定して、ホワイトバランス値決定手段により決定されたストロボ発光させないときのホワイトバランス制御値、あるいはストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を適宜選択して、最終ホワイトバランス制御を行うので、例えば、ストロボ光が到達する主被写体と、ストロボ光が到達しない照明下の背景とが混在するシーンにおいても、主被写体と背景の両方にホワイトバランスが合った良好な撮影が行われる。
【００１１】
また、前記各被写体領域におけるホワイトバランス制御値が、前記判定手段により判定されたストロボ光の寄与度に基づいて、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値から、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値までの間の中より、適宜選択されて設定されるようにすることによって、主被写体と背景の輪郭部とにおけるホワイトバランスの変化をより滑らかにすることができるため、自然なホワイトバランス制御が行われる。
【００１２】
また、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値から、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値までの間の中より、適宜選択される制御値の選択許容幅を規制する規制手段を備えることによって、各被写体領域間において急峻にＡＷＢ制御値が変わってしまうことを防止できるため、輪郭部等でより自然なホワイトバランス制御が行われる。
【００１３】
また、撮像した複数枚の画像の映像データを比較することによって被写体の動きを検知する被写体動検知手段を備え、この被写体動検知手段により被写体の動きが所定量よりも大きいことが検知された場合に、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択してホワイトバランス制御を行うことによって、時間を隔てた映像同士を比較して、被写体が速く動くとき、またはカメラのパニング時には、請求項１記載の構成による処理を行わずに、ストロボ光用ＡＷＢ制御値を用いたホワイトバランス制御を行うことにより、誤動作を防止することができる。
【００１４】
また、ストロボ発光させないときに撮像した画像が略全面にわたって一様に所定量より低光量である場合には、ストロボ発光して露光させたときの映像データに対して前記判定手段における判定の対象である被写体領域ごとに、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値、あるいはストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択し、また撮像した画像が略全面にわたって一様に暗くない逆光等の場合には、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択してホワイトバランス制御を行うようにすることによって、逆光等の特殊なシーンでは請求項１記載の構成による処理を行わずに、一様に暗いシーンに対してのみ請求項１記載の構成による処理を行うようにすることにより、誤動作を防止することができる。
【００１５】
また、前記判定手段によりストロボ光が到達していないと判定され、しかも所定量より低光量である被写体領域における映像データを増幅する増幅手段を備えることによって、ストロボ光が到達せず、かつ暗い被写体領域における映像データの輝度レベルを増幅することができるため、映像中の明るさのアンバランスを解消することができる。
【００１６】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【００１７】
図１は本発明の一実施形態を説明するための構成を示すブロック図であり、１は撮影レンズ、２はシャッタ、３は、受光した被写体像を受光して光電変換し、映像信号を出力するＣＣＤ、４は、ＣＣＤ３からの出力を受けてデジタル信号処理を行うためのＣＤＳ(相関２重サンプリング回路)，アナログ／デジタル変換回路等からなる映像信号前処理部、５は映像データを一時的に保持するＤＲＡＭ等からなるフレームメモリ、６は、フレームメモリ５に対する映像データの書き込み，読み出しの制御、および映像データの比較を行うデータ処理部である。
【００１８】
また、７は映像データを圧縮，伸長するデータ圧縮／伸長部、８は圧縮されたデータを記録する外部記録媒体であるメモリカード、９はＲ信号，Ｂ信号に係る色温度情報を得るための測色センサ、10はストロボ、11は第１レリーズ，第２レリーズ等の外部スイッチ、12は前記各部材を制御するＣＰＵ(中央演算処理部)である。
【００１９】
図１において、ＣＣＤ３は、シャッタ２を介して撮影レンズ１によって結像される被写体像を受け、光電変換して映像信号を映像信号前処理部４に出力する。この映像信号前処理部４によってデジタル信号処理された映像データは、データ処理部６の制御によってフレームメモリ５に書き込まれる。データ処理部６は、フレームメモリ５に対する映像データの書き込み，読み出しの制御、および映像信号前処理部４からの映像データとフレームメモリ５内の映像データとの比較、さらにはフレームメモリ５内の映像データ同士の比較等を行う。前記比較により、後に詳述するように、同一画素に相当するデータ同士の比を求める。この比の値が本発明にて特定するストロボ光の寄与度となる。
【００２０】
ＣＰＵ12は、測色センサ９からのセンサデータによって、ＡＷＢ制御値を決定する。そして、データ処理部６は、少なくとも２つ以上のＡＷＢ制御値をＣＰＵ12から転送可能であり、上述した比較結果に基づいて画素ごとにＡＷＢ制御値を選択し、色ゲインコントロールしてデータ圧縮／伸長部７へ出力する。このデータ圧縮／伸長部７にてデータ圧縮処理を受けた画像データはメモリカード８に記録される。
【００２１】
また、再生時には、ＣＰＵ12がメモリカード８に記録された再生対象の映像データを読み出し、この画像データに対してデータ圧縮／伸長部７にてデータ伸長処理を施し、データ圧縮／伸長部７から出力されたデジタルデータをアナログデータに変換し、再生映像信号として出力する。
【００２２】
図２はホワイトバランス制御を主とした図１の前記構成における動作のタイミングチャートであり、外部スイッチ11による第１レリーズ(RL1)のオンにより、図示しない手段によりＡＥ(自動露光)，ＡＦ(自動焦点)の各制御処理が行われ、しかも、測色センサ９からのセンサデータによりＣＰＵ12は、そのときのＡＷＢ制御値(1)を決定する。ＣＰＵ12は、このＡＷＢ制御値(1)をデータ処理部６に転送する。さらに、暗い撮影シーンであって光量が所定量より低く、ストロボ発光が必要である場合には、予め設定されているストロボ10におけるストロボ光用ＡＷＢ制御値もデータ処理部６に転送する。
【００２３】
つぎに、外部スイッチ11による第２レリーズ(RL2)のオンにより、ストロボ10を発光させ、第１回目の露光を行う。この第１回目の露光時に得られた映像データはデータ処理部６を経てフレームメモリ５に格納される。第１回目の露光の後、ストロボ10を発光させない第２回目の露光を行って映像データを得る。なお、前記ストロボ10を発光させないで露光を行って得た映像データという概念の中には、例えばストロボ光量を小さくして、被写体にほとんどストロボ光が到達しないようにして露光させた場合に得られた映像データも含まれる。
【００２４】
前記第２回目の露光時に得られた映像データと、第１回目の露光により得られた映像データとはデータ処理部６において比較される。すなわち、データ処理部６では、ストロボ10を発光させた第１回目の露光時に得られた映像データをａとし、ストロボ10を発光させない第２回目の露光時に得られた映像データをｂとして、ストロボ光の寄与度であるａ／ｂの値を算出する。
【００２５】
そして、ＣＰＵ12は、ａ／ｂ≒１であれば、その画素はストロボ光が到達していない領域にあり、また、ａ／ｂ≫１であれば、その画素はストロボ光が十分到達している領域にあると判定する。そして、この比較判定結果に基づいて、データ処理部６は、ストロボ光の到達していない画素(被写体領域)には前記ＡＷＢ制御値(1)によって色ゲイン補正し、また、ストロボ光の到達している画素(被写体領域)には前記ストロボ光用ＡＷＢ制御値によって色ゲイン補正して、データ圧縮／伸長部７へデータを出力する。
【００２６】
ストロボ光の寄与度である前記ａ／ｂの値はストロボ光の影響量を表しており、したがって、このａ／ｂの値に対応してＡＷＢ制御値を、ＣＰＵ12によって前記ＡＷＢ制御値(1)乃至ストロボ光用ＡＷＢ制御値間の中より適当な値を選択することにより、より適正なＡＷＢ制御値に基づいてホワイトバランスを行うことが可能である。
【００２７】
また、上述のようにして、画素(被写体領域)ごとにＡＷＢ制御値を適宜選択して変える場合に、ＣＰＵ12によって、その制御値の可変幅を限定することによって、逆光時、あるいは被写体の動きが速いときでも、画素間において急峻にＡＷＢ制御値が変わらないようにすることができるため、誤動作の発生を防止することができる。
【００２８】
被写体の動きが速い場合には、画素ごとの正確な前記比較判定が困難であるため次のような処理を行う。すなわち、データ処理部６によって、前記ストロボ10を発光させた第１回目の露光時に得られた映像データから映像における輪郭等の特徴の抽出を行っておき、ストロボ10を発光させない第２回目の露光時に得られた映像データにおける当該部分と比べることによって、撮影シーンに著しい違い(動き)があったことを検知することが可能であるので、ＣＰＵ12によって、この撮影シーンの違いを検知して動きが速いと判断されたときには、上述のように画素ごとの正確な前記比較判定が困難であるため、ストロボ発光時の画像データおよびストロボ光用ＡＷＢ制御値を用いてデータ圧縮を行うことにし、上述したＡＷＢ制御値(1)あるいはストロボ光用ＡＷＢ制御値を適宜選択する処理は行わないようにする。
【００２９】
また、逆光等の場合、前記ストロボ10を発光させた第１回目の露光と、ストロボ10を発光させない第２回目の露光との間において主被写体が動く等して新たに背景が生じると、その生じた背景からの光とストロボ光の反射により生じた光との前記ａ／ｂの値からでは、ストロボ光の寄与度を正確に判定することができない。そこで、逆光等の特別なシーンのときには、ＣＰＵ12によって、ストロボ光用ＡＷＢ制御値を用いてホワイトバランス制御を行い、逆光等の特別なシーン以外の一様に暗い撮影シーンのときにのみ、上述したＡＷＢ制御値(1)あるいはストロボ光用ＡＷＢ制御値を適宜選択する処理を行うようにする。
【００３０】
さらに、前記データ処理部６にてストロボ光が到達していないと判定された画素(被写体領域)における映像データの光量が、予め定められている所定値よりも少なくて暗い場合には、その映像データを増幅器によって増幅する構成を採用することによって、ストロボ光の当たっている主被写体と背景との明かるさのバランスを、人間の視覚に適応するように合わせるようにすることができる。
【００３１】
なお、前記実施形態においては、ストロボ光の寄与度を画素ごとに比較して求めるとして説明したが、前記比較の方法は、これに限定されるものでなく、例えば静止画圧縮のＪＰＥＧ方式に基づく８×８画素の１ブロック単位ごとに比較するようにしてもよく、このようにブロック単位ごとに比較することによって制御系のハードウェアの構成を簡単にすることができる。
【００３２】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電子スチルカメラによれば、ストロボ発光して露光させたときの映像データと、ストロボ発光させないで露光させたときの映像データとを比較してデータの比を求め、この比の値によりストロボ光の寄与度を判定し、各被写体領域ごとに、ホワイトバランス値決定手段により決定されたストロボ発光させないときのホワイトバランス制御値、あるいはストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を適宜選択して、最終ホワイトバランス制御を行うことにより、例えば、ストロボ光が到達する主被写体と、ストロボ光が到達しない照明下の背景とが混在するシーンにおいても、主被写体と背景の両方にホワイトバランスが合った良好な撮影が行われることになる。
【００３３】
また、主被写体と背景の輪郭部とにおけるホワイトバランスの変化を滑らかにすることができるため、自然なホワイトバランス制御を行うことができる。
【００３４】
また、被写体領域間において急峻にＡＷＢ制御値が変わってしまうことを防止することができるため、輪郭部等でより自然なホワイトバランス制御を行うことができる。
【００３５】
また、時間を隔てた映像同士を比較して、被写体が速く動くとき、またはカメラのパニング時には、請求項１記載の構成による処理を中止して、ストロボ光用ＡＷＢ制御値を用いたホワイトバランス制御を行うようにすることにより、誤動作を防止することができる。
【００３６】
また、逆光等の特殊なシーンでは請求項１記載の構成による処理を中止し、一様に暗いシーンに対してのみ請求項１記載の構成による処理を行うようにすることにより、誤動作を防止することができる。
【００３７】
また、ストロボ光が到達せず、かつ暗い被写体領域の映像データの輝度レベルを増幅することができるため、映像中の明るさのアンバランスを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態を説明するための電子スチルカメラの構成を示すブロック図である。
【図２】本実施形態の電子スチルカメラにおけるホワイトバランスを主とした動作のタイミングチャートである。
【符号の説明】
３…ＣＣＤ(撮像素子)、 ４…映像信号前処理部、 ５…フレームメモリ、 ６…データ処理部、 ７…データ圧縮／伸長部、 ８…メモリカード、 ９…測色センサ、 10…ストロボ、 11…外部スイッチ、 12…ＣＰＵ(中央演算処理部)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、被写体を電荷結合素子(ＣＣＤ)等の撮像素子によって撮像して光電変換した後、信号処理することにより映像データを得て、この映像データをメモリ手段に記録する電子スチルカメラに係り、特に、そのホワイトバランス制御に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、通常のテレビでは、華氏3200度の色温度にて照明された被写体の色彩が正しく再現されるようになっているが、撮影シーンは太陽下あるいは人工的照明下等のように同一状態でなく、撮影条件，環境によって被写体が多種多様の色温度状態になる。したがって、それぞれの撮影シーンに応じて色彩が適正に再現されるように映像信号を補正する必要がある。この補正を自動的に行うことを自動ホワイトバランス(ＡＷＢ)制御という。
【０００３】
ＡＷＢ制御では、例えば、Ｒ(赤)成分を検出するセンサとＢ(青)成分を検出するセンサとを有し、各センサからの信号を、対数圧縮・減算回路を通してＲ信号とＢ信号との比からなる色温度情報を求め、この色温度情報に応じて各色信号のゲインをコントロールするものである。
【０００４】
一方、ＣＣＤを用いた電子スチルカメラにおいても前記ＡＷＢ制御が用いられているが、ストロボ撮影が行われる場合、被写体におけるストロボ光の到達範囲ではストロボ色の色温度に基づいてＡＷＢ制御が行われ、またストロボ光が到達しない範囲では他の照明光の色温度に基づいてＡＷＢ制御が行われる。
【０００５】
このようにストロボ撮影が行われる場合には色温度を考慮する必要があり、このストロボ撮影時の基準となる色温度の変化に対応するため、種々の装置が提案され、実施されている。例えば、特開平2-288575号公報に記載された電子スチルカメラでは、測距結果により、被写体がストロボ光の十分到達する距離範囲にあれば、ストロボ発光したときの所定のＡＷＢ制御値(ストロボ光用ＡＷＢ制御値)によってホワイトバランス制御を行い、また、被写体がストロボ光が到達しない遠い距離にあれば、ストロボ光の色温度および被写体自体の色温度に基づいて適当なＡＷＢ制御値を設定してホワイトバランス制御を行っている。
【０００６】
さらに、特公平5-75314号公報に記載された撮像装置では、ストロボ撮影時、ストロボ光とは色温度の異なる照明光の光量を検出し、ＡＷＢ制御値を補正している。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平2-288575号公報に記載された電子スチルカメラでは、主被写体の距離に応じてストロボ光用ＡＷＢ制御値または背景の照明用ＡＷＢ制御値のいずれか一方を選択使用してホワイトバランス制御を行うものであるため、ストロボ光が到達する主被写体と、ストロボ光が到達し得ない背景とが混在するシーンにおいては、主被写体あるいは背景のいずれか一方しかホワイトバランスを合わせることができず、撮影画面全体としては適正なホワイトバランスがなされないという問題がある。
【０００８】
また、特公平5-75314号公報に記載された撮像装置では、主被写体と背景との中間的ホワイトバランス制御は行われるが、前記従来の電子スチルカメラと同様に撮影画面全体としては適正なホワイトバランスがなされない場合があるという問題がある。
【０００９】
本発明の目的は、ストロボ光が到達する主被写体とストロボ光が到達し得ない背景とが混在するシーンであっても、撮影画面全体として適正なホワイトバランスが行われる電子スチルカメラを提供することにある。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、被写体を電荷結合素子等の撮像素子によって撮像して光電変換した後、信号処理することにより映像データを得て、この映像データをメモリ手段に記録する電子スチルカメラにおいて、映像データを一時的に保持するフレームメモリと、少なくともストロボ発光して露光させたときの映像データと、ストロボ発光させないで露光させたときの映像データとを、任意の被写体領域ごとに比較してデータの比を求める比較手段と、前記比の値によりストロボ光の寄与度を判定する判定手段と、ストロボ発光させないときのホワイトバランス制御値を決定するホワイトバランス値決定手段と、ストロボ発光して露光させたときの映像データに対して前記判定手段の判定に基づき前記比較した被写体領域ごとに、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値、あるいはストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択して、ホワイトバランス制御を行うホワイトバランス制御手段とを備えたものであって、この構成により、撮像画像の中において任意に設定される被写体領域ごとに、ストロボ発光して露光させたときの映像データと、ストロボ発光させないで露光させたときの映像データとの比を求め、この比の値からストロボ光の寄与度を判定して、ホワイトバランス値決定手段により決定されたストロボ発光させないときのホワイトバランス制御値、あるいはストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を適宜選択して、最終ホワイトバランス制御を行うので、例えば、ストロボ光が到達する主被写体と、ストロボ光が到達しない照明下の背景とが混在するシーンにおいても、主被写体と背景の両方にホワイトバランスが合った良好な撮影が行われる。
【００１１】
また、前記各被写体領域におけるホワイトバランス制御値が、前記判定手段により判定されたストロボ光の寄与度に基づいて、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値から、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値までの間の中より、適宜選択されて設定されるようにすることによって、主被写体と背景の輪郭部とにおけるホワイトバランスの変化をより滑らかにすることができるため、自然なホワイトバランス制御が行われる。
【００１２】
また、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値から、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値までの間の中より、適宜選択される制御値の選択許容幅を規制する規制手段を備えることによって、各被写体領域間において急峻にＡＷＢ制御値が変わってしまうことを防止できるため、輪郭部等でより自然なホワイトバランス制御が行われる。
【００１３】
また、撮像した複数枚の画像の映像データを比較することによって被写体の動きを検知する被写体動検知手段を備え、この被写体動検知手段により被写体の動きが所定量よりも大きいことが検知された場合に、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択してホワイトバランス制御を行うことによって、時間を隔てた映像同士を比較して、被写体が速く動くとき、またはカメラのパニング時には、請求項１記載の構成による処理を行わずに、ストロボ光用ＡＷＢ制御値を用いたホワイトバランス制御を行うことにより、誤動作を防止することができる。
【００１４】
また、ストロボ発光させないときに撮像した画像が略全面にわたって一様に所定量より低光量である場合には、ストロボ発光して露光させたときの映像データに対して前記判定手段における判定の対象である被写体領域ごとに、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値、あるいはストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択し、また撮像した画像が略全面にわたって一様に暗くない逆光等の場合には、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択してホワイトバランス制御を行うようにすることによって、逆光等の特殊なシーンでは請求項１記載の構成による処理を行わずに、一様に暗いシーンに対してのみ請求項１記載の構成による処理を行うようにすることにより、誤動作を防止することができる。
【００１５】
また、前記判定手段によりストロボ光が到達していないと判定され、しかも所定量より低光量である被写体領域における映像データを増幅する増幅手段を備えることによって、ストロボ光が到達せず、かつ暗い被写体領域における映像データの輝度レベルを増幅することができるため、映像中の明るさのアンバランスを解消することができる。
【００１６】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【００１７】
図１は本発明の一実施形態を説明するための構成を示すブロック図であり、１は撮影レンズ、２はシャッタ、３は、受光した被写体像を受光して光電変換し、映像信号を出力するＣＣＤ、４は、ＣＣＤ３からの出力を受けてデジタル信号処理を行うためのＣＤＳ(相関２重サンプリング回路)，アナログ／デジタル変換回路等からなる映像信号前処理部、５は映像データを一時的に保持するＤＲＡＭ等からなるフレームメモリ、６は、フレームメモリ５に対する映像データの書き込み，読み出しの制御、および映像データの比較を行うデータ処理部である。
【００１８】
また、７は映像データを圧縮，伸長するデータ圧縮／伸長部、８は圧縮されたデータを記録する外部記録媒体であるメモリカード、９はＲ信号，Ｂ信号に係る色温度情報を得るための測色センサ、10はストロボ、11は第１レリーズ，第２レリーズ等の外部スイッチ、12は前記各部材を制御するＣＰＵ(中央演算処理部)である。
【００１９】
図１において、ＣＣＤ３は、シャッタ２を介して撮影レンズ１によって結像される被写体像を受け、光電変換して映像信号を映像信号前処理部４に出力する。この映像信号前処理部４によってデジタル信号処理された映像データは、データ処理部６の制御によってフレームメモリ５に書き込まれる。データ処理部６は、フレームメモリ５に対する映像データの書き込み，読み出しの制御、および映像信号前処理部４からの映像データとフレームメモリ５内の映像データとの比較、さらにはフレームメモリ５内の映像データ同士の比較等を行う。前記比較により、後に詳述するように、同一画素に相当するデータ同士の比を求める。この比の値が本発明にて特定するストロボ光の寄与度となる。
【００２０】
ＣＰＵ12は、測色センサ９からのセンサデータによって、ＡＷＢ制御値を決定する。そして、データ処理部６は、少なくとも２つ以上のＡＷＢ制御値をＣＰＵ12から転送可能であり、上述した比較結果に基づいて画素ごとにＡＷＢ制御値を選択し、色ゲインコントロールしてデータ圧縮／伸長部７へ出力する。このデータ圧縮／伸長部７にてデータ圧縮処理を受けた画像データはメモリカード８に記録される。
【００２１】
また、再生時には、ＣＰＵ12がメモリカード８に記録された再生対象の映像データを読み出し、この画像データに対してデータ圧縮／伸長部７にてデータ伸長処理を施し、データ圧縮／伸長部７から出力されたデジタルデータをアナログデータに変換し、再生映像信号として出力する。
【００２２】
図２はホワイトバランス制御を主とした図１の前記構成における動作のタイミングチャートであり、外部スイッチ11による第１レリーズ(RL1)のオンにより、図示しない手段によりＡＥ(自動露光)，ＡＦ(自動焦点)の各制御処理が行われ、しかも、測色センサ９からのセンサデータによりＣＰＵ12は、そのときのＡＷＢ制御値(1)を決定する。ＣＰＵ12は、このＡＷＢ制御値(1)をデータ処理部６に転送する。さらに、暗い撮影シーンであって光量が所定量より低く、ストロボ発光が必要である場合には、予め設定されているストロボ10におけるストロボ光用ＡＷＢ制御値もデータ処理部６に転送する。
【００２３】
つぎに、外部スイッチ11による第２レリーズ(RL2)のオンにより、ストロボ10を発光させ、第１回目の露光を行う。この第１回目の露光時に得られた映像データはデータ処理部６を経てフレームメモリ５に格納される。第１回目の露光の後、ストロボ10を発光させない第２回目の露光を行って映像データを得る。なお、前記ストロボ10を発光させないで露光を行って得た映像データという概念の中には、例えばストロボ光量を小さくして、被写体にほとんどストロボ光が到達しないようにして露光させた場合に得られた映像データも含まれる。
【００２４】
前記第２回目の露光時に得られた映像データと、第１回目の露光により得られた映像データとはデータ処理部６において比較される。すなわち、データ処理部６では、ストロボ10を発光させた第１回目の露光時に得られた映像データをａとし、ストロボ10を発光させない第２回目の露光時に得られた映像データをｂとして、ストロボ光の寄与度であるａ／ｂの値を算出する。
【００２５】
そして、ＣＰＵ12は、ａ／ｂ≒１であれば、その画素はストロボ光が到達していない領域にあり、また、ａ／ｂ≫１であれば、その画素はストロボ光が十分到達している領域にあると判定する。そして、この比較判定結果に基づいて、データ処理部６は、ストロボ光の到達していない画素(被写体領域)には前記ＡＷＢ制御値(1)によって色ゲイン補正し、また、ストロボ光の到達している画素(被写体領域)には前記ストロボ光用ＡＷＢ制御値によって色ゲイン補正して、データ圧縮／伸長部７へデータを出力する。
【００２６】
ストロボ光の寄与度である前記ａ／ｂの値はストロボ光の影響量を表しており、したがって、このａ／ｂの値に対応してＡＷＢ制御値を、ＣＰＵ12によって前記ＡＷＢ制御値(1)乃至ストロボ光用ＡＷＢ制御値間の中より適当な値を選択することにより、より適正なＡＷＢ制御値に基づいてホワイトバランスを行うことが可能である。
【００２７】
また、上述のようにして、画素(被写体領域)ごとにＡＷＢ制御値を適宜選択して変える場合に、ＣＰＵ12によって、その制御値の可変幅を限定することによって、逆光時、あるいは被写体の動きが速いときでも、画素間において急峻にＡＷＢ制御値が変わらないようにすることができるため、誤動作の発生を防止することができる。
【００２８】
被写体の動きが速い場合には、画素ごとの正確な前記比較判定が困難であるため次のような処理を行う。すなわち、データ処理部６によって、前記ストロボ10を発光させた第１回目の露光時に得られた映像データから映像における輪郭等の特徴の抽出を行っておき、ストロボ10を発光させない第２回目の露光時に得られた映像データにおける当該部分と比べることによって、撮影シーンに著しい違い(動き)があったことを検知することが可能であるので、ＣＰＵ12によって、この撮影シーンの違いを検知して動きが速いと判断されたときには、上述のように画素ごとの正確な前記比較判定が困難であるため、ストロボ発光時の画像データおよびストロボ光用ＡＷＢ制御値を用いてデータ圧縮を行うことにし、上述したＡＷＢ制御値(1)あるいはストロボ光用ＡＷＢ制御値を適宜選択する処理は行わないようにする。
【００２９】
また、逆光等の場合、前記ストロボ10を発光させた第１回目の露光と、ストロボ10を発光させない第２回目の露光との間において主被写体が動く等して新たに背景が生じると、その生じた背景からの光とストロボ光の反射により生じた光との前記ａ／ｂの値からでは、ストロボ光の寄与度を正確に判定することができない。そこで、逆光等の特別なシーンのときには、ＣＰＵ12によって、ストロボ光用ＡＷＢ制御値を用いてホワイトバランス制御を行い、逆光等の特別なシーン以外の一様に暗い撮影シーンのときにのみ、上述したＡＷＢ制御値(1)あるいはストロボ光用ＡＷＢ制御値を適宜選択する処理を行うようにする。
【００３０】
さらに、前記データ処理部６にてストロボ光が到達していないと判定された画素(被写体領域)における映像データの光量が、予め定められている所定値よりも少なくて暗い場合には、その映像データを増幅器によって増幅する構成を採用することによって、ストロボ光の当たっている主被写体と背景との明かるさのバランスを、人間の視覚に適応するように合わせるようにすることができる。
【００３１】
なお、前記実施形態においては、ストロボ光の寄与度を画素ごとに比較して求めるとして説明したが、前記比較の方法は、これに限定されるものでなく、例えば静止画圧縮のＪＰＥＧ方式に基づく８×８画素の１ブロック単位ごとに比較するようにしてもよく、このようにブロック単位ごとに比較することによって制御系のハードウェアの構成を簡単にすることができる。
【００３２】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電子スチルカメラによれば、ストロボ発光して露光させたときの映像データと、ストロボ発光させないで露光させたときの映像データとを比較してデータの比を求め、この比の値によりストロボ光の寄与度を判定し、各被写体領域ごとに、ホワイトバランス値決定手段により決定されたストロボ発光させないときのホワイトバランス制御値、あるいはストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を適宜選択して、最終ホワイトバランス制御を行うことにより、例えば、ストロボ光が到達する主被写体と、ストロボ光が到達しない照明下の背景とが混在するシーンにおいても、主被写体と背景の両方にホワイトバランスが合った良好な撮影が行われることになる。
【００３３】
また、主被写体と背景の輪郭部とにおけるホワイトバランスの変化を滑らかにすることができるため、自然なホワイトバランス制御を行うことができる。
【００３４】
また、被写体領域間において急峻にＡＷＢ制御値が変わってしまうことを防止することができるため、輪郭部等でより自然なホワイトバランス制御を行うことができる。
【００３５】
また、時間を隔てた映像同士を比較して、被写体が速く動くとき、またはカメラのパニング時には、請求項１記載の構成による処理を中止して、ストロボ光用ＡＷＢ制御値を用いたホワイトバランス制御を行うようにすることにより、誤動作を防止することができる。
【００３６】
また、逆光等の特殊なシーンでは請求項１記載の構成による処理を中止し、一様に暗いシーンに対してのみ請求項１記載の構成による処理を行うようにすることにより、誤動作を防止することができる。
【００３７】
また、ストロボ光が到達せず、かつ暗い被写体領域の映像データの輝度レベルを増幅することができるため、映像中の明るさのアンバランスを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態を説明するための電子スチルカメラの構成を示すブロック図である。
【図２】本実施形態の電子スチルカメラにおけるホワイトバランスを主とした動作のタイミングチャートである。
【符号の説明】
３…ＣＣＤ(撮像素子)、 ４…映像信号前処理部、 ５…フレームメモリ、 ６…データ処理部、 ７…データ圧縮／伸長部、 ８…メモリカード、 ９…測色センサ、 10…ストロボ、 11…外部スイッチ、 12…ＣＰＵ(中央演算処理部)。
Claims (6)
- 被写体を電荷結合素子等の撮像素子によって撮像して光電変換した後、信号処理することにより映像データを得て、この映像データをメモリ手段に記録する電子スチルカメラにおいて、
映像データを一時的に保持するフレームメモリと、
少なくともストロボ発光して露光させたときの映像データと、ストロボ発光させないで露光させたときの映像データとを、任意の被写体領域ごとに比較してデータの比を求める比較手段と、
前記比の値によりストロボ光の寄与度を判定する判定手段と、
ストロボ発光させないときのホワイトバランス制御値を決定するホワイトバランス値決定手段と、
ストロボ発光して露光させたときの映像データに対して前記判定手段の判定に基づき前記比較した被写体領域ごとに、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値、あるいはストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択して、ホワイトバランス制御を行うホワイトバランス制御手段とを備えたことを特徴とする電子スチルカメラ。 - 前記各被写体領域におけるホワイトバランス制御値は、前記判定手段により判定されたストロボ光の寄与度に基づいて、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値から、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値までの間の中より、適宜選択されて設定されることを特徴とする請求項１記載の電子スチルカメラ。
- 前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値から、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値までの間の中より、適宜選択される制御値の選択許容幅を規制する規制手段を備えたことを特徴とする請求項２記載の電子スチルカメラ。
- 撮像した複数枚の画像の映像データを比較することによって被写体の動きを検知する被写体動検知手段を備え、この被写体動検知手段により被写体の動きが所定量よりも大きいことが検知された場合に、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択してホワイトバランス制御を行うようにしたことを特徴とする請求項１記載の電子スチルカメラ。
- ストロボ発光させないときに撮像した画像が略全面にわたって一様に所定量より低光量である場合には、ストロボ発光して露光させたときの映像データに対して前記判定手段による判定の対象である被写体領域ごとに、前記ホワイトバランス値決定手段によって決定されたホワイトバランス制御値、あるいはストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択し、また撮像した画像が略全面にわたって一様に暗くない逆光等の場合には、ストロボ発光させたときの所定のホワイトバランス制御値を選択してホワイトバランス制御を行うようにしたことを特徴とする請求項１記載の電子スチルカメラ。
- 前記判定手段によりストロボ光が到達していないと判定され、しかも所定量より低光量である被写体領域における映像データを増幅する増幅手段を備えたことを特徴とする請求項１記載の電子スチルカメラ。
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