JP3524273B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット記録方法

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JP3524273B2
JP3524273B2 JP19520896A JP19520896A JP3524273B2 JP 3524273 B2 JP3524273 B2 JP 3524273B2 JP 19520896 A JP19520896 A JP 19520896A JP 19520896 A JP19520896 A JP 19520896A JP 3524273 B2 JP3524273 B2 JP 3524273B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクを吐出口
(オリフィス)から小液滴として吐出及び飛翔させ、こ
の小液滴の被記録材への付着にて記録を行うインクジェ
ット記録装置におけるインクジェット記録ヘッドの駆動
方法、及びこの方法を利用したインクジェット記録方法
に関し、特に、滲み(フェザリング)及び異なる色間で
の混色滲み(ブリーディング)を解消し、且つ高発色を
実現するインクジェット記録ヘッドの駆動方法及びイン
クジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、インクジェット記録用のイン
クとしては、安全性及び臭気等の面から水性インクが主
流であり、各種の水溶性染料又は顔料を、水、又は水と
水溶性有機溶媒とからなる液媒体に溶解又は分散させ、
更に必要に応じて、保湿剤、染料溶解助剤及び防かび剤
等を添加したインクが知られている。
【0003】又、インクジェット記録は、毎秒数千滴以
上のインクを吐出することが可能であり、高速記録が容
易であること、騒音が少ないこと、カラー化が容易であ
ること、高解像度化が可能であること、普通紙記録が可
能であること等の多くの長所を持っており、数年来普及
が目覚ましい。
【0004】更に近年のパソコンの低価格化、高性能
化、GUI環境の標準化により、プリンター等の画像記
録も、高発色、高品位、高堅牢性、高解像度記録、高速
記録の要求が高まり、色材成分を出来るだけ紙の表面へ
残し、記録ドットのエッジを鮮明にし、フェザリング及
びブリーディング等を少なくするという技術思想が提案
されつつある。
【0005】従来より知られているフェザリング及びブ
リーディングを抑制する手段としては下記の種々の方法
がある。先ず第1の例として、特開昭58−13675
号公報には、ポリビニルピロリドンをインク中に添加
し、記録ドットの紙への吸収と広がりを制御する方法
が、又、第2の例として特開平3−172362号公報
には、特定のマイクロエマルションをインク中に添加し
てインクの吸収とドットの広がりを制御する方法が開示
されている。
【0006】更に、ゾル−ゲル転移現象をインクに適用
した第3の例として、特開昭62−181372号公
報、特開平1−272623号公報等には、室温でゲ
ル、加熱によりゾル状態となり、そのゾル状態で被記録
材に記録し、インクの冷却によりゲル状態へ戻る為、イ
ンクの紙への浸透を抑制出来るとしている。
【0007】又、最近の第4の例として、特開平6−4
9399号公報には、可逆的熱ゲル化特性を有する化合
物をインクに添加し、良好な発色性、定着性、滲みが少
なく、且つ、印字物の保存性及び信頼性にも優れたイン
ク、かかるインクを用いたインクジェット記録方法及び
機器が開示されている。この技術的背景は、特定の水溶
性高分子の水溶液を加熱してゆくと水溶性が低下し溶液
が白濁する(この温度を曇点という。)現象に基づくも
のである。代表的な上記水溶性高分子としては、例え
ば、N−イソプロピルアクリルアミド、ポリビニルメチ
ルエーテル、ポリエチレンオキシド及びヒドロキシプロ
ピルセルロース等が挙げられる。これらの高分子はその
溶解度が負の温度係数を持っている為、曇点以上の温度
では溶液から分離析出した状態となる。その析出状態で
は疎水的なミクロゲルが生成し溶液の粘度が低下する。
析出状態で被記録材上へ記録を行うと、被記録材表面で
の温度降下により元の粘度に戻る;即ち、インクが増粘
して、被記録材への浸透を抑制出来るとするものであ
る。
【0008】一方、第5の例として、M.Croucherらは、
従来の均一系インクの問題点を指摘すると共に、将来の
インクジェット用インクとして、ラテックスを利用した
不均一系のインクを提案している(M.D.Croucher and
M.L.Hair;Ind.Eng.Chem.Res.1989,28,1712-1718 "Desig
n Criteria and Future Directions in Inkjet InkTech
nology" )。
【0009】一方、米国特許4,246,154号明細
書には、(1)染料で着色したビニルポリマーの微粒子
をアニオン的に安定化したインクが開示されている。
又、米国特許4,680,332号明細書には、(2)
油溶性染料を含み、非イオン性安定剤が結合した水不溶
性ポリマーを液媒体に分散した不均一インクが開示され
ている。更に、米国特許5,100,471号明細書に
は、(3)溶剤と、ポリマーコアと染料が共有結合した
シリカシェルからなる着色粒子とからなる水性インクが
提案され、紙上でより鮮明な色が形成されること、温度
に安定なこと、耐水性が高い等の特徴を有している。
【0010】一方、第6の例として、非水性インクとし
て特開平3−240586号公報には、分散媒に膨潤す
る樹脂により被覆された着色粒子をケロシン等に分散さ
せたものが提案されている。この提案では特に画像の滲
み防止及び液滴吐出用ノズルの目詰まり防止に効果があ
るとしている。
【0011】
【発明が解決しようとしている課題】以上に述べた従来
例の第1及び第2の例は、紙への浸透を抑制する為、イ
ンクが紙上で浸透せずに残る時間が長く定着性に問題が
ある。又、ブリーディングが発生してしまう問題もあ
る。第3の例は、ゾル−ゲル転移インクが印字物の保存
温度変化で流動性が出ることがあり、画像の流れ出しに
よる混色汚損、転写汚損の問題がある。
【0012】第4の例は、可逆的熱ゲル化化合物含有イ
ンクでは、水溶性セルロースエーテル類を使用する為、
温度降下による粘度上昇が緩慢でインクジェット記録の
様に1画素を数10msec以下で高速に記録する方法
には不向きである。又、インクジェット記録に使用する
には、インク吐出時の粘度の上限が20mPa・sec
以下と低粘度で用いなければならず、充分な増粘効果を
得ることが困難である。
【0013】一方、第5の例のうち、(1)アニオン的
に安定化したインクでは、安定分散するpH領域が狭
く、染料の選択範囲が小さいという問題がある。又、記
録ドットの紙上での広がりが小さく、必要な光学濃度
(OD値)を得にくいという欠点もある。更に、高速記
録に必要な定着時間の短縮という点では、従来の画像形
成手段と同様に定着が蒸発、浸透にのみ依存している
為、十分な効果が得られない。
【0014】又、(2)油溶性染料を含み、非イオン性
安定剤が結合した水不溶性ポリマーを分散したインクで
は、染料の選択範囲が拡大するものの、上記と同様に蒸
発と浸透に依存した定着機構であるから定着時間の短縮
に十分な効果が得られない。又、ブリーディングについ
ても隣接ドット間で定着に時間がかかる為に不利であ
る。
【0015】更に、(3)ポリマーコア/シリカシェル
構造の分散インクでは、顔料の分散安定性という点では
優れているが、色材の紙表面での凝集に特別の手段を持
たない為、光学濃度が充分でないという問題がある。
又、画像の定着手段が蒸発と浸透にのみ依存しているの
で定着時間の短縮に十分な効果が得られず、ブリードを
起こすという問題もある。尚、上記の3例に共通してい
る問題としては、紙表面への色材粒子の付着について考
慮されていない為、記録画像の擦過性が悪いということ
が挙げられる。
【0016】又、第6の例においては、分散媒にケロシ
ンを用いるので臭気や安全性等に問題がある。
【0017】ここで、インクの紙への転移について考え
る。一般に、液体の紙への転移現象については、Lucas-
Washburnの式が知られており、液体の転移量をV、紙の
粗さ指数をVr、吸収係数をKa、転移時間をT、濡れ開
始時間をTwとすると、液体が水の場合、下記式(2)
の様に表すことが出来る。
【0018】 [式(2)において、Kaは紙とインクの両方の物性に
関するもので次式(3)で表わされる。
【0019】 [式(3)において、rは毛管半径、γは液体の表面張
力、θは接触角、ηは液体の粘度である。]]
【0020】式(2)から、色材を紙の表面へ残すに
は、出来るだけ液体の浸透を遅くする;即ちKaを小さ
くすることが必要である(Kaを小さくすることで蒸発
の時間がかせげる。)。その為のインク物性としては、
表面張力を小さく、粘度を大きく、接触角を大きくすれ
ばよいことがわかる。しかしながら、インクジェット記
録用のインク物性には制約があるのでKaの調節は容易
ではない。
【0021】一方、液体が非水系の溶媒、例えば、エタ
ノール等である場合には、式(2)中の濡れ時間Tw
無視出来るので定着を早く出来るが、Kaも大きくなっ
て浸透の効果が大きい為、画像としては“フェザリン
グ”が多くなってしまう。更に、式(3)中、cosθ
の項は、インクと紙との組み合わせで決まるものである
から用紙の種類によっては良かったり、悪かったりす
る。即ち、用紙の非選択性を満足出来ない。以上述べた
問題は、従来の色材分散インクであっても、記録画像の
定着手段が浸透と蒸発にのみ依存している限り起こり得
ることと考えられる。
【0022】従って、本発明の目的は、画像形成におけ
るインクの紙への定着手段が蒸発と浸透のみに依存せ
ず、高い光学濃度を得ながら、フェザリングやブリーデ
ィングの問題を解決出来るインクジェット記録ヘッドの
駆動方法及びこの方法を利用したインクジェット記録方
法を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記目的は以下の本発明
によって達成される。即ち、本発明は、記録信号に応じ
て記録ヘッド内の加熱素子を加熱させ、素子に接触し
ているインクを加熱発泡させて記ヘッドからインクを
吐出させ、このインクを以て記録を行うインクジェット
記録方法において、記インクが、転移温度において水
溶液から相分離する熱可逆型増粘性高分子化合物と色材
とを含む、加熱により急激な粘度変化を生ずる液媒体で
あり、上記熱可逆型増粘性高分子は、窒素含有環を有す
る活性水素化合物のアルキレンオキシド付加物とビニル
系カルボン酸とのエステルを構成単位として50重量%
以上含有するビニル系重合体であり、上記加熱素子表面
から前記インクへの平均熱流束(qO)が下記関係式
(1)を満たす様に前記ヘッドを駆動することを特徴と
するインクジェット記録方法である。 [但し、式中κは熱伝導率、Sは加熱素子の有効面積、
Vは1回の駆動で吐出されるインクの体積、TBは気泡
を生じるインクの温度、TOは吐出前のインクの温度、
Pはインクに急激な粘度変化を生じるインクの転移温
度、αは補正定数:1.5である。]
【0024】
【発明の実施の形態】本発明者らは前述の様な制約は、
インクが温度によらず色材と溶媒とが均一な状態の液体
であることに起因するとして、温度をトリガーにして状
態変化を起こし、被記録材上では色材と溶媒とが分離し
て挙動するインクを用い、そのインクを効率的に飛翔さ
せる方法を提案した。
【0025】本発明による記録画像の性能向上に関する
説明は、主として、インク中の熱可逆型増粘性高分子材
料の状態変化について行う。ここで熱可逆型増粘性高分
子とは、熱可逆的に転移温度以上で水溶液から相分離す
る高分子材料をいう。熱可逆型増粘性高分子の状態変化
とは、室温ではインク中で溶解解離している該高分子
が、一定の温度(転移温度)以上になると該高分子同士
が会合を起こし濃厚な高粘度液体となり、且つ色材が該
高分子に結合している状態を形成する。この状態で被記
録材上へ記録することによって、濃厚な色材相が被記録
材表面に残り、希薄な溶媒相が被記録材中へ浸透する
為、優れた発色性とブリーディングの防止、更には記録
画像のエッジのシャープさと、記録安定性とを実現する
ものである。上記の状態変化は記録する時の広範囲な環
境温度に対応させる為には、可逆的であることが条件と
なる。
【0026】しかしながら、実用上、広範囲な温度範囲
に対する信頼性を要求されない場合、例えば本発明に使
用するインクを用いた印字の為の機器の内部温度が、か
かる高分子材料が状態変化を起こす温度を超えないこと
が明らかな場合には、必ずしも状態変化が可逆的である
高分子材料を用いることが必要な訳ではない。ある定ま
った温度領域以上で状態変化を起こし、増粘又はゲル化
を起こすことが本発明の要件であり、可逆的であること
は必ずしも要件ではない。例えば、特開昭63−239
81号公報に開示されている様な72℃で変性し、弾性
体的にゲル化する卵白アルブミン等の蛋白質を用いたイ
ンク等にも本発明にかかるインクジェット記録ヘッドの
駆動方法は有効である。以下、本発明の具体的な説明に
は、主として熱可逆型増粘性高分子を用いるインクを例
として示すが、この高分子材料が本発明に使用するイン
クへの適用物質の種類や使用温度の範囲を制限するもの
ではない。
【0027】実際にインクジェット方式によって記録す
る場合には、記録ヘッドからのインクの小液滴の吐出時
には、インクは低粘度の方が高速記録に有利である為、
記録装置の動作時にはインクを粘度の低い状態で吐出さ
せ、被記録材を転移温度以上に加熱しておき、この被記
録材上に記録することによって上記した現象を実現させ
ることも考えられる。
【0028】この場合は、『インクの温度<被記録材の
温度』である為、インクが被記録材表面に付着した瞬間
は、被記録材の表面が冷却される為、インクが転移温度
に上昇するのに僅かな時間遅れが生じる。そして温度が
上昇するまでの間はインクの粘度が低粘度に保たれる
為、Lucas-Washburnの式に従って被記録材中にインクが
浸透する。この結果、最初からインクの温度を上昇さ
せ、色材の全てを被記録材表面に残した場合には、記録
画像の擦過性に問題が生じる虞れがあるが、上述の如き
方法によればこの擦過性の問題が解消される。しかしな
がら、被記録材を予め加熱する為の装置が必要となるば
かりでなく、この様な装置は大きな熱容量を持ち、更に
放熱の面積も大きくなる為、目的とする被記録材の加熱
に対して極めて熱効率が悪くなる。
【0029】更に上で述べた加熱時間遅れ以外に、たと
えインクが転移温度以上に加熱されていたとしても実際
にインクが状態変化を起こすには、相当の時間を要す
る。短時間の内に常温のインクを転移温度以上に加熱し
たとしても、瞬時的に高分子の会合が起こるわけではな
く、必ず時間遅れが生ずるからである。このことは逆
に、瞬時的に吐出インクの平均温度を転移温度以上に加
熱する熱エネルギーを吐出前に加えても粘度上昇その他
の性質変化が直ちに現れるわけではなく、殆ど吐出性能
に障害を及ぼさないことを意味する。従って、この場合
の効果は上述の被記録材を予め加熱しておいた場合と殆
ど変わらない。
【0030】このインクの状態変化を生じる転移温度
は、記録装置が通常使用される環境温度(室温)よりも
高く、且つ温度によるインクの増粘を効果的にする(状
態変化の前後の温度差を大きくする)為に、35〜10
0℃の範囲とするのが望ましい。100℃を超えると、
インク中の水分の蒸発による著しい増粘を引き起こして
しまい好ましくない。
【0031】次に好ましい実施態様を挙げて本発明を更
に詳細に説明する。本発明のインクに含まれる熱可逆型
増粘性高分子は、その水溶液、或いは水懸濁液等が一定
の温度(転移温度)以上で増粘し、且つ、この温度−粘
度の関係が可逆的な高分子であり、窒素含有環を有する
活性水素化合物のアルキレンオキシド付加物のビニル系
カルボン酸エステル(a)を構成単位として50重量%
以上含有する水溶性ビニル系重合体(A)である。
【0032】上記の窒素含有環を有する活性水素化合物
は、窒素含有環とアルキレンオキシドが付加する為の活
性水素を有する化合物であり、具体的には、窒素含有脂
環式化合物としては、アジリジン環を有するものとし
て、アジリジン、2−メチルアジリジン;ピロリジン環
を有するものとして、ピロリジン、2−メチルピロリジ
ン、2−ピロリドン、スクシンイミド;ピペリジン環を
有するものとして、ピペリジン、2−メチルピペリジ
ン、3,5−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジ
ン、4−ピペリジノピペリジン、4−ピロリジノピペリ
ジン、エチルピペコリネート;ピペラジン環を有するも
のとして、1−メチルピペラジン、1−メチル−3−エ
チルピペラジン;モルホリン環を有するものとして、モ
ルホリン、2−メチルモルホリン、3,5−ジメチルモ
ルホリン;及びε−カプロラクタム等が挙げられる。
又、窒素含有不飽和環状化合物としては、3−ピロリ
ン、2,5−ジメチル−3−ピロリン、2−ヒドロキシ
ピリジン、4−ピリジルカルビノール、2−ヒドロキシ
ピリミジン等が挙げられる。これらのうち好ましいもの
は窒素含有脂環式化合物であり、更に好ましくはピペリ
ジン環を有するもの及びモルホリン環を有するものであ
り、最も好ましいものはモルホリン環を有するものであ
る。又、上記したアルキレンオキシドとしては、具体的
には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチ
レンオキシドが好適である。
【0033】本発明の実施例において、上記した様な熱
可逆型増粘性高分子の転移温度の調節は、これらのアル
キレンオキシドの種類や付加モル数を調節することで容
易に行うことが出来る。例えば、エチレンオキシドを使
用した場合は、付加モル数を多くすると転移温度は上昇
し、プロピレンオキシドやブチレンオキシドを使用した
場合は、逆に付加モル数を多くすると転移温度は低下す
る。アルキレンオキシドの付加モル数としては1〜20
モルが好ましく、より好ましくは1〜5モルである。
【0034】本発明で用いられる水溶性ビニル系重合体
(A)の構成単位であるビニル系カルボン酸エステル
(a)は、上述の窒素含有環を有する活性水素化合物の
アルキレンオキシド付加物とビニル系カルボン酸とのエ
ステルであるが、本発明で使用するビニル系カルボン酸
としては、アクリル酸、メタクリル酸(以下、これらを
纏めて(メタ)アクリル酸と略す)、マレイン酸、ビニ
ル安息香酸及びこれらの誘導体が挙げられ、特に好まし
くは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸誘導
体が挙げられる。
【0035】又、上記した様な、窒素含有環を有する活
性水素化合物のアルキレンオキシド付加物とビニル系カ
ルボン酸とのエステル(a)を構成単位とする水溶性ビ
ニル系重合体(A)は、上記ビニル系カルボン酸エステ
ル(a)1種類以上の重合体、又は、上記ビニル系カル
ボン酸エステル(a)1種類以上と他のビニル系モノマ
ー(b)との共重合体であり、ビニル系カルボン酸エス
テル(a)1種類以上をその構成単位として50重量%
以上含有すればよい。
【0036】この際に使用される他のビニル系モノマー
(b)としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレー
ト、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレー
ト、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル
(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリド
ン、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、スチレ
ンスルホン酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)
アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メ
タ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチ
ル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレ
ート、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロ
ヘキシル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニ
トリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ブタジエ
ン、イソプレン等が好適である。
【0037】尚、ビニル系重合体(A)を構成するモノ
マーのうち、ビニル系カルボン酸エステル(a)の構成
比によって、増粘の温度幅が変化する。その温度幅を出
来る限り小さくする為、ビニル系カルボン酸エステル
(a)の構成比をビニル系重合体(A)全体の50重量
%以上とし、より好ましくは70重量%以上とする。
【0038】上記の熱可逆型増粘性高分子を水溶液とし
た場合、一定の転移温度迄は温度上昇に伴って粘度は低
下するが、転移温度を超えると高い匂配で粘度は上昇す
る。更に、温度−粘度関係がヒステリシスを殆ど持たな
い特徴がある。又、その5重量%水溶液を1℃/min
の昇温速度で加熱したとき、その粘度の匂配が転移温度
以上で40mPa・sec/℃以上となる様にすれば、
被記録材上での十分な増粘効果が得られる。又、転移温
度は前述の様に、熱可逆型増粘性高分子を構成するビニ
ル系カルボン酸エステル(a)中のアルキレンオキシド
の種類や付加モル数を変化させることで容易に任意の温
度に調整できる為、温度上昇特性がその形態や記録方法
等によって変化する種々の記録ヘッドに適用可能であ
る。但し、転移温度はインク中の塩、界面活性剤、溶剤
等の添加成分の種類、量等によって変化するので、適用
するインク組成全体として転移温度を調整する必要があ
る。
【0039】図1に、熱可逆型増粘性高分子の5重量%
水溶液の温度と粘度との関係図の一例を示す。この時用
いた熱可逆型増粘性高分子は、2−(2−モルホリノエ
トキシ)エチルメタクリレート[モルホリンのエチレン
オキシド2モル付加物とメタクリル酸とのエステル]1
00重量部と、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチル
バレロニトリル)0.1重量部とをアンプルに加え、凍
結脱気後密閉し、60℃で8時間重合させて得たもので
ある。図中実線は水溶液を1℃/minで昇温させた場
合、点線は1℃/minで降温させた場合であり、転移
温度は46℃である。
【0040】本発明の実施例において、添加する熱可逆
型増粘性高分子の分子量及び添加量は常温状態でインク
ジェット記録用インク粘度の許容範囲(1〜20mPa
・sec)内に収める必要があり、重量平均分子量は1
万以上100万以下の範囲が好ましい。ここで、分子量
が100万を越えると分子鎖が長くなりすぎ、再溶解速
度が低下したり、曳糸性が出るので好ましくない。上記
範囲内で分子量が1万程度の場合は増粘効果が弱いので
添加量を多くする必要があり、好ましくは2〜10重量
%である。又、同様に分子量が100万程度の場合は、
少量の添加で十分な増粘効果を示し、好ましい添加量は
0.005〜3重量%である。尚、分子量が異なるもの
を混合使用しても本発明の効果は十分に得られる。
【0041】又、本発明の説明に用いるインクは前記熱
可逆型増粘性高分子を含有すれば充分な記録特性を得ら
れるが、更に転移温度以上でのより一層の増粘効果の向
上の為には、該インクに疎水性微粒子分散体を含有させ
ることが有効である。即ち、転移温度以上では熱可逆型
増粘性高分子の水和性が低下し疎水的状態になるが、こ
の状態の時にアクリルエマルションの様な疎水性(ポリ
マー)微粒子分散体が共存すると、熱可逆型増粘性高分
子と疎水性微粒子分散体との親和力が該高分子と水との
親和力に勝る為、該高分子が溶液中に分散している前記
微粒子分散体を巻き込んで会合することにより、系全体
が該高分子単独の場合よりも増粘するからである。該微
粒子分散体の共存による増粘効果の上昇率は、使用する
微粒子分散体や分散剤の種類及び添加量によって変動す
るが、本発明者らの実験では、10〜50%程度の増粘
効果の上昇が確認された。
【0042】本発明に使用可能な疎水性微粒子分散体と
しては、アクリル系エマルション、スチレン−アクリル
系エマルション、スチレン−ジビニルベンゼン系エマル
ション、ウレタン系エマルション、シリコーン−アクリ
ル系エマルション等が挙げられ、固形分が8〜40重量
%で、粒子径が10〜80nm、pHが6.0〜8.5
の上述の如き疎水性ポリマーを、インク中に0.1〜1
0重量%添加するとよい。尚、該ポリマーは耐熱性及び
硬度が高いものを選択すべきであり、更に架橋度が高い
もの程インクジェット記録方式には適している。特にイ
ンクに熱エネルギーを作用させて記録を行う方法では、
該ポリマーの耐熱温度が主たるインク溶媒である水の臨
界温度以上であることが望ましく、具体的には、10%
減量温度Tbが300℃以上のポリマーが好ましい。上
記エマルションの中では特に架橋度が高いスチレン−ジ
ビニルベンゼン系(Tb=380℃)が好適である。
【0043】次に、本発明において使用するインクに含
まれる色材について説明する。先ず、第1の色材とし
て、染料について説明する。本発明に使用可能な染料と
しては、本発明で使用する熱可逆型増粘性高分子と相互
作用を起こし、転移温度以上で高分子鎖の会合を促進す
るものであればよく、直接染料、酸性染料、食用染料、
塩基性染料、反応性染料等が挙げられる。これらは大部
分の疎水性色素骨格と数個のスルホン酸塩(−SO
3M)、カルボン酸塩(−COOM)、アンモニウム塩
(NH4X)等の可溶化基及び水素結合性の水酸基(−
OH)、アミノ基(−NH2)、イミノ基(−NH−)
等を持ち、本発明の熱可逆型増粘性高分子と複合体を形
成することが出来る。
【0044】尚、分散染料はそれ自体は水不溶性である
が、分散剤としてナフタレンスルホン酸塩等の多環系ア
ニオン性界面活性剤と併用する為、染料の見掛けのイオ
ン性は直接染料と同じくアニオン性であり上記染料と同
様使用可能である。
【0045】染料の具体例としては、例えば、C.I.Dire
ct Black17、C.I.Direct Black19、C.I.Direct Bla
ck62、C.I.Direct Black154、C.I.Food Black2、
C.I.Reactive Black5、C.I.Acid Black52、C.I.Proj
et Fast Black2等のブラック染料;C.I.Direct Yellow
11、C.I.Direct Yellow44、C.I.Direct Yellow8
6、C.I.Direct Yellow142、C.I.Direct Yellow33
0、C.I.Acid Yellow3、C.I.Acid Yellow38、C.I.Ba
sic Yellow11、C.I.Basic Yellow51、C.I.Disperse
Yellow3、C.I.Disperse Yellow5、C.I.Reactive Yel
low2等のイエロー染料;C.I.Direct Red227、C.I.D
irect Red23、C.I.Acid Red18、C.I.Acid Red5
2、C.I.Basic Red14、C.I.Basic Red39、C.I.Disp
erse Red60等のマゼンタ染料;C.I.Direct Blue1
5、C.I.Direct Blue199、C.I.Direct Blue168、
C.I.Acid Blue9、C.I.Acid Blue40、C.I.Basic Blue
41、C.I.Acid Blue74、C.I.Reactive Blue15等の
シアン染料等を挙げることが出来る。これらの染料以外
でも、可溶化基を減らして耐水性を高めたもの、溶解度
をpHの変化に敏感にした特殊なグレードのもの等、何
れも本発明で使用することが可能である。染料のインク
中における濃度としては、溶解度の範囲内で自由に選択
可能で、通常はインク全体の1〜8重量%の範囲が好ま
しく、布、金属(例えば、アルマイト)等への記録には
3〜10重量%の範囲が好ましく、更に記録画像に濃淡
が必要な場合は0.1〜10重量%の範囲が好ましい。
【0046】又、第2の色材としては、カーボンブラッ
ク及び有機顔料も本発明において使用することが可能で
ある。これらの色材は前記分散染料と同様に分散剤を併
用する為に、本発明の高分子化合物と分散剤を介して相
互作用をなし得るものである。この様なカーボンブラッ
ク及び有機顔料はインクジェット記録用に適合したもの
であれば使用出来、中でも黒色インクに用いるカーボン
ブラックは、ファーネス法又はチャネル法で製造された
ものであって1次粒子径が10〜40mμ、BET法に
よる比表面積が50〜300m2/g、DBP吸油量が
40〜150ml/100gのものが望ましい。この様
なものの具体例としては、カーボンブラック(三菱化学
(株)製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、N
o.45、No.52、MA7、MA8、#2200B、コロンビヤカーボン
社製のRaven1255、Raven1060、キャボット社製Regal330
R、Regal660R、Mogul L、DEGUSSA社製のColor Black FW
18、Printex 35、Printex U等)、カーボンブラックの
表面を酸化処理、或いはプラズマ処理したもの、不溶性
アゾ顔料、溶性アゾ顔料、フタロシアニン系顔料、イソ
インドリノン系高級顔料、キナクリドン系高級顔料、ジ
オキサンバイオレット、ペリノン・ペリレン系高級顔料
等の有機顔料を使用することが出来る。尚、上記顔料に
分類される色材材料として、染料を体質顔料に染めつけ
た、所謂染色レーキも本発明の色材として使用可能であ
る。
【0047】更に、第3の色材としては、微粒子の表面
に染料を結合させて染料を水不溶性とした色材微粒子を
挙げることが出来る。ここで説明する色材微粒子とは、
シェルの表面に反応性基を有するコア/シェル構造の有
機微粒子に染料が化学結合したものであり、その反応性
基が、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシド
基、アミド基、ヒドロキシメチル基及びイソシアナート
基の中から選択されるものである。
【0048】コア/シェル構造の有機微粒子のコアの部
分は、高架橋度のスチレン−ジビニルベンゼン系のポリ
マーであり、その表面のシェルに前述の反応性基を導入
したものを使用する。シェルの厚さは染料で充分染着さ
れる様に微粒子径の30%程度が好ましい。コア/シェ
ル構造の有機微粒子の具体例としては、日本合成ゴム
(株)製微粒子分散体S2467が好適である。特に本
発明において色材として用いるには、S2467の性状
は粒子径10nm〜80nm、固形分10重量%のもの
を選択する。この有機微粒子の表面のシェルをアミノ基
で表面変性したものは、例えば、直接染料等の様にアニ
オン性色素イオンとイオン性結合を形成し、染料で染着
することが容易に出来る。又、この有機微粒子の表面の
シェルをカルボキシル基で変性すれば、塩基性染料の様
なカチオン性色素イオンを持つ染料とイオン性の結合を
形成し該シェルを染着出来る。染着後の色材微粒子は先
に述べた有機顔料と同様な取り扱いをすることにより本
発明の色材として使用可能となり、又、疎水性微粒子分
散体を添加した場合にも同様に増粘効果が向上する。
【0049】尚、これ迄述べた3種類の色材はそれぞれ
単独で用いてもよいが、色材微粒子と染料を混合して使
用するか、或いは色材微粒子とカーボンブラック又は有
機顔料とを混合して使用すると、染料のみを使用する場
合等より耐水性が向上し、記録画像の堅牢性を高めるこ
とが可能であると共に、増粘効果の上昇による高発色や
粒子を含有することによる記録ドットのエッジがよりシ
ャープになる等、記録画像の一層の品位向上を図ること
が出来る。
【0050】本発明において使用するインクを構成する
上記した成分を、溶解又は分散する液媒体としては、水
又は水と水溶性有機溶剤との混合物を使用する。本発明
のインクに使用される具体的な水溶性有機溶剤の例とし
ては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセト
アミド等のアミド類;アセトン等のケトン類;テトラヒ
ドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレン
グリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキ
レングリコール類;エチレングリコール、プロピレング
リコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコー
ル、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等の
アルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレング
リコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチ
ル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノ
メチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコー
ルモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコー
ルの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリ
ドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、トリ
エタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルフォキサ
イド、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等の環状ア
ミド化合物及びスクシンイミド等のイミド化合物等が挙
げられる。
【0051】以上の様な構成の本発明において使用する
インクには、信頼性及び保存安定性等、より優れたイン
クジェット記録適性を付与する為に、次に挙げる様な、
保湿剤、或いは溶解助剤を含有させてもよい。この様な
材料として、1,2−エタンジオール、1,2−プロパ
ンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタ
ンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタン
ジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタン
ジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−
2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキ
サンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、ト
リエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポ
リエレングリコール200、ジプロピレングリコール、
2,2’−チオジエタノール、1,2,6−ヘキサント
リオール等のアルキレングリコール類;モノエタノール
アミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等
のアルコールアミン類;ジメチルホルムアミド、ジメチ
ルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、
1,3−プロパンスルホン等の非プロトン性極性溶媒;
1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタ
ン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコール
ジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエー
テル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2−メ
トキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メ
トキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノー
ル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチ
レングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコ
ールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ
メチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエ
ーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキ
シ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプ
ロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレン
グリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコ
ールメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキル
エーテル類;その他ホルムアミド、2−ピロリドン、N
−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾ
リジノン、ソルビトール、尿素、1,3−ビス(β−ヒ
ドロキシエチル)尿素等が挙げられる。これらの添加剤
のインク中における含有量は、インク全量の1〜30重
量%の範囲とするのが好ましい。
【0052】又、インクジェット記録に上記インクを使
用する際に、メタノール、エタノール、プロパノール、
2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等
のアルキルアルコールを含有させると吐出性が向上し、
更に効果的である。これらのアルコール類は、インク全
量の1〜10重量%の範囲で含有させることが好まし
い。本発明においては、更に必要に応じて、界面活性
剤、pH調整剤、防錆剤、防かび剤及び酸化防止剤等の
添加剤をインク中に含有させることも可能である。
【0053】次にかかるインクを吐出して記録する為の
手段について説明する。本発明の効果は、上述の気泡を
発生させてインクに運動エネルギーを加えて吐出させる
際に、吐出インクの平均温度を既に述べてきた転移温度
以上に到達せしめることにより達成され、この方法は別
途紙を加熱する等の方法に比較して効率的である。しか
しながら、従来行われてきた加熱方法では充分に熱エネ
ルギーをインクに加えることが出来ない。
【0054】以下、本発明の基本原理について述べる。
表面境界から一定熱流束が発生している半無限の一次元
の熱伝導は以下の式(4)で表される。 [式中xは加熱素子表面から垂直な方向に隔たったイン
ク内部の位置座標、tは熱流束が発生し始めてからの時
刻、Tはその位置及び時刻でのインクの温度、T0は加
熱開始以前のインクの温度、q0は加熱素子表面からイ
ンクへの平均熱流束、κは熱伝導率、αはκ/ρcで表
され、ρはインクの密度、cはインクの比熱である。
又、erfはガウスの誤差関数で以下の式(5)で定義
される。
【0055】
【0056】図8はこの式で表される加熱素子表面から
半無限の25℃の水に10μsec毎にどの様に熱が伝
わっていくかを示している。この時、加熱素子表面から
の熱流束は55[MW/m2]の一定値であるとして計算
した。50μsec程度の時間内では殆どの熱エネルギ
ーが加熱素子表面から10μm以内の領域にとどまって
いることがグラフから読み取れる。
【0057】以下に1次元の熱伝導についての考察を加
える。現実の加熱素子及びインクの配置は3次元構造で
ある。本来ならば3次元の熱伝導を考えなければならな
いが、図8から読み取れる様に数十μsec程度の時間
経過の範囲では、加熱素子の大きさに比較してインク内
部の充分遠方に迄は熱が伝わらない。その為1次元の熱
伝導を表す式で精度良く考察を加えることが出来る。
【0058】式(4)はインクを加熱開始後どの様にイ
ンクに熱が伝わっていくかを表している。ここで加熱素
子表面付近の熱の流れについて調べてみる。式(4)に
おいてx=0とおくと以下の式を得る。
【0059】 ところで時刻t迄に加熱素子がインクに与えた熱Qgive
はおおよそ次の様に見積ることが出来る。 Qgive=Sq0t ・・・・・・・(7) ここでSは加熱素子の有効面積である。一方ノズルより
加熱発泡により吐出していくインクの平均温度が前述の
転移温度を越えていなければ本発明は意味をなさない。
そこで吐出するインクの受け取るべき最小限の熱量Q
getを見積ると次の式(8)が得られる。
【0060】 Qget=ρcV(TP−T0 ) ・・・・・・・(8) ここでVは吐出するインクの体積であり、Qgive=Q
getとすると加熱素子からの平均熱流束がq0である時の
最低限必要な加熱時間tgiveが以下の様に得られる。
【0061】 tgive=ρcV(TP−T0)/Sq0 ・・・・・・・(9) ここでTPは転移温度(高分子物質では平均転移温度で
与えられる)である。
【0062】さて、この時刻tgive迄に、もしインクに
水蒸気泡が発生すると、加熱素子表面が気体に覆われて
断熱状態となってしまう為にインクが転移を起こすに足
る充分な熱エネルギーを受け取ることが出来なくなる。
そこで、この時刻迄に加熱素子表面付近のインクがイン
クの発泡開始温度TBに到達してはならない。即ち以下
の式(10)が必須条件となる。 T(t)≦TB ・・・・・・・(10)
【0063】以上を纏めると次の条件式(11)が得ら
れる。 従って理論的には少なくともこの式(11)を満たす様
に加熱素子を駆動することが本発明のインクジェット記
録方法の要件となる。
【0064】ここで発泡開始温度TBは、例えば、1気
圧下での水の沸点である100℃ではない。急激な加熱
では水は過加熱され直ちには沸騰が起こらない。しかし
ながら臨界温度以上に加熱されれば沸騰が起こる。実際
には様々の理由から臨界温度に到達しなくても発泡が起
こる。これらについてはStralen及びColeの著者“Boili
ng Phenomena”McGraw-Hill,1979に詳しく述べられてい
る。又、水の発泡温度については第27回日本伝熱シン
ポジウム講演論文集(1990.5)に飯田らが報告してい
る。
【0065】本発明に利用するインクジェット方式とし
ては、インクに熱エネルギーを加えてインクの発泡によ
り液滴を吐出するインクジェット方式を利用するのが特
に好適である。
【0066】上記のインクジェット方式として、熱エネ
ルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であ
るヘッドの構成例を、図2、図3及び図4に示す。図2
は、インク流路に沿ったヘッドの断面図であるが、これ
について以下に説明する。ヘッド1は、インクを通す流
路(ノズル)2を有するガラス、セラミック、シリコン
又はプラスチック板等と、発熱素子基板3とを接着して
得られる。該発熱素子基板3は、酸化シリコン、窒化シ
リコン及び炭化シリコン等で形成される保護層4、アル
ミニウム、金及びアルミニウム−銅合金等で形成される
電極5、HfB2、TaN及びTaAl等の高融点材料で形成され
る発熱抵抗体層6、熱酸化シリコン又は酸化アルミニウ
ム等で形成される蓄熱層7、及び、シリコン、アルミニ
ウム又は窒化アルミニウム等の放熱性の良い材料で形成
される基板8より構成されている。尚、図3は、図2に
おけるヘッド1のX−Y線での横断面図である。
【0067】上記の様な構成を有するヘッド1の電極5
にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板3
の、hで示される領域が急速に発熱する為、この表面に
接しているインクに気泡が発生し、その発生する圧力で
メニスカス10が突出し、インクがヘッド1のノズル2
を通して吐出し、オリフィス11より球状のインク小液
滴12となり、被記録材13に向かって飛翔する。図4
に、図2に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの外
観図を示す。
【0068】図5に、上記ヘッドを組み込んだインクジ
ェット記録装置の一例を示す。図5において、61はワ
イピング部材としてのブレードであり、その一端はブレ
ード保持部材によって保持されて固定端となり、カンチ
レバーの形態をなす。ブレード61は、記録ヘッド65
による記録領域に隣接した位置に配置され、記録ヘッド
65の移動経路中に突出した形態で保持される。又、6
2は記録ヘッド65の吐出口面のキャップであり、ブレ
ード61に隣接するホームポジションに配設され、記録
ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク
吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。
更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク
吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の
移動経路中に突出した形態で保持される。
【0069】上記ブレード61、キャップ62及びイン
ク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレ
ード61及びインク吸収体63によってインク吐出口面
の水分、塵挨等の除去が行われる。65は吐出エネルギ
ー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する
被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、6
6は記録ヘッド65を搭載してその移動を行う為のキャ
リッジである。
【0070】キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能
に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によっ
て駆動されるベルト69と接続(不図示)している。こ
れによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が
可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣
接した領域の移動が可能となる。
【0071】51は被記録材を挿入する為の給紙部、5
2は不図示のモーターにより駆動する紙送りローラーで
ある。これらの構成によって記録ヘッド65の吐出口面
と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行する
につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙され
る。
【0072】上記構成において記録ヘッド65が記録終
了等でホームポジションに戻る際、吐出回復部64のキ
ャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避してい
るが、ブレード61は移動経路中に突出している。この
結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接して
キャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの
移動経路中に突出する様に移動する。
【0073】記録ヘッド65がホームポジションから記
録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード
61は、上述したワイピング時の位置と同一の位置にあ
る。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐
出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッド65のホ
ームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ば
かりでなく、記録ヘッド65が記録の為に記録領域を移
動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジ
ションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行
われる。
【0074】図6は、ヘッドにインク供給部材、例え
ば、チューブを介して供給されるインクを収容したイン
クカートリッジ45の一例を示す図である。ここで、4
0は供給用インクを収容したインク収容部、例えば、イ
ンク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられ
ている。この栓42に針(不図示)を挿入することによ
り、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能ならし
める。44は廃インクを受容するインク吸収体である。
インク収容部40としては、インクとの接液面がポリオ
レフィン、特にポリエチレンで形成されているものが本
発明にとって好ましい。
【0075】本発明で使用されるインクジェット記録装
置としては、上記の如きヘッドとインクカートリッジと
が別体となったものに限らず、図7に示す如きそれらが
一体になったものにも好適に用いられる。図7におい
て、70は記録ユニットであって、この中にはインクを
収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納さ
れており、かかるインク吸収体中のインクが複数のオリ
フィスを有するヘッド部71からインクとして吐出され
る構成になっている。
【0076】インク吸収体の材料としては、ポリウレタ
ンを用いることが本発明にとって好ましい。又、インク
吸収体を用いずに、インク収容部が内部にバネ等を仕込
んだインク袋である様な構造であってもよい。72は記
録ユニット内部を大気に連通させる為の大気連通口であ
る。この記録ユニット70は、図5で示す記録ヘッドに
代えて用いられるものであって、キャリッジ66に対し
着脱自在になっている。
【0077】
【実施例】さて、上述の純理論的な熱流束の条件式(1
1)には、若干の現実的な修正が必要である。そこで次
に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明
し、より現実に適した熱流束の値を示す。先ず、本発明
のインクジェット記録ヘッドの駆動方法の実施例及び比
較例について述べる。ここでは転移温度が65℃程度で
あるインクを用いた場合を想定し、吐出前に約25℃で
あるインクの平均温度を約70℃に到達させることを考
える。
【0078】実施例1及び比較例1 記録ヘッドに下記表1においてAと分類されている加熱
素子(ヒーター)を用いる。即ち、該ヒーターはSi基
板の上に先ず1.0μmのSiO2からなる酸化膜層、0.
065μmのHfB2からなるヒーター材層(シート抵抗5
8.6Ω)、1μmのSiO2からなる保護膜層、0.05
μmの五酸化タンタル(Ta2O5)と0.6μmのタンタ
ル(Ta)の層とから構成された耐キャビテーション層の
順に形成されている。この時、ヒーターの大きさは24
μm×28μmで電流の流れる方向に長いものとする。
又、ヒーター及び回路配線の全抵抗を92Ωとする。こ
の時、図9に示した様に外部回路に11.3Vの電圧を
2.6μsecの間だけ印加すると、駆動電圧印加開始
後おおよそ2.55μsecでヒーター表面近傍のイン
クが300℃に加熱され、膜沸騰が起こりインクを吐出
させるのに充分な発泡が起こる。この時当初25℃であ
ったヒーター表面から10μm以内のインクの平均温度
は約35.5℃となる。平均温度は図8と同様のグラフ
を調べることにより容易に求められる。この駆動方法は
従来の駆動としては標準的なものである。この時の熱流
束のグラフを図10に示した。このグラフで急激ではあ
るが滑らかな曲線を描いているグラフが2.55μse
c付近で突然0となっているのは、この時点でヒーター
表面に発泡が起こり気体に覆われて断熱状態となり熱流
束が0となる為である。この時点以降のヒーター表面は
急激に温度上昇が起こる。しかし、この方法ではヒータ
ー表面から10μm以内のインクの平均温度は充分に上
昇しない。これはヒーター表面からの熱流束が大き過ぎ
る為に、インクに充分な熱が伝わる前にヒーター表面近
傍のインク温度が発泡温度300℃を越えてしまう為で
ある。本例を比較例1とする。この時の平均熱流束は2
04[MW/m2]となる。
【0079】次に熱流束を充分小さくし、これを実施例
1とする。本例は駆動電圧を充分下げて、ただ一つの駆
動パルスをヒーターに印加した例である。駆動電圧を
5.7Vとするとヒーター表面付近のインク温度が30
0℃となって発泡する迄の時間はおおよそ24μsec
となる。この時ヒーター表面から10μm以内のインク
の平均温度は69.7℃となり比較例1に比べてインク
を充分加熱することが出来、著しい効果が得られる。図
15はこの時の電圧の駆動パルスを示したものである。
又、この時のヒーターからインクへの熱流束の時間推移
を図16に示した。この時の発泡迄の平均熱流束は7
9.4[MW/m2]となる。更に、図17にヒーター表
面から10μm以内のインクの平均温度の時間推移を示
した。この例では25℃のインクをおおよそ70℃迄発
泡が起こらずに加熱することが出来る。この時の熱を受
け取ったインクの体積はヒーター面積とインクの厚みか
らおおよそ24μm×27μm×10μmで6.5pl
である。尚、本明細書に挙げる実施例及び比較例の全て
について吐出体積としてこの値を採っている。
【0080】実施例2 実施例1の加熱方法では駆動電圧が比較的低い為に、場
合によってはヒーター表面が突然に水蒸気に覆われる膜
沸騰が起こらずに小さな水蒸気泡に徐々に覆われる核沸
騰が起こることがある。これはインクの成分、ヒーター
表面の荒れ具合、インクの精製度等が大きく影響する。
核沸騰が起こると水蒸気の爆発的な成長が阻害される
為、ノズルからのインクの吐出速度が小さくなり、印字
品位が損なわれることがある。
【0081】そこで実施例2として、実施例1で用いた
ヒーターと同じヒーターを用い、図18に示す駆動電圧
を少し高めに設定したダブルパルス駆動を行うと良好な
結果が得られる。この時、駆動電圧は6.3V、第1の
パルス幅は10μsec、第2のパルス幅は9.8μs
ec、パルスとパルスとの間隔はおおよそ12μsec
である。又、ヒーター表面から10μm以内のインクの
平均温度は68.1℃となり、実施例1とほぼ同等の効
果を得ることが出来る。図19はこの時のヒーターから
インクへの熱流束の時間推移である。加熱開始後間もな
くおおよそ一定の熱流束に到達し、第1の駆動パルスの
印加が終了すると熱流束も直ちに小さくなる。このグラ
フでは第2の駆動パルスが印加される迄の間、熱流束が
負となる。これはヒーター及びSi基板がヒーター表面
に接するインクよりも温度が低くなった為、インク側か
らヒーター及びSi基板側へ、熱が少し逆流することを
示している。勿論インク内部での熱の拡散は起こってお
り、インクのヒーター表面からより離れた方向にも熱は
拡散していく。この時の発泡迄の平均熱流束はおおよそ
57[MW/m2]となる。本例は第1の駆動パルスで発
泡直前迄加熱し、暫く休止期間を設けて、この間に表面
付近のインクに集中した熱の拡散を待ち、ヒーター表面
のインク温度が低下してから再びパルス(第2の駆動パ
ルス)を加えて、遂にはインクを発泡させて吐出せしめ
る方式である。本例では第2の駆動パルスの印加開始は
ヒーター表面のインク温度がおおよそ100℃迄低下し
てからとした。図20は本例でのヒーター表面から10
μm以内のインクの平均温度の時間推移である。パルス
休止期間には殆ど温度が変化していないことが読み取れ
る。
【0082】実施例3 次に、より駆動電圧を高めた実施例3について述べる。
本例では、実施例1で用いたヒーターと同じヒーターを
用いて、駆動電圧を7.5Vと設定した。図21に示し
た様な電圧の5つのパルスを駆動することによってイン
クを加熱する。ヒーターからインクへの熱流束は、この
場合図22に示す如く、駆動電圧に呼応してパルス列状
を呈する。この時のピーク熱流束は100[MW/m2
を越えている。特に発泡時には140[MW/m2]迄上
昇している。この為、より安定した強力な発泡が起こ
る。又、発泡時点迄にヒーター表面から10μm以内の
インクの平均温度は図23に見られる様に69.5℃と
なり、実施例1及び2と同等の効果が得られる。尚、本
例では各後続パルスは、ヒーター表面近傍のインク温度
が約180℃程度に低下してから電圧の印加を開始し
た。
【0083】実施例4及び比較例2 本例では、記録ヘッドに下記表1のB−と分類されて
いるヒーターを用いる。該ヒーターのAとの違いは、S
i基板に設ける酸化膜層の厚さであり、Aでは1μmで
あったが、B−では6.0μmである。この酸化膜は
ヒーターからSi基板側に散逸する熱の量を少なくする
為に設けられたものである。これに従来の駆動方法であ
る図11に示した如く電圧を印加する。駆動電圧は図9
に示した比較例1のAのヒーター構成の場合の11.3
Vに対して10.5Vであった。この時のヒーターから
インクへの熱流束の時間推移を図12に示した。このグ
ラフは比較例1の場合のグラフ図10と殆ど変わらな
い。平均熱流束も196[MW/m2]であり、ほぼ同等
とみなせる。このことは駆動電圧が異なってもほぼ同じ
熱流束を発生させることが出来ることを物語っている。
本例を比較例2とする。
【0084】さて、実施例4としてこのヒーター構成で
図24に示す如く電圧の単パルスにより駆動した。この
時の駆動電圧は4.0Vであった。又、ヒーターからイ
ンクへの熱流束の時間推移を図25に示した。平均熱流
束は70.1[MW/m2]であった。図26にヒーター
表面から10μm以内のインクの平均温度の時間推移を
示した。
【0085】実施例5 本例では、実施例4で用いたヒーターと同じヒーターを
用い、図30に示す電圧のダブルパルスによる駆動を行
った。このとき、駆動電圧は5.8Vである。ヒーター
からインクへの熱流束の時間推移を図31に示した。平
均熱流束は40.1[MW/m2]となる。本例では図1
9に示す実施例2と比較して熱の逆流が少ないことが読
み取れる。この理由は酸化膜層が実施例2で用いたヒー
ターの場合の1.0μmに比べて6.0μmと厚くSi
基板に対する断熱効果が大きい為である。図32はヒー
ター表面から10μm以内のインクの平均温度の時間推
移を示すものである。ヒーター表面から10μm以内の
インクの平均温度は69.8℃に達した。
【0086】実施例6 本例では、下記表1のB−に示した様に、Si基板上
の酸化膜層の厚みは6μmと実施例5で用いたヒーター
B−と同じであるが、保護膜層の厚みをB−の1/
2の0.5μmとしたヒーターを用いてダブルパルス駆
動を行う。保護膜層は加熱素子をインクによる腐食を避
ける為に設けられたものである。保護膜層を薄くするこ
とにより一層熱効率が向上する。この時の駆動パルスを
図27に、ヒーターからインクへの熱流束の時間推移を
図28に示した。平均熱流束は43.4[MW/m2]と
なる。又、図29にヒーター表面から10μm以内のイ
ンクの平均温度の時間推移を示した。
【0087】実施例7及び比較例3 本例では、記録ヘッドに下記表1のCと分類されている
ヒーターを用いる。該ヒーターはガラス基板上に直接ヒ
ーター材層(HfB2)を設け、少なくともヒーター材層だ
けは直接又は極めて薄い被膜を介してインクに接触して
加熱する構成を採っている。このヒーターは、極めて加
熱効率の良いものである。図13に示す如き従来の駆動
方法により電圧を印加した。図14はこの時のヒーター
からインクへの熱流束の時間推移である。加熱開始から
発泡時点迄の平均熱流束は237[MW/m2]であっ
た。本例を比較例3とする。
【0088】さて、実施例7は、このヒーターを用いて
図33に示す如く電圧の単パルスによる駆動を行うもの
を採用した。この時の駆動電圧は3.6Vである。図3
4はヒーターからインクへの熱流束の時間推移である。
平均熱流束は79.9[MW/m2]となる。図35にヒ
ーター表面から10μm以内のインクの平均温度の時間
推移を示した。該平均温度は70℃に到達する。
【0089】実施例8 最後に実施例7で用いたヒーターと同じヒーターを用い
て、図36に示すダブルパルスによる駆動を採用した。
駆動電圧は4.0Vである。図37はこの時のヒーター
からインクへの熱流束の時間推移である。本例で用いた
ヒーターには、酸化膜層(保護膜)がない為、図36に
示す駆動電圧波形と実際にヒーターからインクへの熱流
束の時間推移を示すグラフの形状が近似している。平均
熱流束は47.8[MW/m2]となる。図38はヒータ
ー表面から10μm以内のインクの平均温度である。本
例では、ヒーター表面から10μm以内のインクの平均
温度は70.9℃迄到達する。
【0090】表1:加熱素子(ヒーター)の構成例 ※単位は、全てμm。
【0091】以上述べた各実施例の諸元及び結果の一覧
表を下記表2に示した。normalと記されている駆
動方法は従来の駆動方法による比較例であり、何れもヒ
ーター表面から10μm以内のインクの平均温度は35
〜38℃程度で、目標とする約70℃に到達していな
い。インクが受け取った総熱量はおおよそ0.3〜0.
4[μJ]である。比較例1〜3での平均熱流束は20
0〜240[MW/m2]程度とかなり大きくヒーター表
面から10μm以内のインクを充分に加熱する前にヒー
ター表面付近のインクが発泡してしまう。
【0092】これに対して実施例1〜8の駆動方法で
は、目標の温度である約70℃に到達させることが出来
た。何れもインクが受け取った熱総量は1.2〜1.3
[μJ]であった。これらの時の平均熱流束を見ると、
40〜80[MW/m2]の範囲である。これらのことか
ら、本発明の駆動方法に関して見れば、従来の駆動方法
の1/2以下程度の熱流束がおおよその目安の様にも見
える。しかし、より正しくは次の様に目安が与えられ
る。例えば、TB=300℃、TP=70℃、T0=25
℃、ヒーターの大きさを24μm×28μm、吐出イン
ク量を6.7plとし、熱伝導率及び比熱の値は水の値
を用いた場合に平均熱流束を式(11)から求めると、
53[MW/m2]以下であればよいことがわかる。この
値を下記表2の実施例1〜8の値と見比べてみると、お
およそ一致しているが、現実的には加熱素子(ヒータ
ー)の様々な構成の制約が熱伝導過程に入ってくる為、
補正定数αが必要となってくる。
【0093】このαについては、上記で求めた値53
[MW/m2]と表2中の最大値である実施例7の79.
9[MW/m2]とを用いて、79.9÷53≒1.5と
して値が求められる。
【0094】表2:実施例1〜8及び比較例1〜3の諸
元及び結果
【0095】又、本発明の説明において、ヒーター表面
から10μm以内のインクについての平均温度について
言及した。これは平均熱流束の上限を示す為である。平
均熱流束が大きければ大きいほど加熱開始から発泡迄の
間にインクに与えることの出来る総熱量は減少するので
最悪事態としては、例えば、ヒーター表面のインクが全
て吐出するヘッド構成(平4−10940号の図8及び
図16等)について考察すればよいことになる。図2に
示したヘッドの構成ではヒーター上のインクが全て吐出
インク滴にならないことがある。これらは個々の加熱素
子、ノズル構成によって異なるが、何れにせよ、ここで
示した値よりも低い平均熱流束が要求される。
【0096】以上述べた駆動方法の実施例の中で、単パ
ルス駆動方法、ダブルパルス、マルチパルス駆動方法等
は、例えば、特開平5−31905号公報その他で知ら
れている。しかしながら、本発明者らは本発明におい
て、これらすべての駆動方法のうちで、特に、熱により
相変化を起こす高分子材料を含むインクを用いて被記録
材を別の手段で加熱することなく著しく印字品位を向上
させるためには、インクに該相変化が起こるに足る熱量
を、インクを吐出させるための加熱素子を利用して加え
る必要があり、そのためには、熱流束を制限することが
必須であることを発見し適用したものである。
【0097】
【発明の効果】以上説明した様に本発明によれば、画像
形成におけるインクの被記録材への定着が蒸発と浸透の
みに依存していない為、高い光学濃度(OD値)を得な
がら高品位記録に欠かすことの出来ないフェザリングや
ブリーディングの問題も同時に解決することが出来る。
又、本発明の方法においてインクは温度変化でのみ状態
変化するので、普通紙以外のトランスペアレンシーフィ
ルム、布、金属板等種々の被記録材に対しても、被記録
材表面のpHや凹凸等の影響を受けない為有用である。
【0098】尚、本発明によれば、被記録材を予め加熱
する装置を要さず、小さな熱容量でインクを効率的に加
熱し、本発明の効果を得ることが出来る。本発明は、イ
ンクジェット記録装置に利用すると、より効果が顕著に
現われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高分子水溶液の温度−粘度関係図。
【図2】インクジェット記録装置のヘッド部の縦断面
図。
【図3】インクジェット記録装置のヘッド部の横断面
図。
【図4】インクジェット記録装置の複数のノズルを有す
るヘッドの一例。
【図5】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図。
【図6】インクカートリッジの一例を示す縦断面図。
【図7】インクジェット記録ヘッドとインクカートリッ
ジが一体である仕様の斜視図。
【図8】加熱素子表面から水にどの様に熱が伝わって行
くかを示すグラフ。
【図9】比較例1のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図10】比較例1のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図11】比較例2のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図12】比較例2のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図13】比較例3のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図14】比較例3のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図15】実施例1のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図16】実施例1のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図17】実施例1のヒーター表面から10μm以内の
インクの平均温度の時間推移を示すグラフ。
【図18】実施例2のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図19】実施例2のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図20】実施例2のヒーター表面から10μm以内の
インクの平均温度の時間推移を示すグラフ。
【図21】実施例3のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図22】実施例3のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図23】実施例3のヒーター表面から10μm以内の
インクの平均温度の時間推移を示すグラフ。
【図24】実施例4のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図25】実施例4のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図26】実施例4のヒーター表面から10μm以内の
インクの平均温度の時間推移を示すグラフ。
【図27】実施例6のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図28】実施例6のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図29】実施例6のヒーター表面から10μm以内の
インクの平均温度の時間推移を示すグラフ。
【図30】実施例5のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図31】実施例5のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図32】実施例5のヒーター表面から10μm以内の
インクの平均温度の時間推移を示すグラフ。
【図33】実施例7のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図34】実施例7のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図35】実施例7のヒーター表面から10μm以内の
インクの平均温度の時間推移を示すグラフ。
【図36】実施例8のヒーターへの駆動電圧を示すグラ
フ。
【図37】実施例8のヒーターからインクへの熱流束の
時間推移を示すグラフ。
【図38】実施例8のヒーター表面から10μm以内の
インクの平均温度の時間推移を示すグラフ。
【符号の説明】
1:ヘッド 2:インクを通す流路(ノズル) 3:発熱素子基板 4:保護層 5:電極 6:発熱抵抗体層 7:蓄熱層 8:基板 10:メニスカス 11:オリフィス(微細孔) 12:インク小滴 13:被記録材 40:インク袋 42:栓 44:インク吸収体 45:インクカートリッジ 51:給紙部 52:紙送りローラー 53:排紙ローラー 61:ワイピング部材 62:キャップ 63:インク吸収体 64:吐出回復部 65:インクジェット記録ヘッド 66:キャリッジ 67:キャリッジガイド軸 68:キャリッジ駆動部 69:駆動用ベルト 70:記録ユニット 71:ヘッド部 72:大気連通口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−192605(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/05 B41J 2/01 B41M 5/00 C09D 11/00

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 記録信号に応じて記録ヘッド内の加熱素
    子を加熱させ、素子に接触しているインクを加熱発泡
    させて記ヘッドからインクを吐出させ、このインクを
    以て記録を行うインクジェット記録方法において、
    インクが、転移温度において水溶液から相分離する熱可
    逆型増粘性高分子化合物と色材とを含む加熱により急激
    な粘度変化を生ずる液媒体であり、上記熱可逆型増粘性
    高分子は、窒素含有環を有する活性水素化合物のアルキ
    レンオキシド付加物とビニル系カルボン酸とのエステル
    を構成単位として50重量%以上含有するビニル系重合
    体であり、上記加熱素子表面から前記インクへの平均熱
    流束(qO)が下記関係式(1)を満たす様に記ヘッ
    ドを駆動することを特徴とするインクジェット記録方
    法。 [但し、式中κは熱伝導率、Sは加熱素子の有効面積、
    Vは1回の駆動で吐出されるインクの体積、TBは気泡
    を生じるインクの温度、TOは吐出前のインクの温度、
    Pはインクに急激な粘度変化を生じるインクの転移温
    度、αは補正定数:1.5である。]
  2. 【請求項2】 前記窒素含有環を有する活性水素化合物
    のアルキレンオキシド付加物が、ピペリジン環もしくは
    モルホリン環に、アルキレンオキシドとして、エチレン
    オキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドが
    付加している化合物である請求項に記載のインクジェ
    ット記録方法。
  3. 【請求項3】 前記アルキレンオキシドの付加モル数
    が、1〜20である請求項又はに記載のインクジェ
    ット記録方法。
  4. 【請求項4】 前記熱可逆型増粘性高分子が、前記イン
    クに、35〜100℃の範囲において、増粘を生じさせ
    るような転移温度を有している請求項のいずれか
    1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 【請求項5】 前記熱可逆型増粘性高分子が、重量平均
    分子量として1万以上100万以下の分子量範囲にある
    請求項のいずれか1項に記載のインクジェット記
    録方法。
  6. 【請求項6】 前記加熱素子が、発熱抵抗体層を含む積
    層体からなる請求項1〜のいずれか1項に記載のイン
    クジェット記録方法。
  7. 【請求項7】 前記記録信号がパルス状の電気信号であ
    る請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット
    記録方法。
  8. 【請求項8】 前記色材が、染料である請求項
    いずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 【請求項9】 前記色材が、顔料である請求項
    いずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
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