JP3463596B2 - 縫合可能な癒着防止膜 - Google Patents

縫合可能な癒着防止膜

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、縫合が可能である
癒着防止膜に関するものである。詳しくは生体内での癒
着防止膜として、胸膜、心膜、脳硬膜、漿膜などの生体
内膜状組織および各種臓器などの欠損部または切断面へ
の補填、補綴などに利用され、特に縫合可能であり、か
つ、生体適合性と生体吸収性が良好である癒着防止膜に
関するものである。 【0002】 【従来の技術】各種の外科手術においては、患部の切除
および損傷部位の修復等を行うことが多く、特に肺、心
臓、肝臓、脳、消化器官、胆嚢などの各種臓器を対象と
する外科手術の場合には、その切断面や欠損部などに、
該臓器の組織を覆っている膜状物を補填または補綴しな
ければ、その臓器の根本的な機能を損なう場合が多い。
これらの処置を不完全に行うと、臓器の機能不全により
死亡するか、もしくは生命の危機を逃れても、予後が大
変悪くなる傾向が良く見受けられる。また、これらの補
綴、補填部位での膜状物の縫合固定が不良であると、該
処置を行った臓器自身の機能はかろうじて維持できたと
しても、これらの臓器から滲出または漏出した体液、消
化液、内容物などにより、感染したり、他臓器への攻
撃、浸食を引き起こして生命の危機を招くこともある。 【0003】さらに、これら補綴または補填した部位に
は、膜状物の癒着が高頻度に発生するケースがあり、そ
の結果として、経時的に臓器の機能不全を誘発すること
もある。このような各種の問題点を解決する目的で、臓
器または該臓器の組織を覆う膜状物または癒着防止膜
が、様々な材料により開発されている。 【0004】従来から、コラーゲン繊維からなる不織布
層をアルデヒド類で耐水処理し、コラーゲンで前記繊維
を相互に結合した外科用創傷被覆材(特開昭50-141190
号公報)が公知である。しかしながら、該被覆材は表面
が架橋剤を使用した層であることから、生体適合性、組
織再生促進の誘導などに問題がある。また、このような
被覆材は創傷を被覆するのみであって、縫合が可能であ
る膜強度や癒着を防止する機能などを有することが明ら
かではない。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】上記従来技術において
は、癒着防止膜の十分な癒着防止効果、縫合強度、生体
適合性、生体内分解・吸収性が不足しており、特にこれ
らを同時に満足することが出来ないという問題を有して
いた。すなわち、本発明はこれまでの癒着防止膜の欠点
であった、十分な縫合強度および生体適合性、生体内分
解・吸収性の不足、また十分な癒着防止効果の不足とい
う点を同時に解決することを目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】すなわち、本発明はコラ
ーゲン繊維からなる不織布層の表面に、ゼラチンまたは
ヒアルロン酸を含む被覆層を有することを特徴とする縫
合可能な癒着防止膜である。 【0007】ところで、癒着を防止する機構として、最
も単純かつ効果的である方法は、損傷または欠損等によ
り傷ついた組織と、この組織に物理的に接触が可能であ
る別の組織とを隔壁により接触させないことである。し
かし、これを合成繊維等で行う場合、生体適合性の不足
から、過度の石灰化、異物反応、炎症反応などの様々な
不都合が生じてくる。また、隔壁として用いた材料自身
が、損傷または欠損した組織と、それに対応する別組織
との癒着を媒介してしまってはならない。これらの条件
を満足する材料としては、ヒアルロン酸またはゼラチン
などが挙げられる。両者は共に粘性のある水溶性の液と
して取り扱うことが可能であり、様々な加工方法によ
り、ゲルとして利用することが可能である。 【0008】これらの材料は主に動物等の生体より抽出
・精製されるものなので、生体適合性が良好であり、既
に医薬品をはじめ、様々な医療分野で実用化が成されて
いる。また、生体内に埋植した場合、分解・吸収される
過程でゼラチンまたはヒアルロン酸分子が徐放され、親
水性を保ったまま粘性を継続して発揮するので、損傷ま
たは欠損した傷ついた部位の組織と接触していても、物
理的に接着、癒着が起こりにくいという特性を合わせ持
つ。 【0009】これらの特長を応用して、ヒアルロン酸を
利用した癒着防止膜、医用材料等を製造する技術として
は、特開平6−73103号公報、特公平7−3012
4号公報、登録特許第2670996号公報、特開平8
−333402号公報、特開昭61−234864号公
報、登録特許第2648308号公報、特開平8−15
7378号公報、特開平9−296005号公報、特開
平7−102002号公報、特表平7−509386号
公報などが挙げられる。しかし、これらの技術を含め
て、十分な癒着防止効果と縫合が可能である機械的強度
を同時に合わせ持つ技術は見あたらない。 【0010】上記ヒアルロン酸と同様に、ゼラチンを癒
着防止効果を期待して利用する技術としては、特開平9
−103479号公報、特開平8−52204号公報に
記載されたものが挙げられる。しかし、これらの技術は
いずれもヒアルロン酸を利用した場合と同様に、癒着防
止効果、縫合固定が可能な機械的強度の二点を同時に満
足する医用材料を提供するには至っていない。 【0011】 【発明の実施の態様】本発明の癒着防止膜とは、合成繊
維、合成物を一切使用せず、生体由来材料であるコラー
ゲンと、ゼラチンまたはヒアルロン酸を主原料として作
製され、これらを不織布状またはスポンジ状に加工して
積層させた、全体として2〜8層、好ましくは3〜5層
からなる積層構造により構成される。該癒着防止膜は十
分に縫合可能な膜強度を、主にコラーゲン不織布層が担
当し、生体適合性と周囲組織との癒着防止効果を、ゼラ
チンまたはヒアルロン酸により形成される層が発揮する
ものと考えられる。 【0012】本発明の癒着防止膜は、全て生体由来材料
であるコラーゲンおよびゼラチンまたはヒアルロン酸に
より構成されるため、生体適合性が非常に優秀であるだ
けでは無く、移植された生体内では徐々に分解・吸収さ
れ、最終的には全て分解・吸収されることとなる。特に
コラーゲン不織布層は、生体内欠損部位等の組織再生が
完了するまでの間、補填、補綴、シールする足場として
存在し、縫合固定後の一定期間、その膜強度を維持した
後に、全て分解、吸収される。また、最外層のゼラチン
またはヒアルロン酸層は、その粘性と徐放作用により、
損傷または欠損部位の組織と周囲組織との癒着を防止す
る。なお、この癒着を防止する期間は、損傷または欠損
部位の組織が、自然状態で周囲組織との癒着が起こらな
い程度まで再生・治癒するまでの期間持続する。これら
の癒着防止効果を発揮しつつ、徐々に体内で分解・吸収
され、最終的にはこれらゼラチン、ヒアルロン酸層も全
て無くなる。 【0013】本発明に使用される代表的なコラーゲンと
しては、酵素可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、
アルカリ可溶化コラーゲンまたは中性可溶化コラーゲン
などの可溶性コラーゲンが挙げられる。、これら可溶化
されたコラーゲンとは、特に蛋白質分解酵素(例:ペプ
シン、トリプシンなど)による可溶化処理、もしくはア
ルカリにより可溶化処理されたものであって、可溶化と
同時にコラーゲンの抗原決定基であるテロペプタイドの
除去処理を行った、通常、アテロコラーゲンと呼ばれる
医療用途に適する物が特に好適である。これらの可溶化
されたコラーゲンについては、以下の動物種などから、
公知技術(特公昭46-15033号公報、特公昭43-259839号
公報、特公昭43-27513号公報など)に従い、容易に得ら
れる。 【0014】また、本発明に利用されるコラーゲンの由
来については、特に限定されないが、一般的には牛、
豚、鳥類、魚類、兎、羊、ネズミ、ヒトなどが挙げられ
る。また、コラーゲンはこれらの皮膚、腱、骨、軟骨、
臓器などから公知の各種抽出方法を用いることにより得
られるものである。また、コラーゲンのタイプについて
は、I型、III型などの分類可能なタイプの内のいずれ
かに特に限定されるものではないが、取り扱い上の観点
からI型コラーゲンが特に好適である。また、コラーゲ
ンを可溶化させる溶媒については、取り扱い上、水が好
適である。ゼラチンは通常の日本薬局方準拠のゼラチン
を使用し、ヒアルロン酸は動物由来、微生物由来のどち
らでも良いが、医療用グレードの物が特に好適である。 【0015】十分に縫合可能な膜強度を有する不織布層
を得るためには、上記コラーゲン溶液を凝固浴中に紡糸
し、凝固浴の底面で多重多層に交差させて、繊維直径が
10〜1000μm、好ましくは20〜300μm、嵩
密度(繊維密度)が5×10 -4〜5g/cm3、好まし
くは1.0×10-3〜2.0g/cm3である繊維の集
合体を得る。すなわち、上記可溶化コラーゲンの溶液を
連続的に湿式紡糸し、この長いままの糸を適当な容器に
移し、一定方向のみに配列しないように交差状態に配列
して配置する。次に減圧乾燥、自然乾燥、低温乾燥、送
風下乾燥などの方法で乾燥して綿状とした不織布(繊維
状物)を得る。いずれの乾燥方法においてもコラーゲン
の変性を防ぐため、使用するコラーゲンの変性温度以下
で乾燥を行うことが重要であり、その温度は使用するコ
ラーゲンの種類にもよるが、おおよそ35〜45℃の温
度域以下が望ましい。特に低温乾燥または減圧乾燥が好
ましい。 【0016】一方、間欠吐出による非連続紡糸又は通常
の連続紡糸を行った後に、得られた糸を切断処理するこ
とにより、連続、非連続紡糸のいずれの場合においても
短いステープル状の繊維状物が得られる。これらを適当
な大きさの容器に均一に分散させた状態で、同様に減圧
乾燥、自然乾燥などの方法により乾燥させ不織布(繊維
状物)を得ることも可能である。 【0017】紡糸に使用する可溶化コラーゲン溶液の濃
度は、使用するコラーゲンの種類により任意であり、紡
糸可能であればどの様な濃度でも構わないが、通常は
0.1〜20wt%、このうち、湿式紡糸では1〜10
wt%程度が特に好適である。また、紡糸時の可溶化コ
ラーゲンの吐出速度、得られた糸の巻き取り速度は、紡
糸可能である範囲であれば任意である。 【0018】紡糸の際に可溶化コラーゲン溶液の吐出に
用いる装置は、汎用のギアポンプ、ディスペンサー、各
種押出し装置等、何を用いても良いが、均一な紡糸を行
うためには脈動が少なく安定してコラーゲン溶液を定量
吐出できる装置が良い。 【0019】また、紡糸を行う際の口金の孔径サイズは
紡糸さえ可能であれば、特に限定されないが、あまりに
大きな孔径では後工程で繊維状物から膜状物にする場合
にはこれが困難となり、また極度に細径であると膜強度
の向上が難しいため、通常、10〜1000μm、好ま
しくは50〜700μmの範囲であることが好ましい。
なお、口金の孔数は単数でも複数でも良い。また、口金
の形状も特に限定されず、紡糸可能であれば、例えばス
リット状、各種形状などの物を用いても良い。さらに口
金の孔長に関しては、これも紡糸可能であれば特に限定
されないが、可溶化コラーゲン分子中のコラーゲン分子
を少しでも多く配向させる目的において、可能な限り長
い方が好ましい。 【0020】湿式紡糸法の凝固浴としては、一般的にコ
ラーゲンを凝固させることが可能であれば、特に限定は
されないが、無機塩類水溶液、無機塩類溶解有機溶媒、
アルコール類、ケトン類またはそれらの内から選ばれる
組み合わせを採用することができる。これらの凝固浴と
しては、例えば無機塩類水溶液としては、硫酸ナトリウ
ム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウ
ム、塩化マグネシウムなどが挙げられるが、特に塩化ナ
トリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムが紡糸に
は好ましい。また、これらの無機塩類をアルコール、ア
セトンに溶解/分散させた無機塩類溶解有機溶媒等も利
用可能であり、特に塩化ナトリウムのエタノール溶解/
分散溶液は好適である。またアルコール類としては、メ
タノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアル
コールなどが挙げられるが、医療用途としてはエタノー
ルが特に好適である。さらにケトン類としてはアセト
ン、メチルエチルケトンなどがある。 【0021】また、単なる凝固浴としてのみでは無く、
後述する各種架橋剤との組み合わせにより、コラーゲン
の凝固と架橋処理を兼ね備えた加工方法も有効である。
例えば、エタノールとグルタルアルデヒドを混和した溶
液を、凝固処理と架橋処理を兼ね備えた凝固浴として使
用した場合、両者の工程を一度に行うことができ、紡糸
されたコラーゲン糸はそのまま浸漬することにより架橋
処理も可能である。これらの同時処理は、工程の合理化
だけではなく、希薄なコラーゲン溶液による紡糸や細径
の糸を紡糸する際に非常に有効である。 【0022】上記の各種不織布層の形成方法において、
特に好適な例を以下に記す。コラーゲン吐出用口金の孔
径がφ200μm程度で、孔長15〜20mm程度のも
のを使用し、脈動なく可溶化コラーゲン溶液をディスペ
ンサー等で吐出させ、99.5vol%エタノール凝固浴中
へ湿式紡糸することが望ましい。99.5vol%エタノー
ル凝固浴中に可溶化コラーゲンを押出す際には、吐出口
金を随時移動せしめ、紡糸された糸が任意の方向より交
差し得る状態で連続的に押出し、糸を多重多層状態にす
る。この後に凝固液を除去して、再度、エタノールで洗
浄し、減圧乾燥することにより、非常に良好な綿状の繊
維状物を得ることがきる。この方法は工程の簡素化、短
縮化、経済性の面で特に有効である。 【0023】なお、この例は代表的なものであり、繊維
状物が得られさえすれば、これに限定されるものではな
く、例えば前述のステープル状短繊維を利用しても良い
し、凝固浴の種類、凝固浴と架橋剤の混合浴の利用、ま
た乾燥方法等を変更し、さらにそれらの組み合わせを変
更してもよい。 【0024】上記方法で得られた不織布層は十分な縫合
強度を獲得するために、さらに架橋処理を施されること
が望ましい。これは架橋処理により、特に湿潤時におけ
る物理的な強度が向上し、縫合に必要な強度が十分に確
保できるからである。また、生体内に移植された際に分
解・吸収される時間を、未架橋の場合に比較して飛躍的
に遅延させるためでもある。この架橋処理により、生体
の欠損部を補填または補綴し、欠損による臓器・組織等
の機能不全を防止し、しかも創傷面の修復および組織の
再生を完了するまでの期間、体内で必要な膜強度を維持
したまま残存することが可能となる。 【0025】この架橋方法には、大別して物理的架橋方
法と化学的架橋方法が存在する。物理的架橋方法の例と
しては、γ線、紫外線、電子線、プラズマ、熱脱水架橋
などが挙げられ、一方化学的架橋方法の代表例として
は、ジアルデヒド、ポリアルデヒドなどのアルデヒド
類、エポキシ類、カルボジイミド類、イソシアネート
類、タンニン処理、クロム処理などが挙げられる。この
うち、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、グル
タルアルデヒド、酸アルデヒド、グリオキザール、マロ
ン酸ジアルデヒド、スクシン酸ジアルデヒド、フタル酸
アルデヒド、ジアルデヒド澱粉、ポリアクロレイン、ポ
リメタクロレインなどがあるが、コラーゲンとの架橋反
応が可能なアルデヒド類であれば、どのようなものでも
構わない。また、エポキシ類としては、グリセロールジ
グリシジルエーテル、ソルビトールジグリシジルエーテ
ル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエ
チレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロ
ールポリグリシジルエーテルなどがあり、このほかコラ
ーゲンと架橋反応が可能なエポキシ化合物であれば、使
用可能である。さらに、カルボジイミド類の一例として
は、特に水溶性カルボジイミドが好適であるが、同様の
反応機構が可能であれば、何でも良い。また、イソシア
ネート類の代表例としては、ヘキサメチレンジイソシア
ネート、トリレンジイソシアネートなどが挙げられる
が、特に架橋反応に関与するイソシアネート基を2つ以
上保有しているものであれば、コラーゲンを架橋可能で
あり、特にこれらのみに限定はされない。 【0026】上記の方法により、紡糸等で得られたコラ
ーゲン不織布(繊維状物)は、より高い縫合強度を得る
ために、さらにこれを圧縮することもできる。圧縮する
ことにより、不織布層の繊維密度が上がり、より強度の
高い好ましい膜状物を得ることが可能になる。圧縮され
た不織布の嵩密度は特に0.05〜5g/cm3である
ことが好ましい。 【0027】圧縮は汎用のプレス機で行うことが可能で
あるが、医療用途を目的とすることから、十分に丈夫な
滅菌済みの包装材、例えばアルミパック、高強度樹脂包
装材等により無菌的に包装された状態で圧縮されること
が望ましい。この際、不織布層を圧縮する圧力に関して
は、不織布層本体を破壊しない範囲において特に制限は
されないが、通常10〜1000kgf/cm2である
ことが望ましい。不織布層は強度向上の目的で繊維密度
を上げるためにも、また最終形態である積層構造をもつ
癒着防止膜にした場合における医療行為上の取り扱いの
観点からも、可能な限り十分に圧縮され、薄層化される
ことが望ましい。このように薄層化された不織布層は、
これを積層し、多層構造とすることによって、さらに縫
合強度を高めた癒着防止膜を得ることが可能となる。 【0028】上記方法により得られた不織布層または圧
縮された不織布層の物理的強度を、さらに向上する目的
で、バインダー処理を施すことが可能である。バインダ
ーとしては、コラーゲンスポンジ層および/または可溶
化コラーゲン溶液が好ましい。これは不織布層または圧
縮された不織布層に、コラーゲンスポンジ層を溶解した
可溶化コラーゲン溶液を含浸させた後、自然乾燥、送風
下乾燥、減圧乾燥、低温下乾燥などの適当な乾燥方法で
乾燥を行い、不織布層の繊維同士を結合させ、膜状にす
る手法である。この操作により得られた膜状物は、不織
布層単体の時よりもはるかに物理的強度が向上し、従っ
て縫合強度も格段に向上する。なお、要求される物理的
強度の程度により、この含浸・乾燥の工程を1回〜数1
0回以上繰り返しても差し支えない。 【0029】ただし、バインダー処理を行う際には、不
織布層または圧縮された不織布層に架橋処理が施されて
いない場合、可溶化コラーゲン溶液に含浸した時点で不
織布層自身が溶解してしまうことがある。したがって、
前述の方法等で、前もって架橋処理を施しておくことが
望ましい。なお、コラーゲン溶液に含浸する処理法の他
には、適当な容器または型に不織布層とともに可溶化コ
ラーゲンを流延または充填する方法や直接、不織布層に
可溶化コラーゲン溶液を塗布する方法もある。 【0030】本発明の膜状物は、コラーゲン繊維からな
る不織布が1〜6層、好ましくは1〜3層積層された層
を有する。該不織布は厚さが100μm〜50mm、好
ましくは200μm〜4.0mmであり、該不織布層は
1〜6層、好ましくは1〜3層からなる。本発明の膜状
物を得るには、例えば、あらかじめスポンジ状に乾燥し
ておいたコラーゲン層で不織布層を挟んで得た膜状物、
もしくは該スポンジ層と不織布層を同時に圧縮し、不織
布層を該スポンジ層に埋入させた膜状物を、希薄な可溶
化コラーゲン溶液または水の存在下で、常圧もしくは減
圧下に置くことにより、スポンジ層の可溶化コラーゲン
を溶解させ、不織布層と十分になじませてから、各種乾
燥法で乾燥させる方法などがある。このスポンジ層を利
用したバインダー処理方法は、不織布層の繊維同士を結
合させるために、実際に使用されるコラーゲン量に対し
て、水分などの溶媒成分が非常に少量で済むために、後
工程で乾燥を行う際に短時間で済む上、乾燥時における
拘縮、変形などが非常に少ないという大きなメリットが
ある。通常の含浸工程であれば、含浸用可溶化コラーゲ
ン溶液中の実質コラーゲン量は、実用的溶液粘度の関係
から、数%程度が限度であり、残りの90%以上は水分
等の溶媒成分となる。したがって、含浸・乾燥の操作に
時間がかかるだけでなく、この操作自体を反復する必要
が有るために、簡便な方法ではあるが、合理性に欠け
る。無論、これらの方法は代表的な例示であり、不織布
層または圧縮された不織布層の繊維同士を可溶化コラー
ゲンを用いて結合させ、膜状物とする方法であれば、ど
のような方法でも良く、上記代表例には特に限定されな
い。また、バインダー処理には、上記コラーゲン溶液の
他、ゼラチン溶液、ヒアルロン酸溶液なども使用可能で
ある。 【0031】本発明では、上記方法により得られたコラ
ーゲン繊維からなる不織布層に、さらにゼラチン層また
はヒアルロン酸層を形成することが必要である。該形成
法は、常法に従い、凍結乾燥などの方法により容易に実
施可能である。、形成する製造工程上の順序・方法等に
ついては特に限定されない。具体的な製法としては、例
えば、コラーゲン不織布層とゼラチンまたはヒアルロン
酸のスポンジ層もしくはフィルム層を積層するか、また
はゼラチンまたはヒアルロン酸スポンジ層を独自に作製
して、その後に、該スポンジ層とコラーゲン不織布層を
可溶化コラーゲン、ゼラチン溶液、ヒアルロン酸溶液な
どを用いて接着する方法がある。また、コラーゲン不織
布層を、可溶化コラーゲンの溶液に浸漬させた後に一度
凍結し、再度、同様にゼラチンもしくはヒアルロン酸溶
液に浸漬させ、これらを凍結して一体化した後に凍結乾
燥することにより、同時にコラーゲン層とゼラチンまた
はヒアルロン酸の積層スポンジを得る方法などがある。 【0032】また、容器中に充填したゼラチン溶液また
はヒアルロン酸溶液中にコラーゲン不織布を浸漬させた
後に、フリーザーで凍結し、さらに凍結乾燥してゼラチ
ンまたはヒアルロン酸スポンジ層中にコラーゲン不織布
が含有されている状態に成形することも可能である。し
かし、これらは本発明の加工方法の一例を示したに過ぎ
ず、これらの加工の目的はゼラチンまたはヒアルロン酸
のスポンジ層もしくはフィルム層とコラーゲン不織布層
が生体内移植時に簡単に剥離・分離すること無く、一体
化されることが目的であり、これが達成されるのであれ
ば、どのような加工順序、方法を用いても構わない。 【0033】ゼラチンまたはヒアルロン酸スポンジ層の
作製については、ゼラチン溶液またはヒアルロン酸溶液
を容器に流延、または所望の厚さとなるまで充填し、汎
用のフリーザー等で十分に凍結した後、凍結乾燥機で乾
燥することにより、均一な各種スポンジ層が得られる。
この時、ゼラチンまたはヒアルロン酸スポンジ層に形成
される微細な多孔の孔径は、ゼラチン溶液、ヒアルロン
酸溶液の濃度とその溶媒、凍結時の温度と凍結時間など
により変化する。 【0034】また、ゼラチンスポンジ層、ヒアルロン酸
スポンジ層における各種原料の総量および各種スポンジ
層の厚さについては、対象となる部位の癒着防止効果、
損傷・切断部位の修復、組織再生の誘導などにおける支
障を来さないように、約1〜4週間程度、各スポンジ層
が体内で残存している程度が望ましい。このゼラチンま
たはヒアルロン酸スポンジ層の厚さ、およびスポンジ層
の形成に使用される総原料量は、生体内に移植された場
合の分解・吸収時間、組織再生の誘導への影響を考慮し
て、任意にコントロールすることが可能である。スポン
ジ層の厚さは、具体的には約50μm〜20mm、好ま
しくは100〜1000μmであり、特に乾燥終了時の
厚さが1〜10mmであり、これらを圧縮して使用する
場合において、100μm〜1mmの厚さとなるスポン
ジが好ましい。これらの状況を考慮して、ゼラチン溶液
の濃度範囲は、0.5〜60wt%、好ましくは5〜4
0wt%である。さらにヒアルロン酸溶液の濃度範囲
は、0.1〜50wt%、好ましくは0.5〜5wt%
であることが望ましい。また凍結温度は−196〜−1
0℃、好ましくは汎用のフリーザーまたはディープフリ
ーザーで設定可能である−80〜−10℃であること好
ましい。また、凍結乾燥機は安定して乾燥が可能であれ
ば特に限定はされない。 【0035】さらに、ゼラチン溶液またはヒアルロン酸
溶液のスチロール角型容器への充填量は、仕上がりスポ
ンジの厚さが、約50μm〜20mm、好ましくは10
0〜1000μm程度になるように充填すれば良い。こ
れらの値は、使用する目的に応じて随時変更が可能であ
り、これらの例示には限定されない。 【0036】なお、癒着防止効果を発揮するヒアルロン
酸またはゼラチンの層は、スポンジの形状のみには限定
されず、例えば、通常の流延方式などにより得られるフ
ィルム状などに加工されていても良い。また、癒着防止
効果を付与するためにゼラチンまたはヒアルロン酸層を
形成する場合には、目的に応じて、膜の片面または両
面、あるいは一部分または全面被覆など様々な形態が選
択可能であり、ゼラチンまたはヒアルロン酸層の形成方
法、または、その部位については特に限定されるもので
は無く、任意の組み合わせが可能である。 【0037】上記の各種架橋方法により、架橋処理を施
される対象としては、本発明の癒着防止膜が、全てコラ
ーゲンとゼラチンもしくはヒアルロン酸により構成され
ているから、膜を構成する不織布層、ゼラチン層または
ヒアルロン酸層、およびこれらが一体化され積層化され
た癒着防止膜の一部または全部が対象となる。また、架
橋の順序、架橋方法の組み合わせは任意であり、特に限
定されない。しかし、最も好ましくは、コラーゲン不織
布層においてグルタルアルデヒドなどのアルデヒト類を
用いて架橋を施し、しかる後にゼラチン層またはヒアル
ロン酸層を形成し、これと一体化させ、最後に熱脱水架
橋を施す。これらの方法においては、コラーゲンの紡糸
・不織布化の工程において、エタノール等の凝固剤と、
グルタルアルデヒドに代表される架橋剤類を混合し、紡
糸と架橋の工程を一度に行う方法なども含まれる。 【0038】本発明の方法により、最終的に得られる癒
着防止膜は、縫合強度、生体適合性、生体内分解・吸収
性の点において優れた癒着防止膜である。なお、コラー
ゲン不織布層において、バインダー処理を行う場合に
は、これにより形成される層をも熱脱水架橋することが
良い。しかし、これはあくまで一例であって、例えば、
全ての層を熱脱水架橋により処理しても、何ら問題は無
く、また、滅菌と架橋を兼ねて、例えばγ線を照射して
も良い。 【0039】上記方法により得られた不織布層とゼラチ
ンまたはヒアルロン酸層を有する癒着防止膜を、さらに
圧縮することが可能である。ゼラチンまたはヒアルロン
酸スポンジ層単独または不織布層単独を圧縮した後に、
圧縮されていない不織布層またはゼラチンまたはヒアル
ロン酸スポンジ層と組み合わせて一体化しても良い。特
に好ましくは、製膜の最終工程において不織布層とゼラ
チンまたはヒアルロン酸スポンジ層が一体化されている
ものを同時に圧縮することである。これは圧縮すること
により膜厚が減少し、薄膜化されたことによって、手術
現場等において実際に癒着防止膜を使用する際に、縫合
における縫合針の貫通性、任意の形状への切断等の取り
扱いが特に向上し、移植手術等がより円滑に行える。圧
縮の方法はコラーゲン不織布層を圧縮する際と全く同様
に、汎用のプレス機で行うことが可能であるが、医療用
途を目的とすることから、十分に丈夫な滅菌済みの包装
材、例えばアルミパック、高強度樹脂包装材等により無
菌的に包装された状態で圧縮されることが望ましい。ま
た、癒着防止膜を圧縮する圧力に関しては、膜本体を破
壊しない範囲において特に制限はされないが、通常、1
0〜1000kgf/cm2であることが望ましい。 【0040】 【実施例】次に本発明を実施例を用いて説明する。実施例1 まず、エルレンマイヤーフラスコ(コーニング社製)中
でニワトリ由来アテロコラーゲンをマグネチックスター
ラーで緩やかに撹拌しながら、注射用蒸留水を加えて、
コラーゲン濃度が3wt%または5wt%である2種の
コラーゲン溶液を、クリーンベンチ内で無菌的に調製し
た。次に、5wt%コラーゲン溶液40mlをディスペ
ンサー(サンエイテック社製:EFD900型)を用い
て、27ゲージサイズ(孔径200μm)のニードル先
端より、4.0barの定圧条件下で、99.5vol
%エタノール液(和光純薬製、特級)である凝固浴中に
連続押出し紡糸を行った。なお、連続押出し紡糸中にお
いて、ニードル先端をエタノール凝固浴上でランダムに
移動させながら、沈降・凝固したコラーゲン糸が凝固浴
の底面で多重多層に交差するように紡糸させて、不織布
(繊維状コラーゲンの集合体)を得た。次に、この不織
布(繊維状コラーゲンの集合体)を1時間放置して十分
に凝固させた後、同じエタノールで2回凝固液を交換し
て洗浄した。 【0041】上記不織布(繊維状コラーゲンの集合体)
を、そのまま、バキュームドライオーブン(EYELA
社製:VOS-300VD型)中で油回転真空ポンプ(ULVA
C社製:GCD135−XA型)にて室温で減圧下(1Torr未
満)、4時間乾燥させ、不織布(繊維状コラーゲン不織
布)を得た。繊維直径は60μm、不織布の嵩密度は
4.0×10-2g/cm3である。次に、この不織布を
滅菌済みアルミ包材に入れ、ハイプレッシャージャッキ
(井内盛栄堂社製:15tプレス機)にて100kgf
/cm2の圧力で圧縮し、約8cm×5cmの圧縮不織
布(繊維直径は60μm、不織布の嵩密度は0.9g/
cm3)を得た。 【0042】さらに、この圧縮不織布を5%グルタール
アルデヒド溶液(和光純薬製、1級グルタルアルデヒド
25%溶液を注射用蒸留水で希釈)に4時間浸漬させ、
架橋処理を行った。反応終了後に注射用蒸留水で十分に
洗浄した後、注射用蒸留水浴中に1時間浸漬させ、浸漬
中に水を3回交換して、余剰のグルタルアルデヒドを除
去した。架橋処理が完了した不織布を再度、同様に減圧
乾燥し、圧縮して、厚さ0.6mm、大きさ約8cm×
5cmの圧縮不織布(繊維直径は60μm、不織布の嵩
密度は0.91g/cm3)を得た。 【0043】別途、バインダー処理を行うために、凍結
乾燥コラーゲンスポンジを作製した。これは、まず3w
t%可溶化コラーゲン溶液をスチロール角型容器に入
れ、厚さ約17mmまで充填した後、フリーザー(SA
NYO社製:MEDICALFREEZER)にて、−20℃下で12
時間程凍結処理した。次に、該凍結した可溶化コラーゲ
ンを上記容器に入れたまま、凍結乾燥機(EYELA社
製:FDU-830型)中に移し、油回転真空ポンプ(ULV
AC社製:GCD200−XA型)にて減圧下(0.05Torr未
満)で約24時間凍結乾燥して、コラーゲンスポンジを
得た。なお、凍結乾燥終了時の膜厚は約15mm、空孔
率80%であった。 【0044】得られた架橋処理圧縮不織布1枚(厚さ
0.6mm)を、別途作製した上記コラーゲンスポンジ
1枚(厚さ15mm)と共に、再び100kgf/cm
2の圧力で圧縮し、コラーゲン不織布層がコラーゲンス
ポンジ層に埋没した厚さ1mm、大きさ約7cm×4.
5cmの2層構造のコラーゲン膜状物を得た。 【0045】次に、上記膜状物を3wt%可溶化コラー
ゲン水溶液約15ml中に浸漬した状態で、バキューム
ドライオーブン(EYELA社製:VOS-300VD型)中に
て減圧し、膜状物中の空気を脱気して、可溶化コラーゲ
ン溶液を上記膜状物のスポンジ層に強制的に含浸させ
た。コラーゲン膜状物中でスポンジ層のコラーゲンは水
により溶解し、1層の膜状物が得られた。得られた膜状
物を低温下(4℃)で24時間乾燥して、バインダー処
理を行ったコラーゲン膜状物(厚さ0.18mm、大き
さ約7cm×4.5cm)を得た。次に、得られたコラ
ーゲン膜状物をスチロール角型容器に移し、該容器の上
から30wt%ゼラチン溶液を注ぎ込み、膜状物がほぼ
中間層に来るように滅菌ピンセット等で位置調整を行っ
た後、フリーザー(SANYO社製:MEDICALFREEZER)
にて、−20℃下で12時間程凍結処理した。こうして
ゼラチン層と圧縮コラーゲン不織布層が一体となった凍
結状態の3層積層構造膜を得た。 【0046】次に、この3層構造膜を容器に入れたま
ま、同様に、−20℃で約24時間凍結乾燥を行った。
得られた圧縮コラーゲン不織布層とゼラチンスポンジ層
が一体化した膜状物を、再度、同様に400kgf/c
2の圧力で圧縮し、厚さ約1.6mm、大きさ約7c
m×5cmの3層構造積層膜を得た。 【0047】次に、この得られた膜を、バキュームドラ
イオーブンと油回転真空ポンプ(ULVAC社製:GCD1
35−XA型)にて、135℃、減圧下(1Torr未満)で
12時間、熱脱水架橋処理を行った。このようにして、
コラーゲン不織布層の繊維のみがグルタルアルデヒド架
橋処理され、その表面に片面の厚さ約0.4mmである
ゼラチンスポンジ層を有する癒着防止膜(厚さ約1.6
mm、大きさ約7cm×5cm)を得た。得られた癒着
防止膜の縫合強度、生体適合性、組織再生の誘導性、癒
着防止性を下記実施例3〜4に示す。 【0048】実施例2 実施例1と同様に、ニワトリ由来アテロコラーゲンを注
射用蒸留水に溶解して、コラーゲン濃度が5wt%であ
る溶液をクリーンベンチ内で無菌的に調製した。次に、
5wt%コラーゲン溶液40mlをディスペンサー(サ
ンエイテック社製:EFD900型)を用いて、20ゲ
ージサイズ(孔径約600μm)のニードル先端から、
2.0barの定圧条件下で、99.5vol%エタノ
ール液(和光純薬製、特級)1000ml/25%グル
タルアルデヒド溶液42mlの混合浴中に連続押出し紡
糸を行った。繊維直径が200μm、不織布の嵩密度が
0.01g/cm3である不織布を得た。以下、実施例
1と同様に操作して、グルタルアルデヒドを約1%含有
するエタノール混合凝固兼架橋浴中で上記不織布を4時
間反応させた。反応終了後、次いで、反応液からグルタ
ルアルデヒド/エタノール混合溶液を除去し、99.5
%エタノール液で3回不織布を洗浄して、余剰のグルタ
ルアルデヒドを除去した。次に、実施例1と同様に減圧
乾燥を行い、さらに、このコラーゲン不織布を圧縮し
て、厚さ0.7mm、大きさ約7cm×5cmの圧縮不
織布(繊維直径は200μm、不織布の嵩密度は0.8
g/cm3)を得た。このようにして得られた圧縮不織
布2枚を使用して積層構造とした。 【0049】次に、これら2枚の不織布層をスチロール
角型容器に入れ、さらに容器の上から20wt%ヒアル
ロン酸溶液を充填した後、フリーザー(サンヨー社製:
MEDICALFREEZER)にて、−20℃下で12時間凍結し、
後に、凍結乾燥を約24時間行い、ヒアルロン酸スポン
ジ層中にコラーゲン不織布層を含有する4層構造の膜状
物を得た。得られた膜状物を、500kgf/cm2
圧力で圧縮し、厚さ約1.9mm、大きさ約7cm×5
cmの癒着防止膜を得た。この得られた膜を、バキュー
ムドライオーブンと油回転真空ポンプ(ULVAC社
製:GCD135−XA型)にて135℃、−減圧下(1Torr
未満)で12時間熱脱水架橋処理を行った。このように
して、不織布層が2層構造であり、グルタルアルデヒド
により架橋処理され、さらに片面の厚さが約0.25m
mのヒアルロン酸スポンジ層が不織布層と一体となり、
熱架橋された4層構造の癒着防止膜(厚さ約1.9m
m、大きさ約7cm×5cm)を得た。得られた癒着防
止膜の縫合強度、生体適合性、組織再生の誘導性、癒着
防止性を下記実施例3〜4に示す。 【0050】実施例3 縫合強度の測定 実施例1および実施例2において作製した癒着防止膜の
縫合強度を測定した。コントロール用サンプルとして
は、ゴアテックス心膜(ゴアテックス社製:ゴアテック
ス EPTFEパッチII(心膜用シート))、ブタ摘出
心膜、ブタ摘出脳硬膜を使用した。なお、ブタ摘出心膜
および摘出脳硬膜は、約20kgのブタを麻酔下で摘出
手術により、各膜を取り出した後、生理食塩水に浸漬さ
せ、新鮮な状態で直ちに測定した。測定方法は以下の通
りに行った。まず、各サンプル膜およびコントロール膜
を全て1cm×2.5cmのプレート状切片として切り
出し、長辺方向の片端から5mmの距離で、該膜の中央
部に、縫合糸(4−0プロリーン糸、ETHICON,
INC製)を通して輪状に結節した。次に、縫合糸を結節
した切片を37℃の生理食塩水中に30分間浸漬させた
後、速やかに取り出して、引張り強度測定計(島津社製
オートグラフS−500D)により引張り強度を測定し
た。測定条件は、縫合糸を通した側と反対側の端を末端
から約10mmの距離までチャックして固定し、一端に
ある輪状の縫合糸を測定フックに掛けて、10mm/分
の一定速度で引っ張り測定した。この時、膜が縫合糸に
より切断、または、縫合糸が被測定膜切片より離れる時
点までの応力変化を測定した。記録された応力の内で、
その最高値を測定に使用した被測定膜の縫合強度(単
位、N)として採用した。その結果を表1に示す。 【0051】 【表1】単位:(N) 【0052】表1から明らかなように、本発明の癒着防
止膜は、縫合強度において、通常の縫合固定に充分耐え
られる強度を有している。 【0053】実施例4 埋植試験 実施例1で得られた癒着防止膜を、ウサギ(n=8)の
背部筋肉内に埋植して、その組織反応を、肉眼と光学顕
微鏡により観察し、生体適合性を評価した。埋植サンプ
ルは、実施例1により得られた癒着防止膜を1.5mm
×10mmの大きさに切断して使用した。また、コント
ロールとしては、高密度ポリエチレンプレートをサンプ
ルと同じ大きさに切断して使用した。なお、コントロー
ルはエチレンオキサイドガス滅菌を行って使用した。サ
ンプル膜は25kGyのγ線を照射して滅菌した後に、
埋植試験に使用した。埋植は、まず、ウサギ(体重約
2.5kg〜3.0kg)に通常の吸入麻酔を行い、次
に無菌的にラット背部脊髄を挟んで、左にコントロー
ル、右にサンプルを埋植した。埋植方法は、滅菌した1
5ゲージの注射針を用いて、皮膚表面に対して斜めに約
30度の角度より刺入して、注射針内に充填したおいた
サンプル膜およびコントロールを押出してウサギ筋肉内
に埋植した。この後、埋植1週間後に4羽、さらに4週
間後に4羽を観察対象として使用した。各観察時間にお
いて、ウサギ4羽のうちの2羽については、麻酔下でサ
ンプル埋植部位を切開し、埋植部分とその周囲組織の観
察を炎症反応等を中心に目視による観察を行った。ま
た、残り2羽については、過剰の麻酔により犠牲死さ
せ、埋植物を含む周囲組織を摘出した後、通常のホルマ
リン固定を行い、切片を作製して顕微鏡による観察を行
った。 【0054】これらの観察結果より、いずれの観察時間
において、また、全てのウサギにおいて、サンプル膜は
コントロールに対して顕著な炎症反応等を示さず、本発
明により得られる癒着防止膜の生体適合性が良好である
ことが分かった。なお、埋植後4週間経過した場合にお
いては、サンプル膜の一部が分解・吸収されていること
が見受けられた。 【0055】実施例5 癒着防止効果の検討 ラット10匹(体重250g〜300g)を5匹ずつ2
群に分け、一方の群をコントロールとし、他方の群をサ
ンプル群とした。なお、サンプル群には実施例2で作製
した癒着防止膜を使用した。コントロール群、サンプル
群のいずれの場合も、ラットに筋肉注射により麻酔をか
けた後、吸入麻酔により麻酔状態を持続させた。コント
ロール群では、麻酔下で腹部を切開し、盲腸を露出させ
た後に、約5mm四方程度の漿膜を剥離した。また、剥
離した盲腸漿膜とこれに対応する腹壁側を同様に剥離し
て、盲腸損傷面と腹壁損傷面とが接合面となる癒着モデ
ルを作製した。コントロール群では、この後、特に何も
処置をせずに閉腹した。一方、サンプル群では、コント
ロール群と同様に癒着モデルを作製した後に、盲腸損傷
面に対して実施例2で作製した癒着防止膜を被覆して固
定した。固定した癒着防止膜の大きさは、約10mm×
10mm程度であり、四隅を縫合糸(5−0バイクリル
糸)にて腸管に軽く掛けて縫合固定した。サンプル群お
よびコントロール群ともに2週間後にラットを再手術
し、開腹して癒着の状態ををれぞれ目視で観察した。目
視による癒着の程度は、下記表2の基準を基に判別し、
点数化を行って、サンプル群およびコントロール群を比
較評価した。癒着を認めたと判断する場合は、等級3以
上を採用した。 【0056】 【表2】【0057】 【表3】 【0058】表3から明らかなように、サンプル群とコ
ントロール群を比較検討した結果、サンプル群では癒着
を認めた例が無かったのに対して、コントロール群では
全例ともに等級3以上の癒着を認めた。また、サンプル
群ではほぼ全例において、癒着防止膜は固定した部位に
残存しており、他所へ移動すること無く、損傷面同士を
隔離する役目を果たしていた。さらに、残存した癒着防
止膜を慎重に剥離し、盲腸の損傷面を目視観察すると、
損傷面が再生し始めている様子が伺えた。 【0059】 【発明の効果】本発明の癒着防止膜は、縫合が可能であ
るため、生体中の欠損または損傷部位に直接固定が可能
であり、これにより、従来の癒着防止膜に見られた体内
における目的部位よりの移動、脱落、逸脱が無く、被癒
着部位と欠損、損傷部位等を確実に隔離し、良好な癒着
防止効果を発揮することが可能であり、さらに癒着防止
に必要な期間経過後には、全て体内で分解・吸収される
という特長を有する。

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 可溶化コラーゲンの溶液を連続的に湿式
    紡糸し、この長いままの糸を一定方向のみに配列しない
    ように交差状態にして配列し、乾燥して得られるコラー
    ゲン繊維からなる不織布層の表面に、ゼラチンまたはヒ
    アルロン酸を含む被覆層を有することを特徴とする縫合
    可能な癒着防止膜。
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