JP3449844B2 - デュアルキュア型歯科用接着剤システム - Google Patents

デュアルキュア型歯科用接着剤システム

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JP3449844B2 JP32492795A JP32492795A JP3449844B2 JP 3449844 B2 JP3449844 B2 JP 3449844B2 JP 32492795 A JP32492795 A JP 32492795A JP 32492795 A JP32492795 A JP 32492795A JP 3449844 B2 JP3449844 B2 JP 3449844B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、歯質と強固に接着する
歯科用接着剤に関する。さらに詳しくは、光重合性に加
えて、化学重合性を付与することにより、接着界面の重
合度を向上させ、歯質との強固な接着を可能とするデュ
アルキュア型歯科用接着剤システムに関する。 【0002】 【従来の技術】従来、歯質との強固な接着を実現するた
めに、歯科用接着剤の重合開始剤の検討、歯質との接着
性を有するいわゆる接着性モノマーの検討、エッチング
処理あるいはプライマー処理などの歯面の前処理方法の
検討などが行われている。 【0003】歯科用接着剤の重合開始剤としては、化学
重合型のものと、光重合型のものに大別される。化学重
合型の歯科用接着剤は、過酸化ベンゾイルなどの有機過
酸化物とアミンなどの還元剤を重合開始剤として用いる
レドックス系のものが主流であり、有機過酸化物を含む
組成物と還元剤を含む組成物を分割して保管し、使用直
前に混合するものが多い。また、歯質接着性を向上させ
るために後述する酸性基を有するラジカル重合性単量体
(以下酸性モノマーと言うことがある)を配合した場合
には、レドックス系の重合速度が極めて遅くなることが
明らかとなっており、その対策として、特開昭53ー1
10637号の発明には有機過酸化物と還元剤に加え
て、スルフィン酸またはその塩(以下スルフィン酸
(塩)と言う)を加えることにより、酸性モノマー存在
下でも速やかに重合が進行することが記載されている。
いずれの場合にも、化学重合型の歯科用接着剤では、分
割して保管していた有機過酸化物を含む組成物と還元剤
を含む組成物、または有機過酸化物を含む組成物と還元
剤およびスルフィン酸(塩)を含む組成物を混合すると
同時に重合が開始されるため、術者は重合により硬化す
るまでの短時間に歯面への塗布を完了しなければなら
ず、操作時間に制約があることが欠点とされていた。 【0004】光重合型の歯科用接着剤は、カンファーキ
ノンなどのα−ジケトン類とアミンなどの還元剤を重合
開始剤として用いるものが主流である。かかる接着剤
は、これを歯面に塗布した後、光照射を行うことにより
はじめて重合が開始されるため、前述の化学重合型接着
剤のような操作時間の制約はないものの、光線が届かな
い部分では重合が進まないため、接着界面の微細構造に
入り込んだ接着剤が十分硬化しないという問題点を有し
ていた。 【0005】さらに、化学重合性と光重合性を合わせ持
ついわゆるデュアルキュア型の重合開始機能を有する歯
科材料に関する技術が、特開昭58−203907号公
報、特開昭60−89407号公報、特開昭62−24
6514号公報などに提案されているが、いずれも充填
用修復材料に関するものであり、歯科用接着剤への応用
については記載はない。特開平2−191207号公報
には、デュアルキュア型の歯科用接着剤に関する記載が
あるが、これは従来の化学重合型の歯科用接着剤に光重
合開始剤を添加しただけのものであり、混合後の操作時
間に制約があるという化学重合型の問題点は残されたま
まであった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、化学重合型の問題点である操作時間の制約
を解消し、さらに光重合性型の問題点である接着界面の
歯質の微細構造内の重合不足を化学重合により補完する
新規なデュアルキュア型の歯科用接着剤システムを提供
することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため、化学重合の操作時間の制約を解消する
ための手段と、デュアルキュア型の歯科用接着剤を実現
するための手段の両面から種々検討の結果、本発明を完
成した。 【0008】すなわち本発明は、(a)酸性基を有する
ラジカル重合性単量体、(b)アルコール性水酸基を有
するラジカル重合性単量体、(c)水、及び(d)スル
フィン酸またはその塩を構成成分とし、少なくとも
(a)酸性基を有するラジカル重合性単量体と(d)ス
ルフィン酸(塩)が同一包装内に共存しないように2分
割以上に分割されて保管されるプライマー組成物と、
(e)ラジカル重合性単量体、(f)酸性基を有するラ
ジカル重合性単量体、(g)アルコール性水酸基を有す
るラジカル重合性単量体、(h)光重合開始剤、(i)
有機過酸化物、及び(j)還元剤を構成成分とし、少な
くとも(i)有機過酸化物と(j)還元剤とが同一包装
内に共存しないように2分割以上に分割されて保管され
るボンディング組成物からなることを特徴とするデュア
ルキュア型歯科用接着剤システムである。 【0009】化学重合型接着剤の操作時間の制約を解消
するためには、有機過酸化物を含む組成物と還元剤を含
む組成物を混合した後、何らかの方法で重合を抑制して
おき、適当な時期に重合を開始させることを可能とすれ
ばよい。有機過酸化物と還元剤による重合が、酸性条件
下では極めて遅くなることが知られており、有機過酸化
物を含む組成物と、還元剤および酸性モノマーを含む組
成物を混合することにより重合を抑制することは可能で
あるが、硬化まで非常に長い時間を要するため、実用的
ではない。 【0010】一方、有機過酸化物と還元剤に加えてスル
フィン酸(塩)を配合することによって、酸性条件下で
も重合が進行することが知られているが、接着剤自身に
スルフィン酸(塩)を配合した場合には、速やかに重合
が開始されるため、操作時間の制約という問題点は解消
されない。そこで本発明者らは、スルフィン酸(塩)を
接着剤には配合せず、プライマーの中に配合し、該プラ
イマーを有機過酸化物と還元剤および酸性モノマーを含
む接着剤と組み合わせることにより、操作時間の制約の
ない化学重合型歯科用接着剤システムが構成できること
を認めた。すなわち、最初にスルフィン酸(塩)を含む
プライマー溶液で歯面処理を行った後、エアーブローに
より揮発成分を除去し、水洗を行わずに、有機過酸化物
と還元剤および酸性モノマーを含む接着剤を塗布するこ
とにより、速やかに化学重合が開始されることを見い出
した。接着剤は、歯面に塗布されるまで、酸性モノマー
により重合が抑制されるため、接着操作までの時間は非
常に長く、術者は余裕を持って作業を行うことが可能で
ある。この接着剤を歯面に塗布すると、歯面に残存して
いたスルフィン酸(塩)が接着剤の中に溶解し、速やか
に重合が開始され、接着剤層が形成される。 【0011】上記のスルフィン酸(塩)の効果を確実に
するためには、プライマー処理後の歯面に十分な量のス
ルフィン酸(塩)を残存させる必要があり、歯面処理後
に水洗を必要としないプライマー組成物が望ましい。か
かるプライマー組成物として、酸性モノマー、親水性モ
ノマー、水および重合触媒を構成成分とする、いわゆる
セルフエッチングプライマーが知られている。しかし、
セルフエッチングプライマーには、酸性モノマーが必須
成分として配合されており、スルフィン酸(塩)と共存
させると、酸性モノマーによるスルフィン酸(塩)の分
解が起こると共に、酸性モノマーおよび親水性モノマー
の重合が開始される。従って、本発明のプライマー組成
物は、酸性モノマーとスルフィン酸(塩)は分割して保
管し、使用直前に混合する必要がある。 【0012】化学重合性と光重合性を有するデュアルキ
ュア型の歯科用接着剤を実現するためには、化学重合開
始剤と光重合開始剤の両方を配合した接着剤を調製すれ
ば良いが、化学重合開始剤と光重合開始剤は、同一包装
内で保管した場合に、変性したり好ましくない化学反応
を起こしたりする場合が多く、少なくとも2分割形態以
上に分割して保管する必要がある。さらに、歯科用接着
剤には、その接着強度を高めるために、酸性モノマーや
アルコール性水酸基を有するラジカル重合性単量体(以
下親水性モノマーと略称する)、さらには水などを配合
することが行われており、これらの化合物と上記の重合
開始剤類を安定性よく分割して配合させる必要がある。
また、前述のように、酸性モノマー存在下では、有機過
酸化物とアミンによるレドックス系の化学重合の進行が
極めて緩慢なため、スルフィン酸(塩)を併用するいわ
ゆる3元系触媒が使用されるが、スルフィン酸(塩)は
カンファーキノン/還元剤系の光重合を阻害するため、
これらの光重合系の開始剤との併用は困難である。 【0013】そこで、本発明者らは、光重合を阻害する
スルフィン酸(塩)をプライマー中に配合することによ
り、ボンディング剤の光重合性を阻害することなく、酸
性モノマー存在下で化学重合を進行させることが可能で
あることを見い出した。先に化学重合の操作時間を長く
するための手段として、スルフィン酸(塩)をボンディ
ング剤に配合せずに、プライマーに配合することを提示
したが、スルフィン酸(塩)をボンディング剤に配合し
ないことにより、スルフィン酸(塩)による光重合に対
する阻害がなくなり、光照射によりボンディング剤が速
やかに重合硬化することを見い出した。プライマー処理
後の歯質表面には、スルフィン酸(塩)が残存してお
り、光重合を阻害することが予想されたが、驚くべきこ
とに、歯質表面に残存しているスルフィン酸(塩)は、
化学重合の3元系触媒としては機能するが、光重合を阻
害しないことを発見し、本発明を完成することができ
た。 【0014】本発明の接着剤システムを用いれば、プラ
イマー処理後に、ボンディング剤を塗布し、光照射する
ことにより、歯質表面の光が当たった部分は速やかに重
合硬化すると共に、歯質の微細構造内部の光が当たらな
かった部分も化学重合によって重合硬化するため、ボン
ディング剤の全ての部分を十分に重合硬化させることが
可能であり、従来の光重合型の歯科用接着剤の問題点を
解消することができる。 【0015】本発明においてプライマーに使用される酸
性基を有する重合性単量体は、リン酸基、カルボキシル
基、スルホン酸基、酸無水物残基等の酸性基、およびア
クリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等の重合可
能な不飽和基を有する重合性の単量体であって、例え
ば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロ
ジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシ
ヘキシルジハイドロジェンホスフェート、10−(メ
タ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフ
ェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニ
ルジハイドロジェンホスフェート等のリン酸モノエステ
ル基を含有する化合物、ビス(2−(メタ)アクリロイ
ルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート、2−
(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフェ
ニルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエ
チルハイドロジェンアニシルホスフェート等のリン酸ジ
エステル基を含有する化合物、6−(メタ)アクリロイ
ルオキシヘキシルホスフィネート、N−(10−ホスホ
ノデシル)(メタ)アクリルアミド、4−ビニルベンゼ
ンホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸等のリン
酸誘導体、(メタ)アクリル酸、コハク酸モノ(2−
(メタ)アクリロイルオキシエチル)、イソフタル酸
(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、4−(メ
タ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、11,
11−ジカルボキシウンデシル(メタ)アクリレート、
N−(メタ)アクリロイルアラニン、N−(メタ)アク
リロイル−5−アミノサリチル酸、4−ビニル安息香酸
などのカルボキシル基を含有する化合物およびそれらの
酸無水物、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプ
ロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン
酸基を含有する化合物などを挙げることができる。これ
らの酸性モノマーのプライマー中への配合量は、0.1
重量%以上、50重量%の範囲が適当である。配合量が
0.1重量%未満の場合および配合量が50重量%を越
える場合には十分な接着強度が得られないため適当でな
い。 【0016】本発明においてプライマーに使用するアル
コール性水酸基を有する重合性単量体は、アルコール性
水酸基、およびアクリロイル基、メタクリロイル基、ビ
ニル基等の重合可能な不飽和基を有する重合性の単量体
であり、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリ
レート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレー
ト、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリト
ールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトール
ジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクロ
イルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、N−
メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエ
チル(メタ)アクリルアミド、N,N−(ジヒドロキシ
エチル)(メタ)アクリルアミドなどを挙げることがで
きる。これらの親水性モノマーのプライマー中への配合
量は、1重量%以上、80重量%以下の範囲が適当であ
る。配合量が1重量%未満の場合および80重量%を越
える場合には、十分な接着強度が得られない。 【0017】本発明においてプライマーに用いられる水
は、歯牙と修復材料との接着強度の発現に対して悪影響
を及ぼす不純物を実質的に含有しないものを使用する必
要があり、蒸留水またはイオン交換水が好適である。水
のプライマー中への配合量は、1重量%以上、80重量
%以下の範囲が適当である。配合量が1重量%未満の場
合および80重量%を越える場合には、十分な接着強度
が得られない。 【0018】本発明においてプライマーに用いられるス
ルフィン酸(塩)としては、ベンゼンスルフィン酸ナト
リウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンス
ルフィン酸ストロンチウム、ベンゼンスルフィン酸アン
モニウム、ベンゼンスルフィン酸トリエチルアンモニウ
ム塩、ベンゼンスルフィン酸・N,N’−ジメチル−p
−トルイジン塩あるいはp−トルエンスルフィン酸、β
−ナフタレンスルフィン酸、スチレンスルフィン酸など
の塩、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナ
トリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスル
フィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベ
ンゼンスルフィン酸リチウム、2,6−ジイソプロピル
ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリ−
tert−ブチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,
4,6−トリフェニルベンゼンスルフィン酸ナトリウム
などを挙げることができる。これらのスルフィン酸塩の
プライマー中への配合量は、0.1重量%以上、20重
量%の範囲が適当である。配合量が0.1重量%未満の
場合および20重量%を越える場合には、十分な接着強
度が得られない。 【0019】本発明のプライマーには、所望に応じて光
重合開始剤を配合することが可能である。光重合開始剤
としては、カンファーキノンと、ジメチルアミノ安息香
酸エステル類、ジメチルアセトフェノン、ジメチルアミ
ノベンゾフェノン、N−フェニルグリシンなどの3級ア
ミンなどの組み合わせが好適であり、さらにカンファー
キノン/アルデヒド系、カンファーキノン/メルカプタ
ン系、アシルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
なお、紫外線照射による光重合を行う場合には、ベンゾ
インメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベン
ゾフェノン、2−エチルチオキサントン、ジアセチル、
ベンジル、アオゾビスイソブチロニトリル、テトラメチ
ルチラウムジスルフィドなどが好適である。また、かか
る光重合開始剤の配合量は、組成物全体に対して20重
量%以下が適当である。 【0020】本発明のプライマーには、所望に応じて、
アルコール性水酸基および酸性基を有さない(メタ)ア
クリル系重合性単量体、さらに、エタノール、アセトン
等の溶剤、重合禁止剤、着色剤、蛍光剤、紫外線吸収剤
等を添加してもよい。 【0021】本発明のボンディングに用いられるラジ
カル重合性単量体としては、例えばメチル(メタ)アク
リレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチ
ルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、γ−メタクリ
ロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリエチレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグ
リコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジ
オールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオ
ールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス[((メ
タ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロ
パン、2,2’−ビス[4−(3−(メタ)アクリロイ
ルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロ
パン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレー
トなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系
重合性単量体の配合量は、ボンディング組成物全体に
対して30重量%以下が適当である。 【0022】本発明のボンディング材に用いる酸性基を
有する重合性単量体は、上述したプライマーに用いる酸
性モノマーと同一のものが使用できる。これらの酸性モ
ノマーのボンディング中への配合量は、0.1重量%
以上50重量%以下の範囲が適当である。配合量が0.
1重量%未満の場合および50重量%を越える場合には
十分な接着強度が得られない。 【0023】本発明においてボンディングに使用する
アルコール性水酸基を有する重合性単量体は、上述した
プライマーに用いる同モノマーが使用できる。これらの
親水性モノマーのボンディング材中への配合量は、1重
量%以上80重量%以下の範囲が適当である。配合量が
1重量%未満の場合および80重量%を越える場合には
十分な接着強度が得られないので適当でない。 【0024】本発明においてボンディングに使用する
光重合開始剤としては、カンファーキノンと、ジメチル
アミノ安息香酸エステル類、ジメチルアセトフェノン、
ジメチルアミノベンゾフェノン、N−フェニルグリシン
などの3級アミンなどの組み合わせが好適であり、さら
にカンファーキノン/アルデヒド系、カンファーキノン
/メルカプタン系、アシルホスフィンオキサイドなどが
挙げられる。なお、紫外線照射による光重合を行う場合
には、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケ
タール、ベンゾフェノン、2−エチルチオキサントン、
ジアセチル、ベンジル、アオゾビスイソブチロニトリ
ル、テトラメチルチラウムジスルフィドなどが好適であ
る。これらの光重合開始剤は、ボンディング組成物全
体に対して1重量%以上20重量%以下の範囲が適当で
ある。 【0025】本発明においてボンディングに用いられ
る還元剤としては、N,N’−ジメチルアニリン、N,
N’−ジメチル−p−トルイジン、N−メチル,N’−
β−ヒドロキシエチルアニリン、N,N’−ジ(β−ヒ
ドロキシエチル)−メチルアニリン、N,N’−ジ(β
−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N−メチルア
ニリン、N−メチル−p−トルイジンなどを挙げること
ができる。これらの還元剤は、ボンディング組成物全
体に対して1重量%以上20重量%以下の範囲が適当で
ある。 【0026】本発明においてボンディングに用いられ
る有機過酸化物としては、ジベンゾイルパーオキサイ
ド、ジ−p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−p
−メチルベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパー
オキサイドなどのジアシルパーオキサイドを挙げること
ができる。これらの有機過酸化物は、ボンディング
成物全体に対して1重量%以上20重量%以下の範囲が
適当である。 【0027】本発明のボンディング剤には、所望により
エタノール、アセトン等の溶剤、重合禁止剤、着色剤、
蛍光剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。さらに、粘
度の調節および重合硬化後の機械的強度の改善のため
に、フィラーを配合しても構わない。フィラーとして
は、α−石英、シリカ、アルミナ、ヒドロキシアパタイ
ト、フルオロアルミノシリケートガラス、硫酸バリウ
ム、酸化チタン、ジルコニア、シリカガラス、ソーダ石
灰ケイ酸ガラス、バリウムガラス、バリウムボロシリケ
ートガラス、バリウムボロアルミナムシリケート、有機
成分と無機成分を含有する有機複合フィラーなどが挙げ
られる。これらのフィラーの配合量は、30重量%以下
が適当である。 【0028】以下、本発明を実施例により説明するが、
本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。な
お、本実施例では接着強度の測定は以下の方法により行
った。 【0029】光重合による接着強度(接着強度の測定方
法1) ウシの前歯を1000番のシリコン・カーバイト研磨紙
(日本研紙(株)製)にて湿式研磨し、エナメル質表
面、または象牙質表面を露出させた後、表面の水分を歯
科用エアシリンジで吹き飛ばした。露出したエナメル質
表面または象牙質表面に、直径5mmの穴を開けたテー
プを貼り、穴の部分に本発明のプライマー組成物を筆で
塗布し、そのまま30秒間放置してから、エアシリンジ
で乾燥させた。その上に、本発明のボンディングを筆
で約100ミクロンの厚さに塗布し、歯科用光照射器
「ライテル−II」(群馬牛尾電気(株)製)にて20秒
間光照射を行い、硬化させた。さらに、その上に、市販
の光重合型歯科用コンポジットレジン「フォトクリアフ
ィルA」((株)クラレ製)をのせ、エバール(登録商
標、(株)クラレ製)からなるフィルムをかぶせた後、
スライドガラスを上から押しつけ、かかる状態で上記光
照射器にて40秒間光照射を行い、硬化させた。この硬
化面に対して、市販の歯科用レジンセメント「パナビア
21」((株)クラレ製)を用いてステンレス棒を接着
し、15分間放置した後、37℃の水中に浸漬し、24
時間後の引っ張り接着強度を測定した。 【0030】化学重合による接着強度(接着強度の測定
方法2) ウシの前歯を1000番のシリコン・カーバイト研磨紙
(日本研紙(株)製)にて湿式研磨し、エナメル質表
面、または象牙質表面を露出させた後、表面の水分を歯
科用エアシリンジで吹き飛ばした。露出したエナメル質
表面または象牙質表面に、直径5mmの穴を開けたテー
プを貼り、穴の部分に本発明のプライマー組成物を筆で
塗布し、そのまま30秒間放置してから、エアシリンジ
で乾燥させた。その上に、本発明のボンディングを筆
で約100ミクロンの厚さに塗布し、3分間放置し、ボ
ンディングを硬化させた後、市販の化学重合型歯科用
コンポジットレジン「クリアフィルFII」((株)クラ
レ製)をのせ、エバール(登録商標、(株)クラレ製)
からなるフィルムをかぶせた後、スライドガラスを上か
ら押しつけ、かかる状態でコンポジットレジンが硬化す
るまで放置した。この硬化面に対して、市販の歯科用レ
ジンセメント「パナビア21」((株)クラレ製)を用
いてステンレス棒を接着し、15分間放置した後、37
℃の水中に浸漬し、24時間後の引っ張り接着強度を測
定した。 【0031】化学重合の硬化時間(硬化時間の測定方法
1) 試料を直径5mm、深さ3mmの穴があいた円筒形の容
器にいれ、熱電対の先端を試料中に深さ1mmまで浸し
て、熱電対により温度変化を記録し、発熱ピークが立ち
上がり始めるまでの時間を硬化開始時間とし、硬化開始
から発熱ピークの頂点に達するまでの時間を硬化完了時
間とした。 【0032】光重合の硬化時間(硬化時間の測定方法
2) 試料を直径5mm、深さ3mmの穴があいた円筒形の容
器にいれ、熱電対の先端を試料中に深さ1mmまで浸し
て、歯科用光照射器「ライテル−II」(群馬牛尾電気
(株)製)で光照射を開始した後、熱電対により温度変
化を記録し、照射開始から発熱ピークの頂点に達するま
での時間を求め、これを光重合の硬化完了時間とした。 【0033】 【実施例】 実施例1 10ーメタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホ
スフェート(以下これをMDPと略称する)、2−ヒド
ロキシエチルメタクリレート(以下これをHEMAと略
称する)、N,N−ジエタノールーp−トルイジン(以
下これをDEPTと略称する)、カンファーキノン(以
下これをCQと略称する)、N,N−ジメチルアミノ安
息香酸イソアミル(以下これをIADMABと略称す
る)、蒸留水を表1に示す重量比で混合したプライマー
A液、およびHEMA、2,4,6−トリイソプロピル
ベンゼンスルフィン酸ナトリウム(以下これをTPBS
Sと略称する)、蒸留水を表1に示す重量比で混合した
プライマーB液を調製した。さらに、ビスフェノールA
ジ(2−ヒドロキシプロポキシ)ジメタクリレート(以
下これをBis−GMAと略称する)、HEMA、MD
P、CQ、DEPT、IADMABを表1に示す重量比
で混合したボンディングA液および、Bis−GMA、
HEMA、ベンゾイルパーオキサイド(以下これをBP
Oと略称する)を表1に示す重量比で混合したボンディ
ングB液を調製した。 【0034】このプライマーA液とプライマーB液を等
量混合したものをプライマー、ボンディングA液とボン
ディングB液を等量混合したものをボンディングとし
て使用し、前述の接着強度の測定方法1および2に従っ
て、光重合の接着強度および化学重合の接着強度を測定
した。結果を表2に示す。さらに、前述の硬化時間の測
定法1および2に従って、ボンディングA液、B液を
混合した後の化学重合による硬化時間、さらにプライマ
ー処理面に塗布した場合の化学重合の硬化時間、光重合
の硬化時間の測定を行った。結果を表2に示す。 【0035】比較例1 表1に示したように、実施例1のプライマーB液からT
PBSSを除いた組成のプライマーB液を調製した。こ
のプライマーB液と実施例1で用いたプライマーA液、
ボンディング剤A液、B液を組み合わせて、実施例1と
同様に接着強度の測定、硬化時間の測定を行った。結果
を表2に示す。 【0036】比較例2〜4 表1に示したように、実施例1のボンディング剤B液に
TPBSSを0.01〜1重量%の割合で添加したボン
ディング剤A液を調製し、比較例1で用いたボンディン
グ剤A液と、実施例1で用いたプライマーA液、B液を
組み合わせて、実施例1と同じように接着強度の測定、
硬化時間の測定を行った。結果を表2に示す。 【0037】表2から明らかなように、実施例1のプラ
イマーおよびボンディング剤を用いた場合には、光重合
で硬化させた場合、化学重合で硬化させた場合のいずれ
も牛歯エナメル質、象牙質に対して20MPa以上の非
常に強い接着強度が得られている。また、ボンディング
剤A液、B液を混合後もプライマーと接触させない限
り、30分以上の間、硬化することはなく、十分な操作
時間が確保されている。さらに、ボンディング剤をプラ
イマー処理面に塗布した後、光照射を行うことにより1
2秒間で重合が完結し、並行して化学重合が進行し40
秒後には重合が完了することが判った。これに対して、
プライマー中にスルフィン酸(塩)を含まない比較例1
の場合には、光重合では強い接着強度が得られるもの
の、化学重合は全く進行せず、接着強度の測定は不可能
であった。また、プライマーにスルフィン酸塩TPBS
Sを配合せずに、ボンディング剤A液に配合した比較例
2〜4の場合には、TBPSSの配合量が多くなるに従
い、化学重合の接着強度が向上する傾向が見られたが、
光重合の硬化時間が遅延する現象が観察され、接着強度
も低下した。 【0038】 【表1】【0039】 【表2】 【0040】 【発明の効果】本発明によれば、化学重合型の問題点で
ある操作時間の制約を解消し、さらに光重合性型の問題
点である接着界面の歯質の微細構造内の重合不足を、化
学重合により補完する新規なデュアルキュア型の歯科用
接着剤システムが提供される。

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a)酸性基を有するラジカル重合性単
    量体、(b)アルコール性水酸基を有するラジカル重合
    性単量体、(c)水、及び(d)スルフィン酸またはそ
    の塩を構成成分とし、少なくとも(a)酸性基を有する
    ラジカル重合性単量体と(d)スルフィン酸(塩)が同
    一包装内に共存しないように2分割以上に分割されて保
    管されるプライマー組成物と、(e)ラジカル重合性単
    量体、(f)酸性基を有するラジカル重合性単量体、
    (g)アルコール性水酸基を有するラジカル重合性単量
    体、(h)光重合開始剤、(i)有機過酸化物、及び
    (j)還元剤を構成成分とし、少なくとも(i)有機過
    酸化物と(j)還元剤とが同一包装内に共存しないよう
    に2分割以上に分割されて保管されるボンディング組成
    物からなることを特徴とするデュアルキュア型歯科用接
    着剤システム。
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