JP3403438B2 - 米発酵エキスの着色防止方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、米発酵エキスの着色防
止剤およびその方法の関する。更に詳しくは、温浴効果
や美肌効果に優れた米発酵エキスの着色防止方法及び着
色防止した米発酵エキス組成物に関する。

【０００２】

【従来技術】目まぐるしく変化してゆく社会に身を置く
現代人が、心とからだの疲れを癒すのに適しているの
か、折からの自然指向の一貫であるのか、近年温泉の良
さが見直されている。温泉と一口にいっても、その効能
・効果は、温泉の含有成分やｐＨ、放射能によってさま
ざまであり、共通の効能として、疲労回復、慢性関節炎
などが挙げられ、働き過ぎといわれている日本人の気分
転換、体力回復にはちょうど良いということができる。
また、美肌などの効果があるものもあり、若い女性の注
目を集めている。

【０００３】この温泉気分を手軽に自宅で味わえるもの
として、入浴剤もまた最近人気を集めている。無機塩類
を含むものやお湯に入れると炭酸ガスを発生させるも
の、更に折からの自然指向に便乗して生薬エキスを配合
したものなど、実にさまざまなものが商品化されてい
る。特に最近の傾向として、上記のような成分のほか
に、芳香や美しい色などによって、リラクセーションの
効果を狙ったものも多く出ており、若者の人気を集めて
いる。実にさまざまな年代の消費者に対応する商品が市
場にあふれているということができる。しかし、入浴剤
本来の目的である温浴効果、美肌効果について、なかな
か満足行く程の効果が得られるものはいまだなく、更に
効果の高いものが望まれているのが現状である。

【０００４】また、美肌効果のあるものとしての代表格
として、化粧品を挙げることができるが、アトピー性皮
膚炎などのアレルギーを持つ人が増えているせいか、近
年では保湿効果や美白効果などの効果の強さだけでな
く、より刺激の少ないものを求める向きも強く、きゅう
りやへちま、柑橘系植物の果実などから抽出されたエキ
スを配合した化粧水などが人気を集めており、ここで
も、自然指向が強まっている。

【０００５】特開昭６３−２６４５１１号には、米から
の化粧品および入浴剤の製造法が開示されている。すな
わち玄米を精米機にかけ、赤糠部分を除去した後、更に
精白を上げて米白糠部分を分離採取し、この米白糠を蒸
煮した後、麹あるいは澱粉分解酵素および酒母あるいは
酵母で糖化、発酵を同時または別々に行った後、そのま
まあるいは粗ろ化または圧搾ろ過して液状物を得ること
を特徴とする米からの化粧品および入浴剤の製造法であ
る。このような方法で得られた米発酵エキスは温浴効果
に優れ、また、肌に潤いを与えるなど美肌効果もあるた
め、入浴剤や化粧品として適しており、広く使用されて
いる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかし、該公報に開示
されている方法で得られた米発酵エキスは、経時的な着
色が見られるため、整肌効果・美肌効果を期待する化粧
品や、温浴効果や美肌効果のほかに、リラクセーション
を目的とする入浴剤という、美観が重要視される商品の
性質上好ましくない。殊にこの着色は、加温状態で顕著
であるため、入浴剤として商品化するにあたって克服し
たい最大の難点であった。そこで、これまで着色を防止
する試みが種々なされてきたが、好ましい結果を得る方
法はいまだ見いだされておらず、現在のところ工程の最
終部分で、活性炭を添加し、着色度の少ない米発酵エキ
スを得るという程度にとどまっている。しかしこの方法
では、着色度の少ない米発酵エキスは得られても、経時
的着色を防止する効果は十分ではない。

【０００７】従来より、米発酵エキスに限らず、物質の
着色については、その物質を商品にするにあたっての商
品価値の低下や、物質の分解等による質的低下を意味す
るものとして、様々な防止方法が考えられてきている。

【０００８】例えば、特開平１−９９４６号には、収斂
・整肌作用を持つポリフェノールの着色を防止するの
に、ポルフィリン−亜鉛錯体と有機還元剤を添加すると
いう方法が開示されている。また、特開平１−９０１５
７号には、塗料や、医薬の原料等として有用なジエチル
アミノエタノールの着色を、還元剤として水素化金属化
合物を用いることにより防止する方法が開示されてい
る。

【０００９】しかし、これら着色防止方法は、着色を防
止したい対象が違うと期待する効果を得ることが難しい
のは言うまでもない。

【００１０】

【課題を解決する手段】以上のような状況に鑑み、本発
明者等は、米発酵エキスの経時的着色を防止する方法に
ついて鋭意研究を行った。

【００１１】その結果、無機還元剤、含硫アミノ酸また
は含硫アミノ酸をアミノ酸残基として含有するペプチド
を米発酵エキスに添加させることによって、所期の目的
を達成できることを見い出し本発明を完成した。よって
本発明は、米発酵エキスの着色防止方法並びに着色防止
剤を添加した米発酵エキスの組成物について提供するも
のである。

【００１２】本発明にかかる米発酵エキスの着色防止方
法は、米発酵エキスに、次亜硫酸塩から選ばれる無機還
元剤、システイン又はアセチルシステインから選ばれる
含硫アミノ酸、あるいはこれら含硫アミノ酸をアミノ酸
残基として持つアミノ酸残基３個のペプチドであるグル
タチオンを溶解させるという極めて容易な操作で、目的
とする効果を得ることができるというものである。米発
酵エキスに上記着色防止剤を添加する至適濃度は、0.05
重量％以上であり、0.05 〜0.5 重量％が好ましく、更
に好ましくは 0.05 〜0.3 重量％である。

【００１３】上記方法で使用できる無機還元剤として
は、次亜硫酸ナトリウムなどの次亜硫酸塩が本発明の目
的に対して最も好ましい効果を発揮する。これら無機還
元剤は、１つでももちろん効果を発揮するが、２つ以上
添加しても着色防止効果を発現し、本発明方法に包含さ
れる。

【００１４】含硫アミノ酸としては、システイン、アセ
チルシステインなどＳＨ基を有するもののほか、これら
含硫アミノ酸をアミノ酸残基として持つグルタチオンな
どのペプチドも本発明に含有される。これら含硫アミノ
酸または含硫アミノ酸をアミノ酸残基として持つペプチ
ドは、本発明において米発酵エキスに１つ添加しても効
果を発揮するが、２つ以上添加してももちろん着色防止
効果を発現し、本発明方法に包含される。

【００１５】本発明においては、着色防止剤として１つ
または２つ以上の無機還元剤のみ、あるいは１つまたは
２つ以上の含硫アミノ酸もしくは含硫アミノ酸をアミノ
酸残基として持つペプチドのみを添加してもよいし、ま
たこれら２つの着色防止剤を添加することにより、着色
防止効果を発揮させることができる。

【００１６】更に、本発明は、米発酵エキスと上述の着
色防止剤からなり、着色防止剤の含有量が、米発酵エキ
スに対し、0.05重量％以上である、入浴剤組成物あるい
は化粧品用組成物を提供するものである。

【００１７】米発酵エキスに、無機還元剤及び／または
含硫アミノ酸若しくは含硫アミノ酸をアミノ酸残基とし
て持つペプチドを常法により溶解させ、本発明ににかか
る組成物を得ることができる。また、該組成物には必要
に応じ、香料、防黴剤、着色料等を添加してもよい。

【００１８】

【発明の効果】以下に本発明の効果を示すために、実験
例を示す。

【００１９】実験例 熱過酷試験による米発酵エキスの着色防止効果

【００２０】１．実験方法特開昭６３−２６４５１１号の実施例１ の方法で得られ
た米発酵エキスをポリエチレン硬化ヒマシ油５０に溶解
し、システイン、アセチルシステイン、グルタチオン、
次亜硫酸ナトリウム、システイン＋アセチルシステイン
をそれぞれ添加した。該溶液の透過率の初期値と６０℃
３日間保存後の透過率を６４０ｎｍで測定した。

【００２１】２．結果 表１に結果を示す。

【００２２】

【表１】

【００２３】上記実験例により、本発明が、米発酵エキ
スの着色防止効果があることが明らかになった。よっ
て、本発明は温浴効果・美肌効果に優れた米発酵エキス
の着色防止について有用である。

【００２４】更に本発明にかかる着色防止剤は、安全性
が高いので米発酵エキスの用途を考えると、この意味で
も有用といえる。

【００２５】次に本発明の実施例を掲げるが、本発明
は、これに限定されないことは言うまでもない。

【００２６】

【実施例】

【００２７】実施例１

【表２】

【００２８】表2に示す処方割合により、米発酵エキス
に、ポリエチレン硬化ヒマシ油50で可溶化した香料、シ
ステイン、色素を添加し溶解した。

【００２９】上記と同様の方法で実施例２〜５を行っ
た。

【００３０】実施例２

【表３】

【００３１】実施例３

【表４】

【００３２】実施例４

【表５】

【００３３】実施例５

【表６】

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松尾 嘉久 香川県綾歌郡宇多津町東分335−８ (56)参考文献 特開 平３−101609（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−279313（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−264511（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−154971（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A61K 7/00 - 7/50

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 システイン、アセチルシステイン、グル
   タチオン及び次亜硫酸塩からなる群から選択される１種
   以上を、米発酵エキスに対し、0.05重量％以上添加する
   ことを特徴とする米発酵エキスの着色防止方法。
2. 【請求項２】 システイン、アセチルシステイン、グル
   タチオン及び次亜硫酸塩からなる群から選択される１種
   以上の着色防止剤と米発酵エキスとからなり、着色防止
   剤の含有量が、米発酵エキスに対し、0.05重量％以上で
   ある入浴剤組成物。
3. 【請求項３】 システイン、アセチルシステイン、グル
   タチオン及び次亜硫酸塩からなる群から選択される１種
   以上の着色防止剤と米発酵エキスとからなり、着色防止
   剤の含有量が、米発酵エキスに対し、0.05重量％以上で
   ある化粧品用組成物。