JP3271700B2 - 型鋼の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、型鋼の製造方法に
係り、特に、水平ロールの幅可変機構を備えた１基以上
の仕上ユニバーサル圧延機により、Ｈ型鋼や類似の型鋼
を製造する際に用いるのに好適な、目標ウェブ高さ通り
の製品を製造することができ、寸法調整作業を省略する
こが可能な型鋼の製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】幅可変機構を備えた水平ロールによりウ
ェブ高さを調整し、その寸法精度を向上するものとし
て、特公平３−１４２００２には、Ｈ型鋼の仕上ユニバ
ーサル圧延機に、軸方向に２分割し、且つ、軸方向に移
動調整できるように構成した水平ロールを備えたウェブ
高さ調整装置を設置して、整形圧延と共にウェブ高さの
拘束圧延を行うことが記載されている。

【０００３】又、特開平４−９４８０４には、仕上ユニ
バーサル圧延機の上流側及び／又は下流側に設置したウ
ェブ高さ測定器によって検出された、圧延材全長に渡る
ウェブ高さの測定値に基づき、前記仕上ユニバーサル圧
延機の垂直ロールの開度及び２分割水平ロールの幅を圧
延中に調整することが記載されている。

【０００４】又、特開平９−２３９４０１には、仕上圧
延を施す圧延機として、ロール幅が上下のいずれにおい
ても変更可能で、且つ上下のロールのうちの少なくとも
一方がロール軸に沿う位置調整の可能な水平ロール対を
備えたユニバーサル圧延機を用い、この圧延機の圧延時
における各部の弾性変形量を考慮に入れた水平ロール対
のロール幅とロール軸方向の位置及び垂直ロールの位置
を、粗圧延後の被圧延材の上下、左右の４箇所のフラン
ジ厚さとウェブ高さとに基づいて調整した後、仕上圧延
することが記載されている。

【０００５】これらの従来技術では、図１に示される圧
延・冷却後の製品ウェブ高さＨを目標寸法とするため
に、仕上圧延時の水平ロール設定幅ｘ0 は、熱収縮によ
る寸法変化を考慮して、次式により決定している。

【０００６】 ｘ0 ＝α・（Ｔh0−Ｔc ）・（Ｈ0 −２×ｔf0） …（１） 但し、α：線膨脹係数 Ｔh0：圧延時の材料目標温度 Ｔc ：製品温度（常温） Ｈ0 ：製品目標ウェブ高さ ｔf0：製品目標フランジ厚

【０００７】更に、仕上水平ロールの幅方向への変形を
考慮して、次式とする場合もある。

【０００８】 ｘ0 ＝α・（Ｔh0−Ｔc ）・（Ｈ0 −２×ｔf0）＋Ｐv0／Ｋ …（２） 但し、Ｐv0：目標仕上圧延垂直ロールの圧延荷重 Ｋ：仕上水平ロールの幅方向の剛性係数

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
設定方法では、必ずしも目標寸法通りの製品が得られ
ず、不良品を発生させていた。又、不良品の大量発生を
防止するために、寸法実績に従って、各サイズ毎に、仕
上水平ロール幅の寸法調整作業を行うことを余儀無くさ
れていた。

【００１０】本発明は、前記従来の問題点を解消するべ
くなされたもので、目標ウェブ高さ通りの製品を製造し
て、寸法調整作業を省略することを課題とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は、幅可変水平ロ
ールを有するユニバーサル圧延機で仕上圧延を行う型鋼
の製造方法において、前記幅可変水平ロールの幅を、型
鋼製品の目標ウェブ内幅より増加することにより、前記
課題を解決したものである。

【００１２】又、前記水平ロール幅の増加量を、ウェブ
内幅の拡縮量等の仕上圧延条件や、ウェブ厚等の製品寸
法を加味して決定するようにしたものである。

【００１３】従来法により目標寸法が得られない原因
を、発明者等が解析した結果、従来法では、図２に示す
如く、仕上圧延直後の圧延材１２の内幅Ｈｉが仕上ユニ
バーサル圧延機２０の水平ロール２２の幅ｘと等しいと
仮定しているが、実際には、仕上圧延直後の圧延材内幅
Ｈｉは仕上水平ロール幅ｘと等しくなく、又、仕上水平
ロール幅ｘと仕上圧延直後の圧延材内幅Ｈｉの差ΔＨｉ
の大きさは、製品サイズに相関があることが判明した。
図２において、１０は仕上圧延中の圧延材、２４は垂直
ロールである。

【００１４】更に、解析を進めた結果、次の知見を得る
に至った。

【００１５】（１）仕上水平ロール幅ｘと仕上圧延直後
の圧延材内幅Ｈｉの差ΔＨｉ（＝ｘ−Ｈｉ）は、仕上圧
延での内幅縮小量Δｈ（＝粗圧延水平ロール幅−仕上圧
延水平ロール幅）に依存する（図３参照）。

【００１６】（２）前記差ΔＨｉは、製品ウェブ厚ｔW
に依存する（図４参照）。

【００１７】本発明は、上記の知見から、ΔＨｉとΔｈ
又はｔW の少なくとも１つ以上との関係式を、例えば鋼
種、公称ウェブ高さ、公称フランジ幅毎に求めて、仕上
圧延直後のウェブ内幅を、仕上水平ロール幅ｘと、ΔＨ
ｉと、仕上水平ロール２２の幅方向変化量Ｐvo／Ｋを用
いて表わし、熱収縮の変化を考慮して、製品ウェブ高さ
Ｈを、仕上圧延直後のウェブ内幅と製品フランジ厚ｔfo
を用いて表わし、この関係式に、Ｈ＝Ｈ0 （製品ウェブ
高さ目標寸法）を代入して、目標ウェブ高さを得るため
の仕上水平ロール測定幅ｘ0 を求めるようにしたもので
ある。

【００１８】具体的には、ΔＨｉとΔｈ又はｔW の少な
くとも１つ以上との関係式を、例えば鋼種、公称ウェブ
高さ、公称フランジ幅毎に、例えば回帰計算手法を用い
て、各々の実績データから求めて、仕上圧延直後のウェ
ブ内幅寸法Ｈｉを、ΔＨｉを用いて、次式で表わす。

【００１９】 Ｈｉ＝ｘ−（Ｐv0／Ｋ）＋ΔＨｉ …（３）

【００２０】なお、Ｐv0／Ｋの項は、Ｋが十分大きく、
｜Ｐv0／Ｋ｜＜＜ΔＨｉの場合は無視できる。

【００２１】更に、製品ウェブ高さＨを、圧延後の冷却
による熱収縮による寸法変化を考慮して、Ｈｉとｔf0を
用いて、次式で表わす。

【００２２】 Ｈ＝Ｈｉ／｛α・（Ｔho−Ｔc ）｝＋２×ｔf0 …（４）

【００２３】前記（３）式と（４）式より、次の（５）
式を得る。

【００２４】 Ｈ＝｛ｘ−（Ｐv0／Ｋ）＋ΔＨｉ｝／｛α・（Ｔh0−Ｔc ）｝＋２×ｔf0 …（５）

【００２５】製品ウェブ高さＨを目標寸法とするために
は、Ｈ＝Ｈo とすればよいから、これを（５）式に代入
して次式を得る。

【００２６】 ｘ0 ＝（Ｈo −２×ｔf0）・α・（Ｔh0−Ｔc ）＋（Ｐv0／Ｋ）−ΔＨｉ …（６）

【００２７】よって、この（６）式で求められた仕上圧
延水平ロール設定幅ｘ0 で仕上圧延を行うことにより、
目標ウェブ高さＨo どおりの製品を製造することが可能
となる。

【００２８】

【発明の実施の形態】以下、ウェブ高さ４５０ｍｍ、フ
ランジ幅２００ｍｍシリーズのウェブ厚さ９〜１２ｍ
ｍ、フランジ厚さ１２〜２５ｍｍの引き張り強度５０ｋ
ｇｆ／ｃｍ² の鋼種に本発明を適用した実施形態につい
て詳細に説明する。

【００２９】本実施形態は、図２に示したような、水平
ロール２２の幅可変機構を備えた仕上ユニバーサル圧延
機２０で、Ｈ型鋼を圧延するに際して、水平ロール２２
の幅に対する出側製品の内法寸法を、仕上圧延での内幅
縮小量（粗圧延ロール幅−仕上圧延ロール幅）から推定
するための内幅寸法推定演算式を用いて、所望の製品内
幅寸法を得るための水平ロール幅の設定値を算出し、前
記水平ロール２２の幅可変機構により、水平ロール幅を
該設定値どおりに設定するようにしたものである。

【００３０】ウェブ厚さを用いてΔＨｉを推定する場合
に適用した本発明の第１実施形態では、圧延チャンスの
異なる合計１２７本の圧延実績データ（圧延時の粗及び
仕上げの水平ロール幅、フランジ厚、ウェブ厚、ウェブ
高さ、仕上圧延垂直荷重、仕上圧延温度）を用いて、圧
延後のウェブ内幅変動量ΔＨｉを推定する式を回帰計算
によって求める。

【００３１】具体的には、次のような手順による。

【００３２】（１）ΔＨｉの実績値を、次式によって求
める。

【００３３】 Ｈｉ(n) ＝Ｈ(n) ・α（Ｔh(n)−Ｔc ）−２×ｔf(n) …（７） ΔＨｉ(n) ＝Ｈｉ(n) −ｘ(n) ＋（Ｐv(n)／Ｋ） …（８） 但し、ｎ：圧延素材毎に決めたデータナンバー（ｎ＝１
〜１２７） Ｈｉ(n) ：ｎ番目の圧延材の仕上圧延直後のウェブ内幅 Ｈ(n) ：ｎ番目の圧延材の製品ウェブ高さ Ｔh(n)：ｎ番目の圧延材の仕上圧延温度 ｔf(n)：ｎ番目の圧延材の製品フランジ厚 ΔＨｉ(n) ：ｎ番目の圧延材の仕上圧延直後のウェブ内
幅変動量 ｘ(n) ：ｎ番目の圧延材における仕上水平ロール幅 Ｐv(n)：ｎ番目の圧延材の仕上圧延垂直荷重

【００３４】（２）次いで、仕上圧延直後のウェブ内幅
変動量と製品ウェブ厚の関係を次式で定義する。

【００３５】 ΔＨｉ＝ａ1 ・ｔW ＋ａ2 …（９） 但し、ΔＨｉ：仕上圧延直後のウェブ内幅変動量

【００３６】（３）次いで、この（９）式を次式のよう
に書き換える。

【数１】

【００３７】（４）すると、仕上圧延直後のウェブ内幅
推定の残差

【数２】 は、（１０）式より、

【数３】 となる。

【００３８】（５）次いで、最小二乗法により、前記残
差のｎ＝１〜１２７までの２乗の和

【数４】 が最小になるような

【数５】 をそれぞれ求める。

【００３９】（６）以上より、圧延直後のウェブ内幅
は、次式により表わせる。

【数６】 （７）更に、製品のウェブ高さは、次式により表わせ
る。

【数７】 但し、ｔf ：製品ウェブ厚 Ｔh ：仕上圧延温度

【００４０】（８）（１２）式に（１１）式を代入し
て、展開すると次式が得られる。

【数８】

【００４１】（９）（１３）式に、所望の製品寸法及び
所望の圧延条件を代入すれば、次式が得られる。

【数９】 但し、ｔw0：製品目標ウェブ厚 ｘ0 ：目標寸法を得るための仕上水平ロール幅設定値 即ち、この（１４）式により、所定の圧延条件の下で、
所望のウェブ高さを得るための仕上水平ロール幅の設定
値ｘ0 が求められる。

【００４２】（１４）式を展開すると、次式を得る。

【数１０】

【００４３】ここで、

【数１１】 に置き換えると、次式が得られる。

【数１２】

【００４４】この（１６）式によって求めた製品ウェブ
高さと実際の製品ウェブ高さとを比較したときの偏差の
ばらつきは、（１４）式でロール幅を設定したときに得
られる製品のウェブ高さのばらつきを表わす。

【００４５】発明者等の調査結果によると、従来法によ
るウェブ高さのばらつきが約３．０ｍｍあったのに対し
て、本発明法によれば、約２．０ｍｍまで改善されるこ
とが確認できた。

【００４６】次に、縮小量を用いてΔＨｉを推定する場
合に適用した、本発明の第２実施形態を詳細に説明す
る。

【００４７】本実施形態においては、第１実施形態で、
ウェブ厚を用いているところを、全て、仕上圧延での内
幅縮小量に置き換える。

【００４８】これにより得られる式は、次式となる。

【数１３】 但し、Δｈ0 ：仕上圧延での内幅縮小量 ここで、 Δｈ0 ＝Ｘ0 −ｘ0 …（１８） 但し、Ｘ0 ：粗圧延機水平ロール幅

【００４９】（１７）式に（１８）式を代入して展開す
れば、仕上水平ロール設定幅ｘ0 を求める次式が得られ
る。

【数１４】

【００５０】この（１９）式を第１実施形態と同様に展
開すると、次式が得られる。

【数１５】

【００５１】この第２実施形態によれば、従来法による
ウェブ高さのばらつきが約３．０ｍｍあったのが、約
１．５ｍｍまで改善できた。

【００５２】なお、前記実施形態においては、ｘ0 を決
定するために、ウェブ厚あるいは内幅縮小量をそれぞれ
単独に用いる例を示したが、両者を共に用いれば、更
に、ばらつきを減少できる。又、いずれも、本発明がＨ
型鋼に適用されていたが、本発明の適用対象はこれに限
定されず、Ｈ型鋼以外の類似の型鋼にも、同様に適用で
きることは明らかである。

【００５３】

【発明の効果】本発明は、製品のウェブ高さの変動要因
が、仕上圧延時のウェブ内幅の縮小量あるいは製品ウェ
ブ厚であることを解明し、これら変動要因でウェブ高さ
の変動量を推定することにより、所望のウェブ高さを得
るためのロール幅を算出するようにしたので、製品ウェ
ブ高さ精度が向上して、不良品率が減少し、寸法実績を
監視しながらロール幅の調整を行うような寸法調整作業
を省略できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】Ｈ型鋼の各部寸法を説明するための斜視図

【図２】Ｈ型鋼をユニバーサル圧延機で圧延している状
態を示す断面図

【図３】本発明の原理を説明するための、ロール幅に対
する圧延材のウェブ内幅変化量と仕上圧延でのウェブ内
幅縮小量の関係の例を示す線図

【図４】同じく、ロール幅に対する圧延材のウェブ内幅
変化量と製品ウェブ厚の関係の例を示す線図

【符号の説明】

１０、１２…圧延材 ２０…仕上ユニバーサル圧延機 ２２…水平ロール

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平９−239401（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−94804（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−142002（ＪＰ，Ａ) 特公 平８−13363（ＪＰ，Ｂ２) 特許2548377（ＪＰ，Ｂ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B21B 1/08

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】幅可変水平ロールを有するユニバーサル圧
   延機で仕上圧延を行う型鋼の製造方法において、 前記幅可変水平ロールの幅を、型鋼製品の目標ウェブ内
   幅より増加することを特徴とする型鋼の製造方法。
2. 【請求項２】請求項１において、前記水平ロール幅の増
   加量を、仕上圧延条件や製品寸法を加味して決定するこ
   とを特徴とする型鋼の製造方法。
3. 【請求項３】請求項２において、前記仕上圧延条件が、
   ウェブ内幅の拡縮量であることを特徴とする型鋼の製造
   方法。
4. 【請求項４】請求項２において、前記製品寸法がウェブ
   厚であることを特徴とする型鋼の製造方法。