JP3234190B2 - 光学活性フェニルオキシラン化合物の製法 - Google Patents

光学活性フェニルオキシラン化合物の製法

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JP3234190B2 JP16045498A JP16045498A JP3234190B2 JP 3234190 B2 JP3234190 B2 JP 3234190B2 JP 16045498 A JP16045498 A JP 16045498A JP 16045498 A JP16045498 A JP 16045498A JP 3234190 B2 JP3234190 B2 JP 3234190B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学活性フェニル
オキシラン化合物の製法に関する。さらに詳しくは、不
斉酸化による光学活性フェニルオキシラン化合物の製法
および該製法によって得られた光学活性フェニルオキシ
ラン化合物から1,5−ベンゾチアゼピン誘導体を製造
する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】1,5−ベンゾチアゼピン誘導体は、狭
心症、心筋梗塞、不整脈などの心臓疾患、高血圧症、冠
血管梗塞、脳梗塞などの循環器系疾患に対して有用な化
合物である。特に、塩酸ジルチアゼム〔化学名:(2
S,3S)−3−アセトキシ−5−〔2−(ジメチルア
ミノ)エチル〕−2−(4−メトキシフェニル)−2,
3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)
−オン塩酸塩〕は、狭心症、本態性高血圧症の治療に広
く使用されている。
【0003】前記1,5−ベンゾチアゼピン誘導体の中
間体として有用な光学活性グリシッド酸誘導体を製造す
る方法として、近年、種々の方法が提案されている。前
記グリシッド酸誘導体の主たる製法としては、(A)不
斉加水分解法によって合成する方法(特表平4−501
360号公報、特公平6−78号公報、特公平7−12
1231号公報)、(B)不斉エステル交換法によって
製造する方法(特開平4−228095号公報、特開平
5−76389号公報、特開平6−78790号公
報)、(C)化学的光学分割法によって合成する方法
(特開昭60−13776号公報、特公平4−2826
8号公報、特開平2−231480号公報)、(D)不
斉アミド化法によって合成する方法(国際公開第95/
07359号パンフレット)などが知られている。
【0004】しかしながら、前記(A)〜(D)のいず
れの方法においても、原料としてラセミ型トランス−グ
リシッド酸誘導体を使用しているため、目的とする光学
異性体の収率は、ラセミ体の50%以下であるという欠
点がある。
【0005】また、特開昭59−196881号公報に
は、トランス−3−(4−アセトキシフェニル)シンナ
ミルアルコールをテトライソプロポキシチタンおよびL
−酒石酸ジエチルの存在下、m−クロロ過安息香酸で酸
化して、(2S,3S)−3−(4−アセトキシフェニ
ル)グリシジルアルコールを製造し、二酸化ルテニウム
−メタ過ヨウ素酸ナトリウムで酸化後、ジメチル硫酸で
メチルエステルとして、(2R,3S)−3−(4−ア
セトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステルを得る
方法が提案されている。しかしながら、かかる方法によ
れば、その反応工程が非常に煩雑であるとともに、収率
があまり高くないという欠点がある。
【0006】また、近年、ジオキシラン化合物を用いる
酸化反応が種々検討されている〔ケミカル・レビューズ
(Chemical Reviews)89巻1187
−1201頁(1989年)〕。例えば、ジャーナル・
オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Ch
em.)50巻2847−2853頁(1985年)に
は、トランス−ケイ皮酸エチルエステルにキラリティー
を有しないジメチルジオキシランを添加し、25℃で2
2時間、反応させることにより、エポキシ化させること
が報告されている。
【0007】しかしながら、前記ジメチルジオキシラン
は、キラリティーを有しないものであり、本発明の目的
とする光学活性を有するフェニルオキシラン化合物が得
られないという欠点がある。
【0008】また、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケ
ミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.So
c.)118巻11311−11312 頁(1996
年)には、式:
【0009】
【化39】
【0010】で表わされるケトン化合物をオキソン〔デ
ュ・ポン(Du Pont)社製、商品名、組成式:2
KHSO5 ・KHSO4 ・K2 SO4 〕で酸化させて得
られたキラルなジオキシラン化合物を用いて、単純なC
2対称化合物であるとともに、二重結合に電子供与性の
フェニル基が2つ結合したトランス−スチルベンを不斉
エポキシ化させることが報告されている。
【0011】しかしながら、前記文献には、本発明の目
的とする光学活性フェニルオキシラン化合物の製法に関
する記載や示唆が一切ない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術に鑑みてなされたものであり、対称要素がなく、複雑
な化合物であるスチレン誘導体を、キラルなケトン化合
物と酸化剤とから生成する不斉酸化剤(例えば、キラル
なジオキシラン化合物)を用いて不斉酸化(不斉エポキ
シ化)させることにより、光学活性フェニルオキシラン
化合物を高収率、かつ高光学純度で収得することがで
き、またその製造の際に使用される不斉酸化剤の原料で
あるキラルなケトン化合物を再利用することができると
いう、生産性および経済性に優れた製法を提供すること
を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 一般式(I):
【0014】
【化40】
【0015】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環、Rは−CO2 q で示される基またはこれに変換可
能な基、Rq はエステル残基を示す)で表わされるスチ
レン誘導体(I)に、キラルなケトン化合物と酸化剤と
から生成する不斉酸化剤を作用させることを特徴とする
一般式(II):
【0016】
【化41】
【0017】(式中、環AおよびRは前記と同じ。*は
不斉炭素原子であることを示す)で表わされる光学活性
フェニルオキシラン化合物(II)の製法、〔2〕 キラル
なケトン化合物が、一般式(V):
【0018】
【化42】
【0019】〔式中、環Arは置換基を有していてもよ
い、1〜3環式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(V)の光学異性体である前記〔1〕記載の製
法、〔3〕 キラルなケトン化合物が、一般式(VI):
【0020】
【化43】
【0021】〔式中、Ra およびRb は水素原子または
置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置換
基であるか、または(II) Rc およびRd はたがいに結
合して一般式:
【0022】
【化44】
【0023】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0024】
【化45】
【0025】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(VI)の光学異性体である前記〔1〕または
〔2〕記載の製法、〔4〕 キラルなケトン化合物と酸
化剤との反応および生成する不斉酸化剤をスチレン誘導
体(I)に作用させる反応を同一反応系内で行なう前記
〔1〕〜〔3〕いずれか記載の製法、〔5〕 一般式
(I):
【0026】
【化46】
【0027】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環、Rは−CO2 q で示される基またはこれに変換可
能な基、Rq はエステル残基を示す)で表わされるスチ
レン誘導体(I)に、キラルなジオキシラン化合物を作
用させることを特徴とする一般式(II):
【0028】
【化47】
【0029】(式中、環AおよびRは前記と同じ。*は
不斉炭素原子であることを示す)で表わされる光学活性
フェニルオキシラン化合物(II)の製法、〔6〕 キラル
なジオキシラン化合物が、一般式(III):
【0030】
【化48】
【0031】〔式中、環Arは置換基を有していてもよ
い1〜3環式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
キシラン化合物(III) の光学異性体である前記〔5〕記
載の製法、〔7〕 キラルなジオキシラン化合物が、一
般式(IV):
【0032】
【化49】
【0033】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0034】
【化50】
【0035】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0036】
【化51】
【0037】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
キシラン化合物(IV)の光学異性体である前記〔5〕また
は〔6〕記載の製法、〔8〕 一般式(VI):
【0038】
【化52】
【0039】〔式中、Ra およびRb は水素原子または
置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子または置換基
であるか、または(II) Rc およびRd はたがいに結合
して一般式:
【0040】
【化53】
【0041】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0042】
【化54】
【0043】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii)−NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(VI)の光学異性体と酸化剤とを反応させ、生成
するキラルなジオキシラン化合物(IV)をスチレン誘導体
(I)に作用させる前記〔5〕〜〔7〕いずれか記載の
製法、
〔9〕 ケトン化合物(VI) の光学異性体と酸化
剤との反応および生成するキラルなジオキシラン化合物
(IV)をスチレン誘導体(I)に作用させる反応を同一反
応系内で行なう前記〔8〕記載の製法、〔10〕 スチ
レン誘導体(I)がトランス体であり、光学活性フェニ
ルオキシラン化合物(II)が、(2R,3S)−異性体ま
たは(2S,3R)−異性体である前記〔1〕〜
〔9〕
いずれか記載の製法、〔11〕 スチレン誘導体(I)
がトランス体であり、キラルなケトン化合物が一般式
(VI−a):
【0044】
【化55】
【0045】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0046】
【化56】
【0047】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0048】
【化57】
【0049】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるキラ
ルなケトン化合物(VI−a)であり、光学活性フェニル
オキシラン化合物(II)が(2R,3S)−異性体である
前記〔1〕〜〔4〕いずれか記載の製法、〔12〕 ス
チレン誘導体(I)がトランス体であり、キラルなケト
ン化合物が一般式(VI−b):
【0050】
【化58】
【0051】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0052】
【化59】
【0053】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0054】
【化60】
【0055】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるキラ
ルなケトン化合物(VI−b)であり、光学活性フェニル
オキシラン化合物(II)が(2S,3R)−異性体である
前記〔1〕〜〔4〕いずれか記載の製法、〔13〕 ス
チレン誘導体(I)がトランス体であり、キラルなジオ
キシラン化合物が、一般式(IV−a):
【0056】
【化61】
【0057】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0058】
【化62】
【0059】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0060】
【化63】
【0061】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるキラ
ルなジオキシラン化合物(IV−a)であり、光学活性フ
ェニルオキシラン化合物(II)が(2R,3S)−異性体
である前記〔5〕〜
〔9〕いずれか記載の光学活性フェ
ニルオキシラン化合物(II)の製法、〔14〕 スチレン
誘導体(I)がトランス体であり、キラルなジオキシラ
ン化合物が、一般式(IV−b):
【0062】
【化64】
【0063】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0064】
【化65】
【0065】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0066】
【化66】
【0067】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるキラ
ルなジオキシラン化合物(IV−b)であり、光学活性フ
ェニルオキシラン化合物(II)が(2S,3R)−異性体
である前記〔5〕〜
〔9〕いずれか記載の製法、〔1
5〕 Yが−CO−O−CH2 −基、Ra 〜Rd が、
(a)Ra およびRb が水素原子、Rc およびRd がた
がいに結合して
【0068】
【化67】
【0069】を形成しているか、Rc が水素原子、Rd
がハロゲン原子であるか、もしくはR c が水素原子、R
d がニトロ基であるか、または(b)Ra がハロゲン原
子、Rb が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合し
【0070】
【化68】
【0071】を形成している前記〔3〕、〔4〕、
〔7〕、〔8〕、
〔9〕、〔11〕、〔12〕、〔1
3〕または〔14〕記載の製法、〔16〕 Ra および
b が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合して
【0072】
【化69】
【0073】を形成している前記〔15〕記載の製法、
〔17〕 一般式(I)で表わされるスチレン誘導体
(I)に、キラルなジオキシラン化合物を作用させて得
られた反応混合物から、キラルなジオキシラン化合物を
還元させて生成したケトン化合物および光学活性フェニ
ルオキシラン化合物(II)を、有機溶媒に対する溶解度差
を利用した分離方法により、それぞれ高純度で製造する
前記〔5〕記載の製法、〔18〕 反応混合物に含まれ
る不斉酸化剤を還元し、生成したケトン化合物および光
学活性フェニルオキシラン化合物(II)を、有機溶媒に対
する溶解度差を利用した分離方法により、それぞれ高純
度で製造する前記〔1〕記載の製法、〔19〕 ケトン
化合物が、一般式(V):
【0074】
【化70】
【0075】〔式中、環Arは置換基を有していてもよ
い、1〜3環式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(V)の光学異性体である前記〔17〕または
〔18〕記載の製法、〔20〕 ケトン化合物が、一般
式(VI):
【0076】
【化71】
【0077】〔式中、Ra およびRb は水素原子または
置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置換
基であるか、または(II) Rc およびRd はたがいに結
合して一般式:
【0078】
【化72】
【0079】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0080】
【化73】
【0081】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(VI)の光学異性体である前記〔17〕〜〔1
9〕いずれか記載の製法、〔21〕 環Aが低級アルキ
ル基、低級アルコキシ基およびハロゲン原子からなる群
より選ばれた置換基1〜3個を有するフェニル基であ
り、Rが−CO2 q(Rq はエステル残基を示す)で
ある前記〔1〕〜〔20〕いずれか記載の製法、〔2
2〕 環Aが4−低級アルキルフェニル基または4−低
級アルコキシフェニル基であり、Rq が低級アルキル基
である前記〔21〕記載の製法、〔23〕 環Aが4−
メトキシフェニル基であり、Rq がメチル基である前記
〔22〕記載の製法、〔24〕 一般式(II) :
【0082】
【化74】
【0083】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環、Rは−CO2 q で示される基またはこれに変換可
能な基、Rq はエステル残基を示す。*は不斉炭素原子
であることを示す)で表わされる光学活性フェニルオキ
シラン化合物(II)から一般式(VII):
【0084】
【化75】
【0085】(式中、環Bは置換または非置換ベンゼン
環、R2 は水素原子または置換アルキル基、R3 は低級
アルカノイル基を示し、環Aおよび*は前記と同じ)で
表わされる1,5−ベンゾチアゼピン誘導体またはその
薬理的に許容しうる塩を製造する方法において、前記
〔1〕〜〔23〕いずれか記載の製法で得られた光学活
性フェニルオキシラン化合物(II)を用いることを特徴と
する1,5−ベンゾチアゼピン誘導体またはその薬理的
に許容しうる塩の製法、ならびに〔25〕 一般式(I
I) :
【0086】
【化76】
【0087】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環、Rは−CO2 q で示される基またはこれに変換可
能な基、Rq はエステル残基を示す。*は不斉炭素原子
であることを示す)で表わされる光学活性フェニルオキ
シラン化合物(II)から一般式:
【0088】
【化77】
【0089】(式中、環Aおよび環Bは置換または非置
換ベンゼン環、*は不斉炭素原子であることを示す)で
表わされるニトロカルボン酸化合物またはその塩を製造
する方法において、前記光学活性フェニルオキシラン化
合物(II)として、前記〔1〕〜〔23〕いずれか記載の
製法で得られた光学活性フェニルオキシラン化合物(II)
を用いることを特徴とするニトロカルボン酸化合物また
はその塩の製法に関する。
【0090】
【発明の実施の形態】本発明の製法によれば、出発物質
として、一般式(I):
【0091】
【化78】
【0092】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環、Rは−CO2 q で示される基またはこれに変換可
能な基、Rq はエステル残基を示す)で表わされるスチ
レン誘導体(I)が用いられる。
【0093】一般式(I)で表わされるスチレン誘導体
(I)において、環Aは、前記したように、置換または
非置換ベンゼン環である。具体的には、環Aとしては、
フェニル基をはじめ、低級アルキル基、低級アルコキシ
基およびハロゲン原子からなる群より選ばれた置換基を
1〜3個有するフェニル基があげられる。低級アルキル
基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびt
−ブチル基に代表される炭素数1〜4のアルキル基があ
げられる。低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エ
トキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基に代表される
炭素数1〜4のアルコキシ基があげられる。また、ハロ
ゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子お
よびヨウ素原子があげられる。環Aのなかでは、低級ア
ルキル基、低級アルコキシ基およびハロゲン原子からな
る群より選ばれた置換基を1〜3個有するフェニル基が
好ましく、4−低級アルキルフェニル基および4−低級
アルコキシフェニル基がより好ましく、とりわけ4−メ
チルフェニル基および4−メトキシフェニル基が好まし
い。
【0094】前記Rは、−CO2 q (式中、Rq は前
記と同じ)で示される基またはこれに変換可能な基であ
る。−CO2 q に変換可能な基としては、例えば、一
般式:
【0095】
【化79】
【0096】(式中、Rr は前記Rq と同様の基を示
す)で表わされる基、一般式:
【0097】
【化80】
【0098】(式中、Rs およびRt はともに水素原子
であるか、一方が水素原子、他方がR q と同様の基であ
るか、またはともにRq と同様の基あるいはたがいに結
合して隣接する窒素原子とともに置換基を有していても
よい複素環を形成していることを示す)で表わされる
基、チオカルボキシル基、カルボキシル基、シアノ基等
をあげることができる。
【0099】Rq としては、慣用のエステル残基であれ
ば、いずれも使用することができる。
【0100】Rq の具体例としては、メチル基、エチル
基、プロピル基、ブチル基などに代表される炭素数1〜
4の低級アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシ
ル基などに代表される炭素数3〜7のシクロアルキル
基、フェニル基、ナフチル基などに代表されるアリール
基などがあげられる。これら低級アルキル基、シクロア
ルキル基およびアリール基は、置換基を有していてもよ
い。低級アルキル基およびシクロアルキル基の置換基と
しては、置換または非置換フェニル基、ハロゲン原子、
炭素数1〜4の低級アルコキシ基等があげられ、アリー
ル基の置換基としては、炭素数1〜4の低級アルキル
基、ハロゲン原子、炭素数1〜4の低級アルコキシ基等
があげられる。これらのRq の中では、低級アルキル基
が好ましく、なかでも特にメチル基が好ましい。
【0101】また、Rs およびRt がたがいに結合して
隣接する窒素原子とともに形成する複素環としては、ピ
ロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン
環等の5〜6員の含窒素複素環をあげることができ、こ
れら複素環は炭素数1〜4の低級アルキル基、ハロゲン
原子等の置換基を有していてもよい。
【0102】一般式(I)で表わされるスチレン誘導体
(I)の幾何異性体に関して、−CH=CH−基に結合
している環Aと−Rとの位置関係は、シスおよびトラン
スのいずれであってもよい。
【0103】前記スチレン誘導体(I)のなかでは、一
般式(I)において、環Aがメトキシフェニル基または
メチルフェニル基であり、Rがメトキシカルボニル基で
あり、環AとRとがトランスに結合しているスチレン誘
導体(I)、なかでもトランス−4−メトキシケイ皮酸
メチルエステルは、好適に使用しうるものである。
【0104】キラルなケトン化合物と酸化剤とから生成
する不斉酸化剤は、キラルなケトン化合物に酸化剤を作
用させて得られるものであり、不斉酸化を生じるもので
あればよく、単一の不斉酸化剤であってもよく、複数の
不斉酸化剤の混合物であってもよい。かかる不斉酸化剤
の具体例としては、キラルなジオキシラン化合物があげ
られるが、これに限定されるものではなく、またキラル
なジオキシラン化合物を含む混合物であってもよい。
【0105】不斉酸化剤の生成に用いるキラルなケトン
化合物としては、例えば、単糖類または多糖類の1つま
たは複数の水酸基をオキソ基に変換し、残りの水酸基を
保護した化合物(例えば、1,2:4,5−ジ(O−イ
ソプロピリデン)−D−エリトロ−2,3−ヘキソジウ
ロ−2,6−ピラノース〔テトラヘドロン(Tetrahedro
n) 47巻2133頁(1991年)〕)などの天然物
起源のキラルなケトン化合物や、キラルなビアリール骨
格を有するケトン化合物などの非天然のキラルなケトン
化合物をあげることができる。
【0106】前記キラルなケトン化合物の代表例として
は、例えば、一般式(V):
【0107】
【化81】
【0108】〔式中、環Arは置換基を有していてもよ
い1〜3環式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(V)の光学異性体があげられる。
【0109】前記ケトン化合物(V)において、環Ar
は、置換基を有していてもよい1〜3環式の芳香環であ
る。かかる1〜3環式の芳香環としては、例えば、ベン
ゼン環、ナフタレン環、ナフトキノン環、アントラセン
環、アントラキノン環、フェナントレン環等をあげるこ
とができる。また、芳香環に結合するYの置換位置は、
軸性キラリティーを生じるのであれば、特に制限がない
が、2つの環Ar間の結合のオルト位にYが結合してい
ることが好ましい。
【0110】芳香環上の置換基としては、例えば、フッ
素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子に代表さ
れるハロゲン原子、ニトロ基、メチルスルホニル基、p
−トルエンスルホニル基、トリフルオロメチル基、シア
ノ基、メトキシカルボニル基、メチルスルホキシド基、
スルホニルアミド基等の電子吸引性基;メチル基、エチ
ル基、プロピル基およびブチル基に代表される炭素数1
〜4の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロ
ポキシ基およびブトキシ基に代表される炭素数1〜4の
低級アルコキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル
基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基に代表さ
れる炭素数3〜7のシクロアルキル基、ベンジル基およ
びフェネチル基に代表される炭素数7〜10のアラルキ
ル基等の電子供与性基をあげることができる。これら基
のなかでは、電子吸引性基が好ましく、とりわけハロゲ
ン原子およびニトロ基が好ましい。
【0111】一方、ケトン化合物(V)において、Y
は、前記したように、 (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 − であり、Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水
素原子、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニ
ル基、Alk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4および
Alk5 はそれぞれ低級アルキレン基である。
【0112】R1 におけるアルキルスルホニル基として
は、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル
基、プロピルスルホニル基およびブチルスルホニル基に
代表されるアルキル部分が炭素数1〜4のアルキルスル
ホニル基があげられる。また、アリールスルホニル基と
しては、例えば、ベンゼンスルホニル基、p−トルエン
スルホニル基、ナフチルスルホニル基などのアリール部
分が炭素数6〜10であるアリールスルホニル基があげ
られる。
【0113】また、Alk1 、Alk2 、Alk3 、A
lk4 およびAlk5 における低級アルキレン基の具体
例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメ
チレン基、テトラメチレン基、メチルメチレン基、メチ
ルエチレン基およびメチルトリメチレン基に代表される
直鎖または分枝鎖を有する炭素数1〜4の低級アルキレ
ン基があげられる。
【0114】前記Yのなかでは、前記(ii) で表わされ
る基が好ましく、そのなかでも、Qがカルボニル基であ
ることがとりわけ好ましい。具体的には、Yとしては、
−CO−O−CH2 −が好ましい。
【0115】前記キラルなケトン化合物のより具体的な
例としては、例えば、一般式(VI):
【0116】
【化82】
【0117】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基を示す。 (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0118】
【化83】
【0119】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0120】
【化84】
【0121】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子もしくは置換基を示す)で表わされる基
を形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(VI)の光学異性体があげられる。
【0122】ここで、Ra 〜Rm における置換基として
は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子
に代表されるハロゲン原子、ニトロ基、メチルスルホニ
ル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメチル
基、シアノ基、メトキシカルボニル基、メチルスルホキ
シド基、スルホニルアミド基等の電子吸引性基;メチル
基、エチル基、プロピル基およびブチル基に代表される
炭素数1〜4の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ
基、プロポキシ基およびブトキシ基に代表される炭素数
1〜4の低級アルコキシ基、シクロプロピル基、シクロ
ブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基に
代表される炭素数3〜7のシクロアルキル基、ベンジル
基およびフェネチル基に代表される炭素数7〜10のア
ラルキル基等の電子供与性基をあげることができる。こ
れらの基のなかでは、電子吸引性基が好ましく、なかで
も特にハロゲン原子およびニトロ基が好ましい。
【0123】Ra 〜Rd としては、(a)Ra およびR
b が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合して
【0124】
【化85】
【0125】を形成しているか、Rc が水素原子、Rd
がハロゲン原子であるか、もしくはR c が水素原子、R
d がニトロ基であるか、または(b)Ra がハロゲン原
子、Rb が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合し
【0126】
【化86】
【0127】を形成している場合が好ましく、とりわ
け、Ra およびRb が水素原子、Rc およびRd がたが
いに結合して
【0128】
【化87】
【0129】を形成している場合が好ましい。
【0130】また、前記ケトン化合物(VI)のYとして
は、ケトン化合物(V)のYと同様の基をあげることが
できる。
【0131】前記ケトン化合物(VI) の光学異性体とし
ては、軸性キラリティーに基づく、2つの異性体、即
ち、一般式(VI−a):
【0132】
【化88】
【0133】〔式中、Ra 、Rb 、Rc 、Rd およびY
は前記と同じ〕で表わされるキラルなケトン化合物(VI
−a)、および一般式(VI−b):
【0134】
【化89】
【0135】〔式中、Ra 、Rb 、Rc 、Rd およびY
は前記と同じ〕で表わされるキラルなケトン化合物(VI
−b)があげられる。
【0136】前記ケトン化合物(V)の光学異性体およ
びケトン化合物(VI) の光学異性体を酸化剤と反応させ
ることにより、不斉酸化剤を容易に得ることができる。
この酸化剤との反応は、アルカリ剤の存在下または非存
在下で、適当な溶媒中で実施することができる。
【0137】前記酸化剤との反応に使用する酸化剤とし
ては、例えば、m−クロロ過安息香酸、過酢酸、ペルオ
キソ硝酸、ペルオキソ炭酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオ
キソモノ硫酸、ペルオキソホウ酸、過ギ酸などのペルオ
キソ酸、およびそのアルカリ金属塩、過酸化水素などの
過酸化物などがあげられる。これらの酸化剤のなかで
は、ペルオキソモノ硫酸カリウム塩を含む酸化剤である
オキソンは、本発明において好適に使用しうるものであ
る。なお、かかる酸化剤、溶媒および原料化合物のなか
には、金属などが不純物として含まれていることがあ
り、かかる不純物が反応に関与しないようにするため
に、キレート化剤を添加してもよい。前記キレート化剤
としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレン
ジアミン四酢酸二ナトリウム、クラウンエーテル(18
−クラウン−6など)などがあげられる。前記キレート
化剤は、そのままの状態で前記スチレン誘導体(I)の
溶液に添加してもよく、またあらかじめ溶媒に溶解させ
て溶液としたのち、前記スチレン誘導体(I)の溶液に
添加してもよい。
【0138】前記アルカリ剤としては、炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属、炭酸水素ナ
トリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金
属、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸アルカリ
金属などを用いることができる。
【0139】前記溶媒としては、例えば、1,2−ジメ
トキシエタン、ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオ
キサン、1,3−ジオキソラン、ジグリムなどのエーテ
ル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロ
ニトリルなどのニトリル系溶媒;メタノール、エタノー
ル、プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノー
ル、sec−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコ
ール系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系
溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノンなど
のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキ
シド系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロ
ホルム、四塩化炭素、ヘキサン、シクロヘキサン、ペン
タンなどのハロゲン化されていてもよい脂肪族炭化水素
系溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロ
ロベンゼンなどのハロゲン化されていてもよい芳香族炭
化水素系溶媒などの有機溶媒、水およびこれらの混合溶
媒などがあげられる。これらの溶媒のなかでは、エーテ
ル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール系溶媒、水およ
びこれらの混合溶媒、とりわけ1,2−ジメトキシエタ
ン、1,4−ジオキサン、アセトニトル、水およびこれ
らの混合溶媒は、好適に使用しうるものである。
【0140】反応温度は、不斉酸化剤を生成する温度で
あれば制限がなく、所望の不斉酸化剤により、適宜選択
することができるが、−5〜50℃、とりわけ0〜40
℃であることが望ましい。
【0141】また、前記反応後に得られる不斉酸化剤
は、一旦単離してスチレン誘導体(I)に作用させても
よく、また、単離することなく、不斉酸化剤が生成する
反応系と同一の反応系内でスチレン誘導体(I)に作用
させてもよい。
【0142】不斉酸化剤を単離しないままスチレン誘導
体(I)に作用させる場合には、ケトン化合物(V)お
よび(VI) の光学異性体を不斉酸化剤に変換したのち、
スチレン誘導体(I)に作用させてもよく、また、同一
反応系内でケトン化合物(V)および(VI) の光学異性
体から不斉酸化剤への変換と、ジオキシラン化合物(II
I)および(IV) の光学異性体によるスチレン誘導体
(I)の不斉酸化反応とを並行して行なわせてもよい。
【0143】なお、キラルなケトン化合物(VI−a)を用
いた場合には、その軸性キラリティーを保持した不斉酸
化剤が得られ、また、キラルなケトン化合物(VI−b)を
用いた場合には、その軸性キラリティーを保持した不斉
酸化剤が得られる。
【0144】キラルなケトン化合物と酸化剤とから生成
する不斉酸化剤の1つであるキラルなジオキシラン化合
物は、ジオキシラン環(炭素−酸素−酸素からなる3員
環)を有するとともに、キラリティーを有する化合物で
ある。キラリティーには、不斉炭素原子に基づくものお
よび軸性キラリティーに基づくものが含まれる。
【0145】キラルなジオキシラン化合物としては、例
えば、単糖類または多糖類の1つまたは複数の水酸基を
オキソ基に変換し、残りの水酸基を保護した化合物(例
えば、1,2:4,5−ジ(O−イソプロピリデン)−
D−エリトロ−2,3−ヘキソジウロ−2,6−ピラノ
ース〔テトラヘドロン(Tetrahedron) 47巻2133頁
(1991年)〕)などの天然物起源のキラルなケトン
化合物や、キラルなビアリール骨格を有するケトン化合
物などの非天然のキラルなケトン化合物を、例えば、ケ
ミカル・レビューズ(Chemical Review
s)89巻1187頁(1989年)に記載の方法に準
じて酸化させることにより、ケトン部分をジオキシラン
に変換して得られる化合物等をあげることができる。
【0146】前記キラルなジオキシラン化合物の代表例
としては、例えば、一般式(III):
【0147】
【化90】
【0148】〔式中、環Arは置換基を有していてもよ
い1〜3環式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
キシラン化合物(III) の光学異性体があげられる。
【0149】前記ジオキシラン化合物(III) において、
環Arは、置換基を有していてもよい1〜3環式の芳香
環である。かかる1〜3環式の芳香環としては、例え
ば、ベンゼン環、ナフタレン環、ナフトキノン環、アン
トラセン環、アントラキノン環、フェナントレン環等を
あげることができる。また、芳香環に結合するYの置換
位置は、軸性キラリティーを生じるのであれば、特に制
限がないが、2つの環Ar間の結合のオルト位にYが結
合していることが好ましい。
【0150】芳香環上の置換基としては、例えば、フッ
素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子に代表さ
れるハロゲン原子、ニトロ基、メチルスルホニル基、p
−トルエンスルホニル基、トリフルオロメチル基、シア
ノ基、メトキシカルボニル基、メチルスルホキシド基、
スルホニルアミド基等の電子吸引性基;メチル基、エチ
ル基、プロピル基およびブチル基に代表される炭素数1
〜4の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロ
ポキシ基およびブトキシ基に代表される炭素数1〜4の
低級アルコキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル
基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基に代表さ
れる炭素数3〜7のシクロアルキル基、ベンジル基およ
びフェネチル基に代表される炭素数7〜10のアラルキ
ル基等の電子供与性基をあげることができる。これら基
のなかでは、電子吸引性基が好ましく、とりわけハロゲ
ン原子およびニトロ基が好ましい。
【0151】一方、ジオキシラン化合物(III)におい
て、Yは、前記したように、 (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 − であり、Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水
素原子、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニ
ル基、Alk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4および
Alk5 はそれぞれ低級アルキレン基である。
【0152】R1 におけるアルキルスルホニル基として
は、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル
基、プロピルスルホニル基およびブチルスルホニル基に
代表されるアルキル部分が炭素数1〜4のアルキルスル
ホニル基があげられる。また、アリールスルホニル基と
しては、例えば、ベンゼンスルホニル基、p−トルエン
スルホニル基、ナフチルスルホニル基などのアリール部
分が炭素数6〜10であるアリールスルホニル基があげ
られる。
【0153】また、Alk1 、Alk2 、Alk3 、A
lk4 およびAlk5 における低級アルキレン基の具体
例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメ
チレン基、テトラメチレン基、メチルメチレン基、メチ
ルエチレン基およびメチルトリメチレン基に代表される
直鎖または分枝鎖を有する炭素数1〜4の低級アルキレ
ン基があげられる。
【0154】前記Yのなかでは、前記(ii) で表わされ
る基が好ましく、そのなかでも、Qがカルボニル基であ
ることがとりわけ好ましい。具体的には、Yとしては、
−CO−O−CH2 −が好ましい。
【0155】前記キラルなジオキシラン化合物のより具
体的な例としては、例えば、一般式(IV) :
【0156】
【化91】
【0157】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基を示す。 (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0158】
【化92】
【0159】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0160】
【化93】
【0161】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子もしくは置換基を示す)で表わされる基
を形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
キシラン化合物(IV)の光学異性体があげられる。
【0162】ここで、Ra 〜Rm における置換基として
は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子
に代表されるハロゲン原子、ニトロ基、メチルスルホニ
ル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメチル
基、シアノ基、メトキシカルボニル基、メチルスルホキ
シド基、スルホニルアミド基等の電子吸引性基;メチル
基、エチル基、プロピル基およびブチル基に代表される
炭素数1〜4の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ
基、プロポキシ基およびブトキシ基に代表される炭素数
1〜4の低級アルコキシ基、シクロプロピル基、シクロ
ブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基に
代表される炭素数3〜7のシクロアルキル基、ベンジル
基およびフェネチル基に代表される炭素数7〜10のア
ラルキル基等の電子供与性基をあげることができる。こ
れらの基のなかでは、電子吸引性基が好ましく、なかで
も特にハロゲン原子およびニトロ基が好ましい。
【0163】Ra 〜Rd としては、(a)Ra およびR
b が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合して
【0164】
【化94】
【0165】を形成しているか、Rc が水素原子、Rd
がハロゲン原子であるか、もしくはR c が水素原子、R
d がニトロ基であるか、または(b)Ra がハロゲン原
子、Rb が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合し
【0166】
【化95】
【0167】を形成している場合が好ましく、とりわけ
a およびRb が水素原子、Rc およびRd がたがいに
結合して
【0168】
【化96】
【0169】を形成している場合が好ましい。
【0170】また、前記ジオキシラン化合物(IV)のY
としては、ジオキシラン化合物(III)のYと同様の基を
あげることができる。
【0171】前記ジオキシラン化合物(IV) の光学異性
体としては、軸性キラリティーに基づく、2つの異性
体、即ち、一般式(IV−a):
【0172】
【化97】
【0173】〔式中、Ra 、Rb 、Rc 、Rd およびY
は前記と同じ〕で表わされるキラルなジオキシラン化合
物(IV−a)、および一般式(IV−b):
【0174】
【化98】
【0175】〔式中、Ra 、Rb 、Rc 、Rd およびY
は前記と同じ〕で表わされるキラルなジオキシラン化合
物(IV−b)があげられる。
【0176】前記ジオキシラン化合物(III)の光学異性
体およびジオキシラン化合物(IV)の光学異性体は、例
えば、それぞれ、一般式(V):
【0177】
【化99】
【0178】〔式中、環ArおよびYは前記と同じ〕で
表わされるケトン化合物(V)および一般式(VI) :
【0179】
【化100】
【0180】〔式中、Ra 、Rb 、Rc 、Rd およびY
は前記と同じ〕で表わされるケトン化合物(VI)の対応す
る光学異性体を酸化することにより、容易に得ることが
できる。この酸化反応は、アルカリ剤の存在下または非
存在下で、適当な溶媒中で、酸化剤を用いて前記ケトン
化合物(V)および(VI) の光学異性体を酸化すること
によって実施することができる。
【0181】前記酸化反応に使用する酸化剤としては、
例えば、m−クロロ過安息香酸、過酢酸、ペルオキソ硝
酸、ペルオキソ炭酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソモ
ノ硫酸、ペルオキソホウ酸、過ギ酸などのペルオキソ
酸、およびそのアルカリ金属塩、過酸化水素などの過酸
化物などがあげられる。これらの酸化剤のなかでは、ペ
ルオキソモノ硫酸カリウム塩を含む酸化剤であるオキソ
ンは、本発明において好適に使用しうるものである。な
お、かかる酸化剤、溶媒および原料化合物のなかには、
金属などが不純物として含まれていることがあり、かか
る不純物が反応に関与しないようにするために、キレー
ト化剤を添加してもよい。前記キレート化剤としては、
例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四
酢酸二ナトリウム、クラウンエーテル(18−クラウン
−6など)などがあげられる。前記キレート化剤は、そ
のままの状態で前記スチレン誘導体(I)の溶液に添加
してもよく、またあらかじめ溶媒に溶解させて溶液とし
たのち、前記スチレン誘導体(I)の溶液に添加しても
よい。
【0182】前記アルカリ剤としては、炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属、炭酸水素ナ
トリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金
属、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸アルカリ
金属などを用いることができる。
【0183】前記溶媒としては、例えば、1,2−ジメ
トキシエタン、ジメトキシメタン、ジメチルエーテル、
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオ
キサン、1,3−ジオキソラン、ジグリムなどのエーテ
ル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロ
ニトリルなどのニトリル系溶媒;メタノール、エタノー
ル、プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノー
ル、sec−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコ
ール系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系
溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノンなど
のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキ
シド系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロ
ホルム、四塩化炭素、ヘキサン、シクロヘキサン、ペン
タンなどのハロゲン化されていてもよい脂肪族炭化水素
系溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロ
ロベンゼンなどのハロゲン化されていてもよい芳香族炭
化水素系溶媒などの有機溶媒、水およびこれらの混合溶
媒などがあげられる。これらの溶媒のなかでは、エーテ
ル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール系溶媒、水およ
びこれらの混合溶媒、とりわけ1,2−ジメトキシエタ
ン、1,4−ジオキサン、アセトニトル、水およびこれ
らの混合溶媒は、好適に使用しうるものである。
【0184】反応温度は、−5〜50℃、好ましくは0
〜40℃であることが望ましい。
【0185】また、前記酸化反応後に得られるジオキシ
ラン化合物(III)および(IV) の光学異性体は、一旦単
離してスチレン誘導体(I)に作用させてもよく、ま
た、単離することなく、ジオキシラン化合物(III) また
は(IV)の光学異性体が生成する反応系と同一の反応系内
でスチレン誘導体(I)に作用させてもよい。
【0186】ジオキシラン化合物(III)または(VI)の光
学異性体を単離しないままスチレン誘導体(I)に作用
させる場合には、ケトン化合物(V)または(VI)の光学
異性体をジオキシラン化合物(III) または(IV)の光学異
性体に変換したのち、スチレン誘導体(I)に作用させ
てもよく、また、同一反応系内でケトン化合物(V)お
よび(VI)の光学異性体からジオキシラン化合物(III)ま
たは(IV)の光学異性体への変換と、ジオキシラン化合物
(III) または(IV)の光学異性体によるスチレン誘導体
(I)の不斉酸化反応とを並行して行なわせてもよい。
【0187】なお、キラルなケトン化合物(VI−a)を用
いた場合には、キラルなジオキシラン化合物(IV−a)が
得られ、また、キラルなケトン化合物(VI−b)を用いた
場合には、キラルなオキシラン化合物(IV−b)が得られ
る。
【0188】本発明の製法において、不斉酸化剤は、ア
ルカリ剤の存在下または非存在下で、適当な溶媒中でス
チレン誘導体(I)に作用させることができる。
【0189】例えば、アルカリ剤および溶媒として、ケ
トン化合物(V)または(VI)の光学異性体と酸化剤を反
応させる際に用いられるアルカリ剤および溶媒をいずれ
も好適に使用することができる。前記溶媒のなかでは、
とりわけエーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール
系溶媒、水およびこれらの混合溶媒を好適に使用するこ
とができる。
【0190】スチレン誘導体(I)に不斉酸化剤を作用
させる方法としては、例えば、スチレン誘導体(I)の
溶液に直接不斉酸化剤を添加する方法、スチレン誘導体
(I)の溶液に不斉酸化剤に対応するキラルなケトン化
合物および酸化剤を添加し、同一反応系内で不斉酸化剤
を生成させる方法があげられる。
【0191】例えば、不斉酸化剤として、ケトン化合物
(V)または(VI) の光学異性体と酸化剤とから生成す
るものを使用する場合には、(a)スチレン誘導体
(I)の溶液に不斉酸化剤を添加する方法、(b)ケト
ン化合物(V)または(VI) の光学異性体とスチレン誘
導体(I)との混合物に酸化剤を添加し、同一反応系内
で生成する不斉酸化剤をスチレン誘導体(I)に作用さ
せる方法があげられる。
【0192】前記(a)の方法を用いる場合には、スチ
レン誘導体(I)を不斉酸化させるに充分な量の不斉酸
化剤を使用する必要がある。一方、前記(b)の方法を
用いる場合には、スチレン誘導体(I)を不斉酸化させ
るのに充分な量の不斉酸化剤を反応混合物中で形成しう
るような量のケトン化合物(V)または(VI) の光学異
性体および酸化剤を使用すればよい。
【0193】前記(b)の方法において、ケトン化合物
(V)または(VI) の光学異性体から酸化剤により不斉
酸化剤が形成され、該不斉酸化剤はスチレン誘導体
(I)を不斉酸化後、対応する元のケトン化合物(V)
または(VI)の光学異性体に戻り、再利用可能となるた
め、スチレン誘導体(I)に対し、1〜10当量の酸化
剤を使用すれば、不斉源であるケトン化合物(V)また
は(VI) の光学異性体はスチレン誘導体(I)1モルあ
たり0.001〜0.1モル程度使用するのみでスチレ
ン誘導体(I)をすべて不斉酸化させ、所望の光学活性
フェニルオキシラン化合物(II)を得ることができ、酸化
剤は、スチレン誘導体(I)に対し、1.6〜2.0当
量の割合で用いるのがとりわけ好ましい。
【0194】特に、ケトン化合物(V)または(VI) の
光学異性体およびスチレン誘導体(I)の混合物に酸化
剤であるオキソンを添加し、スチレン誘導体(I)の不
斉酸化を行なう場合には、オキソンはスチレン誘導体
(I)と比べ、ケトン化合物(V)または(VI)の光学
異性体を選択的に酸化し、不斉酸化剤を与える。また、
不斉酸化剤は、スチレン誘導体(I)を不斉酸化させた
のち、対応する元のケトン化合物(V)または(VI)の
光学異性体に戻り、循環利用可能となるため、不斉源で
あるケトン化合物(V)または(VI)の光学異性体を触
媒量しか使用しなくても、収率よく、スチレン誘導体
(I)の不斉酸化を行なうことができ、光学純度の高い
所望の光学活性フェニルオキシラン化合物(II)が得られ
る。
【0195】また、前記スチレン誘導体(I)に、不斉
酸化剤を作用させる際の温度は、とくに限定がなく、不
斉酸化剤の種類等によっても変動するが、通常、−5〜
50℃程度、なかんづく0〜40℃程度であることが好
ましい。
【0196】また、反応時の雰囲気は、特に限定がな
く、通常、大気であってもよく、また例えば、窒素ガス
などの不活性ガスであってもよい。
【0197】次に、前記スチレン誘導体(I)に不斉酸
化剤を作用させて得られた反応混合物中に含まれる未反
応の不斉酸化剤の還元は、例えば、反応混合物から共存
する酸化剤等を食塩水などで洗浄して除去したのち、必
要に応じてハイポ、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫
酸ナトリウム等の還元剤を使用して還元を行なうことに
よって、未反応の不斉酸化剤を対応するキラルなケトン
化合物に変換することができる。
【0198】本発明の製法において、キラルなジオキシ
ラン化合物を用いる場合、該化合物をアルカリ剤の存在
下または非存在下で、適当な溶媒中でスチレン誘導体
(I)に作用させることができる。
【0199】例えば、アルカリ剤および溶媒として、ケ
トン化合物(V)および(VI)の光学異性体からジオキ
シラン化合物(III)および(IV) の光学異性体をそれぞ
れ製造する際に用いられるアルカリ剤および溶媒をいず
れも好適に使用することができる。前記溶媒のなかで
は、とりわけエーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコ
ール系溶媒、水およびこれらの混合溶媒を好適に使用す
ることができる。
【0200】スチレン誘導体(I)の使用量は、特に限
定がないが、通常、前記溶媒100mlに対して0.1
〜30g程度であればよい。
【0201】キラルなジオキシランの使用量は、スチレ
ン誘導体(I)1モルに対して、1〜5モル程度である
ことが好ましく、とりわけ、1〜2モル程度であること
が好適である。
【0202】スチレン誘導体(I)にキラルなジオキシ
ラン化合物を作用させる方法としては、例えば、スチレ
ン誘導体(I)の溶液に直接キラルなジオキシラン化合
物を添加する方法、スチレン誘導体(I)の溶液にキラ
ルなジオキシラン化合物に対応するキラルなケトン化合
物および酸化剤を添加し、同一反応系内でキラルなジオ
キシラン化合物を生成させる方法があげられる。
【0203】例えば、キラルなジオキシラン化合物とし
て、ジオキシラン化合物(III)または(IV) の光学異性
体を使用する場合には、(a)スチレン誘導体(I)の
溶液にジオキシラン化合物(III)または(IV) の光学異
性体を添加する方法、(b)ケトン化合物(V)または
(VI) の光学異性体とスチレン誘導体(I)との混合物
に酸化剤を添加し、同一反応系内で生成するキラルなジ
オキシラン化合物(III)または(IV) の光学異性体をス
チレン誘導体(I)に作用させる方法があげられる。
【0204】前記(a)の方法を用いる場合には、スチ
レン誘導体(I)を不斉酸化させるに充分な量のジオキ
シラン化合物(III)または(IV) の光学異性体を使用す
る必要がある。一方、前記(b)の方法を用いる場合に
は、スチレン誘導体(I)を不斉酸化させるのに充分な
量のジオキシラン化合物(III)または(IV) の光学異性
体を反応混合物中で形成しうるような量のケトン化合物
(V)または(VI) の光学異性体および酸化剤を使用す
ればよい。
【0205】前記(b)の方法において、ケトン化合物
(V)または(VI) の光学異性体から酸化剤によりジオ
キシラン化合物(III)または(IV) の光学異性体が形成
され、該異性体はスチレン誘導体(I)を不斉酸化後、
対応する元のケトン化合物(V)または(VI)の光学異性
体に戻り、再利用可能となるため、スチレン誘導体
(I)に対し、1〜10当量の酸化剤を使用すれば、不
斉源であるケトン化合物(V)または(VI) の光学異性
体はスチレン誘導体(I)1モルあたり0.001〜
0.1モル程度使用するのみでスチレン誘導体(I)を
すべて不斉酸化させ、所望の光学活性フェニルオキシラ
ン化合物(II)を得ることができ、酸化剤は、スチレン誘
導体(I)に対し、1 .6〜2.0当量の割合で用いる
のがとりわけ好ましい。
【0206】特に、ケトン化合物(V)または(VI) の
光学異性体およびスチレン誘導体(I)の混合物に酸化
剤であるオキソンを添加し、スチレン誘導体(I)の不
斉酸化を行なう場合には、オキソンはスチレン誘導体
(I)と比べ、ケトン化合物(V)または(VI)の光学
異性体を選択的に酸化し、ジオキシラン化合物(III)ま
たは(IV) の光学異性体を与える。また、ジオキシラン
化合物(III)または(IV) の光学異性体は、スチレン誘
導体(I)を不斉酸化させたのち、対応する元のケトン
化合物(V)または(VI)の光学異性体に戻り、循環利
用可能となるため、不斉源であるケトン化合物(V)ま
たは(VI)の光学異性体を触媒量しか使用しなくても、
収率よく、スチレン誘導体(I)の不斉酸化を行なうこ
とができ、光学純度の高い所望の光学活性フェニルオキ
シラン化合物(II)が得られる。
【0207】また、前記スチレン誘導体(I)に、キラ
ルなジオキシラン化合物を作用させる際の温度は、とく
に限定がないが、通常、−5〜50℃程度、なかんづく
0〜40℃程度であることが好ましい。
【0208】また、反応時の雰囲気は、特に限定がな
く、通常、大気であってもよく、また例えば、窒素ガス
などの不活性ガスであってもよい。
【0209】次に、前記スチレン誘導体(I)にキラル
なジオキシラン化合物を作用させて得られた反応混合物
中に含まれる未反応のキラルなジオキシラン化合物の還
元は、例えば、反応混合物から共存する酸化剤等を食塩
水などで洗浄して除去したのち、必要に応じてハイポ、
亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還
元剤を使用して還元を行なうことによって、未反応のキ
ラルなジオキシラン化合物を対応するキラルなケトン化
合物に変換することができる。
【0210】前記のようにして得られたキラルなケトン
化合物を含んだ反応混合物から、キラルなジオキシラン
化合物等の不斉酸化剤を還元させて生成するケトン化合
物および光学活性フェニルオキシラン化合物(II)を、有
機溶媒に対する溶解度差を利用した分離方法により、そ
れぞれ高純度で製造することができる。
【0211】前記溶解度差を利用した分離方法として
は、有機溶媒による抽出法、有機溶媒を用いた結晶化法
等をあげることができる。
【0212】具体的には、例えば、(a-1)前記キラルな
ケトン化合物を含んだ反応混合物に水を加えて生成する
析出物を取得後、必要に応じて該析出物を有機溶媒に溶
解し、不純物を除去後、溶媒を留去するか、または(a-
2)前記キラルなケトン化合物を含んだ反応混合物を有機
触媒で抽出し、得られた抽出液を洗浄し、乾燥したの
ち、溶媒を留去し、(b) こうして得られる残渣をキラル
なケトン化合物[例えば、ケトン化合物(V)または
(VI)]を溶解しにくいが、光学活性フェニルオキシラ
ン化合物(II)を溶解しやすい性質を有する有機溶媒を用
いて抽出することにより、キラルなケトン化合物を高収
率で回収することができる。
【0213】また、前記(a-1)または(a-2)の工程で得
られる残渣を、高温ではキラルなケトン化合物および光
学活性フェニルオキシラン化合物(II)をいずれも溶解す
るが、温度条件によりキラルなケトン化合物は結晶化
し、光学活性フェニルオキシラン化合物(II)は結晶化し
ない状態を生じ得る性質を有する有機溶媒に一旦溶解
後、溶液温度を下げてキラルなケトン化合物のみを選択
的に結晶化させるか、または反応混合物を、高温ではキ
ラルなケトン化合物および光学活性フェニルオキシラン
化合物(II)の両方を溶解するが、温度条件によりキラル
なケトン化合物は結晶化し、光学活性フェニルオキシラ
ン化合物(II)は結晶化しない状態を生じ得る性質を有す
る有機溶媒で抽出し、抽出液の温度を下げてキラルなケ
トン化合物のみを選択的に結晶化することにより、キラ
ルなケトン化合物を高収率で回収することもできる。
【0214】前記反応混合物に水を加えて生成する析出
物を溶解する有機溶媒としては、例えば、塩化メチレ
ン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化された脂
肪族炭化水素溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステ
ル系溶媒、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、メシ
チレン等のハロゲン化されていてもよい芳香族炭化水素
溶媒を使用することができ、反応混合物の抽出に用いる
有機溶媒としては、例えば、トルエン等の芳香族炭化水
素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテ
ル、t−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、
テトラヒドロフラン、ジグリム等のエーテル系溶媒など
を使用することができるが、溶媒としては留去しやすい
エーテル系溶媒を用いるのが好ましい。
【0215】溶媒を留去したのち、残渣の抽出に使用す
る、前記キラルなケトン化合物を溶解しにくいが、光学
活性フェニルオキシラン化合物(II)を溶解しやすい有機
溶媒としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;酢
酸エチル等のエステル系溶媒などを単独でまたは混合し
て使用することができる。
【0216】一方、高温ではキラルなケトン化合物およ
び光学活性フェニルオキシラン化合物(II)の両方を溶解
するが、温度条件によりキラルなケトン化合物は結晶化
し、光学活性フェニルオキシラン化合物(II)は結晶化し
ない状態を生じ得る有機溶媒として、例えば、ジイソプ
ロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等のエーテ
ル系溶媒を使用することができる。
【0217】このようにして、反応混合物からはキラル
なケトン化合物を高純度、高収率で回収することができ
る。
【0218】前記のようにして得られる光学活性フェニ
ルオキシラン化合物(II)の抽出液、またはケトン化合物
を回収したのちの母液をカラムクロマトグラフィー、結
晶化等により精製することによって、光学活性フェニル
オキシラン化合物(II)を高純度および高光学純度で取得
することができる。
【0219】前記カラムクロマトグラフィーとしては、
例えば、通常のシリカゲルクロマトグラフィーなどを好
適に使用することができる。
【0220】結晶化による精製を行なう場合には、有機
溶媒として、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶
媒を使用することが好ましく、キラルなケトン化合物の
結晶化を行なう温度よりも、低温で結晶化を行なうこと
により、実質的に純粋な光学活性フェニルオキシラン化
合物(II)を取得することができる。
【0221】本発明においては、一般式(I)で表わさ
れるスチレン誘導体(I)として、以下のスキームに示
されるように、環AとRとがトランス位にあるスチレン
誘導体(I)を用いた場合、不斉酸化剤がα−アタック
した際には、矢印b方向に反応が進行し、(2R,3
S)−光学活性フェニルオキシラン化合物が得られ、ま
た不斉酸化剤がβ−アタックした際には、矢印a方向に
反応が進行し、(2S,3R)−光学活性フェニルオキ
シラン化合物が得られる。また、環AとRとがシス位に
あるスチレン誘導体(I)を用いた場合、不斉酸化剤が
α−アタックした際には、矢印d方向に反応が進行し、
(2S,3S)−光学活性フェニルオキシラン化合物が
得られ、また不斉酸化剤がβ−アタックした際には、矢
印c方向に反応が進行し、(2R,3R)−光学活性フ
ェニルオキシラン化合物が得られる。
【0222】
【化101】
【0223】前記光学活性フェニルオキシラン化合物の
なかでは、(2R,3S)−光学活性フェニルオキシラ
ン化合物および(2S,3R)−光学活性フェニルオキ
シラン化合物は、環AとRとがトランス位にあるので立
体障害が少なく、本発明の目的とする光学活性フェニル
オキシラン化合物を効率よく収得することができるた
め、好適に使用しうるものである。
【0224】本発明においては、スチレン誘導体(I)
としてトランス体を用い、キラルなケトン化合物(VI-a)
または(VI-b)から得られる不斉酸化剤〔例えば、キラル
なジオキシラン化合物(IV-a)または(IV-b)〕を用いるこ
とが好ましい。なお、スチレン誘導体(I)としてトラ
ンス体を用い、キラルなケトン化合物(VI-a)から得られ
る不斉酸化剤〔例えば、キラルなジオキシラン化合物(I
V-a)〕を用いた場合には、(2R,3S)−型フェニル
オキシラン化合物が得られ、またスチレン誘導体(I)
としてトランス体を用い、キラルなケトン化合物(VI-b)
から得られる不斉酸化剤〔例えば、キラルなジオキシラ
ン化合物(IV-b)〕を用いた場合には、(2S,3R)−
型フェニルオキシラン化合物が得られる。
【0225】かくして、一般式(II):
【0226】
【化102】
【0227】(式中、環A、Rおよび*は前記と同じ)
で表わされる光学活性フェニルオキシラン化合物(II)
が、高収率で、かつ高光学純度で得られる。
【0228】次に、前記で得られた一般式(II)で表わさ
れる光学活性フェニルオキシラン化合物(II)のうち、R
が−CO2 q で表わされる基である化合物を出発原料
として用い、従来既知の方法により、一般式(VII) :
【0229】
【化103】
【0230】〔式中、環A、環Bおよび*は前記と同
じ、R2 は水素原子または置換アルキル基、R3 は低級
アルカノイル基を示す〕で表わされる1,5−ベンゾチ
アゼピン誘導体を製造することができる。
【0231】かかる1,5−ベンゾチアゼピン誘導体の
製法において、環Bは、置換または非置換ベンゼン環を
示す。具体的には、前記環Bとしては、非置換ベンゼン
環をはじめ、低級アルキル基、フェニル低級アルキル
基、低級アルコキシ基およびハロゲン原子からなる群よ
り選ばれた置換基を1〜3個有するベンゼン環があげら
れる。前記低級アルキル基としては、メチル基、エチル
基、プロピル基およびt−ブチル基に代表される炭素数
1〜4のアルキル基があげられる。前記フェニル低級ア
ルキル基としては、ベンジル基およびフェネチル基に代
表される炭素数7〜10のフェニルアルキル基があげら
れる。前記低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エ
トキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基に代表される
炭素数1〜4のアルコキシ基があげられる。また、前記
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原
子およびヨウ素原子があげられる。
【0232】R3 は、低級アルカノイル基であり、具体
的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基およびブ
チリル基に代表される炭素数1〜4の低級アルカノイル
基があげられる。
【0233】R2 は、水素原子または置換アルキル基で
あり、置換アルキル基の具体例としては、例えば、アル
キル部分がメチル基、エチル基、プロピル基およびブチ
ル基に代表される炭素数1〜4の低級アルキル基である
ものがあげられる。
【0234】また、アルキル基の置換基としては、ジメ
チルアミノ基およびジエチルアミノ基に代表されるジ低
級アルキルアミノ基、4−(2−メトキシフェニル)ピ
ペラジノ基に代表される置換フェニルピペラジノ基等を
あげることができる。R2 としては、2−(ジメチルア
ミノ)エチル基および3−〔4−(2−メトキシフェニ
ル)ピペラジノ〕プロピル基がとりわけ好ましい。
【0235】かくして得られる1,5−ベンゾチアゼピ
ン誘導体 (VII)またはその薬理的に許容しうる塩の具体
例としては、例えば、(2S,3S)−2−(4−メト
キシフェニル)−3−アセトキシ−5−〔2−(ジメチ
ルアミノ)エチル〕−2,3−ジヒドロ−1,5−ベン
ゾチアゼピン−4(5H)−オン(ジルチアゼム)、
(2S,3S)−2−(4−メトキシフェニル)−3−
アセトキシ−5−〔2−(ジメチルアミノ)エチル〕−
8−クロロ−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼ
ピン−4(5H)−オン、(2S,3S)−3−アセト
キシ−5−〔3−〔4−(2−メトキシフェニル)ピペ
ラジノ〕プロピル〕−2,3−ジヒドロ−2−(4−メ
トキシフェニル)−8−クロロ−1,5−ベンゾチアゼ
ピン−4(5H)−オン、(2S,3S)−3−アセト
キシ−8−ベンジル−2,3−ジヒドロ−5−〔2−
(ジメチルアミノ)エチル〕−2−(4−メトキシフェ
ニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オ
ン、(2R,3R)−2−(4−メチルフェニル)−3
−アセトキシ−5−〔2−(ジメチルアミノ)エチル〕
−8−メチル−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチア
ゼピン−4(5H)−オン、それらの薬理的に許容しう
る塩などがあげられる。
【0236】本発明の製法で得られる1,5−ベンゾチ
アゼピン誘導体(VII) またはその薬理的に許容しうる塩
は、狭心症、心筋梗塞、不整脈などの心臓疾患、高血圧
症、冠血管梗塞、脳梗塞などの循環器系疾患に対して有
用な化合物である。
【0237】具体的には、例えば、特公昭46−167
49号公報、特公昭63−13994号公報、特開平5
−201865号公報、特開平2−289558号公
報、特公平2−28594号公報、ケミカル・アンド・
ファーマシューティカル・ブレチン(Chem. Ph
arm. Bull.)18(10),2028−20
37(1970)、特開平2−17168号公報、特開
平2−229180号公報、特開平4−234866号
公報、特開平5−222016号公報、特開平4−22
1376号公報、特開平5−202013号公報、特開
平2−17170号公報、特開平2−286672号公
報、特開平6−279398号公報、特開昭58−99
471号公報、特開平8−269026号公報、特開昭
61−118377号公報、特開平6−228117号
公報、特開平2−78673号公報、特開平5−435
64号公報などに記載の方法にしたがって、一般式(II)
で表わされる光学活性フェニルオキシラン化合物(II)か
ら、一般式(VII) で表わされる1,5−ベンゾチアゼピ
ン誘導体を製造することができる。
【0238】より具体的には、例えば、Rが−CO2
q で示される基である光学活性フェニルオキシラン化合
物(II)として、その(2R,3S)−異性体を用いる場
合、該(2R,3S)−異性体を、(A−1)一般式(V
III):
【0239】
【化104】
【0240】〔式中、環Bは前記と同じ、R4 は水素原
子、2−(ジメチルアミノ)エチル基または式:
【0241】
【化105】
【0242】で表わされる基を示す〕で表わされるアミ
ノチオフェノール誘導体(VIII)(例えば、2−アミノチ
オフェノール、2−アミノ−5−クロロチオフェノー
ル、2−アミノ−5−ベンジルチオフェノール、2−
〔〔2−(ジメチルアミノ)エチル〕アミノ〕チオフェ
ノール、一般式:
【0243】
【化106】
【0244】〔式中、環Bは前記と同じ〕で表わされる
化合物など)と反応させるか、または(A−2)一般式
(IX):
【0245】
【化107】
【0246】(式中、環Bは前記と同じ)で表わされる
ニトロチオフェノール誘導体(IX)(例えば、2−ニトロ
チオフェノール、2−ニトロ−5−クロロチオフェノー
ル、2−ニトロ−5−ベンジルチオフェノールなど)と
反応させたのち、ニトロ基を還元させることにより、一
般式:
【0247】
【化108】
【0248】〔式中、環A、環B、RおよびR4 は前記
と同じ〕で表わされる(2S,3S)−3−(2−アミ
ノフェニルチオ)−3−フェニル−2−ヒドロキシプロ
ピオン酸エステル化合物を調製し、(B)必要であれ
ば、加水分解させたのち、分子内閉環させ、一般式:
【0249】
【化109】
【0250】〔式中、環A、環BおよびR4 は前記と同
じ〕で表わされる(2S,3S)−2−フェニル−3−
ヒドロキシ−1,5−ベンゾチゾアゼピン誘導体とし、
(C)この化合物を必要に応じて5位の窒素原子を修飾
し、3位に置換した水酸基をアセチル化させ、(D)必
要に応じて生成物を薬理的に許容しうる塩とすることに
より、一般式:
【0251】
【化110】
【0252】〔式中、環A、環BおよびR4 は前記と同
じ〕で表わされる(2S,3S)−1,5−ベンゾチア
ゼピン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩を調製す
ることができる。
【0253】また、例えば、Rが−CO2 q で示され
る基である光学活性フェニルオキシラン化合物(II)とし
て、その(2S,3R)−異性体を用いる場合、該(2
S,3R)−異性体を、(A−1)アミノチオフェノー
ル誘導体(VIII)と反応させるか、または(A−2)ニト
ロチオフェノール誘導体(IX)と反応させたのち、ニトロ
基を還元させることにより、一般式:
【0254】
【化111】
【0255】〔式中、環A、環B、RおよびR4 は前記
と同じ〕で表わされる(2R,3R)−3−(2−アミ
ノフェニルチオ)−3−フェニル−2−ヒドロキシプロ
ピオン酸エステル化合物を調製し、(B)必要であれ
ば、加水分解させたのち、分子内閉環させ、一般式:
【0256】
【化112】
【0257】〔式中、環A、環BおよびR4 は前記と同
じ〕で表わされる(2R,3R)−2−フェニル−3−
ヒドロキシ−1,5−ベンゾチゾアゼピン誘導体とし、
(C)この化合物を、必要に応じて、5位の窒素原子を
修飾し、3位に置換した水酸基をアセチル化させ、
(D)必要に応じて生成物を薬理的に許容しうる塩とす
ることにより、一般式:
【0258】
【化113】
【0259】〔式中、環A、環BおよびR4 は前記と同
じ〕で表わされる(2R,3R)−1,5−ベンゾチア
ゼピン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩を調製す
ることができる。
【0260】その一例として、ジルチアゼム(Diltiaze
m) およびその対掌体についての立体化学をまとめる
と、例えば、以下のスキームに示されるように、式:
【0261】
【化114】
【0262】で表わされるアミノチオフェノールと、R
が−CO2 q で示される基である光学活性フェニルオ
キシラン化合物(II)とを反応させた際には、以下のよう
に反応が進行する。すなわち、(2S,3R)−体を前
記アミノチオフェノールと反応させてシス−開裂させた
ときおよび(2S,3S)−体を前記アミノチオフェノ
ールと反応させてトランス−開裂させたときには、(2
R,3R)−プロピオン酸誘導体が得られる。また、
(2R,3S)−体を前記アミノチオフェノールと反応
させてシス−開裂させたときおよび(2R,3R)−体
を前記アミノチオフェノールと反応させてトランス−開
裂させたときには、(2S,3S)−プロピオン酸誘導
体が得られる。
【0263】
【化115】
【0264】次に、以下のスキームに示されるように、
前記(2R,3R)−プロピオン酸誘導体または(2
S,3S)−プロピオン酸誘導体を加水分解させ、分子
内閉環させ、得られた2−フェニル−3−ヒドロキシ−
1,5−ベンゾチアゼピン誘導体の5位窒素原子をジメ
チルアミノエチル化させ、3位の水酸基をアセチル化さ
せることにより、それぞれ(2R,3R)−1,5−ベ
ンゾチアゼピン誘導体または(2S,3S)−1,5−
ベンゾチアゼピン誘導体が得られる。
【0265】
【化116】
【0266】一方、Rが−CO2 q で示される基に変
換可能な基を有する光学活性フェニルオキシラン化合物
(II)またはその塩は、−CO2 q で示される基に変換
したのち、上記と同様に反応させるか、または、1,5
−ベンゾチアゼピン環形成反応前に、−CO2 q で示
される基に変換すれば、Rが−CO2 q で示される基
である場合と同様に、1,5−ベンゾチアゼピン誘導体
に導くことができる。
【0267】−CO2 q で示される基に変換可能な基
を−CO2 q で示される基に変換する方法としては、
慣用の方法を基の種類に応じて使用することができる。
【0268】例えば、カルボキシル基は、常法でエステ
ル化することにより、−CO2 qで示される基に変換
することができ、一般式:
【0269】
【化117】
【0270】(式中、Rr は前記と同じ)で表わされる
基、一般式:
【0271】
【化118】
【0272】(式中、Rs およびRt は前記と同じ)で
表わされる基およびシアノ基は、それぞれチオールエス
テル、アミドおよびシアノ基の加水分解反応により、一
旦、カルボキシル基としたのち、常法でエステル化する
ことにより、−CO2 q で示される基に変換すること
ができる。
【0273】また、チオカルボキシル基は、一旦、常法
でチオールエステル化したのち、前記と同様にして、−
CO2 q で示される基に変換することができる。
【0274】更に、Rが一般式:
【0275】
【化119】
【0276】(式中、Rr は前記と同じ)で表わされる
基、一般式:
【0277】
【化120】
【0278】(式中、Rs およびRt は前記と同じ)で
表わされる基、またはカルボキシル基である光学活性フ
ェニルオキシラン化合物(II)またはその塩は、Rが−C
2 q で示される基である光学活性フェニルオキシラ
ン化合物(II)と同様の方法により、Rを−CO2 q
示される基に変換することなく、1,5−ベンゾチアゼ
ピン誘導体に導くこともできる。
【0279】更に、本発明の製法で得られる一般式(II)
で表わされる光学活性フェニルオキシラン化合物(II)を
出発原料として用い、従来既知の方法により、光学分割
剤として有用な一般式:
【0280】
【化121】
【0281】(式中、環Aおよび環Bは前記と同じ、*
は不斉炭素原子を示す)で表わされるニトロカルボン酸
化合物を製造することもできる。
【0282】かかるニトロカルボン酸化合物の製法にお
いて、環Aおよび環Bは前記1,5−ベンゾチアゼピン
誘導体の製法におけるものと同様のものをあげることが
できるが、環Aが4−低級アルコキシフェニル基、環B
が式:
【0283】
【化122】
【0284】(式中、Halはハロゲン原子を示す)で
表わされる置換ベンゼン環である場合が好ましく、環A
が4−メトキシフェニル基、環Bが前記式においてHa
lが塩素原子であるものがとりわけ好ましい。
【0285】具体的には、ニトロカルボン酸化合物とし
ては、例えば、Rが−CO2 q で示される基である光
学活性フェニルオキシラン化合物(II)と、一般式:
【0286】
【化123】
【0287】(式中、Halは前記と同じ)で表わされ
る化合物等に代表されるニトロチオフェノール化合物と
を、特公昭61−18549号公報等に記載された方法
により反応させたのち、ケミカル・アンド・ファーマシ
ューティカル・ブレチン(Chem. Pharm.
Bull.)18(10)2028−2037(197
0)に記載の方法に従って生成物を加水分解することに
より、製造することができる。
【0288】この方法では、(2R,3S)−光学活性
フェニルオキシラン化合物を使用すれば、(2S,3
S)−光学活性ニトロカルボン酸化合物を得ることがで
き、(2S,3R)−光学活性フェニルオキシラン化合
物を使用すれば、(2R,3R)−光学活性ニトロカル
ボン酸化合物を得ることができる。
【0289】また、光学活性フェニルオキシラン化合物
(II)において、Rが−CO2 q 〔式中、Rq は前記と
同じ〕で示される基に変換することができる基である場
合には、ニトロチオフェノール化合物との反応により得
られた化合物を、1,5−ベンゾチアゼピン誘導体への
変換に用いられる慣用の方法を用いて、一旦、Rが−C
2 q 〔式中、Rq は前記と同じ〕で示される基であ
る化合物に変換後、慣用の方法で加水分解するか、また
は1,5−ベンゾチアゼピン誘導体への変換に用いられ
る方法を利用して、Rが−CO2 q (式中、Rq は前
記と同じ)で示される基である化合物に変換することな
く、直接Rがカルボキシル基である化合物に変換するこ
とにより、光学活性ニトロカルボン酸化合物を得ること
ができる。
【0290】ところで、前記ケトン化合物(V)のう
ち、Yが(i) −O−Q−Alk1 −または(v) −NR1
−Q−Alk1 −であるケトン化合物は、一般式
(X):
【0291】
【化124】
【0292】〔式中、Zは−O−または−NR1 −を示
し、ArおよびR1 は前記と同じ〕で表わされる化合物
と一般式(XI):
【0293】
【化125】
【0294】〔式中、Protは水酸基の保護基を示
し、Alk1 およびQは前記と同じ〕で表わされる化合
物またはその反応性誘導体とを反応させ、Zが−NH−
である場合には、必要に応じて、N−アルキルスルホニ
ル化またはN−アリールスルホニル化し、生成する一般
式(XII):
【0295】
【化126】
【0296】〔式中、Ar、Prot、Z、Alk1
よびQは前記と同じ〕で表わされる化合物から水酸基の
保護基を除去したのち、酸化反応に付することにより、
製造することができる。
【0297】また、前記ケトン化合物(V)のうち、Y
が(ii)−Q−O−Alk2 −または(vi)−Q−NR1
Alk2 −であるケトン化合物は、一般式(XIII):
【0298】
【化127】
【0299】〔式中、ArおよびQは前記と同じ〕で表
わされる化合物またはその反応性誘導体と、一般式(XI
V):
【0300】
【化128】
【0301】〔式中、ZおよびAlk2 は前記と同じ〕
で表わされる化合物またはその二量体とを反応させ、Z
が−NH−である場合には、必要に応じて、N−アルキ
ルスルホニル化またはN−アリールスルホニル化させる
ことにより、製造することができる。
【0302】前記ケトン化合物(V)のうち、Yが(ii
i) −Alk3 −O−Alk4 −または(vii) −Alk
3 −NR1 −Alk4 −であるケトン化合物は、一般式
(XV):
【0303】
【化129】
【0304】〔式中、Arは前記と同じ〕で表わされる
化合物を還元して一般式(XVI):
【0305】
【化130】
【0306】〔式中、Arは前記と同じ〕で表わされる
化合物を製造し、必要に応じて、該化合物の水酸基に結
合したアルキル鎖を伸長させ、また水酸基をアミノ基に
変換させ、必要に応じてN−アルキルスルホニル化また
はN−アリールスルホニル化させ、一般式(XVII):
【0307】
【化131】
【0308】〔式中、Ar、Alk3 およびZは前記と
同じ〕で表わされる化合物を製造したのち、かかる化合
物と一般式(XVIII):
【0309】
【化132】
【0310】〔式中、Lは脱離基を示し、Alk4 は前
記と同じ〕で表わされる化合物とを反応させ、Zが−N
H−である場合には、必要に応じて、N−アルキルスル
ホニル化またはN−アリールスルホニル化させることに
より、製造することができる。
【0311】また、前記ケトン化合物(V)のうち、Y
が(iv)−O−Alk5 −または(viii)−NR1 −Alk
5 −であるケトン化合物は、前記一般式(X)で表わさ
れるケトン化合物と一般式(XIX):
【0312】
【化133】
【0313】〔式中、LおよびAlk5 は前記と同じ〕
で表わされる化合物とを反応させ、Zが−NH−である
場合には、必要に応じて、N−アルキルスルホニル化ま
たはN−アリールスルホニル化させることにより、製造
することができる。
【0314】また、前記ケトン化合物(V)のうち、Y
が−NR1 −Alk5 −である場合には、Zが−NH−
である一般式(X)で表わされる化合物と、Qがカルボ
ニル基である一般式(XI)で表わされる化合物またはその
反応性誘導体とを反応させることによって得られた化合
物、即ち、Zが−NH−であり、Qがカルボニル基であ
る一般式(XII) で表わされる化合物を還元し、必要に応
じてN−アルキルスルホニル化またはN−アリールスル
ホニル化させ、水酸基の保護基を除去したのち、酸化反
応に付することにより、製造することができる。
【0315】一般式(X)で表わされる化合物と一般式
(XI)で表わされる化合物またはその反応性誘導体との反
応、および一般式(XIII)で表わされる化合物またはその
反応性誘導体と、一般式(XIV) で表わされる化合物また
はその二量体との反応は、エステル合成またはアミド合
成の常法に従って実施することができる。
【0316】一般式(XI)で表わされる化合物および一般
式(XIII)で表わされる化合物の反応性誘導体としては、
カルボン酸、スルホン酸の慣用の反応性誘導体、例え
ば、酸クロリド、酸ブロミド、酸ヨージドなどの酸ハラ
イド;クロロ炭酸イソブチル、2,6−ジクロロ安息香
酸クロリドまたは2,4,6−トリクロロ安息香酸クロ
リドとの混合酸無水物などの混合酸無水物;N,N’−
ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、DCCとい
う)、DCCと1−ヒドロキシベンゾトリアゾールとの
組合せ、ベンゾトリアゾール−1−イル・オキシ−トリ
ス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホス
フェートなどを用いて生成する活性エステル等をあげる
ことができる。
【0317】また、一般式(XI)で表わされる化合物にお
ける水酸基の保護基としては、水酸基の慣用の保護基、
例えば、低級アルカノイル基、置換シリル基、置換され
ていてもよいベンジル基などの保護基を使用することが
できる。
【0318】一般式(XIV) で表わされる化合物の二量体
は、一般式(XIV) で表わされる化合物のカルボニル基
に、一般式(XIV) で表わされる化合物の他の分子のHZ
基が付加して生成するものであり、2分子間で相互にカ
ルボニル基とHZ基とが付加して環状構造を形成してい
るものであってもよい。かかる二量体は、単量体との平
衡にあっても同様に使用することができる。
【0319】一般式(X)で表わされる化合物と一般式
(XI)で表わされる化合物との反応、および一般式(XIII)
で表わされる化合物と一般式(XIV) で表わされる化合物
またはその二量体との反応は、適当な溶媒、例えば、ハ
ロゲン化されていてもよい脂肪族炭化水素系溶媒(ヘキ
サン、シクロヘキサン、メチレンクロリド、エチレンク
ロリド、クロロホルム、四塩化炭素など)、ハロゲン化
されていてもよい芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キ
シレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼ
ンなど)、ニトリル系溶媒(アセトニリル、プロピオニ
トリル、ブチロニトリルなど)、エーテル系溶媒(ジエ
チルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサ
ン、ジグリムなど)等の溶媒の中で、例えば、DCC、
N−メチルピリジニウムハライドなどの縮合剤の存在下
で、常温または加熱下で実施することができる。この
際、必要に応じ、例えば、トリエチルアミン、ジイソプ
ロピルエチルアミン、ピリジン等の脱酸剤を添加しても
よい。
【0320】一方、一般式(X)で表わされる化合物と
一般式(XI)で表わされる化合物の反応性誘導体との反
応、および一般式(XIII)で表わされる化合物の反応性誘
導体と一般式(XIV) で表わされる化合物またはその二量
体との反応は、適当な溶媒〔例えば、ハロゲン化されて
いてもよい脂肪族炭化水素系溶媒(ヘキサン、シクロヘ
キサン、メチレンクロリド、エチレンクロリド、クロロ
ホルム、四塩化炭素など)、ハロゲン化されていてもよ
い芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、メシチ
レン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど)、ニト
リル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチ
ロニトリルなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテ
ル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリ
ムなど)〕中で、脱酸剤〔例えば、有機塩基(トリエチ
ルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、ジイソプロピ
ルエチルアミンなど)〕の存在下または非存在下で、常
温または加熱下で実施することができる。
【0321】一般式(XVII)で表わされる化合物と一般式
(XVIII) で表わされる化合物との反応、および一般式
(X)で表わされる化合物と一般式(XIX) で表わされる
化合物との反応は、アルコールのO−アルキル化または
アミンのN−アルキル化の常法に従って実施することが
できる。
【0322】一般式(XVIII) で表わされる化合物および
一般式(XIX) で表わされる化合物における脱離基Lとし
ては、慣用の脱離基〔例えば、塩素原子、臭素原子、ヨ
ウ素原子などのハロゲン原子、アルキルスルホニルオキ
シ基またはアリールスルホニルオキシ基(トシルオキシ
基、メタンスルホニルオキシ基)〕等を使用することが
できる。
【0323】一般式(XVII)で表わされる化合物と一般式
(XVIII) で表わされる化合物との反応、および一般式
(X)で表わされる化合物と一般式(XIX) で表わされる
化合物との反応は、適当な溶媒〔例えば、ハロゲン化さ
れていてもよい脂肪族炭化水素系溶媒(ヘキサン、シク
ロヘキサン、メチレンクロリド、エチレンクロリド、ク
ロロホルム、四塩化炭素など)、ハロゲン化されていて
もよい芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、メ
シチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど)、
ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、
ブチロニトリル)〕の中で、脱酸剤〔例えば、有機塩基
(トリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、ジ
イソプロピルエチルアミンなど)〕の存在下で、常温ま
たは加熱下で実施することができる。
【0324】また、一般式(XII) で表わされる化合物か
ら水酸基の保護基を除去する工程には、水酸基の保護基
についての慣用の除去方法(例えば、加水分解法、接触
水素添加法、フッ化水素酸処理)を適用することがで
き、例えば、一般式(XII) で表わされる化合物を適当な
溶媒〔例えば、アルコール系溶媒(メタノール、エタノ
ール)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、1,4
−ジオキサン、ジグリム)〕中で、塩基〔例えば、水酸
化アルカリ金属(水酸化カリウム、水酸化ナトリウ
ム)、炭酸アルカリ金属(炭酸カリウム、炭酸ナトリウ
ム)、有機酸(ギ酸、トリフルオロ酢酸)、無機酸(塩
酸、フッ化水素酸)〕で処理することにより実施するこ
とができる。
【0325】続く酸化反応には、ヒドロキシメチレン基
からカルボニル基への変換についての常法(例えば、ク
ロム酸酸化、酸化ルテニウム酸化、スワン酸化〔SwernO
xidation 、メルク・インデックス(Merck Index) 第12
版ONR−89〕、デス−マーチン酸化〔Dess-Martin
Oxidation 、メルク・インデックス(Merck Index) 第12
版ONR−22〕)を適用することができ、例えば、水
酸基の保護基の除去反応で得られる生成物を、適当な溶
媒〔例えば、ハロゲン化されていてもよい脂肪族炭化水
素系溶媒(ヘキサン、シクロヘキサン、メチレンクロリ
ド、エチレンクロリド、クロロホルム、四塩化炭素)、
ハロゲン化されていてもよい芳香族炭化水素系溶媒(ト
ルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジク
ロロベンゼン)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プ
ロピオニトリル、ブチロニトリル)〕中で、酸化剤〔例
えば、クロム酸またはその誘導体(ピリジニウムクロロ
クロメート)、酸化ルテニウム、シュウ酸ジクロリド−
ジメチルスルホキシド、1,1,1−トリス(アセチル
オキシ)−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードオ
キソール−3(1H)−オン〕で処理することにより実
施することができる。
【0326】一般式(XV)で表わされる化合物の還元反応
は、カルボン酸の還元の常法に従って行なうことがで
き、例えば、一般式(XV)で表わされる化合物を適当な溶
媒〔例えば、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テト
ラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリム)〕中
で、還元剤(例えば、ジボラン、リチウムアルミニウム
ヒドリドなど)で処理することにより、実施することが
できる。
【0327】この還元反応で得られる一般式(XVI) で表
わされる化合物の水酸基に結合したアルキル部分の伸長
は、慣用の方法に従って実施することができる。例え
ば、一般式(XVI) で表わされる化合物をハロゲン化剤
〔例えば、チオニルハライド(チオニルクロリド、チオ
ニルブロミド)など〕で処理後、または一般式(XVI)で
表わされる化合物の水酸基を、例えば、p−トルエンス
ルホニルハライド(p−トルエンスルホニルクロリド、
p−トルエンスルホニルブロミド)等で脱離基に変換し
たのち、前記ハロゲン化剤で処理し、生成するハライド
をマグネシウムと反応させてグリニヤール試薬を形成
し、アルキルアルデヒドまたはアルキルケトンと反応さ
せたのち、水で処理することにより実施することができ
る。また、水酸基のアミノ基への変換も慣用の方法に従
って実施することができる。例えば、一般式(XVI) で表
わされる化合物またはその水酸基に結合したアルキル鎖
を伸長した化合物を前記と同様のハロゲン化剤で処理し
たのち、アンモニアと反応させることにより実施するこ
とができる。
【0328】一方、Zが−NH−であり、Qがカルボニ
ル基である一般式(XII) で表わされる化合物の還元反応
は、一般式(XV)で表わされる化合物の還元反応と同様の
方法により、実施することができる。還元反応後、N−
アルキルスルホニル化またはN−アリールスルホニル化
させて得られる生成物から水酸基の保護基を除去し、酸
化する反応は、一般式(XIV) で表わされる化合物の水酸
基の保護基の除去および酸化反応と同様に実施すること
ができる。
【0329】なお、任意工程であるN−アルキルスルホ
ニル化反応およびN−アリールスルホニル化反応は、ア
ミンのスルホニル化の常法に従って行なうことができ
る。反応は、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸
またはこれらの反応性誘導体を用いて行なうことができ
る。反応性誘導体としては、例えば、酸ハライド(酸ク
ロリド、酸ブロミド、酸ヨージド)などをあげることが
できる。
【0330】アルキルスルホン酸またはアリールスルホ
ン酸を用いる場合には、適当な溶媒中で、縮合剤の存在
下で行なうことが好ましく、一方、反応性誘導体を用い
る場合には、適当な溶媒中で、脱酸剤の存在下または非
存在下で行なうことが好ましい。
【0331】また、一般式(X)で表わされる化合物、
一般式(XIII)で表わされる化合物、一般式(XV)で表わさ
れる化合物、一般式(XVI) で表わされる化合物および一
般式(XVII)で表わされる化合物を、慣用の方法で光学分
割したのち、前記合成法を適用すれば、ケトン化合物
(V)を光学異性体の形で得ることができる。
【0332】光学分割法としては、例えば、光学分割剤
とのジアステレオマー塩を分別結晶化させる方法を適用
することができる。光学分割剤としては、光学分割に一
般的に使用されているものを適宜使用することができ
る。該光学分割剤としては、例えば、光学活性アミン類
が好ましく、とりわけ、キニジン、シンコニジン、アミ
ノ酸、アミノ酸エステル、キニン、ブルシン、アミノア
ルコール等の光学異性体が好適である。
【0333】なお、本発明の方法に使用するスチレン誘
導体(I)のうち、Rが低級アルコキシカルボニル基で
ある化合物は、一般式:
【0334】
【化134】
【0335】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環を示す)で表わされるベンズアルデヒド化合物と酢酸
低級アルキルエステルとを、溶媒の存在下または非存在
下、塩基の存在下に縮合反応させ、必要に応じ、生成物
を酸の存在下または非存在下にエステル交換することに
より、収率よく製造することができる。
【0336】酢酸低級アルキルエステルとしては、酢酸
メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチ
ル等をいずれも好適に使用することができ、溶媒となり
うる酢酸低級アルキルエステル(例えば、酢酸メチル、
酢酸エチル)を用いる場合には、必ずしも他の溶媒を加
えなくてもよい。
【0337】ベンズアルデヒドと酢酸低級アルキルエス
テルとの縮合反応に使用する塩基としては、アルカリ金
属アルコキシド(例えば、リチウムメトキシド、リチウ
ムエトキシド、リチウムn−ブトキシド、リチウムt−
ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキ
シド、ナトリウムn−ブトキシド、ナトリウムt−ブト
キシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カ
リウムn−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド)、金
属アルカリ金属(例えば、金属リチウム、金属ナトリウ
ム、金属カリウム)、水素化アルカリ金属(例えば、水
素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム)、
水酸化アルカリ金属(例えば、水酸化リチウム、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム)等の無機強塩基をあげる
ことができる。
【0338】縮合反応は室温〜加温下、とりわけ、20
℃〜60℃で好適に実施することができる。
【0339】縮合生成物のエステル残基が所望のエステ
ル残基を有していない場合には、通常のエステル交換反
応により、所望のエステル残基を有する化合物に変換す
ることができる。
【0340】エステル交換反応は所望のエステル残基に
対応する低級アルカノールを用いて実施することがで
き、このアルコールが溶媒を兼ねる場合には、必ずし
も、他の溶媒を加えなくてもよい。
【0341】エステル交換反応に使用する酸としては、
無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸)、有機酸(例え
ば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)をあ
げることができるが、反応は酸の非存在下においても好
適に進行するため、縮合反応の反応混合物に直接アルコ
ールを添加してエステル交換反応を行なうことができ
る。反応は室温〜溶媒の還流温度、とりわけ20〜80
℃で実施するのが好ましい。
【0342】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定される
ものではない。
【0343】製造例1 式:
【0344】
【化135】
【0345】で表わされるキラルなケトン化合物0.0
1mmolをアセトニトリル7.5mlおよび4×10
-4Mエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム
塩水溶液5mlの混合物に溶解させ、これにオキソン
2.5mmolおよび重曹7.7mmolを添加し、室
温で攪拌し、経時的にEI−MS(electron ionizatio
nmass spectrum)を測定したところ、式:
【0346】
【化136】
【0347】で表わされるキラルなジオキシラン化合物
の形成を支持する412(M+ )のピークが、前記キラ
ルなケトン化合物の396(M+ )のピークとの比較で
徐々に増加していることが確認された。
【0348】次に、前記キラルなケトン化合物0.1m
molをアセトニトリル−d3 3.8ml−4×10-4
MのEDTA二ナトリウム塩重水溶液2.5ml中に溶
解させ、これにオキソン2mmolおよび重曹6.2m
molを添加し、24時間攪拌したのち、反応混合物の
上澄みを採り、そのMS(質量分析)と 1H−NMRを
測定した。
【0349】まず、精密質量分析を行ない、前記キラル
なジオキシラン化合物の形成を支持するM+ イオン(C
25166 、理論値:412.0947、測定値:41
2.0950)を検出した。
【0350】また、 1H−NMR(400MHz)で
は、前記キラルなジオキシラン化合物のメチレン基の水
素原子と推定されるピークが3.85ppm(d,J=
11.8Hz)および4.56ppm(d,J=15.
5Hz)に認められた。
【0351】なお、前記キラルなケトン化合物のメチレ
ン基の水素原子と推定されるピークは、4.21ppm
(d,J=15.5Hz)および5.49ppm(d,
J=15.4Hz)に認められた。
【0352】また、13C−NMRでは、前記キラルなジ
オキシラン化合物のジオキシラン部分の四級炭素が9
5.6ppmに認められた。
【0353】なお、前記キラルなジオキシラン化合物の
カルボニル炭素が2.305ppmに認められた。
【0354】これらは、13C−NMRおけるDEPT(d
istortionless enhancement bypolarization transfer)
測定により、四級炭素であったこと、およびメチレン基
の水素のピーク(3.85ppmおよび4.56pp
m)とのロングレンジカップリングが認められたこと
で、確認された。
【0355】実施例1 トランス−4−メトキシ桂皮酸メチルエステル192m
g(1.0mmol)を1,2−ジメトキシエタン15
mlに室温で溶解させたのち、4×10-4Mエチレンジ
アミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液10mlを添加し、
次いで式:
【0356】
【化137】
【0357】で表わされるキラルなケトン化合物40m
g(0.1mmol)を添加し、外浴により、0℃に冷
却した。そののち、オキソン6.14g(10mmo
l)と重曹2.6g(31mmol)との混合物を6回
に分けて1時間ごとに添加した。添加終了後、さらに2
時間攪拌を行なったのち、得られた反応混合物を半飽和
食塩水にあけ、エーテルで抽出した。有機層を飽和食塩
水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥させ
た。
【0358】乾燥後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、
濾液から溶媒を留去した。得られた残渣に、酢酸エチル
とn−ヘキサンの1:8(容量比)の混合物9mlを添
加し、室温で1時間攪拌した。
【0359】析出した白色粉末を濾取し、減圧下で乾燥
し、前記キラルなケトン化合物32mgを回収した(回
収率:80重量%)。
【0360】一方、得られた濾液(HPLCでの収率:
91%)をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラ
フィー(移動相:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:8
(容量比))で精製し、式:
【0361】
【化138】
【0362】で表わされる光学活性フェニルグリシッド
酸エステル135mgを得た(単離収率:65%)。得
られた光学活性フェニルグリシッド酸エステルの光学純
度をHPLCにより求めたところ、81%eeであっ
た。
【0363】実施例2 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル192
mg(1.0mmol)を1,2−ジメトキシエタン1
5mlに室温で溶解させたのち、4×10-4Mエチレン
ジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液10mlを添加
し、次いで式:
【0364】
【化139】
【0365】で表わされるキラルな不斉ケトン化合物5
5mg(0.1mmol)を添加し、室温で攪拌した。
そののち、オキソン2.06g(3.3mmol)と重
曹860mg(10.3mmol)との混合物を1時間
かけて添加した。添加終了後、さらに混合物を1時間攪
拌し、得られた反応混合物を半飽和食塩水にあけ、エー
テルで抽出したのち、有機層を飽和食塩水で洗浄し、次
いで無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。
【0366】得られた生成物に、実施例1と同様にして
処理を施すことにより、実施例1と同様の光学活性フェ
ニルグリシッド酸エステル0.126g(単離収率:6
1%)を得た。
【0367】得られた光学活性フェニルグリシッド酸エ
ステルの光学純度をHPLCにより求めたところ、64
%eeであった。
【0368】また、実施例1と同様の方法により、前記
キラルなケトン化合物を回収することができた(回収
率:88重量%)。
【0369】実施例3 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル192
mg(1.0mmol)を1,2−ジメトキシエタン
7.5mlに室温で溶解させたのち、4×10-4Mエチ
レンジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液5mlを添加
し、次いで式:
【0370】
【化140】
【0371】で表わされるキラルなケトン化合物46m
g(0.1mmol)を添加し、0℃に冷却した。その
のち、オキソン1.84g(3mmol)と重曹780
mg(9.3mmol)との混合物を7時間かけて添加
した。添加終了後、さらに17時間攪拌し、得られた反
応混合物を半飽和食塩水にあけ、エーテルで抽出したの
ち、飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウム
で乾燥した。
【0372】得られた生成物に実施例1と同様に処理を
施すことによって、得られた実施例1と同様の光学活性
フェニルグリシッド酸エステルの収率および光学純度を
HPLCにより求めたところ、それぞれ74%および8
5%eeであった。
【0373】実施例4 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル192
mg(1.0mmol)を1,2−ジメトキシエタン
3.8mlに室温で溶解させたのち、4×10-4Mエチ
レンジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液2.5mlを
添加し、次いで式:
【0374】
【化141】
【0375】で表わされるキラルなケトン化合物4mg
(0.01mmol)を添加し、室温に保持した。その
のち、オキソン1.23g(2mmol)と重曹521
mg(6.2mmol)との混合物を添加した。添加終
了後、さらに攪拌したのち、得られた反応混合物を実施
例1と同様にして洗浄し、乾燥した。
【0376】得られた生成物に実施例1と同様に処理を
施すことによって、得られた実施例1と同様の光学活性
フェニルグリシッド酸エステルの収率および光学純度を
HPLCにより求めたところ、それぞれ70%および6
2%eeであった。
【0377】実施例5 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル192
mg(1.0mmol)を1,2−ジメトキシエタン
7.5mlに室温で溶解させたのち、4×10-4Mエチ
レンジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液5mlを添加
し、次いで式:
【0378】
【化142】
【0379】で表わされるキラルなケトン化合物4mg
(0.01mmol)を添加し、室温で保持した。その
のち、得られた混合物に、オキソン1.54g(2.5
mmol)と重曹650mg(7.7mmol)との混
合物を添加した。添加終了後、得られた混合物を4.5
時間攪拌したのち、実施例1と同様にして洗浄し、乾燥
させた。
【0380】得られた生成物(HPLCでは収率:92
%)に実施例1と同様に処理を施すことにより、実施例
1と同様の光学活性フェニルグリシッド酸エステル13
8mg(単離収率:66%)を得た。
【0381】得られた生成物の光学純度をHPLCによ
り求めたところ、74%eeであった。
【0382】また、実施例1と同様の方法により、前記
キラルなケトン化合物を回収することができた(回収
率:80重量%)。
【0383】実施例6 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル192
mg(1.0mmol)を1,2−ジメトキシエタン
3.8mlに室温で溶解させたのち、4×10-4Mエチ
レンジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液2.5mlを
添加し、次いで式:
【0384】
【化143】
【0385】で表わされるキラルなケトン化合物4mg
(0.01mmol)を添加し、室温に保持した。その
のち、オキソン1.23g(2mmol)と重曹521
mg(6.2mmol)との混合物を添加した。添加終
了後、さらに混合物を8時間攪拌したのち、得られた反
応混合物を実施例1と同様にして洗浄し、乾燥した。
【0386】生成物(HPLCでは収率:93%)に実
施例1と同様に処理を施すことによって、実施例1と同
様の光学活性フェニルグリシッド酸エステル137mg
(単離収率:66%)を得た。
【0387】得られた光学活性フェニルグリシッド酸エ
ステルの光学純度をHPLCにより求めたところ、73
%eeであった。
【0388】実施例7 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル192
mg(1.0mmol)を、1,2−ジメトキシエタン
15mlに室温で溶解させたのち、4×10-4Mエチレ
ンジアミン四酢酸ニナトリウム塩水溶液10mlを添加
し、次いで式:
【0389】
【化144】
【0390】で表わされるキラルなケトン化合物50m
g(0.1mmol)を添加し、室温で保持した。その
のち、オキソン2.06g(3.3mmol)と重曹8
66mg(10.3mmol)との混合物を1時間かけ
て添加した。添加終了後、さらに30分間攪拌し、得ら
れた反応混合物を半飽和食塩水にあけ、エーテルで抽出
したのち、有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫
酸マグネシウムで乾燥した。
【0391】得られた生成物に実施例1と同様に処理を
施すことによって、実施例1と同様の光学活性フェニル
グリシッド酸エステル107mg(単離収率:51%)
を得た。
【0392】得られた光学活性フェニルグリシッド酸エ
ステルの光学純度をHPLCにより求めたところ、73
%eeであった。
【0393】実施例8 式:
【0394】
【化145】
【0395】で表わされる化合物159mg(1mmo
l)を1,2−ジメトキシエタン15mlに室温で溶解
させたのち、4×10-4Mエチレンジアミン四酢酸二ナ
トリウム塩水溶液10mlを添加し、続いて実施例1で
用いたのと同じキラルなケトン40mg(0.1mmo
l)を添加し、0℃に冷却した。
【0396】そののち、オキソン3.07g(5mmo
l)と重曹1.3g(15.5mmol)の混合物を3
回に分けて1時間ごとに添加した。
【0397】さらに、室温で18時間攪拌したのち、反
応混合物を半飽和食塩水にあけ、エーテルで抽出したの
ち、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウ
ムで乾燥させた。
【0398】乾燥後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、
濾液から溶媒を留去した。得られた残渣に酢酸エチルと
n−ヘキサンの1:8(容量比)の混合物9mlを添加
し、室温で1時間攪拌した。
【0399】析出した白色粉末を濾取し、減圧下で乾燥
し、キラルなケトン化合物を回収した。一方、得られた
濾液をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィ
ー(移動相:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:8(容量
比)で精製し、式:
【0400】
【化146】
【0401】で表わされる光学活性フェニルオキシラン
化合物90mg(単離収率:51%)を得た。
【0402】得られた光学活性フェニルオキシラン化合
物の光学純度をHPLCにより求めたところ、57%e
eであった。
【0403】また、得られた光学活性フェニルオキシラ
ン化合物は、以下の物性を有するものであった。
【0404】1H−NMR(300MHz,CDCl3 )
:δ3.40(1H,d,J=1.8Hz,),3.
82(3H,S),4.24(1H,d,J=1.8H
z),6.91(2H,m),7.19(2H,m)
【0405】なお、前記HPLCの条件は、以下のとお
りである。 〔カラム〕キラルOD 〔移動相〕ヘキサン:エタノール=9:1(容量比) 〔流速〕0.5ml/min
【0406】実施例9〜15 一般式:
【0407】
【化147】
【0408】(式中、Rx は、表1に示す基を示す)で
表わされるケイ皮酸誘導体を用いた。
【0409】前記ケイ皮酸誘導体1.0mmolを、表
1に示す溶媒15mlに室温で溶解させたのち、4×1
-4Mエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液1
0mlを添加し、次いで実施例1で用いたものと同じキ
ラルなケトン化合物を添加し、室温に保持した。そのの
ち、オキソン6.14g(10mmol)および重曹
2.6g(31mmol)との混合物を分割して添加し
たのち、更に、攪拌し、得られた反応混合物を食塩水に
注ぎ、エーテルで抽出したのち、飽和食塩水で洗浄し、
次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。
【0410】キラルなケトン化合物の量、オキソンおよ
び重曹の添加時間、並びに攪拌時間を表1に併記する。
【0411】前記のようにして得られた洗浄、乾燥後の
抽出液より、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾液から
溶媒を留去した。得られた残渣に、酢酸エチルとn−ヘ
キサンの1:8(容量比)の混合物9mlを添加し、室
温で1時間攪拌した。
【0412】析出した白色粉末を濾取し、減圧下で乾燥
し、キラルなケトン化合物を回収した。
【0413】一方、得られた濾液をシリカゲルのフラッ
シュカラムクロマトグラフィー(移動相:酢酸エチル:
n−ヘキサン=1:8(容量比))で精製し、一般式:
【0414】
【化148】
【0415】(式中、Rx は前記と同じ)で表わされる
光学活性フェニルグリシッド酸エステルを得た。
【0416】得られた光学活性フェニルグリシッド酸エ
ステルの収率および光学純度を表1に示す。なお、光学
純度はHPLCにより求めた。
【0417】
【表1】
【0418】表1に示された結果から、実施例9〜15
の方法によれば、エステル残基の種類によらず、光学活
性フェニルグリシッド酸エステルを高収率でかつ高光学
純度で製造することができることがわかる。
【0419】実施例16 トランス−4 −メトキシケイ皮酸メチルエステル961
mg(5.00mmol)および式:
【0420】
【化149】
【0421】で表わされるキラルなケトン化合物79m
g(0.20mmol)を1,2−ジメトキシエタン9
mlおよび水4.5mlに懸濁した。得られた懸濁液に
オキソン3.074g(5.00mmol)および重曹
1.302g(15.5mmol)を1時間30分かけ
て添加し、22〜24℃で2時間30分間攪拌した。反
応混合物に食塩水を加え、エーテルで抽出した。得られ
た抽出液を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄後、無水
硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後の抽出液31.5
6gのうち、546.2mgを用いてHPLCにより、
3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエス
テルの収率を測定し、収率が88.3%であることおよ
び(2R,3S)体の光学純度が76.8%eeである
ことが確認された。
【0422】残りの反応混合物を減圧濃縮し、得られた
残渣1.042gのうち、6.6mgを用いて、トラン
ス−4 −メトキシケイ皮酸メチルエステル量をHPLC
で測定したところ、7.3%しか残存していないことが
確認された。
【0423】残りの残渣にイソプロピルエーテル17.
5mlを添加し、45℃に加温して溶解させた。溶液を
攪拌下、10分間かけて40℃まで冷却し、析出晶を濾
取する。得られた析出晶の一部をサンプリングし、組成
1H−NMRおよびHPLCで調べたところ、析出晶
はキラルなケトン化合物73mgおよび(2R,3S)
−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエ
ステル90.7mg(光学純度98.8%ee)の混合
物であることが確認された。
【0424】濾液を減圧濃縮し、残渣に再びイソプロピ
ルエーテル10mlを添加し、40〜45℃に加温して
溶解させた。得られた溶液を20℃まで冷却し、そのの
ち、40分間かけて11℃に、更に、1時間35分かけ
て8.5℃まで冷却した。析出晶をデカンテーションに
より分取し、冷イソプロピルエーテルで洗浄することに
より、(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニル)
グリシッド酸メチルエステル587mg(収率:56.
4%、光学純度:98.5%ee)を取得した。
【0425】母液を減圧濃縮し、残渣265mgを 1
−NMRおよびHPLCにより定量したところ、キラル
なケトン化合物6mgおよびラセミ型トランス−3−
(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステル
181.5mgからなることが判明し、分離工程では生
成物の分解および副反応が生じていないことが確認され
た。
【0426】実施例17 トランス−p−メトキシケイ皮酸メチルエステル9.6
11g(50mmol)および式:
【0427】
【化150】
【0428】で表わされるキラルなケトン化合物1.0
88g(2.7mmol)を1,2−ジメトキシエタン
100mlに室温で溶解させた。そののち、得られた溶
液に、20℃で蒸留水50mlを添加し、次いで、同温
度でオキソン30.74g(50mmol)および重曹
13.02g(155mmol)の混合物を1.5時間
かけてゆっくりと添加した。添加終了後、さらに同温度
で5.5時間攪拌し、得られた反応混合物を0〜5℃ま
で冷却し、次いで、冷却した水500mlを添加し、同
温度で30分間攪拌した。
【0429】析出した固体をクロロホルム100mlに
溶解し、乾燥後、不純物を濾過し、濾液から溶媒を減圧
留去することにより、白色固体を得た。
【0430】この白色固体を以下の条件でHPLC分析
したところ、該白色固体は、(2R,3S)−3−(p
−メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステル8.
298g、(2S,3R)−3−(p−メトキシフェニ
ル)グリシッド酸メチルエステル0.902g、p−メ
トキシケイ皮酸メチルエステル0.323gおよび前記
キラルなケトン化合物0.966gの混合物であると推
定された。
【0431】 (HPLCの測定条件) 充填剤: キラルセル(Chiralcel)OD 溶媒: n−ヘキサン:イソプロピルアルコール(容量比)=10:1 流速: 1ml/分 カラム温度:40℃ 検出: 220nmでの吸収
【0432】得られた白色固体に実施例1と同様に処理
を施すことによって、(2R,3S)−3−(p−メト
キシフェニル)グリシッド酸メチルエステルおよび前記
キラルなケトン化合物をそれぞれ得ることができた。
【0433】実施例18 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル38m
g(0.2mmol)および式:
【0434】
【化151】
【0435】で表わされるキラルなケトン化合物0.8
mg(0.002mmol)を1,2−ジメトキシエタ
ン3mlに溶解した。この溶液に、4.0×10-4Mの
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩水溶液2mlを
加え、0℃にて激しく攪拌しながら、さらにオキソン6
12mgおよび炭酸水素ナトリウム260mgを3回に
分け、30分間ごと添加した。
【0436】得られた混合物を同温で7時間攪拌する
と、薄層クロマトグラフィーでp−メトキシケイ皮酸メ
チルエステルが検出されなくなった。得られた反応液に
ジエチルエーテルを加えて抽出後、抽出液を飽和食塩水
で洗浄した。抽出後の水層および洗浄液を合わせ、ジエ
チルエーテルで再度抽出した。抽出液を合わせ、乾燥
後、溶媒を留去した。
【0437】得られた残渣をシリカゲルフラッシュカラ
ムクロマトグラフィー〔溶媒:ヘキサン−酢酸エチル
(4:1)〕で精製することにより、(2R,3S)−
3−(p−メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエス
テル39mgを得た。
【0438】実施例17と同様にして、得られた(2
R,3S)−3−(p−メトキシフェニル)グリシッド
酸メチルエステルをHPLCで分析した結果、この生成
物は63%eeの光学純度を有すると推定された。
【0439】実施例19 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル1.9
22g(10mmol)および式:
【0440】
【化152】
【0441】で表わされるキラルなケトン化合物215
mg(0.5mmol)を1,4−ジオキサン20ml
に室温で溶解させた。そののち、得られた溶液に水10
mlを添加し、次いで、20℃にてオキソン6.15g
(10mmol)および炭酸水素ナトリウム2.60g
(31mmol)の混合物を5分間隔で1.5時間かけ
て添加した。添加終了後、同温にて30分間攪拌し、次
いで27℃に昇温して7時間攪拌後、水50mlを添加
した。反応混合物をクロロホルムで抽出し、無水硫酸マ
グネシウムで乾燥後、濃縮した。
【0442】得られた残渣を実施例17と同様にしてH
PLCで分析したところ、(2R,3S)−3−(4-
メトキシフェニル) グリシッド酸メチルエステル1.7
84g(収率:85.7%、光学純度:76.4%e
e)、トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル
135.7mgおよび前記キラルなケトン化合物21
2.1mgの混合物であると推定された。
【0443】実施例20 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル1.9
22g(10mmol)および式:
【0444】
【化153】
【0445】で表わされるキラルなケトン化合物215
mg(0.5mmol)を1,4−ジオキサン20ml
に室温で溶解させた。そののち、得られた溶液に20℃
にて水10mlおよび炭酸カリウム2.21g(16m
mol)を添加し、次いで、同温にてオキソン6.15
g(10mmol)を5分間隔で1.5時間かけて添加
した。添加終了後、同温にて30分間攪拌し、次いで2
7℃に昇温して7時間攪拌後、水50mlを添加した。
反応混合物をクロロホルムで抽出し、無水硫酸マグネシ
ウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣を実施例17と
同様にHPLCで分析したところ、(2R,3S)−3
−(4- メトキシフェニル) グリシッド酸メチルエステ
ル1.585g(収率:76.1%、光学純度:78.
0%ee)、トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエ
ステル341.4mgおよび前記キラルなケトン化合物
209.7mgの混合物であると推定された。
【0446】参考例1〔キラルなケトン化合物の合成〕 (1)ビアントラキノンカルボン酸の光学分割 ラセミ体の1,1’−ビス(2−アントラキノンカルボ
ン酸)(以下、ビアントラキノンカルボン酸という)
2.40gをエタノール120mlに溶解させ、加熱還
流させた。次に、この溶液に、式:
【0447】
【化154】
【0448】で表わされるキニジン3.13gを少しず
つ添加したのち、15分間加熱還流した。そののち、室
温まで放冷し、一晩放置し、析出したビアントラキノン
カルボン酸のキニジン塩を濾取し、エタノールで洗浄し
たのち、これに1%水酸化ナトリウム水溶液114ml
を添加し、60℃で30分間加熱した。加熱後、室温ま
で放冷し、3.5%塩酸を添加し、pH2に調整し、3
0分間攪拌した。
【0449】次に、その反応混合物に、酢酸エチルエス
テルを添加して抽出したのち、乾燥し、溶媒を留去し
た。得られた抽出物をメタノールに溶解させ、再結晶を
行ない、溶媒が約17ml残存するまで留去を行ない、
得られた結晶を濾取した。
【0450】次に、得られた結晶を60〜70℃で16
時間減圧乾燥させ、(−)−体のビアントラキノンカル
ボン酸890mgを得た。
【0451】得られた(−)−体のビアントラキノンカ
ルボン酸の物性は、以下のとおりである。
【0452】分解点(dp):196.8−220.6
℃ 〔α〕D 25:−225°(C=0.8,MeOH) IR(nujol)νmax (cm-1):3490,17
21,1670,1584 LC−MS(ESI)m/z:501(M−H)1 H−NMR(DMSO−d6 ):δ 7.80−7.
95(m,6H),8.21−8.26(m,2H),
8.33(d,J=8Hz,2H),8.41(d,J
=8Hz,2H),13.0(brs,2H)
【0453】次に、以下の条件で、HPLCを測定した
ところ、(+)−体の混入が認められなかった。
【0454】LiChro CART 250-4 Chira Dec 5μm MeOH : 1/45M phosphate buffer (pH 6.5) (50/50)
【0455】(2)キラルなケトン化合物の合成 アルゴン雰囲気下、(−)−体のビアントラキノンカル
ボン酸331mgのテトラヒドロフラン8mlの溶液
に、シュウ酸クロリド0.144mlおよびジメチルホ
ルムアミド1滴を添加し、室温で1時間攪拌した。
【0456】反応溶液をテトラヒドロフラン102ml
で希釈し、式:
【0457】
【化155】
【0458】で表わされる1,3−ジヒドロキシアセト
ンダイマー89mgおよびトリエチルアミン0.551
mlのテトラヒドロフラン溶液(懸濁液)20mlを4
0分間で滴下し、そののち、テトラヒドロフラン20m
lで滴下ロート中に残存した1,3−ジヒドロキシアセ
トンダイマーを洗い流した。
【0459】室温で22時間攪拌したのち、溶媒を減圧
留去し、残渣に塩化メチレンおよび水を添加し、塩化メ
チレンで抽出した。
【0460】有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、
溶媒を留去した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムク
ロマトグラフィー〔溶媒:酢酸エチル−ヘキサン(1:
2〜2:1)〕で精製し、溶出液から溶媒を留去し、
式:
【0461】
【化156】
【0462】で表わされるキラルなケトン化合物199
mgをアモルファスパウダーとして得た(収率:54
%)。
【0463】得られたキラルなケトン化合物の物性は、
以下のとおりである。 IR(nujol)νmax (cm-1):1756,17
37,1672 LC−MS(APCI,酢酸アンモニウム添加) m/z=
574(M+NH4)+ 1 H−NMR(CDCl3 ):δ 4.20(d,J=
15Hz,2H),5.49(d,J=15Hz,2
H),7.64−7.80(m,4H),7.91−
7.96(m,2H),8.01(d,J=8Hz,2
H),8.29−8.33(m,2H),8.58
(d,J=8Hz,2H)
【0464】参考例2 アルゴン雰囲気下で、(−)−体の1,1’−ビス(2
−アントラセンカルボン酸)(以下、ビアントラセンカ
ルボン酸という)750mgの塩化メチレン35mlの
溶液に、シュウ酸クロリド0.37mlおよびジメチル
ホルムアミド数滴を添加し、室温で2時間攪拌した。
【0465】反応溶液を塩化メチレン420mlで希釈
し、1,3−ジヒドロキシアセトンダイマー230mg
およびトリエチルアミン1.4mlの塩化メチレン溶液
(懸濁液)80mlを1時間30分かけて滴下し、その
のち塩化メチレン20mlで滴下ロート中に残存した
1,3−ジヒドロキシアセトンダイマーを洗い流した。
【0466】室温で42時間攪拌したのち、溶媒を減圧
留去し、残渣にクロロホルムおよび炭酸水素ナトリウム
水溶液を添加し、クロロホルムで抽出した。
【0467】有機層を水および飽和食塩水で洗浄したの
ち、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー〔溶媒:ク
ロロホルム〕で精製し、溶出液から溶媒を留去して、
式:
【0468】
【化157】
【0469】で表わされるキラルなケトン化合物671
mgをアモルファスパウダーとして得た(収率:78
%)。
【0470】得られたキラルなケトン化合物の物性は、
以下のとおりである。 IR(nujol)νmax (cm-1):1753,17
35,1239 LC−MS(APCI,酢酸アンモニウム添加) m/z
=514(M+NH4 + 1 H−NMR(COCl3 ):δ4.21(d,J=1
5Hz,2H),5.59(d,J=15Hz,2
H),7.29(ddd,J=1.7,8Hz,2
H),7.46(ddd,J=1.7,7.9Hz,2
H),7.52(d,J=9Hz,2H),7.67
(d,J=9Hz,2H),7.89(S,2H),
8.03(d,J=8Hz,2H),8.26(d,J
=9Hz,2H),8.59(S,2H)
【0471】参考例3 Chem. Pharm. Bull.37(8)2207−2208(1
989)に記載の方法に従って得られた(R)−(+)
−6,6’−ジクロロ−2,2’−ジフェン酸2.37
gと1,3−ジヒドロキシアセトンダイマー2.05g
の無水アセトニトリル700ml溶液にトリエチルアミ
ン16.9mlを添加し、室温で15分間攪拌した。こ
の液に、2−クロロ−1−メチルピリジニウムヨージド
15.5gを添加し、窒素雰囲気下、室温で12時間攪
拌し、更に1時間加熱還流した。この反応混合物の溶媒
を減圧留去し、残渣に塩化メチレンおよび水を添加し、
塩化メチレンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウム
で乾燥させ、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルフラッ
シュカラムクロマトグラフィー〔溶媒:酢酸エチル−ヘ
キサン(2:1)〕で精製し、溶出液から溶媒を留去し
て、式:
【0472】
【化158】
【0473】で表わされるキラルなケトン化合物450
mgをアモルファスパウダーとして得た(収率:16
%)。
【0474】得られたキラルなケトン化合物の物性は、
以下のとおりである。
【0475】1H−NMR(CDCl3 ) :δ4.19
(d,J=15Hz,2H),5.50(d,J=15
Hz,2H),7.40−7.73(m,6H)
【0476】参考例4 p−アニスアルデヒド6.81g(50mmol)、酢
酸エチル35.2g(400mmol)およびナトリウ
ムメトキシドのメタノール溶液12.5g(28%、6
5mmol)を混合し、60℃で6時間攪拌した。反応
混合物より溶媒を減圧留去し、残渣に濃硫酸8.8g
(90mmol)のメタノール溶液30mlを加え、8
時間加熱還流した。反応混合物より溶媒を減圧留去し、
メタノール30mlを加え、再度、9時間加熱還流し
た。更に、反応混合物から溶媒を留去し、メタノール3
0mlを添加し、4時間加熱還流後、水および酢酸エチ
ルを添加し、酢酸エチル層を分取した。酢酸エチル層か
ら一部を分取し、HPLCにより定量したところ、トラ
ンス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル8.01g
(83.4%)が含まれるものと推定された。酢酸エチ
ル層を濃縮後、残渣を70%含水メタノール30mlに
加熱溶解後、溶液を室温まで攪拌下に放冷し、更に、1
晩4℃に冷却した。析出晶を濾取し、冷メタノールで洗
浄後、50℃で乾燥することにより、トランス−4−メ
トキシケイ皮酸メチルエステル7.58g(収率:7
8.9%)を単離した。
【0477】参考例5 p−アニスアルデヒド6.81g(50mmol)、酢
酸エチル35.2g(400mmol)およびナトリウ
ムエトキシドのエタノール溶液[金属ナトリウム1.6
1g(70mmol)をエタノール25mlに溶解して
調製]を混合し、室温で13時間、50℃で3時間攪拌
した。反応混合物より溶媒を減圧留去し、残渣にメタノ
ール30mlを加え、5時間室温で反応させた。反応混
合物を減圧留去後、残渣にメタノール30mlを加えて
50℃で18時間反応させた。反応混合物に酢酸4.2
gを加えて反応を停止したのち、反応混合物に水および
酢酸エチルを添加し、酢酸エチル層を分取した。酢酸エ
チル層から一部を分取し、HPLCにより定量したとこ
ろ、トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル
7.78g(81.0%)が含まれるものと推定され
た。
【0478】参考例6〜9 参考例1または2の方法において、ナトリウムメトキシ
ドのメタノール溶液またはナトリウムエトキシドのエタ
ノール溶液の代わりに、別の塩基を用いて縮合反応さ
せ、参考例1または2と同様にエステル交換反応するこ
とにより、表2に記載の結果を得た。
【0479】
【表2】
【0480】参考例10 ブレチン・ケミカル・ソサイエティー・オブ・ジャパン
(Bull. Chem. Soc. Jpn.)57巻、1943〜1947頁 (1984
年) に記載された式:
【0481】
【化159】
【0482】で表わされるキラルなジカルボン酸化合物
160mg(0.48mmol)をテトラヒドロフラン
6ml溶解し、この溶液に窒素ガス気流中で、室温でシ
ュウ酸クロリド0.105ml(1.20mmol)お
よびジメチルホルムアミド1滴を添加し、得られた混合
物を同温で1時間攪拌した。反応混合物にテトラヒドロ
フラン80mlを加えて希釈し、この中に、室温下、
1,3−ジヒドロキシアセトン2量体65mg(0.3
6mmol)およびトリエチルアミン0.4ml(2.
88mmol)をテトラヒドロフラン20mlに溶解し
た溶液を約40分間かけて滴下し、同温で混合物を1夜
攪拌した。
【0483】得られた反応液から溶媒を留去し、残渣を
クロロホルムに溶解し、飽和食塩水で洗浄後、乾燥し、
溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルフラッ
シュカラムクロマトグラフィー〔ヘキサン−トリエチル
アミン(100:1)で前処理、溶媒:ヘキサン−酢酸
エチル(1:1)〕で精製することにより、式:
【0484】
【化160】
【0485】で表わされるキラルなケトン化合物41m
g(22%)を得た。
【0486】以上説明したように、一般式(I)で表わ
されるスチレン誘導体(I)に、キラルなケトン化合物
と酸化剤とから生成する不斉酸化剤を作用させることに
より、一般式(II)で表わされる光学活性フェニルオキシ
ラン化合物を高立体選択的に、かつ高収率で得ることが
できることがわかる。
【0487】また、オキソンおよびキラルなケトン化合
物による不斉酸化の例として、トランス−スチルベンの
不斉エポキシ化が知られているが〔ジャーナル・オブ・
アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J.Am.C
hem.Soc.)118巻11311頁(1996
年)〕、単純なC2 対称化合物であるトランス−スチル
ベンとは異なり、本発明の原料化合物であるスチレン誘
導体(I)は、対称要素のない複雑な化合物であり、不
斉反応を制御することがより困難であると考えられるに
もかかわらず、非常に高い光学収率で光学活性フェニル
オキシラン化合物を収得することができることがわか
る。
【0488】また、一般に、不斉反応においては、高い
立体選択性を得るためには、極めて低い温度(−78℃
程度)で反応を行なう場合が多いが、本発明の製法にお
いては、0℃〜室温付近で高い立体選択性で不斉酸化さ
せることができるため、工業化が容易であるという利点
がある。
【0489】また、本発明の原料化合物であるスチレン
誘導体(I)では、電子吸引性エステル部分が二重結合
に直接結合しており、キラルなケトン化合物と酸化剤と
から生成する不斉酸化剤による不斉酸化が進行しにくい
と考えられるにもかかわらず、低温でも、比較的短時間
で反応を終了させることができる。
【0490】また、本発明の製法には、緩和な酸化剤で
ある不斉酸化剤が用いられているので、分解されやすい
オキシラン環を有する光学活性フェニルオキシラン化合
物を高収率で得ることができる。
【0491】さらに、本発明においては、キラルなケト
ン化合物を用い、該キラルなケトン化合物を反応系内で
酸化剤によって酸化させ、不斉酸化剤を形成させ、該不
斉酸化剤によって同一反応系内に存在するスチレン誘導
体(I)の不斉酸化を行なった場合には、不斉酸化反応
で不斉酸化剤から生じるキラルなケトン化合物が、再
度、反応系内の酸化剤によって酸化され、不斉酸化剤に
再生されるため、触媒量のキラルなケトン化合物を用い
るだけで、不斉酸化反応を行なうことができる。さら
に、前記キラルなケトン化合物は、化学的に安定な化合
物であるため、回収することにより、再利用することが
できる。
【0492】
【発明の効果】本発明によれば、光学活性フェニルオキ
シラン化合物を高収率で収得することができ、またその
製造の際に使用される不斉触媒を再利用することができ
るので、光学活性フェニルオキシラン化合物を生産性お
よび経済性よく製造しうるという優れた効果が奏され
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61P 9/12 A61P 9/12 C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 C07M 7:00 C07M 7:00 (72)発明者 草間 真理 埼玉県浦和市辻2−24−6−105 (72)発明者 尾崎 泰彦 大阪府寝屋川市石津東町18−18 (72)発明者 黒田 徹 兵庫県芦屋市朝日ヶ丘町9−8−214 (72)発明者 関 雅彦 京都府長岡京市開田4丁目34番13号 (56)参考文献 特表 平4−501360(JP,A) J.Am.Chem.Soc. (1996),118,pages11311− 11312 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 301/03 C07D 281/10 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (25)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I): 【化1】 (式中、環Aは置換または非置換ベンゼン環、Rは−C
    2 q で示される基またはこれに変換可能な基、Rq
    はエステル残基を示す)で表わされるスチレン誘導体
    (I)に、キラルなケトン化合物と酸化剤とから生成す
    る不斉酸化剤を作用させることを特徴とする一般式(I
    I): 【化2】 (式中、環AおよびRは前記と同じ。*は不斉炭素原子
    であることを示す)で表わされる光学活性フェニルオキ
    シラン化合物(II)の製法。
  2. 【請求項2】 キラルなケトン化合物が、一般式
    (V): 【化3】 〔式中、環Arは置換基を有していてもよい、1〜3環
    式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
    ン化合物(V)の光学異性体である請求項1記載の製
    法。
  3. 【請求項3】 キラルなケトン化合物が、一般式(VI): 【化4】 〔式中、Ra およびRb は水素原子または置換基、Rc
    およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置換
    基であるか、または(II) Rc およびRd はたがいに結
    合して一般式: 【化5】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化6】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
    ン化合物(VI)の光学異性体である請求項1または2記載
    の製法。
  4. 【請求項4】 キラルなケトン化合物と酸化剤との反応
    および生成する不斉酸化剤をスチレン誘導体(I)に作
    用させる反応を同一反応系内で行なう請求項1〜3いず
    れか記載の製法。
  5. 【請求項5】 一般式(I): 【化7】 (式中、環Aは置換または非置換ベンゼン環、Rは−C
    2 q で示される基またはこれに変換可能な基、Rq
    はエステル残基を示す)で表わされるスチレン誘導体
    (I)に、キラルなジオキシラン化合物を作用させるこ
    とを特徴とする一般式(II): 【化8】 (式中、環AおよびRは前記と同じ。*は不斉炭素原子
    であることを示す)で表わされる光学活性フェニルオキ
    シラン化合物(II)の製法。
  6. 【請求項6】 キラルなジオキシラン化合物が、一般式
    (III): 【化9】 〔式中、環Arは置換基を有していてもよい1〜3環式
    の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
    キシラン化合物(III) の光学異性体である請求項5記載
    の製法。
  7. 【請求項7】 キラルなジオキシラン化合物が、一般式
    (IV): 【化10】 〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原子または置換
    基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
    換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
    に結合して一般式: 【化11】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化12】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
    キシラン化合物(IV)の光学異性体である請求項5または
    6記載の製法。
  8. 【請求項8】 一般式(VI): 【化13】 〔式中、Ra およびRb は水素原子または置換基、Rc
    およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子または置換基
    であるか、または(II) Rc およびRd はたがいに結合
    して一般式: 【化14】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化15】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii)−NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
    ン化合物(VI)の光学異性体と酸化剤とを反応させ、生成
    するキラルなジオキシラン化合物(IV)をスチレン誘導体
    (I)に作用させる請求項5〜7いずれか記載の製法。
  9. 【請求項9】 ケトン化合物(VI) の光学異性体と酸化
    剤との反応および生成するキラルなジオキシラン化合物
    (IV)をスチレン誘導体(I)に作用させる反応を同一反
    応系内で行なう請求項8記載の製法。
  10. 【請求項10】 スチレン誘導体(I)がトランス体で
    あり、光学活性フェニルオキシラン化合物(II)が、(2
    R,3S)−異性体または(2S,3R)−異性体であ
    る請求項1〜9いずれか記載の製法。
  11. 【請求項11】 スチレン誘導体(I)がトランス体で
    あり、キラルなケトン化合物が一般式(VI−a): 【化16】 〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原子または置換
    基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
    換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
    に結合して一般式: 【化17】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化18】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるキラ
    ルなケトン化合物(VI−a)であり、光学活性フェニル
    オキシラン化合物(II)が(2R,3S)−異性体である
    請求項1〜4いずれか記載の製法。
  12. 【請求項12】 スチレン誘導体(I)がトランス体で
    あり、キラルなケトン化合物が一般式(VI−b): 【化19】 〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原子または置換
    基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
    換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
    に結合して一般式: 【化20】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化21】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるキラ
    ルなケトン化合物(VI−b)であり、光学活性フェニル
    オキシラン化合物(II)が(2S,3R)−異性体である
    請求項1〜4いずれか記載の製法。
  13. 【請求項13】 スチレン誘導体(I)がトランス体で
    あり、キラルなジオキシラン化合物が、一般式(IV−
    a): 【化22】 〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原子または置換
    基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
    換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
    に結合して一般式: 【化23】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化24】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるキラ
    ルなジオキシラン化合物(IV−a)であり、光学活性フ
    ェニルオキシラン化合物(II)が(2R,3S)−異性体
    である請求項5〜9いずれか記載の光学活性フェニルオ
    キシラン化合物(II)の製法。
  14. 【請求項14】 スチレン誘導体(I)がトランス体で
    あり、キラルなジオキシラン化合物が、一般式(IV−
    b): 【化25】 〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原子または置換
    基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
    換基であるか、または (II) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化26】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化27】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるキラ
    ルなジオキシラン化合物(IV−b)であり、光学活性フ
    ェニルオキシラン化合物(II)が(2S,3R)−異性体
    である請求項5〜9いずれか記載の製法。
  15. 【請求項15】 Yが−CO−O−CH2 −基、Ra
    d が、(a)Ra およびRb が水素原子、Rc および
    d がたがいに結合して 【化28】 を形成しているか、Rc が水素原子、Rd がハロゲン原
    子であるか、もしくはR c が水素原子、Rd がニトロ基
    であるか、または(b)Ra がハロゲン原子、Rb が水
    素原子、Rc およびRd がたがいに結合して 【化29】 を形成している請求項3、4、7、8、9、11、1
    2、13または14記載の製法。
  16. 【請求項16】 Ra およびRb が水素原子、Rc およ
    びRd がたがいに結合して 【化30】 を形成している請求項15記載の製法。
  17. 【請求項17】 一般式(I)で表わされるスチレン誘
    導体(I)に、キラルなジオキシラン化合物を作用させ
    て得られた反応混合物から、キラルなジオキシラン化合
    物を還元させて生成したケトン化合物および光学活性フ
    ェニルオキシラン化合物(II)を、有機溶媒に対する溶解
    度差を利用した分離方法により、それぞれ高純度で製造
    する請求項5記載の製法。
  18. 【請求項18】 反応混合物に含まれる不斉酸化剤を還
    元し、生成したケトン化合物および光学活性フェニルオ
    キシラン化合物(II)を、有機溶媒に対する溶解度差を利
    用した分離方法により、それぞれ高純度で製造する請求
    項1記載の製法。
  19. 【請求項19】 ケトン化合物が、一般式(V): 【化31】 〔式中、環Arは置換基を有していてもよい、1〜3環
    式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
    ン化合物(V)の光学異性体である請求項17または1
    8記載の製法。
  20. 【請求項20】 ケトン化合物が、一般式(VI): 【化32】 〔式中、Ra およびRb は水素原子または置換基、Rc
    およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置換
    基であるか、または(II) Rc およびRd はたがいに結
    合して一般式: 【化33】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化34】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR1 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR1 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR1 −Alk4 −または (viii) −NR1 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R1 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
    ン化合物(VI)の光学異性体である請求項17〜19いず
    れか記載の製法。
  21. 【請求項21】 環Aが低級アルキル基、低級アルコキ
    シ基およびハロゲン原子からなる群より選ばれた置換基
    1〜3個を有するフェニル基であり、Rが−CO2 q
    (Rq はエステル残基を示す)である請求項1〜20い
    ずれか記載の製法。
  22. 【請求項22】 環Aが4−低級アルキルフェニル基ま
    たは4−低級アルコキシフェニル基であり、Rq が低級
    アルキル基である請求項21記載の製法。
  23. 【請求項23】 環Aが4−メトキシフェニル基であ
    り、Rq がメチル基である請求項22記載の製法。
  24. 【請求項24】 一般式(II) : 【化35】 (式中、環Aは置換または非置換ベンゼン環、Rは−C
    2 q で示される基またはこれに変換可能な基、Rq
    はエステル残基を示す。*は不斉炭素原子であることを
    示す)で表わされる光学活性フェニルオキシラン化合物
    (II)から一般式(VII): 【化36】 (式中、環Bは置換または非置換ベンゼン環、R2 は水
    素原子または置換アルキル基、R3 は低級アルカノイル
    基を示し、環Aおよび*は前記と同じ)で表わされる
    1,5−ベンゾチアゼピン誘導体またはその薬理的に許
    容しうる塩を製造する方法において、前記光学活性フェ
    ニルオキシラン化合物(II)として、請求項1〜23いず
    れか記載の製法で得られた光学活性フェニルオキシラン
    化合物(II)を用いることを特徴とする1,5−ベンゾチ
    アゼピン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩の製
    法。
  25. 【請求項25】 一般式(II) : 【化37】 (式中、環Aは置換または非置換ベンゼン環、Rは−C
    2 q で示される基またはこれに変換可能な基、Rq
    はエステル残基を示す。*は不斉炭素原子であることを
    示す)で表わされる光学活性フェニルオキシラン化合物
    (II)から一般式: 【化38】 (式中、環Aおよび環Bは置換または非置換ベンゼン
    環、*は不斉炭素原子であることを示す)で表わされる
    ニトロカルボン酸化合物またはその塩を製造する方法に
    おいて、請求項1〜23いずれか記載の製法で得られた
    光学活性フェニルオキシラン化合物(II)を用いることを
    特徴とするニトロカルボン酸化合物またはその塩の製
    法。
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