JP2000072761A - 光学活性グリシッド酸エステル化合物の製法 - Google Patents

光学活性グリシッド酸エステル化合物の製法

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JP2000072761A
JP2000072761A JP10242289A JP24228998A JP2000072761A JP 2000072761 A JP2000072761 A JP 2000072761A JP 10242289 A JP10242289 A JP 10242289A JP 24228998 A JP24228998 A JP 24228998A JP 2000072761 A JP2000072761 A JP 2000072761A
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JP10242289A
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Masahiko Seki
雅彦 関
Toshiyuki Furuya
敏行 古谷
Takeji Shibatani
武爾 柴谷
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Tanabe Seiyaku Co Ltd
Original Assignee
Tanabe Seiyaku Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】光学活性グリシッド酸エステル化合物を高収
率、高光学純度、高選択率で収得でき、製造の際に用い
られるキラルなケトン化合物を再利用できる生産性及び
経済性に優れた製法を提供する。 【解決手段】ケイ皮酸エステル化合物(I)に不斉酸化
剤を作用させ、光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ia) 及び光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) を
生成し、前記エステル化合物(IIa) のみを取得後、残渣
に前記エステル化合物(IIb)を立体選択的にエステル交
換する酵素の存在下でアルコール化合物を作用させ、前
記エステル化合物(IIb) をエステル化合物(IIb1)にエス
テル交換し、前記エステル化合物(IIa) のみを結晶化さ
せて取得するか、又はエステル交換後に、エステル交換
前にキラルなケトン化合物を除去しなかった場合にはこ
れを除去し、前記エステル化合物(IIa) のみを結晶化さ
せて取得する製法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学活性グリシッ
ド酸エステル化合物の製法に関する。さらに詳しくは、
不斉酸化および酵素的エステル交換を組合せた光学活性
グリシッド酸エステル化合物の製法および該製法によっ
て得られた光学活性グリシッド酸エステル化合物から
1,5−ベンゾチアゼピン誘導体またはそのその薬理的
に許容しうる塩を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】1,5−ベンゾチアゼピン誘導体は、狭
心症、心筋梗塞、不整脈などの心臓疾患、高血圧症、冠
血管梗塞、脳梗塞などの循環器系疾患に対して有用な化
合物である。特に、塩酸ジルチアゼム〔化学名:(2
S,3S)−3−アセトキシ−5−〔2−(ジメチルア
ミノ)エチル〕−2−(4−メトキシフェニル)−2,
3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)
−オン塩酸塩〕は、狭心症、本態性高血圧症の治療に広
く使用されている。
【0003】前記1,5−ベンゾチアゼピン誘導体の中
間体として有用な光学活性グリシッド酸誘導体を製造す
る方法として、近年、種々の方法が提案されている。前
記グリシッド酸誘導体の主たる製法としては、(A)不
斉加水分解法による方法(特表平4−501360号公
報、特公平6−78号公報、特公平7−121231号
公報)、(B)不斉エステル交換法による方法(特開平
4−228095号公報、特開平5−76389号公
報、特開平6−78790号公報)、(C)化学的光学
分割法による方法(特開昭60−13776号公報、特
公平4−28268号公報、特開平2−231480号
公報)、(D)不斉アミド化法による方法(国際公開第
95/07359号パンフレット)などが知られてい
る。
【0004】しかしながら、前記(A)〜(D)のいず
れの方法においても、原料としてラセミ型トランス−グ
リシッド酸誘導体を使用しているため、目的とする光学
異性体の収率は、ラセミ体の50%以下であるという欠
点がある。
【0005】また、特開昭59−196881号公報に
は、トランス−3−(4−アセトキシフェニル)シンナ
ミルアルコールをテトライソプロポキシチタンおよびL
−酒石酸ジエチルの存在下、m−クロロ過安息香酸で酸
化して、(2S,3S)−3−(4−アセトキシフェニ
ル)グリシジルアルコールを製造し、二酸化ルテニウム
−メタ過ヨウ素酸ナトリウムで酸化後、ジメチル硫酸で
メチルエステルとして、(2R,3S)−3−(4−ア
セトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステルを得る
方法が提案されている。しかしながら、かかる方法によ
れば、その反応工程が非常に煩雑であるとともに、収率
があまり高くないという欠点がある。
【0006】また、近年、ジオキシラン化合物を用いる
酸化反応が種々検討されている〔ケミカル・レビューズ
(Chemical Reviews)89巻1187
−1201頁(1989年)〕。例えば、ジャーナル・
オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Ch
em.)50巻2847−2853頁(1985年)に
は、トランス−ケイ皮酸エチルエステルにキラリティー
を有しないジメチルジオキシランを添加し、25℃で2
2時間、反応させることにより、エポキシ化させること
が報告されている。
【0007】しかしながら、前記ジメチルジオキシラン
は、キラリティーを有しないものであり、本発明の目的
とする光学活性を有するフェニルオキシラン化合物が得
られないという欠点がある。
【0008】また、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケ
ミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.So
c.)118巻11311−11312 頁(1996
年)には、式:
【0009】
【化22】
【0010】で表わされるケトン化合物をオキソン〔デ
ュ・ポン(Du Pont)社製、商品名、組成式:2
KHSO5 ・KHSO4 ・K2 SO4 〕で酸化させて得
られたキラルなジオキシラン化合物を用いて、単純なC
2対称化合物であるとともに、二重結合に電子供与性の
フェニル基が2つ結合したトランス−スチルベンを不斉
エポキシ化させることが報告されている。
【0011】しかしながら、前記文献には、本発明の目
的とする光学活性グリシッド酸エステル化合物の製法に
関する記載や示唆が一切ない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術に鑑みてなされたものであり、対称要素がなく、複雑
な化合物であるケイ皮酸エステル化合物を、キラルなケ
トン化合物と酸化剤とから生成する不斉酸化剤(例え
ば、キラルなジオキシラン化合物)を用いて不斉酸化
(不斉エポキシ化)させ、得られた反応生成物を酵素的
エステル交換反応に付すことにより、目的とする光学活
性グリシッド酸エステル化合物を高収率、高光学純度
で、かつ高選択率で収得することができ、またその製造
の際に使用される不斉酸化剤の原料であるキラルなケト
ン化合物を再利用することができるという、生産性およ
び経済性に優れた製法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の要旨は、 (1) (A)一般式(I):
【0014】
【化23】
【0015】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環、Rはエステル残基を示す)で表わされるケイ皮酸エ
ステル化合物(I)に、キラルなケトン化合物と酸化剤
とから生成する不斉酸化剤を作用させ、主生成物である
一般式(IIa) :
【0016】
【化24】
【0017】(式中、環AおよびRは前記と同じ。*は
不斉炭素原子であることを示す)で表わされる光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIa) および副生成物であ
る一般式(IIb) :
【0018】
【化25】
【0019】(式中、環AおよびRは前記と同じ。**
は光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の対応す
る不斉炭素原子と逆の絶対配置を有する不斉炭素原子で
あることを示す)で表わされる光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIb) からなる反応混合物を生成し、(B
−1)この反応混合物から、キラルなケトン化合物を除
去した後、過剰に含まれている光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIa) のみを結晶化させて取得後、残渣に
含まれている光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
a) および(IIb) の混合物に、光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIb) を立体選択的にエステル交換する能
力を有する酵素の存在下で、一般式(III) :
【0020】
【化26】
【0021】(式中、R1 はRと異なるエステル残基に
対応する基を示す)で表わされるアルコール化合物を作
用させ、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) を
一般式(IIb1):
【0022】
【化27】
【0023】(式中、環A、R1 および**は前記と同
じ)で表わされるエステル化合物(IIb1)にエステル交換
し、生成した混合物から光学活性グリシッド酸エステル
化合物(IIa) のみを結晶化させて取得するか、または
(B−2)この反応混合物から必要に応じてキラルなケ
トン化合物を除去した後、光学活性グリシッド酸エステ
ル化合物(IIb) を立体選択的にエステル交換する能力を
有する酵素の存在下で、アルコール化合物(III) を作用
させ、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) をエ
ステル化合物(IIb1)にエステル交換し、エステル交換前
にキラルなケトン化合物を除去しなかった場合にはキラ
ルなケトン化合物を除去し、生成した混合物から光学活
性グリシッド酸エステル化合物(IIa) のみを結晶化させ
て取得することを特徴とする光学活性グリシッド酸エス
テル化合物(IIa) の製法、
【0024】(2) 反応混合物から必要に応じてキラ
ルなケトン化合物を除去した後、光学活性グリシッド酸
エステル化合物(IIb) を立体選択的にエステル交換する
能力を有する酵素の存在下で、アルコール化合物(III)
を作用させて光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
b) をエステル化合物(IIb1)にエステル交換し、エステ
ル交換前にキラルなケトン化合物を除去しなかった場合
にはキラルなケトン化合物を除去し、生成する混合物か
ら光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) のみを結
晶化させて取得する前記(1)記載の製法、
【0025】(3) 反応混合物からキラルなケトン化
合物を除去した後、過剰に含まれている光学活性グリシ
ッド酸エステル化合物(IIa) のみを結晶化させて取得し
た後、残渣に含まれている光学活性グリシッド酸エステ
ル化合物(IIa) および(IIb) の混合物に、光学活性グリ
シッド酸エステル化合物(IIb) を立体選択的にエステル
交換する能力を有する酵素の存在下で、アルコール化合
物(III) を作用させ、光学活性グリシッド酸エステル化
合物(IIb) をエステル化合物(IIb1)にエステル交換し、
生成した混合物から光学活性グリシッド酸エステル化合
物(IIa) のみを結晶化させて取得する前記(1)記載の
製法、
【0026】(4) エステル交換した後、光学活性グ
リシッド酸エステル化合物(IIa) の結晶化を、光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIa) は結晶化するが、エ
ステル化合物(IIb1)は溶解する溶媒中で行なう前記
(1)〜(3)いずれか記載の製法、
【0027】(5) エステル交換によって生成した混
合物から、エステル化合物(IIb1)が存在しなければ光学
活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) が析出するが、
エステル化合物(IIb1)が存在するため、光学活性グリシ
ッド酸エステル化合物(IIa) は結晶化するが、光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIb) は析出しない状態と
なるまで、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa)
を結晶化させて取得する前記(1)〜(4)いずれか記
載の製法、
【0028】(6) キラルなケトン化合物が、一般式
(IV):
【0029】
【化28】
【0030】〔式中、環Arは置換基を有していてもよ
い、1〜3環式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(IV) の光学異性体である前記(1)〜(5)
いずれか記載の製法、
【0031】(7) 不斉酸化剤が、一般式(V):
【0032】
【化29】
【0033】〔式中、環Arは置換基を有していてもよ
い1〜3環式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
キシラン化合物(V)の光学異性体である前記(1)記
載の製法、
【0034】(8) キラルなケトン化合物が、一般式
(VI):
【0035】
【化30】
【0036】〔式中、Ra およびRb は水素原子または
置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置換
基であるか、または(II) Rc およびRd はたがいに結
合して一般式:
【0037】
【化31】
【0038】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0039】
【化32】
【0040】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(VI)の光学異性体である前記(1)記載の製
法、
【0041】(9) 不斉酸化剤が、一般式(VII):
【0042】
【化33】
【0043】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0044】
【化34】
【0045】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0046】
【化35】
【0047】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
キシラン化合物(VII)の光学異性体である前記(7)記
載の製法、
【0048】(10) 一般式(VI)で表わされるキラル
なケトン化合物(VI)において、Yが−CO−O−CH2
−基、Ra 〜Rd が(a)Ra およびRb が水素原子、
c およびRd がたがいに結合して
【0049】
【化36】
【0050】を形成しているか、Rc が水素原子、Rd
がハロゲン原子であるか、もしくはR c が水素原子、R
d がニトロ基であるか、または(b)Ra がハロゲン原
子、Rb が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合し
【0051】
【化37】
【0052】を形成している前記(8)記載の製法、
【0053】(11) 一般式(VI)で表わされるキラル
なケトン化合物(VI)において、Ra およびRb が水素原
子、Rc およびRd がたがいに結合して
【0054】
【化38】
【0055】を形成している前記(10)記載の製法、
【0056】(12) キラルなケトン化合物と酸化剤
との反応と、生成する不斉酸化剤をケイ皮酸エステル化
合物(I)に作用させる反応とを同一反応系内で行なう
前記(1)〜(6)、(8)、(10)および(11)
のいずれか記載の製法、
【0057】(13) ケイ皮酸エステル化合物(I)
がトランス体であって、光学活性グリシッド酸エステル
化合物(IIa) が(2R,3S)−異性体であり、かつ光
学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) が(2S,3
R)−異性体であるか、または光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIa) が(2S,3R)−異性体であり、
かつ光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) が(2
R,3S)−異性体である前記(1)〜(12)いずれ
か記載の製法、
【0058】(14) ケイ皮酸エステル化合物(I)
がトランス体であって、キラルなケトン化合物が一般式
(VI-a):
【0059】
【化39】
【0060】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0061】
【化40】
【0062】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0063】
【化41】
【0064】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるキラ
ルなケトン化合物(VI-a)であり、光学活性グリシッド酸
エステル化合物(IIa) が(2R,3S)−異性体であ
り、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) が(2
S,3R)−異性体である前記(13)記載の製法、
【0065】(15) 立体選択的にエステル交換する
能力を有する酵素が、転換率10%におけるエステル交
換についてのE値が20以上のものである前記(1)〜
(14)いずれか記載の製法、
【0066】(16) 立体選択的にエステル交換する
能力を有する酵素が、セラチア(Serratia)属微生物由
来のエステラーゼである前記(15)記載の製法、
【0067】(17) 立体選択的にエステル交換する
能力を有する酵素が、セラチア・マルセッセンス(Serr
atia marucescens)微生物由来のエステラーゼである前
記(16)記載の製法、
【0068】(18) 光学活性グリシッド酸エステル
化合物(IIb) の70%以上をエステル交換し、溶媒に対
する溶解性の高いエステル化合物(IIb1)とする前記
(1)〜(17)いずれか記載の製法、
【0069】(19) 一般式(I)で表わされるケイ
皮酸エステル化合物(I)において、環Aが4−低級ア
ルコキシフェニル基であり、Rがメチル基またはエチル
基であり、エステル交換によって生成したエステル化合
物(IIb1)のR1 が、ハロゲン原子を有していてもよい、
前記Rよりも炭素数が多い直鎖または分枝鎖アルキル
基;ハロゲン原子を有していてもよい、前記Rよりも炭
素数が多い直鎖または分枝鎖アルコキシアルキル基;ま
たは直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、直鎖もしくは分枝
鎖アルコキシ基またはハロゲン原子を有していてもよい
アリールアルキル基である前記(1)〜(18)いずれ
か記載の製法、
【0070】(20) 環Aが4−メトキシフェニル基
であり、Rがメチル基であり、エステル交換によって生
成したエステル化合物(IIb1)のR1 がn−ブチル基であ
る前記(19)記載の製法、
【0071】(21) 前記(1)〜(20)いずれか
で得られた光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa)
を用いて、一般式(VIII) :
【0072】
【化42】
【0073】(式中、環Bは置換または非置換ベンゼン
環、R3 は水素原子または置換アルキル基、R4 は低級
アルカノイル基を示し、環Aおよび*は前記と同じ)で
表わされる1,5−ベンゾチアゼピン誘導体またはその
薬理的に許容しうる塩を製造することを特徴とする1,
5−ベンゾチアゼピン誘導体またはその薬理的に許容し
うる塩の製法、ならびに
【0074】(22) 前記(1)〜(20)いずれか
で得られた光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa)
を用いて、一般式:
【0075】
【化43】
【0076】(式中、環Aおよび環Bは置換または非置
換ベンゼン環、*は不斉炭素原子であることを示す)で
表わされるニトロカルボン酸化合物またはその塩を製造
することを特徴とするニトロカルボン酸化合物またはそ
の塩を製造する方法に関する。
【0077】
【発明の実施の形態】本発明の製法によれば、(A)一
般式(I):
【0078】
【化44】
【0079】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環、Rはエステル残基を示す)で表わされるケイ皮酸エ
ステル化合物(I)に、キラルなケトン化合物と酸化剤
とから生成する不斉酸化剤を作用させ、主生成物である
一般式(IIa) :
【0080】
【化45】
【0081】(式中、環AおよびRは前記と同じ。*は
不斉炭素原子であることを示す)で表わされる光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIa) および副生成物であ
る一般式(IIb) :
【0082】
【化46】
【0083】(式中、環AおよびRは前記と同じ。**
は光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の対応す
る不斉炭素原子と逆の絶対配置を有する不斉炭素原子で
あることを示す)で表わされる光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIb) からなる反応混合物を生成し、(B
−1)この反応混合物から、キラルなケトン化合物を除
去した後、過剰に含まれている光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIa) のみを結晶化させて取得後、残渣に
含まれている光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
a) および(IIb) の混合物に、光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIb) を立体選択的にエステル交換する能
力を有する酵素の存在下で、一般式(III) :
【0084】
【化47】
【0085】(式中、R1 はRと異なるエステル残基に
対応する基を示す)で表わされるアルコール化合物を作
用させ、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) を
一般式(IIb1):
【0086】
【化48】
【0087】(式中、環A、R1 および**は前記と同
じ)で表わされるエステル化合物(IIb1)にエステル交換
し、生成した混合物から光学活性グリシッド酸エステル
化合物(IIa) のみを結晶化させて取得するか、または
(B−2)この反応混合物から必要に応じてキラルなケ
トン化合物を除去した後、光学活性グリシッド酸エステ
ル化合物(IIb) を立体選択的にエステル交換する能力を
有する酵素の存在下で、アルコール化合物(III) を作用
させ、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) をエ
ステル化合物(IIb1)にエステル交換し、エステル交換前
にキラルなケトン化合物を除去しなかった場合にはキラ
ルなケトン化合物を除去し、生成した混合物から光学活
性グリシッド酸エステル化合物(IIa) のみを結晶化させ
ることにより、光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ia)を取得することができる。
【0088】本発明の製法においては、工程(A)の出
発物質として、一般式(I):
【0089】
【化49】
【0090】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環、Rはエステル残基を示す)で表わされるケイ皮酸エ
ステル化合物(I)が用いられる。
【0091】一般式(I)で表わされるケイ皮酸エステ
ル化合物(I)において、環Aは、前記したように、置
換または非置換ベンゼン環である。具体的には、環Aと
しては、フェニル基をはじめ、低級アルキル基、低級ア
ルコキシ基およびハロゲン原子からなる群より選ばれた
置換基を1〜3個有するフェニル基があげられる。低級
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基
およびt−ブチル基に代表される炭素数1〜4のアルキ
ル基があげられる。低級アルコキシ基としては、メトキ
シ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基に代
表される炭素数1〜4のアルコキシ基があげられる。ま
た、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭
素原子およびヨウ素原子があげられる。環Aのなかで
は、低級アルキル基、低級アルコキシ基およびハロゲン
原子からなる群より選ばれた置換基を1〜3個有するフ
ェニル基が好ましく、4−低級アルキルフェニル基およ
び4−低級アルコキシフェニル基がより好ましく、4−
メチルフェニル基および4−メトキシフェニル基がさら
に好ましく、4−メトキシフェニル基が特に好ましい。
【0092】前記Rとしては、慣用のエステル残基であ
れば、いずれも使用することができる。
【0093】Rの具体例としては、メチル基、エチル
基、プロピル基、ブチル基などに代表される炭素数1〜
4の低級アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシ
ル基などに代表される炭素数3〜7のシクロアルキル
基、フェニル基、ナフチル基などに代表される炭素数6
〜10のアリール基などがあげられる。これら低級アル
キル基、シクロアルキル基およびアリール基は、置換基
を有していてもよい。低級アルキル基およびシクロアル
キル基の置換基としては、置換または非置換フェニル
基、ハロゲン原子、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、
炭素数1〜5の低級アルカノイルオキシ基、炭素数4〜
8のシクロアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7〜1
1のアリールカルボニルオキシ基などがあげられ、アリ
ール基の置換基としては、炭素数1〜4の低級アルキル
基、ハロゲン原子、炭素数1〜4の低級アルコキシ基な
どがあげられる。これらのRのなかでは、低級アルキル
基が好ましく、メチル基およびエチル基がより好まし
く、メチル基が特に好ましい。
【0094】一般式(I)で表わされるケイ皮酸エステ
ル化合物(I)の幾何異性体に関して、−CH=CH−
基に結合している環Aと−CO2 Rとの位置関係は、シ
スおよびトランスのいずれであってもよい。
【0095】前記ケイ皮酸エステル化合物(I)のなか
では、一般式(I)において、環Aがメトキシフェニル
基またはメチルフェニル基であり、Rがメトキシカルボ
ニル基であり、環Aと−CO2 Rとがトランスに結合し
ているケイ皮酸エステル化合物(I)、なかでもトラン
ス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステルは、好適に使
用しうるものである。
【0096】キラルなケトン化合物と酸化剤とから生成
する不斉酸化剤は、キラルなケトン化合物に酸化剤を作
用させて得られるものであり、不斉酸化を生じるもので
あればよく、単一の不斉酸化剤であってもよく、複数の
不斉酸化剤の混合物であってもよい。かかる不斉酸化剤
の具体例としては、キラルなジオキシラン化合物があげ
られるが、これに限定されるものではなく、またキラル
なジオキシラン化合物を含む混合物であってもよい。
【0097】不斉酸化剤の生成に用いるキラルなケトン
化合物としては、例えば、単糖類または多糖類の1つま
たは複数の水酸基をオキソ基に変換し、残りの水酸基を
保護した化合物(例えば、1,2:4,5−ジ(O−イ
ソプロピリデン)−D−エリトロ−2,3−ヘキソジウ
ロ−2,6−ピラノース〔テトラヘドロン(Tetrahedro
n) 47巻2133頁(1991年)〕)などの天然物
起源のキラルなケトン化合物や、キラルなビアリール骨
格を有するケトン化合物などの非天然のキラルなケトン
化合物をあげることができる。
【0098】前記キラルなケトン化合物の代表例として
は、例えば、一般式(IV):
【0099】
【化50】
【0100】〔式中、環Arは置換基を有していてもよ
い1〜3環式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(IV)の光学異性体があげられる。
【0101】前記ケトン化合物(IV)において、環Ar
は、置換基を有していてもよい1〜3環式の芳香環であ
る。かかる1〜3環式の芳香環としては、例えば、ベン
ゼン環、ナフタレン環、ナフトキノン環、アントラセン
環、アントラキノン環、フェナントレン環などをあげる
ことができる。また、芳香環に結合するYの置換位置
は、軸性キラリティーを生じるのであれば、特に制限が
ないが、2つの環Ar間の結合のオルト位にYが結合し
ていることが好ましい。
【0102】芳香環上の置換基としては、例えば、フッ
素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子に代表さ
れるハロゲン原子、ニトロ基、メチルスルホニル基、p
−トルエンスルホニル基、トリフルオロメチル基、シア
ノ基、メトキシカルボニル基、メチルスルホキシド基、
スルホニルアミド基などの電子吸引性基;メチル基、エ
チル基、プロピル基およびブチル基に代表される炭素数
1〜4の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プ
ロポキシ基およびブトキシ基に代表される炭素数1〜4
の低級アルコキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル
基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基に代表さ
れる炭素数3〜7のシクロアルキル基、ベンジル基およ
びフェネチル基に代表される炭素数7〜10のアラルキ
ル基などの電子供与性基をあげることができる。これら
基のなかでは、電子吸引性基が好ましく、とりわけハロ
ゲン原子およびニトロ基が好ましい。
【0103】ケトン化合物(IV)において、Yは、前記し
たように、 (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 − であり、Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水
素原子、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニ
ル基、Alk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4および
Alk5 はそれぞれ低級アルキレン基である。
【0104】R2 におけるアルキルスルホニル基として
は、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル
基、プロピルスルホニル基およびブチルスルホニル基に
代表されるアルキル部分が炭素数1〜4のアルキルスル
ホニル基があげられる。また、アリールスルホニル基と
しては、例えば、ベンゼンスルホニル基、p−トルエン
スルホニル基、ナフチルスルホニル基などのアリール部
分が炭素数6〜10であるアリールスルホニル基があげ
られる。
【0105】また、Alk1 、Alk2 、Alk3 、A
lk4 およびAlk5 における低級アルキレン基の具体
例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメ
チレン基、テトラメチレン基、メチルメチレン基、メチ
ルエチレン基およびメチルトリメチレン基に代表される
直鎖または分枝鎖の炭素数1〜4の低級アルキレン基が
あげられる。
【0106】前記Yのなかでは、前記(ii) で表わされ
る基が好ましく、そのなかでも、Qがカルボニル基であ
ることがとりわけ好ましい。具体的には、Yとしては、
−CO−O−CH2 −基が好ましい。
【0107】前記キラルなケトン化合物のより具体的な
例としては、例えば、一般式(VI):
【0108】
【化51】
【0109】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0110】
【化52】
【0111】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0112】
【化53】
【0113】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子または置換基を示す)で表わされる基を
形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
ン化合物(VI)の光学異性体があげられる。
【0114】ここで、Ra 〜Rm における置換基として
は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子
に代表されるハロゲン原子、ニトロ基、メチルスルホニ
ル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメチル
基、シアノ基、メトキシカルボニル基、メチルスルホキ
シド基、スルホニルアミド基などの電子吸引性基;メチ
ル基、エチル基、プロピル基およびブチル基に代表され
る炭素数1〜4の低級アルキル基、メトキシ基、エトキ
シ基、プロポキシ基およびブトキシ基に代表される炭素
数1〜4の低級アルコキシ基、シクロプロピル基、シク
ロブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基
に代表される炭素数3〜7のシクロアルキル基、ベンジ
ル基およびフェネチル基に代表される炭素数7〜10の
アラルキル基などの電子供与性基をあげることができ
る。これらの基のなかでは、電子吸引性基が好ましく、
なかでも特にハロゲン原子およびニトロ基が好ましい。
【0115】Ra 〜Rd としては、(a)Ra およびR
b が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合して
【0116】
【化54】
【0117】を形成しているか、Rc が水素原子、Rd
がハロゲン原子であるか、もしくはR c が水素原子、R
d がニトロ基であるか、または(b)Ra がハロゲン原
子、Rb が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合し
【0118】
【化55】
【0119】を形成している場合が好ましく、とりわけ
a およびRb が水素原子、Rc およびRd がたがいに
結合して
【0120】
【化56】
【0121】を形成している場合が好ましい。
【0122】また、前記ケトン化合物(VI)のYとして
は、ケトン化合物(IV)のYと同様の基をあげることがで
きる。
【0123】一般式(VI)で表わされるキラルなケトン化
合物(VI)において、Yが−CO−O−CH2 −基、Ra
〜Rd が(a)Ra およびRb が水素原子、Rc および
d がたがいに結合して
【0124】
【化57】
【0125】を形成しているか、Rc が水素原子、Rd
がハロゲン原子であるか、もしくはR c が水素原子、R
d がニトロ基であるか、または(b)Ra がハロゲン原
子、Rb が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合し
【0126】
【化58】
【0127】を形成していることが好ましく、なかでも
a およびRb が水素原子、Rc およびRd がたがいに
結合して
【0128】
【化59】
【0129】を形成していることが好ましい。
【0130】前記ケトン化合物(VI) の光学異性体とし
ては、軸性キラリティーに基づく、2つの異性体、即
ち、一般式(VI−a):
【0131】
【化60】
【0132】〔式中、Ra 、Rb 、Rc 、Rd およびY
は前記と同じ〕で表わされるキラルなケトン化合物(VI
−a)、および一般式(VI−b):
【0133】
【化61】
【0134】〔式中、Ra 、Rb 、Rc 、Rd およびY
は前記と同じ〕で表わされるキラルなケトン化合物(VI
−b)があげられる。これらのなかでは、一般式(VI−
a)で表わされるキラルなケトン化合物(VI−a)は、
本発明において好適に使用しうるものである。
【0135】前記キラルなケトン化合物と酸化剤とを反
応させることにより、不斉酸化剤を容易に得ることがで
きる。この反応は、アルカリ剤の存在下または非存在下
で、適当な溶媒中で実施することができる。
【0136】前記酸化剤としては、例えば、m−クロロ
過安息香酸、過酢酸、ペルオキソ硝酸、ペルオキソ炭
酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソモノ硫酸、ペルオキ
ソホウ酸、過ギ酸などのペルオキソ酸、およびそのアル
カリ金属塩、過酸化水素などの過酸化物などがあげられ
る。これらの酸化剤は、それ自体を使用してもよいが、
酸化剤を含む組成物の形で使用することもできる。例え
ば、ペルオキソモノ硫酸のアルカリ金属塩を含む組成物
としては、過酸化水素、発煙硫酸および水酸化アルカリ
金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)から得
られる組成物;オキソン〔2KHSO5 ・KHSO4
2 SO4 〕などをあげることができる。これらの組成
物は、ペルオキソ酸またはそのアルカリ金属塩、過酸化
物などの酸化剤が安定化された状態で存在するため、本
発明の方法において好適に使用することができる。な
お、かかる酸化剤、溶媒および原料化合物のなかには、
金属などが不純物として含まれていることがあり、かか
る不純物が反応に関与しないようにするために、キレー
ト化剤を添加してもよい。前記キレート化剤としては、
例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四
酢酸二ナトリウム、クラウンエーテル(18−クラウン
−6など)などがあげられる。前記キレート化剤は、そ
のままの状態で前記ケイ皮酸エステル化合物(I)の溶
液に添加してもよく、またあらかじめ溶媒に溶解させて
溶液としたのち、前記ケイ皮酸エステル化合物(I)の
溶液に添加してもよい。
【0137】前記アルカリ剤としては、炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属、炭酸水素ナ
トリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金
属、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸アルカリ
金属などを用いることができる。
【0138】前記溶媒としては、例えば、1,2−ジメ
トキシエタン、ジメトキシメタン、ジメチルエーテル、
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオ
キサン、1,3−ジオキソラン、ジグリムなどのエーテ
ル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロ
ニトリルなどのニトリル系溶媒;メタノール、エタノー
ル、プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノー
ル、sec−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコ
ール系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系
溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノンなど
のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキ
シド系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロ
ホルム、四塩化炭素、ヘキサン、シクロヘキサン、ペン
タンなどのハロゲン化されていてもよい脂肪族炭化水素
系溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロ
ロベンゼンなどのハロゲン化されていてもよい芳香族炭
化水素系溶媒などの有機溶媒、水およびこれらの混合溶
媒などがあげられる。これらの溶媒のなかでは、エーテ
ル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール系溶媒、水およ
びこれらの混合溶媒、とりわけ1,2−ジメトキシエタ
ン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、水およびこ
れらの混合溶媒は、好適に使用しうるものである。
【0139】反応温度は、不斉酸化剤を生成する温度で
あれば制限がなく、所望の不斉酸化剤により、適宜選択
することができるが、−5〜50℃、とりわけ0〜40
℃であることが望ましい。
【0140】また、前記反応後に得られる不斉酸化剤
は、一旦単離してケイ皮酸エステル化合物(I)に作用
させてもよく、また、単離することなく、不斉酸化剤が
生成する反応系と同一の反応系内でケイ皮酸エステル化
合物(I)に作用させてもよい。
【0141】不斉酸化剤を単離しないままの状態でケイ
皮酸エステル化合物(I)に作用させる場合には、キラ
ルなケトン化合物を不斉酸化剤に変換したのち、ケイ皮
酸エステル化合物(I)に作用させてもよく、また、同
一反応系内でキラルなケトン化合物から不斉酸化剤への
変換と、生成する不斉酸化剤をケイ皮酸エステル化合物
(I)に作用させる反応とを並行して行なわせてもよ
い。
【0142】なお、キラルなケトン化合物(VI−a)を用
いた場合には、その軸性キラリティーを保持した不斉酸
化剤が得られ、また、キラルなケトン化合物(VI−b)を
用いた場合には、その軸性キラリティーを保持した不斉
酸化剤が得られる。
【0143】キラルなケトン化合物と酸化剤とから生成
する不斉酸化剤の1つであるキラルなジオキシラン化合
物は、ジオキシラン環(炭素−酸素−酸素からなる3員
環)を有するとともに、キラリティーを有する化合物で
ある。キラリティーには、不斉炭素原子に基づくものお
よび軸性キラリティーに基づくものが含まれる。
【0144】キラルなジオキシラン化合物としては、例
えば、単糖類または多糖類の1つまたは複数の水酸基を
オキソ基に変換し、残りの水酸基を保護した化合物(例
えば、1,2:4,5−ジ(O−イソプロピリデン)−
D−エリトロ−2,3−ヘキソジウロ−2,6−ピラノ
ース〔テトラヘドロン(Tetrahedron) 47巻2133頁
(1991年)〕)などの天然物起源のキラルなケトン
化合物や、キラルなビアリール骨格を有するケトン化合
物などの非天然のキラルなケトン化合物を、例えば、ケ
ミカル・レビューズ(Chemical Review
s)89巻1187頁(1989年)に記載の方法に準
じて酸化させることにより、ケトン部分をジオキシラン
に変換して得られる化合物などをあげることができる。
【0145】前記不斉酸化剤の代表例としては、例え
ば、一般式(V):
【0146】
【化62】
【0147】〔式中、環Arは置換基を有していてもよ
い1〜3環式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
キシラン化合物(V)の光学異性体があげられる。
【0148】前記ジオキシラン化合物(V)において、
環Arは、置換基を有していてもよい1〜3環式の芳香
環である。かかる1〜3環式の芳香環としては、例え
ば、ベンゼン環、ナフタレン環、ナフトキノン環、アン
トラセン環、アントラキノン環、フェナントレン環など
をあげることができる。また、芳香環に結合するYの置
換位置は、軸性キラリティーを生じるのであれば、特に
制限がないが、2つの環Ar間の結合のオルト位にYが
結合していることが好ましい。
【0149】芳香環上の置換基としては、例えば、フッ
素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子に代表さ
れるハロゲン原子、ニトロ基、メチルスルホニル基、p
−トルエンスルホニル基、トリフルオロメチル基、シア
ノ基、メトキシカルボニル基、メチルスルホキシド基、
スルホニルアミド基などの電子吸引性基;メチル基、エ
チル基、プロピル基およびブチル基に代表される炭素数
1〜4の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プ
ロポキシ基およびブトキシ基に代表される炭素数1〜4
の低級アルコキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル
基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基に代表さ
れる炭素数3〜7のシクロアルキル基、ベンジル基およ
びフェネチル基に代表される炭素数7〜10のアラルキ
ル基などの電子供与性基をあげることができる。これら
基のなかでは、電子吸引性基が好ましく、とりわけハロ
ゲン原子およびニトロ基が好ましい。
【0150】一方、ジオキシラン化合物(V)におい
て、Yは、前記したように、 (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 − であり、Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水
素原子、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニ
ル基、Alk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4および
Alk5 はそれぞれ低級アルキレン基である。
【0151】R2 におけるアルキルスルホニル基として
は、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル
基、プロピルスルホニル基およびブチルスルホニル基に
代表されるアルキル部分が炭素数1〜4のアルキルスル
ホニル基があげられる。また、アリールスルホニル基と
しては、例えば、ベンゼンスルホニル基、p−トルエン
スルホニル基、ナフチルスルホニル基などのアリール部
分が炭素数6〜10であるアリールスルホニル基があげ
られる。
【0152】また、Alk1 、Alk2 、Alk3 、A
lk4 およびAlk5 における低級アルキレン基の具体
例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメ
チレン基、テトラメチレン基、メチルメチレン基、メチ
ルエチレン基およびメチルトリメチレン基に代表される
直鎖または分枝鎖の炭素数1〜4の低級アルキレン基が
あげられる。
【0153】前記Yのなかでは、前記(ii) で表わされ
る基が好ましく、そのなかでも、Qがカルボニル基であ
ることがとりわけ好ましい。具体的には、Yとしては、
−CO−O−CH2 −基が好ましい。
【0154】前記キラルなジオキシラン化合物のより具
体的な例としては、例えば、一般式(VII):
【0155】
【化63】
【0156】〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原
子または置換基、Rc およびRd は以下の条件を満足す
る基を示す。 (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
に結合して一般式:
【0157】
【化64】
【0158】(式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、
次のいずれかであることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
(V) Rc およびRd はたがいに結合して一般式:
【0159】
【化65】
【0160】(式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそ
れぞれ水素原子もしくは置換基を示す)で表わされる基
を形成し、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
キシラン化合物(VII)の光学異性体があげられる。
【0161】ここで、Ra 〜Rm における置換基として
は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子
に代表されるハロゲン原子、ニトロ基、メチルスルホニ
ル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメチル
基、シアノ基、メトキシカルボニル基、メチルスルホキ
シド基、スルホニルアミド基などの電子吸引性基;メチ
ル基、エチル基、プロピル基およびブチル基に代表され
る炭素数1〜4の低級アルキル基、メトキシ基、エトキ
シ基、プロポキシ基およびブトキシ基に代表される炭素
数1〜4の低級アルコキシ基、シクロプロピル基、シク
ロブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基
に代表される炭素数3〜7のシクロアルキル基、ベンジ
ル基およびフェネチル基に代表される炭素数7〜10の
アラルキル基などの電子供与性基をあげることができ
る。これらの基のなかでは、電子吸引性基が好ましく、
なかでも特にハロゲン原子およびニトロ基が好ましい。
【0162】Ra 〜Rd としては、(a)Ra およびR
b が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合して
【0163】
【化66】
【0164】を形成しているか、Rc が水素原子、Rd
がハロゲン原子であるか、もしくはR c が水素原子、R
d がニトロ基であるか、または(b)Ra がハロゲン原
子、Rb が水素原子、Rc およびRd がたがいに結合し
【0165】
【化67】
【0166】を形成している場合が好ましく、とりわけ
a およびRb が水素原子、Rc およびRd がたがいに
結合して
【0167】
【化68】
【0168】を形成している場合が好ましい。
【0169】また、前記ジオキシラン化合物(VII)のY
としては、ジオキシラン化合物(V)のYと同様の基を
あげることができる。
【0170】前記ジオキシラン化合物(VII)の光学異性
体としては、軸性キラリティーに基づく、2つの異性
体、即ち、一般式(VII−a):
【0171】
【化69】
【0172】〔式中、Ra 、Rb 、Rc 、Rd およびY
は前記と同じ〕で表わされるキラルなジオキシラン化合
物(VII−a)、および一般式(VII−b):
【0173】
【化70】
【0174】〔式中、Ra 、Rb 、Rc 、Rd およびY
は前記と同じ〕で表わされるキラルなジオキシラン化合
物(VII−b)があげられる。
【0175】前記ジオキシラン化合物(V)の光学異性
体およびジオキシラン化合物(VII)の光学異性体は、例
えば、それぞれ、一般式(IV) :
【0176】
【化71】
【0177】〔式中、環ArおよびYは前記と同じ〕で
表わされるケトン化合物(IV)および一般式(VI) :
【0178】
【化72】
【0179】〔式中、Ra 、Rb 、Rc 、Rd およびY
は前記と同じ〕で表わされるケトン化合物(VI)の対応す
る光学異性体を酸化することにより、容易に得ることが
できる。この酸化反応は、アルカリ剤の存在下または非
存在下で、適当な溶媒中で、酸化剤を用いて前記ケトン
化合物(IV)および(VI) の光学異性体を酸化することに
よって実施することができる。
【0180】前記酸化反応に使用する酸化剤としては、
例えば、m−クロロ過安息香酸、過酢酸、ペルオキソ硝
酸、ペルオキソ炭酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソモ
ノ硫酸、ペルオキソホウ酸、過ギ酸などのペルオキソ
酸、およびそのアルカリ金属塩、過酸化水素などの過酸
化物などがあげられる。これらの酸化剤は、それ自体を
使用してもよいが、酸化剤を含む組成物の形で使用する
こともできる。例えば、ペルオキソモノ硫酸のアルカリ
金属塩を含む組成物としては、過酸化水素、発煙硫酸お
よび水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カ
リウムなど)から得られる組成物;オキソン〔2KHS
5 ・KHSO4 ・K2 SO4 〕などをあげることがで
きる。これらの組成物は、ペルオキソ酸またはそのアル
カリ金属塩、過酸化物などの酸化剤が安定化された状態
で存在するため、本発明の方法において好適に使用する
ことができる。なお、かかる酸化剤、溶媒および原料化
合物のなかには、金属などが不純物として含まれている
ことがあり、かかる不純物が反応に関与しないようにす
るために、キレート化剤を添加してもよい。前記キレー
ト化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エ
チレンジアミン四酢酸二ナトリウム、クラウンエーテル
(18−クラウン−6など)などがあげられる。前記キ
レート化剤は、そのままの状態で前記ケイ皮酸エステル
化合物(I)の溶液に添加してもよく、またあらかじめ
溶媒に溶解させて溶液としたのち、前記ケイ皮酸エステ
ル化合物(I)の溶液に添加してもよい。
【0181】前記アルカリ剤としては、炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属、炭酸水素ナ
トリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金
属、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸アルカリ
金属などを用いることができる。
【0182】前記溶媒としては、例えば、1,2−ジメ
トキシエタン、ジメトキシメタン、ジメチルエーテル、
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオ
キサン、1,3−ジオキソラン、ジグリムなどのエーテ
ル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロ
ニトリルなどのニトリル系溶媒;メタノール、エタノー
ル、プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノー
ル、sec−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコ
ール系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系
溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノンなど
のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキ
シド系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロ
ホルム、四塩化炭素、ヘキサン、シクロヘキサン、ペン
タンなどのハロゲン化されていてもよい脂肪族炭化水素
系溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロ
ロベンゼンなどのハロゲン化されていてもよい芳香族炭
化水素系溶媒などの有機溶媒、水およびこれらの混合溶
媒などがあげられる。これらの溶媒のなかでは、エーテ
ル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール系溶媒、水およ
びこれらの混合溶媒、とりわけ1,2−ジメトキシエタ
ン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、水およびこ
れらの混合溶媒は、好適に使用しうるものである。
【0183】反応温度は、−5〜50℃、好ましくは0
〜40℃であることが望ましい。
【0184】また、前記酸化反応後に得られるジオキシ
ラン化合物(V)および(VII)の光学異性体は、一旦単
離してケイ皮酸エステル化合物(I)に作用させてもよ
く、また、単離することなく、ジオキシラン化合物の光
学異性体が生成した反応系と同一の反応系内でケイ皮酸
エステル化合物(I)に作用させてもよい。
【0185】ジオキシラン化合物の光学異性体を単離し
ないままケイ皮酸エステル化合物(I)に作用させる場
合には、キラルなケトン化合物の光学異性体をジオキシ
ランの光学異性体に変換したのち、ケイ皮酸エステル化
合物(I)に作用させてもよく、また、同一反応系内で
キラルなケトン化合物の光学異性体からジオキシラン化
合物の光学異性体への変換と、ジオキシラン化合物の光
学異性体によるケイ皮酸エステル化合物(I)の不斉酸
化反応とを並行して行なわせてもよい。
【0186】なお、キラルなケトン化合物(VI−a)を用
いた場合には、キラルなジオキシラン化合物(VII−a)が
得られ、また、キラルなケトン化合物(VI−b)を用いた
場合には、キラルなオキシラン化合物(VII−b)が得られ
る。
【0187】本発明の製法において、不斉酸化剤は、ア
ルカリ剤の存在下または非存在下で、適当な溶媒中でケ
イ皮酸エステル化合物(I)に作用させることができ
る。
【0188】例えば、アルカリ剤および溶媒として、ケ
トン化合物(IV)または(VI)の光学異性体と酸化剤を反応
させる際に用いられるアルカリ剤および溶媒をいずれも
好適に使用することができる。前記溶媒のなかでは、と
りわけエーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール系
溶媒、水およびこれらの混合溶媒を好適に使用すること
ができる。
【0189】ケイ皮酸エステル化合物(I)に不斉酸化
剤を作用させる方法としては、例えば、ケイ皮酸エステ
ル化合物(I)の溶液に直接、不斉酸化剤を添加する方
法、ケイ皮酸エステル化合物(I)の溶液に不斉酸化剤
に対応するキラルなケトン化合物および酸化剤を添加
し、同一反応系内で不斉酸化剤を生成させる方法などが
あげられる。
【0190】例えば、不斉酸化剤として、ケトン化合物
(IV)または(VI) の光学異性体と酸化剤とから生成する
ものを使用する場合には、(a)ケイ皮酸エステル化合
物(I)の溶液に不斉酸化剤を添加する方法、(b)ケ
トン化合物(IV)または(VI) の光学異性体とケイ皮酸エ
ステル化合物(I)との混合物に酸化剤を添加し、同一
反応系内で生成する不斉酸化剤をケイ皮酸エステル化合
物(I)に作用させる方法があげられる。
【0191】前記(a)の方法を用いる場合には、ケイ
皮酸エステル化合物(I)を不斉酸化させるのに充分な
量の不斉酸化剤を使用する必要がある。一方、前記
(b)の方法を用いる場合には、ケイ皮酸エステル化合
物(I)を不斉酸化させるのに充分な量の不斉酸化剤を
反応混合物中で形成しうるような量のケトン化合物(IV)
または(VI) の光学異性体および酸化剤を使用すればよ
い。
【0192】前記(b)の方法において、ケトン化合物
(IV)または(VI) の光学異性体から酸化剤により不斉酸
化剤が形成され、該不斉酸化剤はケイ皮酸エステル化合
物(I)を不斉酸化後、対応する元のケトン化合物(IV)
または(VI)の光学異性体に戻り、再利用可能となるた
め、ケイ皮酸エステル化合物(I)に対し、1〜10当
量の酸化剤を使用すれば、不斉源であるケトン化合物(I
V)または(VI) の光学異性体はケイ皮酸エステル化合物
(I)1モルあたり0.001〜0.1モル程度使用す
るのみでケイ皮酸エステル化合物(I)をすべて不斉酸
化させ、所望の光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ia) を優先的に生成させることができ、酸化剤は、ケイ
皮酸エステル化合物(I)に対し、1.6〜2.0当量
の割合で用いることがとりわけ好ましい。
【0193】特に、ケトン化合物(IV)または(VI) の光
学異性体およびケイ皮酸エステル化合物(I)の混合物
に酸化剤であるオキソンを添加し、ケイ皮酸エステル化
合物(I)の不斉酸化を行なう場合には、オキソンはケ
イ皮酸エステル化合物(I)と比べ、ケトン化合物(IV)
または(VI)の光学異性体を選択的に酸化し、不斉酸化
剤を与える。また、不斉酸化剤は、ケイ皮酸エステル化
合物(I)を不斉酸化させたのち、対応する元のケトン
化合物(IV)または(VI)の光学異性体に戻り、循環利用
可能となるため、不斉源であるケトン化合物(IV)または
(VI)の光学異性体を触媒量しか使用しなくても、収率
よく、ケイ皮酸エステル化合物(I)の不斉酸化を行な
うことができ、所望の光学活性グリシッド酸エステル化
合物(IIa) が優先的に生成する。
【0194】また、前記ケイ皮酸エステル化合物(I)
に、不斉酸化剤を作用させる際の温度は、とくに限定が
なく、不斉酸化剤の種類などによっても変動するが、通
常、−5〜50℃程度、なかんづく0〜40℃程度であ
ることが好ましい。
【0195】また、反応時の雰囲気は、特に限定がな
く、通常、大気であってもよく、また例えば、窒素ガス
などの不活性ガスであってもよい。
【0196】次に、前記ケイ皮酸エステル化合物(I)
に不斉酸化剤を作用させて得られた反応混合物中に含ま
れている未反応の不斉酸化剤の還元は、例えば、反応混
合物から共存する酸化剤などを食塩水などで洗浄して除
去したのち、必要に応じてハイポ、亜硫酸水素ナトリウ
ム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を使用して還
元を行なうことにより、未反応の不斉酸化剤を対応する
キラルなケトン化合物に変換することができる。
【0197】本発明の製法において、不斉酸化剤とし
て、キラルなジオキシラン化合物を用いる場合、該化合
物をアルカリ剤の存在下または非存在下で、適当な溶媒
中でケイ皮酸エステル化合物(I)に作用させることが
できる。
【0198】例えば、アルカリ剤および溶媒として、ケ
トン化合物(IV)および(VI)の光学異性体からジオキシ
ラン化合物(V)および(VII) の光学異性体をそれぞれ
製造する際に用いられるアルカリ剤および溶媒をいずれ
も好適に使用することができる。前記溶媒のなかでは、
とりわけエーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール
系溶媒、水およびこれらの混合溶媒を好適に使用するこ
とができる。
【0199】ケイ皮酸エステル化合物(I)の使用量
は、特に限定がないが、通常、前記溶媒100mlに対
して0.1〜30g程度であればよい。
【0200】キラルなジオキシランの使用量は、ケイ皮
酸エステル化合物(I)1モルに対して、1〜5モル程
度であることが好ましく、とりわけ、1〜2モル程度で
あることが好適である。
【0201】ケイ皮酸エステル化合物(I)にキラルな
ジオキシラン化合物を作用させる方法としては、例え
ば、ケイ皮酸エステル化合物(I)の溶液に直接キラル
なジオキシラン化合物を添加する方法、ケイ皮酸エステ
ル化合物(I)の溶液にキラルなジオキシラン化合物に
対応するキラルなケトン化合物および酸化剤を添加し、
同一反応系内でキラルなジオキシラン化合物を生成させ
る方法などがあげられる。
【0202】例えば、キラルなジオキシラン化合物とし
て、ジオキシラン化合物(V)または(VII) の光学異性
体を使用する場合には、(a)ケイ皮酸エステル化合物
(I)の溶液にジオキシラン化合物(V)または(VII)
の光学異性体を添加する方法、(b)ケトン化合物(IV)
または(VI) の光学異性体とケイ皮酸エステル化合物
(I)との混合物に酸化剤を添加し、同一反応系内で生
成するキラルなジオキシラン化合物(V)または(VII)
の光学異性体をケイ皮酸エステル化合物(I)に作用さ
せる方法などがあげられる。
【0203】前記(a)の方法を用いる場合には、ケイ
皮酸エステル化合物(I)を不斉酸化させるのに充分な
量のジオキシラン化合物(V)または(VII) の光学異性
体を使用する必要がある。一方、前記(b)の方法を用
いる場合には、ケイ皮酸エステル化合物(I)を不斉酸
化させるのに充分な量のジオキシラン化合物(V)また
は(VII) の光学異性体を反応混合物中で形成しうるよう
な量のケトン化合物(IV)または(VI) の光学異性体およ
び酸化剤を使用すればよい。
【0204】前記(b)の方法において、ケトン化合物
(IV)または(VI) の光学異性体から酸化剤によりジオキ
シラン化合物(V)または(VII) の光学異性体が形成さ
れ、該異性体はケイ皮酸エステル化合物(I)を不斉酸
化後、対応する元のケトン化合物(IV)または(VI)の光学
異性体に戻り、再利用可能となるため、ケイ皮酸エステ
ル化合物(I)に対し、1〜10当量の酸化剤を使用す
れば、不斉源であるケトン化合物(IV)または(VI) の光
学異性体はケイ皮酸エステル化合物(I)1モルあたり
0.001〜0.1モル程度使用するのみでケイ皮酸エ
ステル化合物(I)をすべて不斉酸化させ、所望の光学
活性グリシッド酸エステル化合物(IIa)を優先的に生成
させることができ、酸化剤は、ケイ皮酸エステル化合物
(I)に対し、1 .6〜2.0当量の割合で用いるのが
とりわけ好ましい。
【0205】特に、ケトン化合物(IV)または(VI) の光
学異性体およびケイ皮酸エステル化合物(I)の混合物
に酸化剤であるオキソンを添加し、ケイ皮酸エステル化
合物(I)の不斉酸化を行なう場合には、オキソンはケ
イ皮酸エステル化合物(I)と比べ、ケトン化合物(IV)
または(VI)の光学異性体を選択的に酸化し、ジオキシ
ラン化合物(V)または(VII) の光学異性体を与える。
また、ジオキシラン化合物(V)または(VII) の光学異
性体は、ケイ皮酸エステル化合物(I)を不斉酸化させ
たのち、対応する元のケトン化合物(IV)または(VI)の
光学異性体に戻り、循環利用可能となるため、不斉源で
あるケトン化合物(IV)または(VI)の光学異性体を触媒
量しか使用しなくても、収率よく、ケイ皮酸エステル化
合物(I)の不斉酸化を行なうことができ、所望の光学
活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) が優先的に生成
する。
【0206】また、前記ケイ皮酸エステル化合物(I)
に、キラルなジオキシラン化合物を作用させる際の温度
は、とくに限定がないが、通常、−5〜50℃程度、な
かんづく0〜40℃程度であることが好ましい。
【0207】また、反応時の雰囲気は、特に限定がな
く、通常、大気であってもよく、また例えば、窒素ガス
などの不活性ガスであってもよい。
【0208】次に、前記ケイ皮酸エステル化合物(I)
にキラルなジオキシラン化合物を作用させて得られた反
応混合物中に含まれる未反応のキラルなジオキシラン化
合物の還元は、例えば、反応混合物から共存する酸化剤
などを食塩水などで洗浄して除去したのち、必要に応じ
てハイポ、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリ
ウムなどの還元剤を使用して還元を行なうことによっ
て、未反応のキラルなジオキシラン化合物を対応するキ
ラルなケトン化合物に変換することができる。
【0209】本発明においては、一般式(I)で表わさ
れるケイ皮酸エステル化合物(I)として、以下のスキ
ームに示されるように、環Aと−CO2 Rとがトランス
位にあるケイ皮酸エステル化合物(I)を用いた場合、
不斉酸化剤がα−アタックした際には、矢印b方向に反
応が進行し、(2R,3S)−光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物が主生成物となり、また不斉酸化剤がβ−
アタックした際には、矢印a方向に反応が進行し、(2
S,3R)−光学活性グリシッド酸エステル化合物が主
生成物となる。また、環Aと−CO2 Rとがシス位にあ
るケイ皮酸エステル化合物(I)を用いた場合、不斉酸
化剤がα−アタックした際には、矢印d方向に反応が進
行し、(2S,3S)−光学活性グリシッド酸エステル
化合物が主生成物となり、また不斉酸化剤がβ−アタッ
クした際には、矢印c方向に反応が進行し、(2R,3
R)−光学活性グリシッド酸エステル化合物が主生成物
となる。
【0210】
【化73】
【0211】〔式中、環AおよびRは前記と同じ〕
【0212】前記光学活性グリシッド酸エステル化合物
のなかでは、(2R,3S)−光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物および(2S,3R)−光学活性グリシッ
ド酸エステル化合物は、環Aと−CO2 Rとがトランス
位にあるので立体障害が少なく、本発明の目的とする光
学活性グリシッド酸エステル化合物を効率よく生成する
ことができるため、好適に使用しうるものである。
【0213】本発明においては、ケイ皮酸エステル化合
物(I)としてトランス体を用い、キラルなケトン化合
物(VI-a)または(VI-b)から得られる不斉酸化剤〔例え
ば、キラルなジオキシラン化合物(VII-a) または(VII-
b) 〕を用いることが好ましい。なお、ケイ皮酸エステ
ル化合物(I)としてトランス体を用い、キラルなケト
ン化合物(VI-a)から得られる不斉酸化剤〔例えば、キラ
ルなジオキシラン化合物(VII-a) 〕を用いた場合には、
(2R,3S)−型グリシッド酸エステル化合物が主生
成物として生成し、またケイ皮酸エステル化合物(I)
としてトランス体を用い、キラルなケトン化合物(VI-b)
から得られる不斉酸化剤〔例えば、キラルなジオキシラ
ン化合物(VII-b) 〕を用いた場合には、(2S,3R)
−型グリシッド酸エステル化合物が主生成物として生成
する。
【0214】工程(B−1)における反応混合物からの
キラルなケトン化合物の除去は、必要に応じて、反応混
合物に含まれているジオキシラン化合物などの不斉酸化
剤を還元してキラルなケトン化合物とした後、キラルな
ケトン化合物と光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ia) および(IIb) との有機溶媒に対する溶解度差を利用
した分離方法によって行なうことができる。
【0215】前記溶解度差を利用した分離方法として
は、有機溶媒による抽出法、有機溶媒を用いた結晶化法
などをあげることができる。
【0216】具体的には、例えば、(a-1)前記キラルな
ケトン化合物を含んだ反応混合物に水を加えて生成する
析出物を取得後、必要に応じて該析出物を有機溶媒に溶
解し、不純物を除去後、溶媒を留去するか、または(a-
2)前記キラルなケトン化合物を含んだ反応混合物を有機
溶媒で抽出し、得られた抽出液を洗浄し、乾燥したの
ち、溶媒を留去し、(b) こうして得られる残渣をキラル
なケトン化合物[例えば、ケトン化合物(IV)または(V
I)]を溶解しにくいが、光学活性グリシッド酸エステ
ル化合物(IIa) および(IIb) を溶解しやすい性質を有す
る有機溶媒を用いて抽出することにより、キラルなケト
ン化合物を除去することができる。
【0217】また、前記(a-1)または(a-2)の工程で得
られる残渣を、高温ではキラルなケトン化合物および光
学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) および(IIb)
をいずれも溶解するが、温度条件によりキラルなケトン
化合物は結晶化し、光学活性グリシッド酸エステル化合
物(IIa) および(IIb) は結晶化しない状態を生じ得る性
質を有する有機溶媒に一旦溶解後、溶液温度を下げてキ
ラルなケトン化合物のみを選択的に結晶化させるか、ま
たは反応混合物を、高温ではキラルなケトン化合物並び
に光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) および(I
Ib) の両方を溶解するが、温度条件によりキラルなケト
ン化合物は結晶化し、光学活性グリシッド酸エステル化
合物(IIa) および(IIb) は結晶化しない状態を生じ得る
性質を有する有機溶媒で抽出し、抽出液の温度を下げて
キラルなケトン化合物のみを選択的に結晶化することに
より、キラルなケトン化合物を除去することができる。
【0218】前記反応混合物に水を加えて生成する析出
物を溶解する有機溶媒としては、例えば、塩化メチレ
ン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化された
脂肪族炭化水素溶媒、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエ
ステル系溶媒、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、
メシチレンなどのハロゲン化されていてもよい芳香族炭
化水素溶媒を使用することができ、反応混合物の抽出に
用いる有機溶媒としては、例えば、トルエンなどの芳香
族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピル
エーテル、t−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキ
サン、テトラヒドロフラン、ジグリムなどのエーテル系
溶媒などを使用することができるが、溶媒としては留去
しやすいエーテル系溶媒を用いるのが好ましい。
【0219】溶媒を留去したのち、残渣の抽出に使用す
る、前記キラルなケトン化合物を溶解しにくいが、光学
活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) および(IIb) を
溶解しやすい有機溶媒としては、ヘキサンなどの脂肪族
炭化水素系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒など
を単独でまたは混合して使用することができる。
【0220】一方、高温ではキラルなケトン化合物およ
び光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) および(I
Ib) の両方を溶解するが、温度条件によりキラルなケト
ン化合物は結晶化し、光学活性グリシッド酸エステル化
合物(IIa) および(IIb) は結晶化しない状態を生じ得る
有機溶媒として、例えば、ジイソプロピルエーテル、t
−ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒を使用す
ることができる。
【0221】前記キラルなケトン化合物の除去工程にお
いて、反応混合物からキラルなケトン化合物を高純度、
高収率で回収することができる。
【0222】前記のようにして得られる主生成物である
光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) および副生
成物である光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb)
の抽出液、またはケトン化合物を除去した後の母液か
ら、必要に応じて溶媒を留去、交換した後、光学活性グ
リシッド酸エステル化合物(IIa) を結晶化することによ
り、反応混合物に含まれている光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIa) の大部分を高純度および高光学純度
で取得することができる。
【0223】結晶化を行なう場合には、有機溶媒とし
て、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−
ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メタノー
ル、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノールな
どのアルコール系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香
族炭化水素系溶媒、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−
オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン
などの脂環属炭化水素系溶媒などを用いることができ、
光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の結晶化、
取得後に、そのままエステル交換反応を行なう場合に
は、エーテル系溶媒または芳香族炭化水素系溶媒を用い
ることが好ましい。光学活性グリシッド酸エステル化合
物(IIa) の結晶化は、キラルなケトン化合物の結晶化を
行なう温度よりも低温で結晶化を行なうことにより、実
質的に純粋な光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
a) を取得することができる。
【0224】キラルなケトン化合物を除去し、光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIa)を結晶化させて取得
した後の残渣には、目的化合物である一般式(IIa) :
【0225】
【化74】
【0226】(式中、環AおよびRは前記と同じ。*は
不斉炭素原子であることを示す)で表わされる光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIa) および副生成物であ
る一般式(IIb) :
【0227】
【化75】
【0228】(式中、環AおよびRは前記と同じ。**
は光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の対応す
る不斉炭素原子と逆の絶対配置を有する不斉炭素原子で
あることを示す)で表わされる光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIb) が含まれている。
【0229】残渣に含まれている光学活性グリシッド酸
エステル化合物(IIa) および(IIb)の混合物に、光学活
性グリシッド酸エステル化合物(IIb) を立体選択的にエ
ステル交換する能力を有する酵素の存在下で、一般式(I
II) :
【0230】
【化76】
【0231】〔式中、R1 はRと異なるエステル残基に
対応する基を示す〕で表わされるアルコール化合物を作
用させ、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) を
一般式(IIb1):
【0232】
【化77】
【0233】(式中、環A、R1 および**は前記と同
じ)で表わされるエステル化合物(IIb1)にエステル交換
し、生成する混合物から光学活性グリシッド酸エステル
化合物(IIa) のみを結晶化させ、取得することができ
る。
【0234】光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
b) を立体選択的にエステル交換する能力を有する酵素
には、次のものが含まれる。 (a)(2S,3R)−異性体を立体選択的にエステル
交換する能力を有する酵素〔(2R,3S)−異性体は
エステル交換しないが、(2S,3R)−異性体はエス
テル交換する酵素〕、 (b)(2R,3S)−異性体を立体選択的にエステル
交換する能力を有する酵素〔(2S,3R)−異性体は
エステル交換しないが、(2R,3S)−異性体はエス
テル交換する酵素〕、 (c)(2S,3S)−異性体を立体選択的にエステル
交換する能力を有する酵素〔(2R,3R)−異性体は
エステル交換しないが、(2S,3S)−異性体はエス
テル交換する酵素〕、 (d)(2R,3R)−異性体を立体選択的にエステル
交換する能力を有する酵素〔(2S,3S)−異性体は
エステル交換しないが、(2R,3R)−異性体はエス
テル交換する酵素〕、
【0235】(2S,3R)−異性体を立体選択的にエ
ステル交換する能力を有する酵素としては、例えば、セ
ラチア(Serratia)属、カンジダ(Candida) 属、ムコール
(Mucor) 属、シュードモナス(Pseudomonas) 属、アスペ
ルギルス(Aspergillus) 属、アルカリゲネス(Alcaligen
es) 属、アブシディア(Absidia) 属、フサリウム(Fusar
ium)属、ギベレラ(Giberella) 属、ノイロスポラ(Neuro
spora)属、トリコデルマ(Trichoderma) 属、リゾプス(R
hizopus)属、アクロモバクター(Achromobacter) 属、バ
シラス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacter
ium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium) 属、プ
ロビデンシヤ(Providencia) 属、サッカロマイコプシス
(Saccharomycopsis)属、ノカルディア(Nocardia)属、ア
ルスロバクター(Arthrobacter)属微生物由来のエステラ
ーゼ、α- キモトリプシン、豚肝臓エステラーゼ、豚膵
臓エステラーゼなどがあげられる。これらの酵素のなか
では、セラチア(Serratia)属微生物由来のエステラー
ゼ、特にセラチア・マルセッセンス(Serratia marcesc
ens )微生物由来のエステラーゼは、本発明において好
適に使用しうるものである。
【0236】前記酵素の具体例としては、アブシディア
・コリンビフェラ(Absidia corymbifera) IFO 4009、同
IFO 4010、アスペルギルス・オクラセウス(Aspergillus
ochraceus) IFO 4346 、アスペルギルス・テレウス(A
spergillus terreus) IFO 6123、フサリウム・オキシス
ポラム(Fusarium oxysporum) IFO 5942 、同ATCC 659、
フサリウム・ソラニ(Fusarium solani) IFO 5232、ギベ
レラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi) IFO 5368 、
ムコール・アングリマクロスポラス(Mucor angulimacro
sporus) IAM 6149、ムコール・シルシネロイデス(Mucor
circinelloides) IFO 6746 、ムコール・フラバス(Muc
or flavus) IAM 6143 、ムコール・フラギリス(Mucor f
ragilis) IFO 6449 、ムコール・ジェネベンシス(Mucor
genevensis) IAM 6091 、ムコール・グロボサス(Mucor
globosus) IFO 6745 、ムコール・ジャンセニ(Mucor j
anssenii) IFO 5398、ムコール・ジャバニカス(Mucor j
avanicus) IFO 4569、同IFO 4570、同IFO 4572、同IFO
5382、ムコール・ランプロスポラス(Mucor lamprosporu
s) IFO 6337 、ムコール・ペトリンスラリス(Mucorpetr
insularis) IFO 6751、ムコール・プランベウス(Mucor
plumbeus) IAM 6117 、ムコール・プライニ(Mucor prai
ni) IAM 6120 、ムコール・プシラス(Mucorpusillus) I
AM 6122 、ムコール・ラセモサス(Mucor racemosus) IF
O 4581、ムコール・ラマニアヌス(Mucor ramannianus)
IAM 6128、ムコール・レカルバス(Mucor recurvus) IAM
6129 、ムコール・シルバティカス(Mucor silvaticus)
IFO6753 、ムコール・スピネッセンス(Mucor spinesce
ns) IAM 6071 、ムコール・サブチリシムス(Mucor subt
ilissimus) IFO 6338、ノイロスポラ・クラッサ(neuros
pora crassa) IFO 6068、リゾプス・アリザス(Rhizopus
arrhizus) IFO 5780、リゾプス・デレマー(Rhizopus d
elemar) ATCC 34612 、リゾプス・ジャポニカス(Rhizop
us japonicus) IFO 4758 、トリコデルマ・ビリデ(Tric
hoderma viride) IFO 4847 、アクロモバクター・サイ
クロクラステス(Achromobacter cycloastes) IAM 1013
、バシラス・スフェリカス(Bacillus sphaericus) IFO
3525、ブレビバクテリウム・ケトグルタミカム(Brevib
acterium ketoglutamicum) ATCC 15588、コリネバクテ
リウム・アルカノリティカム(Corynebacterium alkanol
yticum) ATCC 21511、コリネバクテリウム・ハイドロカ
ーボクラスタム(Corynebacterium hydrocarboclastum)
ATCC 15592、コリネバクテリウム・プリモリオキシダン
ス(Corynebacterium primorioxydans) ATCC 31015 、プ
ロビデンシア・アルカリファシエンス(Providencia alc
alifaciens) JCM 1673、シュードモナス・ムタビリス(P
seudomonas mutabilis) ATCC 31014、シュードモナス・
プチダ(Pseudomonas putida) ATCC 17426 、同ATCC 174
53、33015 、セラチア・リクエファシエンス(Serratia
liquefaciens) ATCC 27592、セラチア・マルセッセンス
(Serratia marcescens) ATCC 13880、同ATCC 14764、同
ATCC 19180、同ATCC 21074、同ATCC 27117、同ATCC 212
12、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)
Sr41(FERM BP-487( 微工研条寄 第487 号))、カンジダ
・パラプシロシス(Candidaparapsilosis) IFO 0585 、
サッカロマイコプシス・リポリティカ(Saccharomycopsi
s lipolytica) IFO 0717、同IFO 0746、同IFO 1195、同
IFO 1209、同IFO 1548、ノカルディア・アステロイデス
(Nocardia asteroides) IFO 3384、同IFO 3424、同IFO
3423、ノカルディア・ガードネリ(Nocardia gardneri)
ATCC 9604 、アルスロバクター・ウレアファシエンス・
ノブ・バール(Arthrobacter ureafaciens nov. var.)、
アルスロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter gl
obiformis)、カンジダ・シリンドラシア(Cndida cylind
racea)由来のエステーゼなどがあげられる。なお、セラ
チア・マルセッセンス Sr 41(Serratia marcescens Sr4
1) は、ブダペスト条約のもと、昭和58年3月26日(原
寄託日)より通商産業省工業技術院微生物工業技術研究
所(あて名:日本国茨城県筑波郡谷田部町東1丁目1番
3〔現通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
(現あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3
号)〕(郵便番号:305-0046)に、受託番号:FERM BP-
487 として寄託されている。
【0237】また、アルカリ性リパーゼ(アクロモバク
ター(Achromobacter)由来、和光純薬工業(株)製)、
リパーゼB(シュードモナス・フラジ(Pseudomonas fr
agi)22-39B由来、和光純薬工業(株)製) 、リパーゼM
「アマノ」(ムコール・ジャバニカス(Mucor javanicu
s) 由来、天野製薬(株)製) 、リパーゼ・タイプXI
(リゾプス・アリザス(Rhizopus arrhizus) 由来、シグ
マ社製) 、タリパーゼ(リゾプス・デレマー(Rhizopus
delemar)由来、田辺製薬(株)製) 、リパーゼNK-116
(リゾプス・ジャポニカス(Rhizopus japonicus) 由
来、長瀬産業(株)製)、リパーゼN(リゾプス・ニビ
ウス(Rhizopus niveus)由来、天野製薬(株)製) 、リ
パーゼSP 435&525(カンジダ・アンタークティカ(Candi
da antarctica)由来、ノボ社製) 、アルカラーゼ(バシ
ラス・リヘニホルミス(Bacillus licheniformis) 由
来、ノボ社製) 、リパーゼ・タイプVII(カンジダ・シリ
ンドラシア(Candida cylindracea) 由来、シグマ社
製)、リパーゼ(ブタ膵臓由来、和光純薬工業(株)
製)、エステラーゼ(ブタ膵臓由来、シグマ社製)、コ
レステロールエステラーゼ(カンジダ・ルゴサ(Candid
a rugosa) 由来、長瀬産業(株)製)、リパーゼOF( カ
ンジダ・シリンドラシア(Candida cylindracea) 由来、
名糖産業(株)製) 、リパーゼQL( アルカリゲネス・エ
スピー(Alkaligenes sp.) 由来、名糖産業(株)製) 、
リパーゼAL( アクロモバクター・エスピー(Achromobact
er sp.) 由来、名糖産業(株)製) 、リパーゼPL (アル
カリゲネス・エスピー(Alkaligenes sp.) 由来、名糖産
業(株)製) などの市販酵素を用いることもできる。
【0238】これらの酵素のなかでは、セラチア(Serra
tia)属、カンジダ(Candida) 属、アルカリゲネス(Alcal
igenes) 属、アクロモバクター(Achromobacter) 属微生
物由来のエステラーゼなどが好ましい。これらの酵素の
なかでは、セラチア・マルセッセンス(Serratia marce
scens)、カンジダ・シリンドラシア(Candida cylindra
cea)微生物由来のエステラーゼが特に好ましい。
【0239】(2R,3S)−異性体を立体選択的にエ
ステル交換する能力を有する酵素としては、例えば、ミ
クロコッカス(Micrococcus)属、アグロバクテリウム(A
grobacterium) 属、マイクロバクテリウム(Microbacte
rium) 属、リゾビウム(Rhizobium) 属、シトロバクター
(Citrobacter) 属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、
ハンセニアスポラ(Hanseniaspora) 属、ハンゼヌラ(Han
senula) 属、ピチア(Pichia)属、ロドスポリディウム(R
hodosporidium)属、シゾサッカロミセス(Schizosacchar
omyces) 属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属、ク
ロエケラ(Kloeckera) 属、トルラスポラ(Torulaspora)
属、ストレプトミセス(Streptomyces)属微生物由来のエ
ステラーゼなどを使用することができる。
【0240】かかる微生物酵素の具体例としては、ミク
ロコッカス・ユリエ(Micrococcus ureae) IAM 1010 (FE
RM BP-2996) 、アグロバクテリウム・ラジオバクター(A
grobacterium radiobacter) IAM 1526、同IFO 13259 、
マイクロバクテリウム・エスピー(Microbacterium s
p.) ATCC 21376、リゾビウム・メリロッティ(Rhizobium
meliloti) IFO 13336、シトロバクター・フロインディ
(Citrobacter freundii)ATCC 8090、デバリオミセス・
ハンセニー・バル・ファブリ(Debaryomyces hansenii v
ar. fabryi) IFO 0015、デバリオミセス・ネパレンシス
(Debaryomyces nepalensis) IFO 0039、ハンセニアスポ
ラ・バルビエンシス(Hanseniaspora valbyens) IFO 011
5 、ハンゼヌラ・ポリモルファ (Hansenula polymorph
a) IFO 1024、ハンゼヌラ・サツルナス (Hansenula sat
urnus) HUT 7087、ピチア・ファリノーサ(Pichia farin
osa) IFO 0607、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)
IFO0948、同IFO 1013、同IAM 12267 、ピチア・ウイカ
ーハミー(Pichia wickerhamii) IFO 1278 、ロドスポリ
ディウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)
IFO 0559 、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosacch
aromyces pombe) IFO0358、スポロボロミセス・グラシ
リス(Sporobolomyces gracillis) IFO 1033 、クロエケ
ラ・コルティシス(Kloeckera corticis) IFO 0633 、ト
ルラスポラ・デルブルエキー(Torulaspora delbruecki
i) IFO 0422、ストレプトミセス・グリセウス・サブス
プ・グリセウス(Streptomyces griseus subsp. griseu
s) IFO 3430、同IFO 3355、ストレプトミセス・ラベン
デュラー・サブスプ・ラベンデュラー(Streptomyces la
vendulae subsp. lavendurae) IFO 3361、同IFO 3415、
同IFO3146由来のエステラーゼなどをあげることができ
る。
【0241】酵素は、市販酵素を使用してもよく、微生
物細胞の培養液から得られるものであっもよい。また、
酵素は、微生物の野生株や変異株から得られるものであ
ってもよく、遺伝子組換え、細胞融合などの生物工学的
手法により誘導された細菌であってもよい。
【0242】前記微生物由来の酵素は、特開平3−15
398号公報などに記載された慣用の培養法(例えば、
慣用の炭素源、チッ素源および無機塩類を含有する培地
中、常温ないし加温下、かつ好気的条件下、pH5〜
8)で微生物を培養し、培養液から遠心分離、濾過など
の常法により、菌体を除去し、必要に応じ、さらに吸着
樹脂などを用いて不純物を除去することにより得られる
が、微生物培養液をそのままの状態で酵素として用いる
こともできる。
【0243】これらの酵素は、そのままの状態で使用す
ることもできるが、凍結乾燥して使用することもでき
る。また、ポリアクリルアミド法、含硫多糖ゲル法(例
えば、カラギーナンゲル法)、寒天ゲル法、光架橋性樹
脂法、ポリエチレングリコール法、セライト法、膜吸着
法などの公知の方法で固定化して使用することもでき
る。
【0244】さらに、これら固定化された酵素は、固定
化されたものをカラムに充填して使用することもでき
る。
【0245】前記酵素のなかでは、E値が高いものは立
体選択性が高い。該E値が高い酵素を用いた場合、目的
化合物である光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
a) がエステル交換される量が少なくなる一方、副生成
物である光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) が
エステル交換される量が多くなる。
【0246】したがって、かかるE値が高い酵素を用い
た場合、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の
析出を阻害する、光学活性グリシッド酸エステル化合物
(IIa) のエステル交換物の生成量が少なくなるので、該
光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の析出量を
多くすることができる。また、副生成物である光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIb) がエステル交換され
る量が増大し、光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ib) の析出を阻害するエステル化合物(IIb1)の生成量が
増大するので、該光学活性グリシッド酸エステル化合物
(IIb) の析出を抑制することができる。
【0247】ところで、「E値」は、酵素の立体選択性
を表わす指標として広く使用されているものである。
【0248】一般に、エステル交換反応が進行するにし
たがい、酵素が失活し、副反応が生じるため、前記E値
の測定誤差が大きくなる傾向がある。
【0249】したがって、本発明においては、副反応な
どが比較的少なく、測定誤差が小さいときのE値を求め
るため、転換率10%におけるエステル交換についての
E値を測定する。なお、前記「転換率10%」とは、前
記光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) および(I
Ib) のうち、その10%がエステル交換されることを意
味する。
【0250】エステル交換反応における転換率は、酵素
の立体選択性、光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ia) の含有率などに応じて適宜選択することができる。
【0251】前記E値は、式: E=ln[(1-c)(1-eeX)]÷ln[(1-c)(1+eeX)] 〔式中、cおよびeeXは、以下の式にしたがって求め
ることができる。
【0252】c=(光学活性グリシッド酸エステル化合
物(IIa) および光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ib) からのエステル交換物の量(モル))÷(前記エス
テル交換物の量(モル)と、エステル交換後に残存して
いる光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) 量(モ
ル)と光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) 量
(モル)との和)
【0253】eeX=(エステル交換後に残存している
光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) 量(モル)
−光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb)量(モ
ル))÷(エステル交換後に残存している光学活性グリ
シッド酸エステル化合物(IIa) 量(モル)+光学活性グ
リシッド酸エステル化合物(IIb)量(モル))〕 によって求めることができる。なお、前記E値は、酵素
の種類により、異なる値をとる。
【0254】前記エステル交換の転換率が10%と一定
であり、E値が決定されると、酵素の種類に関係なくエ
ステル交換反応後の光学異性体の比率、得られる結晶の
光学純度および収率を予測することができる。
【0255】本発明においては、E値は、20以上、好
ましくは50以上であることが酵素の立体選択性の観点
から望ましい。
【0256】前記酵素の使用量は、使用する酵素の種
類、使用形態などによって異なるので、一概には決定す
ることができないが、通常、光学活性グリシッド酸エス
テル化合物(IIb) 1gあたり、1×10〜1×105
ニット、好ましくは1×102〜1×104 ユニットの
オリーブ油加水分解活性を有する量であることが好まし
い。
【0257】なお、オリーブ油加水分解活性は、オリー
ブ油にリパーゼが作用するときにエステル結合の切断に
伴って増加する脂肪酸の量を測定する脂肪消化力試験法
〔「医薬研究」11〔3〕(1980) p.505-506〕により求め
ることができる。
【0258】また、アルコール化合物(III) におけるR
1 としては、光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
a) を結晶化させる際に使用する溶媒において、エステ
ル交換によって生成するエステル生成物(IIb1)の溶解度
が光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の溶解度
よりも高くなるようなエステル残基に対応する基が望ま
しい。
【0259】アルコール化合物(III) におけるR1 の具
体例としては、次のものをあげることができる。
【0260】 ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、
塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)を有していても
よい、前記Rよりも炭素数の多い直鎖または分枝鎖のア
ルキル基(例えば、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブ
チル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、2-
ペンチル基、3-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル
基、3-ヘキシル基、n-ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘ
プチル基、4-ヘプチル基、n-オクチル基、2-オクチル
基、3-オクチル基、4-オクチル基、n-ノニル基、2-ノニ
ル基、3-ノニル基、4-ノニル基、5-ノニル基、n-デシル
基、2-デシル基、3-デシル基、4-デシル基、5-デシル
基) ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭
素原子またはヨウ素原子)を有していてもよい、前記R
よりも炭素数の多い直鎖または分枝鎖のアルコキシアル
キル基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル
基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシ
プロピル基、メトキシブチル基、エトキシエチル基、プ
ロポキシプロピル基) 直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基(例えば、メチル
基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル
基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペン
チル基、3-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基ま
たは3-ヘキシル基)、直鎖もしくは分枝鎖のアルコキシ
基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ
基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、
t-ブトキシ基、n-ヘキシロキシ基、2-ヘキシロキシ基、
3-ヘキシロキシ基)、またはハロゲン原子(例えば、フ
ッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)を有
していてもよいアリールアルキル基(例えば、ベンジル
基、フェネチル基、フェニルプロピル基またはナフチル
メチル基)
【0261】アルコール化合物(III) におけるR1 の好
ましい具体例としては、前記光学活性グリシッド酸エス
テル化合物(IIa) のエステル残基Rがメチル基またはエ
チル基である場合、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブ
チル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-
オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ベンジル基、フ
ェネチル基などがあげられる。これらのなかでは、前記
Rがメチル基であり、R1 がn-ブチル基であることがよ
り好ましい。
【0262】アルコール化合物(III) の使用量は、光学
活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) 1モルあたり、
0.5〜8モル、好ましくは1〜4モルであることが、
酵素の失活を抑制し、反応速度を高める観点から、望ま
しい。
【0263】前記光学活性グリシッド酸エステル化合物
(IIb) のエステル交換反応は、通常、常温〜加温下、好
ましくは10〜50℃、さらに好ましくは20〜40℃
程度の温度で行なうことが望ましい。
【0264】エステル交換反応は、適当な溶媒中または
無溶媒で行なうことができる。
【0265】溶媒としては、芳香族有機溶媒(例えば、
ベンゼン、トルエン、キシレン)、ハロゲン化芳香族有
機溶媒(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼ
ン)、脂肪族有機溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、
シクロヘキサン)、ハロゲン化脂肪族有機溶媒(例え
ば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリ
クロロエタン)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メ
チルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エーテ
ル系溶媒(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテ
ル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエー
テル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン)、エ
ステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)など
があげられる。これらのなかでは、トルエン、キシレ
ン、ヘキサン、四塩化炭素、tert−ブチルメチルエーテ
ルおよびジイソプロピルエーテルは、酵素の失活が少な
く、反応速度が速い点で好ましい。
【0266】前記溶媒の使用量は、光学活性グリシッド
酸エステル化合物(IIa) の濃度が0.02〜4モル/L
程度、好ましくは0.5〜2モル/Lとなるように調整
することが、反応速度を高め、エステル交換反応の際の
設備を小型化させる観点から、望ましい。
【0267】なお、反応系内に水分が存在していると、
エステル交換反応とともに、加水分解反応が生じ、収率
の低下を招くおそれがある。したがって、エステル交換
反応の際には、水分の混入をできるだけ回避することが
好ましい。
【0268】エステル交換によって生成して混合物から
の光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) のみの結
晶化は、溶媒に対する光学活性グリシッド酸エステル化
合物(IIa) とエステル化合物(IIb1)との溶解度差を利用
して行なうことができる。
【0269】また、前記混合物中に存在するエステル化
合物(IIb1)により、絶対配置が共通する光学活性グリシ
ッド酸エステル化合物(IIb) の結晶化が阻害されるた
め、前記エステル交換反応は、光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIb) をすべてエステル化合物(IIb1)にエ
ステル交換する必要がなく、光学活性グリシッド酸エス
テル化合物(IIb) が残存している状態でエステル交換を
終了しても、殆どの光学活性グリシッド酸エステル化合
物(IIa) を結晶化させ、取得することができる。
【0270】光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
a) を結晶化させる際に使用しうる溶媒としては、該光
学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の再結晶に使
用しうる溶媒であれば、いずれであってもよい。該溶媒
の代表例としては、メタノール、エタノール、n-プロパ
ノール、i-プロパノール、n-ブタノールなどのアルコー
ル系溶媒;ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテ
ル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジ
オキサンなどのエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、
キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハ
ロゲン原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素系溶
媒;ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタ
ン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロ
エタン、四塩化炭素などのハロゲン原子で置換されてい
てもよい脂肪族炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチ
ルなどのエステル系溶媒などがあげられ、これらは単独
でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0271】前記溶媒は、光学活性グリシッド酸エステ
ル化合物(IIa) 、光学活性グリシッド酸エステル化合物
(IIb) および生成したエステル化合物(IIb1)のエステル
残基の種類に応じて適宜選択して用いることができる。
前記溶媒のなかでは、光学活性グリシッド酸エステル化
合物(IIa) の溶解度が温度の変化によって大きく変化
し、かつエステル化合物(IIb1)の溶解度が光学活性グリ
シッド酸エステル化合物(IIa) の溶解度よりもはるかに
大きいものを使用することが好ましい。
【0272】その一例として、例えば、光学活性グリシ
ッド酸エステル化合物(IIa) がトランス−3−(4−メ
トキシフェニル)グリシッド酸メチルエステルの光学異
性体であり、エステル化合物(IIb1)のエステル残基がn-
ブチルエステルである場合、前記溶媒として、ジイソプ
ロピルエーテル、メタノール、エタノール、キシレンな
どを好適に使用することができる。
【0273】前記溶媒の使用量は、光学活性グリシッド
酸エステル化合物(IIa) 、光学活性グリシッド酸エステ
ル化合物(IIb) および生成したエステル化合物(IIb1)の
種類、それらの組成、晶析温度などによって異なるの
で、一概には決定することができない。光学活性グリシ
ッド酸エステル化合物(IIa) および光学活性グリシッド
酸エステル化合物(IIb) の溶解度が高く、かつ温度変化
による溶解度の変化が大きい溶媒を用いる場合、前記溶
媒の使用量を少なくすることができる。通常、前記溶媒
の使用量は、結晶化前の溶液における光学活性グリシッ
ド酸エステル化合物(IIa) の濃度が0.5〜4モル/L
程度となるように調整することが好ましい。
【0274】なお、前記光学活性グリシッド酸エステル
化合物(IIb) をエステル交換させることによって生成す
るエステル化合物(IIb1)量は、光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIa) が析出するが、光学活性グリシッド
酸エステル化合物(IIb) が析出することを阻害する量と
なるように調整することが好ましい。前記生成させるべ
きエステル化合物(IIb1)量は、反応生成物に含まれてい
る光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) および光
学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) の組成や種類
などによって異なるので一概には決定することができな
い。このことから、生成させるべきエステル化合物(IIb
1)量は、実験的に選定することが好ましい。
【0275】また、一般に、エステル化合物(IIb1)の生
成量が多くなるほど、光学活性グリシッド酸エステル化
合物(IIb) の結晶化がより抑制されるようになるが、エ
ステル化合物(IIb1)の生成量が多くなるにしたがって、
光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) の量が減少
し、エステル交換の速度が低下するため、大量の酵素、
長時間の反応が必要になるとともに、光学活性グリシッ
ド酸エステル化合物(IIa) もエステル交換されやすくな
る。したがって、エステル交換反応は、適切な段階で終
了することが好ましい。
【0276】エステル交換終了後の光学活性グリシッド
酸エステル化合物(IIa) 、光学活性グリシッド酸エステ
ル化合物(IIb) およびエステル化合物(IIb1)の比率は、
結晶化に使用する溶媒の種類などによって異なるので一
概には決定することができないが、通常、工程(B−
1)の場合は、光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ia) /光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) 〔モ
ル比〕は1/1〜10/1程度、好ましくは2/1〜5
/1程度であり、また、エステル化合物(IIb1)/光学活
性グリシッド酸エステル化合物(IIb) 〔モル比〕は5/
3〜10/1程度、好ましくは2/1〜7.8/1程度
であることが望ましい。
【0277】例えば、光学活性グリシッド酸エステル化
合物(IIa) として(2R,3S)−3−(4−メトキシ
フェニル)グリシッド酸メチルエステル49g、光学活
性グリシッド酸エステル化合物(IIb) として(2S,3
R)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチ
ルエステル14g、およびエステル化合物(IIb1)として
(2S,3R)−3−(4−メトキシフェニル)グリシ
ッド酸n−ブチルエステル39gを含んだキシレン10
0mlの溶液を−10℃に冷却した場合、(2R,3
S)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチ
ルエステル40gを結晶化させて取得しても、(2S,
3R)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸n
−ブチルエステルおよび(2S,3R)−3−(4−メ
トキシフェニル)グリシッド酸メチルエステルは、一切
析出しない。
【0278】このため、光学活性グリシッド酸エステル
化合物(IIb) のエステル交換を途中で中止した場合で
も、溶液中の光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
a) が光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) より
も、相当少なくなるまで、光学活性グリシッド酸エステ
ル化合物(IIa) を結晶化させ、取得することができる。
【0279】エステル交換後、光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIa) を結晶化させる際の温度は、光学活
性グリシッド酸エステル化合物(IIa) は結晶化するが、
光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) およびエス
テル化合物(IIb1)は結晶化しない温度〔但し、長時間放
置すると析出する場合、析出が始まるまでは析出しない
温度を含む〕でなければならない。
【0280】かかる結晶化の温度は、光学活性グリシッ
ド酸エステル化合物(IIa) の種類、溶媒、結晶化させる
溶液の組成によって異なるが、光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIa) のオキシラン環の安定性の観点か
ら、結晶化させる溶液を調製する際にあまり高温に加熱
して溶解させることは好ましくないため、70℃程度以
下の温度で溶解させ、室温以下の低温で結晶化させるこ
とが好ましい。
【0281】また、溶媒の使用量が多い場合、一般に、
光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の結晶化
は、低温にしなければ進行しがたくなる傾向があり、ま
た溶媒の使用量が少ない場合、一般に、光学活性グリシ
ッド酸エステル化合物(IIa) の結晶化は、比較的高温で
も進行する傾向がある。したがって、工業的生産性を考
慮すれば、溶媒量をできるだけ少なくし、濃厚溶液から
室温付近で結晶化させることが好ましい。その反面、溶
媒量が少なくなるにしたがって結晶化させる際に、不純
物の含有量が多くなる傾向があるので、高純度のものを
得る観点からは溶媒量を多くし、低温で結晶化させるこ
とが好ましい。
【0282】したがって、光学活性グリシッド酸エステ
ル化合物(IIa) の結晶化を効率よく行なうために、該光
学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の種類、光学
活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) の種類、エステ
ル化合物(IIb1)の種類、溶媒の種類、反応生成物の組成
などを考慮して、実験的に最適な温度範囲を設定するこ
とが好ましい。
【0283】その一例として、例えば、光学活性グリシ
ッド酸エステル化合物(IIa) および光学活性グリシッド
酸エステル化合物(IIb) がメチルエステルであり、該光
学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) を立体選択的
にエステル交換することによって得られたエステル化合
物(IIb1)がn-ブチルエステルである場合、メタノールを
用いて光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) の結
晶化を行なうときには、−30〜15℃程度の温度であ
ることが好ましい。
【0284】なお、光学活性グリシッド酸エステル化合
物(IIb) が析出するときには、該光学活性グリシッド酸
エステル化合物(IIb) とエステル化合物(IIb1)とのアモ
ルファスが白濁して析出するので、結晶化した光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIa) と該アモルファスと
は、外観上、容易に区別することができ、アモルファス
の白濁を指標として、光学活性グリシッド酸エステル化
合物(IIa) の結晶化の限界を容易に実験的に知ることが
できる。
【0285】光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
a) の結晶化は、エステル化合物(IIb 1)が存在しなけれ
ば光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) が析出す
るが、エステル化合物(IIb1)が存在するため、光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIa) は結晶化するが、光
学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) は析出しない
状態になるまで光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ia) を結晶化させて取得するのが好ましい。
【0286】このように、(A)ケイ皮酸エステル化合
物(I)に、キラルなケトン化合物と酸化剤とから生成
する不斉酸化剤を作用させ、(B−1)反応混合物から
キラルなケトン化合物を除去した後、過剰に含まれてい
る光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) を結晶化
させて取得し、残渣に含まれている光学活性グリシッド
酸エステルエステル化合物(IIa) および(IIb) の混合物
に、光学活性グリシッド酸エステルエステル化合物(II
b) を立体選択的にエステル交換する酵素の存在下でア
ルコール化合物(III) を作用させ、光学活性グリシッド
酸エステルエステル化合物(IIa) を結晶化させて取得す
ることにより、ケイ皮酸エステル化合物(I)から光学
活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) を高収率、高光
学純度で調製することができる。
【0287】また、工程(B−2)における任意工程で
ある反応混合物からのキラルなケトン化合物の除去は、
工程(B−1)におけるキラルなケトン化合物の除去と
同様に実施することができる。
【0288】キラルなケトン化合物を除去しない反応混
合物またはキラルなケトン化合物を除去した後に得られ
る抽出液、母液に含まれている光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIa) および(IIb) の混合物に、光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIb) を立体選択的にエス
テル交換する能力を有する酵素の存在下で、アルコール
化合物(III) を作用させ、光学活性グリシッド酸エステ
ルエステル化合物(IIb) をエステル化合物(IIb1)にエス
テル交換し、エステル交換前にキラルなケトン化合物を
除去しなかった場合には、キラルなケトン化合物を除去
し、生成する混合物から光学活性グリシッド酸エステル
エステル化合物(IIa) のみを結晶化させ、取得すること
ができる。
【0289】光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
b) のエステル交換反応において、キラルなケトン化合
物は変化を受けないため、キラルなケトン化合物の除去
は、エステル交換反応の前後のいずれに行なってもよ
く、エステル交換反応はキラルなケトン化合物を予め除
去するか否かによらず、工程(B−1)におけるエステ
ル交換反応とまったく同様に実施することができる。
【0290】ただし、工程(B−2)においては、工程
(B−1)の場合とは異なり、不斉酸化反応の反応混合
物から、光学活性グリシッド酸エステル(IIa) が結晶化
によって取得されておらず、エステル交換前の反応液に
光学活性グリシッド酸エステル(IIa) が多量に含まれる
ため、エステル交換反応後の光学活性グリシッド酸エス
テル(IIa) /光学活性グリシッド酸エステル(IIb) 〔モ
ル比〕が6/1〜100/1程度、好ましくは7/1〜
50/1程度であることが望ましい。
【0291】エステル交換後のキラルなケトン化合物の
除去は、キラルなケトン化合物と光学活性グリシッド酸
エステル化合物(IIa) および(IIb) 、エステル化合物(I
Ib1)との有機溶媒に対する溶解度差を利用した分離方法
により行なうことができる。
【0292】前記溶解度差を利用した分離法としては、
工程(B−1)と同様、有機溶媒による抽出法、有機溶
媒を用いた結晶化法などをあげることができ、エステル
化合物(IIb1)は、光学活性グリシッド酸エステル化合物
(IIa) および(IIb) と比べて有機溶媒に対する溶解度が
高いため、キラルなケトン化合物を光学活性グリシッド
酸エステル化合物(IIa) および(IIb) の混合物から除去
する際に使用した方法をそのまま適用することができ
る。
【0293】キラルなケトン化合物は、光学活性グリシ
ッド酸エステル化合物(IIb) を立体選択的にエステル交
換する能力を有する酵素による影響を受けず、またジイ
ソプロピルエーテルをエステル交換反応の溶媒として使
用した場合には、エステル交換反応の温度条件では、キ
ラルなケトン化合物はほとんど溶解しないため、エステ
ル交換反応の終了後、加温下で反応液を濾過するだけ
で、酵素およびキラルなケトン化合物を一挙に除去する
ことができるため、とりわけ好ましい。
【0294】続く、生成物からの光学活性グリシッド酸
エステル化合物(IIa) の結晶化も、工程(B−1)にお
けるエステル交換後の結晶化と同様に実施することがで
きる。この場合も、エステル交換反応によって生成する
エステル化合物(IIb1)が光学活性グリシッド酸エステル
エステル化合物(IIb) の析出を阻害するため、光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIa) の結晶化を効率的に
行なうことができる。
【0295】とりわけ、エステル交換によって生成する
混合物から、エステル化合物(IIb1)が存在しなければ光
学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) が析出する
が、エステル化合物(IIb1)が存在するため、光学活性グ
リシッド酸エステル化合物(IIa) は結晶化するが、光学
活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) は析出しない状
態になるまで光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
a) を結晶化させるのが好ましい。
【0296】このように、(A)ケイ皮酸エステル化合
物(I)に、キラルなケトン化合物と酸化剤とから生成
する不斉酸化剤を作用させ、(B−2)反応混合物から
必要に応じてキラルなケトン化合物を除去した後、残渣
に含まれている光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ia) および(IIb) の混合物に、光学活性グリシッド酸エ
ステル化合物(IIb) を立体選択的にエステル交換する能
力を有する酵素の存在下でアルコール化合物(III) を作
用させ、エステル交換前にキラルなケトン化合物を除去
しなかった場合には、ケトン化合物を除去し、光学活性
グリシッド酸エステル化合物(IIa) を結晶化させて取得
することにより、ケイ皮酸エステル化合物(I)から光
学活性グリシッド酸エステルエステル化合物(IIa) を高
収率、高光学純度で調製することができる。
【0297】次に、前記で得られた一般式(IIa) で表わ
される光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) を出
発原料として用い、従来既知の方法により、一般式(VII
I):
【0298】
【化78】
【0299】〔式中、環A、環Bおよび*は前記と同
じ、R3 は水素原子または置換アルキル基、R4 は低級
アルカノイル基を示す〕で表わされる1,5−ベンゾチ
アゼピン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩を製造
することができる。
【0300】かかる1,5−ベンゾチアゼピン誘導体の
製法において、環Bは、置換または非置換ベンゼン環を
示す。具体的には、前記環Bとしては、非置換ベンゼン
環をはじめ、低級アルキル基、フェニル低級アルキル
基、低級アルコキシ基およびハロゲン原子からなる群よ
り選ばれた置換基を1〜3個有するベンゼン環があげら
れる。前記低級アルキル基としては、メチル基、エチル
基、プロピル基およびt−ブチル基に代表される炭素数
1〜4のアルキル基があげられる。前記フェニル低級ア
ルキル基としては、ベンジル基およびフェネチル基に代
表される炭素数7〜10のフェニルアルキル基があげら
れる。前記低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エ
トキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基に代表される
炭素数1〜4のアルコキシ基があげられる。また、前記
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原
子およびヨウ素原子があげられる。
【0301】R4 は、低級アルカノイル基であり、具体
的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基およびブ
チリル基に代表される炭素数1〜4の低級アルカノイル
基があげられる。
【0302】R3 は、水素原子または置換アルキル基で
あり、置換アルキル基の具体例としては、例えば、アル
キル部分がメチル基、エチル基、プロピル基およびブチ
ル基に代表される炭素数1〜4の低級アルキル基である
ものがあげられる。
【0303】また、アルキル基の置換基としては、ジメ
チルアミノ基およびジエチルアミノ基に代表されるジ低
級アルキルアミノ基、4−(2−メトキシフェニル)ピ
ペラジノ基に代表される置換フェニルピペラジノ基など
をあげることができる。R3としては、2−(ジメチル
アミノ)エチル基および3−〔4−(2−メトキシフェ
ニル)ピペラジノ〕プロピル基がとりわけ好ましい。
【0304】かくして得られる1,5−ベンゾチアゼピ
ン誘導体 (VIII) またはその薬理的に許容しうる塩の具
体例としては、例えば、(2S,3S)−2−(4−メ
トキシフェニル)−3−アセトキシ−5−〔2−(ジメ
チルアミノ)エチル〕−2,3−ジヒドロ−1,5−ベ
ンゾチアゼピン−4(5H)−オン(ジルチアゼム)、
(2S,3S)−2−(4−メトキシフェニル)−3−
アセトキシ−5−〔2−(ジメチルアミノ)エチル〕−
8−クロロ−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼ
ピン−4(5H)−オン、(2S,3S)−3−アセト
キシ−5−〔3−〔4−(2−メトキシフェニル)ピペ
ラジノ〕プロピル〕−2,3−ジヒドロ−2−(4−メ
トキシフェニル)−8−クロロ−1,5−ベンゾチアゼ
ピン−4(5H)−オン、(2S,3S)−3−アセト
キシ−8−ベンジル−2,3−ジヒドロ−5−〔2−
(ジメチルアミノ)エチル〕−2−(4−メトキシフェ
ニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オ
ン、(2R,3R)−2−(4−メチルフェニル)−3
−アセトキシ−5−〔2−(ジメチルアミノ)エチル〕
−8−メチル−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチア
ゼピン−4(5H)−オン、それらの薬理的に許容しう
る塩などがあげられる。
【0305】本発明の製法で得られる1,5−ベンゾチ
アゼピン誘導体(VIII)またはその薬理的に許容しうる塩
は、狭心症、心筋梗塞、不整脈などの心臓疾患、高血圧
症、冠血管梗塞、脳梗塞などの循環器系疾患に対して有
用な化合物である。
【0306】具体的には、例えば、特公昭46−167
49号公報、特公昭63−13994号公報、特開平5
−201865号公報、特開平2−289558号公
報、特公平2−28594号公報、ケミカル・アンド・
ファーマシューティカル・ブレチン(Chem. Ph
arm. Bull.)18(10),2028−20
37(1970)、特開平2−17168号公報、特開
平2−229180号公報、特開平4−234866号
公報、特開平5−222016号公報、特開平4−22
1376号公報、特開平5−202013号公報、特開
平2−17170号公報、特開平2−286672号公
報、特開平6−279398号公報、特開昭58−99
471号公報、特開平8−269026号公報、特開昭
61−118377号公報、特開平6−228117号
公報、特開平2−78673号公報、特開平5−435
64号公報などに記載の方法にしたがって、一般式(II
a) で表わされる光学活性グリシッド酸エステル化合物
(IIa) から、一般式(VIII)で表わされる1,5−ベンゾ
チアゼピン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩を製
造することができる。
【0307】より具体的には、例えば、光学活性グリシ
ッド酸エステル化合物(IIa) として、その(2R,3
S)−異性体を用いる場合、該(2R,3S)−異性体
を、(A−1)一般式(IX):
【0308】
【化79】
【0309】〔式中、環Bは前記と同じ、R5 は水素原
子、2−(ジメチルアミノ)エチル基または式:
【0310】
【化80】
【0311】で表わされる基を示す〕で表わされるアミ
ノチオフェノール誘導体(IX)(例えば、2−アミノチオ
フェノール、2−アミノ−5−クロロチオフェノール、
2−アミノ−5−ベンジルチオフェノール、2−〔〔2
−(ジメチルアミノ)エチル〕アミノ〕チオフェノー
ル、一般式:
【0312】
【化81】
【0313】〔式中、環Bは前記と同じ〕で表わされる
化合物など)と反応させるか、または(A−2)一般式
(X):
【0314】
【化82】
【0315】(式中、環Bは前記と同じ)で表わされる
ニトロチオフェノール誘導体(X) (例えば、2−ニトロ
チオフェノール、2−ニトロ−5−クロロチオフェノー
ル、2−ニトロ−5−ベンジルチオフェノールなど)と
反応させたのち、ニトロ基を還元させることにより、一
般式:
【0316】
【化83】
【0317】〔式中、環A、環B、RおよびR5 は前記
と同じ〕で表わされる(2S,3S)−3−(2−アミ
ノフェニルチオ)−3−フェニル−2−ヒドロキシプロ
ピオン酸エステル化合物を調製し、(B)必要であれ
ば、加水分解させたのち、分子内閉環させ、一般式:
【0318】
【化84】
【0319】〔式中、環A、環BおよびR5 は前記と同
じ〕で表わされる(2S,3S)−2−フェニル−3−
ヒドロキシ−1,5−ベンゾチゾアゼピン誘導体とし、
(C)この化合物を必要に応じて5位の窒素原子を修飾
し、3位に置換した水酸基をアセチル化させ、(D)必
要に応じて生成物を薬理的に許容しうる塩とすることに
より、一般式:
【0320】
【化85】
【0321】〔式中、環A、環BおよびR5 は前記と同
じ〕で表わされる(2S,3S)−1,5−ベンゾチア
ゼピン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩を調製す
ることができる。
【0322】また、例えば、光学活性グリシッド酸エス
テル化合物(IIa) として、その(2S,3R)−異性体
を用いる場合、該(2S,3R)−異性体を、(A−
1)アミノチオフェノール誘導体(IX)と反応させるか、
または(A−2)ニトロチオフェノール誘導体(X) と反
応させたのち、ニトロ基を還元させることにより、一般
式:
【0323】
【化86】
【0324】〔式中、環A、環B、RおよびR5 は前記
と同じ〕で表わされる(2R,3R)−3−(2−アミ
ノフェニルチオ)−3−フェニル−2−ヒドロキシプロ
ピオン酸エステル化合物を調製し、(B)必要であれ
ば、加水分解させたのち、分子内閉環させ、一般式:
【0325】
【化87】
【0326】〔式中、環A、環BおよびR5 は前記と同
じ〕で表わされる(2R,3R)−2−フェニル−3−
ヒドロキシ−1,5−ベンゾチゾアゼピン誘導体とし、
(C)この化合物を、必要に応じて、5位の窒素原子を
修飾し、3位に置換した水酸基をアセチル化させ、
(D)必要に応じて生成物を薬理的に許容しうる塩とす
ることにより、一般式:
【0327】
【化88】
【0328】〔式中、環A、環BおよびR5 は前記と同
じ〕で表わされる(2R,3R)−1,5−ベンゾチア
ゼピン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩を調製す
ることができる。
【0329】その一例として、ジルチアゼム(Diltiaze
m) およびその対掌体についての立体化学をまとめる
と、例えば、以下のスキームに示されるように、式:
【0330】
【化89】
【0331】で表わされるアミノチオフェノールと、光
学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) とを反応させ
た際には、以下のように反応が進行する。すなわち、
(2S,3R)−体を前記アミノチオフェノールと反応
させてシス−開裂させたときおよび(2S,3S)−体
を前記アミノチオフェノールと反応させてトランス−開
裂させたときには、(2R,3R)−プロピオン酸誘導
体が得られる。また、(2R,3S)−体を前記アミノ
チオフェノールと反応させてシス−開裂させたときおよ
び(2R,3R)−体を前記アミノチオフェノールと反
応させてトランス−開裂させたときには、(2S,3
S)−プロピオン酸誘導体が得られる。
【0332】
【化90】
【0333】〔式中、環AおよびRは前記と同じ〕
【0334】次に、以下のスキームに示されるように、
前記(2R,3R)−プロピオン酸誘導体または(2
S,3S)−プロピオン酸誘導体を加水分解させ、分子
内閉環させ、得られた2−フェニル−3−ヒドロキシ−
1,5−ベンゾチアゼピン誘導体の5位窒素原子をジメ
チルアミノエチル化させ、3位の水酸基をアセチル化さ
せることにより、それぞれ(2R,3R)−1,5−ベ
ンゾチアゼピン誘導体または(2S,3S)−1,5−
ベンゾチアゼピン誘導体が得られる。
【0335】
【化91】
【0336】〔式中、環AおよびRは前記と同じ〕
【0337】更に、本発明の製法で得られる一般式(II
a) で表わされる光学活性グリシッド酸エステル化合物
(IIa) を出発原料として用い、従来既知の方法により、
光学分割剤として有用な一般式:
【0338】
【化92】
【0339】(式中、環Aおよび環Bは前記と同じ、*
は不斉炭素原子を示す)で表わされるニトロカルボン酸
化合物またはその塩を製造することもできる。
【0340】かかるニトロカルボン酸化合物の製法にお
いて、環Aおよび環Bは前記1,5−ベンゾチアゼピン
誘導体の製法におけるものと同様のものをあげることが
できるが、環Aが4−低級アルコキシフェニル基、環B
が式:
【0341】
【化93】
【0342】(式中、Halはハロゲン原子を示す)で
表わされる置換ベンゼン環である場合が好ましく、環A
が4−メトキシフェニル基、環Bが前記式においてHa
lが塩素原子であるものがとりわけ好ましい。
【0343】具体的には、ニトロカルボン酸化合物とし
ては、例えば、光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
Ia) と、一般式:
【0344】
【化94】
【0345】(式中、Halは前記と同じ)で表わされ
る化合物などに代表されるニトロチオフェノール化合物
とを、特公昭61−18549号公報などに記載された
方法により反応させたのち、ケミカル・アンド・ファー
マシューティカル・ブレチン(Chem. Phar
m. Bull.)18(10)2028−2037
(1970)に記載の方法に従って生成物を加水分解す
ることにより、製造することができる。
【0346】この方法では、(2R,3S)−光学活性
グリシッド酸エステル化合物を使用すれば、(2S,3
S)−光学活性ニトロカルボン酸化合物を得ることがで
き、(2S,3R)−光学活性グリシッド酸エステル化
合物を使用すれば、(2R,3R)−光学活性ニトロカ
ルボン酸化合物を得ることができる。
【0347】ところで、前記ケトン化合物(IV)のうち、
Yが(i) −O−Q−Alk1 −または(v) −NR2 −Q
−Alk1 −であるケトン化合物は、一般式(XI):
【0348】
【化95】
【0349】〔式中、Zは−O−または−NR2 −を示
し、ArおよびR2 は前記と同じ〕で表わされる化合物
と一般式(XII):
【0350】
【化96】
【0351】〔式中、Protは水酸基の保護基を示
し、Alk1 およびQは前記と同じ〕で表わされる化合
物またはその反応性誘導体とを反応させ、Zが−NH−
である場合には、必要に応じて、N−アルキルスルホニ
ル化またはN−アリールスルホニル化し、生成する一般
式(XIII):
【0352】
【化97】
【0353】〔式中、Ar、Prot、Z、Alk1
よびQは前記と同じ〕で表わされる化合物から水酸基の
保護基を除去したのち、酸化反応に付することにより、
製造することができる。
【0354】また、前記ケトン化合物(IV)のうち、Yが
(ii)−Q−O−Alk2 −または(vi)−Q−NR2 −A
lk2 −であるケトン化合物は、一般式(XIV):
【0355】
【化98】
【0356】〔式中、ArおよびQは前記と同じ〕で表
わされる化合物またはその反応性誘導体と、一般式(X
V):
【0357】
【化99】
【0358】〔式中、ZおよびAlk2 は前記と同じ〕
で表わされる化合物またはその二量体とを反応させ、Z
が−NH−である場合には、必要に応じて、N−アルキ
ルスルホニル化またはN−アリールスルホニル化させる
ことにより、製造することができる。
【0359】前記ケトン化合物(IV)のうち、Yが(iii)
−Alk3 −O−Alk4 −または(vii) −Alk3
NR2 −Alk4 −であるケトン化合物は、一般式(XV
I):
【0360】
【化100】
【0361】〔式中、Arは前記と同じ〕で表わされる
化合物を還元して一般式(XVII):
【0362】
【化101】
【0363】〔式中、Arは前記と同じ〕で表わされる
化合物を製造し、必要に応じて、該化合物の水酸基に結
合したアルキル鎖を伸長させ、また水酸基をアミノ基に
変換させ、必要に応じてN−アルキルスルホニル化また
はN−アリールスルホニル化させ、一般式(XVIII):
【0364】
【化102】
【0365】〔式中、Ar、Alk3 およびZは前記と
同じ〕で表わされる化合物を製造したのち、かかる化合
物と一般式(XIX):
【0366】
【化103】
【0367】〔式中、Lは脱離基を示し、Alk4 は前
記と同じ〕で表わされる化合物とを反応させ、Zが−N
H−である場合には、必要に応じて、N−アルキルスル
ホニル化またはN−アリールスルホニル化させることに
より、製造することができる。
【0368】また、ケトン化合物(IV)のうち、Yが(iv)
−O−Alk5 −または(viii)−NR2 −Alk5 −で
あるケトン化合物は、前記一般式(XI)で表わされる化
合物と一般式(XX):
【0369】
【化104】
【0370】〔式中、LおよびAlk5 は前記と同じ〕
で表わされる化合物とを反応させ、Zが−NH−である
場合には、必要に応じて、N−アルキルスルホニル化ま
たはN−アリールスルホニル化させることにより、製造
することができる。
【0371】また、前記ケトン化合物(IV)のうち、Yが
−NR2 −Alk5 −である場合には、Zが−NH−で
ある一般式(XI)で表わされる化合物と、Qがカルボニ
ル基である一般式(XII) で表わされる化合物またはその
反応性誘導体とを反応させることによって得られた化合
物、即ち、Zが−NH−であり、Qがカルボニル基であ
る一般式(XIII)で表わされる化合物を還元し、必要に応
じてN−アルキルスルホニル化またはN−アリールスル
ホニル化させ、水酸基の保護基を除去したのち、酸化反
応に付することにより、製造することができる。
【0372】一般式(XI)で表わされる化合物と一般式
(XII) で表わされる化合物またはその反応性誘導体との
反応、および一般式(XIV) で表わされる化合物またはそ
の反応性誘導体と、一般式(XV)で表わされる化合物また
はその二量体との反応は、エステル合成またはアミド合
成の常法に従って実施することができる。
【0373】一般式(XII) で表わされる化合物および一
般式(XIV) で表わされる化合物の反応性誘導体として
は、カルボン酸、スルホン酸の慣用の反応性誘導体、例
えば、酸クロリド、酸ブロミド、酸ヨージドなどの酸ハ
ライド;クロロ炭酸イソブチル、2,6−ジクロロ安息
香酸クロリドまたは2,4,6−トリクロロ安息香酸ク
ロリドとの混合酸無水物などの混合酸無水物;N,N’
−ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、DCCとい
う)、DCCと1−ヒドロキシベンゾトリアゾールとの
組合せ、ベンゾトリアゾール−1−イル・オキシ−トリ
ス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホス
フェートなどを用いて生成する活性エステルなどをあげ
ることができる。
【0374】また、一般式(XII) で表わされる化合物に
おける水酸基の保護基としては、水酸基の慣用の保護
基、例えば、低級アルカノイル基、置換シリル基、置換
されていてもよいベンジル基などの保護基を使用するこ
とができる。
【0375】一般式(XV)で表わされる化合物の二量体
は、一般式(XV)で表わされる化合物のカルボニル基に、
一般式(XV)で表わされる化合物の他の分子のHZ基が付
加して生成するものであり、2分子間で相互にカルボニ
ル基とHZ基とが付加して環状構造を形成しているもの
であってもよい。かかる二量体は、単量体との平衡にあ
っても同様に使用することができる。
【0376】一般式(XI)で表わされる化合物と一般式
(XII) で表わされる化合物との反応、および一般式(XI
V) で表わされる化合物と一般式(XV)で表わされる化合
物またはその二量体との反応は、適当な溶媒、例えば、
ハロゲン化されていてもよい脂肪族炭化水素系溶媒(ヘ
キサン、シクロヘキサン、メチレンクロリド、エチレン
クロリド、クロロホルム、四塩化炭素など)、ハロゲン
化されていてもよい芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、
キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベン
ゼンなど)、ニトリル系溶媒(アセトニリル、プロピオ
ニトリル、ブチロニトリルなど)、エーテル系溶媒(ジ
エチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキ
サン、ジグリムなど)などの溶媒の中で、例えば、DC
C、N−メチルピリジニウムハライドなどの縮合剤の存
在下で、常温または加熱下で実施することができる。こ
の際、必要に応じ、例えば、トリエチルアミン、ジイソ
プロピルエチルアミン、ピリジンなどの脱酸剤を添加し
てもよい。
【0377】一方、一般式(XI)で表わされる化合物と
一般式(XII) で表わされる化合物の反応性誘導体との反
応、および一般式(XIV) で表わされる化合物の反応性誘
導体と一般式(XV)で表わされる化合物またはその二量体
との反応は、適当な溶媒〔例えば、ハロゲン化されてい
てもよい脂肪族炭化水素系溶媒(ヘキサン、シクロヘキ
サン、メチレンクロリド、エチレンクロリド、クロロホ
ルム、四塩化炭素など)、ハロゲン化されていてもよい
芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、メシチレ
ン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど)、ニトリ
ル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロ
ニトリルなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、
テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリムな
ど)〕中で、脱酸剤〔例えば、有機塩基(トリエチルア
ミン、トリメチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエ
チルアミンなど)〕の存在下または非存在下で、常温ま
たは加熱下で実施することができる。
【0378】一般式(VIII)で表わされる化合物と一般式
(XIX) で表わされる化合物との反応、および一般式(X
I)で表わされる化合物と一般式(XX)で表わされる化合
物との反応は、アルコールのO−アルキル化またはアミ
ンのN−アルキル化の常法に従って実施することができ
る。
【0379】一般式(XIX) で表わされる化合物および一
般式(XX)で表わされる化合物における脱離基Lとして
は、慣用の脱離基〔例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ
素原子などのハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ
基またはアリールスルホニルオキシ基(トシルオキシ
基、メタンスルホニルオキシ基)〕などを使用すること
ができる。
【0380】一般式(XVIII) で表わされる化合物と一般
式(XIX) で表わされる化合物との反応、および一般式
(XI)で表わされる化合物と一般式(XX)で表わされる化
合物との反応は、適当な溶媒〔例えば、ハロゲン化され
ていてもよい脂肪族炭化水素系溶媒(ヘキサン、シクロ
ヘキサン、メチレンクロリド、エチレンクロリド、クロ
ロホルム、四塩化炭素など)、ハロゲン化されていても
よい芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、メシ
チレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど)、ニ
トリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブ
チロニトリル)〕の中で、脱酸剤〔例えば、有機塩基
(トリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、ジ
イソプロピルエチルアミンなど)〕の存在下で、常温ま
たは加熱下で実施することができる。
【0381】また、一般式(XIII)で表わされる化合物か
ら水酸基の保護基を除去する工程には、水酸基の保護基
についての慣用の除去方法(例えば、加水分解法、接触
水素添加法、フッ化水素酸処理)を適用することがで
き、例えば、一般式(XIII)で表わされる化合物を適当な
溶媒〔例えば、アルコール系溶媒(メタノール、エタノ
ール)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、1,4
−ジオキサン、ジグリム)〕中で、塩基〔例えば、水酸
化アルカリ金属(水酸化カリウム、水酸化ナトリウ
ム)、炭酸アルカリ金属(炭酸カリウム、炭酸ナトリウ
ム)、有機酸(ギ酸、トリフルオロ酢酸)、無機酸(塩
酸、フッ化水素酸)〕で処理することにより実施するこ
とができる。
【0382】続く酸化反応には、ヒドロキシメチレン基
からカルボニル基への変換についての常法(例えば、ク
ロム酸酸化、酸化ルテニウム酸化、スワン酸化〔SwernO
xidation 、メルク・インデックス(Merck Index) 第12
版ONR−89〕、デス−マーチン酸化〔Dess-Martin
Oxidation 、メルク・インデックス(Merck Index) 第12
版ONR−22〕)を適用することができ、例えば、水
酸基の保護基の除去反応で得られる生成物を、適当な溶
媒〔例えば、ハロゲン化されていてもよい脂肪族炭化水
素系溶媒(ヘキサン、シクロヘキサン、メチレンクロリ
ド、エチレンクロリド、クロロホルム、四塩化炭素)、
ハロゲン化されていてもよい芳香族炭化水素系溶媒(ト
ルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジク
ロロベンゼン)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プ
ロピオニトリル、ブチロニトリル)〕中で、酸化剤〔例
えば、クロム酸またはその誘導体(ピリジニウムクロロ
クロメート)、酸化ルテニウム、シュウ酸ジクロリド−
ジメチルスルホキシド、1,1,1−トリス(アセチル
オキシ)−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードオ
キソール−3(1H)−オン〕で処理することにより実
施することができる。
【0383】一般式(XVI) で表わされる化合物の還元反
応は、カルボン酸の還元の常法に従って行なうことがで
き、例えば、一般式(XVI) で表わされる化合物を適当な
溶媒〔例えば、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テ
トラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリム)〕
中で、還元剤(例えば、ジボラン、リチウムアルミニウ
ムヒドリドなど)で処理することにより、実施すること
ができる。
【0384】この還元反応で得られる一般式(XVII)で表
わされる化合物の水酸基に結合したアルキル部分の伸長
は、慣用の方法に従って実施することができる。例え
ば、一般式(XVII)で表わされる化合物をハロゲン化剤
〔例えば、チオニルハライド(チオニルクロリド、チオ
ニルブロミド)など〕で処理するか、または一般式(XV
II) で表わされる化合物の水酸基を、例えば、p−トル
エンスルホニルハライド(p−トルエンスルホニルクロ
リド、p−トルエンスルホニルブロミド)などで脱離基
に変換したのち、前記ハロゲン化剤で処理し、生成する
ハライドをマグネシウムと反応させてグリニヤール試薬
を形成し、アルキルアルデヒドまたはアルキルケトンと
反応させたのち、水で処理することにより実施すること
ができる。また、水酸基のアミノ基への変換も慣用の方
法に従って実施することができる。例えば、一般式(XVI
I)で表わされる化合物またはその水酸基に結合したアル
キル鎖を伸長した化合物を前記と同様のハロゲン化剤で
処理したのち、アンモニアと反応させることにより実施
することができる。
【0385】一方、Zが−NH−であり、Qがカルボニ
ル基である一般式(XIII)で表わされる化合物の還元反応
は、一般式(XVI) で表わされる化合物の還元反応と同様
の方法により、実施することができる。還元反応後、N
−アルキルスルホニル化またはN−アリールスルホニル
化させて得られる生成物から水酸基の保護基を除去し、
酸化する反応は、一般式(XIII)で表わされる化合物の水
酸基の保護基の除去および酸化反応と同様に実施するこ
とができる。
【0386】なお、任意工程であるN−アルキルスルホ
ニル化反応およびN−アリールスルホニル化反応は、ア
ミンのスルホニル化の常法に従って行なうことができ
る。反応は、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸
またはこれらの反応性誘導体を用いて行なうことができ
る。反応性誘導体としては、例えば、酸ハライド(酸ク
ロリド、酸ブロミド、酸ヨージド)などをあげることが
できる。
【0387】アルキルスルホン酸またはアリールスルホ
ン酸を用いる場合には、適当な溶媒中で、縮合剤の存在
下で行なうことが好ましく、一方、反応性誘導体を用い
る場合には、適当な溶媒中で、脱酸剤の存在下または非
存在下で行なうことが好ましい。
【0388】また、一般式(XI)で表わされる化合物、
一般式(XIV) で表わされる化合物、一般式(XVI) で表わ
される化合物、一般式(XVII)で表わされる化合物および
一般式(XVIII) で表わされる化合物を、慣用の方法で光
学分割したのち、前記合成法を適用すれば、ケトン化合
物(IV)を光学異性体の形で得ることができる。
【0389】光学分割法としては、例えば、光学分割剤
とのジアステレオマー塩を分別結晶化させる方法を適用
することができる。光学分割剤としては、光学分割に一
般的に使用されているものを適宜使用することができ
る。該光学分割剤としては、例えば、光学活性アミン類
が好ましく、とりわけ、キニジン、シンコニジン、光学
活性アミノ酸、光学活性アミノ酸エステル、キニン、ブ
ルシン、光学活性アミノアルコールなどの光学異性体が
好適である。
【0390】なお、本発明の方法に使用するケイ皮酸エ
ステル化合物(I)のうち、−CO 2 Rが低級アルコキ
シカルボニル基である化合物は、一般式:
【0391】
【化105】
【0392】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環を示す)で表わされるベンズアルデヒド化合物と酢酸
低級アルキルエステルとを、溶媒の存在下または非存在
下、塩基の存在下に縮合反応させ、必要に応じ、生成物
を酸の存在下または非存在下にエステル交換することに
より、収率よく製造することができる。
【0393】酢酸低級アルキルエステルとしては、酢酸
メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチ
ルなどをいずれも好適に使用することができ、溶媒とな
りうる酢酸低級アルキルエステル(例えば、酢酸メチ
ル、酢酸エチル)を用いる場合には、必ずしも他の溶媒
を加えなくてもよい。
【0394】ベンズアルデヒドと酢酸低級アルキルエス
テルとの縮合反応に使用する塩基としては、アルカリ金
属アルコキシド(例えば、リチウムメトキシド、リチウ
ムエトキシド、リチウムn−ブトキシド、リチウムt−
ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキ
シド、ナトリウムn−ブトキシド、ナトリウムt−ブト
キシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カ
リウムn−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド)、金
属アルカリ金属(例えば、金属リチウム、金属ナトリウ
ム、金属カリウム)、水素化アルカリ金属(例えば、水
素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム)、
水酸化アルカリ金属(例えば、水酸化リチウム、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム)などの無機強塩基をあげ
ることができる。
【0395】縮合反応は室温〜加温下、とりわけ、20
℃〜60℃で好適に実施することができる。
【0396】縮合生成物のエステル残基が所望のエステ
ル残基を有していない場合には、通常のエステル交換反
応により、所望のエステル残基を有する化合物に変換す
ることができる。
【0397】エステル交換反応は所望のエステル残基に
対応する低級アルカノールを用いて実施することがで
き、このアルコールが溶媒を兼ねる場合には、必ずし
も、他の溶媒を加えなくてもよい。
【0398】エステル交換反応に使用する酸としては、
無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸)、有機酸(例え
ば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)をあ
げることができるが、反応は酸の非存在下においても好
適に進行するため、縮合反応の反応混合物に直接アルコ
ールを添加してエステル交換反応を行なうことができ
る。反応は室温〜溶媒の還流温度、とりわけ20〜80
℃で実施するのが好ましい。
【0399】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定される
ものではない。
【0400】実施例1 (1)酸化反応 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル9.6
1g(0.05モル)および不斉触媒として(R)−2
−オキソトリメチレン1,1’−ビナフチル−2,2’
−ジカルボキシラート991mgをアセトン100ml
に溶解した後、水45mlを添加した。
【0401】得られた混合物を25℃で攪拌しながらオ
キソン30.74gと炭酸水素ナトリウム13.02g
との混合物を約5分間おきに1.5時間かけて添加し
た。
【0402】添加終了後、さらに同温度で2時間攪拌を
行ない、反応後に、トルエン200mlで2回抽出した
後、トルエン層を硫酸マグネシウムで脱水後、濾過し、
濾液を減圧濃縮して残渣を得た。
【0403】得られた残渣には、(2R,3S)−3−
(4- メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステル
7.1g、(2S,3R)−3−(4- メトキシフェニ
ル)グリシッド酸メチルエステル2.3gおよび(R)
−2−オキソトリメチレン1,1’−ビナフチル−2,
2’−ジカルボキシラートが含まれていた。
【0404】(2)エステル交換反応 前記残渣に、ジイソプロピルエーテル100ml、n−
ブタノール1.6mlおよび参考例11で得られたエス
テラーゼ(凍結乾燥標品、1.96×105 U/gのオ
リーブオイル活性)10mgを添加し、30℃で6時間
攪拌した。
【0405】反応終了後、40〜50℃に加熱し、前記
残渣に3−(4- メトキシフェニル)グリシッド酸メチ
ルエステルを溶解し、不溶の(R)−2−オキソトリメ
チレン1,1’−ビナフチル−2,2’−ジカルボキシ
ラートおよび酵素を濾過によって除去した。
【0406】濾取されたものの中には、(R)−2−オ
キソトリメチレン1,1’−ビナフチル−2,2’−ジ
カルボキシラート690mgが含まれていた(回収率:
70%)。
【0407】(3)結晶化 次に、濾液量を減圧濃縮して半減させ、−10℃に冷却
して1時間攪拌した後、結晶を濾過し、(2R,3S)
−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエ
ステルの結晶6.7g(収率:トランス−4−メトキシ
ケイ皮酸メチルエステルより64.4%)を得た。
【0408】また、得られた(2R,3S)−体の光学
純度は99.2%であった。
【0409】前記(1)〜(3)で生成した(2R,3
S)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチ
ルエステル、(2S,3R)−3−(4−メトキシフェ
ニル)グリシッド酸メチルエステルおよび(2S,3
R)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸n−
ブチルエステルの量を表1に示す。
【0410】
【表1】
【0411】表1に示された結果から、実施例1の方法
によれば、(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニ
ル)グリシッド酸メチルエステルを選択的に高収率で得
ることができることがわかる。
【0412】実施例2 実施例1において、(1)の酸化反応の際に用いたアセ
トン100mlの代わりに1,2−ジメトキシエタン1
00mlを用いた他は、実施例1と同様にして反応を行
なった。
【0413】その結果、得られた残渣には、(2R,3
S)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチ
ルエステル8.3g、(2S,3R)−3−(4−メト
キシフェニル)グリシッド酸メチルエステル1.0gが
含まれていた。
【0414】この残渣に実施例1と同様にして酵素反応
および晶析を行ない、(2R,3S)−3−(4−メト
キシフェニル)グリシッド酸メチルエステルの結晶7.
9g(収率:トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエ
ステルより75.9%)を得た(光学純度は99.1%
ee)。
【0415】また、この残渣には、(R)−2−オキソ
トリメチレン1,1’−ビナフチル−2,2’−ジカル
ボキシラート650mgが含まれていた(回収率:66
%)。
【0416】前記(1)〜(3)で生成した(2R,3
S)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチ
ルエステル、(2S,3R)−3−(4−メトキシフェ
ニル)グリシッド酸メチルエステルおよび(2S,3
R)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸n−
ブチルエステルの量を表2に示す。
【0417】
【表2】
【0418】表2に示された結果から、実施例2の方法
によれば、(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニ
ル)グリシッド酸メチルエステルを選択的に高収率で得
ることができることがわかる。
【0419】実施例3 (1)酸化反応 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル192
mg(1.0モル)を1,2−ジメトキシエタン15m
lに室温で溶解させたのち、4×10-4Mエチレンジア
ミン四酢酸二ナトリウム水溶液10mlを添加し、次い
で(R)−2−オキソトリメチレン1,1’−ビナフチ
ル−2,2’−ジカルボキシラート40mgを添加し、
外浴により、0℃に冷却した。
【0420】次に、得られた溶液に、オキソン6.14
gと炭酸水素ナトリウム2.6gとの混合物を6回に分
けて1時間ごとに添加した。添加終了後、さらに2時間
攪拌を行なったのち、得られた反応混合物を半飽和食塩
水にあけ、エーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で
洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。
【0421】乾燥後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、
濾液から溶媒を留去して残渣を得た。 (2)エステル交換反応・結晶化 得られた残渣に、酢酸エチレンとn−ヘキサンの1:8
(容量比)の混合物9mlを添加し、室温で1時間攪拌
した。
【0422】析出した白色粉末を濾取し、減圧下で乾燥
し、(R)−2−オキソトリメチレン1,1’−ビナフ
チル−2,2’−ジカルボキシラート32mgを回収し
た(回収率:80%)。
【0423】一方、得られた濾液(HPLCでの収率:
91%)をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラ
フィー(移動相:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:8
(容量比))で精製し、(2R,3S)−3−(4- メ
トキシフェニル)グリシッド酸メチルエステル135m
gを得た(81%ee)。
【0424】次に、母液を減圧濃縮し、得られた残渣
を、実施例1(2)エステル交換反応および(3)結晶
化と同様に処理することにより、(2R,3S)−3−
(4-メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステル
の結晶を得ることができた。
【0425】実施例4 実施例3の酸化反応の溶媒をアセトンに代え、実施例3
と同様に処理することにより、(2R,3S)−3−
(4- メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステル
の結晶を得ることができる。
【0426】実施例5〜9 実施例1において、(1)酸化反応において、不斉触媒
として、(R)−2−オキソトリメチレン1,1’−ビ
ナフチル−2,2’−ジカルボキシラート991mgの
代わりに、式:
【0427】
【化106】
【0428】で表わされる化合物〔実施例5〕、式:
【0429】
【化107】
【0430】で表わされる化合物〔実施例6〕、式:
【0431】
【化108】
【0432】で表わされる化合物〔実施例7〕、または
式:
【0433】
【化109】
【0434】で表わされる化合物〔実施例8〕、または
式:
【0435】
【化110】
【0436】で表わされる化合物〔実施例9〕を用いる
他は、実施例1と同様にして反応を行なうことにより、
実施例5〜9のいずれにおいても、実施例1と同様に、
(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニル)グリシ
ッド酸メチルエステルを選択的に、かつ高収率で得るこ
とができる。
【0437】実施例10 トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル2.1
99g(11.44mmol)と式:
【0438】
【化111】
【0439】で表わされるケトン触媒244mg(0.
62mmol)の1,4−ジオキサン溶液30mlに炭
酸水素ナトリウム3.88g(46.14mmol)の
水溶液8.4mlを添加し、15℃にて攪拌した。これ
に、参考例13で調製した酸化剤の懸濁液を20分間隔
で2時間20分間かけて添加し、さらに水3.4mlを
加える。添加後、27℃にて17時間攪拌し、水100
mlを加え、クロロホルム100mlにて抽出した。水
層をクロロホルムにて再抽出し(50ml×2回)、有
機層を合わせて飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリ
ウムにて乾燥した。
【0440】得られた残渣をHPLCで分析したとこ
ろ、(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニル)グ
リシッド酸メチルエステル2.153g(収率:90.
4%、光学純度:75.5%ee)、トランス−4−メ
トキシケイ皮酸メチルエステル48.4mgおよび前記
化合物192.7mgの混合物であると推定された。
【0441】なお、前記HPLCの条件は、以下のとお
りである。 〔カラム〕キラルOD 〔移動相〕ヘキサン:イソプロパノール=10:1(容
量比) 〔流速〕1.0ml/min 〔吸収波長〕220nm 〔カラム温度〕40℃
【0442】また、この残渣を実施例1の(2)、
(3)または実施例3の(2)と同様に処理することに
より、(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニル)
グリシッド酸メチルエステルを選択的に、かつ高収率で
得ることができる。
【0443】実施例11 100ml容の三頸フラスコに、トランス−4−メトキ
シケイ皮酸メチルエステル1.664g(8.66mm
ol)、式:
【0444】
【化112】
【0445】で表わされる不斉触媒172mg(0.4
3mmol)および炭酸水素ナトリウム3.637g
(43.29mmol)の1,4−ジオキサン−水(2
2.5ml−5.9ml)混合液を入れ、20℃の恒温
浴中にて攪拌した。これに参考例14で調製した酸化剤
の溶液を15分間ごとに約2.5時間にわたって添加し
た。この際、1回の添加量約0.9mlを約2分間かけ
て滴下した。また最後に1mlの水で洗い込んだ。添加
後、反応液を27℃の恒温槽内で19時間攪拌した。
【0446】反応液に水100mlを加え、これをクロ
ロホルムで抽出し(15ml×3回)、飽和食塩水15
0mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。
【0447】得られた残渣を実施例10と同様にしてH
PLCで分析したところ、(2R,3S)−3−(4−
メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステル1.5
35g(収率:85.1%、光学純度:74.8%e
e)と、トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステ
ル176mg(収率:10.6%)と、ケトン化合物1
65mgの混合物と推測された。
【0448】また、この残渣を実施例1の(2)、
(3)または実施例3の(2)と同様に処理することに
より、(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニル)
グリシッド酸メチルエステルを選択的に、かつ高収率で
得ることができる。
【0449】参考例1 (1)ビアントラキノンカルボン酸の光学分割 ラセミ体の1,1’−ビス(2−アントラキノンカルボ
ン酸)(以下、ビアントラキノンカルボン酸という)
2.40gをエタノール120mlに溶解させ、加熱還
流させた。次に、この溶液に、式:
【0450】
【化113】
【0451】で表わされるキニジン3.13gを少しず
つ添加したのち、15分間加熱還流した。そののち、室
温まで放冷し、一晩放置し、析出したビアントラキノン
カルボン酸のキニジン塩を濾取し、エタノールで洗浄し
たのち、これに1%水酸化ナトリウム水溶液114ml
を添加し、60℃で30分間加熱した。加熱後、室温ま
で放冷し、3.5%塩酸を添加し、pH2に調整し、3
0分間攪拌した。
【0452】次に、その反応混合物に、酢酸エチルエス
テルを添加して抽出したのち、乾燥し、溶媒を留去し
た。得られた抽出物をメタノールに溶解させ、再結晶を
行ない、溶媒が約17ml残存するまで留去を行ない、
得られた結晶を濾取した。
【0453】次に、得られた結晶を60〜70℃で16
時間減圧乾燥させ、(−)−体のビアントラキノンカル
ボン酸890mgを得た。
【0454】得られた(−)−体のビアントラキノンカ
ルボン酸の物性は、以下のとおりである。
【0455】 分解点(dp):196.8−220.6℃ 〔α〕D 25:−225°(C=0.8,MeOH)IR
(nujol)νmax (cm-1):3490,172
1,1670,1584 LC−MS(ESI)m/z:501(M−H)1 H−NMR(DMSO−d6 ):δ 7.80−7.
95(m,6H),8.21−8.26(m,2H),
8.33(d,J=8Hz,2H),8.41(d,J
=8Hz,2H),13.0(brs,2H)
【0456】次に、以下の条件で、HPLCを測定した
ところ、(+)−体の混入が認められなかった。
【0457】LiChro CART 250-4 Chira Dec 5μm MeOH : 1/45M phosphate buffer (pH 6.5) (50/50)
【0458】(2)キラルなケトン化合物の合成 アルゴン雰囲気下、(−)−体のビアントラキノンカル
ボン酸331mgのテトラヒドロフラン8mlの溶液
に、シュウ酸クロリド0.144mlおよびジメチルホ
ルムアミド1滴を添加し、室温で1時間攪拌した。
【0459】反応溶液をテトラヒドロフラン102ml
で希釈し、式:
【0460】
【化114】
【0461】で表わされる1,3−ジヒドロキシアセト
ンダイマー89mgおよびトリエチルアミン0.551
mlのテトラヒドロフラン溶液(懸濁液)20mlを4
0分間で滴下し、そののち、テトラヒドロフラン20m
lで滴下ロート中に残存した1,3−ジヒドロキシアセ
トンダイマーを洗い流した。
【0462】室温で22時間攪拌したのち、溶媒を減圧
留去し、残渣に塩化メチレンおよび水を添加し、塩化メ
チレンで抽出した。
【0463】有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、
溶媒を留去した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムク
ロマトグラフィー〔溶媒:酢酸エチル−ヘキサン(1:
2〜2:1)〕で精製し、溶出液から溶媒を留去し、
式:
【0464】
【化115】
【0465】で表わされるキラルなケトン化合物199
mgをアモルファスパウダーとして得た(収率:54
%)。
【0466】得られたキラルなケトン化合物の物性は、
以下のとおりである。 IR(nujol)νmax (cm-1):1756,17
37,1672 LC−MS(APCI,酢酸アンモニウム添加) m/z=
574(M+NH4)+ 1 H−NMR(CDCl3 ):δ 4.20(d,J=
15Hz,2H),5.49(d,J=15Hz,2
H),7.64−7.80(m,4H),7.91−
7.96(m,2H),8.01(d,J=8Hz,2
H),8.29−8.33(m,2H),8.58
(d,J=8Hz,2H)
【0467】参考例2 アルゴン雰囲気下で、(−)−体の1,1’−ビス(2
−アントラセンカルボン酸)(以下、ビアントラセンカ
ルボン酸という)750mgの塩化メチレン35mlの
溶液に、シュウ酸クロリド0.37mlおよびジメチル
ホルムアミド数滴を添加し、室温で2時間攪拌した。
【0468】反応溶液を塩化メチレン420mlで希釈
し、1,3−ジヒドロキシアセトンダイマー230mg
およびトリエチルアミン1.4mlの塩化メチレン溶液
(懸濁液)80mlを1時間30分かけて滴下し、その
のち塩化メチレン20mlで滴下ロート中に残存した
1,3−ジヒドロキシアセトンダイマーを洗い流した。
【0469】室温で42時間攪拌したのち、溶媒を減圧
留去し、残渣にクロロホルムおよび炭酸水素ナトリウム
水溶液を添加し、クロロホルムで抽出した。
【0470】有機層を水および飽和食塩水で洗浄したの
ち、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー〔溶媒:ク
ロロホルム〕で精製し、溶出液から溶媒を留去して、
式:
【0471】
【化116】
【0472】で表わされるキラルなケトン化合物671
mgをアモルファスパウダーとして得た(収率:78
%)。
【0473】得られたキラルなケトン化合物の物性は、
以下のとおりである。 IR(nujol)νmax (cm-1):1753,17
35,1239 LC−MS(APCI,酢酸アンモニウム添加) m/z
=514(M+NH4 +
【0474】1H−NMR(COCl3 ):δ4.21
(d,J=15Hz,2H),5.59(d,J=15
Hz,2H),7.29(ddd,J=1.7,8H
z,2H),7.46(ddd,J=1.7,7.9H
z,2H),7.52(d,J=9Hz,2H),7.
67(d,J=9Hz,2H),7.89(S,2
H),8.03(d,J=8Hz,2H),8.26
(d,J=9Hz,2H),8.59(S,2H)
【0475】参考例3 Chem. Pharm. Bull.37(8)2207−2208(1
989)に記載の方法に従って得られた(R)−(+)
−6,6’−ジクロロ−2,2’−ジフェン酸2.37
gと1,3−ジヒドロキシアセトンダイマー2.05g
の無水アセトニトリル700ml溶液にトリエチルアミ
ン16.9mlを添加し、室温で15分間攪拌した。こ
の液に、2−クロロ−1−メチルピリジニウムヨージド
15.5gを添加し、窒素雰囲気下、室温で12時間攪
拌し、更に1時間加熱還流した。この反応混合物の溶媒
を減圧留去し、残渣に塩化メチレンおよび水を添加し、
塩化メチレンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウム
で乾燥させ、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルフラッ
シュカラムクロマトグラフィー〔溶媒:酢酸エチル−ヘ
キサン(2:1)〕で精製し、溶出液から溶媒を留去し
て、式:
【0476】
【化117】
【0477】で表わされるキラルなケトン化合物450
mgをアモルファスパウダーとして得た(収率:16
%)。
【0478】得られたキラルなケトン化合物の物性は、
以下のとおりである。
【0479】1H−NMR(CDCl3 ) :δ4.19
(d,J=15Hz,2H),5.50(d,J=15
Hz,2H),7.40−7.73(m,6H)
【0480】参考例4 p−アニスアルデヒド6.81g(50mmol)、酢
酸エチル35.2g(400mmol)およびナトリウ
ムメトキシドのメタノール溶液12.5g(28%、6
5mmol)を混合し、60℃で6時間攪拌した。反応
混合物から溶媒を減圧留去し、残渣に濃硫酸8.8g
(90mmol)のメタノール溶液30mlを加え、8
時間加熱還流した。反応混合物から溶媒を減圧留去し、
メタノール30mlを加え、再度、9時間加熱還流し
た。更に、反応混合物から溶媒を留去し、メタノール3
0mlを添加し、4時間加熱還流後、水および酢酸エチ
ルを添加し、酢酸エチル層を分取した。酢酸エチル層か
ら一部を分取し、HPLCにより定量したところ、トラ
ンス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル8.01g
(83.4%)が含まれるものと推定された。酢酸エチ
ル層を濃縮後、残渣を70%含水メタノール30mlに
加熱溶解後、溶液を室温まで攪拌下に放冷し、更に、1
晩4℃に冷却した。析出晶を濾取し、冷メタノールで洗
浄後、50℃で乾燥することにより、トランス−4−メ
トキシケイ皮酸メチルエステル7.58g(収率:7
8.9%)を単離した。
【0481】参考例5 p−アニスアルデヒド6.81g(50mmol)、酢
酸エチル35.2g(400mmol)およびナトリウ
ムエトキシドのエタノール溶液[金属ナトリウム1.6
1g(70mmol)をエタノール25mlに溶解して
調製]を混合し、室温で13時間、50℃で3時間攪拌
した。反応混合物から溶媒を減圧留去し、残渣にメタノ
ール30mlを加え、5時間室温で反応させた。反応混
合物を減圧留去後、残渣にメタノール30mlを加えて
50℃で18時間反応させた。反応混合物に酢酸4.2
gを加えて反応を停止したのち、反応混合物に水および
酢酸エチルを添加し、酢酸エチル層を分取した。酢酸エ
チル層から一部を分取し、HPLCにより定量したとこ
ろ、トランス−4−メトキシケイ皮酸メチルエステル
7.78g(81.0%)が含まれるものと推定され
た。
【0482】参考例6〜9 参考例1または2の方法において、ナトリウムメトキシ
ドのメタノール溶液またはナトリウムエトキシドのエタ
ノール溶液の代わりに、別の塩基を用いて縮合反応さ
せ、参考例1または2と同様にエステル交換反応するこ
とにより、表3に記載の結果を得た。
【0483】
【表3】
【0484】参考例10 ブレチン・ケミカル・ソサイエティー・オブ・ジャパン
(Bull. Chem. Soc. Jpn.)57巻、1943〜1947頁 (1984
年) に記載された式:
【0485】
【化118】
【0486】で表わされるキラルなジカルボン酸化合物
160mg(0.48mmol)をテトラヒドロフラン
6ml溶解し、この溶液に窒素ガス気流中で、室温でシ
ュウ酸クロリド0.105ml(1.20mmol)お
よびジメチルホルムアミド1滴を添加し、得られた混合
物を同温で1時間攪拌した。反応混合物にテトラヒドロ
フラン80mlを加えて希釈し、この中に、室温下、
1,3−ジヒドロキシアセトン2量体65mg(0.3
6mmol)およびトリエチルアミン0.4ml(2.
88mmol)をテトラヒドロフラン20mlに溶解し
た溶液を約40分間かけて滴下し、同温で混合物を1夜
攪拌した。
【0487】得られた反応液から溶媒を留去し、残渣を
クロロホルムに溶解し、飽和食塩水で洗浄後、乾燥し、
溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルフラッ
シュカラムクロマトグラフィー〔ヘキサン−トリエチル
アミン(100:1)で前処理、溶媒:ヘキサン−酢酸
エチル(1:1)〕で精製することにより、式:
【0488】
【化119】
【0489】で表わされるキラルなケトン化合物41m
g(22%)を得た。
【0490】参考例11 (1)デキストリン1%、硫酸アンモニウム0.2%、
ミーストS(アサヒビール(株)製)2%、リン酸一カ
リウム0.2%、硫酸マグネシウム0.05%、硫酸第
一鉄0.001%、span85(ソルビタントリオレ
エート界面活性剤、花王(株)製、レオドールSP−3
00 1.5w/v%およびポリアルキレングリコール
誘導体系界面活性剤(カラリン102、三洋化成工業
(株)製)0.2v/v%よりなる液体培地18L(p
H7.0)を30L容のジャーファメンターに入れ、滅
菌後、予め同培地で27.5℃、20時間往復振盪培養
したセラチア・マルセッセンスSr41(FERM B
P−487)の前培養液200mlを接種し、25℃で
0.33vvm、0.5kg/cm2 ・G、3000r
pmの条件下で、L−プロリン1.5%を連続添加しな
がら28時間培養した。この培養液10Lを遠心除菌
後、吸着樹脂SP207(三菱化学(株)製)にて不純
物を除去した。
【0491】得られた上澄液は、限外濾過膜(SLP1
053、旭化成工業(株)製)を用いて1Lまで濃縮
後、1.0×104 U/mlのオリーブ油分解活性を持
つエステラーゼ1080mlを得た。
【0492】こうして得られた濃縮酵素液1000ml
を凍結乾燥して、1.96×105U/gのオリーブ油
分解活性を有するエステラーゼ54gを得た。
【0493】参考例122%ポリビニルアルコール(商
品名:ポバール117、(株)クラレ製)225mlと
局方オリーブ油75mlの混液を5〜10℃にて10分
間、14,500rpmで乳化し、得られたオリーブ油
乳化液5.0mlと0.25Mトリス塩酸緩衝液(pH
8.0)4.0ml(2.5mM塩化カルシウムを含
む)を37℃で10分間予熱しておいた。これに1ml
の酵素液を加え、37℃で20分間反応させたのち、ア
セトン−エタノール混液(1:1)20mlを加えて反
応を停止し、フェノールフタレインを指示薬として0.
05NNaOH溶液で滴定した。以上の方法で1分間に
1μmolの脂肪酸を遊離する酵素量を1ユニットとし
た。
【0494】参考例13 発煙硫酸(SO3 含量60%)4.549gに、攪拌
下、−10℃にて60%過酸化水素水1.86mlを5
分間かけて滴下し、10℃にて15分間攪拌した。この
溶液を−10℃に冷却し、これに49.5%水酸化カリ
ウム水溶液8.32gを15分間かけて滴下し、水2.
5mlを加えて希釈し、酸化剤の懸濁液を得た。
【0495】参考例14 20ml容のナスフラスコに、発煙硫酸(SO3 含量6
0%)4.060gを入れ、氷−メタノール浴(浴温:
−15〜−14℃)中にて60%過酸化水素水1.66
9mlを約5分間かけて滴下した。滴下後、反応液を氷
水浴(浴温:5℃)で約15分間攪拌した後、再び氷−
メタノール浴(浴温:−11〜−10℃)で冷却し、こ
れに50%水酸化ナトリウム水溶液2.356gを約1
0分間かけて滴下し、水2mlを加えて希釈した。滴下
後、反応液を氷水浴中(浴温:5℃)で約5分間、さら
に室温下で攪拌した。液温の上昇とともに、反応液は無
色溶液となった。
【0496】
【発明の効果】本発明の製法によれば、対称要素がな
く、複雑な化合物であるケイ皮酸エステル化合物を、キ
ラルなケトン化合物と酸化剤とから生成する不斉酸化剤
(例えば、キラルなジオキシラン化合物)を用いて不斉
酸化(不斉エポキシ化)させ、反応生成物を酵素的エス
テル交換反応に付すことにより、目的とする光学活性グ
リシッド酸エステル化合物を高収率、高光学純度で、か
つ高選択率で収得することができ、またその製造の際に
使用される不斉酸化剤の原料であるキラルなケトン化合
物を再利用することができるという優れた効果が奏され
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07D 303/48 C07D 303/48 // C07M 7:00 Fターム(参考) 4C036 AB05 AB10 AB16 AB19 4C048 AA01 BB31 CC01 UU03 XX02 4C086 AA04 BC92 GA16 ZA36 ZA42 4H006 AA02 AC63 AC81 TA04 TB35 TB56

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)一般式(I): 【化1】 (式中、環Aは置換または非置換ベンゼン環、Rはエス
    テル残基を示す)で表わされるケイ皮酸エステル化合物
    (I)に、キラルなケトン化合物と酸化剤とから生成す
    る不斉酸化剤を作用させ、主生成物である一般式(IIa)
    : 【化2】 (式中、環AおよびRは前記と同じ。*は不斉炭素原子
    であることを示す)で表わされる光学活性グリシッド酸
    エステル化合物(IIa) および副生成物である一般式(II
    b) : 【化3】 (式中、環AおよびRは前記と同じ。**は光学活性グ
    リシッド酸エステル化合物(IIa) の対応する不斉炭素原
    子と逆の絶対配置を有する不斉炭素原子であることを示
    す)で表わされる光学活性グリシッド酸エステル化合物
    (IIb) からなる反応混合物を生成し、(B−1)この反
    応混合物から、キラルなケトン化合物を除去した後、過
    剰に含まれている光学活性グリシッド酸エステル化合物
    (IIa) のみを結晶化させて取得後、残渣に含まれている
    光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) および(II
    b) の混合物に、光学活性グリシッド酸エステル化合物
    (IIb) を立体選択的にエステル交換する能力を有する酵
    素の存在下で、一般式(III) : 【化4】 (式中、R1 はRと異なるエステル残基に対応する基を
    示す)で表わされるアルコール化合物を作用させ、光学
    活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) を一般式(II
    b1): 【化5】 (式中、環A、R1 および**は前記と同じ)で表わさ
    れるエステル化合物(IIb1)にエステル交換し、生成した
    混合物から光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa)
    のみを結晶化させて取得するか、または(B−2)この
    反応混合物から必要に応じてキラルなケトン化合物を除
    去した後、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb)
    を立体選択的にエステル交換する能力を有する酵素の存
    在下で、アルコール化合物(III) を作用させ、光学活性
    グリシッド酸エステル化合物(IIb) をエステル化合物(I
    Ib1)にエステル交換し、エステル交換前にキラルなケト
    ン化合物を除去しなかった場合にはキラルなケトン化合
    物を除去し、生成した混合物から光学活性グリシッド酸
    エステル化合物(IIa) のみを結晶化させて取得すること
    を特徴とする光学活性グリシッド酸エステル化合物(II
    a) の製法。
  2. 【請求項2】 反応混合物から必要に応じてキラルなケ
    トン化合物を除去した後、光学活性グリシッド酸エステ
    ル化合物(IIb) を立体選択的にエステル交換する能力を
    有する酵素の存在下で、アルコール化合物(III) を作用
    させて光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) をエ
    ステル化合物(IIb1)にエステル交換し、エステル交換前
    にキラルなケトン化合物を除去しなかった場合にはキラ
    ルなケトン化合物を除去し、生成する混合物から光学活
    性グリシッド酸エステル化合物(IIa) のみを結晶化させ
    て取得する請求項1記載の製法。
  3. 【請求項3】 反応混合物からキラルなケトン化合物を
    除去した後、過剰に含まれている光学活性グリシッド酸
    エステル化合物(IIa) のみを結晶化させて取得した後、
    残渣に含まれている光学活性グリシッド酸エステル化合
    物(IIa) および(IIb) の混合物に、光学活性グリシッド
    酸エステル化合物(IIb) を立体選択的にエステル交換す
    る能力を有する酵素の存在下で、アルコール化合物(II
    I) を作用させ、光学活性グリシッド酸エステル化合物
    (IIb) をエステル化合物(IIb1)にエステル交換し、生成
    した混合物から光学活性グリシッド酸エステル化合物(I
    Ia) のみを結晶化させて取得する請求項1記載の製法。
  4. 【請求項4】 エステル交換した後、光学活性グリシッ
    ド酸エステル化合物(IIa) の結晶化を、光学活性グリシ
    ッド酸エステル化合物(IIa) は結晶化するが、エステル
    化合物(IIb1)は溶解する溶媒中で行なう請求項1〜3い
    ずれか記載の製法。
  5. 【請求項5】 エステル交換によって生成した混合物か
    ら、エステル化合物(IIb1)が存在しなければ光学活性グ
    リシッド酸エステル化合物(IIb) が析出するが、エステ
    ル化合物(IIb1)が存在するため、光学活性グリシッド酸
    エステル化合物(IIa) は結晶化するが、光学活性グリシ
    ッド酸エステル化合物(IIb) は析出しない状態となるま
    で、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) を結晶
    化させて取得する請求項1〜4いずれか記載の製法。
  6. 【請求項6】 キラルなケトン化合物が、一般式(IV): 【化6】 〔式中、環Arは置換基を有していてもよい、1〜3環
    式の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
    ン化合物(IV) の光学異性体である請求項1〜5いずれ
    か記載の製法。
  7. 【請求項7】 不斉酸化剤が、一般式(V): 【化7】 〔式中、環Arは置換基を有していてもよい1〜3環式
    の芳香環、Yは一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
    キシラン化合物(V)の光学異性体である請求項1記載
    の製法。
  8. 【請求項8】 キラルなケトン化合物が、一般式(VI): 【化8】 〔式中、Ra およびRb は水素原子または置換基、Rc
    およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置換
    基であるか、または(II) Rc およびRd はたがいに結
    合して一般式: 【化9】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化10】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるケト
    ン化合物(VI)の光学異性体である請求項1記載の製法。
  9. 【請求項9】 不斉酸化剤が、一般式(VII): 【化11】 〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原子または置換
    基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
    換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
    に結合して一般式: 【化12】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化13】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii) −Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv) −O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi) −Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるジオ
    キシラン化合物(VII)の光学異性体である請求項7記載
    の製法。
  10. 【請求項10】 一般式(VI)で表わされるキラルなケト
    ン化合物(VI)において、Yが−CO−O−CH2 −基、
    a 〜Rd が(a)Ra およびRb が水素原子、Rc
    よびRd がたがいに結合して 【化14】 を形成しているか、Rc が水素原子、Rd がハロゲン原
    子であるか、もしくはR c が水素原子、Rd がニトロ基
    であるか、または(b)Ra がハロゲン原子、Rb が水
    素原子、Rc およびRd がたがいに結合して 【化15】 を形成している請求項8記載の製法。
  11. 【請求項11】 一般式(VI)で表わされるキラルなケト
    ン化合物(VI)において、Ra およびRb が水素原子、R
    c およびRd がたがいに結合して 【化16】 を形成している請求項10記載の製法。
  12. 【請求項12】 キラルなケトン化合物と酸化剤との反
    応と、生成する不斉酸化剤をケイ皮酸エステル化合物
    (I)に作用させる反応とを同一反応系内で行なう請求
    項1〜6、8、10および11のいずれか記載の製法。
  13. 【請求項13】 ケイ皮酸エステル化合物(I)がトラ
    ンス体であって、光学活性グリシッド酸エステル化合物
    (IIa) が(2R,3S)−異性体であり、かつ光学活性
    グリシッド酸エステル化合物(IIb) が(2S,3R)−
    異性体であるか、または光学活性グリシッド酸エステル
    化合物(IIa) が(2S,3R)−異性体であり、かつ光
    学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) が(2R,3
    S)−異性体である請求項1〜12いずれか記載の製
    法。
  14. 【請求項14】 ケイ皮酸エステル化合物(I)がトラ
    ンス体であって、キラルなケトン化合物が一般式(VI-
    a): 【化17】 〔式中、Ra およびRb はそれぞれ水素原子または置換
    基、Rc およびRd は以下の条件を満足する基: (I) Rc およびRd はそれぞれ水素原子もしくは置
    換基であるか、または(II) Rc およびRd はたがい
    に結合して一般式: 【化18】 (式中、Re 、Rf 、Rg およびRh は、次のいずれか
    であることを示す。 (a) 隣接する2つの基がたがいに結合し、その間の
    2つの炭素原子とともに置換基を有していてもよいベン
    ゼン環を形成し、他の2つの基が水素原子もしくは置換
    基であるか、または(b) それぞれが水素原子もしく
    は置換基である)で表わされる基を形成するか、または
    (III) Rc およびRd はたがいに結合して一般式: 【化19】 (式中、Ri 、Rj 、Rk およびRm はそれぞれ水素原
    子または置換基を示す)で表わされる基を形成し、Yは
    一般式: (i) −O−Q−Alk1 −、 (ii)−Q−O−Alk2 −、 (iii) −Alk3 −O−Alk4 −、 (iv)−O−Alk5 −、 (v) −NR2 −Q−Alk1 −、 (vi)−Q−NR2 −Alk2 −、 (vii) −Alk3 −NR2 −Alk4 −または (viii) −NR2 −Alk5 −、 Qは−CO−基または−SO2 −基、R2 は水素原子、
    アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、A
    lk1 、Alk2 、Alk3 、Alk4 およびAlk5
    はそれぞれ低級アルキレン基を示す〕で表わされるキラ
    ルなケトン化合物(VI-a)であり、光学活性グリシッド酸
    エステル化合物(IIa) が(2R,3S)−異性体であ
    り、光学活性グリシッド酸エステル化合物(IIb) が(2
    S,3R)−異性体である請求項13記載の製法。
  15. 【請求項15】 立体選択的にエステル交換する能力を
    有する酵素が、転換率10%におけるエステル交換につ
    いてのE値が20以上のものである請求項1〜14いず
    れか記載の製法。
  16. 【請求項16】 立体選択的にエステル交換する能力を
    有する酵素が、セラチア(Serratia)属微生物由来のエ
    ステラーゼである請求項15記載の製法。
  17. 【請求項17】 立体選択的にエステル交換する能力を
    有する酵素が、セラチア・マルセッセンス(Serratia m
    arucescens)微生物由来のエステラーゼである請求項1
    6記載の製法。
  18. 【請求項18】 光学活性グリシッド酸エステル化合物
    (IIb) の70%以上をエステル交換し、溶媒に対する溶
    解性の高いエステル化合物(IIb1)とする請求項1〜17
    いずれか記載の製法。
  19. 【請求項19】 一般式(I)で表わされるケイ皮酸エ
    ステル化合物(I)において、環Aが4−低級アルコキ
    シフェニル基であり、Rがメチル基またはエチル基であ
    り、エステル交換によって生成したエステル化合物(IIb
    1)のR1 が、ハロゲン原子を有していてもよい、前記R
    よりも炭素数が多い直鎖または分枝鎖アルキル基;ハロ
    ゲン原子を有していてもよい、前記Rよりも炭素数が多
    い直鎖または分枝鎖アルコキシアルキル基;または直鎖
    もしくは分枝鎖アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖アルコ
    キシ基またはハロゲン原子を有していてもよいアリール
    アルキル基である請求項1〜18いずれか記載の製法。
  20. 【請求項20】 環Aが4−メトキシフェニル基であ
    り、Rがメチル基であり、エステル交換によって生成し
    たエステル化合物(IIb1)のR1 がn−ブチル基である請
    求項19記載の製法。
  21. 【請求項21】 請求項1〜20いずれかで得られた光
    学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa)を用いて、一
    般式(VIII) : 【化20】 (式中、環Bは置換または非置換ベンゼン環、R3 は水
    素原子または置換アルキル基、R4 は低級アルカノイル
    基を示し、環Aおよび*は前記と同じ)で表わされる
    1,5−ベンゾチアゼピン誘導体またはその薬理的に許
    容しうる塩を製造することを特徴とする1,5−ベンゾ
    チアゼピン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩の製
    法。
  22. 【請求項22】 請求項1〜20いずれかで得られた光
    学活性グリシッド酸エステル化合物(IIa) を用いて、一
    般式: 【化21】 (式中、環Aおよび環Bは置換または非置換ベンゼン
    環、*は不斉炭素原子であることを示す)で表わされる
    ニトロカルボン酸化合物またはその塩を製造することを
    特徴とするニトロカルボン酸化合物またはその塩を製造
    する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010208998A (ja) * 2009-03-11 2010-09-24 Central Glass Co Ltd 含フッ素エポキシエステルの製造方法
JP2021046357A (ja) * 2019-09-17 2021-03-25 信越化学工業株式会社 有機ケイ素化合物、有機ケイ素化合物の混合物およびその製造方法、有機ケイ素化合物の混合物を含有するゴム組成物並びにタイヤ

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