JP3204951B2 - キーシート及びその製造方法 - Google Patents

キーシート及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話や自動車
電話などの移動体通信用端末をはじめとする各種携帯機
器に用いられるコンパクトで軽量化されたキーシートに
関するものである。
【０００２】
【従来の技術】近年、携帯機器に用いられる押釦スイッ
チにおいて、樹脂フィルムと熱可塑性樹脂からなるキー
トップ本体との組み合わせによるシート状キートップが
ある。その製造方法として、樹脂フィルムを金型に挟持
し熱可塑性樹脂を射出成形することにより樹脂フィルム
とキートップ本体の一体成形を行う製造技術が、特開昭
５４−１５４４６１号公報や特公平７−５４６５６号公
報に記載されている。
【０００３】これらは、図３に示すように、平面状のフ
ィルム２の表面又は裏面に表示部８や着色層６を印刷に
よって施し、該樹脂フィルムを金型に挟持した後、熱可
塑性樹脂を射出することによりキートップ本体１を成形
し、フィルム２とキートップ本体１を一体化する製造方
法である。現在は、表示部の色調も多種多様になってき
ており、黒、灰等の無彩色、赤、青、緑等の有彩色、
金、銀等のメタリック調とさまざまである。なかでも、
メタリック調は、アルミ粉、マイカ粉等と顔料を塗料や
インク等に混ぜて調色している。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】最近、鏡面感の表示部
の要求が多くなってきた。しかし、めっき加工やホット
スタンプ等の製法で得られるような鏡面感のある層や表
示部を、塗装や印刷等の塗布で実現するのが困難であっ
た。鏡面感のある層や表示部の一般的な製法としては、
あらかじめ所定形状に成形されたキートップ本体の表面
にめっき加工やホットスタンプにより鏡面感のある層や
表示部を設ける方法が知られているが、実使用において
層や表示部が摩耗してしまうため、表示部の表面に耐摩
耗性の樹脂コーティングを施す必要が生じ、量産時にお
けるゴミ異物による不良の多発や生産工程数の増加によ
る製造コストの上昇につながった。
【０００５】他方、平面状のフィルムの裏面にめっき加
工やホットスタンプにより鏡面感のある層や表示部を設
け、所定形状にフィルムを絞り加工し熱可塑性樹脂と一
体成形する方法も検討されたが、フィルムの絞り加工の
際に鏡面感のある層がフィルムの伸びに対して追従でき
ず、クラック等が生じて外観上好ましくなかった。さら
に、鏡面感とバックライトによる照光機能を併せ持つ要
望もある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、フィルムの裏面に、フィルムを絞り加工
してもクラック等が生じない薄膜の無機物層を設けるこ
とで鏡面感のある層や表示部を有するキーシートを低コ
ストで実現し、さらに照光機能も具現化したキーシート
を提供するものである。すなわち、熱可塑性樹脂からな
るキートップ本体の表面および側面にフィルムが一体化
されているキーシートにおいて、フィルムの裏面に、層
厚が２０〜１００ｎｍで可視光線の透過率が１〜２０％
である無機物層を有するキーシートである。
【０００７】さらに、無機物層が、物理的蒸着法あるい
は化学的蒸着法によって形成されている蒸着層であるキ
ーシートである。さらに、無機物層が、抜き文字状の表
示部を形成しているキーシートである。さらに、フィル
ムと無機物層の間に表示部が設けられているキーシート
である。
【０００８】本発明の無機物層は、層厚が２０〜１００
ｎｍで可視光線の透過率が１〜２０％であることが好ま
しい。層厚が２０ｎｍ未満では、薄いために鏡面感が得
られない。そして、層厚が１００ｎｍを越えるとフィル
ムを絞り加工する際にクラックが生じ易くなり、照光機
能が得られない。さらに好ましい範囲は、４０〜８０ｎ
ｍである。また、可視光線の透過率が１％未満では、バ
ックライトによる照光機能が得られない。そして、可視
光線の透過率が２０％を越えると鏡面感が得られなくな
る。さらに好ましい範囲は、２〜１５％である。なお、
本発明の可視光線の透過率は、ＪＩＳ Ｋ−７１０５の
測定法による。
【０００９】本発明の無機物層は、蒸着層であることが
好ましく、物理的蒸着法あるいは化学的蒸着法によって
形成される。どちらも均一でむらが無く形成でき、物理
的蒸着法には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、
スパッタリング法等が挙げられ、化学的蒸着法には、熱
ＣＶＤ（Chemical Vapor Deposition）法、プラズマＣ
ＶＤ法、光ＣＶＤ法等が挙げられる。
【００１０】
【発明の実施の形態】以下に、本発明をさらに詳しく説
明する。本発明の熱可塑性樹脂は、透明性のある熱可塑
性樹脂であることが好ましく、ポリエチレン樹脂、ポリ
プロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート
樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポ
リアミド樹脂等が挙げられる。
【００１１】本発明のフィルムは、透明性に優れるフィ
ルムであれば全て用いることができる。特に、曇価（ヘ
イズ）が１０％以下であることが望ましい。また、絞り
加工性を考慮すると素材は、無延伸のポリアミドフィル
ム、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートの
アロイフィルム等が好ましい。さらにフィルムの厚さ
が、５０〜２００μｍが好適である。本発明の無機物層
に用いられる素材は、鏡面感を低コストで発現し易いア
ルミニウム、クロム等が好ましい。
【００１２】本発明の表示部、着色層、保護層、保持層
等に用いられるインクとしては、各層の接着性を考慮
し、ウレタン系インク、アクリル系インク、ビニル系イ
ンク、ポリカーボネート系インク、ポリエステル系イン
ク等の熱硬化型インクや紫外線硬化型インク等から適宜
に選び使用する。
【００１３】本発明の代表的な形態を説明する。図１に
示すように、熱可塑性樹脂からなるキートップ本体１の
表面および側面にフィルム２が一体化されているキーシ
ートであって、フィルム２の裏面に、層厚が２０〜１０
０ｎｍで可視光線の透過率が１〜２０％である無機物層
３を有し、該無機物層が、抜き文字状の表示部４を形成
しているキーシートである。
【００１４】この形態のキーシートは、フィルム２の裏
面に無機物層３を蒸着し、その上に抜き文字状の保護層
５をスクリーン印刷し、アルカリ並びに酸水溶液に浸し
て蒸着層をエッチングすることで抜き文字状の表示部４
を形成した。さらにこの表示部の上に着色層６や保持層
７をスクリーン印刷し、必要に応じて予熱された金型に
て絞り加工をした後、その変形したフィルムを射出成形
金型に挟持し熱可塑性樹脂を射出して、フィルム２とキ
ートップ本体１を一体化して製造した。
【００１５】図２に示すように、別の形態として、フィ
ルム２と無機物層３の間に表示部８が設けられているキ
ーシートである。この形態のキーシートは、フィルム２
の裏面に表示部８をスクリーン印刷、グラビア印刷、オ
フセット印刷など既存の印刷方法にて印刷し、この上に
無機物層３を蒸着した。さらにこの無機物層の上に必要
に応じて着色層６や保持層７をスクリーン印刷し、必要
に応じて予熱された金型にて絞り加工をした後、その変
形したフィルムを射出成形金型に挟持し熱可塑性樹脂を
射出して、フィルム２とキートップ本体１を一体化し製
造した。
【００１６】以下に本発明の実施例形態を説明する。な
お、実施例に表現するフィルム、インクなどの全ての部
材は代表的なものであり、この限りではない。
【実施例１】厚み１００μｍのポリカーボネートとポリ
ブチレンテレフタレートのアロイフィルム（バイホール
バイエル製）の表面をコロナ改質機にて表面改質し
た。このフィルム表面のごみ・異物を完全に取り除いた
後、蒸着機にて厚み６０ｎｍで可視光線の透過率が１〜
２％のアルミニウムの真空蒸着を行った。この無機物の
蒸着されたフィルムを適当な大きさに裁断し、蒸着層の
上にウレタン系インク（ＲＵＸ セイコーアドバンス
製）にて一体成形時の接着性の向上を兼ねて着色層を塗
装し形成した。このフィルムを圧縮成形金型にて絞り加
工し所定キー形状に変形させた。この圧縮成形金型にて
絞り加工されたフィルムを射出成形機に挟持してポリカ
ーボネート樹脂（ユーピロン 三菱エンジニアリングプ
ラスチック製）を射出成形し、フィルムとキートップ本
体を一体成形させた。一体成形品の外周を抜き加工にて
カットし、鏡面感のあるキーシートが得られた。
【００１７】
【実施例２】Ｔダイ法にて押し出された厚み１００μｍ
の無延伸のポリアミドフィルム（ダイアミロンＣ 三菱
樹脂製）の表面をコロナ改質機にて表面改質した。この
フィルム表面のごみ・異物を完全に取り除いた後、蒸着
機にて厚み８０ｎｍで可視光線の透過率が１％のアルミ
ニウムの真空蒸着を行った。この無機物の蒸着されたフ
ィルムの蒸着層の上に黒色のウレタン系インク（ＲＵＸ
セイコーアドバンス製）にて抜き文字状の表示部をス
クリーン印刷した。このフィルムを水酸化カリウム水溶
液に浸し、印刷層以外の文字状の部分となる蒸着層を除
去した。さらに希硫酸に浸しフィルム中和させたあと精
製水に浸して洗浄した。この上に、透光性の着色層及び
表示部の変形を抑えかつ一体成形時の接着性の向上を兼
ねる保持層を印刷した。このフィルムを圧縮成形金型に
て絞り加工し所定キー形状に変形させた。この圧縮成形
金型にて絞り加工されたフィルムを射出成形機に挟持し
てポリカーボネート樹脂（ユーピロン 三菱エンジニア
リングプラスチック製）を射出成形し、フィルムとキー
トップ本体を一体成形させた。一体成形品の外周を抜き
加工にてカットし、表示部が照光する文字照光の鏡面感
のあるキーシートが得られた。
【００１８】
【実施例３】Ｔダイ法にて押し出された厚み１００μｍ
の無延伸のポリアミドフィルム（ダイアミロンＣ 三菱
樹脂製）の表面をコロナ改質機にて表面改質した。この
フィルムの表面に文字、記号等の表示部を印刷した。さ
らにこのフィルムの上に蒸着機にて厚み４０ｎｍで可視
光線の透過率が３〜６％のアルミニウムの真空蒸着を行
った。この無機物の蒸着されたフィルムの蒸着層の上に
ウレタン系インク（ＲＵＸ セイコーアドバンス製）に
て表示部の変形を抑えかつ一体成形時の接着性の向上を
兼ねる保持層を印刷した。このフィルムを圧縮成形金型
にて絞り加工し所定キー形状に変形させた。この圧縮成
形金型にて絞り加工されたフィルムを射出成形機に挟持
してポリカーボネート樹脂（ユーピロン 三菱エンジニ
アリングプラスチック製）を射出成形し、フィルムとキ
ートップ本体を一体成形させた。一体成形品の外周を抜
き加工にてカットし、キーシートの全面が照光する鏡面
感のあるキーシートが得られた。
【００１９】
【実施例４】厚み１００μｍのポリカーボネートフィル
ム（マクロホール バイエル製）の表面をコロナ改質機
にて表面改質した。このフィルムの表面に文字、記号等
の表示部を印刷した。さらにこのフィルムの上に蒸着機
にて厚み２０ｎｍで可視光線の透過率が５〜１２％のア
ルミニウムの真空蒸着を行った。この無機物の蒸着され
たフィルムの蒸着層の上にウレタン系インク（ＲＵＸ
セイコーアドバンス製）にて表示部の変形を抑えかつ一
体成形時の接着性の向上を兼ねる保持層を印刷した。こ
のフィルムを圧縮成形金型にて絞り加工し所定キー形状
に変形させた。この圧縮成形金型にて絞り加工されたフ
ィルムを射出成形機に挟持してポリカーボネート樹脂
（ユーピロン 三菱エンジニアリングプラスチック製）
を射出成形し、フィルムとキートップ本体を一体成形さ
せた。一体成形品の外周を抜き加工にてカットし、キー
シートの全面が照光する鏡面感のあるキーシートが得ら
れた。
【００２０】
【発明の効果】本発明は、以下のような効果があり、従
来技術と比べて優位性が得られる。本発明のキーシート
は、フィルムに層厚が２０〜１００ｎｍで可視光線の透
過率が１〜２０％の無機物層を形成した後に絞り加工す
るため、鏡面感のある無機物層をフィルムの裏面に有す
るキーシートとすることができる。そして、無機物層を
蒸着層とすることで、フィルムの絞りに対して積層した
無機物層がフィルムに追従するため、クラック（割れ）
などがなく、外観上好ましいキートップ本体が形成され
る。本発明のキーシートは、無機物層がフィルムの裏面
にあるため、実使用において摩耗することがなく、ま
た、表面にコーティング層も設ける必要もないため、高
信頼性で低コストのキーシートとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明キーシートの断面図
【図２】本発明の別のキーシートの断面図
【図３】従来技術のキーシートの断面図
【符号の説明】
１ キートップ本体 ２ フィルム ３ 無機物層 ４ 抜き文字状の表示部 ５ 保護層 ６ 着色層 ７ 保持層 ８ 表示部

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 熱可塑性樹脂からなるキートップ本体の
    表面および側面にフィルムが一体化されているキーシー
    トにおいて、フィルムの裏面に、層厚が２０〜１００ｎ
    ｍで可視光線の透過率が１〜２０％である無機物層を有
    することを特徴とするキーシート。
  2. 【請求項２】無機物層が、物理的蒸着法あるいは化学的
    蒸着法によって形成されている蒸着層であることを特徴
    とする請求項１に記載のキーシート。
  3. 【請求項３】無機物層が、抜き文字状の表示部を形成し
    ていることを特徴とする請求項１あるいは２に記載のキ
    ーシート。
  4. 【請求項４】フィルムと無機物層の間に表示部が設けら
    れていることを特徴とする請求項１あるいは２に記載の
    キーシート。
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