JP3164853B2 - 食缶用薄鋼板の製造方法 - Google Patents

食缶用薄鋼板の製造方法

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JP3164853B2 JP28457691A JP28457691A JP3164853B2 JP 3164853 B2 JP3164853 B2 JP 3164853B2 JP 28457691 A JP28457691 A JP 28457691A JP 28457691 A JP28457691 A JP 28457691A JP 3164853 B2 JP3164853 B2 JP 3164853B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性樹脂フィルム
をラミネートした後、深絞り加工で製缶される高耐食性
食缶用薄鋼板の製造方法に係り、特に深絞り加工性に優
れた食缶用薄鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】食缶としては、胴部と底部が一体となっ
た部品と蓋とからなる2ピース缶が多い。この2ピース
缶は次のような工程で製造される。 錫めっきされた鋼帯を所定寸法のシートに切断し
て、ぶりきシートを得る。
【0003】 次に、シートの片面に熱硬化性樹脂を
塗布し焼付炉にて焼き付ける。この時シートは非塗装面
を支持具に立て掛けた状態で熱処理される。熱硬化性樹
脂としては、エポキシ樹脂をベースにしてフェノール系
樹脂,ユリア系樹脂,エステル系樹脂などを硬化剤とし
て配合したものが一般に使用されており、焼付炉での温
度条件は180 〜220 ℃×10〜20分である。このようにし
て一方の面の塗装・焼付けが完了すると、もう一方の面
の塗装・焼付けが同様に行われる。
【0004】 次に、缶外面に相当する面に印刷・焼
付けが施される。この印刷・焼付けは上記塗装・焼付け
と同じ要領で行われる。 次いで、プレス加工,DP(Drawing an
d Pressing)加工,DRD(Drawing
and Redrawing)加工,DTR(Dra
wing and Thin Redrawing)加
工などによる成形加工を行って、缶胴と缶底とが一体と
なった缶体を得る。
【0005】 これに内容物を充填した後、別途製造
された蓋が取付けられる。 前述のように、ぶりきシートには熱硬化性樹脂が塗装さ
れて180 〜220 ℃×10〜2 0 分という長時間の熱処理
(焼付け)が施される。この時、塗装膜は三次元の網目
構造となって、充填物に対して耐透過性(バリヤー性)
に優れたものとなり耐食性を発揮する。
【0006】しかし、このような熱硬化性樹脂塗膜を施
した耐食性食缶用薄鋼板は、成形加工性の点で問題があ
った。すなわち、プレス加工などの成形加工を施すと、
塗膜に微細なき裂が発生したり損傷を受けたり、或いは
塗膜が剥離したりすることがあり、その結果耐食性を十
分に発揮できなくなることがしばしばあった。具体的に
は、腐食性の強い内容物を充填すると黒変(SnS)や
黒点(FeS)が発生することがある。特に、液状,ゲ
ル状の食品類を保存する場合には、缶体内面に1点の塗
膜欠陥が存在してもこの部分からの缶体金属素材の腐食
が進行し、内容食品のフレーバ低下や保存性の低下をき
たすとともに、加熱殺菌,熱水処理を施すと更に悪化
し、商品価値を失ってしまう。このような成形加工性の
悪さは、塗料として熱硬化性樹脂を使用していることに
原因がある。すなわち、耐食性を得るためには熱硬化性
樹脂のポリマー中にある未反応官能基を反応させてポリ
マー間の橋かけにより分子構造を三次元の網目構造とし
なければならず、そのために長時間の熱処理を必要とす
る。この焼付処理による熱硬化で加工性が悪くなり、ク
ラック等の欠陥が発生し易くなるものと思われる。
【0007】また、塗装に際しては前述したようにぶり
きシート毎に、しかも表裏の各面毎に180 〜220 ℃×10
〜20分もの長時間の熱処理を行うので、生産性も非常に
悪い。これに対して、上述の熱硬化性樹脂層の代わりに
熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムを金属面に接着させ
るようにした被覆金属構造物の製造法が特開昭52−6
5588号に開示され、また、特開平1−145137
号,特開平1−192545号には、ぶりき板にポリエ
ステルフィルムを特定の温度条件の下に熱圧着した複合
鋼板の製法が、更に特開平1−180336号にポリブ
チレンテレフタレートフィルムを熱接着した後に急冷す
る複合鋼板の製造法がそれぞれ提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
従来の熱可塑性樹脂フィルムを被覆した薄鋼板にプレス
加工を施して2ピース缶を製造しようとしても、絞り比
の大きい製品を得ることは困難であった。すなわち、熱
可塑性樹脂フィルムを被覆した薄鋼板は、一定の絞り限
界を越えるとポンチ頭部周辺での素材の破断を生じやす
く、また絞り比が大きくなるとフィルムの剥離,破断,
クラック,白化等の欠陥が生じやすくなっり、ひいては
缶内容物への金属溶出や缶体の孔食等の腐食がを招くと
いう問題点があった。
【0009】その対応策として、フィルム被覆上に滑剤
を塗布して絞り加工性を向上することも考えられるが、
塗膜の滑剤を脱脂することが困難である上に、フィルム
被覆上に残存した滑剤が、微妙な風味を生命とする食品
のフレーバーを損ない易いという致命的な欠点がある。
また、ダイフェースに良質の潤滑剤を塗布して摩擦抵抗
を低下させるという手段は、材料流入が増大するから破
断に対して有利に作用するが、反面、フランジ部に働く
張力が小さくなっていわゆる“しわ”が発生しやすくな
る。更に、ポンチ面に働く張力も小さくなってスプリン
グバックが増大したり、面ひずみなどの不良現象が発生
しやすくなる。その結果、一定の缶形状が得られず不揃
いな食缶製品となってしまい工業生産には適さない。
【0010】そこで本発明は、上記従来技術の問題点に
鑑みてなされたもので、成分組成,熱処理条件を所定の
範囲に規制することにより、深絞り加工性が格段に向上
し、熱可塑性樹脂フィルムを被覆した絞り比の大きい食
缶製品が良好に生産できる食缶用薄鋼板の製造方法を提
供して、上記従来の問題点を解決することを目的とす
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、C;0.004 〜
0.010%(重量比、以下同じ)、Si;0.02%以下、M
n;0.05〜0.3 %、S;0.02%以下、P;0.02%以下、
Al;0.1 %以下、N;0.01%以下で残部が実質的にF
eよりなる連続鋳造鋼片に、熱間圧延を施す際の仕上げ
温度をα領域温度とし、巻取り温度600〜660℃で
巻取り、次いで常法で酸洗、冷間圧延を順次施し、その
後、再結晶温度以上800℃以下均熱時間10秒以下の
条件で連続焼鈍を施し、さらに圧下率3%以下の範囲で
調質圧延を施すことを特徴とする。
【0012】
【作用】製鋼時に真空脱ガス処理してC含有量0.004 〜
0.010%とした極低炭素鋼を用いることで、連続焼鈍法
によっても結晶粒径の大きい薄鋼板が得られ、鋼板の深
絞り性を支配するr値(ランクフォード値)が大きく、
Δr値(ランクフォード値の面内異方性)が小さくな
る。また、連続焼鈍後に固溶Cが残存して、結晶粒径が
大きいにもかかわらずひずみ時効により硬質化する。そ
のため連続焼鈍後の調質圧延での圧下率を下げても大き
な伸びが得られる。さらに熱間圧延時の巻取り温度を高
くして自己焼鈍で結晶粒の粗大化を図る。加えて、連続
焼鈍を800℃までの高温で行なって冷間圧延後の結晶
粒の粗大化をはかる。
【0013】また、Al含有量を0.1 %以下、N含有量
を0.01%以下とすることで、AlNの析出が抑制されて
固溶Nの残存量が多くなり、降伏強さが増加して製缶加
工後の缶強度が大きくなる。もっとも、そのためには熱
間圧延時の巻取り温度は出来るだけ低くすることが好ま
しい。そこで前記の結晶粒粗大化との間をとって、熱間
圧延時の巻取りは600〜660℃の中温度で行う。
【0014】以下、更に詳細に説明する。本発明者ら
は、従来の熱硬化性樹脂をシートコートした薄鋼板であ
れば深絞り加工が可能であったにもかかわらず、熱可塑
性樹脂フィルムを被覆した薄鋼板の場合には深絞り加工
が困難な原因を検討した。その結果、この問題は潤滑の
影響によると考えるに至った。すなわち、深絞り成形に
おける破断限界は、次のようにフランジ部の絞り抵抗と
パンチ肩部の破断抵抗の大小関係によって決まる。
【0015】 パンチ肩部の破断抵抗>フランジ部の絞り抵抗の場合は
成形可能 パンチ肩部の破断抵抗<フランジ部の絞り抵抗の場合は
破断する ここで、 パンチ肩部の破断抵抗=薄鋼板の破断抵抗+パンチ肩部
の摩擦抵抗 フランジ部の絞り抵抗=薄鋼板の縮みフランジ抵抗+ダ
イ肩R部を含むダイフェース面での摩擦抵抗 従って、同じ薄鋼板でも、ダイフェース面のみ潤滑性を
良くすると、その面での摩擦抵抗が減少してフランジ部
の絞り抵抗が減少することとなり、成形限界は改善され
る。反対に、パンチ面のみ潤滑性を良くした場合は、パ
ンチ肩R部の摩擦抵抗が減少してパンチ肩部の破断抵抗
が減少することとなり、成形限界は低下すると考えられ
る。
【0016】以上のことから、熱可塑性樹脂フィルムを
被覆した薄鋼板の深絞り加工性が悪い理由は、缶内面側
に滑りのよい熱可塑性樹脂フィルムを貼付したことが原
因と考えられた。そこで、熱硬化性樹脂をシートコート
(約5μm厚さ)した薄鋼板と熱可塑性樹脂フィルムを
被覆(20μm厚さ)した薄鋼板との摩擦抵抗を比較す
るべく、摺動試験を実施して表1の結果を得た。
【0017】
【表1】
【0018】この結果から、ぶりき面あるいは熱硬化性
樹脂の塗膜被覆面に比べて熱可塑性樹脂フィルム被覆面
の摩擦抵抗の方が小さいことがわかる。こうして、熱可
塑性樹脂フィルムを被覆した薄鋼板は、パンチ肩R部の
摩擦抵抗が小さくなって、成形限界が低下することが裏
付けられた。そこで、本発明者らは、熱可塑性樹脂フィ
ルムを被覆した薄鋼板の成形限界を改善することを意図
して更に研究を重ねた。一般に、薄鋼板の深絞り性は、
主としてr値(ランクフォード値)によって支配され、
降伏点や抗張力などの強度や延性(伸び)の影響葉は小
さいと言われている。しかし、熱可塑性樹脂フィルムを
被覆した薄鋼板にあっては、深絞り加工で2ピース缶を
成形する場合の絞り比を大きくするのに、r値のみでな
く、伸びが大きいことも必要であることが判明した。
【0019】これに加えて、成形された食缶としての商
品価値の点から缶の衝撃強度が重要であり、そのために
は、製缶材料である薄鋼板の降伏強度が大きいことが必
要である。しかし、r値が大きく,伸びが大きい薄鋼板
は一般に降伏強度が小さくなるものであって、r値が大
きく,伸びが大きく,そのうえ降伏強度も大きい薄鋼板
の実現は、冶金的には矛盾する要求といえる。
【0020】本発明者らは、こうした矛盾の解決の可能
性を求めて、成分の異なる低炭素Alキルド鋼を基礎
に、圧延条件,焼鈍条件を種々に変化させた薄鋼板を製
造して、その硬さ,伸び,r値,Δr値等の機械的性質
や、ぶりき単体のLDR(Limiting Draw
ing Ratio:限界絞り比),ぶりきにナイロン
6フィルム(20μm厚さ)を被覆したもののLDR等
のプレス加工性等を調べて検討を加えた。
【0021】表2はその検討結果の一例を示したもので
ある。
【0022】
【表2】
【0023】表2において、試料番号〜は、低炭素
Alキルド鋼を使用した従来の製造法によるぶりきにナ
イロンフィルムを被覆した薄鋼板であり、炭素量が多
く、結晶粒径が小さい。試料番号は、そのうちで一番
C量(0.03wt%)が少ないもので、試料番号,に比べ
るとプレス加工性は良いが、缶強度が不足している。こ
れにたいして、C量(0.10wt%) を多くした試料番号
は、缶強度は改善されているが、プレス加工性は悪くな
っている。試料番号〜の缶強度が小さい理由は、A
lキルド鋼であること及び箱焼鈍であることから固溶
N,固溶Cが殆ど残存せず、そのためひずみ時効硬化が
非常に小さいためである。結晶粒径を小さくして細粒硬
化を期待したが、その程度は小さかった。
【0024】試料番号〜は、極低炭素Alキルド鋼
を圧延し、連続焼鈍,調質圧延を施した後、錫めっきし
て仕上げた薄鋼板ぶりきにナイロンフィルムを被覆した
薄鋼板である。試料番号,はC量が0.0020wt%と極
めて少なく、はC量0.007wt%と極低炭素鋼としては
いくらか多くしてある。試料番号は調質圧延の圧下率
を1%としたもので、プレス加工性は良好であるが、缶
強度が不十分であった。は、調質圧延の圧下率を5%
として加工硬化を加えたもので、缶強度は十分である
が、プレス加工性が悪かった。そのr値が大きいにもか
かわらずプレス加工性が悪くなった理由は次のように考
えられる。すなわち、缶高さを得るために深絞りする
際、缶底周辺(ポンチ頭部周辺)では材料の伸び流出が
必要である。一方、フランジ部では材料の縮み流入が必
要である。フランジ部の縮み流入分を得るためにはr値
の大きい鋼板が有利である。一方ポンチ頭部の伸び流出
分を得るためには伸びの大きい鋼板が必要であり、特に
摩擦係数が小さくなるフィルム被覆薄鋼板においては伸
びが一層大きいことが必要になる。ところが試料番号
は調質圧延の圧下率を大きくして加工硬化したため、降
伏強度は効率よく増大できても、反面で伸びが極端に小
さくなり、その結果ポンチ頭部の伸び流出分が不足して
缶底周辺部におけるプレス加工性が低下したものであ
る。
【0025】したがって、特に2ピース食缶用薄鋼板に
あっては、r値が大きくても伸びが小さいものは不適当
である。以上の各試料番号のものにたいして、試料番号
は、調質圧延の圧下率を1%としたが、プレス加工
性,缶強度ともに十分で2ピース缶に最適であることが
判明した。
【0026】本発明者らはこうして検討を重ねた結果、
薄鋼板の成分組成,炭化物結晶の粗大化,熱間圧延条
件,焼鈍条件と成形限界との関係について種々の知見を
得ることができ、その知見に基づいて本発明に到達した
ものである。先ず、本発明の食缶用薄鋼板の元素含有量
の臨界的意義について説明する。 C;0.004 〜0.010 (重量)% r値が大きく,伸びが大きい薄鋼板を得るには、結晶粒
径を大きくすることが先決である。再結晶の核となるC
量が少ない程結晶粒径は大きくなり、連続焼鈍法でも軟
質で深絞り加工性に優れた原板が得られる。しかしあま
りに軟質な薄鋼板で2ピース缶を深絞り加工法で製缶し
ても、缶強度が弱いため変形し易くなり商品価値が無
い。そこで本発明の薄鋼板のC量は、極く微量にまでは
精錬せずに、上記の如く微量の範囲にして硬さを調整す
る。
【0027】従来は硬質にするため調質圧延の圧下率を
高くしていたが、その場合には先に述べたとおり“伸
び”が極端に小さくなり、フィルム被覆薄鋼板での深絞
り加工に限界があった。本発明にあっては、C量を上記
0.004 〜0.010 %とすることによって結晶粒径がほどほ
どに大きくなり、さらに固溶C量が適量残存するので、
塗装,印刷,製缶プレス加工において時効硬化が進み、
その結果缶強度の大きい2ピース缶を得ることが可能に
なる。しかし、結晶はなお細粒でありr値が若干小さい
から、その対策として後述の如くに熱間圧延時の巻取り
温度を中温に、かつ冷間圧延後の連続焼鈍温度を高温に
設定することによって結晶粒の粗大化の促進を図るもの
である。 Si;0.02%以下 Siは、ぶりきの耐食性を劣化させる元素であり、いか
に耐食性に優れた熱可塑性樹脂フィルムを被覆した薄鋼
板といえども0.02%以下にする必要がある。 Mn;0.05〜0.3 % Mnは熱延コイルの耳割れ発生を防止するために添加す
る。しかし、添加量がが0.05%より少ないと耳割れ発生
を防止できない。一方、0.3 %を越えるて添加すること
は不経済である。 S;0.02%以下 SはMnとの関係において過剰に含有すると熱延コイル
の耳割れを生成させ、またS系介在物が多くなり好まし
くない。よって0.02%以下にする。 P;0.02%以下 Pはぶりきの耐食性を劣化させる元素であり過剰の含有
は好ましくないゆえ、0.02%以下に限定する。 Al;0.1 %以下 Alは固溶NをAlNとして析出させるに必要な元素で
ある。しかし、固溶Nを多く残存せしめることにより、
固溶Cと同様にひずみ時効硬化が促進されて缶強度の向
上が期待できるのであって、あまりに多量のAl添加は
固溶N量を減らし過ぎ好ましくない。そこで0.1 %以下
に限定した。 N;0.01%以下 Nは鋼中に固溶してひずみ時効硬化を促進できる元素
で、有効な成分である。本発明の鋼においては、固溶N
として多く残存していることが、製缶加工後に時効効果
により降伏強度ひいては缶強度を増大させる点で好まし
い。そこで、製鋼工程でN量を多く添加し、Al添加量
を上述の如く少なくしてAlNの析出を抑えることによ
り、固溶Nの残存量を多くするため、上記の含有量とし
た。
【0028】続いて、本発明の食缶用薄鋼板の製造にお
ける熱間圧延工程、冷間圧延後の連続焼鈍工程での処理
温度の臨界的意義について説明する。 熱間圧延時の仕上げ温度;α領域温度 板厚の薄い缶用薄鋼板の場合、特に低温圧延が好まし
い。熱間圧延時の熱衝撃によりロール表面にき裂が発生
し、そのロール疵が混入するのを避けるためである。こ
の見地から、α領域圧延とする。
【0029】 熱間圧延時の巻取り温度;600〜660℃ 本発明の製造方法においては、巻取り温度は上記の中温
度の範囲に限定する。本発明では鋼中に微量Cを残存せ
しめたことで、結晶粒径が若干細粒になる。これを補う
ため、高温度で巻き取り、自己焼鈍で結晶粒の粗大化を
促してr値の改善を図ることが望ましい。しかし660
℃を越える高温にすると、自己焼鈍方式でのばらつきが
大きくなってしまい、かつスケール損が多く不経済にな
る。一方、600℃未満の低温にすると、固溶Nの残存
量が多くなって缶強度を増大させる点で好ましいが、結
晶粒径の粗大化は促進されない。そこで熱間圧延時の巻
取り温度は、上記の中温度の範囲とすることが最適であ
ることが判明した。
【0030】 連続焼鈍温度;再結晶温度以上800℃以下 連続焼鈍は、冷間圧延組織を再結晶および粒成長させて
材質を改善するのに重要な工程である。焼鈍は、高温短
時間焼鈍が結晶粒の粒成長を促して粗大化を図るのに有
利であり、且つ経済的でもある。しかし800℃を越え
ると伸びが減少するから800℃以下とする。
【0031】調質圧延の圧下率;3%以下 調質圧延の圧下率を大きくすると容易に硬質になるが、
反面、伸びが極端に悪くなる。したがって本発明では圧
下率を3%以下に限定する。本発明の製造方法によれ
ば、成分を調製するとともに、中温度巻取り、高温度焼
鈍を行い、また調質圧延の圧下率を調整したことによ
り、r値が大きく且つΔr値(ランクフォー値の面内異
方性)が小さく、伸びが大きく、しかも降伏強度が大き
いという相矛盾する要求を満たした食缶用薄鋼板を得る
ことが可能になった。その結果、フィルムラミネート薄
鋼板の深絞り加工性が格段に向上し、従来のように成形
加工時にポンチ頭部周辺での素材の破断を生じたり、絞
り比が大きくなるとフィルムの剥離,破断,クラック,
白化等の欠陥が生じることがなく、また成形時に“し
わ”が発生したり、スプリングバックが増大したりする
こともなく、絞り比の大きいフィルムラミネート食缶製
品が良好に生産できるようになった。
【0032】
【実施例】鋼を底吹き転炉により溶製し、C含有量0.03
重量%以下にして出鋼した。続いてRH真空脱ガス処理
を施してC含有量を0.01〜0.004 重量%に調整した後、
Alを添加し、表3に示す成分組成の複数種のAlキル
ド鋼を得た。これを用いて連続鋳造機で鋼片を製造し、
これらの鋼片を熱間圧延した。仕上げ温度はα領域の低
温とし、また巻取り温度は中温とし、それぞれ2.0 mm厚
さの熱延コイルとなした後、酸洗して脱スケールを行っ
た。次に、6スタンドタンデム冷間圧延機にて圧下率9
0%で冷間圧延して板厚0.2 mmの薄鋼板を得た。続い
て、この鋼板の連続焼鈍を行い、その後調質圧延を行っ
て供試試料原板を仕上げた。各試料毎の熱処理条件およ
び調質圧延の圧下率のデータを表3に併記した。
【0033】この原板に、ハロゲン方式の電気錫めっき
ラインで、#25(2.8 g/m2) の錫めっき及びリフロー
処理(溶錫化処理),クロメート処理を連続して施し、
ぶりきに仕上げた。
【0034】
【表3】
【0035】なお、表3中の数値に下線を施したもの
は、本発明の請求項に示した範囲から外れていることを
示し、比較鋼のものである。上記の薄鋼板に、フィルム
ラミネータを用いて接着剤方式でナイロン6フィルム
(20μm厚)を貼り付けてフィルムラミネート薄鋼板
とした。こうして得たフィルムラミネート薄鋼板から所
定の大きさの供試材を採取して材料試験を行った。同時
に、2ピース缶にプレス加工成形して、得られた缶の強
度評価を実施した。
【0036】測定結果並びに評価結果を表4に示す。表
4中、LDRはブランク径を120mm一定として、ポン
チとダイスの径を段々に小さくしながら破断に到るまで
数回にわたってプレス加工を行い、次の式により算出し
た。 LDR=加工前の径(ブランク径)/加工後の径 また、2ピース缶としての評価を行う際、缶の衝撃強度
が重要になる。すなわち、缶同士が衝突したり、缶が落
下した際に大きく変形すると商品価値がなくなる。深絞
り缶であるからプレス加工で硬化はしているが、3ピー
ス缶に比べて缶体構造的に強度が小さいことは避けられ
ない。3ピース缶は胴に天地板が二重巻き締めしてある
から、その缶強度は十分に大きく取れる。これに対し
て、2ピース缶は天蓋は二重巻き締め構造であるが、底
部はプレス加工体のため弱い。今回は、得られた2ピー
ス缶に水を一杯に満たしたものを、30cmの高さから落
下させて凹みの程度で衝撃強度を評価した。表4の缶強
度の欄において、×印は凹みが大きく見るに耐えないも
の、○印は殆ど凹まないものである。
【0037】
【表4】
【0038】本発明鋼は、過酷な試験評価を行ったにも
かかわらず良好な結果が得られた。一方、比較鋼の場合
は、製缶前のフィルムラミネート鋼板での機械的性質あ
るいは缶強度が劣っており、総合評価は全数が不良であ
った。なお、上記実施例ではぶりきに適用したが、クロ
ムめっき鋼板にも適用することができる。
【0039】また、本発明の製造法による食缶用フィル
ムラミネート鋼板は2ピース缶用に限らず、3ピース缶
用にも適用できる。また、本発明の製造法はフィルムを
表裏両面に貼り付ける食缶用薄鋼板の製造にも適用でき
る。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、C量を微量範囲に成分
調製し、中温度巻取り,高温度焼鈍を併用したことによ
り、深絞り加工性が格段に向上し、時効硬化で缶強度も
大きい絞り比の大きなフィルムラミネート食缶製品が良
好に生産できるという効果が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 登坂 章男 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株 式会社技術研究本部内 (56)参考文献 特開 平2−118024(JP,A) 特開 昭61−69928(JP,A) 特開 昭59−38338(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 9/46 - 9/48 C21D 8/04

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C;0.004 〜0.010 %(重量比、以下同
    じ)、Si;0.02%以下、Mn;0.05〜0.3 %、S;0.
    02%以下、P;0.02%以下、Al;0.1 %以下、N;0.
    01%以下で残部が実質的にFeよりなる連続鋳造鋼片
    に、熱間圧延を施す際の仕上げ温度をα領域温度とし、
    巻取り温度600〜660℃で巻取り、次いで常法で酸
    洗、冷間圧延を順次施し、その後、再結晶温度以上80
    0℃以下均熱時間10秒以下の条件で連続焼鈍を施し、
    さらに圧下率3%以下の範囲で調質圧延を施すことを特
    徴とした食缶用薄鋼板の製造方法。
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