JP5929739B2 - エアゾール缶ボトム用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

エアゾール缶ボトム用鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、エアゾール缶ボトム用鋼板およびその製造方法に関するもので、特に耐圧強度が高く加工性に優れたエアゾール缶ボトム用鋼板およびその製造方法に関するものである。
エアゾール缶には様々な構造があり、例えば、底部の素材を鋼板とし、ボトム用鋼板を缶胴に巻き締めることによって得られるエアゾール缶が挙げられる。ボトムを装着したエアゾール缶の構造を図1に示す。図1に示すエアゾール缶のボトム1は、素材を円形ブランクに打ち抜き、プレス加工により所定の形状に加工し、辺縁部に設けたフランジ部を介して缶胴2に巻き締められたものである。缶胴2には、内容物を噴射させる機能を備えたマウンティングキャップ3、およびスプレーノズル4が合わせて取り付けられる。
エアゾール缶には、内容物を噴射させるための噴射剤が封入される。このため、エアゾール缶内部は高圧の状態となっている。したがって、エアゾール缶のボトムは、内部の圧力に耐える十分に高い耐圧強度を備える必要がある。
エアゾール缶と同様に、例えば耐圧強度が必要な容器に用いる鋼板に関する技術としては、以下のものが開示されている。
特許文献1には、耐圧強度とネックドイン性に優れたDI缶用表面処理原板及び製造方法が開示されている。重量%で、C:0.0100〜0.0900%、Si:≦0.30%、Mn:0.05〜1.00%、P:≦0.030%、S:≦0.025%、SOl.Al:0.010〜0.100%、N:0.0005〜0.0120%、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分の鋼を、CT:660〜750℃、冷間圧延率:84〜91%、焼鈍温度:再結晶温度〜700℃の箱焼鈍で、G.Snoが9.5以上、軸比が1.4以下の焼鈍板を造り、伸び率で2%以上30%以下の調質圧延で、Hv(10%BH)が145以上、Hv(70%BH)が195以下に調整することが開示されている。
特許文献2には、耐圧強度とネック加工性の優れたDI缶用鋼板及びその製造方法が開示されている。重量%で、C:0.01〜0.08%、Mn:0.5%以下、SolAl:0.20%以下、N:0.01%以下、必要に応じて、0.1%以下のS、Cr、Cu、Niの少なくとも1種及び/又は0.1%以下のTi、Nbの少なくとも1種を含有し、固溶C量が5〜25ppmであり、L方向のYPが30〜44kgf/mmであり、L方向とC方向のYPの差が2kgf/mm以下のDI缶用鋼板であり、上記成分の熱延板を冷延し再結晶後60℃/秒以上で冷却し、300〜450℃に30〜180秒保定し、その後湿式で圧延率:3〜12%の調質圧延する製造方法が開示されている。
特許文献3には、深絞り加工性、しごき加工性、ネック加工性と耐圧強度に優れたDI缶用鋼板が開示されている。重量%で、C:0.01%以下、Si:0.05%以下、Mn:0.5%以下、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Al:0.001%以上0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる連続鋳造鋳片を熱間圧延、酸洗した後、圧延率50〜85%の範囲で第1回の冷間圧延を行い、次いで第1回の再結晶焼鈍を行った後、圧延率70〜95%の範囲で第2回の冷間圧延を行い、次いで第2回の再結晶焼鈍を行い、さらに5〜35%の調質圧延を行う製造方法が開示されている。
特許文献4には、焼き付け硬化性が大きく、高温での時効劣化を生じない缶用鋼板が開示されている。C:0.08wt%以下、Si:0.10wt%以下、Mn:1.5wt%以下、P:0.20wt%以下、S:0.020wt%以下、Al:0.030〜0.150wt%、N:0.0030wt%以下を含有する鋼片を、仕上げ圧延温度800〜950℃で熱間圧延し、600℃以上で巻き取り、圧下率80%以上で冷間圧延したのち、水素3%以上と残部は実質的に窒素とからなるガス組成で、露点が−20℃以上である雰囲気中で、再結晶温度以上の均熱温度に、10秒〜40秒未満の間保持する連続焼鈍で、脱炭量5ppm以上となる脱炭処理を行い、次いで、圧下率1〜15%の2次冷間圧延を行うことによって、250℃で60秒間の時効処理したときの降伏伸びが3.0%以下である耐時効性と、2%予歪み付与後、210℃で20分間の加熱処理したときの硬化量が40MPa以上である焼付硬化性を付与した缶用鋼板が開示されている。
特開平7−278744号公報 特開平8−311609号公報 特開平8−60242号公報 特開平11−199991号公報
特許文献1は、伸び率10%の追加圧延予歪および210℃×5minの熱処理によるBH熱処理を行った後のHv値であるHv(10%BH)を規定することで耐圧強度を確保する技術である。確かに、DI缶の場合は10%の追加圧延に相当するボトム加工の後に、塗装焼付けのために210℃で5min程度の加熱が行われるため、前記の方法で特性を評価することには妥当性がある。しかし、図1に示したエアゾール缶のボトムは塗装および焼付け後にボトムの加工が行われるため、前記の評価方法では特性を評価し得ない。また、特許文献1の技術は箱焼鈍で製造するものであるが、この焼鈍方法は材質の均質性、生産性に課題がある。
特許文献2は、固溶C量を規定して焼付け硬化性を制御するとともに、湿式で3〜12%の調質圧延とすることで所定の機械特性を得る技術である。確かに、DI缶の場合はボトム加工後に塗装焼付けのために210℃で5min程度の加熱が行われるため、この温度での時効硬化に寄与する固溶C量を制御することは有効な手段であると考えられる。しかし、図1に示したエアゾール缶のボトムはボトム加工後に200℃前後の温度で加熱が行われることがないため、固溶Cによる硬化を期待することができず、有効な手段とはならない。
特許文献3は、製造工程が多工程になるため、製造期間およびコストが増大する欠点がある。
特許文献4は、210℃で20分間の加熱処理後の焼き付け硬化量が優れる旨が記載されているが、図1に示したエアゾール缶のボトムはボトム加工後に200℃前後の温度で加熱処理が行われることはないため、硬化を期待することが出来ない問題がある。
以上のように、耐圧強度の向上に関しては主にDI缶のボトム部に着目した技術が提案されているが、DI缶とは加工および熱処理条件が異なるエアゾール缶のボトム材に関して、耐圧強度の向上を目的とした技術は見受けられない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、高い耐圧強度と良好な加工性とを兼ね備えたエアゾール缶ボトム用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
耐圧強度を高めるためには、鋼板の強度を高めることが有効である。また、耐圧強度は、ボトムの形状に影響を受けることから、エアゾール缶のボトムは缶の内部側に張り出した構造である必要がある。したがって、鋼板はこうした形状に加工するための加工性を備える必要がある。
本発明者らは、鋼板の機械特性および板厚がエアゾール缶ボトムの耐圧強度および加工性に及ぼす影響について検討した。その結果、機械特性と板厚とを特定の条件に制御することによって、要求される耐圧強度と加工性とを両立させることができることを見出した。すなわち、板厚と機械的特性、特に降伏強度、室温時効硬化挙動を適切に制御することで、高い耐圧強度と良好な加工性とを兼ね備えた鋼板が得られることを見いだした。
また、上記の特定の条件に見合う機械特性を得るためにはAl、Nを特定の含有量の関係とし、また製造条件としてスラブ加熱温度、巻き取り温度などを規定することにより、耐圧強度および加工性に優れた鋼板が得られることを見出した。
本発明はかかる知見に基づくものであって、その要旨は以下の通りである。
[1]質量%で、C:0.020%以上0.090%以下、Si:0.01%以上0.05%以下、Mn:0.05%以上0.60以下%、P:0.001%以上0.100%以下、S:0.001%以上0.025%以下、N:0.0010%以上0.0070%未満、Al:0.010%以上{−4.2×Nの含有量(%)+0.11}%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、板厚を0.350mm以下とし、下降伏強度(N/mm)と前記板厚(mm)との積が195(N/mm)以下、圧延率10%の圧延予歪を施した後、25℃において10日間の室温時効を行った際の上降伏強度(N/mm)と、前記板厚(mm)の二乗との積が52.0N以上であることを特徴とするエアゾール缶ボトム用鋼板。
[2]質量%で、C:0.020%以上0.090%以下、Si:0.01%以上0.05%以下、Mn:0.05%以上0.60以下%、P:0.001%以上0.100%以下、S:0.001%以上0.025%以下、N:0.0010%以上0.0070%未満、Al:0.010%以上{−4.2×Nの含有量(%)+0.11}%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼を溶製し、
連続鋳造によってスラブとし、1150℃以上の温度にスラブを再加熱した後、
巻取り温度を620℃未満として熱間圧延を行い、酸洗、一次冷間圧延した後、再結晶焼鈍し、
圧延率3%超18%未満で二次冷間圧延を行い、板厚を0.350mm以下とし、
得られる鋼板の下降伏強度(N/mm)と前記板厚(mm)との積が195(N/mm)以下、圧延率10%の圧延予歪を施した後、25℃において10日間の室温時効を行った際の上降伏強度(N/mm)と、前記板厚(mm)の二乗との積が52.0N以上であることを特徴とするエアゾール缶ボトム用鋼板の製造方法。
[3]N量の75%以上を固溶Nとして残存させることを特徴とする[2]に記載のエアゾール缶ボトム用鋼板の製造方法。
[4]前記スラブの再加熱において、スラブ表面温度とスラブ中心温度の差が20℃以内であることを特徴とする[2]または[3]に記載のエアゾール缶ボトム用鋼板の製造方法。
なお、本発明において、成分組成の割合を示す%は全て質量%である。
本発明によれば、高い耐圧強度と良好な加工性とを兼ね備えたエアゾール缶ボトム用鋼板を得ることができる。
エアゾール缶ボトム用鋼板を缶胴に巻き締めることにより得られるエアゾール缶の構造を示す図である。
以下に本発明を詳細に説明する。
まず、成分組成について説明する。成分はすべて質量%である。
C:0.020%以上0.090%以下
本発明の鋼板は、連続鋳造、熱間圧延、酸洗、一次冷間圧延、再結晶焼鈍、二次冷間圧延の各工程を経て製造される鋼板であり、後述する機械特性を備える必要がある。このような特性を満たす鋼板では、固溶強化元素としてのCの添加量が重要であり、C含有量の下限は0.020%とする。0.020%未満では、本発明で規定する機械特性が得られない。一方、C添加量が0.090%を超えると、過剰に硬質となるばかりか、後述するパーライト組織が形成されやすくなる。また、連続鋳造スラブの凝固過程において割れが生じやすくなる。よって、上限は0.090%とする。好ましくは0.030%以上0.070%以下である。
Si:0.01%以上0.05%以下
Siは固溶強化により鋼を高強度化させる元素である。この効果を発現させるためには、下限は0.01%とする。一方、多量に添加すると耐食性が著しく損なわれる。そのため、上限は0.05%とする。
Mn:0.05%以上0.60%以下
Mnは、Sに起因する熱間割れを防止するうえで有効な元素であり、含有するS量に応じて添加するのがよい。また、Mnは結晶粒を微細化し、強度の向上に有効な元素である。これらの効果を発揮するためには、下限は0.05%とする。一方、Mnを多量に添加すると、鋼板の高強度化は達成できるものの、耐食性が低下するので、上限は0.60%とする。
P:0.001%以上0.100%以下
Pは固溶強化能が大きい元素であるが、多量に添加すると耐食性が著しく損なわれる。よつて、上限は0.100%とする。一方、Pを0.001%未満とするには脱リンコストが過大となる。よって、下限は0.001%とする。
S:0.001%以上0.025%以下
Sは高炉原料由来の不純物であり、鋼中のMnと結合してMnSを生成する。高温において粒界にMnSが析出し、脆化の原因となるため、上限は0.025%とする。一方、Sを0.001%未満とするには脱硫コストが過大となる。よって、下限は0.001%とする。
N:0.0010%以上0.0070%未満
Nは固溶強化および後述する歪時効硬化に寄与する元素である。これらの効果を発現させるためには、下限は0.0010%とする。一方、過剰に添加すると、熱間延性の劣化を招くほか、鋼板の過剰な硬質化によって加工性が劣化する。特に、本発明のように二次冷間圧延を行う鋼板においてはそれが顕著である。よって、上限は0.0070%とする。
Al:0.010%以上{−4.2×Nの含有量(%)+0.11}%以下
Alは、脱酸剤として作用し、鋼の清浄度を高めるために必要な元素である。Alは鋼中のNと結合してAlNを形成する。本発明では、固溶Nの作用による歪時効硬化を利用するため、AlNの過剰な析出を抑制する必要がある。このため、Al量の上限を規定する必要がある。AlNの析出量は、Al量、N量、また、スラブ凝固からスラブ再加熱の過程での熱履歴、および、熱間圧延の巻き取り過程での熱履歴で決まる。後述の製造条件との組み合わせにより、AlNの析出を抑制する条件を検討した結果、Al量の上限はN量との関係において、{−4.2×N(%)+0.11}%以下とする必要がある。一方で、Al量が0.010%未満となるような鋼では、脱酸不足となって鋼の清浄度が劣化するため、下限は0.010%とする。なお、本発明におけるAlは酸可溶Alである。
本発明では、上記のAlとNとの関係、および後述のスラブ加熱温度、および熱間圧延での巻き取り温度の調整により、N量の75%以上を固溶Nとして残存させることが好ましい。この固溶Nの残存により、室温での歪時効硬化が有効に発揮される。
残部はFeおよび不可避的不純物とする。
なお、本発明の鋼板はパーライト組織を含まない組織であることが望ましい。パーライト組織とはフェライト相とセメンタイト相が層状に析出した組織であり、粗大なパーライト組織が存在すると、変形時に応力集中によるクラックの発生起点となる恐れがある。エアゾール缶ボトム用鋼板が缶胴に巻き締めによって取り付けられる際、このようなクラックの発生起点が存在すると巻き締め部の割れに至る可能性がある。
次に、本発明の鋼板の板厚と機械特性との関係について、説明する。
エアゾール缶ボトムに用いる鋼板は、厚ければ厚いほど、また強度が高ければ高いほど望ましいことになる。しかし、過剰な板厚、強度はボトムの加工性を劣化させる原因となる。具体的には、ボトムが正規の形状に加工されないことや、ボトムの加工工程において、加工工具の損耗、あるいは損傷の頻発などを招く。これらは、過剰な板厚および強度によって鋼板の変形抵抗が高まり、加工工具に高い負荷がかかることを原因とする。したがって、これを避けるためには加工性の点から板厚、強度を適切に限定する必要がある。
エアゾール缶ボトムは耐圧強度、加工性に加え、さらに経済性も考慮して設計される必要がある。つまり、過剰な板厚はボトムの素材である鋼板のコストを増加させる。これらの観点から、本発明では鋼板の板厚は0.350mm以下に限定する。
ボトムの加工における変形抵抗は、鋼板の板厚、強度、およびボトムのサイズに依存する。鋼板の強度としては、ボトム加工前の鋼板の下降伏強度が影響する。これは、ボトムが上降伏点の出現する歪以上の高い加工度で加工されるためであると考えられる。本発明者らは、変形抵抗には下降伏強度、板厚、およびボトムの径の積が変形抵抗に関係した指標となることを見出した。本発明では、エアゾール缶ボトムで実用上最も直径の大きいサイズである呼び径211径における実際の加工の際にも、前記の不具合が許容できる範囲に抑制できる条件として、ボトムの径を予め考慮した指標として、ボトム加工前の鋼板の板厚と下降伏強度の積を195N/mm以下と限定する。
なお、同じ素材を用いた場合でもボトムの直径が小さいほど変形抵抗は低くなるため、上記の評価指標は直径が211径よりも小さい径のボトムに用いる鋼板に適用した場合にも変形抵抗が過剰になることはない。
エアゾール缶のボトムは、缶内部の圧力に耐える構造とするために、缶内部に張り出した形状に加工される。この加工によって、鋼板には歪が導入される。歪の導入は鋼板の強度を向上させるため、エアゾール缶のボトムの耐圧強度の向上にも寄与する。しかし、歪のみで耐圧強度を必要なレベルにまで向上させるには、加工度を非常に高くする必要があるため、現実的でない。したがって、予め強度の高い鋼板を用いることが有効である。
その一方で、鋼板の強度が高すぎると、ボトム加工ができない。こうした矛盾を克服するために、本発明者らは歪時効硬化に着目した。つまり、加工による歪の導入の後に、時効により鋼板を硬化させることに着目した。
鋼板の歪時効硬化は、一般的には、意図的な熱処理によって発現させる。例えば、加工後に塗装焼付けを行う。そのため、鋼板の歪時効硬化挙動を評価するには、所定の加工を施したのち、塗装焼付けを想定した170〜220℃程度の温度において数分から数十分の処理という、意図的な熱処理を施す手段が採られていた。
一方、エアゾール缶ボトムの製造において加工後に行われる熱処理は、シーリングコンパウンドを乾燥させるため数十度で数分の処理であり、非常に軽微なものである。かつ、エアゾール缶ボトムは、加工後直ちにではなく、室温で保管された後に実際の使用に供される。つまり、エアゾール缶ボトムでは、室温時効が主たる時効過程となる。
よって、エアゾール缶ボトムに用いられる鋼板の歪時効硬化挙動を評価するには、比較的高温長時間の熱処理を行う従来の手段は過剰な熱履歴を与えることになるために適切ではない。そこで、本発明では、実際のエアゾール缶ボトムの加工、および実際の使用に供されるまでの時効過程、およびその際の耐圧強度の実績を参考に、歪時効硬化挙動の指標として室温歪時効に着目した。具体的には、鋼板に10%の圧延予歪を施した後、25℃において10日間の室温時効を行った後の降伏強度を歪時効硬化挙動の指標とする。
ここで、鋼板に10%の圧延予歪を施すのは、ボトム加工の歪を再現するためである。この条件を決定するにあたり、本発明者は各種のエアゾール缶ボトムを実際に加工して、その加工度を調査した。まず、ボトムの素材となる円形板に、その中心を通る複数の線を円周方向に15°のピッチでマークし、さらに、複数の同心円を半径方向に5mmのピッチでマークし、これを実際のボトムに加工した。加工の後、マークに基づいて加工によるボトム半径方向の歪、および周方向の歪をボトムの各位置において算出した。また、両者の歪から体積一定の条件において板厚方向の歪を算出した。その結果、各種のボトムにおいて、最も高い加工度は相当歪で概ね0.1程度であるという知見を得た。相当歪0.1は、圧延による加工では10%の圧下率に相当する。この結果より、ボトム加工の歪を再現する加工として、10%の圧延予歪を採用した。
本発明において、室温時効の条件としては、時効温度を25℃、時効時間を10日間とする。これは、実際のエアゾール缶の使用状況に基づくものである。つまり、エアゾール缶はボトム加工の後に一定期間保管され、その後に使用に供される。この保管状況および使用に供される状況を調査した結果、温度は平均25℃であり、期間は平均10日であることが判明した。よって、上記の条件を時効温度、時効時間として定めた。
なお、室温歪時効硬化挙動の評価には上降伏強度を用いた。これは、本発明者の実験結果において、ボトムの耐圧強度が下降伏点よりも上降伏点の方がより高い相関係数で再現されるという知見に基づく。
前記の室温歪時効後の上降伏強度が高いほど、耐圧強度は高くなるが、耐圧強度は上降伏強度以外にも板厚に影響される。本発明者らの実験の結果、板厚はその二乗によって耐圧強度に影響することがわかった。具体的には、エアゾール缶で実用上最も直径の大きい呼び径211径における耐圧強度が1.65MPa以上となる条件として、室温歪時効後の上降伏強度と板厚の二乗の積を52.0N以上と限定することにより、耐圧強度および加工性に優れるエアゾール缶ボトム用鋼板を得られることがわかった。なお、同じ素材を用いた場合では、ボトムの直径が小さいほど耐圧強度は高くなるため、上記の評価指標は直径が211径よりも小さい径のボトムに用いる鋼板に適用した場合にも耐圧強度が不足することはない。
なお、本発明の降伏強度(上降伏強度、下降伏強度)は、JISZ2201「金属材料引張り試験片」に規定された5号試験片を用い、JISZ2241「金属材料引張り試験方法」に準じて行った。10%の伸びは、ゲージ長50mmを基準とした際の伸びを採用した。また、引張試験の引張方向は、鋼板の圧延方向とする。一般に、鋼板の降伏強度は圧延方向で最も低いことから、ボトムの耐圧強度の下限値の基準となる。
次に、本発明の耐圧強度が高く加工性に優れたエアゾール缶ボトム用鋼板の製造方法について、説明する。
本発明の鋼板は、連続鋳造、熱間圧延、酸洗、一次冷間圧延、再結晶焼鈍、二次冷間圧延、必要に応じて表面処理の各工程を経て製造される。詳細を以下に説明する。
上述した成分組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造によってスラブとする。
連続鋳造では、垂直曲げ型または湾曲型の連続鋳造機によりスラブを作製する際に、スラブに曲げあるいは曲げ戻し変形が加えられる領域におけるスラブコーナー部表面温度を800℃以下または900℃以上とすることが好ましい。これにより、スラブ横断面における長辺および短辺の角部での割れを回避することができる。
連続鋳造後のスラブに対し、スラブ加熱温度を1150℃以上とする再加熱を行う。1150℃以上の温度でスラブを再加熱することにより、スラブ冷却の過程で析出したAlNを溶解させることができる。
なお、スラブの再加熱において、スラブ表面温度とスラブ中心温度の差を20℃以内とすることで、AlNの溶解がスラブ内で均一となり、材質の均一性が良好となる。特に、以降の熱間圧延、一次冷間圧延、焼鈍、二次冷間圧延を経た後の結晶組織が鋼板の板厚方向で均一となり、それによって材質の均一性が良好となる。
次いで、スラブを常法により熱間圧延する。この際、熱間圧延における仕上げ温度はAr変態点以上の温度とすることが好ましい。
巻取り温度は620℃未満とする。仕上げ圧延後の巻取温度が620℃以上では、AlNが析出し、本発明におけるNの効果が得られない。なお、過剰な硬質化を避けるためには、巻取り温度は540℃以上であることが好ましい。
熱間圧延後、冷却した熱延鋼帯に対し、スケール除去のため酸洗を施す。酸洗は硫酸法、塩酸法などの常法にしたがって行うことができる。
次いで、一次冷間圧延を行う。一次冷間圧延は80%以上の圧延率で行うことが好ましい。これは、熱間圧延後に生成するパーライト組織を破砕するためであり、一次冷間圧延率が80%未満であるとパーライト組織が残存する可能性がある。一次冷間圧延率の上限は、過大な圧延率による圧延機の負荷の増大とそれに伴う圧延不良の発生を避けるため、95%以下が好ましい。
一次冷間圧延の後に再結晶焼鈍を施す。再結晶焼鈍としては、連続焼鈍が好ましい。箱焼鈍では固溶NがAlNとして析出し、本発明において必要な室温歪時効硬化が得られなくなる場合があるためである。また、焼鈍温度はA変態点未満とすることが好ましい。焼鈍温度をA変態点以上とすると、焼鈍中にオーステナイト相が生成し、ボトムの加工時に割れの起点となる可能性のあるパーライト組織が形成される場合があるためである。
焼鈍後に、圧延率3%超18%未満で二次冷間圧延を行う。二次冷間圧延を行うことにより、鋼板に所定の機械特性、表面粗さを付与することができる。本発明において、二次冷間圧延率が3%以下であると、耐圧強度の確保に必要な鋼板の強度が得られない。一方、18%以上となると、加工硬化によって鋼板が過剰に硬質化し、加工性が損なわれる。これより、二次冷間圧延率は3%超18%未満とする。
本発明の鋼板は、鋼板の両面または片面に、めっき層による表面処理および有機樹脂被覆を施す表面処理を行うことが好ましい。これにより、さらにボトム加工の加工性が向上する。これは、有機樹脂被覆の存在により鋼板表面の摩擦係数が低下し、それに伴ってボトムの加工性が向上するためであると考えられる。めっき層の機能は有機樹脂被覆と鋼板との密着性を確保すること、および、耐食性を確保することにある。代表的な表面処理の例としては、上記の機能が発揮される錫めっき(ぶりき)、クロムめっき(ティンフリースチール)などの金属、金属酸化物、金属水酸化物、無機塩等の処理がある。その上層に施す有機樹脂皮膜の被覆には、有機樹脂フィルムのラミネート処理、塗装処理がある。
これらの表面処理において、鋼板に対して加熱処理が施される場合がある。鋼板はこの加熱処理による時効を受ける。また、鋼板がボトムに加工される前の期間において保管される際にも、保管温度および期間に応じた時効を受ける。さらに、鋼板に対して塗装を行う場合にも時効を受ける。しかし、これらの原板状態での時効は本発明の効果には影響を及ぼさない。
以上により、耐圧強度が高く加工性に優れたエアゾール缶ボトム用鋼板が製造される。
以下、実施例について説明する。
表1に示す成分組成からなる鋼を溶製し、表2に示す条件で熱間圧延、一次冷間圧延、再結晶焼鈍、二次冷間圧延を行った。その後、表2の記号C1、E1、H1については、表面処理としてクロムめっきを施したティンフリースチールとし、さらにPETフィルムをラミネートしてラミネート鋼板とした。表2における上記以外のものは、表面処理として錫めっきを施したぶりきとし、さらに塗装および焼付け処理を施した。
Figure 0005929739
Figure 0005929739
以上により得られた鋼板に対し、JISZ2201「金属材料引張り試験片」に規定された5号試験片を用い、JISZ2241「金属材料引張り試験方法」に準じた引張試験により、下降伏強度(YP)を測定した。また、鋼板に10%の圧延予歪を施した後、25℃において10日の室温時効を行った後の上降伏強度(YP)を測定した。この下降伏強度および上降伏強度の測定結果に基づき、下降伏強度(N/mm)と板厚t(mm)との積(t・YP)、および、10%の圧延予歪後に25℃において10日間の室温時効を行った際の上降伏強度(N/mm)と板厚t(mm)の二乗との積(t・YP)を求めた。なお、加工性の評価として、t・YPが195N/mm以下なら○、t・YPが195N/mm超えなら×とした。また、耐圧強度の評価として、t・YPが52.0以上なら○、t・YPが52.0N未満なら×とした。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005929739
表3の結果から、成分および製造条件が本願請求範囲の場合は、優れた性能を示すことがわかる。
1 ボトム
2 缶胴
3 マウンティングキャップ
4 スプレーノズル

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.020%以上0.090%以下、Si:0.01%以上0.05%以下、Mn:0.05%以上0.60以下%、P:0.001%以上0.100%以下、S:0.001%以上0.025%以下、N:0.0010%以上0.0070%未満、Al:0.010%以上{−4.2×Nの含有量(%)+0.11}%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、板厚を0.350mm以下とし、下降伏強度(N/mm)と前記板厚(mm)との積が195(N/mm)以下、圧延率10%の圧延予歪を施した後、25℃において10日間の室温時効を行った際の上降伏強度(N/mm)と、前記板厚(mm)の二乗との積が52.0N以上であり、N量の75%以上が固溶Nとして残存することを特徴とするエアゾール缶ボトム用鋼板。
  2. 質量%で、C:0.020%以上0.090%以下、Si:0.01%以上0.05%以下、Mn:0.05%以上0.60以下%、P:0.001%以上0.100%以下、S:0.001%以上0.025%以下、N:0.0010%以上0.0070%未満、Al:0.010%以上{−4.2×Nの含有量(%)+0.11}%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼を溶製し、
    連続鋳造によってスラブとし、1150℃以上の温度にスラブを再加熱した後、
    巻取り温度を620℃未満として熱間圧延を行い、酸洗、一次冷間圧延した後、再結晶焼鈍し、
    圧延率3%超18%未満で二次冷間圧延を行い、板厚を0.350mm以下とし、
    得られる鋼板の下降伏強度(N/mm)と前記板厚(mm)との積が195(N/mm)以下、圧延率10%の圧延予歪を施した後、25℃において10日間の室温時効を行った際の上降伏強度(N/mm)と、前記板厚(mm)の二乗との積が52.0N以上であり、N量の75%以上が固溶Nとして残存することを特徴とするエアゾール缶ボトム用鋼板の製造方法。
  3. 前記スラブの再加熱において、スラブ表面温度とスラブ中心温度の差が20℃以内であることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール缶ボトム用鋼板の製造方法。
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