JP3133177B2 - 熱安定性に優れたポリエチレンナフタレート繊維およびその製造方法 - Google Patents

熱安定性に優れたポリエチレンナフタレート繊維およびその製造方法

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JP3133177B2 JP04329260A JP32926092A JP3133177B2 JP 3133177 B2 JP3133177 B2 JP 3133177B2 JP 04329260 A JP04329260 A JP 04329260A JP 32926092 A JP32926092 A JP 32926092A JP 3133177 B2 JP3133177 B2 JP 3133177B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業用の利用分野】本発明は産業用資材、特にタイヤ
コードとして有用な高強度、高弾性率で、かつ熱安定性
に優れたポリエチレンナフタレート繊維およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンナフタレート繊維は、高強
度、高弾性率および優れた熱寸法安定性を示し、タイヤ
コードを始めとする産業資材分野でポリエチレンテレフ
タレート繊維を凌駕する性能を示すものと期待されてい
る。ポリエチレンテレフタレート繊維については、熱安
定性を向上させ、レーヨンと同等の熱安定性を有する繊
維を得ようとする提案が種々行われている。
【0003】ポリエチレンナフタレート繊維において
も、熱安定性の向上を目的とした提案がいくつかなされ
ている。例えば、特開昭62―156312号公報に
は、紡糸速度1,500〜6,000m/分の特定の紡
糸延伸条件で、強度が6.5g/de以上、180℃乾
熱収縮率が3%以下、結晶融点が280℃以上である熱
安定性に優れたポリエチレンナフタレート繊維を製造す
ることが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭
62―156312号公報に記載されているポリエチレ
ンナフタレート繊維は、結晶融点が285℃と高い場合
には、強度が6.6g/deと低く、逆に強度が7g/
de以上になると、結晶融点が280〜283℃と低く
なるという問題がある。つまり、強度と耐熱性とを、高
レベルで両立させることができない。
【0005】さらに、特開昭62―156312号公報
に記載されているポリエチレンナフタレート繊維は、乾
熱収縮率で示される熱寸法安定性は良好であるものの、
昇温、荷重下での繊維の伸長に対する熱耐久性が不十分
である。ポリエチレンナフタレート繊維が産業用資材、
特にタイヤコード、ベルト、ホースなどのゴム資材の補
強用繊維として用いられる場合は、通常、昇温下に荷重
を受けるので、昇温、荷重下での伸長に対する熱耐久性
(即ち、耐クリープ性)が必要となる。
【0006】本発明は、特にタイヤコード、ベルト、ホ
ースなどのゴム資材の補強用繊維として好適な、高強度
で、かつ耐熱性、熱寸法安定性および熱耐久性に優れた
ポリエチレンナフタレート繊維を提供することを目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、エチレン―
2,6―ナフタレート単位を90モル%以上含むポリエ
チレンナフタレートからなり、下記(a)〜(g)を満
足することを特徴とする熱安定性に優れたポリエチレン
ナフタレート繊維である。
【0008】(a)極限粘度[η]f≧0.70 (b)強度≧7.0g/de (c)融点≧282℃ (d)180℃での乾熱収縮率≦3.0% (e)120℃でのクリープ率≦4.0% (f)0.2≦R≦0.8 (g)複屈折率(Δn)≧0.31 (ただし、RはX線回折強度の赤道方向の分布曲線にお
いて、ブラッグ反射角2θ=18.7゜のピークと2θ
=15.6゜のピークとの回折強度比である。)
【0009】さらに、本発明は、上記ポリエチレンナフ
タレート繊維を製造するに際し、(ア)エチレン―2,
6―ナフタレート単位を90モル%以上含み、かつ極限
粘度が0.75ないし1.00であるポリエチレンナフ
タレートを、溶融紡糸すること、(イ)該溶融紡糸にお
いて、紡糸口金直化に、長さが30cm以上で、雰囲気
温度が紡糸口金温度以上450℃以下の加熱筒を設ける
こと、(ウ)引取速度3,500m/分以上、紡糸ドラ
フト100〜2,000で該溶融紡糸を行ない、複屈折
率が0.22以上の未延伸糸を得ること、(エ)該未延
伸糸を一旦巻取るか、あるいは巻取らずに連続的に延伸
工程に供給して少なくとも1段以上の熱延伸を行なうこ
と、および(オ)引き続いて、200〜250℃の加熱
ローラーと非加熱ローラーとの間で、定長あるいは2%
以下の制限収縮処理を行なった後、巻取ること、からな
ることを特徴とするポリエチレンナフタレート繊維の製
造方法である。
【0010】本発明でいうポリエチレンナフタレートと
は、エチレン―2,6―ナフタレート単位を90モル%
以上含んでおればよく、10モル%以下の割合で適当な
第3成分を含む共重合体であっても差し支えない。一般
にポリエチレン―2,6―ナフタレートは、ナフタレン
―2,6―ジカルボン酸またはその機能的誘導体を触媒
の存在下で、適当な反応条件の下に重合せしめることに
よって合成される。このとき、ポリエチレン―2,6―
ナフタレートの重合完結前に、適当な1種または2種以
上の第3成分を添加すれば、共重合ポリエチレンナフタ
レートが合成される。
【0011】適当な第3成分としては、(a)2個のエ
ステル形成官能基を有する化合物、例えば、シュウ酸、
コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの
脂肪族ジカルボン酸;シクロプロパンジカルボン酸、シ
クロブタンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸な
どの脂環族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、ナ
フタレン―2,7―ジカルボン酸、ジフェニルジカルボ
ン酸などの芳香族ジカルボン酸;ジフェニルエーテルジ
カルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェ
ノキシエタンジカルボン酸、3,5―ジカルボキシベン
ゼンスルホン酸ナトリウムなどのカルボン酸;グリコー
ル酸、p―オキシ安息香酸、p―オキシエトキシ安息香
酸などのオキシカルボン酸;プロピレングリコール、ト
リメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラ
メチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオ
ペンチレングリコール、p―キシリレングリコール、
1,4―シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール
A、p,p′―ジフェノキシスルホン―1,4―ビス
(β―ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2―ビス
(p―β―ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ポ
リアルキレングリコール、p―フェニレンビス(ジメチ
ルシクロヘキサン)などのオキシ化合物、あるいはその
機能的誘導体;前記カルボン酸類、オキシカルボン酸
類、オキシ化合物類またはその機能的誘導体から誘導さ
れる高重合度化合物などや、(b)1個のエステル形成
官能基を有する化合物、例えば、安息香酸、ベンゾイル
安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアル
キレングリコールなどが挙げられる。
【0012】さらに(c)3個以上のエステル形成官能
基を有する化合物、例えば、グリセリン、ペンタエリス
リトール、トリメチロールプロパンなども、重合体が実
質的に線状である範囲内で使用可能である。
【0013】また、前記ポリエステル中に、二酸化チタ
ンなどの艶消剤やリン酸、亞リン酸およびそれらのエス
テルなどの安定剤等の添加剤が含まれていてもよいこと
はいうまでもない。
【0014】本発明のポリエチレンナフタレート繊維
は、極限粘度[η]fが0.70以上であり、特に、
0.75〜1.0であることが好ましい。本発明でいう
極限粘度[η]fは、繊維をフェノールとオルトジクロ
ロベンゼンとの混合溶媒(容量比6:4)に溶解し、3
5℃で測定した粘度から求めた値である。
【0015】極限粘度[η]fが0.70未満では、本
発明の目的とする高強度で、かつ耐熱性、熱安定性に優
れたポリエチレンナフタレート繊維を得ることが、実質
上不可能になる。なお、極限粘度[η]fが1.0を越
えるような繊維は、紡糸工程での断糸が多発し製造する
のが難しい。
【0016】また、強度が7g/de未満では、産業資
材として用いたとき、耐久性が劣り好ましくなく、7.
5g/de以上であることが好ましい。
【0017】この強度レベルを達成するためには、複屈
折率(Δn)が0.31以上であることが必要であり、
0.32以上がより好ましい。
【0018】産業用資材は、優れた熱的特性を持ってい
ることが必要である。一般にポリエチンナフタレート繊
維は、ポリエチンテレフタレート繊維に比較して、耐熱
性、熱安定性に勝るので、その特性を十分に活用できれ
ば、従来よりはるかに優れた産業資材用繊維が得られる
ことになる。
【0019】耐熱性の尺度としては、繊維中に存在する
結晶部の融点で表わすことができる。ポリエチレンナフ
タレート繊維を高速紡糸した場合の特徴の一つは、高融
点を有する結晶が得られることで、このことは特公昭5
2―5612号公報などで知られている。紡糸速度3,
500m/分以上の高速で紡糸し、X線回折図形の赤道
方向のパターンから求められるR値が0.2以上の場合
は、結晶の融点を282℃以上、適切な条件を選べば2
85℃以上の高融点とすることができる。結晶の融点が
282℃に達しないと、レーヨンに比較して、耐熱性が
劣ることになる。
【0020】熱安定性の尺度としては、180℃での乾
熱収縮率で代表される熱寸法安定性および120℃での
クリープ率で代表される熱耐久性が挙げられる。乾熱収
縮率は3.0%以下であることが必要であり、2.5%
以下がより好ましい。乾熱収縮率が3%を越えると、レ
ーヨンに比較して熱寸法安定性が劣ってくる。
【0021】120℃でのクリープ率は、昇温、荷重下
での伸長に対する繊維の抵抗性を示すもので、実際に繊
維が産業用資材として用いられる場合の重要なファクタ
ーである。本発明のポリエチレンナフタレート繊維にお
いては、120℃、2.5g/de荷重下でのクリープ
率が4.0%以下であることが必要である。このクリー
プ率が4.0%を越えると、昇温、荷重下での耐久性
が、レーヨンに比較して劣ってくる。X線回折曲線から
求められるR値が0.8を越えると、結晶の融点は29
0℃程度と高いにもかかわらず、クリープ率は4%を越
える。
【0022】ここで注意しなければならないのは、乾熱
収縮率とクリープ率とは、通常2律背反的性格のもので
あり、乾熱収縮率が低いときは、クリープ率が高くなる
ことである。
【0023】上記のような特性を両立するためには、微
細構造的に結晶の完全性が高いことが必要であり、結晶
の融点が282℃以上である必要がある。このように、
耐熱性、熱寸法安定性および熱耐久性の3つが互いに影
響し合っているものであり、このことは本発明において
はじめて見出されたものである。
【0024】このようなポリエチレンナフタレート繊維
を製造するには、エチレン2,6―ナフタレート単位を
90モル%以上含み、かつ、極限粘度が0.75ないし
1.00であるポリエチレンナフタレートを3,500
m/分以上の引取速度で溶融紡糸する。
【0025】この際、紡糸口金直下に、遅延冷却を行う
ために加熱筒を設置する。ポリエチレンナフタレート樹
脂は、特に極限粘度が0.75以上のような高重合度の
場合、溶融粘度が非常に大であり、このため紡糸口金温
度を適度に高くして、溶融粘度を下げる必要があること
は言うまでもないが、口金下の冷却を遅らせ、吐出糸条
が、紡糸ドラフトにより急激に配向化することを避けね
ばならない。このために、加熱筒は必須であり、さらに
その長さも長い方が好ましい。本発明者らの検討では、
加熱筒を高温にし、かつ加熱筒の長さを長くすると、吐
出糸条が密着し、時には断糸に至る場合も有り得るが、
少なくとも30cm以上の長さの加熱筒を設置すること
が必要である。
【0026】加熱筒の温度は、紡糸口金温度以上、45
0℃以下の雰囲気温度に保持する必要がある。高速紡糸
下に高強度繊維を得るためには、低配向未延伸糸が必要
であるが、このためには少なくとも口金下での遅延冷却
が必須である。口金直下に設けた加熱筒の温度が紡糸口
金温度未満になると、遅延冷却というよりはむしろ保温
による徐冷となり、高強度繊維が得難くなる。逆に、加
熱筒温度が450℃を越えると、糸搖れが大きくなり、
ひどい場合は単糸間の密着が発生するなど、紡糸調子が
悪化する。加熱筒の長さについても同様に、30cm未
満では充分な遅延冷却効果が得られない。ここで注意し
なければならないのは、ここで特定した加熱筒の温度お
よび長さの条件の範囲内でも、紡糸溶融温度が高すぎた
り、紡糸口金の孔間の距離が不適切であったりすると、
紡糸調子が低下したり、場合によっては単糸間の密着が
発生する場合も有り得るので、適切な紡糸条件を選ぶ必
要がある。
【0027】紡糸ドラフトは、紡糸巻取速度(紡糸速
度)と紡糸吐出線速度の比として定義され、下記式で表
わされる。 紡糸ドラフト=πD2 V/4W (式中Dは口金の孔径を、Vは紡糸引取速度を、Wは単
孔あたりの体積吐出量を示す。)紡糸ドラフトが100
未満になると、紡出糸条の張力が過小で、糸搖れが大に
なったり、ひいては糸条の断糸が発生する場合もある。
逆に、紡糸ドラフトが2,000を越えると、糸条の断
糸が発生したり、発生しなくとも紡糸調子が低下する。
【0028】本発明で特定する物性を有するポリエチレ
ンナフタレート繊維を得るには、上記のように口金下に
加熱筒を設置し、遅延冷却を行うことが前提になるが、
紡糸未延伸糸の複屈折率(Δn)が0.22以上である
ことが、もう一つの重要な要件である。紡糸速度が50
0m/分のように低くて、複屈折率(Δn)が0.22
に達しない場合は、高強度、高弾性率繊維は得られ易い
が、熱寸法安定性、耐熱性が劣ったものとなってしま
う。紡糸速度が2,000〜3,000m/分の、いわ
ゆるPOY領域になると、紡糸過程で繊維構造は発達し
ていないが、微結晶の核が多数発生して、この核が結晶
化し易いため、延伸性を阻害し、低強度の糸条しか得ら
れない。むしろ、紡糸速度をさらに大とし、紡糸過程で
繊維構造を発達させておいた方が、高強度の糸条が得ら
れる。このためには、紡糸速度を3,500m/分以上
とし、未延伸の複屈折率(Δn)を0.22以上にして
おくことが必要である。
【0029】このようにして得られた未延伸糸は、結晶
の完全性が十分でなく、強度も十分ではないうえ、特に
熱耐久性が不十分なので、少なくとも1段以上の延伸を
行う必要がある。延伸温度は150℃以上であれば良
い。なお、延伸は、紡糸引取ロールから一旦捲き取っ
て、いわゆる別延伸法で延伸しても、あるいは紡糸引取
ロールから直接連続的に延伸工程に未延伸糸を供給する
いわゆる直延伸法で延伸しても差し支えない。このと
き、延伸倍率は、X線回折強度曲線から求められるR値
が0.2以上、0.8以下になるように設定する必要が
ある。R値が0.8を越えると、繊維構造の発達が不十
分なため、クリープ率が大になり、熱耐久性が悪化す
る。また、R値を0.2未満とするには、過大な延伸倍
率が必要となるため、延伸調子が悪化したり、また、延
伸されても低伸度となり、タフネスが低下し、更には熱
寸法安定性が低下する。
【0030】延伸後、熱セットを行うことが、熱安定性
向上の観点から必要である。熱セットは200〜250
℃の加熱ロールを用いて、定長あるいは2%以下の制限
収縮下で行い、しかる後捲き取る。定長を越える緊張状
態、つまり延伸状態で熱セトを行うと、糸条の熱寸法安
定性が低下する。また、制限収縮が2%を越える状態で
熱セットした場合は、糸条の熱耐久性が劣ったものにな
る。
【0031】本発明のポリエチレンナフタレート繊維を
ゴム補強用コードとして使用する場合は、例えば次のよ
うな方法を使用することができる。すなわち、該延伸糸
を撚係数K=T・D1/2 (Tは10cm当りの撚数、D
は撚糸コードの繊度)が990〜2,500で合撚糸し
て撚糸コードとなし、該コードを接着剤処理に引き続き
230〜270℃で熱処理する。この際、実質的に延伸
が起こらない条件で熱処理することが好ましい。本発明
のポリエチレンナフタレート繊維から得られるコード
は、荷重が2g/deの時の中間伸度と180℃での乾
熱収縮率との和が4.5以下であり、高弾性率であると
共に、熱安定性に極めて優れている。さらに、本発明の
ポリエチレンナフタレート繊維からなるコードは、強度
5.8g/de以上であり、また、ゴム構造物中におい
ても従来のゴム補強用ポリエチレンテレフタレートコー
ドに比して、耐熱性および耐疲労性が著しく改善されて
いる。
【0032】以下、実施例で本発明を更に詳細に説明す
る。なお、実施例、比較例における各特性値は、以下の
方法で測定した。
【0033】(1)強度、伸度 JIS L 1013に準拠して、サンプル長20c
m、伸長速度100%/分にて測定した。
【0034】(2)乾熱収縮率 JIS L 1013B法(フィラメント収縮率)に準
拠し、180℃で30分間の収縮率を求めた。
【0035】(3)融点 理学電機(株)製THERMOFLEX TAS20型
示差熱量計を用い、窒素雰囲気中、試料量10mg、昇
温速度10℃/分でDSC曲線を求め、吸熱ピークの温
度を融点とした。
【0036】(4)極限粘度[η] 樹脂あるいは繊維をフェノールとオルトジクロロベンゼ
ンとの混合溶媒(容量比6:4)に溶解し、35℃で測
定した粘度から求めた。
【0037】(5)広角X線R値 繊維試料についてのX線回折図の赤道方向スキャン曲線
において、ブラッグ反射角2θ=18.7゜と2θ=1
5.6゜との相対回折強度をRと名付け、下記式によっ
て算出した。
【0038】
【数1】
【0039】ただし、Ic18.7゜およびIc15.
6゜は、それぞれ繊維のX線回折強度分布曲線(赤道方
向)におけるブラッグ反射角2θ=18.7゜および2
θ=15.6゜での回折強度(曲線のピークの高さ)、
Ia18.7゜およびIa15.6゜はそれぞれ非晶に
よるX線回折強度分布曲線におけるブラッグ反射角2θ
=18.7゜および2θ=15.6゜での回折強度(曲
線のピークの高さ)を表わし、特公昭52―5612号
公報記載の方法に準じて測定した。
【0040】(6)複屈折率(Δn) ベレックのコンペンセンターを用いて、リターデーショ
ン法にて求めた(詳細については共立出版「高分子実験
学講座、高分子の物性II参照)。
【0041】(7)クリープ率(Cr) 室温で2.5g/deの荷重を繊維に加え、120℃に
昇温後、荷重下に2時間保持し、クリープさせた後、荷
重下に降温、しかる後除重し、クリープテスト前後の繊
維長の変化からクリープ率を求めた。なお、ここで除重
時とは、0.2g/deの小荷重をかけた状態をいう。
【0042】(8)耐熱強力維持率 耐熱強力は、生コードをRFL接着液に浸漬し、張力下
245℃で2分間熱処理し、この処理コードを加硫モー
ルド中に埋め込み、170℃、圧力50kg/cm2
120分間促進加硫した後、処理コードを取り出して強
力を測定した。生コード強力に対するこの処理コードの
強力の割合をもって耐熱強力維持率とし、75%以上を
合格とした。なお、通常のポリエチレンテレフタレート
コードの耐熱強力維持率は50〜60%であった。
【0043】
【実施例1〜7、比較例1〜9】極限粘度0.87のポ
リエチレン―2,6―ナフタレートチップを、孔数25
0ホール、孔径0.50mmの円形紡糸孔(L/D=
2)を有する紡糸口金から紡糸口金温度318℃にて吐
出し、ドラフト、紡糸速度並びに口金直下に設置した加
熱筒の温度および長さを表1に記載するように変更して
紡糸をおこなった。さらに、加熱筒の直下から長さ45
cmにわたって、20℃の冷却風を3.5Nm/分の流
量で吹き付けて、糸条の冷却をおこなった。その後、オ
イリングロールにて油剤を付与した後、引取ロールに導
き、巻取機で巻取った。この未延伸糸の極限粘度は、
0.75〜0.77の範囲内であり、複屈折率(Δn)
は表1に示す通りであった。得られた未延伸糸に1%の
プリテンションをかけた後、200m/分の周速で回転
する155℃の加熱供給ロール(FR)と第1段延伸ロ
ール(1R)との間で第一段延伸(倍率DR1)を行
い、次いで200℃に加熱した第1段延伸ロールと第2
段延伸ロール(2R)との間で第2段延伸(倍率DR
2)を行った。さらに、熱セット工程として第2段延伸
ロール(2R)を220℃に加熱し、非加熱の引取ロー
ル(WR)との間で収縮熱セット(倍率DR3)を行っ
た後、巻取機に巻き取った。第1段延伸倍率(DR1)
は1段延伸時の最高延伸倍率の0.85倍とした。倍率
DR1,DR2,DR3は、表1に示すように変更し
た。
【0044】
【表1】
【0045】得られた延伸糸の物性は、表2に示す通り
であった。
【0046】
【表2】
【0047】得られた延伸糸に400回/mのZ撚を与
えた後、これを2本合わせて400回/mのS撚を与え
て、1500de×2本の生コードとした。この生コー
ドを接着剤(RFL)液に浸漬し、245℃で2分間緊
張熱処理した。このコードの特性およびゴム中に埋込ん
で加硫した後の耐熱強力維持率を測定した。この結果
は、表3に示す通りであった。
【0048】
【表3】
【0049】なお、比較例9ではポリエチレンナフタレ
ートチップの極限粘度を0.68とし、紡糸口金温度は
312℃とした。この繊維の極限粘度[η]fは、0.
62であった。
【0050】これらの結果から明らかなように、本発明
のポリエチレンナフタレート繊維(実施例1〜7)は、
高強度でかつ耐熱性、熱寸法安定性および熱耐久性(耐
クリープ性)に優れているが、紡糸速度が3500m/
分未満の場合(比較例1〜3)は、耐熱性、熱寸法安定
性、熱耐久性のすべてが劣っている。また、R値が0.
8を越えた場合(比較例4)は熱耐久性が悪くなり、逆
に0.2未満の場合(比較例5)は、タフネスが低下
し、熱寸法安定性が不良となる。更に、加熱筒の長さが
30cm未満の場合(比較例6)は、十分な遅延冷却が
行えず、高強度繊維が得られない。また、延伸後、制限
収縮が2%を越える状態で熱セットした場合(比較例
7)は熱耐久性が悪くなる。更に、高速紡糸を行って延
伸を行わない場合(比較例8)および繊維の極限粘度が
0.70未満の場合(比較例9)は、いずれも高速強度
繊維が得られず、熱耐久性も劣ったものとなる。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、高強度で、かつ耐熱
性、熱寸法安定性および熱耐久性(耐クリープ性)に優
れたポリエチレンナフタレート繊維を提供することがで
き、特に、タイヤコードやベルト材などの産業資材用補
強繊維として好適な繊維を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特許2954391(JP,B2) 特公 昭52−4651(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/62 301 - 306

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレン―2,6―ナフタレート単位を
    90モル%以上含むポリエチレンナフタレートからな
    り、下記(a)〜(g)を満足することを特徴とする熱
    安定性に優れたポリエチレンナフタレート繊維。 (a)極限粘度[η]f≧0.70 (b)強度≧7.0g/de (c)融点≧282℃ (d)180℃での乾熱収縮率≦3.0% (e)120℃でのクリープ率≦4.0% (f)0.2≦R≦0.8 (g)複屈折率(Δn)≧0.31 (ただし、RはX線回折強度の赤道方向の分布曲線にお
    いて、ブラッグ反射角2θ=18.7゜のピークと2θ
    =15.6゜のピークとの回折強度比である。)
  2. 【請求項2】 請求項1記載のポリエチレンナフタレー
    ト繊維を製造するに際し、 (ア)エチレン―2,6―ナフタレート単位を90モル
    %以上含み、かつ極限粘度が0.75ないし1.00で
    あるポリエチレンナフタレートを、溶融紡糸すること、 (イ)該溶融紡糸において、紡糸口金直化に、長さが3
    0cm以上で、雰囲気温度が紡糸口金温度以上450℃
    以下の加熱筒を設けること、 (ウ)引取速度3,500m/分以上、紡糸ドラフト1
    00〜2,000で該溶融紡糸を行ない、複屈折率が
    0.22以上の未延伸糸を得ること、 (エ)該未延伸糸を一旦巻取るか、あるいは巻取らずに
    連続的に延伸工程に供給して少なくとも1段以上の熱延
    伸を行なうこと、および (オ)引き続いて、200〜250℃の加熱ローラーと
    非加熱ローラーとの間で、定長あるいは2%以下の制限
    収縮処理を行なった後、巻取ること、からなることを特
    徴とするポリエチレンナフタレート繊維の製造方法。
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